JP6424608B2 - 電極製造方法及び電極製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電極製造方法及び電極製造装置に関する。
リチウムイオン電池等の電極(電極板)は、金属箔等からなる集電体に、活物質と溶媒等との混合材料を塗布することによって形成される。このような技術に関連し、特許文献1には、塗膜の厚みの均一性を高め得る塗膜の製造方法が開示されている。
特許文献1においては、少なくとも一方がペースト保持溝を有する塗布ロールである一対のロールと、塗布ロールに押し当てられたドクターブレードとを備え、駆動時のドクターブレードの押し込み量を計測するための計測手段を、少なくとも、ロール幅方向の中央から一方の側と他方の側にそれぞれ1つずつ備え、ドクターブレードの押し込み量を調整するための調整手段を備えた塗布装置が使用される。塗布ロールによって基材にペースト状の組成物を転写する際に、各計測手段により計測されたドクターブレードの押し込み量の不均衡を打ち消すように、調整手段によってドクターブレードの押し込み量を調整する工程を経て塗膜が形成される。これにより、基材の幅方向(塗布ロールの幅方向)における触媒層形成用ペースト膜の厚みの均一性を高めることができる。
特開2008−300160号公報
塗工工程の後、集電体に塗布された混合材料を乾燥する乾燥工程において、乾燥時間を短縮するために、混合材料の固形分率を高くすることが求められる。そのため、混合材料として、固形分率の高い湿潤造粒体が用いられる。一方、高固形分化された湿潤造粒体は、高粘度であるため、流動性が悪化する。したがって、塗工部における成膜精度を制御することが困難となり、成膜精度が悪化するおそれがある。特に、湿潤造粒体を用いることにより流動性が悪化することで、塗工部の長手方向の両端(塗工端部)近傍に湿潤造粒体が到達しにくくなる。したがって、塗工端部における成膜精度を制御することが困難となり、塗工端部の成膜精度が悪化するおそれがある。
特許文献1においては、ドクターブレードの押し込み量を調整することによって、塗膜の厚みの均一性を高めている。しかしながら、ドクターブレードの押し込み量を調整すると、ドクターブレードと塗布ロールとのクリアランスが減少する可能性があり、そのためにペースト溜からペーストが塗布ロールに供給され難くなるおそれがある。したがって、特許文献1の技術を用いても、塗工端部における成膜精度を制御することは困難であり、塗工端部の成膜精度を向上させることは困難である。
本発明は、塗工端部の成膜精度を向上させることが可能な電極製造方法及び電極製造装置を提供することにある。
本発明にかかる電極製造方法は、湿潤造粒体を集電体に塗布して電極を製造する電極製造方法であって、前記集電体に前記湿潤造粒体を塗布する第1のロールと、前記第1のロールと対向する第2のロールと、前記第1のロール及び第2のロールの間に互いに対向して設けられた一対の板材とで形成される貯留部に前記湿潤造粒体を貯留し、前記一対の板材それぞれの、前記貯留部とは反対側を減圧し、前記第1のロール及び前記第2のロールが回転することによって前記第1のロールと前記第2のロールとの間の隙間から押し出された前記湿潤造粒体を、前記第1のロールが保持し、前記第1のロールは、前記湿潤造粒体を保持しつつ回転することによって前記湿潤造粒体を前記集電体に塗布し、前記板材は、1つ以上の貫通穴を有し、前記隙間の間隔に対する前記貫通穴の径の比は、1/20以上である。
また、本発明にかかる電極製造装置は、湿潤造粒体を集電体に塗布して電極を製造する電極製造装置であって、前記集電体に前記湿潤造粒体を塗布する第1のロールと、前記第1のロールと対向する第2のロールと、前記第1のロール及び第2のロールの間に互いに対向して設けられた一対の板材と、前記第1のロールと前記第2のロールと前記一対の板材とによって形成され、前記湿潤造粒体を貯留する貯留部と、前記一対の板材それぞれの、前記貯留部とは反対側を減圧する減圧手段とを有し、前記第1のロール及び前記第2のロールが回転することによって前記第1のロールと前記第2のロールとの間の隙間から押し出された前記湿潤造粒体を、前記第1のロールが保持し、前記第1のロールは、前記湿潤造粒体を保持しつつ回転することによって前記湿潤造粒体を前記集電体に塗布し、前記板材は、1つ以上の貫通穴を有し、前記隙間の間隔に対する前記貫通穴の径の比は、1/20以上である。
