以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、各図におけるx軸方向、y軸方向、及びz軸方向のそれぞれは、マニホールドの高さ方向、短手方向(幅方向)、及び長手方向に対応する。また、各図におけるx軸方向、y軸方向、及びz軸方向のそれぞれは、各燃料電池セル及び支持基板の長手方向、短手方向(幅方向)、及び厚さ方向に対応する。また、本明細書の「上」及び「下」は、マニホールド及びセルスタック装置を水平面に載置したときのマニホールドの高さ方向(x軸方向)を基準とする。
(実施の形態1)
図1〜図6を参照して、本発明の一実施の形態であるセルスタック装置及び燃料電池セルについて説明する。実施の形態1のセルスタック装置及び燃料電池セルは、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に用いられる。
[セルスタック装置]
図1〜図3に示すように、セルスタック装置1は、複数の燃料電池セル100と、マニホールド200と、第1接合材300とを備えている。各燃料電池セル100は、マニホールド200によって支持されている。第1接合材300は、各燃料電池セル100と、マニホールド200とを接合する。
[燃料電池セル]
図1〜図3に示すように、燃料電池セル100は、マニホールド200から上方に延びている。詳細には、各燃料電池セル100は、マニホールド200の上壁230から上方に延びている。燃料電池セル100の下端部101は、マニホールド200の挿入孔231内に挿入されている。なお、燃料電池セル100の下端部101が挿入孔231内に挿入された状態において、燃料電池セル100の下端部101の外周面と挿入孔231の内壁面との間には隙間が形成されている。この隙間に第1接合材300が充填されている。このため、燃料電池セル100の下端部101は、マニホールド200に固定されている。一方、燃料電池セル100の上端部102は、自由端である。燃料電池セル100は、マニホールド200によって、片持ち状態で支持され、自立している。
各燃料電池セル100は、マニホールド200の長手方向に沿って、互いに間隔をあけて配置されている。図2に示すように、各燃料電池セル100は、第1集電部材4を介して互いに電気的に接続されている。第1集電部材4は、各燃料電池セル100の間に配置されており、隣り合う各燃料電池セル100を接続している。なお、第1集電部材4は、第2接合材5によって各燃料電池セル100に接合されている。第1集電部材4は、導電性を有する材料から形成されている。例えば、第1集電部材4は、酸化物セラミックスの焼成体または金属などによって形成されている。
図2〜図6に示すように、燃料電池セル100は、支持基板110と、複数の発電素子部120と、被覆膜170とを備えている。各発電素子部120は、支持基板110の両面に支持されている。なお、各発電素子部120は、支持基板110の片面のみに支持されていてもよい。各発電素子部120は、燃料電池セル100の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施の形態に係る燃料電池セル100は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。
各発電素子部120は、電気的接続部160(図5参照)によって互いに電気的に接続されている。また、燃料電池セル100の上端部102側において、支持基板110の一方面に形成された発電素子部120と他方面に形成された発電素子部120とが第2集電部材6(図2参照)によって電気的に接続されている。なお、各発電素子部120は、直列に接続されている。
<支持基板>
支持基板110は、燃料電池セル100の長手方向(上下方向)に延びる複数のガス流路111を内部に有している。ガス流路111は、マニホールド200の挿入孔231を介して、マニホールド200の内部空間と連通している。
支持基板110の長手方向は、燃料電池セル100の長手方向と同じ方向である。各ガス流路111は、互いに実質的に平行に延びている。各ガス流路111は、燃料電池セル100の長手方向の両端部において開口している。
支持基板110は、絶縁性であり、例えば、セラミックスで形成される。具体的には、支持基板110は、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiOとY2O3(酸化イットリウム)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl2O4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板110は、多孔質である。支持基板110の気孔率は、例えば、20〜60%である。
支持基板110は、上下方向に延びる外表面112と、この外表面112の下端に連なる下端面116と、外表面112の上端に連なる上端面117と、を有している。下端部101の外表面112は、緻密膜122から露出する露出面112bを有している。
本実施の形態の支持基板110は、長手方向に延びる扁平な円筒平板型である。このため、図4に示すように、支持基板110は、第1主面113と、この第1主面113の反対側の第2主面114と、第1主面113と第2主面114とを接続する一対の側端面115とを有している。第1主面113、第2主面114及び一対の側端面115は、支持基板110の外表面を構成する。第1主面113と第2主面114とは、ガス流路111を挟んで対向し、互いに平行に延びる。第1主面113と第2主面114との間隔、すなわち支持基板110の厚さは、例えば1〜10mmである。一対の側端面115は、幅方向の両端である。第1主面113及び第2主面114は平面であり、一対の側端面115は、曲面である。
下端面116は、第1主面113、第2主面114及び一対の側端面115の下端と連なっている。下端面116は、下方を向く面である。詳細には、下端面116は、支持基板110の下端に位置し、上下方向と交差する方向に延びる面である。上端面117は、第1主面113、第2主面114及び一対の側端面115の上端と連なっている。上端面117は、上方を向く面である。下端に位置する下端面116と、上端に位置する上端面117とは、対向している。
図5に示すように、支持基板110の外表面112は、複数の第1凹部112aを有している。各第1凹部112aは、支持基板110の両面(第1主面113及び第2主面114)に形成されている。各第1凹部112aは、支持基板110の長手方向において互いに間隔をあけて形成されている。
<発電素子部>
図5に示すように、各発電素子部120は、燃料極130、電解質140、及び空気極150を有している。また、各発電素子部120は、反応防止膜121をさらに有している。
燃料極130は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極130は、燃料極集電部131と、燃料極活性部132とを有する。燃料極集電部131は、第1凹部112a内に配置されている。各燃料極集電部131は、第2凹部131a及び第3凹部131bを有している。燃料極活性部132は、第2凹部131a内に配置されている。
燃料極集電部131は、例えば、NiOとYSZとから構成されてもよいし、NiOとY2O3とから構成されてもよいし、NiOとCSZとから構成されてもよい。燃料極集電部131の厚さ、すなわち第1凹部112aの深さは、例えば、50〜500μmである。
燃料極活性部132は、例えば、NiOとYSZとから構成されてもよいし、NiOとGDC=(Ce,Gd)O2(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部132の厚さは、例えば、5〜30μmである。
電解質140は、燃料極130上を覆うように配置されている。詳細には、電解質140は、あるインターコネクタ161から他のインターコネクタ161まで燃料電池セル100の長手方向に延びている。すなわち、燃料電池セル100の長手方向において、電解質140とインターコネクタ161とが交互に配置されている。
電解質140は、イオン伝導性を有し、かつ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質140は、例えば、YSZから構成されてもよいし、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質140の厚さは、例えば、3〜50μmである。
反応防止膜121は、緻密な材料から構成される焼成体であり、平面視において、燃料極活性部132と略同一の形状であり、燃料極活性部132と略同じ位置に配置されている。反応防止膜121は、電解質140内のYSZと空気極150内のSr(ストロンチウム)とが反応して電解質140と空気極150との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜121は、例えば、GDCから構成される。反応防止膜121の厚さは、例えば、3〜50μmである。
