JP6423223B2 - 複合体及び非水系リチウムイオン二次電池 - Google Patents

複合体及び非水系リチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、非水系リチウムイオン二次電池の正極活物質として有用な複合体、及び該複合体を活物質として用いた非水系リチウムイオン二次電池に関する。
リチウム原子を含有する複合酸化物を含む非水系二次電池は、軽量、高エネルギー及び長寿命であることが大きな特徴であり、例えばノートブックコンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の携帯用電子機器の電源として広範囲に用いられている。また、低環境負荷社会への移行に伴い、ハイブリッド型電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、「HEV」)及びプラグインHEV(Plug−in Hybrid Electric Vehicle、「PHEV」)の電源、更には住宅用蓄電システム等の電力貯蔵分野においても注目されている。
自動車等の車両及び住宅用蓄電システムに非水系リチウムイオン二次電池を搭載する場合、その構成材料としては、サイクル性能、長期信頼性等の観点から、化学的及び電気化学的な安定性、強度、耐腐食性等に優れた材料が求められる。さらに、非水系二次電池には、必要物性として、高い電気容量及び高出力性能も求められる。
ところで、非水系リチウムイオン二次電池の正極材料としては、LiCoO、LiNiO等の岩塩層状型正極材料;LiMn等のスピネル型正極材料;LiFePO等のオリビン型正極材料等が知られている。
代表的な正極材料である層状化合物のLiCoOは、比較的高価であることの他、充放電時にLiを50%以上引き抜くと層状構造が崩壊するため、Liの引き抜き量に制限があり、電気容量の点でも問題がある。また、LiFePO等のオリビン型正極材料は、理論容量が約170mAh/gであるのに対して、正極材料として約150mAh/gのものが既に活用されており、更なる容量向上の余地がほとんどない。
非水系リチウムイオン二次電池の電気容量を高めるために、層状型正極材料の組成を3元系のLiCo0.33Ni0.33Mn0.33とし、更に充電終止電圧を高く設定する技術が知られている。この技術によると、放電容量が200mAh/gまで達し、公知の正極材料(例えばLiCoO、LiNiO等)を用いた場合には急激に容量劣化する条件においても、安定した充放電耐久性能が得られると報告されている。
更に、電気容量を大きく伸ばすために、電気化学的に不活性であるが、約460mAh/gの高い理論容量を有するLi過剰構造のLiM’O(M’は平均酸化数4価の金属イオンを示す。)成分と、電気化学的に活性なLiMO(Mは平均酸化数3価の金属イオンを示す。)成分とを組み合わせたLi過剰固溶体を用いる技術についての開示がある。
例えば、特許文献1には、xLiMO(1−x)LiM’O(xは0<x<1の範囲であり;Mは少なくともNiを含む一つ以上の平均酸化数3価の金属イオンであり、M’は少なくともMnを含む一つ以上の平均酸化数4価の金属イオンである。)で表され、LiMO及びLiM’Oから成る組成の層状化合物が開示されている。
特許文献2には、xLiMO(1−x)LiM’O(xは0<x<1の範囲であり;Mは少なくともMnを含む平均酸化数3価のイオンを示し、M’は平均酸化数4価のイオンを示す。)で表され、LiMO及びLiM’Oから成る組成の層状化合物が開示されている。
特許文献3には、Ni、Co、及びMnを必須成分としてF、Cl、及びIを組み合わせる技術が開示されている。
上記特許文献1〜3によると、いずれも、上記それぞれの技術によって高い電気容量が得られると説明されている。
更に、特許文献4〜6には、それぞれ、xLiMO(1−x)LiM’O(Mは平均酸化数3価のイオンを示し、M’は平均酸化数4価のイオンを示し、xは0<x<1である。)で表される構造を有し、Li1+aNiαMnβCoγ(a、α、β及びγは、それぞれ0.05<a<0.25、0.1<α<0.4、0.4<β<0.65、0.05<γ<0.3)の組成で表される正極活物質において、組成比がLi1.2Ni0.175Co0.10Mn0.525である場合に、特に高い電気容量が得られることが開示されている。
一方で、これらリチウム含有複合酸化物を正極に用いた非水系リチウムイオン二次電池の問題として、大電流を流した場合に容量が低くなるレート特性低下の問題、及び充放電を繰り返すことにより電気容量が低下するサイクル特性悪化の問題があることが指摘されている。
上記のレート特性低下の問題は、特にLi過剰固溶体において顕著である。この問題を解決するために、Li過剰固溶体の表面における導電性を高める試みがなされている。例えば特許文献7には、Li過剰固溶体の表面にインジウム系化合物をコーティングする技術が、
非特許文献1には、Li過剰固溶体の表面に導電性カーボンをコーティングする技術が、
特許文献8には、Li過剰構造を有する活物質の表面に酸化ビスマスを被覆する技術が、
それぞれ開示されており、いずれもレート特性が向上すると説明されている。
上記のサイクル特性悪化の問題は、例えば前述のLiCoOにおいて、Liイオンを50モル%近く引き抜くような充放電を繰り返すと安定な結晶構造を保てなくなり、その結果、電気容量が徐々に低下する現象として知られている。この問題を解決するために、例えば非特許文献2において、活物質の表面に化学的に安定な酸化物(例えばAl、TiO、ZrO等)を被覆して特性を改良する試みがなされており、この技術によってサイクル特性が向上すると報告されている。
米国特許第6677082号明細書 米国特許第6680143号明細書 米国特許第7135252号明細書 特表2011−519126号公報 特表2012−504316号公報 特表2012−505520号公報 特開2013−201119号公報 特開2013−503449号公報
Jun Liu et al.,Electrochemistry Communications,Vol.12,750−753(2010) A.M.Kannan et al.,Electrochemical and Solid−State Letters,Vol.6(1),A16−A18(2003)
前記したように、Li含有複合酸化物に代表されるLi含有成分を活物質に用いるリチウムイオン二次電池のレート特性及びサイクル特性を向上させる試みは、種々なされているものの、いずれもその効果は十分でない。従って、良好なサイクル特性と良好な放電レート特性とを同時に満足するリチウムイオン二次電池を与える、優れた正極活物質が未だに待ち望まれている。
かかる状況下、本発明が解決しようとする課題は、リチウム含有成分を正極活物質として用いた時、良好な放電レート特性と良好なサイクル特性とが両立された非水系リチウムイオン二次電池を与える正極活物質材料、及び該正極活物質を用いた非水系リチウムイオン二次電池を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた。その結果、正極活物質として、特定のリチウム含有成分と、特定の結晶形態を有するジルコニアとを組み合わせて用いたとき、特異的に良好なレート特性と良好なサイクル特性とが両立された非水系リチウムイオン二次電池が得られることを見出し、本発明を成すに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1] リチウム含有成分(A)と、
ジルコニア(B)と
を含有する複合体であって、
前記リチウム含有成分(A)が、下記の(A1)〜(A2):
(A1)一般式LiMO{式中のMは、Li以外の1種以上の金属元素であり、xは0.4<x<2.2の範囲の数であり、yは1.4<y<3.0の範囲の数である。}で表されるリチウム含有複合酸化物、並びに
(A2)リチウム原子及びポリアニオンから構成されるリチウム含有錯体
から選択され、そして、
前記ジルコニア(B)のXRDパターンにおいて、2θ=30.2±0.2°にピークトップがあるピークのピーク強度をα、28.2°±0.2°にピークトップがあるピークのピーク強度をβとした時、α/(α+β)の値が0.7〜1.0の範囲内にあることを特徴とする、前記複合体。
[2] 前記α/(α+β)の値が0.9〜1.0の範囲内にある、[1]記載の複合体。
[3] 前記ジルコニア(B)の含有割合が、複合体の全量に対して、0.1〜10質量%である、[1]又は[2]記載の複合体。
[4] 前記リチウム含有複合酸化物(A1)が、下記組成式(1):
LiMn1−zM’3−α・・・(1)
{式中、M’は、Mn及びLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦z<1、及び0≦α<1の関係を満足する。}で表されるLiが層状に配列した層状構造を有するものである、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の複合体。
[5] 前記リチウム含有複合酸化物(A1)が、
前記組成式(1)で表される層状結晶構造と、
下記組成式(2):
Li1+kMn2−wMe’4―γ・・・(2)
{式中、Me’は、Mn及びLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0≦w≦0.5、及び0≦γ<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造、及び
下記組成式(3):
LiMeO・・・(3)
{式中、Meは、Li以外の1種類以上の金属元素である。}で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造
から選ばれる1種類以上の結晶構造と
が固溶した結晶構造を有するものである、[4]記載の複合体。