本発明においては、湿潤造粒体を貯留する貯留部を形成する板材それぞれに貫通穴が設けられており、一対の板材それぞれの外側(貯留部とは反対側)を減圧するように構成されている。これにより、貯留部に貯留された湿潤造粒体が、一対の板材それぞれに接近する。したがって、第1のロールと第2のロールとの間の隙間から押し出された湿潤造粒体の幅は、一対の板材の間隔と略同一となる。さらに、前記隙間の間隔に対する貫通穴の径の比を、1/20以上とすることにより、減圧手段による吸引効果を高めることができる。これにより、一対の板材それぞれの内側(貯留部側)が適切に減圧され、貯留部に貯留された湿潤造粒体が板材まで到達し得る。したがって、塗工端部の成膜精度を向上させることが可能となる。
また、好ましくは、前記隙間の間隔に対する前記貫通穴の径の比は、1/20から1である。
隙間の間隔に対する貫通穴の径の比を1/20から1とすることにより、湿潤造粒体の乾燥又は貫通穴への湿潤造粒体の詰まりを抑制することが可能となる。
また、好ましくは、前記減圧手段による減圧度は、−5kPaから−50kPaである。
減圧度を−5kPaから−50kPaとすることにより、湿潤造粒体の乾燥を抑制することが可能となる。
本発明によれば、塗工端部の成膜精度を向上させることが可能な電極製造方法及び電極製造装置を提供できる。
実施の形態1にかかる電極製造装置を示す図である。 実施の形態1にかかる電極製造装置を示す図である。 実施の形態1にかかるブレードを示す拡大図である。 比較例にかかる電極製造装置を示す図である。 塗工端部の成膜精度を、比較例と実施の形態1とで比較した図である。 実施の形態1にかかる電極製造装置を用いた場合の実験結果を示す図である。 実施の形態1にかかる電極製造方法を示す工程図である。
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
図1及び図2は、実施の形態1にかかる電極製造装置1を示す図である。電極製造装置1は、塗布ロール2(第1のロール)と、引込ロール4(第2のロール)と、転写ロール6と、湿潤造粒体90を貯留する貯留部20とを有する。塗布ロール2は、引込ロール4と転写ロール6との間に設けられている。貯留部20は、塗布ロール2と引込ロール4との間に設けられている。また、引込ロール4と転写ロール6とは互いに対向しており、引込ロール4と転写ロール6との間には、クリアランス22(隙間)が設けられている。これにより、貯留部20の下に、クリアランス22が設けられるように構成されている。
塗布ロール2は、矢印Aの方向(図1では反時計回り)に回転する。引込ロール4は、矢印Bの方向(図1では時計回り)に回転する。つまり、引込ロール4の回転方向は、塗布ロール2の回転方向と逆になっている。また、転写ロール6は、矢印Cの方向(図1では時計回り)に回転する。つまり、転写ロール6の回転方向は、塗布ロール2の回転方向と逆になっている。
引込ロール4は、塗布ロール2と協働して、貯留部20に貯留された湿潤造粒体90を下方向に引き込む。つまり、塗布ロール2と引込ロール4とが回転することによって、貯留部20に貯留された湿潤造粒体90が、クリアランス22から下方向に押し出される。このとき、塗布ロール2の表面に、押し出された湿潤造粒体90が付着する。塗布ロール2は、この付着した湿潤造粒体90(湿潤造粒体90a)をロール面2aにおいて保持する。塗布ロール2は、湿潤造粒体90aを保持しつつ矢印A方向に回転することで、湿潤造粒体90aを転写ロール6側に搬送する。
一方、転写ロール6は、矢印C方向に回転することによって、例えば金属箔である集電体80を矢印D方向に搬送する。そして、塗布ロール2によって、塗布ロール2と転写ロール6との隙間Gに湿潤造粒体90aが搬送されると、塗布ロール2は、転写ロール6と協働して、隙間Gにおいて集電体80に湿潤造粒体90aを塗布(転写)する。湿潤造粒体90(湿潤造粒体90b)が塗布された集電体80は乾燥工程に搬送され、集電体80に塗布された湿潤造粒体90bに対して乾燥処理が施される。
また、貯留部20の両端には、板材である一対のブレード10が設けられている。一対のブレード10は、塗布ロール2と引込ロール4との間に互いに対向して設けられている。このような構成により、貯留部20は、塗布ロール2と、引込ロール4と、一対のブレード10とで形成される。貯留部20は、外部から供給された湿潤造粒体90を貯留する。
