<第1実施形態(第1発明)>
以下に、図1〜図9を参照して、第1実施形態に係る保冷容器10を説明する。
本実施形態に係る保冷容器10は、水揚げされたイカ、太刀魚等の鮮魚である被梱包物を収容し、収容された被梱包物を冷凍室で冷凍し、被梱包物を消費する消費地まで保冷する容器である。
図1に示すように、保冷容器10は、容器本体20および蓋体30からなる。蓋体30は、容器本体20の開口部20eを覆うように被着自在となっており、容器本体20に蓋体30を被着した状態で、内部に上述した被梱包物を収容する収容空間Sが形成される(例えば図7,8参照)。
容器本体20及び蓋体30は、発泡樹脂からなり、たとえば、ポリスチレン、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種合成樹脂の発泡体を用いることができる。
中でも、ポリスチレンまたはスチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡による成型体が好適に用いられる。スチレン改質ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させて得られるものであり、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の中でも、スチレン改質ポリエチレン樹脂が好ましく、例えば、スチレン成分の割合は40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは55〜75重量%のものが用いられる。
また、ポリスチレンの発泡体の発泡倍率は30〜80倍が好ましい。本実施形態の保冷容器10で使用する発泡樹脂は、従来に比較して発泡倍率を高めに設定している。このように発泡倍率を高めることで、荷重が加わったときに従来の発泡倍率の場合と比較して、より潰れやすく緩衝効果に優れた構成となっている。
図1,2に示すように、容器本体20は、長辺及び短辺を有する上面視矩形状の形状であり、長辺および短辺を有する矩形状の底部24から立ち上った4つの側壁部21により、上方に開口した開口部20eが形成されている。容器本体20に蓋体30を被着した状態で、容器本体20の側壁部21が保冷容器10の側壁部11となり、容器本体20の底部24が保冷容器10の底部14となる。
また、容器本体20の開口部20eを形成する開口縁20dには、容器本体20に蓋体30を被着した状態で、蓋体30の裏面30bに形成された嵌合溝38に嵌合する嵌合突条28が形成されている(図2、図5(b)、および図8等参照)。
容器本体20の短辺側の開口縁20dには、指係凹部29aが形成されており、容器本体20に被着した状態の蓋体30を、作業者が指係凹部29aに指を挿入して蓋体30を持ち上げることにより、蓋体30を容器本体20から容易に取り外すことができる。
また、図3に示すように、容器本体20の外側底面20bの短辺側の周縁部20fには、把持凹部29bが形成されており、作業者は把持凹部29bを利用して保冷容器10を容易に運搬することができる。
さらに、容器本体20の外側底面20bの四隅には、係合凹部29cが形成されている。短辺および長辺が一致するように、保冷容器10を上下方向に段積みした際に、上位の保冷容器10の係合凹部29cは、下位の保冷容器10の蓋体30の上面30aに形成された係合凸部39に係合するように構成されている。なお、蓋体30の上面30aの長辺方向に沿って形成された係合凸部39は、段積み時に上位の保冷容器10の縁部貫通孔25に係合する。このように蓋体30の上面30aの係合凸部39と、容器本体20の底面20bに形成された係合凹部29cとは、上下方向に保冷容器10を、短辺および長辺が一致するように段積みする際の位置決め部として作用する。
保冷容器10の上面10aに相当する、蓋体30の上面30aには、係合凸部39の他に、突起収納凹部37が形成されている。突起収納凹部37は、保冷容器10を段積みした際に、上位の保冷容器10の支持突起27を収容した状態で、蓋体30の上面30aで上位の保冷容器10の底部貫通孔26を塞ぐように形成されている。蓋体30の裏面30bには、上述した嵌合溝38の他に、蓋体30の剛性を高めるべく補強リブ34および補強縁部35が形成されている。
さらに、容器本体20の長辺側の各側壁部21には、2つの切欠き部22が離間して形成されており、長辺側の対向する一対の側壁部21,21に形成された切欠き部22,22は、開口部20eを挟んで対向する位置に形成されている。一方、図5(a),(b)に示すように、蓋体30の裏面30bの長辺側の縁部には、容器本体20に蓋体30を被着した状態で、容器本体20の各切欠き部22に入り込む位置に、下方に突出した突縁部31が形成されている。