[6] 前記ジルコニア(B)がゲル化燃焼法によって調製されたものである、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の複合体。
[7] [1]〜[6]のいずれか1項に記載の複合体を含むことを特徴とする、正極活物質。
[8] [7]に記載の正極活物質を有することを特徴とする、非水系リチウムイオン二次電池。
本発明に係る複合体は、これを正極活物質として用いたとき、良好な放電レート特性と良好なサイクル特性とが両立された非水系リチウムイオン二次電池を与える。
本実施形態における非水系二次電池の一例を概略的に示す断面図。 実施例1で調製したジルコニアを含む酸化物複合体のXRDパターン。 比較例4で調製したジルコニアを含む酸化物複合体のXRDパターン。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、本明細書において「〜」を用いて記載される範囲はその前後に記載される数値を含むものである。
本実施形態における複合体は、
リチウム含有成分(A)と、
ジルコニア(B)と
を含有する。
<リチウム含有成分(A)>
リチウム含有成分(A)は、下記の(A1)〜(A2):
(A1)一般式LiMO(式中のMは、Li以外の1種以上の金属であり、xは0.4<x<2.2の範囲の数であり、yは1.4<y<3.0)で表されるリチウム含有複合酸化物、並びに
(A2)リチウム原子及びポリアニオンから構成されるリチウム含有錯体
から選択される。
[リチウム含有複合酸化物(A1)]
本実施形態におけるリチウム含有複合酸化物(A1)としては、前記一般式LiMO(式中のMは、Li以外の1種以上の金属であり、xは0.4<x<2.2の範囲の数であり、yは1.4<y<3.0)で表されるものであればいずれでも用いることができる。好ましくは、層状岩塩型構造を持つ複合酸化物、及びスピネル型構造を持つ複合酸化物から選ばれる1種を単独で、又はこれらのうちの2種以上が固溶した形態で、用いられる。更に好ましくは、高い電気容量が得られる観点から、LiCo0.33Ni0.33Mn0.33の組成を有する複合酸化物、及び下記組成式(1):
LiMn1−zM’3−α・・・(1)
{式中、M’は、Mn及びLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦z<1、及び0≦α<1の関係を満足する。}で表されるLiが層状に配列した結晶構造を有する複合酸化物から選ばれる1種以上が用いられる。更に好ましくは、前記組成式(1)で表されるLiが層状に配列した層状構造を有する複合酸化物である。最も好ましくは、正極活物質とした時の電気的な活性を高める目的、及び結晶構造を安定化させる観点から、
上記組成式(1)で表される層状結晶構造と、
下記組成式(2):
Li1+kMn2−wMe’4―γ・・・(2)
{式中、Me’は、Mn及びLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0≦w≦0.5、及び0≦γ<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造、及び
下記組成式(3):
LiMeO・・・(3)
{式中、Meは、Li以外の1種類以上の金属元素である。}で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造
から選ばれる1種類以上の結晶構造と
が固溶した結晶構造を有する酸化物複合体が用いられる。
上記組成式(1)におけるM’としては、例えばNi、Co、Al、Mo、W、Ce、Nb、Mg、Fe、Cu、Ti、Sn、Pb、V、Zn、Ga、GeおよびZrから選ばれる1種以上である。これらのうち、Fe、Co、及びNiから選ばれる1種以上がより好ましく、Co及びNiから選ばれる1種以上が更に好ましく、特に好ましくはNiである。
上記組成式(2)におけるMe’としてはNi、Co、Al、Fe、Ti、およびMgから選ばれる1種以上が好ましく、Niが特に好ましい。
上記組成式(3)におけるMeは、Mn、Ni、Co、Ti、Al、Mg、Mo、W、及びVから選ばれる1種以上が好ましい。
上記構造を主体としてV、Fe、Al、Mg、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb,Bi、Si、P、B、Y、Ca等の元素が、酸化物又は別の形態で固溶乃至添加された酸化物複合体も用いることができる。
[リチウム含有錯体(A2)]
本実施形態におけるリチウム含有錯体(A2)は、リチウム原子及びポリアニオンから構成される。前記ポリアニオンとしては、例えばPO 3−、SiO 4−、及びBO 3−から成る群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本実施形態におけるリチウム含有錯体(A2)として、好ましくは、
下記一般式(4):
LiMPO・・・(4)
{式中、MはFe、Mn、Co、及びNiから選択される金属原子である。}で表される構造を有するオリビン型錯体、
下記一般式(5):
LiMSiO・・・(5)
{式中、MはFe、Mn、及びCoから選択される金属原子である。}で表される構造を有する錯体、及び
下記一般式(6)
LiMBO・・・(6)
{式中、MはFe及びMnから選択される金属原子である。}で表される構造を有する錯体から成る群より選択される1種以上が好ましい。
上記一般式(4)で表される構造を有するオリビン型錯体は、電気化学的活性が高く、しかも電解液との反応性が低いことから、好ましく用いられる。一般式(4)中のMとしては、Feが好ましい。上記一般式(5)で表される構造を有する錯体は、ユニット内にリチウム原子を2個持っているから、高い電気容量が得られる点で好ましい。上記一般式(6)で表される構造を有する錯体は、比較的軽いBを含有するから、単位質量当たりの電気容量が高くなる点で好ましい。
本実施形態におけるリチウム含有錯体(A2)としては、上記一般式(4)で表される構造を有するオリビン型錯体を用いることが、特に好ましい。
[リチウム含有成分(A)]
本実施形態におけるリチウム含有成分(A)は、上記のリチウム含有複合酸化物(A1)及びリチウム含有錯体(A2)から成る群より選択される1種以上である。これらのうちのどちらかのみを使用することができ、或いはこれらの双方を混合して用いることが可能である。
本実施形態におけるリチウム含有成分(A)としては、上記のリチウム含有複合酸化物(A1)又はリチウム含有錯体(A2)のどちらかを選択して使用することが好ましい。リチウム含有成分(A)としてリチウム含有複合酸化物(A1)を選択した場合、該実施形態における複合体は、酸化物複合体となる。
<ジルコニア(B)>
本実施形態に用いられるジルコニア(B)は、そのXRD(X線回折)パターンにおいて、2θ=30.2±0.2°にピークトップがあるピークのピーク強度をα、28.2°±0.2°にピークトップがあるピークのピーク強度をβとした時、α/(α+β)の値が0.7〜1.0の範囲内にある。ここで、XRD測定においては、X線源としてCuKα線用いて得られるX線回折分析において、2θ値の回折パターンを読み取る。回折パターンにおけるピークの存在しない点を結んだ線をベースラインとして、各ピークのピークトップから引いた垂線におけるピークトップからベースラインと交わる点までの線分の長さを各ピークの強度とした。前記「ピークの存在しないポイント」とは、XRDチャートにおける、所謂ベースライン上のポイントを意味する。XRD測定は、通常、あるレベルのノイズ等を含むので、ピークの存在しない(回折点がない)箇所においても有意のレベルの回折X線強度を示す。そこで、測定強度から、ノイズ、バックグラウンド等の回折点に由来しないシグナルを差し引き、これをベースラインとすることができる。測定機器に組み込まれた計算によって、ベースラインを機械的に求めてもよい。
ジルコニアの結晶形態としては、単斜晶、正方晶、及び立方晶が知られている。
前記の2θ=30.2±0.2°にピークトップがあるピークは、ジルコニアの正方晶又は立方晶に帰属される。しかしながら、立方晶系の生成には極めて大きなエネルギーの印加を要する。従って、本実施形態の複合体を後述の好ましい方法によって製造した場合、前記範囲のピークは通常は正方晶に由来すると考えられる。従って本明細書においては、該ピークを便宜上正方晶のピークとして記載するが、結晶が立方晶を含み、或いは結晶の全部が立方晶である場合を除外する趣旨ではない。
一方の2θ=28.2°±0.2°にピークトップがあるピークは、ジルコニアの単斜晶に帰属される。
従って、ジルコニアのα/(α+β)値が前記範囲にあるということは、該ジルコニアにおける正方晶(及び立方晶)の割合が多いことを意味する。
ジルコニア結晶は、室温においては単斜晶で得られる場合が多い。この単斜晶系ジルコニアを加熱していくと、約1,100℃において、結晶内部に酸素欠損が存在する正方晶へ転移し、更に温度を上昇させると、約2,400℃において立方晶へと転移する。室温において正方晶を安定に得るには、例えばY、Ca、Mg等を、極めて高い温度で固溶させ、結晶構造内に酸素空孔を生じさせることにより、正方晶系の結晶を安定化させる技術が知られてはいる。しかしながら、正方晶又は立方晶を簡便に得ることは困難である。
本実施形態においては、正方晶を主体としたジルコニアを用いる。正方晶ジルコニアは、結晶構造内部に酸素欠損が存在するためにイオン伝導性が高いことが特徴である。本実施形態においては、正極活物質として、この正方晶ジルコニアを前記リチウム含有成分(A)と組み合わせて用いた場合に、レート特性及びサイクル特性双方の向上が達成されている。このような現象が起こる理由は詳らかではないが、本発明者は以下のように推定している。すなわち:
レート特性が向上する理由は、イオン伝導性が高い正方晶ジルコニアが、電池の充放電の際に、電解液と活物質との界面においてリチウムイオンの出入りを円滑にするチャンネルのような役目を果たすことによるのではないか。リチウムイオンの移動抵抗が低下することにより、電池としての抵抗が低下し、結果的に大電流の場合にも高い電気容量が得られ、従ってレート特性が向上すると考えられる。
