JP6418337B2 - 四重極マスフィルタ及び四重極型質量分析装置 - Google Patents

四重極マスフィルタ及び四重極型質量分析装置 Download PDF

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Description

本発明は、特定の質量電荷比m/zを有するイオンを選択する四重極マスフィルタ、及び、該四重極マスフィルタを質量分離器として用いた四重極型質量分析装置に関する。なお、ここでいう四重極型質量分析装置は、唯一の質量分離器として四重極マスフィルタを用いる一般的なシングル四重極型質量分析装置のみならず、MS/MS分析を行うために二段の四重極マスフィルタを備えた三連四重極型質量分析装置や四重極マスフィルタで選択したイオンを解離したあとに飛行時間型質量分離器で質量電荷比に応じて分離して検出するQ−TOF型質量分析装置を含むものとする。
シングル四重極型質量分析装置では、試料から生成された各種イオンを四重極マスフィルタに導入して特定の質量電荷比を有するイオンのみを選択的に通過させ、通過したイオンを検出器で検出してイオンの量に応じた強度信号を取得する。
一般に四重極マスフィルタは、イオン光軸を取り囲むように互いに平行に配置された4本のロッド電極から成り、その4本のロッド電極にそれぞれ直流電圧と高周波電圧(交流電圧)とを加算した電圧が印加される。4本のロッド電極で囲まれる空間をその軸方向に通過し得るイオンの質量電荷比は、該ロッド電極に印加される高周波電圧と直流電圧とに依存する。そこで、測定対象であるイオンの質量電荷比に応じて高周波電圧及び直流電圧を適切に設定することで、その測定対象のイオンを選択的に通過させて検出することができる。また、ロッド電極に印加する高周波電圧及び直流電圧をそれぞれ所定範囲で所定の関係を保ちつつ変化させることにより、四重極マスフィルタを通過するイオンの質量電荷比を所定範囲で走査し、その際に検出器により得られる信号に基づいてマススペクトルを作成することができる。
四重極マスフィルタを構成するロッド電極に印加される電圧によって該ロッド電極で囲まれる空間に形成される四重極電場中でのイオンの挙動やイオンが安定に通過する動作条件などについては、非特許文献1等に記載のように、従来詳しく解析されている。
即ち、z軸方向に延伸するロッド電極で囲まれる空間に形成される理想的な四重極電場中を通過するイオンの運動は、マシュー(Mathiu)方程式と呼ばれる次の式で表される。
m(d2x/dt2)=−(2zex/r0 2)(U−VcosΩt)
m(d2y/dt2)=+(2zey/r0 2)(U−VcosΩt)
ここで、mはイオンの質量、r0はロッド電極の内接円半径、eは電荷量、U、Vはそれぞれ直流電圧の電圧値及び高周波電圧の振幅値、Ωは高周波電圧の周波数である。また、zはz軸上の位置、x、yはz軸に直交するx軸、y軸上の位置を示す。
イオンが4本のロッド電極で囲まれる空間に収まりつつ安定して通過できる条件は、上記マシュー方程式を解くことで得られる次の二つのパラメータa、qを互いに直交する軸とした2次元空間上の領域として表すことができる。
x=−ay=8eU/mr0 2 Ω2
x=−qy=4eV/mr0 2 Ω2
図8は、マシュー方程式の解の安定条件を説明するためにしばしば利用される安定状態図である。図8において実線で囲まれた略三角形の領域が上記方程式の安定解となる安定領域であり、その外側がイオンが発散してしまう不安定領域である。理論的には、或る質量を持つイオンについて安定領域内に位置するように電圧などの条件を定めれば該イオンを安定的に通過させることは可能であるものの、高い質量分解能を得るには安定領域の頂部Pに近い位置に動作条件を定める必要がある。そのため、一般的には、質量分解能を高く保ち、且つ動作条件がばらついたり変動しても不安定領域に入ったりしないように、頂部Pに近い例えば点Aの付近に動作条件を定めるようにしている。