このように、容器本体20の開口縁20dの切欠き部22と、蓋体30の裏面30bの突縁部31とを設けることにより、容器本体20に蓋体30を被着した状態で、切欠き部22と突縁部31との間には、間隙が形成される。すなわち、図6および7に示すように保冷容器10の側壁部11に、保冷容器10の外部と収容空間Sとを連通する貫通孔12が形成され、これが容器本体20と蓋体30との間に形成されることになる。
具体的には、容器本体20の切欠き部22は、上側に向いた上方縁面22aを有しており、上方縁面22aには、容器本体20の内方に進むに従って、水平方向Hに対して下方に傾斜した傾斜面22bが形成されている。一方、蓋体30の突縁部31は、蓋体30の内方に進むに従って、水平方向Hに対して下方に傾斜した傾斜面31cが形成されている。
このようにして、容器本体20に蓋体30を被着した状態で、容器本体20の傾斜面22bと、蓋体30の傾斜面31cとは、離間して平行な位置に配置される。容器本体20の上方縁面22aが、貫通孔12を形成する下側壁面12aとなり、容器本体20の傾斜面22bが下側壁面12aの一部を構成する傾斜面12bとなり、傾斜面12bは、収容空間S側に進むに従って、水平方向Hに対して下方に傾斜することになる。一方、蓋体30の傾斜面31cは、貫通孔12を形成する上側壁面12cとなる。
ここで、保冷容器10に形成された貫通孔12は、図7に示すように、保冷容器10の側壁部11を水平方向Hから見た側面視において、保冷容器10の外部から貫通孔12を介して収容空間Sが見えず、保冷容器10の側壁部11を水平方向Hに対して斜め上方向Rから見たときに、保冷容器10の外部から貫通孔12を介して収容空間Sが見えるように、形成されている。
さらに、本実施形態では、図2に示すように、保冷容器10の収容空間Sを形成する側壁部11(容器本体20)の内壁面11a(21a)に、貫通孔12から容器本体20の底部24に向かって、貫通孔12に連続するように複数の溝部21b,21b,…が形成されている。各溝部21bは、一方側(基端側)で貫通孔12に連続しており、他方側(先端側)では、貫通孔12と容器本体20の底部24との間に、先端部21cを有している。
本実施形態では、図3に示すように、容器本体20には、被着状態で形成された貫通孔12よりも下側の位置に、保冷容器10を貫通する4つの縁部貫通孔25および複数の底部貫通孔26が形成されている。本明細書では、縁部貫通孔25と底部貫通孔26を総称して下側貫通孔といい、保冷容器10の外部と収容空間Sとを連通する孔である。
縁部貫通孔25は、保冷容器10の側壁部11を構成する容器本体20の側壁部21と、容器本体20の底部24との境界部分25aに形成された貫通孔であり、各縁部貫通孔25は、上述した貫通孔12および複数の溝部21bよりも下方に形成されている。
縁部貫通孔25は、図7に示すように、保冷容器10を水平方向Hから見た側面視において、保冷容器10の外部から縁部貫通孔25を介して収容空間Sが見えず、保冷容器10の底部24を鉛直方向Uから見た底面視において、保冷容器10の外部から縁部貫通孔25を介して収容空間Sが見えないように形成されている。
本実施形態では、容器本体20の側壁部21と、容器本体20の底部24との境界部分25aにおいて、水平方向Hに沿って側壁部21の肉厚分と、鉛直方向に沿って容器本体20の底部24の肉厚分を刳り貫いた形状とし、さらにこの形状から、側壁部21の収容空間に面した一部25bを刳り貫いた形状とすることにより、縁部貫通孔25が得られる。
このようにして、側面視では、保冷容器10(容器本体20)の底部14(底部24)の端面と、保冷容器10(容器本体20)の外壁面10c(20c)により、縁部貫通孔25を介して保冷容器10の内部である収容空間Sが見えない。一方、底面視では、保冷容器10(容器本体20)の側壁部11(21)の端面と、保冷容器10(容器本体20)の底面10b(20b)により、縁部貫通孔25を介して保冷容器10の内部である収容空間Sが見えない。
一方、図3および図4(a),(b)に示すように、底部貫通孔26は、容器本体20の底部24を貫通するように複数形成されており、保冷容器10の外部と収容空間Sとを連通する孔である。容器本体20の外側底面20bは、長辺と短辺からなる矩形状の表面であり、底部貫通孔26は、外側底面20bの一対の対角線L,Lから外れた位置に、形成されている(図4(b)参照)。
さらに、底部貫通孔26が形成された容器本体20の外側底面20bには、保冷容器10を支持する複数の円板状の支持突起27,27,…が形成されている。本実施形態では、複数の支持突起27,27,…は、周縁支持突起27a,27a…と内側支持突起27b,27bとで構成される。
周縁支持突起27aは、容器本体20の外側底面20bの周縁部20fに形成されている。内側支持突起27bは、容器本体20の外側底面20bの周縁部20fよりも内側に形成されている。内側支持突起27bは、容器本体20の外側底面20bの短辺の2等分線Cに沿った位置に形成されている。