また、サイクル特性向上の理由としては、以下の2つの要因が複合的に影響しているものと思われる:
第一に、ジルコニアの正方晶の硬度が高いこと。ジルコニア正方晶の結晶は、単斜晶の結晶より硬度が高い特徴がある。材料の機械的強度が高まることにより、充放電を繰り返す際の活物質の膨張及び収縮が緩和される。このことにより、活物質の歪及び表面割れが緩和されるため、サイクル特性が良好になるのであろう。
第二に、ジルコニアが化学的に不活性であること。従って、ジルコニアが活物質の表面に存在すると、活物質表面の電解液分解活性を持つ活性点が電解液と直接接触する確率が減る。このことによって、電解液の分解に由来する電池の劣化が抑制され、従ってサイクル特性が良好になると考えられる。
前記α/(α+β)の値は、得られる非水系リチウムイオン二次電池において高いイオン伝導性を実現してレート特性をより高くするとの観点から、0.9〜1.0の範囲であることが好ましい。
ジルコニアのα/(α+β)値が前記範囲に入るのであれば、本実施形態におけるジルコニア(B)として、Y、Mg、及びCaから選択される1種以上の他の金属の酸化物を固溶化させて得たものを用いてもよい。この場合、ジルコニア(B)における他の金属の割合としては、ジルコニア(B)中の全金属に対して、30モル%以下とすることが好ましく、15モル%以下とすることがより好ましい。
ジルコニア(B)の使用比率は、複合体の全体に対して、0.1〜10質量%の範囲で用いることが好ましい。本実施形態の効果を十分に発現するために、0.1質量%以上の比率とすることが好ましく、ジルコニア比率が過度に高くなることによる活物質重量当たりの電気容量の低下を抑えるため、10質量%以下の範囲で用いることが好ましい。より好ましくは、0.3〜6.0重量%の範囲で用いられる。
<リチウム含有成分(A)とジルコニア(B)との混合形態>
本実施形態の複合体におけるリチウム含有成分(A)とジルコニア(B)との混合形態としては、例えば両者が均一に混合された状態、及び被覆された状態で用いることが好ましい。
前記の両者が均一に混合された状態とは、複合体において、リチウム含有成分(A)とジルコニア(B)とが一次粒子レベルで均質に混合された状態をいう。一部に二次粒子又は二次凝集体を形成することは許容される。
前記の被覆された状態とは、複合体が、リチウム含有成分(A)から成る粉体の表面にジルコニア(B)が存在する状態にあることをいう。この場合、リチウム含有成分(A)から成る粉体は、一次粒子でも二次粒子でもよく、或いはこれらが混合した状態であってもよい。ジルコニア(B)は、リチウム含有成分(A)から成る粉体の表面上に、微粒子状で存在していてもよいし、フィルム状で存在していてもよい。また、ジルコニア(B)は、リチウム含有成分(A)から成る粉体の表面全体を被覆していてもよく、該粉体の表面の一部のみを被覆した状態であってもよい。しかしながら、サイクル特性をより高くするとの観点から、全面を被覆した状態が好ましい。
<複合体のサイズ>
本実施形態における複合体は、粒子状であることが好ましい。例えば一次粒子と、該一次粒子が凝集した二次粒子とから成る粉体であることができる。一次粒子は、それ自身が単結晶であってもよく、複数の単結晶が異なる面方位で結合したものであってもよい。二次粒子は、他の粒子との結合箇所がなく、1つの粒子として単離できる形態のものである。
一次粒子の平均粒子径である平均一次粒径は、特に限定されるものではない。しかしながら、平均一次粒径が大きくなりすぎると、最終的に得られる複合体の結晶の平均一次粒径も大きくなる結果、放電時に大電流を流し難くなる。そのため、好適な平均一次粒径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。但し、平均一次粒径が小さくなりすぎると電池としての耐久性(長期保存特性、充放電の繰り返しによる劣化特性等)が悪化するため、好適な平均一次粒径は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。
本実施形態の複合体において、ジルコニア(B)は、前述したとおり、好ましくはリチウム含有成分(A)と均質に混合された状態であるか、或いはリチウム含有成分(A)の表面を被覆した状態である。
分散状態及び被覆状態の双方において、ジルコニア(B)が粒子状である場合、その粒子サイズとしては、組み合わせて使用するリチウム含有成分(A)の粒子の大きさ、凝集状態等に応じて、適宜に選択することができる。ジルコニア(B)の粒子サイズは、一次粒子の平均粒径として、1nm〜100nmであることが好ましい。1nm未満では粒界が多くなることにより抵抗が大きくなり、100nmを超えるとリチウム含有成分(A)との固着が十分でなくなる。得られる酸化物複合体のイオン伝導性を高める観点から、ジルコニア(B)は、好ましくは平均粒径が5nm〜50nmの範囲の粒子として用いられる。
<複合体の製造方法>
本実施形態における複合体の製造方法としては、リチウム含有成分(A)が、前記一般式LiMO(式中のMは、Li以外の1種以上の金属であり、xは0.4<x<2.2の範囲の数であり、yは1.4<y<3.0)で表されるリチウム含有複合酸化物(A1)、又はリチウム原子及びポリアニオンから構成されるリチウム含有錯体(A2)となり、ジルコニア(B)のXRDパターンにおける前記α/(α+β)の値が0.7〜1.0の範囲内となる方法であれば、制限なく採用することができる。例えば、リチウム含有成分(A)とジルコニア(B)とを一括して製造する方法(この方法によれば、リチウム含有成分(A)とジルコニア(B)とが均質に混合された状態の複合体が得られる。);
先ずリチウム含有成分(A)を製造し、次いで該リチウム含有成分(A)の存在下でジルコニア(B)を製造する方法(この方法によれば、リチウム含有成分(A)から成る粉体の表面にジルコニア(B)が被覆された複合体が得られる。)
等の方法を挙げることができる。
しかしながら、本発明の効果を最大限に発揮するために、少なくともジルコニア(B)を製造する工程においては、ゲル化燃焼法を採用することが好ましい。ゲル化燃焼法によってジルコニア(B)を製造すると、選択的に正方晶の結晶形態が得られ、しかも製造操作が簡便であるため、ゲル化燃焼法が好ましく用いられる。
ゲル化燃焼法とは、酸化性の配位子を有する金属塩と、燃焼性の配位子を有する金属塩とから成る燃焼性ゲルを熱処理して、該燃焼性ゲルを瞬時に熱分解させることにより、均質で微細な微粉体酸化物の粉体を得る技術である。
ゲル化燃焼法により、選択的に正方晶ジルコニアが得られる理由は、はっきりとは分からない。しかし、本発明者等は、結晶の形成過程で有機物燃焼に伴う還元過程が存在するため、結晶内の酸素が引き抜かれて酸素欠損が生成することにより、正方晶として安定化するのではないかと推察している。
前記酸化性の配位子を有する金属塩としては、例えば硝酸塩、硫酸塩等を;
前記燃焼性の配位子を有する金属塩としては、例えばクエン酸塩、酢酸塩、グリシン塩、シュウ酸塩等を、
それぞれ挙げることができる。これらの塩は、無水塩であっても含水塩であってもよい。酸化性の配位子を有する金属塩として硝酸塩を、燃焼性の配位子を有する金属塩としては酢酸塩を、それぞれ使用することが、最も好ましい。
前記酸化性の配位子を有する金属塩と燃焼性の配位子を有する金属塩との使用比率は、熱処理時の熱分解の状態、得られる金属酸化物の均質性、得られる金属酸化物の所望の酸化・還元の状態等に応じて、適宜に決定することができる。すなわち、最終的に得られる金属酸化物を還元側としたい場合は燃焼性配位子の比率を高め、酸化側としたい場合は酸化性配位子の比率を高めることにより、調整することができる。本実施形態においては、ジルコニアの結晶が正方晶が主体となるように調整される。燃焼性の配位子を有する金属塩/酸化性の配位子を有する金属塩の比が、2〜5(モル比)の範囲で用いることが好ましく、更に好ましくはこの比が2.5〜3.5となる範囲である。
ゲル化燃焼法においては、
先ず、上記のような酸化性の配位子を有する金属塩及び燃焼性の配位子を有する金属塩を所定の割合で含有する水溶液を調製し、
次いで、前記水溶液から水を除去して均質な燃焼性ゲルとし、そして
この燃焼性ゲルを熱処理する。この熱処理によって得られた粉体を、更に粉砕・撹拌後、焼結を行って結晶の成長を調整してもよい。
前記金属塩水溶液における金属塩濃度としては、酸化性の配位子を有する金属塩及び燃焼性の配位子を有する金属塩の合計濃度として、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜30質量%であることがより好ましい。この溶液は、より安定した燃焼性ゲルを得る目的で、調製後に熟成を行ってもよい。この熟成は、酸化性配位子と燃焼性配位子による好ましい複合塩の成長を促す目的で、例えば50〜80℃において、溶液の撹拌を10分〜20時間の範囲で継続することにより行うことができる。
燃焼性ゲルは、該溶液に対して加熱及び減圧から選択される1種以上の操作を加えて溶媒を除去し、乾固する方法により得ることができる。
前記燃焼性ゲルの熱処理は、最高到達温度を好ましくは300℃〜500℃として行われる。ゲルに含まれる配位子を十分に分解させるため300℃以上の温度とすることが好ましく、粒子サイズ及び金属の分布が不均一になることを抑えるため500℃以下とすることが好ましい。最も好ましくは300℃〜400℃の範囲である。熱処理の際の昇温の速度は、10℃/時間〜200℃/時間の範囲で操作することができる。均質な熱分解の観点から昇温の速度は遅い方が好ましいが、製造の効率を高めるために10℃/時間以上の速度で行われる。一方で、均質な熱分解粉体を得るために200℃/時間以下の温度で操作される。好ましくは50℃/時間〜150℃/時間の範囲の昇温速度である。最高到達温度における保持時間としては、10分〜12時間が好ましく、20分〜5時間がより好ましい。熱処理後の冷却速度は任意である。
