JP5327138B2 - タンデム四重極型質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、MS/MS分析が可能なタンデム四重極型質量分析装置に関する。
分子量が大きな物質の同定やその構造の解析を行うために、質量分析の1つの手法として、MS/MS分析と呼ばれる手法が広く用いられている。MS/MS分析を実施するための質量分析装置としては種々の構成のものがあるが、構造が比較的簡単で広く利用されているものとしてタンデム四重極型(三連四重極型とも呼ばれる)質量分析装置がある。
特許文献1などに開示されているように、一般的なタンデム四重極型質量分析装置は、前段の四重極マスフィルタ(四重極Q1)と後段の四重極マスフィルタ(四重極Q3)との間に、イオンを衝突誘起解離(CID)によって解離させるコリジョンセル(衝突室)を備える。このコリジョンセル内には、イオンを収束させつつ輸送するために四重極(又はそれ以上の多重極)型のイオンガイド(四重極q2)が配設される。
試料から生成された各種イオンが前段の四重極Q1に導入されると、該四重極Q1は特定の質量電荷比(m/z)を有するイオンのみをプリカーサイオンとして選択的に通過させる。コリジョンセル内にはアルゴン(Ar)ガスなどのCIDガスが導入され、コリジョンセル内に導入された上記プリカーサイオンはCIDガスと衝突し、解離して各種のプロダクトイオンが生成される。プリカーサイオンや各種のプロダクトイオンは四重極q2により形成される高周波電場の作用で収束される。CIDにより生成された各種プロダクトイオンが後段の四重極Q3に導入されると、該四重極Q3は特定の質量電荷比を有するプロダクトイオンのみを選択的に通過させ、四重極Q3を通過し得たプロダクトイオンが検出器に到達して検出される。
上記のタンデム四重極型質量分析装置では、MRM測定、プロダクトイオンスキャン測定、ニュートラルロススキャン測定、プリカーサイオンスキャン測定などの様々なMS/MS分析が可能である。MRM測定では、前段の四重極Q1と後段の四重極Q3とを通過し得るイオンの質量電荷比をそれぞれ固定し、特定のプリカーサイオンに対する特定のプロダクトイオンの強度を測定する。プロダクトイオンスキャン測定では、前段の四重極Q1を通過するイオンの質量電荷比を或る値に固定する一方、後段の四重極Q3を通過するイオンの質量電荷比を走査する。これにより、特定のプリカーサイオンに対するプロダクトイオンのマススペクトルを取得することができる。ニュートラルロススキャン測定では、前段の四重極Q1を通過するイオンの質量電荷比と後段の四重極Q3を通過するイオンの質量電荷比との差(ニュートラルロス)を一定に保った状態で両方の質量走査を行う。これにより、特定のニュートラルロスを有するプリカーサイオン/プロダクトイオンのマススペクトルを取得することができる。プリカーサイオンスキャン測定では、後段の四重極Q3を通過するイオンの質量電荷比を或る値に固定する一方、前段の四重極Q1を通過するイオンの質量電荷比を走査する。これにより、特定のプロダクトイオンを生成するプリカーサイオンのマススペクトルを取得することができる。
上記タンデム四重極型質量分析装置をガスクロマトグラフ(GC)や液体クロマトグラフ(LC)の検出器として用いることにより、試料に含まれる多数の成分を時間的に分離し、それら各成分に対するMS/MS分析をそれぞれ実行することが可能である。こうした測定において測定対象の試料に含まれる成分が既知である場合には、目的成分の保持時間と該成分由来のプリカーサイオンの質量電荷比とを予め指定してMS/MS分析を実行することができる。一方、測定対象の試料に含まれる成分が未知である場合、保持時間とプリカーサイオンの質量電荷比とを予め指定したMS/MS分析を実行することはできない。こうした場合には、予め設定された条件に適合したプリカーサイオンを自動的に探索しながらMS/MS分析を実行する、いわゆるオートMS/MS分析などと呼ばれる測定法が有用である。