このように、複数の支持突起27,27,…を設けることにより、冷却時に、支持突起27が保冷容器10の外側底面10bを支持するので、保冷容器10の底部14に形成した底部貫通孔26が塞がれることを防止することができる。この結果、保冷容器10を地面等の載置面に載置して冷却した場合であっても、底部貫通孔26による収容空間Sの冷却効率を高めることができる。
ここで、保冷容器10を上下方向に多段積みして、収容空間Sの被梱包物を冷凍する際には、収容空間からの冷気が流れやすくなるように底部貫通孔26を塞がないことが好ましい。しかしながら、冷凍後、例えば海外現地の消費地で、常温状態で保冷容器10を搬送および一時的に保管する場合には、収容空間の最下部から冷気が逃げやすいため、底部貫通孔26を塞ぐことが好ましい。
このとき、上下方向に段積みした最下段以外の保冷容器は、下位の蓋体の形状、段積み時の配置状態等を工夫することにより、底部貫通孔26を段積み時に塞ぐことができる。しかしながら、最下段の保冷容器は、地面などの載置面に直接接触するため、底部貫通孔26を塞ぐことが難しい。このため、最下段の保冷容器の収容空間の温度は、他の保冷容器の収容空間の温度よりも高くなる傾向にある。この結果、上下方向に保冷容器を多段積みした場合には、保冷容器の収容空間内の温度にばらつきが生じることがあり、保冷容器内の被梱包物の品質にばらつきが生じることがあった。
ここで、保冷容器10を上下方向に多段積みして、収容空間Sの被梱包物を冷凍する際には、保冷容器10は、3段で段積みされ、最大でも6段で段積みが想定される。一方、保冷容器10を上下方向に多段積みして、常温状態で保冷容器10を搬送および一時的に保管する場合には、少なくとも7段以上の段積みがされているのが現状である。この際、段積みされる保冷容器の収容空間に梱包される被梱包物の平均的な重量は、収容空間の体積の80%の水に相当する重量である。
本実施形態では、このような点を踏まえて、以下のように支持突起27を形成する。具体的には、収容空間Sの体積の80%の水に相当する重量の被梱包物を収容空間Sに収容した保冷容器10を、載置面上に上下方向に3段から6段のいずれかの選択された段数(例えば選択段数6段)で段積みして載置した際に、載置面で底部貫通孔26を塞がず、最下段の保冷容器10の支持突起27で段積みされた保冷容器を支持するように、複数の支持突起27が形成されている。
一方、収容空間Sの体積の80%の水に相当する重量の被梱包物を収容空間Sに収容した保冷容器10を、載置面上に上下方向に選択された段数を超えた段数(例えば選択段数が6段の場合には7段以上)で段積みして載置した際に、最下段の保冷容器10の支持突起27が圧縮変形することにより、載置面で底部貫通孔26を塞ぐように、複数の支持突起27が形成されている。
なお、本実施形態では、上述した「3段から6段のいずれかの選択された段数」に、その一例として6段を選択して、複数の支持突起27を形成しているが、例えば、3段、4段、または5段を選定した場合、選定された段数に応じて、上述した作用が発揮するように、複数の支持突起の形状、大きさ、材質等を選定すればよい。
このように支持突起27を形成することで、冷却(冷凍)時には、選択された段数6段(6段以下)で保冷容器10が上下方向に段積みされたときに、最下段の保冷容器10の支持突起27が保冷容器10の外側底面10bを支持する。これにより載置面で保冷容器10の底部14に形成した底部貫通孔26が塞がれることを防止することができ、底部貫通孔26により収容空間Sの冷却効率を高めることができる。
一方、常温状態で保冷容器10を一時的に搬送および保管する場合には、少なくとも6段を超えた段数(7段以上)で、保冷容器10が段積みされるので、最下段の保冷容器10の支持突起27が圧縮変形することによりつぶれ、載置面で底部貫通孔26が塞がれる。
なお、「収容空間Sの体積」とは、貫通孔12、縁部貫通孔25、および底部貫通孔26を含まない空間の体積である。すなわち、「収容空間Sの体積」は、蓋体30および容器本体20の内面を連続して繋いだ空間の体積であり、貫通孔12、縁部貫通孔25、および底部貫通孔26を内側から仮想平面で塞いだ状態の収容空間の体積である。
<冷却(冷凍)時の状態>
以下に、保冷容器10を用いた被梱包物の冷却(冷凍)時の状態について詳述する。まず、容器本体20の内部に、例えばPE袋をセットし、被梱包物を収容する。この状態で、図8に示すように、蓋体30の裏面30bの嵌合溝38に、容器本体20の嵌合突条28が嵌合するように、容器本体20に蓋体30を被着する。これにより、保冷容器10の収容空間Sに、被梱包物が収容される。
次に、保冷容器10を冷凍室内で上下方向に多段積みする。この際に、上位の保冷容器10(容器本体20)の底部14(24)に形成された支持突起27が、下位の保冷容器10の蓋体30の突起収納凹部37に収容されないように段積みする。具体的には、上下方向に保冷容器10を段積みする際には、上下に位置する保冷容器10を水平方向にずらす、または、相対的に90°回転させて段積みする。これにより、上位の保冷容器10の底部に形成された底部貫通孔26が、下位の蓋体30の上面30aにより塞がれない。