一対のブレード10は、集電体80に塗布される湿潤造粒体90の塗工幅を規定する。具体的には、塗布ロール2に付着される湿潤造粒体90aの幅は、一対のブレード10の間隔に応じて規定される。つまり、塗布ロール2に付着される湿潤造粒体90aの幅は、一対のブレード10の間隔以下となる。そして、塗布ロール2は、その幅を維持しながら湿潤造粒体90aを保持し、集電体80に塗布する。これによって、集電体80に塗布された湿潤造粒体90bの幅(塗工幅)は、一対のブレード10の幅に応じて規定される。
言い換えると、クリアランス22の位置において、塗工幅が規定される。また、クリアランス22の間隔C1に応じて、塗布ロール2に付着する湿潤造粒体90の厚さが規定される。これによって、湿潤造粒体90の目付量(面積当たりの質量)が規定される。さらに、塗布ロール2と転写ロール6との隙間Gの間隔に応じて、集電体80に塗布される湿潤造粒体90の膜厚及び密度が規定される。このようにして、電極製造装置1は、集電体80に塗布される湿潤造粒体90の成膜条件(塗工幅、膜厚、密度等)を規定している。
また、電極製造装置1は、減圧部30(減圧手段)を有する。減圧部30は、例えば真空ポンプ等である。減圧部30は、ブレード10の外側(ブレード10の、貯留部20とは反対側)を減圧するように構成されている。また、ブレード10には、後述するように1つ以上の貫通穴14が設けられている。減圧部30がブレード10の外側を減圧することによって、貯留部20に貯留された湿潤造粒体90は、貫通穴14を介して、矢印P1,P2で示す方向に引っ張られる。これにより、湿潤造粒体90は、ブレード10に接近する。これによって、湿潤造粒体90がクリアランス22から下に押し出される際に、湿潤造粒体90の幅は、一対のブレード10の間隔と略同じとなる。したがって、塗工幅がより均一となるので、成膜精度が向上する。
図3は、実施の形態1にかかるブレード10を示す拡大図である。なお、図3には、図1の正面側(図2の左側)のブレード10について示されているが、図1の奥側(図2の右側)のブレード10についても同様の構成を有する。つまり、図1の奥側(図2の右側)のブレード10については、図3を左右逆にすることで図示され得る。
ブレード10の塗布ロール2側の右下部10aは、塗布ロール2の曲面(回転面)の形状に合わせて略円弧状に凹んだように形成されている。塗布ロール2は、ブレード10の右下部10aと接触しており、右下部10aに摺れながら矢印A方向に回転する。同様に、ブレード10の引込ロール4側の左下部10bは、引込ロール4の曲面(回転面)の形状に合わせて略円弧状に凹んだように形成されている。引込ロール4は、ブレード10の左下部10bと接触しており、左下部10bに摺れながら矢印B方向に回転する。
また、図3に示すように、ブレード10には、1つ以上の貫通穴14が設けられている。好ましくは、この貫通穴14は、ブレード10の下寄り(クリアランス22側)に設けられている。この貫通穴14を介して、貯留部20と、ブレード10の外側とが連通するようになっている。貫通穴14は、各ブレード10に複数設けられてもよい。また、貫通穴14の数は、貫通穴14の穴径(直径)に応じて定められてもよい。例えば、貫通穴14の穴径が大きい場合には、貫通穴14の数は少なくてもよい。一方、貫通穴14の穴径が小さい場合には、貫通穴14の数は多くてもよい。
上述したように、減圧部30は、ブレード10の外側を減圧する。そして、貯留部20とブレード10の外側とが、貫通穴14を介して連通している。これにより、貯留部20のブレード10の近傍が減圧される。したがって、貯留部20に貯留された湿潤造粒体90は、ブレード10に接近するように移動する。したがって、貯留部20に貯留された湿潤造粒体90は、両側のブレード10それぞれまで広がる。これにより、クリアランス22近傍における湿潤造粒体90の幅は、一対のブレード10の間隔と略同じとなる。
ここで、貫通穴14の穴径をdとすると、好ましくは、貫通穴14は、クリアランス22の間隔C1に対する穴径dの比(d/C1)が1/20以上となるように形成されている。さらに、貫通穴14は、d/C1が1以下となるように形成されている。また、好ましくは、減圧部30は、減圧度(大気圧に対してどれだけ減圧するかを示す)は、−5kPaから−50kPaとなるように、ブレード10の外側を減圧する。なお、「減圧度:−50kPa」とは、大気圧から50kPa減圧することを示す。つまり、「減圧度が−50kPa以下」とは、大気圧から減圧する圧力が50kPa以下であることを示す。穴径dの範囲及び減圧度の範囲については、後述する。
(比較例)