ここで言うオートMS/MS分析とは、まず通常のスキャン測定による質量分析(MS分析)を実行してマススペクトルを取得した直後に、そのマススペクトルに現れているピークの中で所定条件に適合したピークを自動的に探索するデータ処理を実行し、条件に適合したピークを選択してその質量電荷比をプリカーサイオンに設定してリアルタイムでMS/MS分析を実行し、プロダクトイオンのマススペクトルを取得するものである。これにより、或る程度の信号強度が得られる未知成分に対するMS/MS分析を自動的に実行することができる。
上述したようなオートMS/MS分析を行う場合、目的成分がGCやLCから溶出している間にMS/MS分析を実行しなければならないため、短い時間間隔でMS分析とMS/MS分析とを交互に繰り返す必要がある。しかしながら、タンデム四重極型質量分析装置でスキャン測定によるMS分析を行う場合には次のような問題がある。
即ち、タンデム四重極型質量分析装置で通常のスキャン測定を行う場合には、後段の四重極Q3では質量電荷比に応じたイオンの選別を行わず、前段の四重極Q1において質量走査を実施する。しかしながら、構造上、前段の四重極Q1と検出器との距離は離れており、前段の四重極Q1を通り抜けたイオンが検出器に到達するまでの飛行経路が長い。このため、前段の四重極Q1における質量分離のための駆動制御のタイミングとこれに対応する(つまり目的の質量電荷比を有する)イオンの強度信号が検出器で得られるタイミングとの時間ズレ(遅延)が大きい。そのため、こうした時間ズレを考慮した質量較正がなされていない状態では、マススペクトルは質量電荷比が大きくなる方向にかなりずれたものとなる。
特にMS分析とMS/MS分析とを短い時間間隔で交互に行う場合、コリジョンセル内に比較的高いガス圧のCIDガスが存在している状態でMS分析が実行されることになる。その場合、前段の四重極Q1で選別されたイオンはCIDガスとの衝突により運動エネルギを失いその飛行速度が落ちるため、上記の時間ズレは一層大きくなる。また、CIDガスとの衝突によって同一質量電荷比を持つイオンの運動エネルギのばらつきが拡大し、それらイオンの速度が変化して検出器における到達時間のばらつきの拡大に繋がる。その結果として、マススペクトルの質量分解能が低下する。もちろん、質量電荷比が既知である標準試料を分析した結果を利用して質量較正や分解能調整を行うことは或る程度可能であるし、こうしたことは実施されているものの、分析のスループット向上や成分見逃し防止のために質量走査のスキャン速度を上げようとすると、時間ズレや時間拡がりの影響が一層大きくなってしまい、十分な質量較正や分解能調整が困難になる。
コリジョンセル内で意図的にイオンを遅延させるためにCIDガスをコリジョンセル内に導入し、その状態で質量較正や分解能調整を行えば、コリジョンセル内でのイオンの遅延や運動エネルギのばらつきの影響は軽減される。しかしながら、その場合でも、MS/MS分析の際のCID条件を変更するためにCIDガス導入量(又はCIDガス圧)が変更されてしまうと、マススペクトルの質量電荷比軸や質量分解能は調整された状態からずれてしまう。このため、マススペクトルの質量精度、質量分解能が共に低下し、オートMS/MS分析におけるMS/MS分析の正確性を損なうおそれもある。
特開平7−201304号公報
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、タンデム四重極型質量分析装置においてスキャン測定によるMS分析を行う場合、特にオートMS/MS分析などコリジョンセル内にCIDガスが存在する状況の下でMS分析を行う場合に、マススペクトルの質量電荷比軸のズレや質量分解能低下を軽減して高質量精度、高質量分解能のマススペクトルを得ることを主な目的としている。