空気極150は、反応防止膜121上に配置されている。空気極150は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極150は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)、LSF=(La,Sr)FeO3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極150は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極150の厚さは、例えば、10〜100μmである。
電気的接続部160は、隣り合う発電素子部120を電気的に接続するように構成されている。電気的接続部160は、インターコネクタ161及び空気極集電膜162を有する。インターコネクタ161は、第3凹部131b内に配置されている。インターコネクタ161は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ161は、例えば、LaCrO3(ランタンクロマイト)から構成されてもよいし、(Sr,La)TiO3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ161の厚さは、例えば、10〜100μmである。
空気極集電膜162は、隣り合う発電素子部120のインターコネクタ161と空気極150との間を延びるように配置される。空気極集電膜162は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電膜162は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3から構成されてもよいし、LSC=(La,Sr)CoO3から構成されてもよいし、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜162の厚さは、例えば、50〜500μmである。
図6に示すように、緻密膜122は、支持基板110の下端部101において、下端面116と連なる外表面112の一部が露出するように設けられている。つまり、下端部101の外表面112において、下端面116から間隔を隔てた少なくとも一部に緻密膜122が設けられている。具体的には、支持基板110の下端部101は、下端面近傍領域Rを除いて、緻密膜122によって覆われている。下端面近傍領域Rは、下端面116から所定距離Lだけ上方に延びる領域である。所定距離Lは、下端面116から最大の距離であり、例えば、0を超えて3.0mm以下である。
緻密膜122は、緻密膜122の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密膜122の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。このガスシール機能を発揮するため、この緻密膜122の気孔率は、例えば、10%以下である。また、緻密膜122は、絶縁性セラミックスで構成されている。緻密膜122の外側表面は、平滑面である。
緻密膜122は、下端部側に形成された発電素子部120と電気的に接続されている。詳細には、緻密膜122は、電気的接続部160と電気的に接続されている。緻密膜122は、空気極集電膜162と支持基板110との間から近位側に向かって延びている。
具体的には、緻密膜122は、上述した電解質140と反応防止膜121とによって構成することができる。緻密膜122を構成する電解質140は、支持基板110を覆っており、インターコネクタ161から支持基板110の下端面116近傍まで延びている。また、緻密膜122を構成する反応防止膜121は、電解質140と空気極集電膜162との間に配置されている。反応防止膜121は、インターコネクタ161から支持基板110の下端面116近傍まで延びている。本実施の形態では、電解質140が反応防止膜121よりも下方の下端面近傍領域Rまで延びている。なお、緻密膜122は、電解質140のみで構成されていてもよいし、電解質140及び反応防止膜121以外の材料によって構成されていてもよい。
<被覆膜>
図2〜図4及び図6に示すように、支持基板110の下端面116の少なくとも一部を覆うように、被覆膜170が形成されている。
被覆膜170は、支持基板110を構成する材料よりも曲げ強度が高い材料で形成されている。支持基板110の曲げ強度に対する被覆膜170の曲げ強度の比(被覆膜170の曲げ強度/支持基板110の曲げ強度)は、1.1以上であることが好ましく、1.1以上20以下であることがより好ましい。1.1以上であると、燃料電池セルの下端部の曲げ強度を効果的に向上できる。
ここで、「曲げ強度」は、JIS R1601に規定されるファインセラミックスの室温4点曲げ強度試験法に基づいて測定される値である。具体的には、支持基板110を構成する材料及び被覆膜170を構成する材料で試験片をそれぞれ作製する。それぞれの試験片を用いて、上記4点曲げ強度試験法に基づいて測定する。測定により得られたそれぞれの値を、支持基板110を構成する材料及び被覆膜170を構成する材料の曲げ強度とする。
被覆膜170は、支持基板を構成する材料よりも気孔率が低い材料で形成されている。被覆膜170を構成する材料の気孔率は、例えば、0.1%〜20%である。支持基板110の気孔率に対する被覆膜170の気孔率の比(被覆膜170の気孔率/支持基板110の気孔率)は、例えば、0.65以下である。
ここで、「気孔率」は、FE−SEMの断面画像を画像解析により気孔部分を数値化することで測定される値である。具体的には、FE−SEMで7500倍に拡大した画像をMVTec社製の画像解析ソフトHALCONによって解析する。解析後の断面画像上で接合材を構成する材料部分と気孔部分とのそれぞれの面積占有率を求め、気孔部分の面積占有率を気孔率として定義する。断面画像は、被覆膜170及び支持基板110ともに各10視野について撮影して気孔率を数値化し、その平均値を被覆膜170及び支持基板110の気孔率とする。
被覆膜170を構成する材料は、例えばガラス、セラミックスなどで構成されており、ガラスで構成されていることが好ましい。ガラスとしては、例えば結晶化ガラスを用いることができる。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO2−B2O3系、SiO2−CaO系、またはSiO2−MgO系が採用され得る。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。なお、被覆膜170の材料として、非晶質ガラス、ろう材、またはセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、被覆膜170は、SiO2−MgO−B2O5−Al2O3系及びSiO2−MgO−Al2O3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
被覆膜170を構成する材料は、第1接合材300を構成する材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。前者の場合、被覆膜170は、第1接合材300と連なっていてもよく、第1接合材300と分離していてもよい。
被覆膜170は、支持基板110の下端面116の少なくとも一部を覆っており、図4では、下端面116の外周部の全周を覆っている。なお、被覆膜170は、下端面116の全体を被覆してもよい。また、図6に示すように、被覆膜170は、ガス流路111を含む幅方向(z軸方向)の断面視において、下端面116の全体を被覆している。
被覆膜170の厚さは、図6に示すように一定であってもよく、一定でなくてもよい。被覆膜170の最大厚さは、例えば、10μm〜1000μmである。
また、被覆膜170は、1層で構成されてもよく、複数層で構成されてもよい。
[マニホールド]
図1〜図3に示すように、マニホールド200は、燃料電池セル100に反応ガスを供給する。マニホールド200は、中空状であり、内部空間を有している。図1に示すように、マニホールド200の内部空間には、導入配管Pを介して燃料ガスが供給される。図2に示すように、マニホールド200は、この内部空間と外部とを連通する複数の挿入孔231を有している。
マニホールド200は、実質的に直方体状である。図3に示すように、マニホールド200は、上方が開口する箱状のマニホールド本体と、開口を塞ぐ板状部材とを備えている。詳細には、マニホールド本体は、底壁210と、側壁220と、第1フランジ部240とを備えている。マニホールド本体の開口を塞ぐ板状部材は、上壁230である。
底壁210、側壁220、及び第1フランジ部240は、一体成形されている。一体成形された底壁210、側壁220及び第1フランジ部240と、上壁230とは、互いに別部材であり、接合されている。底壁210、側壁220、上壁230、及び第1フランジ部240は、例えば、耐熱性を有するような金属で構成されている。
底壁210は、平面視(x軸方向視)が矩形状である。底壁210は、平面視において、長手方向と幅方向とを有している。
側壁220は、底壁210の外周部から上方に延びている。側壁220は、図1に示すように、一対の第1側壁221と、一対の第2側壁222とを有している。