図4は、比較例にかかる電極製造装置100を示す図である。図4には、塗布ロール2と、引込ロール4と、一対のブレード110とが示されている。なお、図4には示されていないが、電極製造装置100は、実施の形態1にかかる電極製造装置1と同様に転写ロール6も有する。また、実施の形態1と同様に、塗布ロール2と引込ロール4と一対のブレード110とによって、湿潤造粒体90を貯留する貯留部20が形成されている。また、実施の形態1と同様に、引込ロール4と転写ロール6との間には、クリアランス22(隙間)が設けられている。塗布ロール2と引込ロール4とが回転することによって、貯留部20に貯留された湿潤造粒体90が、クリアランス22から下方向に押し出される。また、実施の形態1と同様に、一対のブレード110は、集電体80に塗布される湿潤造粒体90の塗工幅を規定する。
また、比較例にかかる電極製造装置100は、貯留部20に貯留された湿潤造粒体90を上から押し込む押し込み手段(図示せず)を有する。比較例においては、この押し込み手段による押し込み量を制御することで、塗工精度(成膜精度)を調整している。つまり、押し込み量を大きくすることによって、クリアランス22から塗布ロール2に付着される湿潤造粒体90の量が多くなる。さらに、押し込み量を大きくすると、塗布ロール2に付着される湿潤造粒体90の幅(塗工幅)が大きくなる。一方、比較例においては、実施の形態1と異なり、ブレード110に貫通穴が設けられていない。そして、ブレード110の外側は減圧されない。
ここで、高固形分化している湿潤造粒体90の成膜精度を調整する場合、湿潤造粒体90の流動性が悪いことから、押し込み量を制御する方法では、塗工精度を向上させることが困難である。つまり、押し込み量を大きくした場合であっても、湿潤造粒体90がブレード110の近傍まで到達しないおそれがある。したがって、成膜精度(特に塗工端部の成膜精度)が向上しないおそれがある。また、湿潤造粒体の材料特性によっても、成膜精度が悪化するおそれがある。すなわち、湿潤造粒体に含まれる活物質の比表面積及びTAP密度によって粉体の流動性が悪化し、これにより、成膜精度が悪化するおそれがある。
図5は、塗工端部の成膜精度を、比較例と実施の形態1とで比較した図であり、(a)は、比較例において集電体80に湿潤造粒体90が塗布された状態を示し、(b)は、実施の形態1において集電体80に湿潤造粒体90が塗布された状態を示す。
図5(a)に示すように、比較例においては、塗工端部90cが凸凹になってしまい、塗工幅が一定となっていない。このように比較例において塗工幅が一定とならないのは、クリアランス22から押し出され塗布ロール2に付着する湿潤造粒体90の幅が一定でないからである。一方、図5(b)に示すように、実施の形態1においては、塗工端部90cが略直線となっており、塗工幅が略一定となっている。つまり、実施の形態1においては、ブレード10の外側を減圧することによって、貯留部20のクリアランス22近傍において、湿潤造粒体90がブレード10まで到達する。これにより、クリアランス22から押し出され塗布ロール2に付着する湿潤造粒体90の幅が、一対のブレード10の間隔と略一致する。したがって、集電体80における塗工端部90cの幅(塗工幅)は、略一定となる。
したがって、実施の形態1においては、湿潤造粒体90を使用した場合であっても塗工端部の成膜精度を向上させることが可能となる。これにより、湿潤造粒体90を使用した場合においても不良率を低下させることが可能となる。さらに、高固形分化された湿潤造粒体90を集電体80に塗布することが可能となるので、乾燥工程における乾燥時間を短縮することが可能となる。また、これにより、乾燥炉を短縮することも可能となる。また、高固形分化される湿潤造粒体90を集電体80に塗布することが可能となるので、溶媒の量を削減することが可能となる。
(実験結果)
図6は、実施の形態1にかかる電極製造装置1を用いた場合の実験結果を示す図である。図6に示す「○」は、良否判定が「良」である場合を示し、成膜精度が比較例にかかる電極製造装置100を用いた場合よりも向上していることを示す。一方、図6に示す「×」は、良否判定が「否」である場合を示し、成膜精度が、比較例と同等又は比較例よりも低下していることを示す。
