以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
≪インフレーションフィルム≫
本実施形態のインフレーションフィルムは、下記要件(1)及び(2)を満たすポリエチレン組成物を含む。
要件(1):(ア)担体物質、(イ)有機アルミニウム、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物、及び(エ)該(ウ)遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤から調製されるメタロセン担持触媒[I]と、液体助触媒成分[II]とを用いてエチレンを含む単量体を多段重合することにより製造されること、
要件(2):前記多段重合の1段目で得られる重合体(a)のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードD)が200g/10分以上400g/10分以下であること。
本実施形態に用いるポリエチレン組成物は、上述のような特定の触媒系及び重合法により製造されるので、分子量分布が適度に広く、組成分布が狭い。このようなポリエチレン組成物をインフレーション成形することにより、耐衝撃性に優れ、シワの発生も少なく、さらにはクリーン性(低粉性)に優れたインフレーションフィルムが得られる。
本実施形態に用いるポリエチレン組成物のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードT)は、好ましくは0.01g/10分以上0.5g/10分以下であり、より好ましくは0.02g/10分以上0.4g/10分以下であり、さらに好ましくは0.03g/10分以上0.35g/10分以下である。前記ポリエチレン組成物のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードT)が0.01g/10分以上であると、インフレーションフィルムのシワ、外見の観点から好ましく、さらには製膜時の押し出し負荷及び生産性の観点からも好ましい。また、前記ポリエチレン組成物のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードT)が0.5g/10分以下であるとバランスフィルム成形が可能であり、これによりフィルムの強度を確保することができるため好ましい。
メルトマスフローレート(JIS K7210によるコードT)が前記範囲のポリエチレン組成物を得る方法は、特に限定されないが、例えば、重合時に添加する連鎖移動剤(例えば水素)の量を調整する方法が挙げられる。
なお、本実施形態において、メルトマスフローレート(JIS K7210によるコードT)は、JIS K7210に準拠して、コードT:1999(温度=190℃、荷重=5.0kg)の条件で測定した値である。
本実施形態に用いるポリエチレン組成物の密度は、940〜980kg/m3であることが好ましく、940〜975kg/m3であることがより好ましく、943〜971kg/m3であることがさらに好ましく、947〜965kg/m3であることが特に好ましい。ポリエチレン組成物の密度が前記範囲内であると、成膜時に適度なコシ及び強度を持ったフィルムとなる傾向にある。
密度が前記範囲のポリエチレン組成物を得る方法は、特に限定されないが、例えば、共重合させるα‐オレフィン(例えばプロピレンや1−ブテンなど)の量を調整する方法が挙げられる。
なお、本実施形態において、密度は、JIS K7112:1999に準拠して、密度勾配管法(23℃)により測定した値である。
前記メタロセン担持触媒[I]は、(ア)担体物質、(イ)有機アルミニウム、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物、及び(エ)該(ウ)遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤から調製される。
また、前記多段重合の際に液体助触媒成分[II]を用いる。
上述のような触媒系を用いて製造されたポリエチレン組成物は、一般的なチーグラー系触媒で製造されたポリエチレン組成物に比べ分子量分布が狭いため高メルトマスフローレート成分(低分子量成分)のブリードアウトに由来する粉や汚れの発生が少なく、好ましい。
なお、本実施形態に用いるメタロセン担持触媒[I]及び液体助触媒成分[II]は、後述のポリエチレン組成物の製造方法の段落において詳細に説明する。
本実施形態に用いるポリエチレン組成物は、メタロセン担持触媒[I]及び液体助触媒成分[II]を用いてエチレンを含む単量体を多段重合することにより製造される。
前記ポリエチレン組成物の製造に用いる原料の単量体としては、エチレンを含んでいれば特に限定されず、エチレンを単独で用いてもよく、エチレンとエチレン以外の単量体とを併用してもよい。エチレン以外の単量体としては、特に限定されないが、例えば、炭素数3以上20以下のα−オレフィンが挙げられる。炭素数3以上20以下のα−オレフィンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、1−ブテン、プロピレンなどが挙げられる。エチレン以外の単量体を用いる場合、その使用量は、単量体全体100mol%に対して、15.0mol%以下であることが好ましく、0.5〜14.0mol%であることがより好ましく、0.8〜13.0mol%であることがさらに好ましい。エチレン以外の単量体の使用量が前記範囲内であると、得られるポリエチレン組成物は、フィルムに適度なコシ及び強度を与える密度となる傾向にある。
エチレン以外の単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本実施形態に用いるポリエチレン組成物は、前記多段重合の1段目で得られる重合体(a)のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードD)が200g/10分以上400g/10分以下である。
本実施形態に用いるポリエチレン組成物は、前記重合体(a)とは異なるメルトマスフローレート(JIS K7210)の重合体(b)を含むことが好ましい。
本実施形態に用いるポリエチレン組成物は、それぞれメルトマスフローレートの異なる少なくとも2つの重合体(a)及び重合体(b)(以下、順に「成分(a)及び成分(b)」と示す場合がある)を得る段階をその構成に含む2段階以上の連続多段重合により製造されることが好ましい。
成分(a)としては、特に限定されず、エチレンを単独重合させて得られるポリエチレンであってもよく、エチレンとエチレン以外の単量体とを共重合させて得られるエチレン共重合体であってもよいが、ポリエチレンであることが好ましい。また、成分(b)としては、特に限定されず、エチレンを単独重合させて得られるポリエチレンであってもよく、エチレンとエチレン以外の単量体とを共重合させて得られるエチレン共重合体であってもよいが、エチレン共重合体であることが好ましい。
本実施形態に用いるポリエチレン組成物は、ブレンド法により製造したポリエチレン組成物と比較すると、多段重合法により製造することでメルトマスフローレートの異なる2つの成分(a)及び(b)の分散性が向上し、フィッシュアイの発生が抑制できる。また、ブレンド法では、予め製造された二種類のポリエチレンをブレンドする工程が必要になるが、多段重合法においては連続的に重合させることができるため生産性も優れている。