このように段積みした保冷容器10の収容空間Sに冷気を送り込み、収容空間Sに収容された被梱包物を冷却(冷凍)する。本実施形態では、図7に示すように、貫通孔12が、水平方向Hから見た側面視において、保冷容器10の外部から貫通孔12を介して収容空間Sが見えず、斜め上方向Rから見たときに、保冷容器10の外部から貫通孔12を介して収容空間Sが見えるように、形成されている。これにより、保冷容器10の外部上方から下方に向かう冷気が貫通孔12に沿って(斜め上方向Rに沿って)流れやすく、保冷容器10の外部の冷気を貫通孔12を介して収容空間Sに取り込みやすい。このような結果、迅速に保冷容器10内の被梱包物を迅速に冷却(冷凍)することができる。
特に、本実施形態では、貫通孔12を形成する下側壁面12aは、収容空間S側に進むに従って、水平方向Hに対して下方に傾斜した傾斜面12bを有するので、冷却(冷凍)時において保冷容器10の外部から下方に向かう冷気を収容空間Sに取り込み易い。
さらに、貫通孔12から取り込まれた冷気は、側壁部11の内壁面11aに沿って形成された複数の溝部21bに沿って案内されるので、保冷容器10の収容空間S内に外部からの冷気が回り込みやすい(図2参照)。貫通孔12から取り込まれ、溝部21bに案内された冷気は、貫通孔12と容器本体の底部24との間に形成された溝部21bの先端部21cから収容空間Sの内方に流れやすくなる。これにより、より効率的に冷気を収容空間S内に送り込むことができる。
一旦、収容空間Sに送り込まれた冷気は、収容空間Sの下方に流れる。収容空間Sの下方には、貫通孔12よりも下側において、保冷容器10を貫通する縁部貫通孔25および底部貫通孔26が形成されている。これにより、収容空間Sの冷気が、保冷容器10から外部下方に流れやすくなるため、収容空間S内の冷気による冷却効率を高めることができる。
さらに、容器本体20の外側底面20bには、保冷容器10を支持する複数の支持突起27が形成されているため、支持突起27が最下段の保冷容器10の外側底面10bを支持する。これにより、保冷容器10の底部14に形成された底部貫通孔26が塞がれることがない。この結果、保冷容器10を地面等の載置面に載置して冷却した場合であっても、底部貫通孔26による収容空間Sの冷却効率を高めることができる。
特に、支持突起27として周縁支持突起27aを設けることにより、最下段の保冷容器10の容器本体20の側壁部21を介して作用する上位の保冷容器10の荷重を安定して支持することができる。これにより、最下段の保冷容器10の底部貫通孔26から冷気が流れる空間を安定して確保することができる。
さらに、保冷容器10を介して被梱包物の重量を内側支持突起27bで支持し、容器本体20の底部24の撓みを抑えることができる。この結果、容器本体20の底部24の撓みが起因して、底部貫通孔26が載置面Gにより塞がれることをより確実に回避することができる。
特に、長辺と短辺からなる矩形状の(容器本体20の)外側底面20bの短辺の2等分線Cに沿った位置は、被梱包物の重量により最も撓み易いため、この位置に、内側支持突起27bを形成することで、このような撓みをより確実に抑えることができる。
また、底部貫通孔26は、外側底面20bの一対の対角線L,Lから外れた位置に、形成されているので、底部貫通孔26を設けることによる容器本体20の底部24の強度低下を抑えることができる。
<搬送・保管時>
このようにして、冷却(冷凍)された被梱包物を収容した保冷容器10を、長辺および短辺が一致するように、上下方向に7段以上段積みし、例えば海外現地の消費地などにおいて、常温状態で保冷容器10を一時的に搬送および保管することがある。
この際、保冷容器10の外部の暖気は、保冷容器10の下方から上方に向かって流れやすいところ、上述した形状の貫通孔12を保冷容器10に設けたので、このような暖気が保冷容器10の外部から貫通孔12に沿って(斜め上方向Rに沿って)収容空間Sに入り込み難い。
一方、冷却(冷凍)された被梱包物の冷気は、収容空間Sの上方から下方に向かって流れやすいところ、本実施形態では、上述した形状の貫通孔12を保冷容器10に設けたので、このような冷気が保冷容器10の収容空間Sから貫通孔12に沿って(斜め上方向Rに沿って)外部に流れ出し難い。このような結果、収容空間Sに収容された被梱包物の保冷性を高めることができる。
さらに実施形態では、縁部貫通孔25は、側面視および底面視において、保冷容器10の外部から縁部貫通孔25を介して収容空間Sが見えないので、保冷容器の10外部の下方から暖気が収容空間S内に入り込み難く、収容空間Sから冷気が抜け難い。
また、少なくとも7段以上、保冷容器10が段積みされたときに、上位の保冷容器10の底部14の支持突起27が、下位の蓋体30の上面30aの突起収納凹部37に収容される。これにより、最下段以外の保冷容器10の底部14の底部貫通孔26は、下位の保冷容器10の蓋体30の上面により塞がれる。
