JP2016056072A - リチウム含有金属酸化物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リチウムイオン二次電池の正極活物質として好適な、高い容量と高いレート特性とが両立されたリチウム含有金属酸化物の製造方法を提供すること。【解決手段】少なくとも、Liと、Ni、Co、およびMnから選ばれる1種類以上の金属元素とを含むリチウム含有金属酸化物の製造方法であって、下記の工程、(1)前駆体である金属酸化物を、無機酸または有機酸を含有する酸性水溶液と接触させる工程、および(2)前記接触後の金属酸化物を、100℃より高く600℃より低い温度で焼成する工程を順に経ることを特徴とする、前記リチウム含有金属酸化物の製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、リチウム含有金属酸化物の製造方法に関する。詳しくは、高いレート特性を有するリチウムイオン二次電池の正極活物質として好適に使用することのできるリチウム含有金属酸化物の製造方法に関する。
近年の環境技術への関心の高まりに伴い、太陽光発電、風力発電などによって生み出された電気エネルギーの蓄電用途;電気自動車のバッテリー用途などおいて、蓄電デバイスに対する期待はますます高くなっている。特に、蓄電デバイスの代表であるリチウムイオン二次電池には、蓄電能力向上のために、さらなる高容量化が求められている。リチウムイオン二次電池の容量は、電池内の正極における正極活物質のリチウム含有量に支配される。そのため、リチウム含有量が多い正極活物質を用いることにより、リチウムイオン二次電池の高容量化が期待できる。
正極活物質は、一般に、1種類または複数種類のリチウム含有金属酸化物の結晶から構成される。リチウム含有金属酸化物として、組成式LiMeO2{式中、MeはLi以外の1種類以上の金属元素、好ましくは遷移金属元素である。}で表される層状リチウム酸化物結晶を用いる現在のリチウムイオン二次電池の実容量は約160mAh/gであり、これ以上容量を増やすことは現実的に困難な状況になっている。
正極活物質は、一般に、1種類または複数種類のリチウム含有金属酸化物の結晶から構成される。リチウム含有金属酸化物として、組成式LiMeO2{式中、MeはLi以外の1種類以上の金属元素、好ましくは遷移金属元素である。}で表される層状リチウム酸化物結晶を用いる現在のリチウムイオン二次電池の実容量は約160mAh/gであり、これ以上容量を増やすことは現実的に困難な状況になっている。
これに対して、リチウムの含有量がより高い組成式Li2MnO3で表される層状リチウム酸化物結晶は、理論容量が約450mAh/gと高く、これを微細化することによって高容量が得られるため、有望な正極活物質として期待されている。
また、前記組成式Li2MnO3で記載される層状リチウム酸化物結晶と、前述の組成式LiMeO2で記載される層状リチウム酸化物結晶とが固溶した結晶を有するリチウム含有金属酸化物は、約250mAh/g以上の高容量が得られるため、有望な正極活物質として期待されている。
さらに、前記組成式Li2MnO3で記載される層状リチウム酸化物結晶と、組成式Li1+kMn2−yMe’yO4―γ{式中、Me’は、MnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0<y≦0.5、および0≦γ<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造とが固溶した結晶を有するリチウム含有金属酸化物も、約250mAh/g以上の高容量が得られるため、有望な正極活物質として期待されている。
また、前記組成式Li2MnO3で記載される層状リチウム酸化物結晶と、前述の組成式LiMeO2で記載される層状リチウム酸化物結晶とが固溶した結晶を有するリチウム含有金属酸化物は、約250mAh/g以上の高容量が得られるため、有望な正極活物質として期待されている。
さらに、前記組成式Li2MnO3で記載される層状リチウム酸化物結晶と、組成式Li1+kMn2−yMe’yO4―γ{式中、Me’は、MnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0<y≦0.5、および0≦γ<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造とが固溶した結晶を有するリチウム含有金属酸化物も、約250mAh/g以上の高容量が得られるため、有望な正極活物質として期待されている。
しかし、前述のような高容量のリチウム含有金属酸化物は、一般に、電気抵抗が大きい。そのため、レート特性が悪いことが課題であった。すなわち、低電流で放電した際には高い容量が得られるものの、高電流で放電した際の容量が低くなる問題である。
かかる問題を解決しようとして、いくつかの試みが行われてきた。
例えば特許文献1には、リチウム含有金属酸化物を酸に浸漬した後、Liを含まず、Ni、Co、およびMnから選ばれる少なくとも一種の遷移金属元素を含む化合物とともに、350℃〜800℃の温度範囲で熱処理する技術の報告がある。しかしながら、この技術によっても、レート特性の向上は実現していない。リチウム含有金属酸化物の表面を、Liを含まない遷移金属化合物が被覆する反応が進行するためであると考えられる。
また、非特許文献1には、リチウム含有金属酸化物を酸に浸漬した後、100℃程度の温度において熱処理をする技術の記載があるが、この技術によってもレート特性は向上していない。
例えば特許文献1には、リチウム含有金属酸化物を酸に浸漬した後、Liを含まず、Ni、Co、およびMnから選ばれる少なくとも一種の遷移金属元素を含む化合物とともに、350℃〜800℃の温度範囲で熱処理する技術の報告がある。しかしながら、この技術によっても、レート特性の向上は実現していない。リチウム含有金属酸化物の表面を、Liを含まない遷移金属化合物が被覆する反応が進行するためであると考えられる。
また、非特許文献1には、リチウム含有金属酸化物を酸に浸漬した後、100℃程度の温度において熱処理をする技術の記載があるが、この技術によってもレート特性は向上していない。
Journal of The Electrochemical Society, 153(2006),A1186−A1192
前述のような高容量のリチウム含有金属酸化物は、レート特性が悪く、その結果、現状では実用化には至っていない。
かかる事情に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として好適な、高い容量と高いレート特性とが両立されたリチウム含有金属酸化物の製造方法を提供することである。
かかる事情に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として好適な、高い容量と高いレート特性とが両立されたリチウム含有金属酸化物の製造方法を提供することである。
高容量のリチウム含有金属酸化物のレート特性が悪い原因は、該酸化物の電気抵抗が大きいことによると指摘されている。しかし、リチウム含有金属酸化物自体が本質的に大きな電気抵抗を有する材料であるのか、それともリチウムイオンが出入りする酸化物表面における抵抗が問題となるのか、その詳細は理解されていない。
本発明者らは、特定の理論に束縛されることを好まないが、レート特性の悪い原因が、酸化物表面におけるリチウムイオンが出入りする際に、構造的な抵抗が存在するのではないかと考えた。そして、リチウム含有金属酸化物に対して化学的な処理を施すことによって、酸化物表面近傍にリチウムイオンが出入りし易い表面状態を形成することが可能ではないかと考えた。このような変性処理が可能であるならば、リチウム含有金属酸化物を用いた正極のレート特性が向上することが期待される。
本発明者らは、特定の理論に束縛されることを好まないが、レート特性の悪い原因が、酸化物表面におけるリチウムイオンが出入りする際に、構造的な抵抗が存在するのではないかと考えた。そして、リチウム含有金属酸化物に対して化学的な処理を施すことによって、酸化物表面近傍にリチウムイオンが出入りし易い表面状態を形成することが可能ではないかと考えた。このような変性処理が可能であるならば、リチウム含有金属酸化物を用いた正極のレート特性が向上することが期待される。
本発明者らは、上記の理論に従って鋭意検討を行った。その結果、特定のリチウム含有金属酸化物を酸処理した後に、特定の温度で熱処理を行うことにより、リチウム含有金属酸化物の電気抵抗が低減して、高いレート特性が発現することを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 少なくとも、Liと、
Ni、Co、およびMnから選ばれる1種類以上の金属元素と
を含むリチウム含有金属酸化物の製造方法であって、下記の工程、
(1)前駆体である金属酸化物を、無機酸または有機酸を含有する酸性水溶液と接触させる工程、および
(2)前記接触後の金属酸化物を、100℃より高く600℃より低い温度で焼成する工程
を順に経ることを特徴とする、前記リチウム含有金属酸化物の製造方法。
[2] 前記前駆体である金属酸化物が、下記組成式(1):
Li2Mn1−xM’xO3−α・・・(1)
{式中、M’はMnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦x<1、および0≦α<1の関係を満足する。}で表される、Liが層状に配列した層状結晶構造を有する複合金属酸化物である、[1]に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
Ni、Co、およびMnから選ばれる1種類以上の金属元素と
を含むリチウム含有金属酸化物の製造方法であって、下記の工程、
(1)前駆体である金属酸化物を、無機酸または有機酸を含有する酸性水溶液と接触させる工程、および
(2)前記接触後の金属酸化物を、100℃より高く600℃より低い温度で焼成する工程
を順に経ることを特徴とする、前記リチウム含有金属酸化物の製造方法。
[2] 前記前駆体である金属酸化物が、下記組成式(1):
Li2Mn1−xM’xO3−α・・・(1)
{式中、M’はMnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦x<1、および0≦α<1の関係を満足する。}で表される、Liが層状に配列した層状結晶構造を有する複合金属酸化物である、[1]に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[3] 前記前駆体である金属酸化物が、
前記組成式(1)で表される層状結晶構造と、
下記組成式(2):
Li1+kMn2−yMe’yO4―γ・・・(2)
{式中、Me’はMnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0≦y≦0.5、および0≦γ<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造、および下記組成式(3):
LiMeO2・・・(3)
{式中、Meは、Li以外の1種類以上の金属元素である。}で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造から選ばれる1種類以上の結晶構造と
が固溶した結晶を有する、[2]に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[4] 前記酸性水溶液中に含まれるプロトンの数が、前記前駆体である金属酸化物の含有するLi量に対して、1モル%以上200モル%以下の範囲である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
前記組成式(1)で表される層状結晶構造と、
下記組成式(2):
Li1+kMn2−yMe’yO4―γ・・・(2)
{式中、Me’はMnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0≦y≦0.5、および0≦γ<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造、および下記組成式(3):
LiMeO2・・・(3)
{式中、Meは、Li以外の1種類以上の金属元素である。}で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造から選ばれる1種類以上の結晶構造と
が固溶した結晶を有する、[2]に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[4] 前記酸性水溶液中に含まれるプロトンの数が、前記前駆体である金属酸化物の含有するLi量に対して、1モル%以上200モル%以下の範囲である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[5] 前記工程(1)における酸性水溶液の温度が0℃以上、30℃以下である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[6] 前記工程(2)における焼成によって、金属酸化物が0.5質量%以上3質量%以下の範囲で質量減少する、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[6] 前記工程(2)における焼成によって、金属酸化物が0.5質量%以上3質量%以下の範囲で質量減少する、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[7] 前記工程(2)に次いで、