成分(a)は、メルトマスフローレート(JIS K7210によるコードD)が、200g/10分以上400g/10分以下であり、好ましくは220g/10分以上380g/10分以下、より好ましくは240g/10分以上360g/10分以下である。本実施形態に用いるポリエチレン組成物において、上記成分(a)のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードD)は、高メルトマスフローレート成分(低分子量成分)のブリードアウトを抑制するためには低い方が好ましい。しかしながら、この成分(a)のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードD)を200g/10分未満まで低くすると、ポリエチレン組成物は、溶融粘度が高くなり、一般的な成膜条件で成膜する際にメルトフラクチャーによるシワの発生が懸念される。そのため多段重合の成分(a)を得る段階において、重合器で製造される成分(a)のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードD)が200g/10分以上であると、フィルムのシワ、外見の観点から好ましい。一方、成分(a)のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードD)が400g/10分以下であると高メルトマスフローレート成分(低分子量成分)のブリードアウトが抑制されることから好ましい。
メルトマスフローレート(JIS K7210によるコードD)が前記範囲の成分(a)を得る方法は、特に限定されないが、例えば、重合時に添加する連鎖移動剤(例えば水素)の量を調整する方法が挙げられる。重合時に添加する連鎖移動剤の量を多くすると、メルトマスフローレート(JIS K7210)が高くなる傾向にある。
なお、本実施形態において、メルトマスフローレート(JIS K7210によるコードD)は、JIS K7210に準拠して、コードD:1999(温度=190℃、荷重=2.16kg)の条件で測定した値である。
また、成分(a)のポリエチレン組成物全体に対する割合は、好ましくは30重量%以上70重量%以下、より好ましくは40重量%以上65重量%以下、更に好ましくは50重量%以上60重量%以下である。成分(a)の割合が30重量%以上であるとポリエチレン組成物の流動性、加工性の観点から好ましく、成分(a)の割合が70重量%以下であるとフィルムのフィッシュアイを低減できるため好ましい。
なお、本実施形態において、ポリエチレン組成物中の成分(a)の割合は、最終的に得られたポリエチレン組成物の重量に対する一段目で得られた成分(a)の重量の割合として算出した値である。
本実施形態において、ポリエチレン組成物のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードT)が0.01g/10分以上0.5g/10分以下であり、成分(a)のJIS K7210によるコードDのメルトマスフローレートが200g/10分以上400g/10分以下であり、ポリエチレン組成物全体に対する成分(a)の割合が30重量%以上70重量%以下である場合、成分(b)のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードT)は6×10-15g/10分以上4×10-3g/10分以下程度の範囲にあると見積もられている。ただし、現在の技術では、多段重合で製造されたポリエチレン組成物において、特定の重合器で重合された成分のみを分離する方法が得られていないことから、2段目以降で重合された成分のメルトマスフローレートの実測は困難であり、上記の成分(b)のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードT)は、ポリエチレン組成物と高メルトマスフローレート成分(成分(a))のメルトマスフローレート値から推算された値である。
<ポリエチレン組成物の製造方法>
次に、本実施形態に用いるポリエチレン組成物の製造方法について説明する。
本実施形態に用いるポリエチレン組成物の製造方法は、
メタロセン担持触媒[I]と、液体助触媒成分[II]とを用いてエチレンを含む単量体を多段重合する工程を含み、
前記多段重合の一段目で得られる重合体(a)のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードD)が200g/10分以上400g/10分以下である。前記多段重合の一段目で得られる重合体(a)のメルトマスフローレート(JIS K7210によるコードD)は、好ましくは220g/10分以上380g/10分以下、より好ましくは240g/10分以上360g/10分以下である。
また、前記多段重合の最終段で得られるポリエチレン組成物の物性等については上述したとおりである。
本実施形態に用いるポリエチレン組成物の製造方法は、メタロセン担持触媒[I]を調製する工程をさらに含むことが好ましい。
本実施形態に用いるポリエチレン組成物の製造方法の好ましい具体的な形態としては、特に限定されないが、例えば、メタロセン担持触媒[I]を予め水素と接触させた後、液体助触媒成分[II]と共に重合反応器へ導入し、エチレン単独の重合又はエチレンと炭素数3以上20以下のα−オレフィンとの共重合を行う方法が挙げられる。
この製造方法で得られる直鎖状ポリエチレン(α)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により求められるMw/Mn、分子量分布が狭いことはもちろん、さらに高メルトマスフローレート成分(低分子量成分)であるオリゴマー成分を低減することができると共に、製法において塩素を含まないため、クリーン性に優れている。
重合法は公知の各種方法を使用でき、特に限定されないが、例えば、不活性ガス中での流動床式気相重合又は撹拌式気相重合、不活性溶媒中でのスラリー重合、モノマーを溶媒とするバルク重合などが挙げられる。重合法としては、不活性溶媒中でのスラリー重合が好ましい。
(メタロセン担持触媒[I])
メタロセン担持触媒[I]としては、(ア)担体物質、(イ)有機アルミニウム、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物、及び(エ)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤から調製されたメタロセン担持触媒を用いる。
(ア)担体物質としては、特に限定されず、有機担体、無機担体のいずれでもよい。
有機担体としては、特に限定されないが、好ましくは、炭素数2以上20以下のα−オレフィンの重合体、芳香族不飽和炭化水素重合体、及び極性基含有重合体などが挙げられる。
炭素数2以上20以下のα−オレフィンの重合体としては、特に限定されないが、例えば、エチレン樹脂、プロピレン樹脂、1−ブテン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−1−ヘキセン共重合体樹脂、プロピレン−1−ブテン共重合体樹脂及びエチレン−1−ヘキセン共重合体などが挙げられる。
芳香族不飽和炭化水素重合体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン樹脂及びスチレン−ジビニルベンゼン共重合体樹脂などが挙げられる。
極性基含有重合体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、アミド樹脂、及びカーボネート樹脂などが挙げられる。
無機担体としては、特に限定されないが、好ましくは、無機酸化物、無機ハロゲン化物、無機の炭酸塩、硫酸塩、及び硝酸塩、並びに水酸化物などが挙げられる。
無機酸化物としては、特に限定されないが、例えば、SiO2、Al2O3、MgO、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO、SiO2−MgO、SiO2−Al2O3、SiO2−MgO及びSiO2−V2O5などが挙げられる。
無機ハロゲン化合物としては、特に限定されないが、例えば、MgCl2、AlCl3及びMnCl2などが挙げられる。
無機の炭酸塩、硫酸塩、及び硝酸塩としては、特に限定されないが、例えば、Na2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2などが挙げられる。