一対の第1側壁221は、底壁210の対向する一対の縁部のそれぞれから上方に延びている。詳細には、各第1側壁221は、底壁210の縁部のうち、長手方向に延びる一対の縁部から上方に延びている。第1側壁221は、マニホールド200の長手方向に延びている。すなわち、複数の燃料電池セル100の並ぶ方向に延びている。一対の第1側壁221は、マニホールド200の幅方向において、互いに対向している。
一対の第2側壁222は、底壁210の残りの対向する縁部から上方に延びている。詳細には、各第2側壁222は、底壁210の縁部のうち、幅方向に延びる一対の縁部から上方に延びている。また、各第2側壁222は、マニホールド200の幅方向に延びている。すなわち、各第2側壁222は、燃料電池セル100の幅方向に延びている。各第2側壁222は、マニホールド200の長手方向において、互いに対向している。一対の第2側壁222のうち、一方の第2側壁222に導入配管Pが接続されている。このため、一方の第2側壁222は、導入配管Pが接続されるための貫通孔を有している。
第1フランジ部240は、側壁220の上端部から外方に延びている。詳細には、第1フランジ部240は、各第1側壁221及び各第2側壁222の上端から外方に延びている。第1フランジ部240は、環状である。
第1側壁221と第2側壁222との第1境界部202は、R形状である。具体的には、第1側壁221と第2側壁222との第1境界部202の内側面及び外側面は、R形状である。この第1境界部202の内側面及び外側面の曲率半径は、例えば3〜30mmである。4つの第1境界部202は、マニホールド200の高さ方向に延びる。
図3に示すように、底壁210と側壁220との第2境界203は、R形状である。具体的には、底壁210と、第1側壁221及び第2側壁222との第2境界部203の内側面及び外側面は、R形状である。この第2境界部203の内側面及び外側面の曲率半径は、例えば2〜20mmである。第2境界部203は、環状である。
側壁220と第1フランジ部240との第3境界部204は、R形状である。具体的には、第1側壁221及び第2側壁222と、第1フランジ部240との第3境界部204の内側面及び外側面は、R形状である。この第3境界部204の側面及び外側面の曲率半径は、例えば1〜10mmである。第3境界部204は、環状である。
なお、本明細書における「R形状」とは、円弧状に湾曲している形状である。また、第1〜第3境界部202〜204の内側面とは、マニホールド200の内部空間を臨む面である。第1〜第3境界部202〜204の外側面とは、マニホールド200の外側を臨む面である。
上壁230は、側壁220の上端部を塞ぐように構成されている。具体的には、上壁230の外周部は、第1フランジ部240上に配置されている。マニホールド200の内部空間を密閉するため、上壁230が全周に渡って、第1フランジ部240に接合されている。上壁230は、例えば、接合材、溶接などによって、第1フランジ部240に接合されている。
図2に示すように、上壁230は、燃料電池セル100が挿入される挿入孔231を複数有している。各挿入孔231は、マニホールド200の幅方向(y軸方向)に延びている。また、挿入孔231は、マニホールド200の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。
[第1接合材]
第1接合材300は、燃料電池セル100をマニホールド200に固定する。詳細には、第1接合材300は、燃料電池セル100の下端部101とマニホールド200の上壁230とを接合している。また、第1接合材300は、緻密膜122と接触している。なお、燃料電池セル100がマニホールド200に固定された状態において、挿入孔231とガス流路111とが連通している。
第1接合材300は、マニホールド200の内部空間(燃料ガスに曝される空間)と、セルスタック装置1の外部(酸素を含有するガスに曝される空間)とを区画することによって、燃料ガスと酸素を含有するガスとの混合を防止する機能を有している。このため、図6に示すように、第1接合材300は、燃料ガスに曝される面である露出面301と、酸素を含有するガスに曝される外表面302とを有している。露出面301は、マニホールド200の内部空間に露出する。外表面302は、セルスタック装置1の外部に露出する。
第1接合材300は、例えば、結晶化ガラスである。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO2−B2O3系、SiO2−CaO系、またはSiO2−MgO系が採用され得る。第1接合材300の材料として、非晶質ガラス、ろう材、またはセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、第1接合材300は、SiO2−MgO−B2O5−Al2O3系及びSiO2−MgO−Al2O3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
本実施の形態では、支持基板110の被覆膜170と、第1接合材300とは、同じ材料であり、連なっている。図6では、被覆膜170の下端面171と、第1接合材300の露出面301とは、上下方向において同じ位置である。つまり、露出面301と下端面171とは、同一平面上に位置する。なお、図6では、露出面301及び下端面171は、模式的に平面で示しているが、実際は凹凸が形成される。
[製造方法]
続いて、本実施の形態のセルスタック装置1の製造方法について図1〜図8を参照して説明する。
まず、図7に示すように、支持基板110上に発電素子部120を形成したセル体103を複数準備する。また、マニホールド200を準備する。そして、第1集電部材4、及び第2接合材5となる材料によって、各セル体103を互いに接続し、セル集合体104を作製する。なお、この段階では第2接合材5は焼成されておらず、各セル体103は互いに仮止めの状態である。
次に、図8に示すように、セル集合体104の各セル体の下端部101をマニホールド200の各挿入孔231に挿入する。なお、各セル体103が厚さ方向に沿って所定の間隔を保持するための治具を用いてもよい。
次に、図2に示すように、挿入孔231に挿入されたセル体103とマニホールド200の上壁230とを接合するように第1接合材300となる材料を塗布する。この工程では、各セル体103の支持基板110の下端面116の少なくとも一部に、第1接合材300となる材料をさらに塗布する。
次に、被覆膜170、第1接合材300及び第2接合材5となる材料に対して熱処理が加えられる。この熱処理によって、第1接合材300及び第2接合材5が固化される。詳細には、第2接合材5は、熱処理を施されることによって焼成される。この結果、各燃料電池セル100と第1集電部材4とが固定される。また、第1接合材300及び被覆膜170となる材料は、熱処理を施されることによって、非晶質材料の温度が結晶化温度まで到達する。そして、結晶化温度下にて材料の内部で結晶相が生成されて、結晶化が進行していく。この結果、非晶質材料が固化・セラミックス化されて、結晶化ガラスとなる。これにより、結晶化ガラスで構成される第1接合材300が機能を発揮し、各燃料電池セル100の下端部101がマニホールド200の上壁230に固定される。また、結晶化ガラスで構成される被覆膜170が各支持基板110の下端面116の少なくとも一部を被覆するように形成される。
上記工程を実施することによって、図1〜図6に示す燃料電池セル100及びセルスタック装置1を製造できる。
なお、上記製造方法では、第1接合材300と被覆膜170とを同じ材料で一体に形成する場合を例に挙げて説明した。そして、第1接合材300を形成する工程と被覆膜170を形成する工程とを、上記製造方法は同時に実施しているが、同時に実施しなくてもよい。例えば、支持基板110の下端面116に被覆膜170を形成した後に、第1接合材300で燃料電池セル100とマニホールド200とを接合してもよい。また、例えば、支持基板110の下端面116に被覆膜170となる材料を塗布した後に、セル体103とマニホールド200とを接合するように第1接合材300となる材料を塗布し、次いで熱処理を同時に施してもよい。
[動作]
本実施の形態のセルスタック装置1の動作について、図1〜図6を参照して説明する。セルスタック装置1は、例えば以下のように動作する。
マニホールド200を介して各燃料電池セル100のガス流路111内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板110の両面を酸素を含むガス(空気等)に曝すことにより、電解質140の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。このセルスタック装置1を外部の負荷に接続すると、空気極150において下記の式1に示す電気化学反応が起こり、燃料極130において下記の式2に示す電気化学反応が起こる。
(1/2)O2+2e−→O2− ・・・(式1)
H2+O2−→H2O+2e− ・・・(式2)
さらに、支持基板110のガス流路111を流れる燃料ガスのうち発電に使用されなかった余剰燃料ガスは、ガス流路111の他端側に位置する排出口から外部に排出される。そして、排出口から排出される余剰燃料ガスと、酸素を含むガスとを混合して、燃焼する。
[作用]