(3)金属酸化物の表面に、酸化物、リン酸化合物、およびフッ化物から選ばれる1種類以上から成るコーティング層を1層以上形成する工程
をさらに経る、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[8] 前記工程(3)において、金属酸化物に対する超音波照射工程を経てコーティング層を形成する、[7]に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
(3)金属酸化物の表面に、酸化物、リン酸化合物、およびフッ化物から選ばれる1種類以上から成るコーティング層を1層以上形成する工程
をさらに経る、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[8] 前記工程(3)において、金属酸化物に対する超音波照射工程を経てコーティング層を形成する、[7]に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
[9] [1]〜[8]に記載の製造方法によって得られる、リチウム含有金属酸化物。
[10] [7]または[8]に記載の製造方法によって得られ、そして
前記コーティング層が、Li、B、Mg、Al、Si、Ca、Ti、Sn、Pb、V、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Mo、W、Zr、Hf、Y、Nb、Ba、Sr、およびCeから選ばれる1種類以上の金属元素の酸化物、リン酸化合物、およびフッ化物から選ばれる1種類以上から成る、[9]に記載のリチウム含有金属酸化物。
[10] [7]または[8]に記載の製造方法によって得られ、そして
前記コーティング層が、Li、B、Mg、Al、Si、Ca、Ti、Sn、Pb、V、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Mo、W、Zr、Hf、Y、Nb、Ba、Sr、およびCeから選ばれる1種類以上の金属元素の酸化物、リン酸化合物、およびフッ化物から選ばれる1種類以上から成る、[9]に記載のリチウム含有金属酸化物。
[11] 前記コーティング層の平均膜厚が、0.1nm以上10nm以下である、[10]に記載のリチウム含有金属酸化物。
[12] 正極活物質として、[9]〜[11]のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物を用いることを特徴とする、リチウムイオン二次電池。
[12] 正極活物質として、[9]〜[11]のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物を用いることを特徴とする、リチウムイオン二次電池。
本発明の方法によって製造されたリチウム含有金属酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極として好適に用いることができる。該リチウムイオン二次電池は、高いレート特性を有するため、電気自動車の駆動電源用、定置型電源用、モバイル機器の電源用などの電池として、好適に利用可能である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
前述したように、本実施形態にかかる正極活物質の製造方法は、
下記の工程、
(1)前駆体である金属酸化物を、無機酸または有機酸を含有する酸性水溶液と接触させる工程、および
(2)前記接触後の金属酸化物を、100℃より高く600℃より低い温度で焼成する工程
を順に得ることを特徴とする。前記工程(2)に次いで、
(3)金属酸化物の表面に、酸化物、リン酸化合物、およびフッ化物から選ばれる1種類以上から成るコーティング層を1層以上形成する工程
をさらに経由してもよい。
下記の工程、
(1)前駆体である金属酸化物を、無機酸または有機酸を含有する酸性水溶液と接触させる工程、および
(2)前記接触後の金属酸化物を、100℃より高く600℃より低い温度で焼成する工程
を順に得ることを特徴とする。前記工程(2)に次いで、
(3)金属酸化物の表面に、酸化物、リン酸化合物、およびフッ化物から選ばれる1種類以上から成るコーティング層を1層以上形成する工程
をさらに経由してもよい。
工程(1)では、先ず、前駆体である金属酸化物を、無機酸または有機酸を含有する酸性水溶液中に投入し、該前駆体金属酸化物の表面が酸性水溶液と接触するようにする。
[前駆体金属酸化物]
本実施形態にかかる前駆体金属酸化物は、工程(1)および(2)における処理後のリチウム含有金属酸化物と同じ金属種を有する。ただし、後述のように、金属酸化物中の金属の構成比は、本実施形態の処理により少し異なることとなる。
従って、前記前駆体金属酸化物は、
少なくとも、Liと、
Ni、Co、およびMnから選ばれる少なくとも1種類以上の金属元素と
を含む金属酸化物である。この金属酸化物は、工程(1)および(2)における処理後のリチウム含有金属酸化物が、正極活物質としての機能を有することになるものであれば、特に限定されない。特に好ましくは、下記組成式(1):
Li2Mn1−xM’xO3−α・・・(1)
{式中、M’は、MnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦x<1、および0≦α<1の関係を満足する。}で表される、Liが層状に配列した層状結晶構造を有する金属酸化物である。
組成式(1)で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造としては、空間群
本実施形態にかかる前駆体金属酸化物は、工程(1)および(2)における処理後のリチウム含有金属酸化物と同じ金属種を有する。ただし、後述のように、金属酸化物中の金属の構成比は、本実施形態の処理により少し異なることとなる。
従って、前記前駆体金属酸化物は、
少なくとも、Liと、
Ni、Co、およびMnから選ばれる少なくとも1種類以上の金属元素と
を含む金属酸化物である。この金属酸化物は、工程(1)および(2)における処理後のリチウム含有金属酸化物が、正極活物質としての機能を有することになるものであれば、特に限定されない。特に好ましくは、下記組成式(1):
Li2Mn1−xM’xO3−α・・・(1)
{式中、M’は、MnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦x<1、および0≦α<1の関係を満足する。}で表される、Liが層状に配列した層状結晶構造を有する金属酸化物である。
組成式(1)で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造としては、空間群
に帰属される結晶構造でもよいし、空間群C2/mに帰属される結晶構造でもよいし、もしくは空間群P3112に帰属される結晶構造でもよいし、またはこれらが混在した構造でもよい。
組成式(1)で表されるLiが層状に配列した層状構造が、MnおよびLi以外の金属元素M’を有する場合、該M’は特に限定されるものではないが、本実施形態として好ましいものは、Ni、Co、Al、Mo、W、Ce、Nb、Mg、Fe、Cu、Ti、Sn、Pb、V、Zn、Ga、Ge、およびZrから選ばれる1種以上である。なかでも、3d軌道の有効核電荷が大きい金属元素が、リチウムイオン二次電池の起電力を向上させるという点で好ましく、
有効核電荷が6以上の鉄、コバルト、およびニッケルから選ばれる1種以上がより好ましく、
最も有効核電荷が大きいニッケルが、特に好ましい。また、高容量を発現し易いとの観点からは、多くの価数状態をとれる金属元素、特に第6族の遷移金属元素であるMoおよびWから選ばれる1種以上も好ましい。
組成式(1)で表されるLiが層状に配列した層状構造が、MnおよびLi以外の金属元素M’を有する場合、該M’は特に限定されるものではないが、本実施形態として好ましいものは、Ni、Co、Al、Mo、W、Ce、Nb、Mg、Fe、Cu、Ti、Sn、Pb、V、Zn、Ga、Ge、およびZrから選ばれる1種以上である。なかでも、3d軌道の有効核電荷が大きい金属元素が、リチウムイオン二次電池の起電力を向上させるという点で好ましく、
有効核電荷が6以上の鉄、コバルト、およびニッケルから選ばれる1種以上がより好ましく、
最も有効核電荷が大きいニッケルが、特に好ましい。また、高容量を発現し易いとの観点からは、多くの価数状態をとれる金属元素、特に第6族の遷移金属元素であるMoおよびWから選ばれる1種以上も好ましい。
マンガンおよび金属元素M’は、組成式(1)で表されるリチウム含有金属酸化物内で均一に分散していることが好ましい。このことは、同種の金属元素が凝集していないことが好ましいことを意味する。この要件は、同種の金属元素の凝集が存在すると、その凝集部分が所望の結晶構造とは異なる構造になる可能性があるから、これを排除する趣旨である。
本実施形態における正極活物質としてのリチウム含有金属酸化物は、前記組成式(1)で表される層状結晶構造だけを有していてもよいし、前記組成式(1)で表される層状結晶構造と、
下記組成式(2):
Li1+kMn2−yMe’yO4―γ・・・(2)
{式中、Me’は、MnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0≦y≦0.5、および0≦γ<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造、および下記組成式(3):
LiMeO2・・・(3)
{式中、Meは、Li以外の1種類以上の金属元素である。}で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造
から選ばれる1種以上の結晶構造が固溶した結晶構造を有するものであってもよい。
組成式(2)で表されるスピネル結晶構造としては、空間群
下記組成式(2):
Li1+kMn2−yMe’yO4―γ・・・(2)
{式中、Me’は、MnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0≦y≦0.5、および0≦γ<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造、および下記組成式(3):
LiMeO2・・・(3)
{式中、Meは、Li以外の1種類以上の金属元素である。}で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造
から選ばれる1種以上の結晶構造が固溶した結晶構造を有するものであってもよい。
組成式(2)で表されるスピネル結晶構造としては、空間群
に帰属されるディスオーダー構造でもよいし、空間群P4332に帰属されるオーダー構造でもよいし、その両方の構造が混じっていてもよい。スピネル結晶構造においては、kの値は一般的なスピネルでは0であるが、リチウムを過剰に含むスピネル構造の場合、0<k<1の値をとってもよい。その際、スピネル構造の一部または全体が岩塩構造などの、立方晶、斜方晶、正方晶などの他の結晶構造に近い構造に変形してもよい。
組成式(2)で表されるスピネル構造が、マンガンおよびリチウム以外の1種類以上の金属元素Me’を有する場合、該Me’は特に限定されるものではないが、Niを含むことが好ましい。この場合、該Me’の割合を示すyの値は、0.5が最大値である。0.5を超えて、マンガンおよびリチウム以外の1種類以上の金属元素を導入しようとすると、スピネル構造ではない構造が生成してしまう可能性がある。
組成式(2)で表されるスピネル構造が、マンガンおよびリチウム以外の1種類以上の金属元素Me’を有する場合、該Me’は特に限定されるものではないが、Niを含むことが好ましい。この場合、該Me’の割合を示すyの値は、0.5が最大値である。0.5を超えて、マンガンおよびリチウム以外の1種類以上の金属元素を導入しようとすると、スピネル構造ではない構造が生成してしまう可能性がある。
組成式(2)で表されるスピネル構造が含有する酸素の割合を示すγの値は、0に近い値をとる。γ=0のとき、スピネル構造中の酸素原子が入るサイトにはすべて酸素原子が入っており、酸素欠損が無い状態となる。しかしながら、実際のスピネル構造では酸素欠損が多かれ少なかれ発生し、γ>0となる場合が多い。但し、γ<1でないとスピネル構造を形成することは困難である。
組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造としては、空間群
組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造としては、空間群