上記課題を解決するために成された本発明は、試料をイオン化するイオン源と、該イオン源で生成された各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別するための前段四重極と、イオンを収束させつつ後段に輸送するイオンガイドが内部に配設され、前記プリカーサイオンをCIDガスと衝突させて解離させるコリジョンセルと、その解離により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別するための後段四重極と、該後段四重極を通過したイオンを検出する検出器と、を具備するタンデム四重極型質量分析装置において、
a)前記前段四重極、前記イオンガイド、及び、前記後段四重極にそれぞれ所定の電圧を印加する電圧印加手段と、
b)前記コリジョンセル内にCIDガスが存在する状況の下で、前記前段四重極において質量走査を行うべく時間経過に従って変化する高周波電圧及び直流電圧を該前段四重極に印加し、前記コリジョンセル内でイオンを解離させるべく該イオンを加速させるような直流バイアス電圧を前記イオンガイドに印加し、且つ、前記後段四重極において実質的な質量分離を伴わないイオン収束がなされるように前記前段四重極に印加される高周波電圧よりも小さな高周波電圧を該後段四重極に印加するとともに、イオンを加速させるような直流バイアス電圧を該後段四重極に印加するように、前記電圧印加手段を制御する制御手段と、
c)前記制御手段の制御により前記前段四重極で質量走査が行われるに伴って前記検出器に到達したプロダクトイオンに応じて得られる検出信号に基づいて、前記イオン源で生成されたイオンに対するマススペクトルを作成する処理手段と、
を備えることを特徴としている。
本発明に係るタンデム四重極型質量分析装置において、スキャン測定によるMS分析が実施される際には、前段四重極において所定の質量電荷比範囲の質量走査が行われる。このとき、前段四重極を通過して来た特定の質量電荷比を持つイオン(プリカーサイオン)は、イオンガイドに印加される直流バイアス電圧により形成される電場の作用で大きな運動エネルギを付与されて加速される。コリジョンセル内にはCIDガスが導入されているため、MS/MS分析時と同様に、イオンは高いエネルギを有してCIDガスに衝突し、解離を生じて各種のプロダクトイオンが生成される。このとき、イオンが元々有している運動エネルギのばらつきやCIDガスとの衝突により生じるエネルギばらつきに比べて十分に大きな運動エネルギをイオンに与えるように加速のための直流バイアス電圧を定めておくことによって、生成されるプロダクトイオンのエネルギばらつきを小さく抑えることができる。
同一質量電荷比を持つプリカーサイオン由来の、質量電荷比が該プリカーサイオンよりも小さなプロダクトイオンは、後段四重極に印加されている直流バイアス電圧により加速されつつ後段四重極に入射する。後段四重極には実質的な質量分離を伴わないイオン収束がなされるように、例えば直流バイアス電圧を除いて高周波電圧のみが印加され、しかもその高周波電圧は前段四重極に印加される高周波電圧よりも小さいため、質量電荷比の小さなプロダクトイオンも後段四重極で遮断されることなく通り抜けて検出器に到達する。また、電場により加速されるためにイオンの飛行速度は大きく、コリジョンセルを出たイオンは短時間で検出器に到達し得る。さらにまた、四重極型質量分析装置を構成するイオン光学素子では、質量電荷比が小さなイオンほど透過率が一般に高い。このため、解離により質量電荷比を小さくしたイオンを検出器まで導くようにすることで、途中でのイオン損失を減らし、より多くのイオンを検出器に到達させることができるという利点もある。
以上のような各部の動作により、或る時点で前段四重極で選択された同一質量電荷比を持つプリカーサイオン由来の様々なプロダクトイオンは、ほぼ同時に検出器に到達し、検出器はイオン強度信号を出力する。CIDにより様々な質量電荷比のプロダクトイオンが生じても、そのイオンの総量はCID前のプリカーサイオンの総量と殆ど変わらない。したがって、処理手段は、或る質量電荷比を持つプリカーサイオンを前段四重極で選択したタイミングから所定の遅延時間だけ遅れたタイミングにおいて検出器で得られた検出信号をそのプリカーサイオンの信号強度とみなして、マススペクトルを作成することができる。前段四重極を通過したイオンは十分に加速されてイオンガイドに導入され、さらにコリジョンセルを出たプロダクトイオンはまた十分に加速されて後段四重極を通過するため、上記遅延時間はかなり短くなる。したがって、コリジョンセル内のCIDガスのガス圧に変動があっても、それによる遅延時間の変化はかなり小さくて済む。