続いて、本実施の形態の燃料電池セル100及びセルスタック装置1の作用について、図15に示す比較例と比較して説明する。なお、図15に示す比較例の燃料電池セル及びセルスタック装置は、支持基板110の下端面116に被覆膜170が形成されていない。
図15に示すように、比較例の燃料電池セル及びセルスタック装置が動作すると、熱サイクルの温度分布による熱応力が、燃料電池セル及びマニホールドに発生する。この熱応力によって、図15の矢印に示すように、燃料電池セルの下端に曲げモーメントが発生する。支持基板110は第1接合材300よりも曲げ強度が低いので、燃料電池セルの支持基板110の下端面116に優先的にクラックが発生する。支持基板110の下端面116を起点とするクラックがさらに成長すると、クラックCがマニホールドの内部空間と、マニホールドの外部空間とを繋ぐ通路となり、内部空間に導入された燃料ガスが、内部空間から外部空間へと漏れ出してしまう。このため、比較例のセルスタック装置では、ガスリークを十分に抑制できない。
一方、図9に示す本実施の形態の燃料電池セル100及びセルスタック装置1は、下端面116の少なくとも一部を覆い、支持基板110を構成する材料よりも曲げ強度が高い材料で形成された被覆膜170を備えている。本実施の形態のセルスタック装置1が動作して、熱応力が燃料電池セル100及びマニホールド200に加えられても、被覆膜170が形成された燃料電池セル100の下端の曲げ強度は高いので、燃料電池セル100の下端を基点とするクラックを抑制できる。このため、燃料電池セル100は、マニホールド200の内部空間と、マニホールド200の外部空間とを繋ぐクラックを抑制できる。したがって、セルスタック装置1は、ガスリークを抑制できる。
(実施の形態2)
図10に示す実施の形態2の燃料電池セル及びセルスタック装置1aは、基本的には図9に示す実施の形態1の燃料電池セル及びセルスタック装置1と同様の構成を備えているが、実施の形態2の被覆膜170を構成する材料は、第1接合材300を構成する材料と異なっている。
具体的には、第1接合材300を構成する材料は、例えば、結晶化ガラスであり、被覆膜170を構成する材料は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、NiO(酸化ニッケル)とY2O3(酸化イットリウム)、MgO(マグネシア)とMgAl2O4(マグネシアアルミナスピネル)、MgO(マグネシア)とY2O3(酸化イットリウム)の複合材料である。
なお、被覆膜170は、上記材料で形成された第1の膜と、この第1の膜の少なくとも一部の下に形成された第2の膜とを有し、第2の膜は、第1接合材300と同じ材料で構成されていてもよい。ただし、実施の形態1及び2において、第1接合材300の露出面301と、被覆膜170の下端面171とは、上下方向において同じ位置である。つまり、露出面301と下端面171とは、同一平面上に位置する。なお、図9及び図10は、被覆膜170と第1接合材300とを模式的に示したものであるので、露出面301及び下端面171は、模式的に平面で示しているが、実際は凹凸が形成される。後述する実施の形態3〜6の燃料電池セル及びセルスタック装置について、被覆膜170と第1接合材300とを模式的に示した図11〜図14、図18〜図23も同様である。
(実施の形態3)
図11に示す実施の形態3の燃料電池セル及びセルスタック装置1bは、基本的には図9に示す実施の形態1の燃料電池セル及びセルスタック装置1と同様の構成を備えているが、実施の形態3の被覆膜170の下端面171は、第1接合材300の露出面301よりも下方に位置している点において異なる。
具体的には、第1接合材300の露出面301は、支持基板110の下端面116と上下方向において同じ位置である。実施の形態3の燃料電池セルは、下端面116に形成された被覆膜170の厚さ分、第1接合材300の露出面301から下方に延出している。
(実施の形態4)
図12に示す実施の形態4の燃料電池セル及びセルスタック装置1cは、基本的には図9に示す実施の形態1の燃料電池セル及びセルスタック装置1と同様の構成を備えているが、実施の形態4の支持基板110の下端面116は、C面116aを含み、C面116a下に被覆膜170が形成されている点において異なる。
具体的には、支持基板110の下端面116は、水平方向に延びる水平面116bと、この水平面116bと連なるC面116aとからなる。水平面116bは、ガス流路111を形成する縁部から外表面112側に延びる。C面116aは、外表面112と連なるコーナー部がC面取りされてなる。なお、「C面」とは、面と面とが作る稜線を平面状に面取りした面である。
C面116a下に形成された被覆膜170の下端面171は、第1接合材300の露出面301と上下方向において同じ位置である。このため、被覆膜170の厚さは、外表面112に向けてテーパ状に大きくなる。
なお、被覆膜170は、水平面116bの少なくとも一部をさらに覆っていてもよい。また、本発明の支持基板の下端面は、C面ではなく、R面を含んでいてもよい。「R面」とは、面と面とが作る稜線を、外側または内側に凸の円弧状に面取りした面(円弧面)である。
(実施の形態5)
図13に示す実施の形態5の燃料電池セル及びセルスタック装置1dは、基本的には実施の形態1の燃料電池セル及びセルスタック装置1と同様の構成を備えているが、実施の形態5の支持基板110の下端面171は上方に湾曲している点において異なる。つまり、下端面171は、上向きの円弧状である。
湾曲している下端面116下に、被覆膜170が形成されている。被覆膜170の下端面171は、第1接合材300の露出面301と上下方向において同じ位置である。このため、被覆膜170の厚さは、コーナー部から中央部に向けて大きくなる。
(実施の形態6)
図14に示す実施の形態6の燃料電池セル及びセルスタック装置1eは、基本的には実施の形態1の燃料電池セル及びセルスタック装置1と同様の構成を備えているが、実施の形態6の支持基板110の下端面171は下方に湾曲している点において異なる。つまり、下端面171は、下向きの円弧状である。
湾曲している下端面116下に、被覆膜170が形成されている。被覆膜170の下端面171は、第1接合材300の露出面301と上下方向において同じ位置である。このため、被覆膜170の厚さは、コーナー部から中央部に向けて小さくなる。
実施の形態5及び6の燃料電池セル及びセルスタック装置1d、1eは、支持基板110の下端面116に、第1接合材300と同じ材料の被覆膜170を形成しやすいという製造上の利点を有している。
(実施の形態7)
図16〜図18に示す実施の形態7の燃料電池セル105及びセルスタック装置2は、基本的には実施の形態1の燃料電池セル100及びセルスタック装置1と同様の構成を備えているが、燃料電池セル105が緻密領域119をさらに有している点において異なる。
緻密領域119は、外表面112において緻密膜122から露出する露出面112b及び下端面116の少なくとも一部から、他の材料が含浸されてなる。このため、支持基板110は、多孔領域118と緻密領域119とを有している。本実施の形態の支持基板110は、上述した多孔質材料で構成される多孔領域118を主に有し、残部が緻密領域119からなる。
緻密領域119は、支持基板110を構成する多孔質材料の気孔の少なくとも一部に、他の材料が配置されている。他の材料は、特に限定されないが、例えば、ガラス、セラミックスなどで構成されており、ガラスで構成されていることが好ましい。ガラスとしては、例えば結晶化ガラス、非晶質ガラス、部分的に結晶化する部分結晶化ガラスを用いることができ、結晶化ガラス及び非晶質ガラスが好ましく、結晶化ガラスがより好ましい。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO2−B2O3系、SiO2−CaO系、またはSiO2−MgO系が採用され得る。なお、他の材料として、非晶質ガラス、ろう材、またはセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、緻密領域119は、多孔質材料の気孔に、SiO2−MgO−B2O5−Al2O3系及びSiO2−MgO−Al2O3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である他の材料が配置されている。
他の材料は、後述する第1接合材300と同じ材料であることが好ましい。この場合、緻密領域119は、露出面112b及び下端面116の少なくとも一方から、第1接合材300と同じ材料が含浸されてなる。つまり、緻密領域119は、支持基板110を構成する多孔質材料の気孔の少なくとも一部に、第1接合材300を構成する材料と同じ材料が配置されてなる。また、他の材料と、第1接合材300と、被覆膜170とが同じ材料であることがより好ましい。
緻密領域119は、支持基板110を構成する多孔質材料、すなわち多孔領域118よりも気孔率が低い。緻密領域119の気孔率は、例えば10%以下であり、好ましくは7%以下である。なお、緻密領域119の気孔率は0%であってもよい。
図17に示すように、緻密領域119において露出面112b及び下端面116(緻密膜非形成部)の少なくとも一部からの他の材料の含浸深さは、1.0μm以上であり、好ましくは1.5μm以上1000μm以下である。なお、含浸深さは、含浸面からの距離が一定であってもよく、一定でなくてもよい。一定でない場合には、含浸深さは、最大の深さである。