に帰属される結晶構造を有するものが好ましい。組成式(3)で表される1種類以上の金属元素Meは特に限定されるものではないが、本実施形態として好ましいものは、Mn、Ni、Co、Ti、Al、Mg、Mo、W、およびVから選ばれる1種以上である。特に、Mn、Co、およびNiから選ばれる1種以上を含有していることにより、3d軌道の有効核電荷が大きい金属元素がリチウムイオン二次電池の起電力を向上させるという点で好ましい。
なお、組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造においては、金属元素Meに対する酸素原子の存在比が2倍等量の表記になっている。この表記は、理想的な結晶構造の場合を示している。実際の結晶においては、製造段階または充放電過程において、若干の酸素の欠損が発生することがあり、金属元素Meに対して酸素原子が2倍等量より僅かに少なくなる場合もあるが、その場合も本実施形態に含まれる。
なお、組成式(3)で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造においては、金属元素Meに対する酸素原子の存在比が2倍等量の表記になっている。この表記は、理想的な結晶構造の場合を示している。実際の結晶においては、製造段階または充放電過程において、若干の酸素の欠損が発生することがあり、金属元素Meに対して酸素原子が2倍等量より僅かに少なくなる場合もあるが、その場合も本実施形態に含まれる。
本実施形態における前駆体である金属酸化物は、一般には、一次粒子と、該一次粒子が凝集した二次粒子とからなる粉体である。一次粒子は、それ自身が単結晶であってもよく、複数の単結晶が異なる面方位で結合したものであってもよい。二次粒子は、他の粒子との結合箇所が無く、1つの粒子として単離できる形態のものである。
一次粒子の平均粒子径である平均一次粒径は、特に限定されるものではない。しかしながら、平均一次粒径が大きくなりすぎると、最終的に得られるリチウム含有金属酸化物の結晶の平均一次粒径も大きくなる結果、放電時に大電流を流し難くなる。そのため、好適な平均一次粒径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。但し、平均一次粒径が小さくなりすぎると電池としての耐久性(長期保存特性、充放電の繰り返しによる劣化特性など)が悪化するため、好適な平均一次粒径は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。
一次粒子の平均粒子径である平均一次粒径は、特に限定されるものではない。しかしながら、平均一次粒径が大きくなりすぎると、最終的に得られるリチウム含有金属酸化物の結晶の平均一次粒径も大きくなる結果、放電時に大電流を流し難くなる。そのため、好適な平均一次粒径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。但し、平均一次粒径が小さくなりすぎると電池としての耐久性(長期保存特性、充放電の繰り返しによる劣化特性など)が悪化するため、好適な平均一次粒径は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。
なお、一次粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡像中の結晶の粒子径を複数測長して平均化することによって、あるいは、
不活性気体の物理吸着量を計測する比表面積測定(以下、BETと略す。)によって、
求めることができる。BET法によって求められた平均粒子径は、粒子を真球の球体と仮定して算出した数値である。
不活性気体の物理吸着量を計測する比表面積測定(以下、BETと略す。)によって、
求めることができる。BET法によって求められた平均粒子径は、粒子を真球の球体と仮定して算出した数値である。
前駆体金属酸化物の結晶中で、
組成式(1)で表される層状結晶構造と、
組成式(2)で表されるスピネル結晶構造および組成式(3)で表される層状結晶構造から選ばれる1種以上の結晶構造と
が、どのように固溶しているかについては、例えば以下のようにして知ることができる。すなわち、リチウム含有金属酸化物の結晶を収束イオンビームなどにより厚さ約100nm以下の薄片に加工し、透過型電子顕微鏡を用いて結晶内の原子配列を観察する。特に、透過型電子顕微鏡の光学系における球面収差を補正した球面収差補正型走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)およびCs−STEMに付随するエネルギー分散型X線分析装置を用いることにより、原子の配列および種類を高分解能で観察することができ、リチウム含有金属酸化物中における各結晶構造の平均サイズおよび分散状態を画像観察から求めることができる。
組成式(1)で表される層状結晶構造と、
組成式(2)で表されるスピネル結晶構造および組成式(3)で表される層状結晶構造から選ばれる1種以上の結晶構造と
が、どのように固溶しているかについては、例えば以下のようにして知ることができる。すなわち、リチウム含有金属酸化物の結晶を収束イオンビームなどにより厚さ約100nm以下の薄片に加工し、透過型電子顕微鏡を用いて結晶内の原子配列を観察する。特に、透過型電子顕微鏡の光学系における球面収差を補正した球面収差補正型走査透過型電子顕微鏡(Cs−STEM)およびCs−STEMに付随するエネルギー分散型X線分析装置を用いることにより、原子の配列および種類を高分解能で観察することができ、リチウム含有金属酸化物中における各結晶構造の平均サイズおよび分散状態を画像観察から求めることができる。
前記のような前駆体金属酸化物は、前記した特徴を有している限り、任意の方法によって製造されたものであってよい。前駆体金属酸化物は、湿式合成法および乾式合成法のいずれによっても合成することができる。前記湿式合成法としては、例えば共沈法、ゲル化燃焼法などを;
前記乾式合成法としては、例えばスプレードライ法、固相法などを
それぞれ挙げることができる。
前記乾式合成法としては、例えばスプレードライ法、固相法などを
それぞれ挙げることができる。
共沈法による前駆体金属酸化物の製造は、定法に従って行うことができる。例えばNi、Co、およびMnから選ばれる1種類以上を含む金属の塩を、所定の割合で含有する水溶液を調製し、該水溶液にアルカリを加えて得られる沈殿を乾燥した後、Li塩を所定量添加して焼成する方法により、製造することができる。前記Ni、Co、およびMnから選ばれる1種類以上を含む金属塩の一部を、アルカリによって生ずる沈殿にLi塩とともに後添加し、必要に応じて粉砕・混合したうえで、焼成に供してもよい。
前記
Ni塩として例えばNiSO4・6H2O、Ni(NO3)2・6H2Oなどを;
Co塩として例えばCoSO4・7H2O、Co(NO3)2・6H2Oなどを;
Mn塩として例えばMnSO4・5H2O、Mn(NO3)2・6H2Oなどを、
それぞれ挙げることができる。
前記アルカリとしては、例えばNa2CO3、NaHCO3、NaOH、KOH、NH4OHなどの水溶液を挙げることができる。
得られた沈殿の乾燥は、好ましくは80〜150℃、より好ましくは80〜120℃において、好ましくは1〜72時間、より好ましくは5〜48時間行われる。
次いで、上記の操作によって得られた乾燥後の沈殿物にLi塩を混合して焼成することにより、前駆体金属酸化物を得ることができる。用いるLi塩としては、例えばLiNO3、Li(CH3COO)・2H2O、Li2CO3、LiOH・H2O、Li2Oなどが挙げられる。Li塩を混合した後の焼成は、好ましくは600〜1,000℃、より好ましくは800〜950℃において、好ましくは1〜48時間、より好ましくは3〜24時間行われる。
Ni塩として例えばNiSO4・6H2O、Ni(NO3)2・6H2Oなどを;
Co塩として例えばCoSO4・7H2O、Co(NO3)2・6H2Oなどを;
Mn塩として例えばMnSO4・5H2O、Mn(NO3)2・6H2Oなどを、
それぞれ挙げることができる。
前記アルカリとしては、例えばNa2CO3、NaHCO3、NaOH、KOH、NH4OHなどの水溶液を挙げることができる。
得られた沈殿の乾燥は、好ましくは80〜150℃、より好ましくは80〜120℃において、好ましくは1〜72時間、より好ましくは5〜48時間行われる。
次いで、上記の操作によって得られた乾燥後の沈殿物にLi塩を混合して焼成することにより、前駆体金属酸化物を得ることができる。用いるLi塩としては、例えばLiNO3、Li(CH3COO)・2H2O、Li2CO3、LiOH・H2O、Li2Oなどが挙げられる。Li塩を混合した後の焼成は、好ましくは600〜1,000℃、より好ましくは800〜950℃において、好ましくは1〜48時間、より好ましくは3〜24時間行われる。
スプレードライ法は、Li塩と、
Ni、Co、およびMnから選ばれる1種類以上の金属の塩と
を、所定の割合で含有する溶液または懸濁液を調製し、該溶液または懸濁液を噴霧乾燥した後に焼成する方法である。前記金属塩の一部を、噴霧乾燥して得られる粉体に後添加し、必要に応じて粉砕・混合したうえで、焼成に供してもよい。前記溶液または懸濁液の溶媒としては、水が好ましい。
スプレードライ法における原料金属塩の種類、溶液中の金属塩濃度、および焼成条件としては、それぞれ、前記共沈法の条件をそのまま採用することができる。溶液の代わりに懸濁液を使用する場合の金属塩濃度は、溶液の場合に準じて考えてよい。
Ni、Co、およびMnから選ばれる1種類以上の金属の塩と
を、所定の割合で含有する溶液または懸濁液を調製し、該溶液または懸濁液を噴霧乾燥した後に焼成する方法である。前記金属塩の一部を、噴霧乾燥して得られる粉体に後添加し、必要に応じて粉砕・混合したうえで、焼成に供してもよい。前記溶液または懸濁液の溶媒としては、水が好ましい。
スプレードライ法における原料金属塩の種類、溶液中の金属塩濃度、および焼成条件としては、それぞれ、前記共沈法の条件をそのまま採用することができる。溶液の代わりに懸濁液を使用する場合の金属塩濃度は、溶液の場合に準じて考えてよい。
ゲル化燃焼法は、酸化性の配位子を有する金属塩と、燃焼性の配位子を有する金属塩とからなる燃焼性ゲルを熱処理して、該燃焼性ゲルを瞬時に熱分解させることにより、均質で微細な微粉体酸化物の粉体を得る技術である。
前記酸化性の配位子を有する金属塩としては、例えば硝酸塩、硫酸塩などを;
前記燃焼性の配位子を有する金属塩としては、例えばクエン酸塩、酢酸塩、グリシン塩、シュウ酸塩などを、
それぞれ挙げることができる。これらの塩は、無水塩であっても含水塩であってもよい。酸化性の配位子を有する金属塩として硝酸塩を、燃焼性の配位子を有する金属塩としては酢酸塩を、それぞれ使用することが、最も好ましい。
前記酸化性の配位子を有する金属塩と燃焼性の配位子を有する金属塩との使用比率としては、燃焼性の配位子を有する金属塩/酸化性の配位子を有する金属塩の比が、2〜5(モル比)の範囲で用いることが好ましく、更に好ましくはこの比が2.5〜3.5となる範囲である。
前記酸化性の配位子を有する金属塩としては、例えば硝酸塩、硫酸塩などを;
前記燃焼性の配位子を有する金属塩としては、例えばクエン酸塩、酢酸塩、グリシン塩、シュウ酸塩などを、
それぞれ挙げることができる。これらの塩は、無水塩であっても含水塩であってもよい。酸化性の配位子を有する金属塩として硝酸塩を、燃焼性の配位子を有する金属塩としては酢酸塩を、それぞれ使用することが、最も好ましい。
前記酸化性の配位子を有する金属塩と燃焼性の配位子を有する金属塩との使用比率としては、燃焼性の配位子を有する金属塩/酸化性の配位子を有する金属塩の比が、2〜5(モル比)の範囲で用いることが好ましく、更に好ましくはこの比が2.5〜3.5となる範囲である。
ゲル化燃焼法においては、
先ず、上記のような酸化性の配位子を有する金属塩および燃焼性の配位子を有する金属塩を所定の割合で含有する水溶液を調製し、
次いで、前記水溶液から水を除去して均質な燃焼性ゲルとし、そして
この燃焼性ゲルを熱処理する。この熱処理によって得られた粉体を、更に粉砕・撹拌後、焼結を行って結晶の成長を調整してもよい。
前記の溶液から燃焼性ゲルを得るには、該溶液に対して加熱および減圧から選択される1種以上の操作を加えて溶媒を除去し、乾固する方法によることができる。
前記燃焼性ゲルの熱処理は、最高到達温度を好ましくは300℃〜500℃として行われる。ゲルに含まれる配位子を十分に分解させるため300℃以上の温度とすることが好ましく、粒子サイズおよび金属の分布が不均一になることを抑えるため500℃以下とすることが好ましい。最も好ましくは300℃〜400℃の範囲である。最高到達温度における保持時間としては、30分〜48時間が好ましく、1時間〜24時間がより好ましい。熱処理後の冷却速度は任意である。
以上のようにして、前駆体である金属酸化物が得られる。
先ず、上記のような酸化性の配位子を有する金属塩および燃焼性の配位子を有する金属塩を所定の割合で含有する水溶液を調製し、
次いで、前記水溶液から水を除去して均質な燃焼性ゲルとし、そして
この燃焼性ゲルを熱処理する。この熱処理によって得られた粉体を、更に粉砕・撹拌後、焼結を行って結晶の成長を調整してもよい。
前記の溶液から燃焼性ゲルを得るには、該溶液に対して加熱および減圧から選択される1種以上の操作を加えて溶媒を除去し、乾固する方法によることができる。