本発明に係るタンデム四重極型質量分析装置では、好ましくは、前段四重極で選択されるイオンの質量電荷比に応じて、イオンガイドの直流バイアス電圧、後段四重極の直流バイアス電圧のいずれか一方又は両方を変更するとよい。即ち、通常、質量電荷比の大きなイオンほど加速されにくいから、加速のための電場を強くするように直流バイアス電圧を決めるとよい。また、測定対象の化合物が既知である場合には、その化合物に応じて、イオンガイドの直流バイアス電圧、後段四重極の直流バイアス電圧のいずれか一方又は両方を変更するようにしてもよい。
なお、上述した制御を用いたスキャン測定によるMS分析は、MS分析により得られたマススペクトルに基づいてプリカーサイオンを決定してMS/MS分析を実行するオートMS/MS分析を行う場合に特に有用である。何故なら、オートMS/MS分析においてMS/MS分析に先立ってMS分析を実行する際には、コリジョンセル内にCIDガスが存在することが避け難いからである。また、上述した制御を用いたスキャン測定によるMS分析によりマススペクトルの質量較正や分解能調整を行い、同じスキャン速度で前段四重極を駆動してプリカーサイオンスキャン測定やニュートラルロススキャン測定を実行するようにすれば、プリカーサイオンスキャン測定やニュートラルロススキャン測定の高速化が可能となる。
本発明に係るタンデム四重極型質量分析装置によれば、スキャン測定によるMS分析の際に、質量走査を高速化してもマススペクトルの質量電荷比軸のズレや質量分解能の低下を抑えることができる。それにより、質量較正や質量分解能調整が容易になり、マススペクトルの質量精度、質量分解能を高めるのに有利である。特に、コリジョンセル内に比較的高いガス圧でCIDガスが存在する状況でも良好なマススペクトルを得ることができるので、例えばオートMS/MS分析を行う場合に正確なプリカーサイオンを選択して高精度、高感度のMS/MSスペクトルを得ることができる。また、CID条件の最適化のためにCIDガスの導入量が変更された場合でも、それに伴うマススペクトルの質量電荷軸ズレや質量分解能低下を最小限に抑えることができる。
本発明の一実施例によるタンデム四重極型質量分析装置の概略構成図。 本実施例のタンデム四重極型質量分析装置におけるMS/MS分析とMS分析の動作説明図。 本発明の一実施例によるタンデム四重極型質量分析装置で得られたマススペクトルの一例を示す図。 従来の方法により得られたマススペクトルの一例を示す図。
以下、本発明の一実施例であるタンデム四重極型質量分析装置について添付図面を参照して説明する。図1は本実施例のタンデム四重極型質量分析装置の概略構成図である。
本実施例のタンデム四重極型質量分析装置は、図示しない真空ポンプにより真空排気される分析室1の内部に、測定対象である試料をイオン化するイオン源2と、それぞれ四本のロッド電極から成る前段四重極マスフィルタ(以下、「前段四重極」という)3及び後段四重極マスフィルタ(以下、「後段四重極」という)6と、内部に多重極型イオンガイド(以下、「イオンガイド」という)5が配設されたコリジョンセル4と、イオンを検出してイオン量に応じた検出信号を出力する検出器7と、を備える。制御部10による制御の下で、前段四重極3にはQ1電源部11から、イオンガイド5にはq2電源部12から、後段四重極6にはQ3電源部13から、それぞれ所定の電圧が印加される。また、検出器7による検出信号(イオン強度信号)はデータ処理部14に入力され、所定のデータ処理が実行される。