水酸化物としては、特に限定されないが、例えば、Mg(OH)2、Al(OH)3、Ca(OH)2などが挙げられる。
(ア)担体物質としては、SiO2であることが好ましい。
(ア)担体物質の粒子径は任意であるが、粒子径分布としては、1μm以上3000μm以下であることが好ましく、粒子の分散性の見地から、粒子径分布は10μm以上1000μm以下の範囲内であることが、より好ましい。
なお、本実施形態において、(ア)担体物質の粒子径は、島津製作所製SALD−2100により測定した値である。
(ア)担体物質は必要に応じて(イ)有機アルミニウムで処理される。
(イ)有機アルミニウムとしては、一般式:(−Al(R)O−)n(式中、Rは炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/又はRO基で置換されていてもよい。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である。)で示される直鎖状又は環状重合体などが挙げられる。
(イ)有機アルミニウムとしては、特に限定されないが、上記一般式において、例えば、Rがメチル基、エチル基、イソブチルエチル基である、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、及びイソブチルエチルアルモキサンである直鎖状又は環状重合体などが挙げられる。
(イ)有機アルミニウムとしては、特に限定されないが、上記以外にも、例えば、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲノアルミニウム、セスキアルキルハロゲノアルミニウム、アルメニルアルミニウム、ジアルキルハイドロアルミニウム、及びセスキアルキルハイドロアルミニウムなどが挙げられる。
トリアルキルアルミニウムとしては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、及びトリオクチルアルミニウムなどが挙げられる。
ジアルキルハロゲノアルミニウムとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルアルミニウムクロライド及びジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルハロゲノアルミニウムなどが挙げられる。
セスキアルキルハロゲノアルミニウムとしては、特に限定されないが、例えば、セスキメチルアルミニウムクロライド及びセスキエチルアルミニウムクロライドなどが挙げられる。
(イ)有機アルミニウムとしては、特に限定されないが、例えば、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、及びセスキエチルアルミニウムハイドライドなどを挙げることもできる。
(イ)有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、又はジイソブチルアルミニウムハイドライドであることが好ましい。
(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(1)で示される化合物を挙げられる。
上記式(1)中、Mは1つ以上の配位子Lとη5結合をしている酸化数+2、+3、+4の長周期型周期律表第4族の遷移金属である。遷移金属としては、チタニウムが好ましい。
上記式(1)中、Lは環状η結合性アニオン配位子であり、各々独立にシクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、又はオクタヒドロフルオレニル基であり、これらの基は20個までの非水素原子を含む炭化水素基、ハロゲン、ハロゲン置換炭化水素基、アミノヒドロカルビ基、ヒドロカルビオルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基から各々独立に選ばれる1から8の置換基を任意に有していてもよく、2つのLが20個までの非水素原子を含むヒドロカルバジイル、ハロヒドロカルバジイル、ヒドロカルビレンオキシ、ヒドロカルビレンアミノ、ジラジイル、ハロシラジイル、アミノシランなどの2価の置換基により結合されていてもよい。
上記式(1)中、Xは各々独立に、60個までの非水素原子を有する、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、又はM及びLに各々1個ずつの価数で結合する2価のアニオンσ結合型配位子である。
上記式(1)中、X’は各々独立に、炭素数4以上40以下からなるホスフィン、エーテル、アミン、オレフィン、及び/又は共役ジエンから選ばれる中性ルイス塩基配位性化合物である。上記式(1)中、lは1又は2の整数である。
上記式(1)中、pは0以上2以下の整数であり、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子であるか、M及びLに各々1個ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数よりもl以上少なく、XがMと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数よりもl+1以上少ない。
上記式(1)中、qは0、1又は2の整数である。
(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物としては、上記式(1)でl=1である化合物が好ましい。
(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物の好適な化合物としては、下記式(2)で示される化合物が挙げられる。
上記式(2)中、Mは形式酸化数+2、+3又は+4のチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムであり、チタニウムであることが好ましい。
上記式(2)中、R3は各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合基であり、各々20個までの非水素原子を有することができる。また、上記式(2)中、近接するR3同士がヒドロカルバジイル、ジラジイル、又はゲルマジイルなどの2価の誘導体を形成して環状となっていてもよい。
上記式(2)中、X”は各々独立に、ハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルアミノ基、又はシリル基であり、各々20個までの非水素原子を有しており、また2つのX”が炭素数5以上30以下の中性共役ジエン又は2価の誘導体を形成してもよい。
上記式(2)中、Yは、O、S、NR*又はPR*である。
上記式(2)中、ZはSiR* 2、CR* 2、SiR* 2SiR* 2、CR* 2CR* 2、CR*=CR*、CR* 2SiR* 2、又はGeR* 2である。
R*は各々独立に、炭素数1以上12以下のアルキル基又はアリール基である。
上記式(2)中、nは1以上3以下の整数である。
(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物のより好適な化合物としては、下記式(3)又は下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
上記式(3)及び式(4)中、Mはチタニウム、ジルコニウム、又はハフニウムであり、チタニウムであることが好ましい。
上記式(3)及び式(4)中、R3は各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン又はこれらの複合基であり、各々20までの非水素原子を有することができる。