前記燃焼性ゲルの熱処理は、最高到達温度を好ましくは300℃〜500℃として行われる。ゲルに含まれる配位子を十分に分解させるため300℃以上の温度とすることが好ましく、粒子サイズおよび金属の分布が不均一になることを抑えるため500℃以下とすることが好ましい。最も好ましくは300℃〜400℃の範囲である。最高到達温度における保持時間としては、30分〜48時間が好ましく、1時間〜24時間がより好ましい。熱処理後の冷却速度は任意である。
以上のようにして、前駆体である金属酸化物が得られる。
[工程(1)]
本実施形態における工程(1)では、先ず、上記のようにして得られた前駆体金属酸化物を、無機酸または有機酸を含有する酸性水溶液中に投入し、前記前駆体金属酸化物の表面を前記酸性水溶液と接触させる。この時、接触効率をより高めるために、前駆体金属酸化物の入った酸性水溶液に対して、例えば撹拌、超音波照射などの、固体粒子と液体との接触効率を向上させる公知の方法を実施することができる。
前記の無機酸および有機酸としては、それぞれ、水溶液中でプロトンを放出できるものであれば特に限定されるものではない。
前記無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、ホウ酸、フッ化水素酸、リン酸などを挙げることができる他、金属原子を含有する無機酸(例えば、チタン酸フッ化水素酸、フッ化ジルコン水素酸など)を使用してもよい。この中で、安価であり、プロトンを容易に放出し、かつ、不純物となる余剰な残渣が残り難いという点で、硫酸、塩酸、および硝酸から選択される1種以上を使用することが好ましい。
有機酸としては、例えば、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸などを挙げることができる他、金属原子を含有する有機酸を使用してもよい。この中で、安価であり、プロトンを容易に放出し、かつ、不純物となる余剰な残渣が残り難いという点で、酢酸およびギ酸から選択される1種以上を使用することが好ましい。また上記無機酸あるいは有機酸を単独種で用いても良いし、複数の無機酸あるいは有機酸の混合物として用いても良い。
本実施形態における工程(1)では、先ず、上記のようにして得られた前駆体金属酸化物を、無機酸または有機酸を含有する酸性水溶液中に投入し、前記前駆体金属酸化物の表面を前記酸性水溶液と接触させる。この時、接触効率をより高めるために、前駆体金属酸化物の入った酸性水溶液に対して、例えば撹拌、超音波照射などの、固体粒子と液体との接触効率を向上させる公知の方法を実施することができる。
前記の無機酸および有機酸としては、それぞれ、水溶液中でプロトンを放出できるものであれば特に限定されるものではない。
前記無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、ホウ酸、フッ化水素酸、リン酸などを挙げることができる他、金属原子を含有する無機酸(例えば、チタン酸フッ化水素酸、フッ化ジルコン水素酸など)を使用してもよい。この中で、安価であり、プロトンを容易に放出し、かつ、不純物となる余剰な残渣が残り難いという点で、硫酸、塩酸、および硝酸から選択される1種以上を使用することが好ましい。
有機酸としては、例えば、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸などを挙げることができる他、金属原子を含有する有機酸を使用してもよい。この中で、安価であり、プロトンを容易に放出し、かつ、不純物となる余剰な残渣が残り難いという点で、酢酸およびギ酸から選択される1種以上を使用することが好ましい。また上記無機酸あるいは有機酸を単独種で用いても良いし、複数の無機酸あるいは有機酸の混合物として用いても良い。
前駆体金属酸化物を添加する前の、前記酸性水溶液におけるプロトンの濃度としては、0.001mol/L以上1mol/L以下が好ましく、より好ましくは0.01mol/L以上0.5mol/L以下であり、さらに好ましくは0.05mol/L以上0.2mol/L以下である。プロトンの濃度が0.001mol/L未満であると、酸による前駆体金属酸化物の表面状態の化学的変化が十分に進まず、本発明の効果が奏されない場合がある。また、プロトンの濃度が1mol/L超過であると、酸による前駆体金属酸化物の表面状態の化学的変化が進みすぎて表面が壊れてしまい、正極活物質としての性能が劣化する場合がある。
前記酸性水溶液の液量は、該酸性水溶液中に投入する前駆体金属酸化物に含有されるLi原子の量に対する液中のプロトンの量として、1モル%以上200モル%以下の範囲になるようにすることが好ましく、より好ましくは5モル%以上150モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上100モル%以下の範囲である。前記プロトンの量が1モル%未満であると、酸による前駆体金属酸化物の表面状態の化学的変化が十分に進まず、本発明の効果が奏されない場合がある。また、前記プロトンの量が200モル%超過であると、酸による前駆体金属酸化物の表面状態の化学的変化が進みすぎて表面が壊れてしまい、正極活物質としての性能が劣化する場合がある。
以上より、投入する前駆体金属酸化物の量に応じて、好適な酸性水溶液のプロトン濃度および液量の範囲を算出することができる。
前記無機酸または有機酸を含有する酸性水溶液には、必要に応じて各種の有機溶剤、添加物などを添加したうえで用いてもよい。
以上より、投入する前駆体金属酸化物の量に応じて、好適な酸性水溶液のプロトン濃度および液量の範囲を算出することができる。
前記無機酸または有機酸を含有する酸性水溶液には、必要に応じて各種の有機溶剤、添加物などを添加したうえで用いてもよい。
前駆体金属酸化物の表面を酸性水溶液と接触させる時には、該酸性水溶液の温度が低いほうがよい。好ましくは0℃以上30℃以下であり、より好ましくは0℃以上10℃以下であり、最も好ましくは0℃以上5℃以下であって、0℃に近いほど好ましい。ただし、酸性水溶液が凍らずに流動性が確保されていれば、0℃以下であってもよい。温度が低すぎる場合には、酸性水溶液の流動性が低下し、固体粒子と液体との接触効率が低下して、本発明の効果が奏されない場合がある。この傾向は、特に酸性水溶液の温度が0℃未満である場合に顕著である。一方、酸性水溶液の温度が30℃超過であると、酸による前駆体金属酸化物の表面状態の化学的変化が進みすぎて表面が壊れてしまい、正極活物質としての性能が劣化する場合がある。
前駆体金属酸化物の表面が酸性水溶液と接触している時間は、1分以上24時間以内が好ましく、より好ましくは10分以上12時間以内であり、さらに好ましくは1時間以上6時間以内であり、最も好ましくは1.5時間以上3時間以内である。接触時間が1分以下であると、酸による結晶の表面状態の化学的変化が十分に進まず、本発明の効果が奏されない場合がある。また、接触時間が24時間以上であると、酸による結晶の表面状態の化学的変化が進みすぎて結晶表面が壊れてしまい、正極活物質としての性能が劣化する場合がある。
前駆体金属酸化物の表面が酸性水溶液と接触している時間は、1分以上24時間以内が好ましく、より好ましくは10分以上12時間以内であり、さらに好ましくは1時間以上6時間以内であり、最も好ましくは1.5時間以上3時間以内である。接触時間が1分以下であると、酸による結晶の表面状態の化学的変化が十分に進まず、本発明の効果が奏されない場合がある。また、接触時間が24時間以上であると、酸による結晶の表面状態の化学的変化が進みすぎて結晶表面が壊れてしまい、正極活物質としての性能が劣化する場合がある。
ここで、前駆体金属酸化物の表面が酸性水溶液と接触している時間が長くなると、該酸性水溶液中のプロトン濃度が減少していく場合がある。そのような場合には、新たにプロトン源としての無機酸または有機酸を追加してもよいし、プロトン濃度が減少した状態をそのまま保持してもよい。酸を追加する場合、前記のプロトン量は、当初添加した酸から発生するプロトンの量と、後添加する酸から発生するプロトンの量との合計量として理解すべきである。
上記の方法により、前駆体金属酸化物の表面を酸性水溶液と接触させ、酸による表面状態の化学的変化を起こさせる。その後、ろ取、遠心分離などの公知の方法により、接触後の金属酸化物を水溶液から分離・回収する。分離・回収された金属酸化物は、必要に応じて水洗してもよいし、そのまま次の焼成工程(工程(2))に供してもよい。水洗を行う場合には、洗浄水の温度は低いほうが良く、好ましくは0℃以上30℃以下であり、より好ましくは0℃以上10℃以下、最も好ましくは0℃以上5℃以下であって、0℃に近いほど好ましい。洗浄水の温度が30℃超過であると、酸によって変化した表面が洗浄中に壊れてしまい、正極活物質としての性能が劣化する場合がある。
[工程(2)]
次に、以上のようにして得られた、酸によって変化した表面を有する前駆体金属酸化物を、100℃より高く600℃より低い温度で焼成する。焼成時の周囲雰囲気としては、例えば大気中、酸素雰囲気下、不活性ガス雰囲気下(例えば窒素中、アルゴン中など)、炭化水素系ガス(例えばエチレンガス雰囲気下、プロピレンガス雰囲気下など)雰囲気下で行ってもよい。
次に、以上のようにして得られた、酸によって変化した表面を有する前駆体金属酸化物を、100℃より高く600℃より低い温度で焼成する。焼成時の周囲雰囲気としては、例えば大気中、酸素雰囲気下、不活性ガス雰囲気下(例えば窒素中、アルゴン中など)、炭化水素系ガス(例えばエチレンガス雰囲気下、プロピレンガス雰囲気下など)雰囲気下で行ってもよい。
本実施形態における工程(2)では、上記の焼成温度範囲において、金属酸化物の質量に対して、0.5%以上3%以下の質量減少が観測される場合がある。この質量減少は、0.8%以上2.5%以下の割合であることが好ましく、1%以上1.5%以下の割合であることがより好ましい。本実施形態においては、この質量減少が発現する温度、またはそれよりやや高い温度で焼成を行うことが好ましい。具体的には、0.5%以上の重量減少が起こる温度以上、前記温度+300℃以下、の温度範囲で焼成することが好ましい。より具体的には、200℃以上500℃以下が好ましく、250℃以上450℃以下がより好ましい。この質量減少が発現することにより、本実施形態の方法によって得られるリチウム含有金属酸化物を用いた正極活物質のレート特性が、より向上すると期待される。
上記の質量減少の程度および該質量減少が起こる温度は、例えば熱重量分析などによって知ることができる。
上記の質量減少の程度および該質量減少が起こる温度は、例えば熱重量分析などによって知ることができる。
本実施形態の方法によって得られるリチウム含有金属酸化物は、工程(1)および(2)を経ることによって、リチウムの含有量が減少する。その減少率としては、5%以上15%以下であることが好ましく、8%以上12%以下であることがより好ましい。
なお、リチウム含有金属酸化物中のリチウムおよび金属元素の重量割合は、既知の誘導結合プラズマ発光分析法(以下、ICPと略す。)によって求めることができる。
なお、リチウム含有金属酸化物中のリチウムおよび金属元素の重量割合は、既知の誘導結合プラズマ発光分析法(以下、ICPと略す。)によって求めることができる。
[工程(3)]
本発明形態の方法においては、前記工程(2)に次いで、
(3)金属酸化物の表面に、酸化物、リン酸化合物、およびフッ化物から選ばれる1種類以上の化合物(以下、「コーティング化合物」ともいう。)から成る層を1層以上コーティングする工程
をさらに経由してもよい。
本発明形態の方法においては、前記工程(2)に次いで、
(3)金属酸化物の表面に、酸化物、リン酸化合物、およびフッ化物から選ばれる1種類以上の化合物(以下、「コーティング化合物」ともいう。)から成る層を1層以上コーティングする工程
をさらに経由してもよい。
前記コーティング化合物としては、金属の酸化物、リン酸化合物、またはフッ化物であることが好ましい。これらの化合物を構成する金属としては、例えば、Li、B、Mg、Al、Si、Ca、Ti、Sn、Pb、V、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Mo、W、Zr、Hf、Y、Nb、Ba、Sr、Ceなどを挙げることができ、これらのうちから選ばれる1種類以上の金属から構成されるコーティング化合物を用いることができる。
酸化物としては、例えばMgO2、Al2O3、SiO2、TiO2、V2O5、MnO2、ZnO、Ga2O3、GeO2などの金属の単独酸化物;
ZrTiO4、MgAl2O4、LiAlO2などの複合酸化物
などを例示することができる。リン酸化合物としては、例えばLi3PO4、AlPO4などが、
フッ化物としては、例えばLiF、MgF2、AlF3、CuF2などが、
それぞれ挙げられる。
酸化物としては、例えばMgO2、Al2O3、SiO2、TiO2、V2O5、MnO2、ZnO、Ga2O3、GeO2などの金属の単独酸化物;
ZrTiO4、MgAl2O4、LiAlO2などの複合酸化物
などを例示することができる。リン酸化合物としては、例えばLi3PO4、AlPO4などが、
フッ化物としては、例えばLiF、MgF2、AlF3、CuF2などが、
それぞれ挙げられる。