図16〜図18に示す緻密領域119は、露出面112bから他の材料が含浸されてなる第1領域119aと、下端面116から他の材料が含浸されてなる第2領域119bとを有している。緻密領域119の含浸深さとは、露出面112bからの含浸深さD1と、下端面116からの含浸深さD2のうち、最大の深さを意味する。具体的には、第1領域119aの含浸深さD1及び第2領域119bの含浸深さD2のうち、最大深さが1.0μm以上であり、好ましくは1.5μm以上1000μm以下である。つまり、緻密領域119は、露出面112bまたは下端面116の少なくとも一部から、含浸深さが1.0μmに亘って設けられている。
第1領域119aの含浸深さD1は、図16に示すように燃料電池セル105の幅方向(z軸方向)の断面において、第1領域119aが延びる方向(図17におけるx軸方向)と直交する方向(図17におけるz軸方向)の最大深さである。第2領域119bの含浸深さD2は、燃料電池セル105の幅方向(z軸方向)の断面において、第2領域119bが延びる方向(図17におけるz軸方向)と直交する方向(図17におけるx軸方向)の最大深さである。本実施の形態の含浸深さは、含浸面と直交する方向の深さであり、詳細には、第1領域119aの含浸深さD1は、露出面112bと直交する方向の深さであり、第2領域119bの含浸深さD2は、下端面116と直交する方向の深さである。
第1領域119aは、露出面112bから一定の深さD1だけ内部に延びており、環状である。図16に示す構造では、緻密領域119は、露出面112b全体から他の材料が1.0μm以上含浸されてなる。つまり、緻密領域119は、露出面112b全体から内部に向けて1.0μm以上延びている。緻密領域119は、露出面112bからの最大深さが1.0μm以上の環状である。
下端面116における含浸面から内部に延びる第2領域119bのそれぞれは、下方に凹む形状、すなわち下向きの円弧状である。
なお、第1領域119a及び第2領域119bの気孔率は、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、第1領域119aと第2領域119bとの重なり合う領域は、他の領域よりも気孔率が小さい。
含浸深さは、多孔質材料の気孔に配置する他の材料の粒子径、多孔質材料に他の材料を含浸させる含浸処理時の減圧などによって調整できる。具体的には、粒子径の小さい材料を含浸することで、深さは大きくなる。また、含浸する際に、多孔質材料内部の圧力を低くすることで、深さは大きくなる。
また、緻密領域119を形成するべき位置以外の領域にマスクを形成した状態で、含浸処理をすることによって、緻密領域119の位置を調整できる。
[製造方法]
実施の形態7の燃料電池セル105及びセルスタック装置2の製造方法は、基本的には実施の形態1と同様の構成を備えているが、緻密領域119を形成する工程をさらに備えている点において異なっている。
具体的には、各セル体103の露出面112bの少なくとも一部に、第1接合材300となるべき材料を塗布する。また、各セル体103の下端面116の少なくとも一部に、第1接合材300となるべき材料を塗布する。下端面116に塗布する材料は、多孔質材料の気孔に配置されるとともに、被覆膜170となる。
なお、所定部位のみを含浸面とするために、第1接合材300となる材料を塗布する工程に先立って、所定部位以外の面上にマスクを形成してもよい。
次に、含浸面から、第1接合材300となるべき材料を、含浸深さが1.0μm以上になるように含浸させる。この工程では、含浸面に第1接合材300となる材料を塗布した後、または、塗布する前に、多孔質材料内部を減圧にする。例えば、真空引きをして多孔質材料の気孔から空気を取り除いた後に、含浸面に第1接合材300となる材料を塗布する。
次に、第1接合材300及び第2接合材5となる材料に対して熱処理が加えられる。この熱処理によって、第1接合材300及び第2接合材5となる材料が固化される。これにより、多孔質材料の気孔に第1接合材300と同じ材料が配置された第1領域119a及び第2領域119bを有する緻密領域119を形成できる。また、結晶化ガラスで構成される被覆膜170が各支持基板110の下端面116の少なくとも一部を被覆するように形成される。
なお、上記製造方法では、緻密領域119の気孔に配置される材料と、第1接合材300と、被覆膜170とを同じ材料で形成する場合を例に挙げて説明した。本発明において、緻密領域119の気孔に配置される材料と、第1接合材300と、被覆膜170とは、同じ材料であってもよく、別の材料であってもよい。
また、上記製造方法では、減圧雰囲気で第1接合材300と同じ材料を含浸面に塗布することによって、含浸深さが1.0μm以上の緻密領域119を形成する場合を例に挙げて説明した。真空引きする工程の代わりに、あるいは併せて、セル体103を準備する工程において緻密領域119を形成してもよい。この場合、第1接合材300を塗布する工程に先立って、多孔質材料で構成されたセル体103を準備し、露出面112b及び下端面116の少なくとも一部から他の材料を含浸する。
[作用]
図16〜図18に示す実施の形態の燃料電池セル105及びセルスタック装置2は、第1接合材300と接合される下端部101であって、外表面112において緻密膜122から露出する露出面112b、及び下端面116の少なくとも一部から、他の材料が1.0μm以上含浸されてなる緻密領域119を有する支持基板110を備えている。本実施の形態のセルスタック装置2が動作して、熱応力が燃料電池セル100及びマニホールド200に加えられても、緻密領域119が形成された燃料電池セル100の下端面近傍領域Rの強度が高いので、燃料電池セル100の下端面近傍領域Rを基点とするクラックを抑制できる。このため、燃料電池セル100は、マニホールド200の内部空間と、マニホールド200の外部空間とを繋ぐクラックを抑制できる。したがって、セルスタック装置2は、ガスリークをより抑制できる。
また、本実施の形態の緻密領域119は、露出面112b及び下端面116の少なくとも一部から、第1接合材300を構成する材料と同じ材料が含浸されてなり、含浸深さが1.0μm以上である。支持基板110を構成する多孔質材料の気孔に第1接合材300が浸透することで、アンカー効果が得られる。緻密膜122の外側表面は平滑面であるが、アンカー効果によって、燃料電池セル100と第1接合材300との接合強度を向上できる。したがって、燃料電池セル100と第1接合材300との剥離を抑制できる。
(実施の形態8)
図19に示す実施の形態8の燃料電池セル及びセルスタック装置2aは、基本的には図10に示す実施の形態2の燃料電池セル及びセルスタック装置1aと同様の構成を備えているが、実施の形態8の燃料電池セルが緻密領域119をさらに有している点において異なる。また、実施の形態8の燃料電池セル及びセルスタック装置2aは、基本的には図18に示す実施の形態7の燃料電池セル及びセルスタック装置2と同様の構成を備えているが、実施の形態8の緻密領域119は複数の他の材料が含浸されている点において、異なっている。
緻密領域119は、露出面112bから他の材料が含浸されてなる第1領域119aと、下端面116から別の他の材料が含浸されてなる第2領域119bとを有している。本実施の形態では、第1領域119aは、露出面112bから第1接合材300と同じ材料が含浸されてなる。つまり、露出面112bから含浸される他の材料は、第1接合材300と同じ材料である。第2領域119bは、下端面116から被覆膜170を構成する材料が含浸されてなる。つまり、下端面116から含浸される他の材料は、被覆膜170と同じ材料である。
(実施の形態9)
図20に示す実施の形態9の燃料電池セル及びセルスタック装置2bは、基本的には図11に示す実施の形態3の燃料電池セル及びセルスタック装置1bと同様の構成を備えているが、実施の形態9の燃料電池セルが実施の形態7と同様の緻密領域119をさらに有している点において異なる。
(実施の形態10)
図21に示す実施の形態10の燃料電池セル及びセルスタック装置2cは、基本的には図12に示す実施の形態4の燃料電池セル及びセルスタック装置1cと同様の構成を備えているが、実施の形態10の燃料電池セルが実施の形態7と同様の緻密領域119をさらに有している点において異なる。
本実施の形態の緻密領域119は、露出面112bから他の材料が含浸されてなる第1領域119aと、C面116aから他の材料が含浸されてなる第2領域119bとを有している。第2領域119bは、C面116aに沿って中央部が凹む形状である。
(実施の形態11)
図22に示す実施の形態11の燃料電池セル及びセルスタック装置2dは、基本的には図13に示す実施の形態5の燃料電池セル及びセルスタック装置1dと同様の構成を備えているが、実施の形態11の燃料電池セルが実施の形態7と同様の緻密領域119をさらに有している点において異なる。
(実施の形態12)
図23に示す実施の形態12の燃料電池セル及びセルスタック装置2eは、基本的には図14に示す実施の形態6の燃料電池セル及びセルスタック装置1eと同様の構成を備えているが、実施の形態12の燃料電池セルが実施の形態7と同様の緻密領域119をさらに有している点において異なる。