上記式(3)及び式(4)中、Z、Y、X及びX’は、前出の式(2)中のZ及びY、並びに式(1)中のX及びX’と同義である。
上記式(3)及び式(4)中、pは0以上2以下の整数であり、qは0又は1の整数である。
ここで、上記式(3)及び式(4)中、pが2でqが0の場合、Mの酸化数は+4であり、かつXはハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルフォスフィド基、ヒドロカルビルスルフィド基、シリル基又はこれらの複合基であり、20個までの非水素原子を有している。また、上記式(3)及び式(4)中、pが1でqが0の場合、Mの酸化数は+3であり、かつXはアリル基、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル基又は2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基から選ばれる安定化アニオン配位子であるか、又はMの酸化数が+4であり、かつXが2価の共役ジエンの誘導体であるか、又はMとXが共にメタロシクロペンテン基を形成している。さらに、pが0でqが1の場合、Mの酸化数は+2であり、かつX’は中性の共役又は非共役ジエンであって任意に1つ以上の炭化水素で置換されていてもよく、X’は40までの炭素原子を含み得るものであり、Mとπ型錯体を形成している。
(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物のさらに好適な化合物としては、下記式(5)又は下記式(6)で示される化合物が挙げられる。
上記式(5)及び式(6)中、Mはチタニウムである。
上記式(5)及び式(6)中、R3は各々独立に、水素又は炭素数1以上6以下のアルキル基である。
上記式(5)及び式(6)中、Yは、O、S、NR*、又はPR*であり、Z*は、SiR* 2、CR* 2、SiR* 2SiR* 2、CR* 2CR* 2、CR*=CR*、CR* 2SiR2、又はGeR* 2である。
R*は各々独立に、水素、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基又はこれらの複合基であり、R*は20個までの非水素原子を有することができ、必要に応じてZ*中の2つのR*同士又はZ*中のR*とY中のR*が環状となっていてもよい。
上記式(5)及び式(6)中、pは0以上2以下の整数であり、qは0又は1の整数である。
ここで、上記式(5)及び式(6)中、pが2でqが0の場合、Mの酸化数は+4であり、かつXは各々独立に、メチル基又はヒドロベンジル基である。また、pが1でqが0の場合、Mの酸化数は+3であり、かつXが2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基であるか、又はMの酸化数が+4であり、かつXが2−ブテン−1,4−ジイルである。さらに、pが0でqが1の場合、Mの酸化数は+2であり、かつX’は1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン又は1,3−ペンタジエンである。
前記ジエン類は金属錯体を形成する非対称ジエン類を例示したものであり、実際には各幾何異性体の混合物である。
(エ)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤(以下、単に「(エ)活性剤」と記載する場合がある。)としては、特に限定されないが、例えば、下記式(7)で示される化合物が挙げられる。
メタロセン担持触媒[I]においては、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と上記(エ)活性化剤により形成される錯体が、触媒活性種として高いオレフィン重合活性を示す。
上記式(7)中、[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。
上記式(7)中、[MmQt]d-は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属又はメタロイドであり、Qは各々独立に、ヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキサイド基、アリロキサイド基、炭化水素基、又は炭素数20個までの置換炭化水素基である。ここで、上記式(7)中、ハライドであるQは1個以下である。
上記式(7)中、mは1以上7以下の整数であり、tは2以上14以下の整数であり、dは1以上7以下の整数であり、t−m=dである。
(エ)活性化剤の好適な化合物としては、下記式(8)で示される化合物が挙げられる。
上記式(8)中、[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。
上記式(8)中、[MmQw(Gu(T−H)r)z]d-は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属又はメタロイドであり、Qは各々独立に、ヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキシド基、アリロキサイド基、炭化水素基、又は炭素数20個までの置換炭化水素基である。ここで、上記式(8)中、ハライドであるQは1個以下である。
上記式(8)中、GはM及びTと結合するr+1の価数を持つ多価炭化水素基であり、TはO、S、NR又はPRであり、Rはヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基、若しくは水素である。
上記式(8)中、mは1以上7以下の整数であり、wは0以上7以下の整数であり、uは0又は1の整数であり、rは1以上3以下の整数であり、zは1以上8以下の整数であり、w+z−m=dである。
(エ)活性化剤のより好適な化合物としては、下記式(9)で示される化合物が挙げられる。
上記式(9)中、[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。
上記式(9)中、[BQ3Q*]-は相溶性の非配位性アニオンであり、Bはホウ素原子、Qはペンタフルオロフェニル基であり、Q*は置換基としてOH基を1つ有する炭素数6以上20以下の置換アリール基である。
相溶性の非配位性アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)フェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオロメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル、)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−(4’−ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレートなどが挙げられ、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレートであることが好ましい。
相溶性の非配位性アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、上記例示のボレートのヒドロキシ基がNHRで置き換えられたボレートを挙げることができる。ここでRは、メチル基、エチル基又はt−ブチル基であることが好ましい。