一方、最下段の保冷容器10の支持突起27は、圧縮変形することにより潰れ、載置面で底部貫通孔26が塞がれる。このようにして、下方に流れやすい冷気を、最下段の保冷容器10の底部貫通孔26を介して、収容空間Sから流れ出すことを防止することができる。このような結果、最下段の保冷容器の収容空間Sの温度上昇を抑え、段積みした各保冷容器の収容空間Sの温度にばらつきを抑え、各保冷容器10の被梱包物の品質にばらつきを抑えることができる。
ここで、例えば、図9(a),(b)に容器本体の変形例に示すように、貫通孔12を形成する下側壁面12aが、貫通孔12を形成する上側壁面12cよりも、保冷容器10の外部に向かって張り出すように、側壁部11に張り出し部13をさらに設けてもよい。
側壁部11に張り出し部13を設けることにより、上面視において、貫通孔12を形成する下側壁面12aが見えるように形成されることになる。この結果、保冷容器10Aの外部からの下方に向かう冷気が下側壁面12aに溜まり易くなり、保冷容器10Aの外部からの冷気を収容空間Sに取り込み易くなる。
なお、本実施形態では、容器本体20に、縁部貫通孔25、底部貫通孔26、および支持突起27等を設けたが、これらは必要に応じて設けられればよく、少なくとも、保冷容器10に貫通孔12が形成されていれば、保冷容器10内の被梱包物を迅速に冷却することができ、かつ、保冷容器10の収容空間Sに収容された被梱包物の保冷性を高めることができる。
<第2実施形態(第2発明)>
第2実施形態に係る保冷容器では、上述した図1〜図9に示す保冷容器の貫通孔の形態を含むものであり、本実施形態では、保冷容器10の貫通孔12をパラメータにより特定する。
第1実施形態(第1発明)に係る保冷容器では、図7および図11(b)に示すように、保冷容器10の側壁部11を水平方向Hから見た側面視において、保冷容器10の外部から貫通孔12を介して収容空間Sが見えなかった。しかしながら、本実施形態では、以下に示すパラメータの条件を満たすことを前提に、例えば、後述する図11(a)に示すように、保冷容器10の側壁部11を水平方向Hから見た側面視において、保冷容器10の外部から貫通孔12を介して収容空間Sが見えるような貫通孔12の形状をも含む。
なお、第1実施形態と同様に、第2実施形態でも、例えば、縁部貫通孔25、底部貫通孔26、および支持突起27等を必要に応じて設けても良く、その他の構成は、第1発明に係る保冷容器10と同じであるので、詳細な説明を省略する。
保冷容器10は、第1発明に係る保冷容器と同様に、容器本体20に蓋体30を被着した状態で、保冷容器10の側壁部11には、保冷容器20の外部と収容空間Sとを連通する貫通孔12が形成されている。
容器本体20に蓋体30を被着し、貫通孔12のみで保冷容器10の外部と収容空間Sとを連通した連通状態で、図10に示すように、X=0.96、Y=0.58、Y=2.875X−1.975で囲まれた範囲を満たすように、貫通孔12が形成されている。
ここで、連通状態とは、例えば、図6および図7に示す保冷容器10の縁部貫通孔25および底部貫通孔26を形成せず、4つの貫通孔12のみで保冷容器10の外部と収容空間Sとを連通した状態のことをいう。
Xは、対恒温槽冷却速度比である。対恒温槽冷却速度比Xは、Vci/Vcoを演算することで得られる値である。具体的には、上述した連通状態の保冷容器10を恒温槽内に配置し、恒温槽を20℃から−10℃まで冷却速度Vco(−1.60)℃/分で冷却する冷却条件で、保冷容器10の収容空間S内の内部温度が15℃に達した時点から−5℃に達した時点までの冷却速度をVci℃/分とする。すなわち、対恒温槽冷却速度比Xは、Vci/−1.60を演算した値である。
対恒温槽冷却速度比Xの最大値は1であり、対恒温槽冷却速度比X=1の場合には、保冷容器10の内部の冷却速度は、外部からの冷却速度と同じであり、保冷容器10は、冷気を取り込み易く冷却性能が極めて高い。しかしながら、その反面、保冷容器10から冷気が逃げやすく、外部から暖気も入り易く、保冷性能が低下する。このような観点から、対恒温槽冷却速度比X≦0.96に設定している。
Yは、対恒温槽加熱速度比である。対恒温槽加熱速度比Yは、Vhi/Vhoを演算することで得られる値である。ここで、上述した連通状態の保冷容器10を恒温槽内に配置し、前記恒温槽を20℃から50℃まで加熱速度Vho(3.61)℃/分で加熱する加熱条件で、保冷容器10内の収容空間D内の内部温度が25℃に達した時点から45℃に達した時点までの加熱速度をVhi℃/分とする。すなわち、対恒温槽加熱速度比Yは、Vhi/3.61を演算した値である。