しかしながら、四重極型質量分析装置による実際の測定の際には、四重極マスフィルタの外側で生成されたイオンはロッド電極で囲まれる空間の端部を経て該空間中に入射して来る。その端部における電場つまり縁端場はその内側に形成されている四重極電場に比べて弱い。そのため、四重極マスフィルタへ入射して来るイオンが受ける電場による該イオンの挙動は、安定状態図上で示すと、図8中に点線矢印で示すように不安定領域を通りながら安定領域に入っていく状態となる。図中に符号Bで示す不安定領域を通過する間は、イオンの運動は不安定であるため、一部のイオンは安定した四重極電場に達する前に発散して消失してしまう。これが四重極マスフィルタを通過するイオンの透過率が低下する大きな要因である。
上記問題を解決するため、多くの四重極型質量分析装置では、四重極マスフィルタにおいて質量電荷比に応じてイオンを選択するための主ロッド電極の直前に、該主ロッド電極と同径で長さが短い、四重極型のプリロッド電極が配置され、該プリロッド電極に主ロッド電極に印加されているのと同じ高周波電圧が印加される構成が採られている(特許文献1、2、非特許文献2等参照)。このプリロッド電極には主ロッド電極に印加されているイオン選択用の直流電圧は印加されない。そのため、特許文献2に記載されているように、プリロッド電極で囲まれる空間をまず通過したあとに主ロッド電極で囲まれる空間に入射するイオンの挙動は、安定状態図上で示すと、図9中に点線矢印で示すように安定領域を通りながら点Aに到達する状態となる。この場合には、イオンは不安定領域を通過しないので効率良く主ロッド電極で囲まれる空間に導入されることになり、プリロッド電極を設けない場合に比べてイオン透過率を向上させることができる。
しかしながら、本発明者らのシミュレーション計算等による検討によれば、上述したようなプリロッド電極を設けた四重極マスフィルタであっても、四重極マスフィルタに入射しようとするイオンのうちのかなりの部分が無駄になっており、イオン透過率は未だ改善の余地が大きい。近年、質量分析の分野では、試料中にごく微量含まれる成分の同定や定量の必要性がますます高まっている。そうした要求に応えるためには検出感度の一層の向上が必要であり、四重極マスフィルタを搭載した四重極型質量分析装置では、四重極マスフィルタのイオン透過率を向上させることが非常に重要である。
米国特許第3129327号明細書 特開2005-259616号公報
オースチン(Austin WE)ほか2名、「チャプター6 ザ・マス・フィルタ:デザイン・アンド・パフォーマンス クァドルポール・マス・スペクトロメトリー・アンド・イッツ・アプリケーションズ(CHAPTER VI-THE MASS FILTER: DESIGN AND PERFORMANCE, Quadrupole Mass Spectrometry and its Applications)」、エルゼビア(Elsevier)社、1976年 ウィルソン(Wilson M. Brubaker)、「アン・インプルーブド・マス・アナライザ(An Improved Quadrupole Mass Analyser)」、アドバンセズ・イン・マス・スペクトロメトリー(Advances in Mass Spectrometry)、Vol. 4、1968年、pp. 293-299
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、測定対象であるイオンの透過率を向上させることができる四重極マスフィルタを提供することである。また、本発明の他の目的は、そうしたイオン透過率の高い四重極マスフィルタを用いることで、最終的に検出器に到達するイオンの量を増加させ、高い検出感度を達成することができる四重極型質量分析装置を提供することである。
従来の一般的な四重極マスフィルタでは、主電極部の前に配置されるプレ電極部は、主電極部のロッド電極と同じように中心軸の周りに配置された4本の短いロッド電極からなる。また、このプレ電極部に含まれるロッド電極には、主電極部のロッド電極に印加される高周波電圧が印加される。通常、主電極部のロッド電極に印加される高周波電圧は通過させたい(選択したい)質量電荷比を有するイオンが良好に通過できるように、つまりイオン透過量ができるだけ多くなる(実際には検出されるイオン強度ができるだけ高くなる)ように設定されている。したがって、プレ電極部に含まれるロッド電極にも同じ高周波電圧を印加することで、上記通過させたい質量電荷比を有するイオンはプレ電極部に含まれるロッド電極も良好に通過することができる。