(実施の形態13)
図29に示す実施の形態13の燃料電池セル及びセルスタック装置1fは、基本的には図9に示す実施の形態1の燃料電池セル及びセルスタック装置1と同様の構成を備えているが、実施の形態13の被覆膜170が下端面116の一部を覆っている点において異なっている。
具体的には、被覆膜170は、ガス流路111を含む幅方向の断面視において、下端面116の一部を覆っている。図29では、被覆膜170は、下端面116においてガス流路111と反対側の領域を覆っている。なお、被覆膜170は、下端面116の少なくとも一部を覆っていれば、ガス流路111側の領域を覆ってもよい。
(実施の形態14)
図30に示す実施の形態14の燃料電池セル及びセルスタック装置2fは、基本的には図29に示す実施の形態13の燃料電池セル及びセルスタック装置1fと同様の構成を備えているが、実施の形態14の燃料電池セルが実施の形態7と同様の緻密領域119をさらに有している点において異なる。
変形例1
上述した実施の形態1〜12のセルスタック装置は、支持基板110の1つの主面上に複数の発電素子部120が配置された横縞型を例に挙げて説明したが、本発明のセルスタック装置は、支持基板の1つの主面上に1つの発電素子が配置される縦縞型であってもよい。また、実施の形態1〜11のセルスタック装置は、円筒平板型の支持基板110を備えているが、本発明のセルスタック装置は、円筒型の支持基板を備えていてもよい。
変形例2
図25に示すように、マニホールド本体において、角部が他の部分よりも薄くなるように構成されていてもよい。詳細には、マニホールド本体は、複数の平板部と、この平板部を連結する角部とを有している。平板部は、平坦な板状の部分である。なお、角部は、角を形成する部分、すなわち、角近傍である。本実施の形態では、複数の平板部は、底壁210の大部分を占める矩形状の平板部と、第1側壁221及び第2側壁222の大部分を占める4つの矩形状の平板部と、第1フランジ部240の大部分を占める環状の平板部とを有している。角部は、第1〜第3境界部202〜204であるので、環状の隅角部を含む。このように、本実施の形態のマニホールド本体は、複数の平板部と、複数の角部とからなる。
なお、角部はR形状であるが、角部の形状は特に限定されない。角部は、複数の平面部が直交してなる直角であってもよく、複数の平面部の交差部分を平面状に湾曲している形状(C面取りされた形状)であってもよい。
角部の厚さT2は、平板部の厚さT1よりも小さい。このため、角部は、平面部よりも優先して変形する部位であり、変形可能部である。複数の平板部の厚さが異なる場合には、最小の厚さを厚さT1とする。マニホールド本体は複数の角部を有し、複数の角部の厚さが異なる場合には、最小の厚さをT2とする。本実施の形態では、すべての角部の厚さT2が平板部の厚さT1よりも小さい。なお、厚さT1、T2は、板厚である。
角部の厚さT2は、平板部の厚さT1の70.0%以上99.5%以下であることが好ましく、75.0%以上98.0%以下であることがより好ましい。70.0%以上の場合、マニホールドの強度を向上でき、75.0%以上の場合、マニホールドの強度をより向上できる。99.5%以下の場合、変形しやすいので、第1接合材300の変形を抑制することで、第1接合材300におけるクラックを抑制でき、98.0%以下の場合、第1接合材300におけるクラックを効果的に抑制できる。また、70.0%以上の場合、加工時にマニホールドの角部が破断することを防止できる。
平板部の厚さT1は、例えば、0.5mm以上4.0mm以下である。角部の厚さT2は、例えば、0.35mm以上3.9mm以下である。
なお、図25のマニホールド本体は複数の角部を有しており、すべての角部の厚さT2が平板部の厚さT1よりも小さいが、本発明のマニホールドはこれに限定されない。マニホールドが複数の角部を有する場合には、複数の角部の少なくとも1つの角部が平板部の厚さよりも小さい。この場合であっても、厚さの小さい角部が優先的に変形するので、同様の効果を有する。
また、マニホールド200が複数の角部を有する場合には、複数の角部の少なくとも1つの角部が平板部の厚さよりも小さければ、他の角部が平板部の厚さと同じであっても、大きくてもよい。マニホールド200において、底壁210と側壁220との第2境界部203の厚さが平板部の厚さよりも小さいことが好ましい。この場合、側壁220と第1フランジ部240との第3境界部204の厚さは、平板部の厚さよりも大きくてもよい。
本変形例の製造方法において、上方が開口する箱状のマニホールド本体を準備する工程では、例えば、角部となる部分が平板部となる部分よりも薄い板状の材料を準備して、箱状にプレス成形する。具体的には、例えば以下のように実施する。マニホールド本体となる平板状の材料を準備する。この材料において、角部となる部分の厚さを他の部分よりも薄くなるように加工する。加工された材料に対して、深絞り加工を行って、底壁210と側壁220と第1フランジ部240とからなるマニホールド本体を形成する。なお、上方が開口する箱状のマニホールド本体を準備する工程において、プレス加工により箱状に成型した後に、切削加工により、角部となる部分の厚さを他の部分よりも薄くしてもよい。
変形例3
実施の形態1〜12及び変形例2のマニホールド200は、側壁220の上面が開口し、その上面を上壁230が塞いでいる構造であるが、本発明のマニホールドは、これに限定されない。例えば、図26に示すように、側壁及び上壁が一体であって、側壁の下端面が開口し、その下端面を底壁が塞いでいる構造であってもよい。
詳細には、マニホールド本体は、上壁230と、上壁230から下方に延びる側壁220と、側壁220の下端部から外方に延びる第2フランジ部241と、を含む。上壁230と側壁220との第4境界部205は、R形状であり、角部を構成する。すなわち、上壁230と側壁220との第4境界部205の厚さT2は、平板部の厚さT1よりも小さいことが好ましい。この場合、側壁220と第2フランジ部241との第5境界部206は、R形状であるが、平板部の厚さよりも小さくてもよく、大きくてもよい。底壁210は、下方が開口する箱状のマニホールド本体の開口を塞ぐ板状部材である。
変形例4
実施の形態1〜12、変形例2及び3のマニホールド200は、側壁220が底壁210から略垂直に上方に延びているが、本発明のマニホールドは、これに限定されない。例えば、側壁220は、上方に向かって外方に広がるように傾斜していてもよく、下方に向かって外方に広がるように傾斜していてもよい。なお、実施の形態1〜12及び変形例2のように上方が開口するマニホールド本体の側壁220は、底壁210から上方に向かって広がるように傾斜していることが好ましい。変形例3のように下方が開口するマニホールド本体の側壁220は、上壁230から下方に向かって広がるように傾斜していることが好ましい。
変形例5
図27に示すように、マニホールド200は、突起部250をさらに備えていてもよい。突起部250は、底壁210に複数取り付けられている。詳細には、複数の突起部250は、底壁210の下面212に取り付けられている。このため、台座Bにマニホールド200を配置すると、複数の突起部250が台座Bに接する。複数の突起部250は、底壁210の下面212に、偏析せずに、分散している。このため、マニホールド200は、安定して台座Bに配置される。
なお、底壁210は、上面211と、下面212とを有している。上面211は、鉛直方向上側の面であり、上壁230と対向する。下面212は、鉛直方向下側の面であり、台座Bと対向する。上面211及び下面212は、平坦な面である。
突起部250を構成する材料は、底壁210を構成する材料と異なる材料で構成されていれば特に限定されないが、金属を除く材料で構成されていることが好ましく、無機材料で構成されていることがより好ましい。無機材料としては、セラミックスであることが好ましい。SOFCは高温で作動するが、金属材料は高温環境下で一定応力を連続的に与えられると高温クリープ変形が発生し、形状が変わってしまう恐れがある。マニホールド200の底壁210に取り付けられて台座Bに接する突起部250には、セルスタック装置1全体の荷重がかかるため、高温クリープ変形が懸念される。一方、無機材料では金属材料と比較して高温クリープ現象に対する耐性が高いため、台座と接する突起部250として無機材料を用いることが好ましい。
また、突起部250は、底壁210を構成する材料の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有する材料で構成されていることが好ましい。このような材料として、例えば、鉱物、セラミックス、ガラス、または繊維が挙げられる。鉱物としては、例えば、マイカ(雲母)、バーミキュライト、石英などが挙げられる。セラミックスとしては、例えば、アルミナ、ジルコニア、シリカ、酸化鉄、酸化クロムなどが挙げられる。ガラスとしては、例えば、結晶化ガラスなどが挙げられる。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO2−B2O3系、SiO2−CaO系、またはSiO2−MgO系が採用され得る。繊維としては、例えば、石英ウール、アルミナ、シリカアルミナなどが挙げられる。