ここで、対恒温槽加熱速度比Yの最大値も1であり、対恒温槽加熱速度比Y=1の場合には、保冷容器10の内部の加熱速度は、外部からの加熱速度と同じであり、保冷容器10内の被梱包物は、外部からの熱で即時に加熱され昇温することになる。すなわち、保冷特性を確保するためには、対恒温槽加熱速度比Yは、小さいことが好ましい。ただし、対恒温槽加熱速度比Yを小さくするように貫通孔12を形成すると、保冷容器10内の被梱包物を冷却する際に、貫通孔12を介して収容空間Sに冷気をとり込み難くなる。このような観点から、対恒温槽冷却速度比X≧0.58に設定している。
さらに、図10の鎖線で示す、Y=2.875X−1.875の直線は、貫通孔を有しない保冷容器(後述する比較例3(図11(e))参照)に対して、貫通孔を形成したときの特性を示した直線である。貫通孔の個数または開口面積を増やすに従って、対恒温槽冷却速度比X=1、対恒温槽加熱速度比Y=1に近づく。この直線の勾配に相当する2.875は、貫通孔の個数、開口面積等に依存することが分かっており、切片に相当する1.875は、主に、貫通孔の形状に依存することが分かっている。
本実施形態では、このような観点から、被梱包物を迅速に冷却し、冷却された被梱包物の保冷性を高めることができる貫通孔の形状の要件として、Y≦2.875X−1.975を満たすように、設定した。
以上のことから、X≦0.96、X≧0.58、かつY≦2.875X−1.975の条件を満たす、すなわち、X=0.96、Y=0.58、Y=2.875X−1.975で囲まれた範囲を満たすように、保冷容器10に貫通孔12を形成することにより、保冷容器10内の被梱包物を迅速に冷却することができ、かつ、保冷容器10の収容空間Sに収容された被梱包物の保冷性を高めることができる。
以下に、第2発明に係る実施例を以下に説明する。
〔実施例1〕
実施例1に係る保冷容器として、以下に示す発泡倍率60倍のEPS製の保冷容器を準備した。保冷容器10の外寸は、縦674mm、横375mm、高さ155mmであり、保冷容器に、図11(a)に示す貫通孔12を上述した如く4つ設けた。貫通孔12は、上述した如く、容器本体20に蓋体30を被着することにより形成される。
保冷容器10の側壁部11の肉厚は、22.5mmであり、その他の肉厚も、側壁部と略同じである。貫通孔12の外側の開口部は、高さ15mm、幅115mmであり、本実施形態では、貫通孔12を形成する上側壁面12cの一部(外側の一部)および下側壁面12aを、水平方向に対して45°で傾斜させた。
また、上側壁面12cには、保冷容器を水平方向Hから見たときに高さ2mmの隙間が見えるように、側壁部11の中心線から収容空間S側に、水平面12gを形成した。すなわち、実施例1では、保冷容器10の側壁部11を水平方向Hから見た側面視において、保冷容器10の外部から貫通孔12を介して収容空間Sが、高さ2mm、幅115mmの範囲で見えるようになっている。すなわち、実施例1は、第1発明に係る保冷容器の実施例ではない。
なお、実施例1では、貫通孔12の特性を特定すべく、図6および図7に示す保冷容器10如き縁部貫通孔25および底部貫通孔26は形成されておらず、4つの貫通孔12のみで保冷容器10の外部と収容空間Sとを連通している。
〔実施例2〕
実施例1と同様の保冷容器10を準備した。実施例1と相違する点は、図11(b)に示す如き形状の貫通孔12を形成した点である。具体的には、保冷容器10の側壁部11の肉厚、貫通孔12の外側の開口部は同じであり、貫通孔12を形成する上側壁面12cおよび下側壁面12aを、水平方向に対して45°で傾斜させた。
実施例2では、保冷容器10の側壁部11を水平方向Hから見た側面視において、保冷容器10の外部から貫通孔12を介して収容空間Sが、見えない。すなわち、実施例2は、第1発明に係る保冷容器の実施例にも対応する。
〔比較例1〕
実施例1と同様の保冷容器10’を準備した。実施例1と相違する点は、図11(c)に示す如き形状の貫通孔12’を形成した点である。具体的には、保冷容器10’の側壁部11’の肉厚、貫通孔12’の外側の開口部は同じであり、貫通孔12’を形成する下側壁面12aを、保冷容器10’の外側から側壁部11’の肉厚の半分の位置まで水平方向に対して45°で傾斜させ、それより収容空間S’側で、水平面12h’を形成した。
また、比較例1では、実施例1と同様に、保冷容器10’の側壁部11’を水平方向Hから見た側面視において、保冷容器10’の外部から貫通孔12’を介して収容空間S’が、高さ2mm、幅115mmの範囲で見えるようになっている。
なお、図11(c)〜(e)は、比較例1〜3に係る保冷容器の貫通孔を示しており、本発明に含まれないため、図11(a),(b)の部位に対応する符号の末尾には、「’」を付した。
〔比較例2〕
実施例1と同様の保冷容器10’を準備した。実施例1と相違する点は、図11(d)に示す如き形状の貫通孔12’を形成した点である。具体的には、比較例2では、保冷容器10’の側壁部11’の肉厚、貫通孔12’の外側の開口部は同じであり、貫通孔12’を、水平方向Hに沿って形成した。したがって、比較例2では、保冷容器10’の側壁部11’を水平方向Hから見た側面視において、保冷容器10’の外部から貫通孔12’を介して収容空間Sが、高さ15mm、幅115mmの範囲で見えるようになっている。