ところが、イオンがプレ電極部に含まれるロッド電極で囲まれる空間に入射する時点、及び、プレ電極部に含まれるロッド電極を出射したイオンが主電極部に含まれるロッド電極で囲まれる空間に入射する時点でのイオン透過率は、入射するイオンビームのエミッタンスと受け入れ側のアクセプタンスとのマッチングに依存し、そのマッチングが悪いと入射しようとするイオンの一部が発散してしまう。総合的なイオン透過率を高めるために、こうしたマッチングについては従来あまり考慮されておらず、上述したようなロッド電極で囲まれる空間中のイオン透過率の高さが専ら重要視されていた。
これに対し本発明者は、各種条件の下でのシミュレーション計算と検討を繰り返す中で、イオン選択に直接的には寄与しないプレ電極部に含まれるロッド電極で囲まれる空間を通過する際のイオン透過率よりもむしろ、イオンがプレ電極部に含まれるロッド電極で囲まれる空間に入射する時点、及び、プレ電極部に含まれるロッド電極を出射したイオンが主電極部に含まれるロッド電極で囲まれる空間に入射する時点でのイオン透過率が、総合的なイオン透過率を高めるために重要であるという知見を得た。
イオン入射時のイオン透過率を高めるには、上述したように、入射するイオンビームのエミッタンスと受け入れ側のアクセプタンスとのマッチングを良くすればよいわけであるが、四重極マスフィルタに入射して来るイオンビームのエミッタンスを変更することは質量分析装置全体の構成や構造の変更に繋がるため困難であるし、主電極部におけるイオンのアクセプタンスを変更することも該主電極部を通過するイオンの透過率を下げるおそれがあるために困難である。そこで、本発明者は、プレ電極部の電極の構成や構造、及び印加電圧などの条件を検討し、それらを適切に定めることで上記マッチングを改善し総合的なイオン透過率を向上させることが可能であることを確認し、本発明を得るに至った。
即ち、上記課題を解決するために成された本発明に係る四重極マスフィルタは、
a)中心軸を取り囲むように配置された複数のロッド電極からなる主電極部と、
b)前記中心軸に沿って前記主電極部の前に配置され、前記中心軸を取り囲むように複数配置された電極を1組として、該中心軸に沿って互いに分離された複数組の電極からなるプレ電極部と、
c)前記主電極部の各ロッド電極に、通過させるイオンの質量電荷比に応じた直流電圧と高周波電圧とを加算した電圧を印加する第1の電圧印加部と、
d)前記プレ電極部の各電極に前記高周波電圧と同周波数の高周波電圧を印加するものであって、前記主電極部から前方に向かい各組毎に順に振幅が縮小する高周波電圧を各電極に印加する第2の電圧印加部と、
を備えることを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された本発明に係る四重極型質量分析装置は、上記本発明に係る四重極マスフィルタを少なくとも一つの質量分離器として用いたことを特徴としている。
本発明に係る四重極マスフィルタにおいて、プレ電極部は例えば、主電極部のロッド電極と同じように中心軸の周りに配置された4本の短いロッド電極を、中心軸に沿って複数組備える。また、第2の電圧印加部は、その各組のロッド電極に主電極部のロッド電極に印加される高周波電圧と同じ周波数の高周波電圧を印加するが、その振幅は主電極部のロッド電極に印加されるものと同じではなく、前方に向かうに従って各組毎に振幅が小さくなるようにする。例えばプレ電極部が、4本の短いロッド電極を中心軸に沿って2組備える構成である場合には、その後段の電極には主電極部のロッド電極に印加される高周波電圧よりも振幅が小さい高周波電圧が印加され、前段の電極にはその後段の電極に印加される高周波電圧よりもさらに振幅が小さい高周波電圧が印加される。