プロトン付与のブレンステッド酸としては、特に限定されないが、例えば、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリ(n−オクチル)アンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジブチルメチルアンモニウム、ジブチルエチルアンモニウム、ジヘキシルメチルアンモニウム、ジオクチルメチルアンモニウム、ジデシルメチルアンモニウム、ジドデシルメチルアンモニウム、ジテトラデシルメチルアンモニウム、ジヘキサデシルメチルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、ジイコシルメチルアンモニウム、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウムなどのようなトリアルキル基置換型アンモニウムカチオンが挙げられ、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチルベンジルアニリニウムなどのようなN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンなども挙げられる。
(液体助触媒成分[II])
液体助触媒成分[II]は下記式(10)で示される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物[III−1](以下、単に「有機マグネシウム化合物[III−1]」と記載する場合がある。)と、アミン、アルコール及びシロキサン化合物から選ばれる化合物[III−2](以下、単に「化合物[III−2]」と記載する場合がある。)との反応によって合成される、炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物であることが好ましい。
上記式(10)中、M1は周期律表第1乃至3族に属する金属原子であり、R4及びR5は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、a、b、c、dは次の関係を満たす実数である。
0≦a、0<b、0≦c、0≦d、c+d>0、かつe×a+2b=c+d(eはM1の原子価である。)
有機マグネシウム化合物[III−1]と化合物[III−2]との反応には特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素及び/又はベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などの不活性反応媒体中、室温から150℃の間で反応させることが好ましい。
液体助触媒成分を製造する反応において添加する順序については特に限定されないが、例えば、有機マグネシウム化合物[III−1]中に化合物[III−2]を添加する方法、化合物[III−2]に有機マグネシウム化合物[III−1]を添加する方法、又は両者を同時に添加する方法のいずれの方法を用いてもよい。
有機マグネシウム化合物[III−1]と化合物[III−2]との反応比率については特に限定されないが、例えば、反応により合成される液体助触媒成分[II]に含まれる全金属原子に対する化合物[III−2]のモル比が0.01以上2以下(好ましくは0.1以上1以下)であるように化合物[III−2]を添加することが好ましい。
液体助触媒成分[II]は不純物のスカベンジャーとして用いられる。液体助触媒成分[II]は、高濃度であっても重合活性を低下させることが少なく、したがって広い濃度範囲で高い重合活性を発現させることができる。このため液体助触媒成分[II]を含むオレフィン重合用触媒は、重合活性の制御が容易である。
液体助触媒成分[II]は1種で使用してもよいし2種類以上混合して使用してもよい。
重合に使用する際の液体助触媒成分[II]の濃度については特に限定されないが、液体助触媒成分[II]に含まれる全金属原子のモル濃度が0.001mmol/リットル以上、10mmol/リットル以下であることが好ましく、0.01mmol/リットル以上、5mmol/リットル以下であることがより好ましい。
該モル濃度が0.001mmol/リットル以上であれば、不純物のスカベンジャーとしての作用を十分に発揮することができ、10mmol/リットル以下であれば、重合活性を十分に発揮させることができる。
有機マグネシウム化合物[III−1]は上記式(10)で示される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物である。
上記式(10)として、有機マグネシウム化合物[III−1]は、炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、(R4)2Mg及びこれらと他の金属化合物との錯体の全てを包含するものである。記号a、b、c、dの関係式e×a+2b=c+dは、金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
上記式(10)中、R4及びR5の炭素数2以上20以下の炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基であり、アルキル基であることが好ましく、一級アルキル基であることがより好ましい。
上記式(10)中、a>0の場合、金属原子M1としては、周期律表第1乃至3族からなる群に属する金属元素が使用でき、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどが挙げられるが、特にアルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛が好ましい。
上記式(10)中、金属原子M1に対するマグネシウムのモル比b/aには特に制限はないが、0.1以上50以下の範囲が好ましく、0.5以上10以下の範囲がより好ましい。
上記式(10)中、a=0の場合、有機マグネシウム化合物[III−1]が炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物であることが好ましく、上記式(10)のR4及びR5が次に示す三つの群(i)、(ii)、(iii)のいずれか一つであることがさらに好ましい。
(i)R4及びR5の少なくとも一方が炭素原子数4以上6以下である二級又は三級のアルキル基であり、好ましくはR4及びR5が共に炭素原子数4以上6以下であり、かつ少なくとも一方は二級又は三級のアルキル基である。
(ii)R4及びR5が炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であり、好ましくはR4が炭素原子数2又は3のアルキル基であり、R5が炭素原子数4以上のアルキル基である。
(iii)R4及びR5の少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であり、好ましくはR4及びR5が共に炭素原子数6以上のアルキル基である。
(i)において炭素原子数4以上6以下である二級又は三級のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、1−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−エチルプロピル基などが挙げられ、1−メチルプロピル基が好ましい。
(ii)において炭素原子数2又は3のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、エチル基、プロピル基が挙げられ、エチル基が好ましい。また、炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられ、ブチル基、ヘキシル基が好ましい。
(iii)において炭素原子数6以上の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基などが挙げられ、アルキル基である方が好ましく、ヘキシル基であることがより好ましい。