〔比較例3〕
実施例1と同様の保冷容器10’を準備した。実施例1と相違する点は、図11(e)に示すように、貫通孔を形成していない点である。
<対恒温槽冷却速度比X,対恒温槽加熱速度比Yの測定>
実施例1,2、および比較例1〜3に係る保冷容器に対して、以下の手順で、対恒温槽冷却速度比X,対恒温槽加熱速度比Yを測定した。なお、この測定では、保冷容器には被梱包物は収納せず、上述した連通状態にある。
まず、保冷容器の以下の4点に温度計(ESPECMIC社製RSW−30S)を取り付け、温度推移を記録した。
(1)蓋体内面の対角線の交点(ちょうど中心)
(2)容器本体の長手側の側壁部の内壁面のうち、水平方向に2等分した位置で内天面から50mm鉛直下側の位置
(3)容器本体の長手側の側壁部の内壁面のうち、水平方向に2等分した位置で内底面から10mm鉛直上側の位置。
(4)容器本体の対角線の交点(ちょうど中心)
温度は実験中5秒毎に測定し、この4点の平均温度を保冷容器の収容空間内の内部温度とした。
ESPEC社製の恒温槽PR−4K(恒温槽内寸高さ1,000mm、幅1,000mm、奥行き800mm)の恒温槽の底面から約50mmの高さに網棚を設置し、保冷容器天面の対角線の交点と恒温槽底面の対角線の交点が水平位置で重なるように網棚の上に保冷容器を設置した。
恒温槽底面の対角線の交点から鉛直上に500mmの位置に温湿度計(ESPECMIC社製RSW−21S)を設置し、5秒毎に恒温槽内気温を測定した。
温度計・温湿度計および保冷容器を設置した恒温槽PR−4Kを密閉し、恒温槽温度を20℃に設定し、1時間放置した。この間に容器内気温および恒温槽内気温は約20℃に達し平衡状態となる。
その後、設定温度を−10℃へ変更し、1.5時間の温度推移を測定した。恒温槽内の気温は約19分で−10℃に達し、その冷却速度Vcoは−1.60℃/分であった。また、1.5時間でどの形状においても保冷容器内の気温は−10℃で平衡に達した。
再び恒温槽の設定を20℃に戻し、1時間放置した。この間に容器内気温および恒温槽内気温は約20℃に達し平衡状態となる。
その後、恒温槽の設定温度を50℃へ変更し、1.5時間の間温度推移を測定した。恒温槽内気温は約8分で50℃に達し、その加熱速度Vhoは3.61℃/分であった。また、1.5時間でどの形状においても保冷容器内の気温は50℃で平衡に達した。なお、恒温槽PR−4Kは屋内に設置し、屋内の気温は12〜15℃であった。
得られた恒温槽・保冷容器それぞれの内気温推移から、各保冷容器に対して、次の値を算出した。冷却速度Vci(℃/分)は、15℃に達した時点から−5℃に達した時点までの経過時間(分)で温度変化(20℃)を除すことで算出した。加熱速度Vhi(℃/分)は、25℃に達した時点から45℃に達した時点までの経過時間(分)で温度変化(20℃)を除すことで算出した。
なお、それぞれにおいて20℃〜15℃、−5℃〜−10℃、20℃〜25℃、45℃〜50℃の区間については、恒温槽温度と容器内気温の差が小さくなり温度変化が一定ではない。今回算出に用いた区間については概ね温度変化が一定であり、速度算出が容易であるためこのような計算とした。
各保冷容器に対して、算出した冷却速度Vci・加熱速度Vhiより、対恒温槽冷却速度比Xおよび対恒温槽加熱速度比を算出した。対恒温槽冷却速度比Xは、保冷容器内の冷却速度Vciを恒温槽の冷却速度Vcoで除すことで算出した。対恒温槽加熱速度比Yは、保冷容器内の加熱速度Vhiを恒温槽の加熱速度Vhoで除すことで算出した。これらの値は、それぞれ保冷容器内の温度が外気からどれだけ影響を受けやすいかを表す指標となる。
実施例1,2および比較例1〜3に係る保冷容器の対恒温槽冷却速度比X,対恒温槽加熱速度比Yの測定結果を図10および表1に示す。なお、表1には、実施例1,2および比較例1〜3の貫通孔の形状を形状A〜Eとして示している。なお、形状Eは、貫通孔がなしである。
実施例1および2では、貫通孔12の形状AおよびBとすることにより、図10に示すように、X=0.96、Y=0.58、Y=2.875X−1.975で囲まれた範囲となり、比較例1,2では、貫通孔12’の形状CおよびDとし、比較例3では、貫通孔を設けない形状Eとすることでこれらの範囲から外れている。
実施例1および2に示す貫通孔12の効果を確認するために、以下の評価試験を行った。この試験では、実施例1,実施例2の形状A,Bの貫通孔12を有した、実施例1−1〜1−3,実施例2−1〜2−3に係る保冷容器を準備した。比較例1,2の形状C,Dの貫通孔C,Dを有した比較例1−1,2−1に係る保冷容器を準備した。また、比較例3の形状Eの貫通孔を形成していない比較例3−1,比較例3−2の保冷容器を準備した。なお、保冷容器は、外寸674mm×375mm、高さ155mmであり、側壁部の肉厚は22.5mmである。なお、実施例1−1,2−1,3−1の保冷容器は、上述した実施例1,2,3の保冷容器と同じであり、比較例1−1,2−1,3−1の保冷容器は、上述した比較例1,2,3の保冷容器と同じである。