コーティング層は、リチウム含有金属酸化物の表面の一部を被覆していてもよいし、リチウム含有金属酸化物の全表面を被覆していてもよいが、全表面を被覆することが好ましい。コーティング化合物の一部が、リチウム含有金属酸化物中に拡散浸透し、ドーピング剤として機能してもよい。
コーティング層の平均膜厚は、0.1nm以上10nm以下が好ましく、より好ましくは0.5nm以上10nm以下である。これより薄いとコーティングの効果が限定され、これより厚いと体積当たりに占めるコーティング層の体積が高くなって、得られる電池の容量が減少する。
コーティング層の平均膜厚は、例えばICPおよびBETによって測定することができる。具体的には、
ICPによって、リチウム含有金属酸化物が有する単位質量当たりのコーティング化合物の質量割合を測定し、
前記コーティング化合物の質量割合をコーティング層の体積に換算し、そして
工程(3)を経る前のリチウム含有金属酸化物についてBET法によって測定された比表面積で割り返すことにより、コーティング層の平均膜厚を算出することができる。
コーティング層の平均膜厚は、例えばICPおよびBETによって測定することができる。具体的には、
ICPによって、リチウム含有金属酸化物が有する単位質量当たりのコーティング化合物の質量割合を測定し、
前記コーティング化合物の質量割合をコーティング層の体積に換算し、そして
工程(3)を経る前のリチウム含有金属酸化物についてBET法によって測定された比表面積で割り返すことにより、コーティング層の平均膜厚を算出することができる。
上記コーティング層の形成方法は特に限定されるものではない。リチウム含有金属酸化物の表面に、酸化物、リン酸化合物、またはフッ化物を形成する公知の方法を任意に採用することができる。これらは、好ましくは金属の酸化物、リン酸化合物、またはフッ化物であり、より好ましくはチタン、マグネシウム、アルミニウム、バナジウム、およびジルコニウムから選ばれる1種以上の金属の酸化物、リン酸化合物、またはフッ化物である。
例えば、酸化物から成るコーティング層は、該酸化物を構成する金属元素を含む可溶性塩(前駆体化合物)を水などの溶媒に溶解して得られた溶液中にリチウム含有金属酸化物を浸漬し、溶媒を例えば減圧加熱、ろ過などの適宜の手段によって除去した後に、高温で焼成する方法などにより、形成することができる。
酸化物から成るコーティング層を形成する場合の前駆体化合物としては、所望の金属の、例えば硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、水酸化物塩、塩化物塩、アンモニウム塩などを使用することができる。これらの前駆体化合物を含有する溶液の濃度は、0.001〜5質量%とすることが好ましく、0.01〜1質量%とすることが好ましい。
酸化物から成るコーティング層を形成する場合の前駆体化合物としては、所望の金属の、例えば硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、水酸化物塩、塩化物塩、アンモニウム塩などを使用することができる。これらの前駆体化合物を含有する溶液の濃度は、0.001〜5質量%とすることが好ましく、0.01〜1質量%とすることが好ましい。
前記溶液中にリチウム含有金属酸化物を浸漬する際には、リチウム含有金属酸化物の表面全体に均一にコーティングする目的で、撹拌および超音波照射から選ばれる1種以上の処理を導入することができる。これらのうち、超音波照射処理が好ましい。超音波の照射エネルギーと照射時間は特に限定されるものではないが、リチウム含有金属酸化物の形態が大きく壊れない程度に留めることが好ましい。このような操作により、リチウム含有金属酸化物の一次粒子の周囲にまで前記溶液が十分に浸透し、リチウム含有金属酸化物の一次粒子に均一にコーティングすることが可能となる。
浸漬時の溶液温度は、0〜50℃とすることが好ましく、0〜30℃とすることがより好ましい。浸漬時間は、1分〜24時間とすることが好ましく、10〜12時間とすることがより好ましい。その後の焼成は、例えば300〜900℃、好ましくは600〜800℃の温度において、例えば10分〜48時間、好ましくは5時間〜24時間の条件で行うことができる。
浸漬時の溶液温度は、0〜50℃とすることが好ましく、0〜30℃とすることがより好ましい。浸漬時間は、1分〜24時間とすることが好ましく、10〜12時間とすることがより好ましい。その後の焼成は、例えば300〜900℃、好ましくは600〜800℃の温度において、例えば10分〜48時間、好ましくは5時間〜24時間の条件で行うことができる。
リン酸化合物から成るコーティング層は、例えば、リチウム含有金属酸化物の表面において、リン源とカチオン源とを反応させる方法などにより、形成することができる。
前記リン源としては、例えばリン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムなどを;
前記カチオン源としては、例えば、所望の金属の硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、水酸化物塩、塩化物塩、アンモニウム塩などを、
それぞれ挙げることができる。
前記リン源としては、例えばリン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムなどを;
前記カチオン源としては、例えば、所望の金属の硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、水酸化物塩、塩化物塩、アンモニウム塩などを、
それぞれ挙げることができる。
具体的な操作方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
先ず、リチウム含有金属酸化物を適当な溶媒中に分散させた懸濁液を調製し;
更に、前記リン源を適当な溶媒に溶解した溶液、およびカチオン源を適当な溶媒に溶解した溶液を、それぞれ調製し;そして、
前記リチウム含有金属酸化物の懸濁液中に、前記リン源溶液およびカチオン源溶液を、好ましくは同時に滴下する方法である。
前記懸濁液および溶液に使用する溶媒は水が好ましい。滴下時の液温は、0〜50℃とすることが好ましく、0〜30℃とすることがより好ましい。滴下後に、例えば300〜900℃において、例えば10分〜48時間の加熱処理を行ってもよい。
先ず、リチウム含有金属酸化物を適当な溶媒中に分散させた懸濁液を調製し;
更に、前記リン源を適当な溶媒に溶解した溶液、およびカチオン源を適当な溶媒に溶解した溶液を、それぞれ調製し;そして、
前記リチウム含有金属酸化物の懸濁液中に、前記リン源溶液およびカチオン源溶液を、好ましくは同時に滴下する方法である。
前記懸濁液および溶液に使用する溶媒は水が好ましい。滴下時の液温は、0〜50℃とすることが好ましく、0〜30℃とすることがより好ましい。滴下後に、例えば300〜900℃において、例えば10分〜48時間の加熱処理を行ってもよい。
フッ化物から成るコーティング層は、リン源の代わりにフッ素源を使用する他は、上記のリン酸化合物から成るコーティング層の場合と同様にして形成することができる。
このフッ素源としては、例えば、フッ素ガス、フッ化アンモニウム、フッ化水素などを;
前記カチオン源としては、例えば、所望の金属の、硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、水酸化物塩、塩化物塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
このフッ素源としては、例えば、フッ素ガス、フッ化アンモニウム、フッ化水素などを;
前記カチオン源としては、例えば、所望の金属の、硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、水酸化物塩、塩化物塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
[リチウムイオン二次電池]
本実施形態におけるリチウム含有金属酸化物を、正極活物質としてリチウムイオン二次電池に用いる際の一例を以下に示す。
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解液、セパレーター、ならびにそれらを収納して電気的接続および絶縁をとるための外装体からなる。
本実施形態におけるリチウム含有金属酸化物を、正極活物質としてリチウムイオン二次電池に用いる際の一例を以下に示す。
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解液、セパレーター、ならびにそれらを収納して電気的接続および絶縁をとるための外装体からなる。
(正極)
正極およびその製造方法の一例を以下に示す。
正極は、集電体と、該集電体上に形成された正極合剤層とから成る。本実施形態におけるリチウム含有金属酸化物は、この正極合剤層における正極活物質として適用される。
正極合剤層は、正極活物質としてのリチウム含有金属酸化物以外に、導電助剤およびバインダーを含有することが好ましい。ここで、導電助剤としては、電子を伝導できる公知のものであれば特に限定されないが、例えばグラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラックなどに代表される炭素材料が好適である。また、バインダーとしては、正極に含まれる2種類以上の構成材料を結着できるものであれば特に限定されないが、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴムなどに代表されるポリマー材料が好適である。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
前記集電体としては特に限定されないが、例えば、金属箔、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル、カーボンクロス、カーボンペーパーなどが好適である。前記金属箔、エキスパンドメタル、パンチメタル、および発泡メタルを構成する金属としては、例えばアルミニウム、チタン、ステンレスなどが好適である。
正極およびその製造方法の一例を以下に示す。
正極は、集電体と、該集電体上に形成された正極合剤層とから成る。本実施形態におけるリチウム含有金属酸化物は、この正極合剤層における正極活物質として適用される。
正極合剤層は、正極活物質としてのリチウム含有金属酸化物以外に、導電助剤およびバインダーを含有することが好ましい。ここで、導電助剤としては、電子を伝導できる公知のものであれば特に限定されないが、例えばグラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラックなどに代表される炭素材料が好適である。また、バインダーとしては、正極に含まれる2種類以上の構成材料を結着できるものであれば特に限定されないが、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴムなどに代表されるポリマー材料が好適である。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
前記集電体としては特に限定されないが、例えば、金属箔、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル、カーボンクロス、カーボンペーパーなどが好適である。前記金属箔、エキスパンドメタル、パンチメタル、および発泡メタルを構成する金属としては、例えばアルミニウム、チタン、ステンレスなどが好適である。
正極は、例えば以下の操作によって形成することができる。
リチウム含有金属酸化物と、必要に応じて、上記の導電助剤、バインダーなどを加えて混合した正極合剤を、例えばN−メチルピロリドン(NMP)のような適当な溶剤に分散させて、正極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この正極合剤含有ペーストを集電体上に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、必要に応じてこれをさらに加圧して厚みを調整して集電体上に正極合剤層を形成することにより、正極が製造される。
リチウム含有金属酸化物と、必要に応じて、上記の導電助剤、バインダーなどを加えて混合した正極合剤を、例えばN−メチルピロリドン(NMP)のような適当な溶剤に分散させて、正極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この正極合剤含有ペーストを集電体上に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、必要に応じてこれをさらに加圧して厚みを調整して集電体上に正極合剤層を形成することにより、正極が製造される。
(負極)
本実施形態に用い得る負極としては、リチウムイオン二次電池に用いられる負極として従来公知のものを用いることができ、特に制限されない。
負極は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な材料から成ることが好ましい。すなわち、負極としては、リチウム金属を用いるか、あるいは