熱処理後には、最終的に得られる金属酸化物の均質性を高める目的で、粉砕・混合操作を行うことが好ましい。粉砕・混合操作後の粉体はジルコニアの正方晶の比率を高め、金属酸化物の粒子サイズ及び結晶の成長を更に好ましい状態とするために、500℃〜1,000℃の範囲で焼結操作を行うことができる。ジルコニアの正方晶の比率を高め、十分に結晶を成長させるためには500℃以上の条件が好ましく、結晶が成長し過ぎる等の問題を避けるために1,000℃以下の条件が好ましい。更に好ましくは、700℃〜950℃の条件である。焼結時間は、好ましくは30分〜36時間であり、より好ましくは3〜12時間である。
なお、好ましい状態で最終的な酸化物複合体が得られるのであれば、熱処理のみを行う条件で実施してもよいし、粉砕・混合の操作を省略して熱処理と焼結操作とを連続して実施してもよい。
本実施形態における複合体の好ましい製造方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
(1)リチウム含有成分(A)とジルコニア(B)とをゲル化燃焼法によって一括して製造する方法(方法(1));
(2)先ずリチウム含有成分(A)をゲル化燃焼法によって製造し、次いで該リチウム含有成分(A)の存在下でジルコニア(B)をゲル化燃焼法によって製造する方法(方法(2));及び
(3)先ずリチウム含有成分(A)を共沈法によって製造し、次いで該リチウム含有成分(A)の存在下でジルコニア(B)をゲル化燃焼法によって製造する方法(方法(3))。
以下、リチウム含有成分(A)がリチウム含有複合酸化物(A1)の場合を例として説明する。
前記方法(1)は、例えば以下の原料を使用して、前述の方法を段階的に行うことにより、実施することができる。
リチウム含有複合酸化物(A1)を与える酸化性の配位子を有する金属塩としては、リチウム塩として例えばLiNO、LiSO等を;
Ni塩として例えばNi(NO・6HO、NiSO・6HO等を;
Co塩として例えばCo(NO・6HO、CoSO・7HO等を;
Mn塩として例えばMn(NO・6HO、MnSO・5HO等を、
それぞれ挙げることができる。
リチウム含有複合酸化物(A1)を与える燃焼性の配位子を有する金属塩としては、リチウム塩として例えばLi(CHCOO)・2HO、Li・4HO(クエン酸リチウム4水和物)等を;
Ni塩として例えばNi(CHCOO)・4HO、Ni(C・14HO(クエン酸ニッケル14水和物)、NiC・2HO(シュウ酸ニッケル2水和物)等を;
Co塩として例えばCo(C・4HO、Co(C)・14HO(クエン酸コバルト14水和物)、CoC・4HO(シュウ酸ニッケル4水和物)等を;
Mn塩として例えばMn(CHCOO)・4HO、Mn(C(クエン酸マンガン)、MnC・2HO(シュウ酸マンガン2水和物)等を、
それぞれ挙げることができる。
ジルコニア(B)を与える酸化性の配位子を有する金属塩としては、例えばZrO(NO・2HO、Zr(SO・4HO等を;
燃焼性の配位子を有する金属塩としては、例えばZrO(C2、等を、
それぞれ挙げることができる。ジルコニア(B)源としては、これら以外に、Y、Mg、及びCa源として、例えばY(NO)・6HO、Y(CHCOO)・4H
、Mg(NO)・6HO、Mg(CHCOO)・4HO、Ca(NO)・4HO、Ca(CHCOO)・HO等を、前記の範囲内で併用してもよい。
前記方法(1)においては、上記した金属塩を、所望の金属組成となり、且つ、燃焼性の配位子を有する金属塩/酸化性の配位子を有する金属塩の比が前記の範囲内となるように、混合して使用する。そして該金属塩混合物に対して前述のゲル化燃焼法を適用することにより、本実施形態における好ましい複合体(酸化物複合体)を得ることができる。
前記方法(2)は、先ずリチウム含有複合酸化物(A1)をゲル化燃焼法によって製造し、次いで該リチウム含有複合酸化物(A1)の存在下でジルコニア(B)をゲル化燃焼法によって製造する方法である。
ゲル化燃焼法によるリチウム含有複合酸化物(A1)の製造は、リチウム含有複合酸化物(A1)を与える金属塩を、所望の金属組成となるように選択して使用し、これに前述のゲル化燃焼法を適用する。ただし、この場合の製造条件は、ジルコニアの結晶形態とは無関係であるので、燃焼性の配位子を有する金属塩/酸化性の配位子を有する金属塩の比は、任意の値とすることができる。しかしながら、1〜6(モル比)の範囲で用いることが好ましく、均質な酸化物が得られる観点から、この比が2〜4となる範囲が更に好ましい。
次いで、前記で製造されたリチウム含有複合酸化物(A1)の存在下でジルコニア(B)をゲル化燃焼法によって製造する。そのためには、ジルコニア(B)を製造するための金属塩水溶液中に、前記リチウム含有複合酸化物(A1)を共存させた状態で、以降の操作を継続すればよい。
ゲル化燃焼法によってジルコニア(B)を製造する場合、ジルコニア(B)を与える金属塩とともに、リチウム含有複合酸化物(A1)を与える金属塩を併用してもよい。このことにより、燃焼性の配位子を有する金属塩/酸化性の配位子を有する金属塩の比を容易に所望範囲に調整することが可能となる。
前記方法(3)においては、先ずリチウム含有複合酸化物(A1)を共沈法によって製造し、次いで該リチウム含有複合酸化物(A1)の存在下でジルコニア(B)をゲル化燃焼法によって製造する。
共沈法によるリチウム含有複合酸化物(A1)の製造は、定法に従って行うことができる。例えばLi塩およびその他の金属塩を、所定の割合で含有する水溶液を調製し、該水溶液にアルカリを加えて得られる沈殿を、乾燥して焼成する方法によることができる。前記金属塩の一部を、アルカリによって生ずる沈殿に後添加し、必要に応じて粉砕・混合したうえで、焼成に供してもよい。
前記Li塩としては、例えばLiNO、Li(CHCOO)・2HO、LiCO、LiOH・HO等を挙げることができる。前記その他の金属塩としては、
Ni塩として例えばNiSO・6HO、Ni(NO・6HO、Ni(CHCOO)・4HO等を;
Co塩として例えばCoSO・7HO、Co(NO・6HO、Co(CHCOO)・4HO等を;
Mn塩として例えばMnSO・5HO、Mn(NO・6HO、Mn(CHCOO)・4HO等を、
それぞれ挙げることができる。これら金属塩の水溶液における金属塩の合計濃度は、水溶液の塩の濃度として、例えば0.2mol/L〜5mol/Lとすることができ、1mol/L〜3mol/Lの間で用いることが好ましい。
前記アルカリとしては、例えばNaCO、NaOH、KOH、NHOH等の水溶液を挙げることができる。共沈操作の際の液は、pHを5.0〜13.0の範囲に調整して行われることが好ましく、より好ましくは6.0〜12.0の範囲である。
得られた沈殿の乾燥は、好ましくは100〜150℃、より好ましくは105〜130℃において、好ましくは30分〜36時間、より好ましくは4〜20時間行われる。回収した乾燥沈殿物を、次いで焼成する。焼成は、加熱炉等の適宜の加熱装置中において、酸素が存在する雰囲気下で行うことができる。最終的に得られる複合体中の結晶の成長の状態、元素分散性、粒子の形状、及び粒子サイズを好ましい状態とするために、一次焼成及び二次焼成に分けて焼成を行ってもよい。一次焼成は、酸素が存在する雰囲気下で、好ましくは300℃〜650℃、より好ましくは400℃〜600℃において、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは2時間〜12時間の条件で行うことができる。得られた一次焼成後の粉体を、必要に応じて粉砕及び混合した後、二次焼成を行う。二次焼成は、650℃から1,200℃の範囲で行うことが好ましい。十分な結晶の成長を得るために650℃以上の温度が好ましく、粉体の比表面積が小さくなり過ぎてレート特性が低下することを避けるために1,200℃以下の温度で行われることが好ましい。十分な結晶成長が得られ、レート特性において良好な特性が得られるとの観点から、二次焼成の温度としては、700℃〜1,000℃の範囲が好ましく、最も好ましくは750℃〜950℃の範囲である。
元素の分散状態、粒子の形状、サイズ、及び結晶の成長程度において好ましい状態を得られるのであれば、一次焼成を省略して二次焼成のみを行ってもよい。
次いで、前記で製造されたリチウム含有複合酸化物(A1)の存在下でジルコニア(B)をゲル化燃焼法によって製造する。このゲル化燃焼法によるジルコニア(B)の製造は、前記方法(2)の場合と同様にして行うことができる。
リチウム含有成分(A)がリチウム含有錯体(A2)である場合については、上記の方法に当業者による適宜の変更を加えたうえで実施することにより、所望の複合体を製造することができる。
<非水系リチウムイオン二次電池>
本実施形態における非水系リチウムイオン二次電池は、上述した複合体を正極活物質として用いた電池であり、例えば、図1に概略的に断面図を示すリチウムイオン二次電池であることができる。
図1に示すリチウムイオン二次電池100は、セパレータ110と、そのセパレータ110を両側から挟む正極120及び負極130と、から成る積層体、並びに前記積層体を挟む正極集電体140(正極の外側に配置)と、負極集電体150(負極の外側に配置)と、これらを収容する電池外装160と、を備える。正極120とセパレータ110と負極130との積層体は、電解液(図示せず)に含浸されている。これらの各部材を構成する材料としては、正極活物質として本実施形態の複合体を用いること以外は、公知のリチウムイオン二次電池に備えられるものと同様のものを用いることができる。具体的には例えば、後述のものが挙げられる。
<正極>
正極は、本実施形態の複合体を正極活物質として用いることの他は、非水系リチウムイオン二次電池の正極として作用するものであれば特に限定されず、例えば、下記のようにして得られる。