また、実施例1−2、実施例2−2、比較例3−2では、保冷容器に、図7等に示す縁部貫通孔をさらに形成した。実施例1−3、実施例2−3では、保冷容器に、図7等に示す縁部貫通孔および底部貫通孔を形成した。
<凍結評価:凍結時間の測定>
評価方法としては、各保冷容器に対して、被梱包物(内容物)の凍結時間を測定することにより、凍結評価を行った。まず、各保冷容器内に、被梱包物として15℃に温調したイカ6kgを入れ、容器本体に蓋体を被着させ、−25℃の恒温槽内に、蓋体を閉じた状態の保冷容器を設置し、経時の容器内中心部のイカの温度(箱内内容物温度)を測定した。
保冷容器内の測定温度が−20℃に到達した時間(イカが完全に凍結する時間)を凍結時間とした。この結果を、表2および図12(a)に示した。図12(a)は、恒温槽内の温度プロフィール、実施例2−1、比較例3−1、比較例4に係る保冷容器の箱内内容物の温度プロフィールを示している。
<解凍評価:解凍時間の測定>
評価方法としては、各保冷容器に対して、被梱包物(内容物)の解凍時間を測定することにより、解凍評価を行った。まず、各保冷容器内に、被梱包物として−25℃に温調したイカ6kgを入れ、容器本体に蓋体を被着させ、35℃の恒温槽内に、蓋体を閉じた状態の保冷容器を設置し、経時の容器内中心部のイカの温度(箱内内容物温度)を測定した。保冷容器内の測定温度が2℃に到達した時間(イカの内部が解凍する時間)を解凍時間とした。この結果を、表2および図12(b)に示した。図12(b)は、恒温槽内の温度プロフィール、実施例2−1、比較例3−1、比較例4に係る保冷容器の箱内内容物の温度プロフィールを示している。
なお、図13は、実施例1−1〜1−3、実施例2−1〜2−3、比較例1−1,比較例2−1,比較例3−1,比較例3−2,比較例4に係る保冷容器の凍結時間および解凍時間の関係を示したグラフである。
表2、図12(a)、および図13の結果からも明らかなように、実施例1−1〜1−3の如く、形状Aの貫通孔を有した保冷容器、および、実施例2−1〜2−3の如く、形状Bの貫通孔を有した保冷容器は、比較例1−1,比較例2−1,比較例3−1,比較例3−2の保冷容器に比べて、凍結時間が短い。
一方、表2、図12(b)、および図13の結果からも明らかなように、実施例1−1〜1−3の如く、形状Aの貫通孔を有した保冷容器、および、実施例2−1〜2−3の如く、形状Bの貫通孔を有した保冷容器は、比較例1−1,比較例2−1,比較例4の保冷容器に比べて、解凍時間が長い。
このような結果から、実施例1−1〜1−3および実施例2−1〜2−3の如く、上述した対恒温槽冷却速度比X,対恒温槽加熱速度比Yの関係を有した保冷容器は、冷却性能・保冷性能が良く、貫通孔の一部ないし全部が水平である比較例2および3は保冷性能が劣ることが確認された。
また、図13に示すように、縁部貫通孔を設けた実施例1−2の保冷容器、縁部貫通孔および底部貫通孔を設けた実施例1−3の保冷容器は、実施例1−1の保冷容器に比べて、凍結時間が短くなった。同様に、縁部貫通孔を設けた実施例2−2の保冷容器、縁部貫通孔および底部貫通孔を設けた実施例2−3の保冷容器は、実施例2−1の保冷容器に比べて、凍結時間が短くなった。これにより、保冷容器に、縁部貫通孔および底部貫通孔を設けることにより、保冷容器の冷却速度が向上と考えられる。
なお、一般に、空気は温度上昇によりその密度が減少する(−10℃:1.34kg/m3,20℃:1.21kg/m3,50℃:1.09kg/m3)。そのため、温度の高い空気は上昇する傾向にある。また、その上昇流により自発的な空気の対流が生じ、対流による熱移動を生じることになる。実施例1−1〜1−3および実施例2−1〜2−3の保冷容器は、貫通孔の下側壁面を傾斜させ、保冷容器の外側に向けて貫通孔が上斜め45°に傾いているため、外側からの高温空気の上昇流が比較的流入しにくい傾向にある。一方で、内側の低温空気は容器内に下降流を生じるため貫通孔からの流出も生じにくい。結果、実施例1−1〜1−3および実施例2−1〜2−3の保冷容器は、冷却性能・保冷性能が良いと考えられる。
このように、貫通孔の上側壁面および下側壁面に水平面が形成されず傾斜面を有すること、すなわち、上方から下方に向かって傾斜した貫通孔が形成されていれば、このような効果を期待することができると考えられる。
しかし、比較例1−1および2−1の如く、水平の貫通孔を形成した形状CやDを有した保冷容器は、上述した効果が小さく、保冷容器内外の空気の出入りが大きくなり、高温空気が流入することで保冷性能が低下すると考えられる。
以上、本発明のいくつか実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。