集電体と、該集電体上に負極合剤層とから成る負極を用いることが好ましい。後者の態様における負極活物質としては、炭素負極活物質、リチウムと合金形成が可能な元素を含む負極活物質、ケイ素酸化物負極活物質、スズ酸化物負極活物質、リチウム含有化合物(例えばチタン酸リチウムなど)から成る負極活物質などより選ばれる1種以上が好ましい。この場合の負極活物質は、1種で、または2種以上を組合せて用いることが可能である。
本実施形態に用い得る負極としては、リチウムイオン二次電池に用いられる負極として従来公知のものを用いることができ、特に制限されない。
負極は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な材料から成ることが好ましい。すなわち、負極としては、リチウム金属を用いるか、あるいは
集電体と、該集電体上に負極合剤層とから成る負極を用いることが好ましい。後者の態様における負極活物質としては、炭素負極活物質、リチウムと合金形成が可能な元素を含む負極活物質、ケイ素酸化物負極活物質、スズ酸化物負極活物質、リチウム含有化合物(例えばチタン酸リチウムなど)から成る負極活物質などより選ばれる1種以上が好ましい。この場合の負極活物質は、1種で、または2種以上を組合せて用いることが可能である。
前記の炭素負極活物質としては、例えばハードカーボン、ソフトカーボン、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド、カーボンブラックなどが挙げられる。コークスとしては、例えばピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなどが挙げられる。また、有機高分子化合物の焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものである。
前記のリチウムと合金形成が可能な元素を含む負極活物質としては、金属または半金属の単体、合金または化合物であることができ、これらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものであってもよい。本明細書において、「合金」には、全体として金属の性質を有するものであれば、非金属元素が含まれていてもよい。従って、本明細書における「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含まれる。金属元素および半金属元素としては、例えばチタン(Ti)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)などが挙げられる。
これらの中でも、長周期型周期表における4族または14族の金属元素および半金属元素が好ましく、特に好ましくはチタン、ケイ素、およびスズから選ばれる1種以上である。
これらの中でも、長周期型周期表における4族または14族の金属元素および半金属元素が好ましく、特に好ましくはチタン、ケイ素、およびスズから選ばれる1種以上である。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、マグネシウム(Mg)、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン,ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、およびクロム(Cr)からなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、およびクロムからなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
チタン化合物、スズ化合物、およびケイ素化合物としては、例えば、酸素または炭素を有するものが挙げられ、チタン、スズまたはケイ素に加えて、上述の第2の構成元素を有していてもよい。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン、およびクロムからなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
チタン化合物、スズ化合物、およびケイ素化合物としては、例えば、酸素または炭素を有するものが挙げられ、チタン、スズまたはケイ素に加えて、上述の第2の構成元素を有していてもよい。
負極の製造方法の一例は、例えば以下のとおりである。
上記負極活物質に、必要に応じて、導電助剤、バインダーなどを加えて混合した負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤含有ペーストを調製する。バインダーとしては負極に含まれる2種類以上の構成材料を結着できるものであれば特に限定されない。特に、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンの架橋ゴムラテックス、アクリル系ラテックス、ポリフッ化ビニリデンなどが、バインダーとして好ましい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
次いで、この負極合剤含有ペーストを集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成する。得られた負極合剤層を、必要に応じて加圧して厚みを調整して集電体上に負極合剤層を形成することにより、負極が製造される。負極における集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔などの金属箔により構成される。なお、負極活物質は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記負極活物質に、必要に応じて、導電助剤、バインダーなどを加えて混合した負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤含有ペーストを調製する。バインダーとしては負極に含まれる2種類以上の構成材料を結着できるものであれば特に限定されない。特に、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンの架橋ゴムラテックス、アクリル系ラテックス、ポリフッ化ビニリデンなどが、バインダーとして好ましい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
次いで、この負極合剤含有ペーストを集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成する。得られた負極合剤層を、必要に応じて加圧して厚みを調整して集電体上に負極合剤層を形成することにより、負極が製造される。負極における集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔などの金属箔により構成される。なお、負極活物質は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(電解液)
リチウムイオン二次電池に用いられる電解液としては、少なくとも溶媒とリチウム塩とを含有し、二次電池の電解液として作用するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。前記溶媒としては、実質的に水を含有しない非水系溶媒から成ることが好ましい。
非水系溶媒としては、特に制限はなく、例えば、非プロトン性溶媒が挙げられ、中でも、非プロトン性極性溶媒が好ましい。
リチウムイオン二次電池に用いられる電解液としては、少なくとも溶媒とリチウム塩とを含有し、二次電池の電解液として作用するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。前記溶媒としては、実質的に水を含有しない非水系溶媒から成ることが好ましい。
非水系溶媒としては、特に制限はなく、例えば、非プロトン性溶媒が挙げられ、中でも、非プロトン性極性溶媒が好ましい。
非水系溶媒の具体例としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、トランス−2,3−ブチレンカーボネート、シス−2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、トランス−2,3−ペンチレンカーボネート、シス−2,3−ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、および1,2−ジフルオロエチレンカーボネートに代表される環状カーボネート;γ−ブチロラクトン、およびγ−バレロラクトンに代表されるラクトン;メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、およびメチルトリフルオロエチルカーボネートに代表される鎖状カーボネート;アセトニトリル、プロピオノニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、およびアクリロニトリルに代表されるモノニトリル;メチルプロピオネートに代表される鎖状カルボン酸エステル;ジメトキシエタンに代表される鎖状エーテルカーボネート化合物などが挙げられる。
リチウム塩としては、非水系二次電池の電解液に用いられているものであれば特に制限はなく、いずれのものであってもよい。リチウム塩としては、特に制限はないが、無機リチウム塩であることが好ましい。無機リチウム塩は、通常の非水系電解質として用いられているものであれば特に限定されず、いずれのものを用いもよい。そのような無機リチウム塩の具体例としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li2SiF6、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、Li2B12FbH12−b〔bは0〜3の整数〕などの他、多価アニオンと結合されたリチウム塩などが挙げられる。
リチウム塩は、非水系電解液中に0.1〜3mol/Lの濃度で含有されることが好ましく、0.5〜2mol/Lの濃度で含有されることがより好ましい。
リチウム塩は、非水系電解液中に0.1〜3mol/Lの濃度で含有されることが好ましく、0.5〜2mol/Lの濃度で含有されることがより好ましい。
(セパレーター)
本実施形態に用い得るセパレーターとしては、リチウムイオン二次電池に用いられる従来公知のものを用いることができ、特に制限されない。中でも、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。そのようなセパレーターとしては、例えば織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが挙げられ、これらの中でも、合成樹脂製微多孔膜が好ましい。合成樹脂製微多孔膜としては、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンから選ばれる1種以上を主成分として含有するポリオレフィン系微多孔膜が好適に用いられる。不織布としては、例えばセラミック(例えばガラスなど)製、ポリオレフィン製、ポリエステル製、ポリアミド製、液晶ポリエステル製、アラミド製などの、耐熱製の微多孔膜が用いられる。
セパレーターは、1種の微多孔膜を単層または複数積層したものであってもよく、2種以上の微多孔膜を積層したものであってもよい。
本実施形態に用い得るセパレーターとしては、リチウムイオン二次電池に用いられる従来公知のものを用いることができ、特に制限されない。中でも、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。そのようなセパレーターとしては、例えば織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが挙げられ、これらの中でも、合成樹脂製微多孔膜が好ましい。合成樹脂製微多孔膜としては、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンから選ばれる1種以上を主成分として含有するポリオレフィン系微多孔膜が好適に用いられる。不織布としては、例えばセラミック(例えばガラスなど)製、ポリオレフィン製、ポリエステル製、ポリアミド製、液晶ポリエステル製、アラミド製などの、耐熱製の微多孔膜が用いられる。
セパレーターは、1種の微多孔膜を単層または複数積層したものであってもよく、2種以上の微多孔膜を積層したものであってもよい。
(外装体)
本実施形態のリチウムイオン二次電池に用い得る外装体は、電池の外装体として従来公知のものを用いることができ、特に制限されない。外装体の材料としては、例えばステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属、あるいはその金属の表面を樹脂で被覆したラミネートフィルムなどが挙げられる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池に用い得る外装体は、電池の外装体として従来公知のものを用いることができ、特に制限されない。外装体の材料としては、例えばステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属、あるいはその金属の表面を樹脂で被覆したラミネートフィルムなどが挙げられる。