先ず、上記正極活物質を、必要に応じて用いられる他の成分(例えば導電助剤、バインダー等)とともに混合した正極合剤を溶剤に分散させて正極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この正極合剤含有ペーストを正極集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、更に必要に応じて加圧し厚みを調整することにより、正極が作製される。
正極の作製にあたって、必要に応じて用いられる導電助剤としては、例えば、グラファイト;アセチレンブラック、ケッチェンブラック等に代表されるカーボンブラック;炭素繊維等が挙げられる。導電助剤の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは10nm〜10μm、より好ましくは20nm〜1μmである。
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
前記正極合剤含有ペースト中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。
正極集電体は、例えば、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔により構成される。これらの材料にカーボンコートが施されたもの、これらの材料をメッシュ状に加工されたものでもよい。
<負極>
負極としては、非水系リチウムイオン二次電池の負極として作用するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。
負極は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムから成る群より選ばれる1種以上の材料を含有すると好ましい。そのような材料としては、金属リチウム、リチウムと合金を形成することが可能な元素を含む材料等の金属材料の他;
例えば、アモルファスカーボン(ハードカーボン)、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド、カーボンブラックに代表される炭素材料が挙げられる。これらのうち、コークスとしては、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等が挙げられる。有機高分子化合物の焼成体とは、フェノール樹脂、フラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものである。炭素材料には、炭素以外にも、O、B、P、N、S、SiC、BC等を含有する異種化合物が含まれていてもよい。異種化合物の含有量としては、負極活物質の全体に対して、0〜10質量%であることが好ましい。前記リチウムと合金を形成することが可能な金属は、金属又は半金属の単体であっても合金であっても化合物であってもよく、また、これらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものであってもよい。
負極活物質の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.1μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmである。
負極は、例えば、下記のようにして得られる。
先ず、上記負極活物質を必要に応じて用いられる他の成分(例えば導電助剤、バインダー等)とともに混合した負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この負極合剤含有ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、更に必要に応じて加圧して厚みを調整することにより、負極を作製する。
ここで、負極合剤含有ペースト中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。負極集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔等の金属箔により構成される。
負極の作製にあたって、必要に応じて用いられる導電助剤としては、例えば、グラファイト;アセチレンブラック、ケッチェンブラック等に代表されるカーボンブラック;炭素繊維等が挙げられる。導電助剤の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.1μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmである。バインダーとしては、例えば、PVDF、PTFE、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
<電解液>
本実施形態における非水系リチウムイオン二次電池に用いられる電解液としては、少なくとも非水系溶媒とリチウム塩とを含有し、非水系二次電池の電解液として作用するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。電解液は、水分を含まないことが好ましいが、所望の作用効果を阻害しない範囲であれば、極く微量の水分を含有してもよい。そのような水分の含有量は、電解液の全量に対して、例えば、0〜100ppmである。
非水系溶媒としては、特に制限はなく、例えば、非プロトン性溶媒が挙げられ、中でも、非プロトン性極性溶媒が好ましい。
非水系溶媒の具体例としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、トランス−2,3−ブチレンカーボネート、シス−2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、トランス−2,3−ペンチレンカーボネート、シス−2,3−ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネートに代表される環状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンに代表されるラクトン;スルホラン、ジメチルスルホキシドに代表される硫黄化合物;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサンに代表される環状エーテル;メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートに代表される鎖状カーボネート;アセトニトリル、プロピオノニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、アクリロニトリル等のモノニトリル;メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリルに代表されるアルコキシ基置換ニトリル;ベンゾニトリルに代表される環状ニトリル;ジメチルエーテルに代表されるエーテル;メチルプロピオネートに代表される鎖状カルボン酸エステル;ジメトキシエタンに代表される鎖状エーテルカーボネート化合物等が挙げられる。また、これらのフッ素化物に代表されるハロゲン化物も挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
非水系リチウムイオン二次電池の充放電に寄与するリチウム塩の電離度を高めるために、非水系溶媒は、環状の非プロトン性極性溶媒及び環状カーボネートから選択される1種以上含むことが好ましく、これらの双方を含むことがより好ましい。リチウム塩の溶解性、伝導度及び電離度のすべてを良好にする観点から、2種以上の上記非水系溶媒の混合溶媒であることが好ましい。
リチウム塩としては、非水系二次電池の電解液に用いられているものであれば特に制限はなく、いずれのものであってもよい。リチウム塩は、非水系電解液中に0.1〜3mol/Lの濃度で含有されることが好ましく、0.5〜2mol/Lの濃度で含有されることがより好ましい。リチウム塩の濃度が上記範囲内にあることによって、電解液の導電率が高い状態に保たれると同時に、非水系二次電池の充放電効率も高い状態に保たれる傾向がある。
本実施形態におけるリチウム塩は、特に制限はないが、無機リチウム塩であることが好ましい。無機リチウム塩は、通常の非水系電解質として用いられているものであれば特に限定されず、いずれのものを用いてもよい。そのような無機リチウム塩の具体例としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、Li1212−b〔bは0〜3の整数〕等の他、多価アニオンと結合されたリチウム塩等が挙げられる。
これらの無機リチウム塩は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。中でも、無機リチウム塩としてフッ素原子を有する無機リチウム塩を用いると、正極集電体の表面に不働態皮膜を形成し、内部抵抗の増加を抑制することができる点で、好ましい。また、フッ素原子とともにリン原子を有する無機リチウム塩がより好ましく、LiPFが特に好ましい。
無機リチウム塩の含有量は、非水系電解液の全量に対して0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、5〜25質量%であることが更に好ましい。
本実施形態における非水系リチウムイオン二次電池の非水系電解液には、少なくとも非水系溶媒とリチウム塩とが含有されていればよいが、更に、任意的に添加剤が含有されていてもよい。添加剤は、その機能が上記の非水系溶媒と実質的に重複してもよい。添加剤は、本実施形態における非水系電解液及び非水系二次電池の性能向上に寄与する物質であることが好ましいが、電気化学的な反応には直接関与しない物質をも包含する。添加剤は、1成分を単独で又は2成分以上を組み合わせて用いる。
添加剤の具体例としては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5,5−テトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5−トリフルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンに代表されるフルオロエチレンカーボネート;
ビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートに代表される不飽和結合含有環状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン;1,2−ジオキサンに代表される環状エーテル;メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルホルメート、エチルアセテート、エチルプロピオネート、エチルブチレート、n−プロピルホルメート、n−プロピルアセテート、n−プロピルプロピオネート、n−プロピルブチレート、イソプロピルホルメート、イソプロピルアセテート、イソプロピルプロピオネート、イソプロピルブチレート、n−ブチルホルメート、n−ブチルアセテート、n−ブチルプロピオネート、n−ブチルブチレート、イソブチルホルメート、イソブチルアセテート、イソブチルプロピオネート、イソブチルブチレート、sec−ブチルホルメート、sec−ブチルアセテート、sec−ブチルプロピオネート、sec−ブチルブチレート、tert−ブチルホルメート、tert−ブチルアセテート、tert−ブチルプロピオネート、tert−ブチルブチレート、メチルピバレート、n−ブチルピバレート、n−ヘキシルピバレート、n−オクチルピバレート、ジメチルオキサレート、エチルメチルオキサレート、ジエチルオキサレート、ジフェニルオキサレート、マロン酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステルに代表されるカルボン酸エステル;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドに代表されるアミド;エチレンサルファイト、プロピレンサルファイト、ブチレンサルファイト、ペンテンサルファイト、スルホラン、3−メチルスルホラン、3−スルホレン、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロパンジオール硫酸エステル、テトラメチレンスルホキシド、チオフェン1−オキシドに代表される環状硫黄化合物;モノフルオロベンゼン、ビフェニル、フッ素化ビフェニルに代表される芳香族化合物;ニトロメタンに代表されるニトロ化合物;シッフ塩基;シッフ塩基錯体;オキサラト錯体が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態における非水系電解液における添加剤の含有量について特に制限はないが、非水系電解液の全量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。
<セパレータ>
本実施形態における非水系リチウムイオン二次電池は、正負極間の短絡防止、シャットダウン等によって安全性を付与する等の観点から、正極と負極との間にセパレータを備えることが好ましい。セパレータとしては、公知の非水系リチウムイオン二次電池に備えられるものと同様であってもよい。セパレータは、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。
本実施形態における非水系リチウムイオン二次電池のセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂から成る微多孔膜;
セルロース、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂、ポリオレフィン等の樹脂と、アルミナ、シリカ等の1種以上の無機物との混合物を含む構造体;
不織布、抄紙、多孔膜等の表面に、前記樹脂と無機物との混合物を被覆して成る構造体
等が挙げられる。
セパレータは、1種の微多孔膜を単層又は複数積層したものであってもよく、2種以上の微多孔膜を積層したものであってもよい。
<電池の作製方法>
本実施形態における非水系リチウムイオン二次電池は、上述の電解液、複合体を用いて作製した正極、負極、及び必要に応じてセパレータを用いて、公知の方法により作製される。例えば、正極と負極とを、その間にセパレータを介在させた積層体とし、
該積層体を巻回して、積層体の巻回体に成形する態様;
該積層体を折り曲げて、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレータが介在する多層構造の積層体に構成する態様;
該積層体を複数層に積層して、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレータが介在する多層構造の積層体に構成する態様
等によって、電極積層体を構成する。次いで、該電極積層体を電池ケース(外装)内に収容して、電解液をケース内部に注液し、上記積層体を電解液に浸漬して封印することによって、本実施形態の非水系二次電池を作製することができる。或いは、ゲル化させた電解液を含む電解質膜を予め作製しておき、正極、負極、該電解質膜、及び必要に応じてセパレータを、上述の方法に準じ多孔性の電極積層体を形成した後、該電極積層体を電池ケース内に収容して非水系リチウムイオン二次電池を作製する方法も可能である。
本実施形態の非水系リチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形、楕円形、角筒型、ボタン形、コイン形、扁平形、ラミネート形等が好適に採用される。
本実施形態における非水系リチウムオン二次電池は、初回充電により電池として機能し得るが、初回充電の際に電解液の一部が分解することにより、安定化する。本実施形態における初回充電の方法について特に制限はないが、初回充電が0.001〜0.3Cで行われることが好ましく、0.002〜0.25Cで行われることがより好ましく、0.003〜0.2Cで行われることが更に好ましい。また、初回充電が定電圧充電を途中に経由して行われることも好ましい結果を与える。
尚、定格容量を1時間で放電する定電流値が1Cである。リチウム塩が電気化学的な反応に関与する電圧範囲を長く設定することによって、電極表面にSEI(Solid Electrolyte Interphase)が形成され、正極を含めた内部抵抗の増加を抑制する効果がある。また、反応生成物が負極のみに強固に固定化されることなく、何らかの形で正極やセパレータ等、負極以外の部材にも良好な効果を与える。そのため、電解液に溶解したリチウム塩の電気化学的な反応を考慮して初回充電を行うことは非常に有効である。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、実施例等によって本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で調製した酸化物複合体を正極活物質として使用した非水系リチウムイオン二次電池の特性は、以下の手順により評価した。
<非水系リチウムイオン二次電池の作製>
(1)電極作製
(1−1)正極の作製
各実施例又は比較例で調製した酸化物複合体を正極活物質として用い、これに、導電助剤として数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを、4:5:1の質量比で混合した。得られた混合物にエタノールを含ませながら乳鉢上で混合し、乳棒により加圧することで引き伸ばしてシート状にした。このシートを室温において2時間静置して溶媒を除去した後、20mgを切り出して、正極シートとした。15.958mmφのアルミニウムメッシュの片面上に、切り出した正極シートを2トン/cmで圧着した後、真空乾燥することにより、正極(P)を得た。
(1−2)負極の作製
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末、並びに
バインダーとしてカルボキシメチルセルロース溶液(固形分濃度1.83質量%)及びジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、分散媒:水、固形分濃度40質量%)を、
90:10:1.44:1.76の固形分質量比で、全体の固形分濃度が45質量%になるように混合して、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さ10μmの銅箔から成る集電体の片面に塗布し、60℃において10時間静置して溶剤を除去した後、ロールプレスで圧延することにより、負極(N)を得た。
この負極(N)は、集電体単位面積当たりの活物質の質量が5.0mg/cm±3%、活物質層の厚さが40μm±3%、活物質層の密度が1.25g/cm±3%、塗工幅が銅箔の幅200mmに対して150mmになるように作製した。
(2)電解液の調製
溶媒としてエチルメチルカーボネート(EMC)及びエチレンカーボネート(EC)を容量比で7:3の割合で混合した溶媒を用い、リチウム塩としてLiPFを1mol/Lの濃度となるように添加することにより、電解液を調製した。
(3)評価用電池の作製
上述のようにして得られた正極(P)と、上述のようにして得られた負極(N)を直径16mmの円盤状に打ち抜いたものとを、ポリエチレンから成るセパレータ(膜厚25μm、空孔率50%、孔径0.1μm〜1μm)の両側に重ね合わせて積層体を得た。その積層体をSUS製のコイン型電池ケースに挿入した。次いで、その電池ケース内に電解液を0.1mL注入して積層体を電解液に浸漬した後、電池ケースを密閉した。その後、25℃において24時間保持し、積層体に電解液を十分馴染ませることにより、小型の評価用電池(非水系リチウムイオン二次電池)を得た。
この非水系リチウムイオン二次電池の構造については、添付の図1も参照のこと。
<非水系リチウムイオン二次電池の評価>
(1)レート特性の評価1
