JP6421467B2 - Emi対策用コンデンサの実装方法 - Google Patents
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Description
このため、プリント配線板では限られたスペースで多くの電子部品に対する配線パターンを配置できるように、グラウンド層、電源層及び信号層を積層した多層構造となっている。
しかしながら、多層構造とした場合、EMI(Electro Magnetic Interference:電磁波干渉)という現象が生じやすく、特にIC(集積回路)の安定動作が得られなくなるという問題があった。
この問題を解消すべく、バイパスコンデンサをICの電源端子付近や電源プレーンに配置することが知られている。
特許文献1に記載されているように、電源層の各電源プレーンとグラウンド層とを繋ぐバイパスコンデンサを搭載し、各電源プレーン間をAC的に電気接続させてその面積を拡大することにより、電子部品のオフ→オン時の急激な変化によるプレーン共振を抑制することができる。
このチェックシステムでは、高速ICに接続されたデカップリングコンデンサの最適な配置位置、最適な容量値を、計算式を用いて算出するようになっている。
仮設計されている現在のデカップリングコンデンサの配置位置、及び容量値が上記算出結果と大きく異なる場合には、デカップリングコンデンサの配置位置、及び容量値が最適になるように指示するシステムである。
共振対策用の追加バイパスコンデンサの数はコストの観点から少ない方が良く、少なければ共振対策完了までのシミュレーションの回数も減って解析工数の削減(共振対策作業の能率向上)にも寄与することとなる。
本発明者の実験によれば、コンデンサから引き出されるパターンや、層間を電気的に接続するためのメッキ穴であるVIAのインダクタンスLの値が、共振対策におけるバイパスコンデンサの追加実装に影響していることが明らかになった。
しかしながら、今までのバイパスコンデンサの実装に関しては、コンデンサから引き出されるパターンやVIAのインダクタンスLの値は考慮されていなかった。
電源シミュレーションやプレーン共振シミュレーションにおいても上記L値は、一定値(固定値)を用いており、実際のL値よりも大きく、対策で追加するコンデンサ数が必要以上に増えてしまうという問題があった。
まず、図1乃至図6に基づいて、プレーン共振対策でバイパスコンデンサ(以下、単に「コンデンサ」ともいう)を追加するときのインダクタンスLの値(以下、単に「L値」ともいう)の影響について説明する。
図1に示すように、GND(グラウンド)プレーン2と電源プレーン4とが誘電体を挟んで平行な位置にある場合、平行平板共振を起こし、定在波が発生する。
このため、図2に示すように、電界(電圧)強度の強い位置にコンデンサ6を追加し、インピーダンスを下げて共振対策をすることになる。
コンデンサをプリント配線基板(以下、単に「基板」ともいう)に配置すると、コンデンサの持つ容量とESL(等価直列インダクタンス)とに加え、引き出しパターン8のL値が含まれる。
図2において符号10は、基板の層間を電気的に接続するメッキ穴としてのVIAを示す。電源プレーンとGNDプレーンの位置順位は上記に限定されない。
すなわち、共振を1GHz以上にするためのコンデンサ数が少なくて済む。
図4に示すように、共振1GHz以下の場合には更にコンデンサの追加が必要であるが、L値が小さいと共振1GHz以上となってコンデンサの追加は不要となる。
引き出しパターンのLが小さい場合、プレーンサイズに合った定在波が発生する。
電界(電圧)が高い位置(両端)にコンデンサを追加すると、電源インピーダンスが低下して電界が低下する。これにより定在波の周期が変わり、共振周波数が高くなる。
プレーン共振対策では、共振周波数が1GHz以上となるまでコンデンサを追加する。
電界(電圧)が高い位置(中央)にコンデンサを追加すると、共振周波数が1GHz以上となり、プレーン共振対策が完了する。
この場合、電界(電圧)が高い位置(両端)にコンデンサを追加すると、Lが大きい分、電界が下がらず定在波の周期が延びる。
すなわち、Lが小さいときに比べて共振周波数が低くなる。