(リチウムイオン二次電池の製造方法)
本実施形態におけるリチウムイオン二次電池は、上述の電解液、リチウム含有金属酸化物を用いて製造した正極、負極、およびセパレータを用いて、公知の方法により製造される。例えば、正極と負極とを、その間にセパレータを介在させた積層体とし、
該積層体を巻回して、積層体の巻回体に構成する態様;
該積層体を折り曲げて、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレータが介在する多層構造の積層体に構成する態様;
該積層体を複数層に積層して、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレータが介在する多層構造の積層体に構成する態様
などによって、電極積層体を構成する。次いで、該電極積層体を電池ケース(外装)内に収容して、電解液をケース内部に注液し、上記積層体を電解液に浸漬して封印することによって、リチウムイオン二次電池を製造することができる。或いは、ゲル化させた電解液を含む電解質膜を予め作製しておき、正極、負極、該電解質膜、およびセパレータを用いて、上述の方法に準じて電極積層体を形成した後、該電極積層体を電池ケース内に収容してリチウムイオン二次電池を製造する方法も可能である。
本実施形態におけるリチウムイオン二次電池は、上述の電解液、リチウム含有金属酸化物を用いて製造した正極、負極、およびセパレータを用いて、公知の方法により製造される。例えば、正極と負極とを、その間にセパレータを介在させた積層体とし、
該積層体を巻回して、積層体の巻回体に構成する態様;
該積層体を折り曲げて、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレータが介在する多層構造の積層体に構成する態様;
該積層体を複数層に積層して、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレータが介在する多層構造の積層体に構成する態様
などによって、電極積層体を構成する。次いで、該電極積層体を電池ケース(外装)内に収容して、電解液をケース内部に注液し、上記積層体を電解液に浸漬して封印することによって、リチウムイオン二次電池を製造することができる。或いは、ゲル化させた電解液を含む電解質膜を予め作製しておき、正極、負極、該電解質膜、およびセパレータを用いて、上述の方法に準じて電極積層体を形成した後、該電極積層体を電池ケース内に収容してリチウムイオン二次電池を製造する方法も可能である。
リチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形、楕円形、角筒型、ボタン形、コイン形、扁平形、ラミネート形などが好適に採用される。
上記のようにして製造されたリチウムオン二次電池は、初回充電により電池として機能し得る。ここで、初回充電の際に電解液の一部が分解することにより、安定化する。初回充電の方法について特に制限はないが、0.001〜0.3Cで行われることが好ましく、0.002〜0.25Cで行われることがより好ましく、0.003〜0.2Cで行われることがさらに好ましい。なお、1Cとは電池が1時間で放電される電流値である。また、初回充電の途中に定電圧充電を経由して行われることも好ましい結果を与える。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
上記のようにして製造されたリチウムオン二次電池は、初回充電により電池として機能し得る。ここで、初回充電の際に電解液の一部が分解することにより、安定化する。初回充電の方法について特に制限はないが、0.001〜0.3Cで行われることが好ましく、0.002〜0.25Cで行われることがより好ましく、0.003〜0.2Cで行われることがさらに好ましい。なお、1Cとは電池が1時間で放電される電流値である。また、初回充電の途中に定電圧充電を経由して行われることも好ましい結果を与える。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<リチウム含有金属酸化物の製造>
(1)前駆体金属酸化物の合成
以下の硫酸塩:
MnSO4・5H2O(関東化学株式会社製)2,563.5g、
NiSO4・6H2O(関東化学株式会社製)931.5g、および
CoSO4・7H2O(関東化学株式会社製)569.4g
を純水に溶解させて合計8,100mlとした水溶液Aを調製した。
炭酸ナトリウムNa2CO3(関東化学株式会社製)1,717.2gを純水に溶解させ、さらに28質量%アンモニア水(関東化学株式会社製)546.9mlを加えて合計8,100mlとした水溶液Bを調製した。
<リチウム含有金属酸化物の製造>
(1)前駆体金属酸化物の合成
以下の硫酸塩:
MnSO4・5H2O(関東化学株式会社製)2,563.5g、
NiSO4・6H2O(関東化学株式会社製)931.5g、および
CoSO4・7H2O(関東化学株式会社製)569.4g
を純水に溶解させて合計8,100mlとした水溶液Aを調製した。
炭酸ナトリウムNa2CO3(関東化学株式会社製)1,717.2gを純水に溶解させ、さらに28質量%アンモニア水(関東化学株式会社製)546.9mlを加えて合計8,100mlとした水溶液Bを調製した。
撹拌機構と、不活性ガスをバブリングさせる機構とを有する反応槽で、硫酸ナトリウムNa2SO4(関東化学株式会社製)710.2gを純水に溶解させて合計5000mlとした水溶液Cを入れた。この水溶液Cに対し、撹拌下に窒素ガスを吹き込みつつ、かつ、10分ごとに約520mlずつ反応槽から液を抜き出しつつ、水溶液Aおよび水溶液Bを各25.8mL/分の速度で同時に水溶液C中に滴下させ、水に難溶性の金属塩の粒子を反応槽中に生成させた。300分後に滴下を止め、反応槽内の液を回収し、ろ過して、沈殿およびろ液を得た。
得られた沈殿につき、純水中で10分撹拌した後にろ過をする作業を繰り返し、ろ液の導電率が30mS/cm以下になるまで沈殿を洗浄した。
洗浄後の沈澱を80℃で真空乾燥させたもの2.00gと、平均一次粒径2μm以下に粉砕した炭酸リチウムLi2CO3(本荘ケミカル株式会社製)0.953gとをよく混合した後、大気中、500℃において5時間焼成した後、再度混合して、さらに大気下900℃において5時間焼成することにより、前駆体である金属酸化物を得た。
得られた沈殿につき、純水中で10分撹拌した後にろ過をする作業を繰り返し、ろ液の導電率が30mS/cm以下になるまで沈殿を洗浄した。
洗浄後の沈澱を80℃で真空乾燥させたもの2.00gと、平均一次粒径2μm以下に粉砕した炭酸リチウムLi2CO3(本荘ケミカル株式会社製)0.953gとをよく混合した後、大気中、500℃において5時間焼成した後、再度混合して、さらに大気下900℃において5時間焼成することにより、前駆体である金属酸化物を得た。
この前駆体金属酸化物についてX線構造解析を行ったところ、組成式(1):
Li2Mn1−xM’xO3−α・・・(1)
{式中、M’は、NiおよびCoから選ばれ、0≦x<1、そして0≦α<1の関係を満足する。}
で表される層状結晶構造、および下記組成式(3):
LiMeO2・・・(3)
{式中、Meは、Mn,NiおよびCoから選ばれる。}
で表される層状結晶構造の2つの結晶構造が固溶した構造を有していることが分かった。
この前駆体金属酸化物の一部を採り、マイクロウェーブ(アナリティクイエナ社製、TOPwave(登録商標))により酸分解してICP測定(Perkin Elmer社製、Optima8300)を行った。その結果、上記金属酸化物における金属元素の組成比は、Li:Mn:Ni:Co=0.62:0.28:0.076:0.054(モル比)であることが分かった。これより、上記組成式(1)中のM’としてNiが存在していることが推定され、
また、上記組成式(3)中のMeとして、Mn、Ni、およびCoの3種の金属元素が共存していることが確認された。
Li2Mn1−xM’xO3−α・・・(1)
{式中、M’は、NiおよびCoから選ばれ、0≦x<1、そして0≦α<1の関係を満足する。}
で表される層状結晶構造、および下記組成式(3):
LiMeO2・・・(3)
{式中、Meは、Mn,NiおよびCoから選ばれる。}
で表される層状結晶構造の2つの結晶構造が固溶した構造を有していることが分かった。
この前駆体金属酸化物の一部を採り、マイクロウェーブ(アナリティクイエナ社製、TOPwave(登録商標))により酸分解してICP測定(Perkin Elmer社製、Optima8300)を行った。その結果、上記金属酸化物における金属元素の組成比は、Li:Mn:Ni:Co=0.62:0.28:0.076:0.054(モル比)であることが分かった。これより、上記組成式(1)中のM’としてNiが存在していることが推定され、
また、上記組成式(3)中のMeとして、Mn、Ni、およびCoの3種の金属元素が共存していることが確認された。
(2)酸水溶液との接触(工程(1))
次いで、上記の前駆体金属酸化物1.5gを、氷浴により2℃に冷却されている0.05mol/Lの硫酸水溶液(関東化学株式会社製)100mL中に入れ、スターラーにより400rpmで2時間撹拌して、硫酸との接触処理を行った。
次いで、上記の前駆体金属酸化物1.5gを、氷浴により2℃に冷却されている0.05mol/Lの硫酸水溶液(関東化学株式会社製)100mL中に入れ、スターラーにより400rpmで2時間撹拌して、硫酸との接触処理を行った。
(3)焼成処理(工程(2))
硫酸と接触後の酸化物をろ取し、氷浴により2℃に冷却されている純水100mLに入れ、スターラーにより400rpmで10分間撹拌洗浄した。これをろ取し、100℃において2時間乾燥した。その後、昇温速度10℃/分で400℃まで昇温し、400℃において5時間焼成することにより、目的とするリチウム含有金属酸化物を得た。
上記、工程(1)および工程(2)を行った後に、上記と同様の手順によって再度ICP測定を行ったところ、工程(1)および工程(2)によるLiの減少量は8.9%であった。
また、上記工程(2)において、純水で洗浄後にろ取した粉体を少量採り、熱重量解析(セイコーインスツル株式会社製、TG/DTA6200)によって乾燥空気中、昇温速度10℃/分で400℃まで昇温した際の質量減少率を測定したところ、1.44%であった。なお、この熱重量分析は、工程(2)における焼成による金属酸化物の質量減少の程度を知るための代替評価である。
硫酸と接触後の酸化物をろ取し、氷浴により2℃に冷却されている純水100mLに入れ、スターラーにより400rpmで10分間撹拌洗浄した。これをろ取し、100℃において2時間乾燥した。その後、昇温速度10℃/分で400℃まで昇温し、400℃において5時間焼成することにより、目的とするリチウム含有金属酸化物を得た。
上記、工程(1)および工程(2)を行った後に、上記と同様の手順によって再度ICP測定を行ったところ、工程(1)および工程(2)によるLiの減少量は8.9%であった。
また、上記工程(2)において、純水で洗浄後にろ取した粉体を少量採り、熱重量解析(セイコーインスツル株式会社製、TG/DTA6200)によって乾燥空気中、昇温速度10℃/分で400℃まで昇温した際の質量減少率を測定したところ、1.44%であった。なお、この熱重量分析は、工程(2)における焼成による金属酸化物の質量減少の程度を知るための代替評価である。
<リチウムイオン二次電池の製造>
本実施例においては、前述のようにして得られたリチウム含有金属酸化物を正極活物質として用いた。
この正極活物質と、導電助剤であるグラファイトの粉末(TIMCAL社製、KS−6)およびアセチレンブラックの粉末(電気化学工業社製、HS−100)と、バインダーであるポリフッ化ビニリデン溶液(クレハ社製、L#7208)とを固形分比として80:5:5:10の質量比で混合した。得られた混合物に、分散溶媒としてNMPを、固形分30質量%となるように投入して更に混合することにより、正極合剤含有ペーストを調製した。このペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延して、厚さ60μmの正極を得た。なお、この正極の厚さは、アルミニウム箔の厚さを含む値である。
本実施例においては、前述のようにして得られたリチウム含有金属酸化物を正極活物質として用いた。
この正極活物質と、導電助剤であるグラファイトの粉末(TIMCAL社製、KS−6)およびアセチレンブラックの粉末(電気化学工業社製、HS−100)と、バインダーであるポリフッ化ビニリデン溶液(クレハ社製、L#7208)とを固形分比として80:5:5:10の質量比で混合した。得られた混合物に、分散溶媒としてNMPを、固形分30質量%となるように投入して更に混合することにより、正極合剤含有ペーストを調製した。このペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延して、厚さ60μmの正極を得た。なお、この正極の厚さは、アルミニウム箔の厚さを含む値である。