中心軸の周りの4本のロッド電極に印加する高周波電圧の振幅を小さくするほどイオンのアクセプタンスは大きくなるが、そのロッド電極を通過して出射するイオンビームのエミッタンスも大きくなる。本発明に係る四重極マスフィルタでは、プレ電極部に含まれる電極を中心軸つまりはイオン光軸に沿って複数に分割し、イオン入射側から主電極部へ進むに従って、分割された各電極に印加する高周波電圧の振幅が段階的に大きくなるようにしたので、各電極で囲まれる空間にイオンが入射する際のイオンビームのエミッタンスと受け入れ側のアクセプタンスとの差を抑えマッチングを良くすることができる。その結果、その前段のイオン源やイオン輸送光学系等からプレ電極部へイオンが入射する際のイオン透過率やプレ電極部から主電極部へイオンが入射する際のイオン透過率が従来よりも向上し、四重極マスフィルタ全体としてのイオン透過率も改善することができる。
上述したように本発明に係る四重極マスフィルタによれば、選択したいイオンについてのイオン透過率を向上させることができ、より多くの量のイオンを後段へと送ることができる。
また本発明に係る四重極型質量分析装置によれば、試料由来の目的とするイオンをより多く検出器に到達させたり、より多くコリジョンセル等で解離させてそれによって生成されるプロダクトイオンを質量分析したりすることができる。それによって、試料由来の目的イオンの検出感度が向上するので、微量成分の同定や定量、或いは構造解析などに有用である。
本発明に係る四重極マスフィルタを用いた質量分析装置の一実施例の概略構成図。 本実施例の質量分析装置における四重極マスフィルタ及び電圧印加部の構成図。 四重極マスフィルタにおけるイオン相対透過量を計算するためのシミュレーションモデルを示す図。 質量電荷比m/z=500のイオンに対する四重極マスフィルタ全体のイオン相対透過量をシミュレーションした結果を示す図。 前段プレ電極部のロッド電極の長さL1を変えたときの四重極マスフィルタ全体のイオン相対透過量をシミュレーションした結果を示す図。 後段プレ電極のロッド電極の長さL2を変えたときの四重極マスフィルタ全体のイオン相対透過量をシミュレーションした結果を示す図。 異なる質量電荷比のイオンに対する四重極マスフィルタ全体のイオン相対透過量をシミュレーションした結果を示す図。 プリロッド電極を設けない構成において四重極マスフィルタを通過するイオンの運動条件を示す安定領域図。 プリロッド電極を設けた構成において四重極マスフィルタを通過するイオンの運動条件を示す安定領域図。
本発明に係る四重極マスフィルタを用いた質量分析装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例であるシングル型の四重極型質量分析装置の概略構成図、図2は本実施例の四重極型質量分析装置における四重極マスフィルタ及び電圧印加部の構成図である。
本実施例の四重極型質量分析装置は、図示しない真空チャンバの内部に、イオン源1、イオンレンズ2、四重極マスフィルタ3、及び検出器4、を備える。イオン源1は例えば電子イオン化法により試料ガス中の試料成分をイオン化する。イオン源1で生成され図中に白抜き矢印で示すように引き出されたイオンは、イオンレンズ2で収束されて四重極マスフィルタ3に導入される。四重極マスフィルタ3は、後述するように4本のロッド電極からなる主電極部31と、その前段に配置されたプレ電極部32とから成り、さらにプレ電極部32は前段プレ電極部32Aと後段プレ電極部32Bとの二段構成となっている。
詳細はあとで述べるが、イオン光軸Cに沿って四重極マスフィルタ3の長軸方向の空間に導入されたイオンのうち、該四重極マスフィルタ3のロッド電極に印加されている高周波電圧と直流電圧とにより形成される電場の作用によって、特定の質量電荷比を有するイオンのみがイオン光軸C付近を振動しながら通り抜け、他のイオンは途中で発散する。四重極マスフィルタ3を通り抜けたイオンは検出器4に到達し、検出器4は到達したイオンの量に応じた検出信号を生成して図示しないデータ処理部へと送る。四重極マスフィルタ3のロッド電極に印加する高周波電圧と直流電圧とを所定の関係を保ちつつそれぞれ変化させると、四重極マスフィルタ3を通り抜け得るイオンの質量電荷比が変化する。そこで、その高周波電圧と直流電圧とをそれぞれ所定の範囲で走査することによって、検出器4に到達し得るイオンの質量電荷比を所定の範囲で変化させることができ、それにより得られた検出信号に基づいて、質量電荷比とイオン強度との関係を示すマススペクトルを作成することができる。