電界(電圧)が高い位置(中央)にコンデンサを追加しても、共振周波数が高周波へ移動し難い。このため、共振周波数を1GHz以上にするためのコンデンサ数が増すことになる。
図6(a)に示すように、導体の持つL値は、導体部分の長さlに比例してインダクタンスが増加するため、短くするとインダクタンスLが減少する。
自由空間における長さl[mm]、半径r[mm]の円形断面を持つリード線のLは下記の式で求められる。
逆方向の電流経路では、互いの磁束を打ち消し合うため、インダクタンスLが減少する。
図7は、L値が小さくなる引き出しパターンレイアウト(BEST)と、通常の引き出しパターンレイアウト(NORMAL)のL値を3D EMCシミュレーションを用いて算出した結果を示している。
図8に示すように、BEST形状における引き出しパターン長Pは0.3mm、VIA間距離Sは1.0mm、VIA径は0.3mmである。
VIA間距離Sは、穴中心間の距離である。
図7に示すように、NORMAL形状では、引き出しパターン長Pを、0.3mm、0.9mm、1.5mmと振り、VIA間距離Sを、2.5mm、3.7mm、4.9mmと振っている。
本シミュレーションで確認した範囲は、電源プレーンとGNDプレーンの層間距離mを0.1mmに固定したものである。
図7に示すように、インダクタンスLが0.8nH以下について見てみると、BEST形状では6マス存在するのに対し、NORMAL形状では1マス(0.69)しか存在しない。
図10に示すように、電源層までの距離毎に分類したときのL値は、VIA間距離に線形近似の特性となっている。
近似直線式は、図11に示すようなものとなる。
具体的には、引き出しパターンレイアウトのどの構成要素がL値に影響するかを検証し、L値が小さくなる引き出しパターンレイアウトを求めた。
図12に示すように、引き出しパターンの構成要素をパラメータとし、L18直交表(図15)に割付けた。
図13はVIAの数と配置形状を示し、図14は引き出し角、VIAの穴径、電源長、GND長、電源幅、GND幅を示している。
図16は、引き出しパターンの構成要素のL値への寄与度についての要因効果を示す図である。
図16から明らかなように、VIAの数は多い方が良いが、VIAの配置が直線の場合(NORMAL)では効果が少ない。
VIA間距離は近い方が良い。
引き出しパターン長は短い方が良い。
VIAの穴径大、引き出しパターン幅の広い方が導体面積が広がってL値は小さくなる効果があると考えられるが、直交表の交互作用(他因子の影響)で効果が見えないので、他因子に比べ効果が小さい。
引き出しパターンのL値が小さい/大きい条件でプレーン共振対策を行った場合に、L値が小さい方が対策コンデンサ数が減少するかどうかを検証した。
上記L18直交表(図15)の中で、L値に差がある2条件(No.1、No.3)で比較した。
共振対策に必要なコンデンサ数は、プレーンの大きさ、プレーンの間隔で異なるため、プレーンの条件を図17のL4直交表に割付けた。
No.1、No.3における引き出しパターンを図18に示す。
プレーン形状が広い矩形状の場合、多方向に共振が分布するため、インピーダンスは低くなる。
プレーン形状が狭い矩形状(帯状)の場合、1GHz以下では1方向の共振となり、インピーダンスは高くなる。
DEMITAS(プレーン共振解析シミュレーション装置)でプレーン共振解析を実施した基板から抽出した結果、四角い形状では共振方向が多方向となり、プレーンのインピーダンスは低くなった(図17におけるプレーン1)。
細長い形状では、共振方向が1方向となり、プレーンのインピーダンスは高くなった(図17におけるプレーン2)。
図21に示すように、コンデンサから電源/GNDプレーンまでの距離によるVIAのインダクタンスの影響を検証するために、部品配置面をL1とL6とした。
ここでのLはレイヤーを意味する。
直交表のいずれの組合せでも、L値の小さい引出しパターンの方がプレーン共振対策に必要なコンデンサ数が少ない。
L値の小さい引出しパターンにすることでコンデンサ数を削減でき、部品コストダウンとなる。