突起部250を構成する材料の熱伝導率は、40W/m・K以下であることが好ましく、20W/m・K以下であることがより好ましい。底壁210から台座Bへの熱伝導を低減できるので、熱伝導率は低いほど好ましいが、容易に実現できる観点から、下限値は、例えば0.01W/m・Kである。上記熱伝導率は、レーザーフラッシュ法により750℃で測定される値である。
台座Bと対向する面の表面粗さRzは、0.01z以上であることが好ましく、0.05z以上であることがより好ましい。底壁210と台座Bとの接触面積を低減できるので、表面粗さRzは高いほど好ましいが、セルスタック装置1の高さを考慮すると、上限値は、例えば10zである。
上記「台座Bと対向する面」とは、本変形例実施の形態1では、底壁210の下面212と突起部250とで構成される面である。上記表面粗さRzは、JIS B0601に準拠して測定される値である。
底壁210の下面212の面積に対する、突起部250と台座Bとが接触する面積の比(接触する面積/下面212の面積)は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
突起部250は、下方に突出する凸形状である。突起部250は、例えば、下方(下面212から台座Bに)に向けて幅が小さい。突起部250は、部材として設けられる突起部と、粒子からなる突起部とを含む。突起部250と台座Bとの接触は、点接触であってもよい。また、突起部250が部材である場合には、例えば、平面視において矩形の片状であってもよく、繊維の切片であってもよい。
本変形例の製造方法において、突起部250を底壁210の下面212に取り付ける工程では、例えば以下のように実施する。結晶化ガラスなどの突起部250となる材料を準備する。この材料を、底壁210の下面212に接するように配置して、焼き付ける。
変形例6
変形例5のように、突起部250を底壁210に取り付ける態様において、マニホールド200は、コーティング膜260をさらに備えていてもよい。図28に示すように、コーティング膜260は、底壁210の下面212に形成されている。突起部250は、コーティング膜260を介して底壁210に取り付けられている。突起部250の少なくとも一部は、コーティング膜260から下方に突出している。なお、突起部250と同じ部材がコーティング膜260に埋設されていてもよい。
また、コーティング膜260は、露出する表面全体に形成されている。つまり、コーティング膜260が、外部に露出する。具体的には、コーティング膜260は、底壁210、第1側壁221、第2側壁222、上壁230、及び第1フランジ部240の表面全体に形成されている。なお、マニホールド200の各部材を被覆するコーティング膜は、同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
マニホールド200の部材(例えば上壁230)を構成する材料がクロムを含んでいる場合、その部材の表面全体にコーティング膜260が形成されることにより、クロムが揮発することを防止できる。
コーティング膜260は、例えばガラス、セラミックスなどで構成されており、ガラスで構成されていることがより好ましい。ガラスとしては、例えば結晶化ガラスを用いることができる。この結晶化ガラスは、第1接合材300と同様の材料であってもよい。セラミックスとしては、アルミナ、シリカ、ペロブスカイト系材料、スピネル系材料などを用いることができる。コーティング膜260は、複数の層で構成されてもよい。また、コーティング膜260は、突起部250と同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
コーティング膜260の厚みは、例えば3〜200μmである。コーティング膜260の気孔率は、例えば0〜30%である。
本変形例の製造方法では、例えば、コーティング膜260を形成し、その後に突起部250を形成する。具体的には、まず、マニホールド本体の表面全体、つまり露出する面全体に、コーティング膜260となるペーストを形成する。ペーストは、例えばガラス粉末を含み、クロムは含まない。ペーストは、例えば、塗布、ディッピング法などによって形成される。
次に、底壁210の下面212に形成されたペーストに、突起部250となる材料を付着して、この状態で焼成する。この工程では、焼成容器(セッター)に突起部となる材料を配置し、次いで、この材料上に底壁210の下面212を配置し、この状態で焼成してもよい。
実施例1
本実施例では、多孔質材料の支持基板の露出面及び下端面の少なくとも一部から、他の材料が1.0μm以上含浸されてなる緻密領域を有することによる効果について調べた。
参考例1〜7のセルスタック装置は、図24に示すように、燃料電池セルが被覆膜を備えていない点において、図16に示す実施の形態7と異なっていた。
(参考例1、2、5〜7)
気孔率が40%の多孔質材料で構成された支持基板110となる材料を準備した。この材料上に発電素子部120及び緻密膜122を形成し、複数のセル体103を互いに接合し、セル集合体104を作製した。なお、緻密膜122は、下端面116と連なる外表面が500μm露出するように形成した。マニホールド200の挿入孔231にセル体103を挿入し、セル体103の露出面とマニホールド200の上壁230とを接合するように第1接合材300となる材料としてスラリー状のガラスを塗布した。次いで、真空引きをして、緻密膜122から露出する露出面112b上に、第1接合材となる材料と同じガラスを塗布し、ガラスを露出面112bから含浸させた。次に、熱処理を施して、結晶化ガラスからなる第1接合材300を形成するとともに、結晶化ガラスが多孔質材料の気孔に配置された緻密領域119を形成した。露出面112bからの含浸深さを、下記の表1に記載する。
(参考例3及び4)
参考例3及び4のセルスタック装置は、第1接合材300を構成する材料と異なる材料が含浸されてなる緻密領域を有している点において、参考例1及び2と異なっていた。
具体的には、参考例1、2、5〜7と同じ支持基板110となる材料を準備し、露出面112bから非晶質ガラスを含浸させた。参考例1、2、5〜7と同様に、第1接合材300となる材料としてスラリー状のガラスを塗布し、熱処理を施した。これにより、結晶化ガラスからなる第1接合材300を形成するとともに、非晶質ガラスが多孔質材料の気孔に配置された緻密領域119を形成した。露出面112bからの含浸深さを、下記の表1に記載する。
(比較例1)
比較例1のセルスタック装置は、支持基板に他の材料を含浸しなかった点において、参考例1〜7と異なっていた。つまり、比較例1の支持基板は、多孔領域118のみであり、緻密領域119を有していなかった。
(比較例2)
比較例2のセルスタック装置は、真空引きの時間を短くすることによって、露出面からの含浸深さが小さい緻密領域を形成した点において、参考例1、2、5〜7と異なっていた。
(比較例3)
比較例3のセルスタック装置は、含浸させる他の材料の粒子径を大きくすることによって、露出面からの含浸深さが小さい緻密領域を形成した点において、参考例3及び4と異なっていた。
(評価方法)
参考例1〜7及び比較例1〜3のセルスタック装置について、熱サイクル試験により、燃料電池セルの強度及び接合強度を調べた。具体的には、各セルスタック装置を電気炉内に設置し、室温から800℃まで昇降温速度400℃/hrでの上げ下げを10回繰り返した後、電気炉から取り出して、燃料電池セルにおけるクラック発生の有無及びガスリーク量と、接合材におけるクラック発生の有無を調べた。その結果を下記表1に記載する。
下記表1において、燃料電池セルの強度については、燃料電池セルの下端面に浸透探傷剤を塗布し、マイクロスコープで観察することによりクラックの有無を確認した。また、燃料電池セル100のガス流路111出口端部を封止した上でマニホールド200の導入配管Pよりアルゴンガスを供給し、マニホールド200内部を印加圧20kPaまで高めて保持し、その時のガスリーク量を測定した。表1において、「◎」はクラックがなく、ガスリークがなかったことを意味し、「○」は微小なクラックがあったが、ガスリークがなかったことを意味し、「×」はクラックがあり、ガスリークがあったことを意味する。
接合強度については、第1接合材の下端面に浸透探傷剤を塗布し、マイクロスコープで観察することによりクラックの有無を確認した。その結果を下記の表1に記載する。表1において、「◎」はクラックがなかったことを意味し、「○」は微小なクラックがあったことを意味し、「×」はクラックがあったことを意味する。
(評価結果)
表1に示すように、露出面112bからの含浸深さが1.0μm以上の参考例1〜7は、燃料電池セルの強度を向上できた。また、露出面112bからの含浸深さが1.5μm以上1000μm以下の参考例2、4〜7は、燃料電池セルの強度をより向上できた。
また、第1接合材を構成する材料と同じ材料を露出面から含浸させた参考例1、2、5〜7は、異なる材料を含浸させた参考例3及び4に比べて、接合強度を向上できた。
一方、被覆膜及び緻密領域を有していない比較例1は、燃料電池セルの下端面近傍領域の強度が非常に低かった。また、緻密領域を有しているものの含浸深さが小さい比較例2及び3は、強度の向上が不十分であった。