次に、本実施例の質量分析装置における四重極マスフィルタ3の構成と動作について、図2を参照しつつ詳述する。
図2では、前段プレ電極部32A、後段プレ電極部32B、及び主電極部31をそれぞれ、イオン光軸Cに直交する断面で以て記載してある。前段プレ電極部32A、後段プレ電極部32B、及び主電極部31はいずれも、イオン光軸Cを取り囲むように該光軸Cに平行に配置された4本の断面円柱状のロッド電極(a、b、c、d)から成り、そのロッド電極の直径や、ロッド電極に内接する、中心軸Cを中心とする円の半径r0は同一である。一方、イオン光軸C方向の長さは異なり、主電極部31のロッド電極は長く、これに比べて、前段プレ電極部32A及び後段プレ電極部32Bのロッド電極は遙かに短い。ここで、前段プレ電極部32Aのロッド電極の長さをL1、後段プレ電極部32Bのロッド電極の長さをL2とする。
前段プレ電極部32A、後段プレ電極部32B、及び主電極部31に含まれる、合計で12本のロッド電極にはそれぞれ、高周波電圧生成部51、直流電圧生成部52、バイアス電圧生成部53、及び電圧合成部54を含む電圧印加部から所定の電圧が印加される。
より詳しく述べると、高周波電圧生成部51は制御部50からの指示により、選択対象であるイオンの質量電荷比に応じた、振幅は等しく位相が逆である高周波電圧+VRF、−VRFを生成する。直流電圧生成部52は制御部50からの指示により、選択対象であるイオンの質量電荷比に応じた、電圧値の絶対値が等しく極性が逆である直流電圧+VDC、−VDCを生成する。また、バイアス電圧生成部53は、イオンを加速したり減速させたりするために前段又は後段に配置される電極やイオン光学系との間に適宜の電位差を生じさせるべく所定の直流バイアス電圧VB1、VB2、VB3を生成する。電圧合成部54は電圧を加算する加算部と電圧を増幅する(実際には縮小する)増幅部とをそれぞれ複数含む。この電圧合成部54において、正位相の高周波電圧+VRFと正極性の直流電圧+VDCとは加算され、逆位相の高周波電圧−VRFと負極性の直流電圧−VDCとは加算され、さらに、その±(VDC+VRF)の電圧にそれぞれ直流バイアス電圧VB1が加算されて、主電極部31のロッド電極31−a〜31−dに印加される。これは従来の一般的な四重極マスフィルタと同様である。なお、これら加算のための加算部と電圧生成部51、52が本発明における第1の電圧印加部に相当する。
電圧合成部54において、正位相の高周波電圧+VRFと逆位相の高周波電圧−VRFはそれぞれα倍(ただし0<α<1)されたうえで直流バイアス電圧VB2と加算され、後段プレ電極部32Bのロッド電極32B−a〜32B−dに印加される。即ち、後段プレ電極部32Bの2本のロッド電極32B−b、32B−dには+αVRF+VB2なる電圧が印加され、他の2本のロッド電極32B−a、32B−cには、−αVRF+VB2なる電圧が印加される。さらに、正位相の高周波電圧+VRFと逆位相の高周波電圧−VRFはそれぞれβ倍(ただし0<β<α<1)されたうえで直流バイアス電圧VB3と加算され、前段プレ電極部32Aのロッド電極32A−a〜32A−dに印加される。即ち、前段プレ電極部32Aの2本のロッド電極32A−b、32A−dには+βVRF+VB2なる電圧が印加され、他の2本のロッド電極32A−a、32A−cには、−βVRF+VB2なる電圧が印加される。なお、これら加算のための加算部、振幅値調整のための増幅部、及び電圧生成部51、52が本発明における第2の電圧印加部に相当する。
即ち、後段プレ電極部32Bのロッド電極32B−a〜32B−dには主電極部31のロッド電極31−a〜31−dに印加される高周波電圧と周波数が同じであって振幅が小さい高周波電圧が印加され、前段プレ電極部32Aのロッド電極32A−a〜32A−dには後段プレ電極部32Bのロッド電極32B−a〜32B−dに印加される高周波電圧と周波数が同じであって振幅がさらに小さい高周波電圧が印加される。