ステンレス製の円盤型電池ケース(外装体)に、負極として直径16mmに打ち抜いたリチウム金属箔(厚さ0.5mm)を挿入した。その上に、ポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレーター、ガラス繊維製のセパレーター(ADVANTEC社製、GA−100、膜厚約500μm)、および上記で作製した正極を直径16mmに打ち抜いたものを、この順で挿入した。次いで、電池ケース内に、電解液を1.0mL注入して、正極、負極およびセパレーターを電解液に浸漬した後、電池ケースを密閉することにより、リチウムイオン二次電池を製造した。前記電解液としては、エチルメチルカーボネート(EMC)およびエチレンカーボネート(EC)から成る容量比7:3の混合溶媒中に、1mol/LのLiPF6を溶解した溶液を用いた。
<電池評価>
得られたリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」ともいう。)を、25℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、恒温槽PLM−73S)内に収容し、充放電装置(アスカ電子(株)製、充放電装置ACD−01)に接続した。次いで、その電池を0.1Cの定電流で充電し、4.7Vに到達した後、4.7Vの定電圧において電流が0.05mA以下になるまで充電した。次いで、0.1Cの定電流で2.0Vまで放電した際の放電容量を計測したところ、296mAh/gの放電容量が得られた。
次に、その電池を0.3Cの定電流で充電し、4.6Vに到達した後、4.6Vの定電圧において電流が0.05mA以下になるまで充電した。次いで、2.0Vまで定電流放電する充放電サイクルを、電流値を0.3、0.3、1、1、2、2、5、および5とこの順で変量して計8回行った。
最後の5Cにおける放電の際の放電容量を計測したところ、151mAh/gであった。
得られたリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」ともいう。)を、25℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、恒温槽PLM−73S)内に収容し、充放電装置(アスカ電子(株)製、充放電装置ACD−01)に接続した。次いで、その電池を0.1Cの定電流で充電し、4.7Vに到達した後、4.7Vの定電圧において電流が0.05mA以下になるまで充電した。次いで、0.1Cの定電流で2.0Vまで放電した際の放電容量を計測したところ、296mAh/gの放電容量が得られた。
次に、その電池を0.3Cの定電流で充電し、4.6Vに到達した後、4.6Vの定電圧において電流が0.05mA以下になるまで充電した。次いで、2.0Vまで定電流放電する充放電サイクルを、電流値を0.3、0.3、1、1、2、2、5、および5とこの順で変量して計8回行った。
最後の5Cにおける放電の際の放電容量を計測したところ、151mAh/gであった。
[実施例2]
実施例1にいて、<リチウム含有金属酸化物の製造>の工程(1)で用いた酸性水溶液の濃度を0.03mol/Lに変更した以外は同様にして、リチウム含有金属酸化物を製造し、これを正極活物質として用いてリチウムイオン二次電池を製造した。
このリチウムイオン二次電池について、実施例1と同条件で電池評価を行ったところ、5Cにおける放電の際の放電容量は154mAh/gであった。
実施例1にいて、<リチウム含有金属酸化物の製造>の工程(1)で用いた酸性水溶液の濃度を0.03mol/Lに変更した以外は同様にして、リチウム含有金属酸化物を製造し、これを正極活物質として用いてリチウムイオン二次電池を製造した。
このリチウムイオン二次電池について、実施例1と同条件で電池評価を行ったところ、5Cにおける放電の際の放電容量は154mAh/gであった。
[実施例3]
オキシ硫酸チタン(キシダ化学株式会社製)2.91gを水200mlに溶解した。これを氷浴により2℃に冷却し、実施例1と同じ条件で製造したリチウム含有金属酸化物1.51gを投入した。投入直後から15分間、液に超音波を照射した。超音波の照射は、液を氷浴に入れた状態のまま、超音波照射装置(株式会社日本精機製作所製 US−600T)にて、照射ロッド(Φ7mm、チタン合金製)を用いて、出力300Wで行った。
照射終了後、リチウム含有金属酸化物をろ取し、氷浴によって2℃に冷却した水100ml中にリチウム含有金属酸化物を再分散させ、氷浴に入れた状態のまま、スターラーにより400rpmで10分撹拌した。その後、リチウム含有金属酸化物をろ取し、100℃において2時間乾燥した後、昇温速度10℃/分で400℃まで昇温し、400℃において5時間焼成することにより、目的とするリチウム含有金属酸化物を得た。
オキシ硫酸チタン(キシダ化学株式会社製)2.91gを水200mlに溶解した。これを氷浴により2℃に冷却し、実施例1と同じ条件で製造したリチウム含有金属酸化物1.51gを投入した。投入直後から15分間、液に超音波を照射した。超音波の照射は、液を氷浴に入れた状態のまま、超音波照射装置(株式会社日本精機製作所製 US−600T)にて、照射ロッド(Φ7mm、チタン合金製)を用いて、出力300Wで行った。
照射終了後、リチウム含有金属酸化物をろ取し、氷浴によって2℃に冷却した水100ml中にリチウム含有金属酸化物を再分散させ、氷浴に入れた状態のまま、スターラーにより400rpmで10分撹拌した。その後、リチウム含有金属酸化物をろ取し、100℃において2時間乾燥した後、昇温速度10℃/分で400℃まで昇温し、400℃において5時間焼成することにより、目的とするリチウム含有金属酸化物を得た。
得られたリチウム含有金属酸化物をICPによって分析した結果から、該リチウム含有金属酸化物に含有される金属の全部に占めるTi原子の割合は、0.41質量%であることが分かった。また、オキシ硫酸チタン処理前のリチウム含有金属酸化物について行ったBET法による測定から、一次粒子の平均粒子径が660nmであると算出された。これらの測定結果から、Ti原子はそのすべてが比重4.0g/cm3のTiO2の形態で一次粒子の表面に存在していると仮定し、さらにコア部分(リチウム含有金属酸化物のうちのコーティング層以外の部分)の比重を4.2g/cm3と仮定して、TiO2からなるコーティング層の膜厚を0.8nmと算出した。
このリチウム含有金属酸化物を正極活物質として用いた他は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、電池評価を行った。その結果、5Cにおける放電の際の放電容量は、151mAh/gであった。
このリチウム含有金属酸化物を正極活物質として用いた他は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、電池評価を行った。その結果、5Cにおける放電の際の放電容量は、151mAh/gであった。
[比較例1]
本比較例では、前駆体金属酸化物に対して酸水溶液処理およびその後の焼成を行わずに、そのまま正極活物質として用いた。
前駆体金属酸化物について、硫酸水溶液との接触処理およびその後の焼成を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、実施例1と同様にして電池評価を行った。最後の5Cにおける放電の際の放電容量は123mAh/gであった。
本比較例では、前駆体金属酸化物に対して酸水溶液処理およびその後の焼成を行わずに、そのまま正極活物質として用いた。
前駆体金属酸化物について、硫酸水溶液との接触処理およびその後の焼成を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、実施例1と同様にして電池評価を行った。最後の5Cにおける放電の際の放電容量は123mAh/gであった。
[比較例2]
リチウム含有金属酸化物の製造に際して、硫酸水溶液との接触処理の後の焼成温度を100℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、実施例1と同様にして電池評価を行った。最後の5Cにおける放電の際の放電容量は102mAh/gであった。
リチウム含有金属酸化物の製造に際して、硫酸水溶液との接触処理の後の焼成温度を100℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、実施例1と同様にして電池評価を行った。最後の5Cにおける放電の際の放電容量は102mAh/gであった。
[比較例3]
リチウム含有金属酸化物の製造に際して、硫酸水溶液との接触処理の後の焼成温度を600℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、実施例1と同様にして電池評価を行った。最後の5Cにおける放電の際の放電容量は112mAh/gであった。
リチウム含有金属酸化物の製造に際して、硫酸水溶液との接触処理の後の焼成温度を600℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、実施例1と同様にして電池評価を行った。最後の5Cにおける放電の際の放電容量は112mAh/gであった。
本発明の方法を適用して得られたリチウム含有金属酸化物を正極活物質として製造されたリチウムイオン二次電池は、各種民生用機器用電源、定置型電源、自動車用電源などの製造において好適に利用可能である。
Claims (12)
- 少なくとも、Liと、
Ni、Co、およびMnから選ばれる1種類以上の金属元素と
を含むリチウム含有金属酸化物の製造方法であって、下記の工程、
(1)前駆体である金属酸化物を、無機酸または有機酸を含有する酸性水溶液と接触させる工程、および
(2)前記接触後の金属酸化物を、100℃より高く600℃より低い温度で焼成する工程
を順に経ることを特徴とする、前記リチウム含有金属酸化物の製造方法。 - 前記前駆体である金属酸化物が、下記組成式(1):
Li2Mn1−xM’xO3−α・・・(1)
{式中、M’はMnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦x<1、および0≦α<1の関係を満足する。}で表される、Liが層状に配列した層状結晶構造を有する複合金属酸化物である、請求項1に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。 - 前記前駆体である金属酸化物が、
前記組成式(1)で表される層状結晶構造と、
下記組成式(2):
Li1+kMn2−yMe’yO4―γ・・・(2)
{式中、Me’はMnおよびLi以外の1種類以上の金属元素であり、そして0≦k<1、0≦y≦0.5、および0≦γ<1の関係を満足する。}で表されるスピネル結晶構造、および下記組成式(3):
LiMeO2・・・(3)
{式中、Meは、Li以外の1種類以上の金属元素である。}で表されるLiが層状に配列した層状結晶構造から選ばれる1種類以上の結晶構造と
が固溶した結晶を有する、請求項2に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。 - 前記酸性水溶液中に含まれるプロトンの数が、前記前駆体である金属酸化物の含有するLi量に対して、1モル%以上200モル%以下の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
- 前記工程(1)における酸性水溶液の温度が0℃以上、30℃以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
- 前記工程(2)における焼成によって、金属酸化物が0.5質量%以上3質量%以下の範囲で質量減少する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
- 前記工程(2)に次いで、
(3)金属酸化物の表面に、酸化物、リン酸化合物、およびフッ化物から選ばれる1種類以上から成るコーティング層を1層以上形成する工程
をさらに経る、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。 - 前記工程(3)において、金属酸化物に対する超音波照射工程を経てコーティング層を形成する、請求項7に記載のリチウム含有金属酸化物の製造方法。
- 請求項1〜8に記載の製造方法によって得られる、リチウム含有金属酸化物。
- 請求項7または8に記載の製造方法によって得られ、そして
前記コーティング層が、Li、B、Mg、Al、Si、Ca、Ti、Sn、Pb、V、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Mo、W、Zr、Hf、Y、Nb、Ba、Sr、およびCeから選ばれる1種類以上の金属元素の酸化物、リン酸化合物、およびフッ化物から選ばれる1種類以上から成る、請求項9に記載のリチウム含有金属酸化物。 - 前記コーティング層の平均膜厚が、0.1nm以上10nm以下である、請求項10に記載のリチウム含有金属酸化物。
- 正極活物質として、請求項9〜11のいずれか1項に記載のリチウム含有金属酸化物を用いることを特徴とする、リチウムイオン二次電池。
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