有機マグネシウム化合物[III−1]として、一般にアルキル基の炭素原子数を増やすと炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘性が高くなる傾向があり、必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくないことがある。有機マグネシウム化合物[III−1]は炭化水素溶液として用いられるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミンなどのコンプレックス化剤をわずかに含有してもよい。
化合物[III−2]は、アミン、アルコール及びシロキサン化合物からなる群に属する化合物である。
アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族、脂環式又は芳香族アミンが挙げられる。
アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジンなどが挙げられる。
アルコール化合物としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1,1−ジメチルエタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−メチルペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−エチル−4−メチル−1−ペンタノール、2−プロピル−1−ヘプタノール、2−エチル−5−メチル−1−オクタノール、1−オクタノール、1−デカノール、シクロヘキサノール、フェノールが挙げられ、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール及び2−エチル−1−ヘキサノールが好ましい。
シロキサン化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(11)で示される構成単位を有するシロキサン化合物が挙げられる。
シロキサン化合物は1種類又は2種類以上の構成単位から成る2量体以上の鎖状又は環状の化合物の形で用いることができる。
上記式(11)中、R6及びR7は、水素、炭素原子数1以上30以下の炭化水素基又は炭素原子数1以上40以下の置換された炭化水素基なる群より選ばれる基である。
炭素原子数1以上30以下の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基、ビニル基が挙げられる。炭素原子数1以上40以下の置換された炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、トリフルオロプロピル基が挙げられる。
シロキサン化合物として、特に限定されないが、例えば、対称ジヒドロテトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサン、ペンタメチルトリヒドロトリシロキサン、環状メチルヒドロテトラシロキサン、環状メチルヒドロペンタシロキサン、環状ジメチルテトラシロキサン、環状メチルトリフルオロプロピルテトラシロキサン、環状メチルフェニルテトラシロキサン、環状ジフェニルテトラシロキサン、(末端メチル封塞)メチルヒドロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、(末端メチル封塞)フェニルヒドロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが好ましい。
<その他の添加剤>
本実施形態に用いるポリエチレン組成物には、酸化防止剤、老化防止剤、耐熱安定剤、耐候性安定剤、紫外線吸収剤、塩素吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、スリップ剤、滑剤、アンチブロッキング剤、核剤、顔料、染料、可塑剤、難燃剤、無機充填剤、有機充填剤等の添加剤を含んでいてもよいが、添加剤のブリードアウトに由来する粉や汚れの発生を低減させる観点からは、当該添加剤を含まない方が好ましい。
本実施形態に用いるポリエチレン組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記以外の高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、ポリ−1−ブテン等の他の熱可塑性樹脂を含有することもできる。
≪インフレーションフィルムの製造方法≫
本実施形態のインフレーションフィルムの製造方法は、例えば、上述のポリエチレン組成物を成形する工程を含む。
本実施形態のインフレーションフィルムを製造する際の成形加工温度は、特に限定されないが、安定した成形加工ができることから150℃以上250℃以下の範囲が好ましい。
本実施形態のインフレーションフィルムは、空冷インフレーション成形法のバランス成形法で製造されることが好ましい。フィルムを製造する際のブロー比は、フィルムの使用目的によっても異なるが、縦方向と横方向との機械的強度のバランスが良いフィルムを得るには、3.0以上にすることが好ましい。
本実施形態のインフレーションフィルムのJIS K7130による厚さは、フィルムの使用目的によっても異なるが、経済性や加工性等の点から、5μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以上70μm以下であり、さらに好ましくは15μm以上50μm以下である。
本実施形態のインフレーションフィルムは、ヘプタン溶出試験において、ヘプタン抽出率が3.0質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。ヘプタン抽出率の下限は特に限定されないが、例えば、0.1質量%である。ヘプタン抽出率が前記上限値以下であると、高メルトマスフローレート成分(低分子量成分)がブリードアウトすることに由来する粉や汚れの発生を低減できるため好ましい。
ヘプタン抽出率が前記範囲のインフレーションフィルムは、上述のポリエチレン組成物を成形することにより得ることができる。
なお、本実施形態において、ヘプタン抽出率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明について、以下実施例により具体的に説明する。尚、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。実施例及び比較例における各成分等の調製及び物性評価は、以下の方法によって実施した。
[メタロセン担持触媒[I]の調製]
シリカQ−6[富士シリシア社(日本国)製]を、窒素雰囲気下、400℃で5時間焼成し、脱水した。容量1.8リットルのオートクレーブにこの脱水シリカ40gを入れ、ヘキサン800ccを加えて分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーを攪拌下50℃に保ちながらトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/リットル)を60cc加え、その後2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させ、トリエチルアルミニウム処理されたシリカと上澄み液とを含む反応混合物を得た。該トリエチルアルミニウム処理されたシリカ(以下「成分[IV]」とも記載する。)は、全ての表面水酸基がトリエチルアルミニウムによりキャッピングされていた。その後、得られた反応混合物中の上澄み液をデカンテーションによって除去することにより成分[IV]を含む固形分を得た。該デカンテーションによって反応混合物から上澄み液中の未反応のトリエチルアルミニウムが除去された。その後、該固形分にヘキサンを適量加え、成分[IV]のヘキサンスラリー800ccを得た。