プレーン共振解析シミュレーション装置による解析ときに、追加コンデンサ数が少なくなることで対策完了までのシミュレーション回数が減り、工数削減となる。
すなわち、共振対策作業の能率向上に寄与できる。
上記DEMITASのプレーン共振対策で使用されるコンデンサモデルに必要なLは、プレーン間の特性であるが、基板の実測から得られるL値は測定VIAまでを含んでしまう。
このため、測定位置までの不要なLを除くために、3D EMCシミュレーションを用いて引出しパターンのL値を求める。
その結果を図23に示す。SIM(シミュレーション)による近似直線は、実測(y=x)の理想直線上にのっている。
相関係数rも0.995と十分精度がとれており、シミュレーションでL値の算出が可能であることが明らかである。その理由を以下に説明する。
図24に示すように、実測では表面層に引き出さないと測定できない。測定位置まで引き出している分、L値が大きくなる。
L値は、引き出しパターンの長さにおけるVIA間の距離とコンデンサから電源層までの距離とから決定される。
電源層までの距離毎に分類したときのL値は、VIA間距離に線形近似の特性となっている。
シミュレーションから算出したL値と、近似式から算出したL値との相関係数は、ほぼ1となっている。
DEMITAS(プレーン共振解析シミュレーション装置)のプレーン共振対策のコンデンサ配置に、本発明のナレッジ手法(レイアウトに応じたL値を用いる手法)を用いて試行した。
従来手法(L値を2nHに固定)と追加コンデンサ数を比較し、追加コンデンサ削減効果を確認した。
図28は対策前のプレーンを示す図である。プレーン種類:5V、プレーン位置:L3(レイヤー3)で、初期実装コンデンサ位置は7箇所である。
図29は、対策前のプレーンにおける最大電圧(励振源電圧に対するプレーン上での最大値)を示すグラフである。
図32は対策後のプレーンの最大電圧周波数特性を示す図で、(a)は従来手法における図、(b)は本発明のナレッジ手法による図である。
図30と図31から、本発明のナレッジ手法によれば、従来手法に対して8個の追加コンデンサを削減できる。
すなわち、35%のコンデンサ削減効果を確認することができた。
シミュレーション装置20は、ディスプレイ22と、制御手段24とを有している。
基板の設計データが入力されると、制御手段24は、EMI対策用コンデンサからグラウンド層、電源層に引き出される引き出しパターンの複数のパターンレイアウトについてインダクタンスLを求める。
制御手段24は、入力された設計データから、EMI対策用コンデンサが実装されるスペース、制約条件を抽出し、これらの制約下で適正となるインダクタンスLの小さいパターンレイアウトを選択し、その結果をディスプレイ22に表示する。
換言すると、制御手段24は、引き出しパターンのレイアウト毎にシミュレーションによりモデル化し、コンデンサが実装されるスペース、制約条件に基づいて最適なパターンレイアウトを選択する。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
4 電源層
6 EMI対策用コンデンサとしてのバイパスコンデンサ
10 VIA
12 多層プリント配線板
P 引き出しパターンの長さ
S VIA間の距離
Claims (1)
- グラウンド層、電源層及び信号層が積層され、各層間が穴であるVIAにより電気的に接続されている多層プリント配線板におけるEMI対策用コンデンサの実装方法において、
前記EMI対策用コンデンサから前記グラウンド層、電源層に引き出される引き出しパターンの複数のパターンレイアウトのうち、引き出しパターンのインダクタンスLが小さいパターンレイアウトを選択して実装し、
前記インダクタンスLは、前記引き出しパターンの長さにおける前記VIA間の距離と前記EMI対策用コンデンサから前記電源層までの距離とから決定され、
引き出しパターンのレイアウト毎にシミュレーションによりモデル化し、前記EMI対策用コンデンサが実装されるスペース、制約条件に基づいて最適なパターンレイアウトを選択することを特徴とするEMI対策用コンデンサの実装方法。
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