実験条件を以下に示す。クリアランスC1を100[μm]とする。また、穴径dは、図6に示すように、3、5、50、100又は150[μm]である。また、減圧度は、図6に示すように、−5、−10、−30、−50又は−75[kPa]である。また、湿潤造粒体90(混合材料)の配合比(重量%)は、活物質:CMC(増粘剤):結着剤=98〜98.5:0.5〜1.0:1.0である。また、活物質として、例えば黒鉛系材料が使用される。また、結着材として、ポリフッ化ビニリデン(PVdF:PolyVinylidene diFluoride)、メチルセルロース(MC:Methyl Cellulose)、カルボキシメチルセルロース(CMC:Carboxymethyl Cellulose)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC:Hydroxypropyl Cellulose)、ポリビニルブチラール(PVB:PolyVinyl Butylal)、ポリエチレン(PE:PolyEthylene)、ポリビニルアルコール(PVA:PolyVinyl Alcohol)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:PolyTetraFluoroEthylene)又はスチレンブタジエンゴム(SBR:Styrene-Butadiene Rubber)が使用される。
図6に示すように、減圧度が−10kPaであって穴径dが3μmのとき、つまり、クリアランス22の間隔C1に対する穴径dの比(d/C1)が3/100のとき、吸引効果がなく、良否判定は否となる。これは、d=3[μm]のときは、クリアランス22の間隔C1と比較して穴径dが小さすぎてしまい、圧損等のために、ブレード10の内側(貯留部20のブレード10の近傍)が適切に減圧されないからである。なお、穴径dが3μmのとき、減圧度を−10kPaから高くしても(例えば減圧度を−30kPaにしても)、圧損等のため、吸引効果の改善はほとんどない。
一方、減圧度が−10kPaであって穴径dが5μmの場合、つまり、クリアランス22の間隔C1に対する穴径dの比(d/C1)が5/100(=1/20)のとき、良否判定は良となる。つまり、d/C1=1/20のとき、ブレード10の内側が適切に減圧され、したがって、貯留部20に貯留部20に貯留された湿潤造粒体90が、ブレード10まで到達する。したがって、d/C1=1/20のとき、成膜精度(特に塗工端部の成膜精度)が向上する。減圧度が−10kPaであって穴径dが50μm(d/C1=50/100=1/2)の場合も同様に、良否判定は良となる。さらに、減圧度が−10kPaであって穴径dが100μm(d/C1=100/100=1)の場合も同様に、良否判定は良となる。
一方、減圧度が−10kPaであって穴径dが150μm(d/C1=150/100=30/20)の場合、良否判定は否となる。この場合、d=150[μm]のときは、クリアランス22の間隔C1と比較して穴径dが大きすぎてしまい、湿潤造粒体90に含まれる媒体等の液体が過剰に吸引されてしまって、湿潤造粒体90が、成膜精度を維持できないほど乾燥してしまう。また、この場合、クリアランスC1と比較して穴径dが大きすぎてしまい、湿潤造粒体90が貫通穴14に入り込んで貫通穴14が詰まってしまう。したがって、この場合、良否判定は否となってしまう。なお、穴径dが150μmのとき、減圧度を−10kPaから低くしても(例えば減圧度を−5kPaにしても)、湿潤造粒体90の乾燥又は貫通穴14の詰まりが起こってしまうため、改善効果はほとんどない。
また、減圧度が−5kPaであって穴径dが5μm、50μm及び100μmの場合、良否判定は良となる。同様に、減圧度が−30kPaであって穴径dが5μm、50μm及び100μmの場合、良否判定は良となる。同様に、減圧度が−50kPaであって穴径dが5μm、50μm及び100μmの場合、良否判定は良となる。
したがって、d/C1≧1/20の場合に、ブレード10の内側が適切に減圧され、貯留部20に貯留された湿潤造粒体90がブレード10まで到達し、成膜精度(特に塗工端部の成膜精度)が向上する。さらに、1/20≦d/C1≦1の場合に、湿潤造粒体90の乾燥又は貫通穴14への湿潤造粒体90の詰まりを抑制することが可能となる。
また、減圧度が−75kPaであって穴径dが50μmの場合、良否判定は否となる。これは、減圧度が高すぎるため、湿潤造粒体90に含まれる液体が過剰に吸引されてしまって、湿潤造粒体90が、成膜精度を維持できないほど乾燥してしまうからである。したがって、減圧度が−5kPaから−50kPaの場合に、湿潤造粒体90の乾燥を抑制することが可能となる。
(電極製造方法)