一方、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体」と記載する。)200mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]1000ccに溶解し、溶液を得た。該溶液に、予めトリエチルアルミニウム及びジブチルマグネシウムより合成した組成式AlMg6(C2H5)3(n−C4H9)12の1mol/リットルヘキサン溶液を20cc加え、更にヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1mol/リットルに調整し、成分[V]を得た。
また、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と記載する。)5.7gをトルエン50ccに添加して溶解し、ボレートの100mmol/リットルトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムの1mol/リットルヘキサン溶液5ccを室温で加え、さらにヘキサンを加えて溶液中のボレート濃度が70mmol/リットルとなるようにして混合溶液を得た。その後、得られた混合溶液を室温で1時間攪拌して反応を行い、ボレートを含む反応混合物を得た。
ボレートを含むこの反応混合物46ccを、上記で得られた成分[IV]のスラリー800ccに15℃以上20℃以下で攪拌しながら加え、ボレートを物理吸着によりシリカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。さらに、得られたスラリーに、上記で得られた成分[V]のうち32ccを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応させた。こうしてシリカと、ヘキサンを主とする液相とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成されているメタロセン担持触媒[I−1]を得た。
[液体助触媒成分[II]の調製]
有機マグネシウム化合物[III−1]として、AlMg6(C2H5)3(n−C4H9)12で示される有機マグネシウム化合物を使用した。化合物[III−2]として、メチルヒドロポリシロキサン(25℃における粘度:20センチストークス)を使用した。
200ccのフラスコに、ヘキサン40ccとAlMg6(C2H5)3(n−C4H9)12を、Mg及びAlの総量として37.8mmolとを攪拌しながら添加し、25℃でメチルヒドロポリシロキサン2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40ccを攪拌しながら添加し、その後80℃に温度を上げて3時間、攪拌下に反応させることにより、液体助触媒成分[II−1]を調製した。
[チーグラー触媒の調製]
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、トリクロルシランを2mol/リットルのn−ヘプタン溶液として3リットル仕込み、攪拌しながら65℃に保ち、組成式AlMg6(C2H5)3(n−C4H9)6.4(O−n−C4H9)5.6で示される有機マグネシウム成分のn−ヘプタン溶液7リットル(マグネシウム換算で5mol)を1時間かけて加え、更に65℃にて1時間攪拌下反応させた。反応終了後、上澄み液を除去した反応物を、n−ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体物質スラリーから固体を分離し、乾燥した。得られた固体を分析した結果、固体1グラム当たり、Mgを7.45mmolを含有していた。
このうち固体500gを含有するスラリーを、n−ブチルアルコール1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.93リットルとともに、攪拌下50℃で1時間反応させた。反応終了後、上澄み液を除去した反応物を、7リットルのn−ヘキサンで1回洗浄し、スラリーを得た。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1mol/リットルのn−ヘキサン溶液1.3リットルを攪拌下加えて1時間反応させた。反応終了後、上澄み液を除去した反応物を、7リットルのn−ヘキサンで2回洗浄し、スラリーを得た。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットル及び四塩化チタン1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルを加えて、2時間反応した。反応終了後、得られた反応物から、上澄み液を除去し、固体触媒を単離した。単離した固体触媒を遊離のハロゲンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。この固体触媒は2.3重量%のチタンを有していた。
[ポリエチレン組成物の造粒]
ポリエチレン組成物は、日本製鋼株式会社製二軸押出機(TEX44HCT−49PW−7V)を用い、200℃にて、押出し量35kg/時間で押出して造粒した(以後造粒物を「ペレット」とも表記する)。
[ポリエチレン組成物を含むインフレーションフィルムの製法]
造粒したポリエチレン組成物を、株式会社プラコー製押出機K−40を用い、シリンダー温度200℃、ダイ温度200℃、押出し量15kg/時間、引き取り速度20m/分、ブロー比3.0、フロスト高さを400mmとしたインフレーションフィルム成形(以下「バランスフィルム成形」とも記す。)することにより、厚さ20μmのインフレーションフィルムを成形した。
[評価方法]
物性測定方法、評価方法は以下の通りである。
<ペレット物性>
(1)メルトマスフローレート測定
JIS K7210 コードD:1999(温度=190℃、荷重=2.16kg)又はJIS K7210 コードT:1999(温度=190℃、荷重=5.0kg)によりメルトマスフローレートを測定した。以下ではメルトマスフローレートを「MFR」とも表記し、特に重合の一段目でのMFRを「1st MFR」とも表記し、ポリエチレン組成物全体のMFRを「Final MFR」とも表記する。また、以下ではコードDによるMFRを「MFR(コードD)」とも表記し、コードTによるMFRを「MFR(コードT)」とも表記する。
(2)密度測定
JIS K7112:1999、密度勾配管法(23℃)により密度を測定した。
(3)低分子量成分(成分(a))割合
ポリエチレン組成物全体における低分子量成分の割合は、最終的に得られたポリエチレン組成物の重量に対する一段目で得られた成分(a)の重量の割合として算出した。
<インフレーションフィルム物性>
(4)衝撃強度測定
JIS K7124−1自由落下のダート法による衝撃試験方法によりインフレーションフィルムの衝撃強度を測定した。該測定による衝撃強度に基づき、インフレーションフィルムの耐衝撃強度を以下のとおり評価した。
○:衝撃強度が100g以上であり、耐衝撃強度に優れる。
×:衝撃強度が100g未満であり、耐衝撃強度に劣る。
(5)ヘプタン抽出率
ノルマルヘプタン(広島和光社製、特級)を溶媒として、ソックスレー抽出法によりインフレーションフィルムにおけるヘプタン抽出率の評価を以下のとおり行った。サンプルフィルム800cm2を円筒ろ紙中に仕込み、50℃の乾燥器中にて24時間乾燥させた。その後、円筒ろ紙及びフィルムサンプルをソックスレー抽出装置にセットし、還流回数25回/1時間にてソックスレー抽出を6時間行った。次に円筒ろ紙及びフィルムサンプルを80℃、3時間減圧乾燥した後、以下の式にてノルマルヘプタン抽出率を求めた。
ノルマルヘプタン抽出率(%)=(抽出前のフィルムサンプル重量−抽出後のフィルムサンプル重量)/抽出前のフィルムサンプル重量×100
(6)低粉性評価
インフレーションフィルムを50℃で72時間加熱し、23℃で1時間冷却してフィルムサンプルを得た。その後、固定ロールに貼りつけた黒色のフェルト布に引取速度8m/分で100mのフィルムサンプルを接触させ、フィルムサンプルの粉をフェルト布上に集積させた。集積した粉の量や集積状態を目視観察し、インフレーションフィルムの低粉性を以下のとおり評価した。