上述したように印加される電圧によって、前段プレ電極部32A、後段プレ電極部32B、及び主電極部31にはそれぞれ四重極高周波電場が形成されるが、その電場はイオン源1に近い側ほど弱くなっている。また、前段プレ電極部32A及び後段プレ電極部32Bに含まれるロッド電極には直流電圧生成部52による直流電圧は印加されないので、前段プレ電極部32A及び後段プレ電極部32Bは基本的にイオンを質量電荷比に応じて分離する機能を有さない。
次に、上述した四重極マスフィルタ3におけるイオン相対透過量を検討するために実施したシミュレーション計算の手法とその結果について説明する。
図3はシミュレーション計算に用いた装置のモデルを示す図である。図3に示すように、イオン源1、イオンレンズ2、及び四重極マスフィルタ3のサイズと配置を定め、図中の(x、y、z)=(0、0、0)の座標位置から出射したイオンの軌道を計算することで、四重極マスフィルタ3を通り抜けるイオンの相対透過量を算出した。
図4は、m/z=500であるイオンに対するイオン相対透過量をシミュレーションした結果を示すグラフである。図中、「1段相当」とは、前段プレ電極部32Aへ印加する高周波電圧と後段プレ電極部32Bへ印加する高周波電圧とを共に主電極部31へ印加する高周波電圧と等しくした場合(つまりVpre1=Vpre2=VRF)であり、これはプレ電極部が二段構成であるものの実質的に従来の一段構成と同じであるとみなせるから、プレ電極部を設けた従来の四重極マスフィルタに相当する。一方、図中、「2段」として示したのは、上記実施例中の四重極マスフィルタ3に相当するものであり、ここでは、前段プレ電極部32Aへ印加する高周波電圧の振幅は主電極部31へ印加する高周波電圧の振幅の0.14倍(つまりは図2におけるβ=0.14)、後段プレ電極部32Bへ印加する高周波電圧の振幅は主電極部31へ印加する高周波電圧の振幅の0.5倍(つまりは図2におけるα=0.5)である。この図4から明らかであるように、上記実施例における四重極マスフィルタ3は従来の四重極マスフィルタに比べて、イオン相対透過量は約2倍になっている。つまり、検出器4に到達するイオンの量が2倍に増加し、それだけ検出感度が向上するということができる。
図5は、前段プレ電極部32Aのロッド電極32A−a〜32A−dの長さL1を変えたときのイオン相対透過量をシミュレーションした結果を示すグラフであり、(a)は長さL1を2.0r0とした場合、(b)は長さL1を1.5r0とした場合の結果である。上述したように、r0はロッド電極の内接円の半径である。
図6は、後段プレ電極部32Bのロッド電極32B−a〜32B−dの長さL2を変えたときのイオン相対透過量をシミュレーションした結果を示すグラフであり、(a)〜(f)は長さL2をそれぞれ2.0r0、1.5r0、1.0r0、0.5r0、0.25r0、0、125r0、とした場合の結果である。なお、前段プレ電極部32Aの各ロッド電極、後段プレ電極部32Bの各ロッド電極へ印加する高周波電圧の振幅値、つまり上記α、βの値はイオン透過量が最大になるようにそれぞれ調整されているため、必ずしも同一ではない。
図5から、前段プレ電極部32Aのロッド電極の長さL1を1.5r0にした場合にはその長さL1を2.0r0にした場合に比べてイオン相対透過量は半分程度に低下しており、前段プレ電極部32Aのロッド電極の長さL1は2.0r0程度にしたほうがよいといえる。
一方、後段プレ電極部32Bのロッド電極の長さL2は2.0r0〜0.125r0の間で変化させてもイオン相対透過量に顕著な変化はない。したがって、イオン相対透過量に対する後段プレ電極部32Bのロッド電極の長さL2の依存性はそれほど大きくなく、この長さL2は2.0r0〜0.125r0の範囲で適宜決めることができるといえる。