実施例1〜4、並びに比較例1〜2及び4〜5における非水系リチウムイオン二次電池は、正極活物質として、Li過剰構造を有するリチウム含有の酸化物複合体を用いた。そのため、高い電気容量を得るために、初回充電時に高い充電電圧で充電を行って活物質の活性化を行った後、レート特性の評価を実施した。
測定は、アスカ電子(株)製の充放電装置ACD−01(商品名)及びヤマト科学(株)製の恒温槽IN−804(商品名)を用いて行った。
各非水系リチウムイオン二次電池について、電流値0.2mA(0.1C Rate)において定電流充電(初回充電)を行って4.7Vに到達した後、電圧値4.7Vにおける定電圧充電を行い、前記定電流充電と定電圧充電との合計充電時間が8時間となるように充電を行った。前記充電後、電流値0.2mA(0.1C Rate)にて2.0Vまで定電流放電を行い、初回放電容量を求めた。
次いで、前記と同様にして定電流充電及び定電圧充電を行った後、電流値0.6mA(0.3C Rate)にて、2.0Vまで定電流放電を行い、0.3C Rateにおける放電容量を求めた。更に、前記と同様にして定電流充電及び定電圧充電を行った後、電流値10mA(5C Rate)にて、2.0Vまで定電流放電を行い、5C Rateにおける放電容量を求めた。
前記充放電操作の時の電池の周囲温度は25℃に設定した。
前記で得た値を用いて、下数式に従って放電容量比を求めた。
放電容量比=[5C Rateにおける放電容量]/[0.3C Rateにおける放電容量]
(2)レート特性の評価2
実施例5及び比較例3における非水系リチウムイオン二次電池は、正極活物質としてLi過剰構造を含まない酸化物複合体を使用した例である。そのため、使用の前に特別な活性化操作を行う必要がない。これらの例においては、下記の条件によりレート特性の評価を実施した。すなわち、前記「(1)レート特性の評価1」において、初回充電の到達電圧を4.2Vとした他は、「(1)レート特性の評価1」と同様にして、初回放電容量、0.3C Rateにおける放電容量及び5C Rateにおける放電容量を求め、上記数式に従って放電容量比を求めた。
(3)容量維持率の評価1
正極活物質としてLi過剰構造を有するリチウム含有の酸化物複合体を用いた実施例1〜4並びに比較例1〜2及び4〜5における非水系リチウムイオン二次電池については、初回充電時に高い充電電圧で充電を行って活物質の活性化を行った後に、容量維持率の評価を実施した。
測定は、「(1)レート特性評価1」におけるのと同じ装置を用い用いて行った。
各非水液リチウムイオン二次電池について、電流値0.2mA(0.1C Rate)において定電流充電を行って4.7Vに到達した後、電圧値4.7Vにおいて定電圧充電を行い、前記定電流充電と定電圧充電との合計充電時間が8時間となるように充電を行った。前記充電後、電流値0.6mA(0.3C Rate)にて定電流にて2.0Vまで定電流放電を行った。次いで、電流値0.6mA(0.3C Rate)にて定電流充電を行い、4.5Vに達した後、電圧値4.5Vにおいて0.5時間の定電圧充電を行った。10分の休止後、電流値0.6mA(0.3C Rate)において定電流にて2.0Vまで定電流放電を行って、初期放電容量」を求めた。その後、上記と同様の手順で0.6mAにおける定電流充電及び定電流放電を100サイクル繰り返し、100サイクル目の放電を「100サイクル目の放電容量」とした。このときの電池の周囲温度は25℃に設定した。
前記で得た値を用いて、下記数式に従って100サイクル目の容量維持率を求めた。
100サイクル目の容量維持率(%)=「100サイクル目の放電容量」/「初期放電容量」×100
(4)容量維持率の評価2
正極活物質としてLi過剰構造を含まない酸化物複合体を使用した実施例5及び比較例3については、前記「(3)容量維持率の評価1」において、初回充電の到達電圧を4.5Vとした他は、「(3)容量維持率の評価1」と同様にして、初期放電容量及び100サイクル目の放電容量を求め、上記数式に従って100サイクル目の容量維持率を求めた。
[実施例1]
<ゲル化燃焼法による酸化物複合体の調製>
正方晶ジルコニアを主体とするジルコニアを酸化物複合体の全体に対して5.45質量%含み、Li1.2Ni0.195Co0.11Mn0.495で表される組成のリチウム含有複合酸化物を母体とする酸化物複合体を、ゲル化燃焼法により調製した。
Li源としてLi(CHCOO)・2HO及びLiNOを、
Ni源としてNi(NO・6HOを、
Co源としてCo(NO・6HOを、
Mn源としてMn(CHCOO)・4HOを、そして、
Zr源としてZrO(NO・2HOを、
それぞれ用い、Li(CHCOO)・2HO及びLiNOの使用比率を調整することにより、原料全体のCHCOO/NO比率が3/1(モル比)となるようにし、更に塩の濃度が合計で30質量%となるようにして、上記の各原料が上記組成に相当する割合で溶解した水溶液を調製した。
この水溶液が入った容器を撹拌しながら80℃に保持した状態で3時間加熱して、燃焼性ゲルを得た。得られたゲルを、到達温度400℃、室温から400℃までの昇温時間3時間、400℃における保持時間30分の条件で大気中で熱処理を行い、スポンジ状の粉体を得た。この熱処理の間、ゲルの温度の測定を継続して実施したところ、230℃において急激な温度上昇を観測し、この温度において瞬時にゲルが熱分解されていることを確認した。
次いで、得られたスポンジ状粉体を、乳鉢及び乳棒により粉砕した後、到達温度880℃、室温から到達温度までの昇温時間1.5時間、到達温度における保持時間5時間の条件で大気中において焼結を行うことにより、1gの酸化物複合体を得た。
ICP(高周波誘導結合プラズマ)を光源とする発光分光測定を行った結果、得られた酸化物複合体はLi:Ni:Co:Mn:Zr=1.2:0.195:0.11:0.495:0.04(モル比)の原子比を有することが分かり、上記の組成であることを確認した。
ICP測定は、以下のとおりに行った;
メノウ乳鉢で微細粉砕した酸化物複合体0.05gをテフロン(登録商標)容器に取り、王水8mLを加え、マイクロウェーブ加熱を行って均一に溶解した。この溶液に超純水を加えて100gとしたものをICP測定試料とした。この試料について、ICP−発光分光分析装置を用いて下記条件で測定を実施した。
測定条件:水溶媒用・サイクロンチャンバーを使用
プラズマガス流量:13(L/min)
シースガス流量:0.3(L/min)
ネブライザーガス圧:3.0(bar)
ネブライザー流量:0.2(L/min)
高周波パワー:1.0(kw)
得られた結果を市販の原子吸光分析用標準液の分析値と比較することにより、定量値を算出した。
<酸化物複合体のXRD測定>
上記で調製した酸化物複合体のXRD分析を、乳鉢で粉砕した酸化物複合体を測定試料として、下記条件で実施した。
検出器:半導体検出器
管球:Cu、管電圧:40kV
管電流:40mA
発散スリット:0.3°
ステップ幅:0.02°/step
計測時間:5sec
得られたXRDパターンは、母体であるリチウム含有複合酸化物のピークの他に、2θ=30.17°及び28.18°にピークが観測された。得られたXRDパターンを図2に示した。
次に、ジルコニア結晶における比α/(α+β)の値を調べた。
上記で得られたXRD回折パターンにおけるピークの存在しない点を結んだ線をベースラインとして、ピークトップから引いた垂線におけるピークトップからベースラインと交わる点までの線分の長さを各ピークの強度とした。
図2のパターンにおいては、30.17°のピークをピークαとしてその強度をαとし、28.18°のピークをピークβとしてその強度をβとして、α/(α+β)の値を求めたところ0.95であった。
[実施例2]
母体であるリチウム含有複合酸化物の組成をLi1.2Ni0.175Co0.1Mn0.525とし、ジルコニアの含有比率を5.37重量%とし、そして焼結温度を900℃とすること以外は実施例1と同様の方法により、酸化物複合体を調製した。
ICP測定の結果、得られた酸化物複合体は、Li:Ni:Co:Mn:Zr=1.2:0.175:0.10:0.525:0.04(モル比)の原子比を有し、所定量のZrを含む酸化物複合体であることを確認した。この酸化物複合体について、実施例1と同様の方法によりα/(α+β)を求めたところ、0.93であった。
[実施例3]
<共沈法によるリチウム含有複合酸化物の調製>
酸化物複合体の母体となるLi1.2Ni0.175Co0.10Mn0.525で表される組成を有するリチウム含有複合酸化物を、共沈法により調製した。
NiSO・6HO、CoSO・7HO、及びMnSO・5HOを、上記の組成に相当する割合で蒸留水に溶解し、硫酸塩濃度2mol/Lの硫酸塩水溶液とした。
これとは別に、NaCO及びNHOHを蒸留水に溶解し、NaCO濃度2.5mol/L、及びNHOH濃度1mol/LのNaCO/NHOH水溶液を調製した。
次に、前記硫酸塩水溶液を撹拌しながら、ここに前記NaCO/NHOH水溶液を徐々に添加し、金属炭酸塩の沈殿を得た。得られた金属炭酸塩を濾取し、蒸留水で数回洗浄した後、110℃において16時間乾燥を実施した。乾燥物の質量を測定し、上記組成に相当する量のLiCOを混合し、乳鉢を用いて十分に混合した後、大気中、500℃において5時間の1段目焼成を実施した。次いで、再度乳鉢で粉砕混合した後、900℃において5時間の2段目焼成を行うことにより、リチウム含有複合酸化物を5g得た。
<リチウム含有複合酸化物へのジルコニアの被覆>
上記リチウム含有複合酸化物1.0gに対して、正方晶ジルコニアを主体とするジルコニアの被覆を実施した。
最終の酸化物複合体の全体に対して0.72質量%のジルコニアに相当する量のZrO(NO・2HO及びLi(CHCOO)・2HOを、CHCOO/NO比率が3/1となる割合で蒸留水中に溶解し、50ml水溶液を調製した。
100mlナスフラスコに、前記で調製したリチウム含有複合酸化物1.0g及び上記で調製した水溶液50mlを仕込み、エバポレーターを用いてバス温度80℃、回転数50rpm、及び圧力200mHgの条件で約30分間水の留去を行って、金属原子を含む燃焼性ゲルが表面を覆った乾燥粉体を得た。次いでこの粉体を、昇温時間1.5時間、到達温度800℃、保持時間30分の条件で焼結することにより、ジルコニアが被覆された酸化物複合体を得た。