図7は、実施の形態1にかかる電極製造方法を示す工程図である。工程S102において、図示しない搬送手段によって、湿潤造粒体90が、塗工工程の前工程(例えば混練工程)から供給される。これによって、湿潤造粒体90が、貯留部20に貯留される。工程S104において、上述したように、減圧部30が、ブレード10の外側を減圧する。ここで、好ましくは、減圧部30は、減圧度が−5kPaから−50kPaとなるように、ブレード10の外側を減圧する。
工程S106において、上述したように、塗布ロール2及び引込ロール4が回転する。これによって、貯留部20に貯留された湿潤造粒体90が、クリアランス22から下方向に押し出される。工程S108において、上述したように、塗布ロール2は、クリアランス22から下方向に押し出された湿潤造粒体90を保持する。工程S110において、上述したように、塗布ロール2は、湿潤造粒体90(湿潤造粒体90a)を保持しつつ回転する。これによって、塗布ロール2は、集電体80に湿潤造粒体90aを塗布する。工程S112において、上述したように、転写ロール6は、湿潤造粒体90(湿潤造粒体90b)が塗布された集電体80を乾燥工程に搬送する。これによって、乾燥炉等の乾燥手段(図示せず)が、集電体80に塗布された湿潤造粒体90bを乾燥する。
(変形例)
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、図7に示した各工程の順序は任意に変更可能であり、各工程の1つ以上は、同時に行われてもよい。例えば、工程S104及び工程S106は、順序を入れ替えてもよいし、同時になされてもよい。
また、比較例において押し込み量の制御が行われるとしたが、本実施の形態においても、押し込み量の制御が行われてもよい。また、上述した実施の形態においては、クリアランス22の間隔C1を100μmとしたが、これに限られない。そして、クリアランス22の間隔C1に応じて、貫通穴14の穴径dが定められ得る。また、ブレード10に設けられた複数の貫通穴14全てについて、貫通穴14の穴径dが同じでなくてもよい。
1 電極製造装置
2 塗布ロール
4 引込ロール
6 転写ロール
10 ブレード
14 貫通穴
20 貯留部
22 クリアランス
30 減圧部
80 集電体
90 湿潤造粒体

Claims (4)

  1. 湿潤造粒体を集電体に塗布して電極を製造する電極製造方法であって、
    前記集電体に前記湿潤造粒体を塗布する第1のロールと、前記第1のロールと対向する第2のロールと、前記第1のロール及び第2のロールの間に互いに対向して設けられた一対の板材とで形成される貯留部に前記湿潤造粒体を貯留し、
    前記一対の板材それぞれの、前記貯留部とは反対側を減圧し、
    前記第1のロール及び前記第2のロールが回転することによって前記第1のロールと前記第2のロールとの間の隙間から押し出された前記湿潤造粒体を、前記第1のロールが保持し、
    前記第1のロールは、前記湿潤造粒体を保持しつつ回転することによって前記湿潤造粒体を前記集電体に塗布し、
    前記板材は、1つ以上の貫通穴を有し、前記隙間の間隔に対する前記貫通穴の径の比は、1/20以上である
    電極製造方法。
  2. 前記隙間の間隔に対する前記貫通穴の径の比は、1/20から1である
    請求項1に記載の電極製造方法。
  3. 前記貯留部とは反対側を減圧する際の減圧度は、−5kPaから−50kPaである
    請求項1又は2に記載の電極製造方法。
  4. 湿潤造粒体を集電体に塗布して電極を製造する電極製造装置であって、
    前記集電体に前記湿潤造粒体を塗布する第1のロールと、
    前記第1のロールと対向する第2のロールと、
    前記第1のロール及び第2のロールの間に互いに対向して設けられた一対の板材と、
    前記第1のロールと前記第2のロールと前記一対の板材とによって形成され、前記湿潤造粒体を貯留する貯留部と、
    前記一対の板材それぞれの、前記貯留部とは反対側を減圧する減圧手段と
    を有し、
    前記第1のロール及び前記第2のロールが回転することによって前記第1のロールと前記第2のロールとの間の隙間から押し出された前記湿潤造粒体を、前記第1のロールが保持し、
    前記第1のロールは、前記湿潤造粒体を保持しつつ回転することによって前記湿潤造粒体を前記集電体に塗布し、
    前記板材は、1つ以上の貫通穴を有し、前記隙間の間隔に対する前記貫通穴の径の比は、1/20以上である
    電極製造装置。
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