図7は、m/z=69、219、500という質量電荷比が異なる三種類のイオンにおける相対透過量をシミュレーションした結果を示すグラフである。図7から、いずれの質量電荷比においても、本実施例における四重極マスフィルタでのイオン相対透過量は従来の四重極マスフィルタよりも十分に増加している。したがって、測定対象であるイオンの質量電荷比に依らず、本実施例の四重極マスフィルタでは、従来の四重極マスフィルタに比べて効率良くイオンを通過させることができ、より多くの量のイオンを検出器4に到達させて高い検出感度を達成できるといえる。
四重極高周波電場における擬似ポテンシャルの半径は、ロッド電極に印加される高周波電圧の振幅を小さくするほど大きくなる。つまり、高周波電圧の振幅を小さくするに従いイオンのアクセプタンスは大きくなる。また、擬似ポテンシャルの半径が大きくなると、その四重極高周波電場から出射するイオンビームのエミッタンスも大きくなる。図4に示したシミュレーション例では、α=0.5、β=0.14としたが、上述したように高周波電圧の振幅によってイオンのアクセプタンス及びエミッタンスを調整することができるから、イオンレンズ2を経て入射して来るイオンビームのエミッタンス及び主電極部31におけるイオンのアクセプタンスに応じて、α、βの値を適宜に設定することで、エミッタンスとアクセプタンスとのマッチングを改善することができる。
図4〜図7に示した例ではイオンの透過量がほぼ最大になるようにα、βの値を調整していたが、シミュレーションによる検討によれば、αは0.4≦α<1の範囲、βは0.07≦β<1(ただしα<β)の範囲であれば、従来の四重極マスフィルタに比べてイオン相対透過量は増加することが確認できた。
なお、図1に示した実施例ではプレ電極部32は2段構成であるが、3以上の多段構成としてもよい。その場合にも、主電極部31からイオン源1側に近づくに伴い、ロッド電極に印加する高周波電圧の振幅を段階的に縮小するようにすればよい。
また、上述した構成の四重極マスフィルタを、三連四重極型質量分析装置の前段四重極マスフィルタ及び後段四重極マスフィルタに適用する、又はQ−TOF型質量分析装置の四重極マスフィルタに適用してもよいことは当然である。
また、図2では理解を容易にするために、加算部及び増幅部を含む電圧合成部54により各ロッド電極へ印加する電圧を生成するような構成としていたが、同様の電圧を生成するための回路構成はこれに限らないことは明らかである。例えば、高周波電圧波形をデジタルデータで生成し、デジタル値の段階で加算や乗算を実行したあとにデジタル・アナログ変換することで高周波電圧に対応するアナログ波形を生成し、これをドライブ回路を通してロッド電極に印加する構成とすることもできる。もちろん、それ以外の回路構成とすることも容易に想到し得る。
さらにまた、上記実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変更や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…イオン源
2…イオンレンズ
3…四重極マスフィルタ
31…主電極部
32…プレ電極部
32A…前段プレ電極部
32B…後段プレ電極部
4…検出器
50…制御部
51…高周波電圧生成部
52…直流電圧生成部
53…バイアス電圧生成部
54…電圧合成部
C…イオン光軸

Claims (2)

  1. a)中心軸を取り囲むように配置された複数のロッド電極からなる主電極部と、
    b)前記中心軸に沿って前記主電極部の前に配置され、前記中心軸を取り囲むように複数配置された電極を1組として、該中心軸に沿って互いに分離された複数組の電極からなるプレ電極部と、
    c)前記主電極部の各ロッド電極に、通過させるイオンの質量電荷比に応じた直流電圧と高周波電圧とを加算した電圧を印加する第1の電圧印加部と、
    d)前記プレ電極部の各電極に前記高周波電圧と同周波数の高周波電圧を印加するものであって、前記主電極部から前方に向かい各組毎に順に振幅が縮小する高周波電圧を各電極に印加する第2の電圧印加部と、
    を備えることを特徴とする四重極マスフィルタ。
  2. 請求項1に記載の四重極マスフィルタを質量分離器として用いたことを特徴とする四重極型質量分析装置。
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