ICP測定の結果、得られた酸化物複合体はLi:Ni:Co:Mn:Zr=1.2:0.175:0.10:0.525:0.005(モル比)の原子比を有し、所定量のZrが被覆された酸化物複合体であることを確認した。得られた酸化物複合体のXRD測定を行い、実施例1と同様の方法でα/(α+β)を求めたところ、0.91の値であった。
[実施例4]
実施例3において、ZrO(NO・2HO及びLi(CHCOO)・2HOを、それぞれ、最終の酸化物複合体の全体に対して1.21質量%のジルコニアに相当する量であり、且つCHCOO/NO比率が3/1となる量及び割合で用いたこと以外は実施例3と同様の方法により調製を行うことにより、酸化物複合体を得た。
ICP測定の結果、得られた複合酸化物は、Li:Ni:Co:Mn:Zr=1.2:0.175:0.10:0.525:0.0085(モル比)の原子比を有し、所定量のZrが被覆された酸化物複合体であることを確認した。得られた複合酸化物のXRD測定を行い、実施例1と同様の方法でα/(α+β)を求めたところ、0.82の値であった。
[実施例5]
母体となるリチウム含有複合酸化物の組成がLi1.0Ni0.33Co0.33Mn0.33となるように原料の使用量を調整した以外は、実施例3と同様の方法でリチウム含有複合酸化物を調製した。
上記で得られたリチウム含有複合酸化物1.0gを用い、ジルコニアの被覆量が最終の酸化物複合体に対して0.64質量%となるように原料の使用量を調整した以外は、実施例3と同様の方法により、ジルコニア被覆を実施した。
ICP測定の結果、得られた酸化物複合はLi:Ni:Co:Mn:Zr=1.0:0.33:0.33:0.33:0.005(モル比)の原子比を有し、所定量のZrが被覆された酸化物複合体であることを確認した。実施例1と同様の方法でα/(α+β)を求めたところ、0.85の値であった。
[比較例1]
ジルコニア源としてのZrO(NO・2HOを用いなかったこと以外は実施例1と同様のゲル化燃焼法により、ジルコニアを含まない酸化物複合体を調製した。
ICP測定の結果、得られた酸化物複合体はLi:Ni:Co:Mn=1.2:0.175:0.10:0.525(モル比)の原子比を有し、目的とする酸化物複合体であることを確認した。XRD測定においては、リチウム含有複合酸化物によるピークのみが見られた。
[比較例2]
実施例3において共沈法により調製した母体となるリチウム含有複合酸化物についてICP測定を行い、該酸化物がLi:Ni:Co:Mn=1.2:0.175:0.10:0.525(モル比)の原子比を有するリチウム含有複合酸化物であることを確認し、これを比較例2の試料とした。該試料のXRD測定においては、リチウム含有複合酸化物によるピークのみが得られた。
[比較例3]
実施例5において、共沈法により調製した母体となるリチウム含有複合酸化物についてICP測定を行い、該酸化物がLi:Ni:Co:Mn=1.0:0.33:0.33:0.33(モル比)の原子比を有するリチウム含有複合酸化物であることを確認し、これを比較例3の試料とした。該試料のXRD測定においては、リチウム含有複合酸化物によるピークのみが得られた。
[比較例4]
実施例3で得られたリチウム含有複合酸化物を母体としてジルコニアの被覆を実施した。
実施例3の<リチウム含有複合酸化物へのジルコニアの被覆>において、ZrO(NO・2HO及びLi(CHCOO)・2HOの代わりに、最終の酸化物複合体の全体に対して1.81質量%のジルコニアに相当する量のZrO(NO・2HOのみを用いたこと以外は実施例3と同様の方法により調製を行い、ジルコニアが被覆された酸化物複合体を得た。
ICP測定の結果、該酸化物複合体はLi:Ni:Co:Mn:Zr=1.2:0.175:0.10:0.525:0.0128(モル比)の原子比を有し、所定量のZrを含む酸化物複合体であることを確認した。得られた酸化物複合体のXRDパターンは、リチウム含有複合酸化物のピークの他に、2θ=28.18°及び30.55°に単斜晶の明瞭なピークと、2θ=30.17°に正方晶の微小なピークが見られ、単斜晶主体のジルコニアの形成が観測された。この酸化物複合体のXRDチャートを図3に示した。実施例1と同様の方法でα/(α+β)を求めたところ、0.07の値であった。
[比較例5]
実施例3で得られたリチウム含有複合酸化物を母体としてジルコニアの被覆を実施した。
実施例3の<リチウム含有複合酸化物へのジルコニアの被覆>において、
最終の酸化物複合体の全体に対して1.46質量%のジルコニアに相当する量のZrO(NO・2HO及びLi(CHCOO)・2HOを、CHCOO/NO比率が6/1(モル比)となるような割合で用い、
被覆操作時の焼結の条件を、昇温時間1.0時間、到達温度400℃、及び保持時間1.0時間としたこと以外は実施例3と同様の方法により調製を行い、ジルコニアが被覆された酸化物複合体を得た。
ICP測定の結果、この酸化物複合体はLi:Ni:Co:Mn:Zr=1.2:0.175:0.10:0.525:0.0102(モル比)の原子比を有し、所定量のZrを含む酸化物複合体であることを確認した。得られた酸化物複合体のXRD測定を行い、実施例1と同様の方法でα/(α+β)を求めたところ、0.53の値であった。
上記の各実施例及び比較例において調製した酸化物複合体を正極活物質として用いて作製した電池の評価結果を、以下の表に示した。
Figure 0006423223
Figure 0006423223
前述の表の結果から、本発明の複合体を用いたリチウムイオン二次電池は、いずれも高いレート特性とサイクル特性とが両立されていることが分かる。
本発明の複合体を正極活物質として用いて得られる非水系リチウムイオン二次電池は、例えば、携帯電話、携帯オーディオ、パソコン、ICタグ等の携帯機器;ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車等の自動車用充電池;住宅用蓄電システム等において好適に利用可能である。
100 非水系リチウムイオン二次電池
110 セパレータ
120 正極
130 負極
140 正極集電体
150 負極集電体
160 電池外装

Claims (8)

  1. リチウム含有成分(A)と、
    ジルコニア(B)と
    を含有する複合体であって、
    前記リチウム含有成分(A)が、下記の(A1)〜(A2):
    (A1)下記組成(1):
    Li Mn 1−z M’ 3−α ・・・(1)
    {式中、M’は、Mn及びLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦z<1、及び0≦α<1の関係を満足する。}で表されるLiが層状に配列した層状構造を有するリチウム含有複合酸化物、並びに
    (A2)リチウム原子及びポリアニオンから構成されるリチウム含有錯体
    から選択され、そして、
    前記ジルコニア(B)のXRDパターンにおいて、2θ=30.2°±0.2°にピークトップがあるピークのピーク強度をα、28.2°±0.2°にピークトップがあるピークのピーク強度をβとした時、α/(α+β)の値が0.7〜1.0の範囲内(ただし、1.0を除く。)にあることを特徴とする、非水系リチウムイオン二次電池の正極活物質用複合体。
  2. 前記α/(α+β)の値が0.70.95の範囲内にある、請求項1記載の複合体。
  3. 前記ジルコニア(B)の含有割合が、複合体の全量に対して、0.1〜10質量%である、請求項1又は2記載の複合体。
  4. 前記リチウム含有複合酸化物(A1)が、
    前記組成式(1)で表される層状結晶構造と、
    下記組成式(2):
    Li1+kMn2−wMe’4―γ・・・(2)
    {式中、Me’は、Mn及びLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0≦w≦0.5、及び0≦γ<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造、及び
    下記組成式(3):
    LiMeO・・・(3)
    {式中、Meは、Li以外の1種類以上の金属元素である。}で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造
    から選ばれる1種類以上の結晶構造と
    が固溶した結晶構造を有するものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の複合体を含むことを特徴とする、非水系リチウムイオン二次電池の正極活物質。
  6. 請求項に記載の正極活物質を有することを特徴とする、非水系リチウムイオン二次電池。
  7. 下記(1)〜(3)のうちのいずれかの方法によって請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合体を製造することを特徴とする、複合体の製造方法:
    (1)リチウム含有成分(A)とジルコニア(B)とをゲル化燃焼法によって一括して製造する方法;
    (2)先ずリチウム含有成分(A)をゲル化燃焼法によって製造し、次いで該リチウム含有成分(A)の存在下でジルコニア(B)をゲル化燃焼法によって製造する方法;及び
    (3)先ずリチウム含有成分(A)を共沈法によって製造し、次いで該リチウム含有成分(A)の存在下でジルコニア(B)をゲル化燃焼法によって製造する方法。
  8. 前記ゲル化燃焼法が、酸化性の配位子を有する金属塩と、燃焼性の配位子を有する金属塩とから成る燃焼性ゲルを熱処理して、前記燃焼性ゲルを熱分解させることにより、酸化物の粉体を得る方法である、請求項7に記載の複合体の製造方法。
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