◎:粉の発生がない、又はわずかに粉が発生しているが粉の集積が部分的であり、低粉性に優れる。
○:粉の量や集積状態が「◎」と「×」との中間であり、低粉性にやや優れる。
×:粉が多く発生しており、フィルムとフェルト布とが接触し始める部分に帯状に連続的に粉が集積しており、低粉性に劣る。
上記に示した評価基準のうち、「◎」及び「○」を合格とし、「×」を不合格とした。
(7)フィルムのシワ
上記インフレーションフィルムの製法に基づきフィルムを成形する際の成形開始から2時間経過後のフィルムを目視で確認し、シワの有無を判断した。判断基準を以下に示す。
○:フィルムにシワ無し。
×:フィルムにシワ有り。
[実施例1]
上記で調製したメタロセン担持触媒[I−1]及び液体助触媒成分[II−1]、並びに溶媒としてヘキサン、モノマーとしてエチレンを用いて、連続二段重合を行うことで高密度ポリエチレン組成物を製造した。一段目の重合器における温度は75℃、全圧力は0.38MPaとし、二段目の重合器における温度は75℃、全圧力は0.79MPaとした。また、二段目の重合器ではコモノマーとして1−ブテンを0.35mol%加えた。
一段目の重合において生成した高密度ポリエチレンは、密度が973kg/m3、MFR(コードD)が283g/10分であった。最終的に製造された高密度ポリエチレン組成物は、密度が952kg/m3、MFR(コードT)が0.33g/10分であった。これらのMFRの結果から、得られた高密度ポリエチレン組成物は、一段目の重合において生成した高密度ポリエチレン(重合体(a))とは異なるメルトマスフローレート(JIS K7210)の重合体(b)を含むことがわかった。
得られた高密度ポリエチレン組成物のパウダーを上記の方法で造粒してペレットを得た。さらに、得られた高密度ポリエチレン組成物のペレットを上記の方法でバランスフィルム成形してインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの特性評価の結果を表1に示す。
[参考例1]
一段目の重合器における温度を77℃、全圧力を0.2MPa、二段目の重合器における全圧力を0.5MPa、コモノマー濃度を0.4mol%とした以外は実施例1と同様にして高密度ポリエチレン組成物を製造した。
一段目の重合において生成した高密度ポリエチレンは、密度が975kg/m3、MFR(コードD)が380g/10分であった。最終的に製造された高密度ポリエチレン組成物は、密度が952kg/m3、MFR(コードT)が0.37g/10分であった。これらのMFRの結果から、得られた高密度ポリエチレン組成物は、一段目の重合において生成した高密度ポリエチレン(重合体(a))とは異なるメルトマスフローレート(JIS K7210)の重合体(b)を含むことがわかった。
得られた高密度ポリエチレン組成物のパウダーを上記の方法で造粒してペレットを得た。さらに、得られた高密度ポリエチレン組成物のペレットを上記の方法でバランスフィルム成形してインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの特性評価の結果を表1に示す。
[比較例1]
一段目の重合器における温度を70℃、全圧力を3MPa、二段目の重合器における全圧力を7.8MPa、コモノマー濃度を0.25mol%とした以外は実施例1と同様にして高密度ポリエチレン組成物を製造した。
一段目の重合において生成した高密度ポリエチレンは、密度が969kg/m3、MFR(コードD)が49.6g/10分であった。最終的に製造された高密度ポリエチレン組成物は、密度が952kg/m3、MFR(コードT)が0.44g/10分であった。
得られた高密度ポリエチレン組成物のパウダーを上記の方法で造粒してペレットを得た。さらに、得られた高密度ポリエチレン組成物のペレットを上記の方法でバランスフィルム成形してインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの特性評価の結果を表1に示す。
[比較例2]
造粒工程の溶融混練時に1500ppmのステアリン酸カルシウムを添加した以外は、比較例1と同様にして高密度ポリエチレン組成物のペレットを得て、インフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの特性を評価した。評価結果を表1に示す。
[比較例3]
一段目の重合器における温度を70℃、全圧力を2.7MPa、二段目の重合器における全圧力を7.8MPa、コモノマー濃度を0.3mol%とした以外は実施例1と同様にして高密度ポリエチレン組成物を製造した。
一段目の重合において生成した高密度ポリエチレンは、密度が970kg/m3、MFR(コードD)が47.5g/10分であった。最終的に製造された高密度ポリエチレン組成物は、密度が955kg/m3、MFR(コードD)が2.2g/10分であった。
得られた高密度ポリエチレン組成物のパウダーを上記の方法で造粒してペレットを得た。さらに、得られた高密度ポリエチレン組成物のペレットを用いて上記の方法でバランスフィルム成形を試みた。しかしながら、得られた高密度ポリエチレン組成物のペレットのMFRが高すぎ、バランスフィルム成形が出来なかった。そのため、成形条件において、ブロー比は3.0としたままでフロスト高さを200mmとして、厚み20μmの通常のインフレーションフィルムを作成し、得られたインフレーションフィルムの特性を評価した。特性評価の結果を表1に示す。
[比較例4]
上記調製したチーグラー触媒、溶媒としてヘキサン、モノマーとしてエチレンを用いて、連続二段重合を行うことでチーグラー系高密度ポリエチレン組成物を製造した。一段目の重合器における温度は85℃、全圧力は0.8MPaとし、二段目の重合器における温度は81℃、全圧力は0.4MPaとした。また、二段目の重合器ではコモノマーとして1−ブテンを4.0mol%加えた。
製造された高密度ポリエチレン組成物は、密度が952kg/m3、MFR(コードT)が0.26g/10分であった。
得られた高密度ポリエチレン組成物のパウダーを上記の方法で造粒してペレットを得た。なお、造粒工程の溶融混練時に770ppmの2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール、1500ppmのステアリン酸カルシウム、1400ppmのテトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを添加した。さらに、得られた高密度ポリエチレン組成物のペレットを上記の方法でバランスフィルム成形してインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの特性評価の結果を表1に示す。
[比較例5]
上記で調製したメタロセン担持触媒[I−1]及び液体助触媒成分[II−1]、並びに溶媒としてヘキサン、モノマーとしてエチレンを用いて、単段重合を行うことで高密度ポリエチレン組成物を製造した。重合器における温度を80℃、全圧力を1.0MPaとし、コモノマーを使用しなかった。
製造された高密度ポリエチレン組成物は、密度が958kg/m3、MFR(コードD)が1.0g/10分であった。
得られた高密度ポリエチレン組成物のパウダーを上記の方法で造粒してペレットを得た。さらに、得られた高密度ポリエチレン組成物のペレットを用いて上記の方法でバランスフィルム成形を試みた。しかしながら、得られた高密度ポリエチレン組成物のペレットのMFRが高すぎバランスフィルム成形が出来なかった。そのため、成形条件において、ブロー比は3.0としたままでフロスト高さを200mmとして、厚み20μmの通常のインフレーションフィルムを作成し、得られたインフレーションフィルムの特性を評価した。特性評価の結果を表1に示す。