以上より、本実施例によれば、多孔質材料の支持基板の露出面112bの少なくとも一部から、他の材料が1.0μm以上含浸されてなる緻密領域を有することによって、燃料電池セル100の強度を向上できることが確認できた。また、支持基板に含浸させる材料と第1接合材とが同一材料であることによって、接合強度がより高まることが確認できた。
なお、本発明者は、含浸深さが1000μmを超えても、燃料電池セルの強度がほとんど向上しないという知見を得ている。このため、ガラスを容易に含浸させる観点、含浸させるガラス材料を低減する観点などから、含浸深さの好ましい上限は1000μmである。
また、露出面112bの代わりに、あるいは併せて、下端面116の少なくとも一部から、他の材料が1.0μm以上含浸されてなる緻密領域119を有することによって、燃料電池セル100の強度を同様に向上できるという知見を本発明者は得ている。
このように、本発明者は、熱応力によって燃料電池セルのクラックが発生しやすい部分である下端面近傍領域Rの強度を含浸により高めることによって、クラックを抑制することでガスリークを抑制できるという特有の効果を見出した。続いて、本発明者は、この効果が顕著に発現できる支持基板の気孔率について検討した。具体的には、以下のように支持基板の気孔率を種々変更して、燃料電池セルを製造した。
(参考例8〜11)
参考例8〜11のセルスタック装置のそれぞれは、気孔率が15%、20%、60%及び70%の気孔率の多孔質材料で構成された支持基板110となる材料を準備した点において、参考例1と異なっていた。
気孔率が20%未満の参考例8は、露出面112bからガラスが含浸しにくかった。また、支持基板110自体の強度は高いので、緻密領域による効果が小さかった。
また、気孔率が60%を超える参考例11は、露出面112bからガラスが含浸しやすかった。しかし、支持基板110自体の強度が低いので、第1接合材300との接合部分が剥がれやすく、微小なクラックがあった。
一方、気孔率が20%以上60%以下の多孔質材料で構成された支持基板110となる材料を準備した参考例1、9及び10は、緻密領域による効果が大きく発現したため、燃料電池セルの強度を向上できた。また、露出面112bからガラスを含浸しやすかったので、容易に1μm以上の含浸深さの緻密領域を形成できた。さらに、第1接合材300との接合部分にクラックが発生しなかった。
以上より、20%以上60%以下の気孔率を有する多孔質材料で構成された支持基板を用いることにより、緻密領域による効果が顕著であるとともに、接合強度を向上できることが確認できた。
ここで、比較例1の結果について、以下のように考察している。比較例1のセルスタック装置が動作すると、熱サイクルの温度分布による熱応力が、燃料電池セル及びマニホールドに発生した。この熱応力によって、燃料電池セルの下端に曲げモーメントが発生した。比較例1の支持基板は第1接合材よりも曲げ強度が低いので、燃料電池セルの支持基板の下端面に優先的にクラックが発生した。そして、支持基板の下端面を起点とするクラックがさらに成長して、クラックがマニホールドの内部空間と、マニホールドの外部空間とを繋ぐ通路となり、内部空間に導入されたガスがリークした。
これに対して、本実施例では、燃料電池セル100の下端面近傍領域Rを高めることで、ガスリークを抑制できることを確認した。本発明者は、下端面の少なくとも一部を覆い、支持基板を構成する材料よりも曲げ強度が高い材料及び/または気孔率が低い材料で形成された被覆膜を形成することで、同様にガスリークを抑制できるという知見を有している。また、燃料電池セルが被覆膜を備えるとともに、支持基板が緻密領域を有することで、ガスリークを抑制する効果が相乗的に大きくなるという知見も本発明者は得ている。
実施例2
本実施例では、支持基板を構成する材料よりも曲げ強度の高い材料または気孔率の低い材料で構成された被覆膜を備えることによる効果について調べた。
(サンプル1〜12、14、15、31〜42、44、45)
サンプル1〜12、14、15、31〜42、44、45の燃料電池セル及びセルスタック装置は、図9に示すように、ガス流路111を含む幅方向の断面視において、下端面116の全体を被覆する被覆膜170を備えていた。
具体的には、多孔質材料で構成された支持基板110となる材料を準備した。この材料に発電素子部120及び下記の表2及び表4に記載の材料で構成される被覆膜170を形成し、複数のセル体103を互いに接合し、セル集合体104を作製した。マニホールド200の挿入孔231にセル体103を挿入し、セル体103の露出面とマニホールド200の上壁230とを接合するように第1接合材300となる材料としてスラリー状のガラスを塗布した。次に、熱処理を施して、結晶化ガラスからなる第1接合材300を形成した。
(サンプル16〜27、29、30、46〜57、59、60)
サンプル16〜27、29、30、46〜57、59、60の燃料電池セル及びセルスタック装置は、図29に示すように、ガス流路111を含む幅方向の断面視において、下端面116の一部を被覆する被覆膜170を備えていた。サンプル16〜27、29、30、46〜57、59、60は、下記の表3及び表5に記載の材料で構成される被覆膜170を下端面116においてガス流路111と反対側の領域に形成した点において、サンプル1等と異なっていた。
(サンプル13、28、43、58)
サンプル13、28、43、58は、被覆膜170を形成しない点において、サンプル1等と異なっていた。
(評価方法)
サンプル1〜30の支持基板の曲げ強度と、サンプル1〜12、14〜27、29及び30の被覆膜の曲げ強度とを、下記の表2及び表3に記載する。曲げ強度は、JIS R1601に規定されるファインセラミックスの室温4点曲げ強度試験法に基づいて測定した値である。
また、サンプル31〜60の支持基板の気孔率と、サンプル31〜42、44〜57、59及び60の被覆膜の気孔率とを、下記の表4及び表5に記載する。気孔率は、FE−SEMの断面画像を画像解析により気孔部分を数値化することで測定した。具体的には、FE−SEMで7500倍に拡大した画像をMVTec社製の画像解析ソフトHALCONによって解析した。解析後の断面画像上でガラス材料部分と気孔部分とのそれぞれの面積占有率を求め、気孔部分の面積占有率を気孔率として定義した。断面画像は、支持基板及び被覆膜ともに各10視野について撮影して気孔率を数値化し、その平均値を支持基板及び被覆膜の気孔率とした。
サンプル1〜60のセルスタック装置について、上述した方法と同様の熱サイクル試験を実施し、燃料電池セルのクラックの有無を調べた。その結果を、下記の表2〜5の試験結果に記載する。表2〜5において、「◎」はクラックがなく、ガスリークがなかったことを意味し、「○」は微小なクラックがあったが、ガスリークがなかったことを意味し、「×」はクラックがあり、ガスリークがあったことを意味する。
(評価結果)
表2及び表3に示すように、支持基板を構成する材料よりも曲げ強度が高い材料で形成された被覆膜を備えるサンプル1〜12、16〜27は、支持基板を構成する材料よりも曲げ強度が低い材料で形成された被覆膜を備えるサンプル14、15、29及び30と、被覆膜を備えていないサンプル13及び28とに比べて、燃料電池セルのクラックの発生を抑制できた。
特に、支持基板の曲げ強度に対する被覆膜の曲げ強度の比が1.1以上であるサンプル2、3、5、6、8、9、11、12、17、18、20、21、23、24、26及び27は、燃料電池セルのクラックの発生をより抑制できた。
表4及び表5に示すように、支持基板を構成する材料よりも気孔率が低い材料で形成された被覆膜を備えるサンプル31〜42、46〜57は、支持基板を構成する材料よりも気孔率が高い材料で形成された被覆膜を備えるサンプル44、45、59及び60と、被覆膜を備えていないサンプル43及び58とに比べて、燃料電池セルのクラックの発生を抑制できた。
特に、支持基板の気孔率に対する被覆膜の気孔率の比が0.65以下であるサンプル32〜36、38〜42、47〜51、53〜57は、燃料電池セルのクラックの発生をより抑制できた。
また、サンプル1〜12とサンプル16〜27、サンプル31〜42とサンプル46〜57とを比較すると、被覆膜170が下端面116の少なくとも一部に形成されていれば、燃料電池セルのクラックの発生を抑制できることがわかった。
また、支持基板を構成する材料よりも曲げ強度が高い材料または気孔率の低い材料で形成された被覆膜を備えることによって、被覆膜170の材料に関わらず、燃料電池セルのクラックの発生を抑制できることがわかった。
ここで、本実施例では、下端面が略平面である支持基板を備える燃料電池セル及びセルスタック装置について説明した。下端面が略平面でない形状(C面を含む形状、湾曲している形状など)の支持基板を備える燃料電池セル及びセルスタック装置についても、同様の効果を奏するという知見を本発明者は得ている。
以上のように本発明の実施の形態、変形例及び実施例について説明を行なったが、各実施の形態、変形例及び実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態、変形例及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態、変形例及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。