コリジョンセル4は、イオン入射開口4aとイオン出射開口4bのほかはほぼ密閉された、例えば周面が略円筒形状で両端面がほぼ閉塞された構造体であり、その内部にはアルゴン(Ar)ガスなどのCIDガスが導入される。イオンガイド5は八本の円柱形状のロッド電極がイオン光軸Cを取り囲むように配置されたものであり、ロッド電極の内接円半径はイオンが進行する方向に(図1で左方から右方に向かって)徐々に大きくなるように各ロッド電極がイオン光軸Cに対して傾けて配置されている。イオンガイド5をこのように配置するのは、イオン光軸Cに沿って擬似ポテンシャルの大きさ又は深さを変化させ、通過するイオンを加速するためである。そうした作用については、国際公開第2009/0814445号パンフレットに詳しく記載されているので、ここでは説明を略す。
Q1電源部11は、イオン選択用の直流電圧±U1、同じくイオン選択用の高周波電圧±V1・cosωt、及び所定の直流バイアス電圧Vbias1、を加算した電圧±(U1+V1・cosωt)+Vbias1を前段四重極3に印加し得る。q2電源部12は、イオン収束用の高周波電圧±V2・cosωtに所定の直流バイアス電圧Vbias2を加算した電圧±V2・cosωt+Vbias2をイオンガイド5に印加し得る。さらにQ3電源部13は、イオン選択用の直流電圧±U3、同じくイオン選択用の高周波電圧±V3・cosωt、及び所定の直流バイアス電圧Vbias3、を加算した電圧±(U3+V3・cosωt)+Vbias3を後段四重極6に印加し得る。
本実施例のタンデム四重極型質量分析装置において、MS/MS分析が実行される際の動作を簡単に説明する。なお、これは従来と同様であり、本発明に特徴的なものではない。ここでは、プリカーサイオンの質量電荷比とプロダクトイオンの質量電荷比がそれぞれ固定されたMRM測定を実行する場合を例に挙げる。
制御部10は、直流電圧±U1の電圧値と高周波電圧±V1・cosωtの振幅値とがそれぞれ指定されたプリカーサイオンの質量電荷比M1に応じた所定値となるようにQ1電源部11を制御し、直流電圧±U3の電圧値と高周波電圧±V3・cosωtの振幅値とがそれぞれ指定されたプロダクトイオンの質量電荷比M2に応じた所定値となるようにQ3電源部13を制御する。また、イオンガイド5には所定の質量電荷比範囲のイオンが安定的に収束されるように決められた高周波電圧±V2・cosωtが印加されるようにq2電源部12を制御する。さらにまた、直流バイアス電圧Vbias1、Vbias2、Vbias3はそれぞれ適宜に決められる。
図2(a)に示すように、前段四重極3では、イオン源2で生成された試料由来のイオンの中で特定の質量電荷比M1を持つイオンのみがプリカーサイオンとして選択される。このプリカーサイオンは、前段四重極3とイオンガイド5との間の直流バイアス電圧差に基づく電場により加速され、高い運動エネルギを有してイオン入射開口4aを経てコリジョンセル4内に導入され、CIDガスと衝突する。これにより、プリカーサイオンは解離を生じて様々なプロダクトイオンが生成される。CIDガスとの衝突によりイオンの運動エネルギは減じるが、上述したようにイオンガイド5中を進むに従って加速されるため、コリジョンセル4内に停滞することなくイオン出射開口4bから出て後段四重極6に導入される。後段四重極6では、プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比M2を持つイオンのみが選択的に通過し、検出器7に到達する。したがって、検出器7では、質量電荷比M1を持つイオン由来の質量電荷比M2を持つプロダクトイオンの信号強度が得られる。
次に、本実施例のタンデム四重極型質量分析装置において、本発明に特徴的なMS分析が実行される際の動作を図2(b)により説明する。
この場合、制御部10は、前段四重極3で所定の質量電荷比範囲、所定のスキャン速度で質量走査が行われるようにQ1電源部11を制御する。したがって、±U1の電圧値と高周波電圧±V1・cosωtの振幅値とはそれぞれ所定の関係を維持しつつ変化する。また、MS/MS分析時と同様に、所定の質量電荷比範囲のイオンが安定的に収束されるように決められた高周波電圧±V2・cosωtがイオンガイド5に印加されるように、そして、コリジョンセル4内で十分なCIDが起こるように導入されるイオンに十分な運動エネルギを与えるべく決められた直流バイアス電圧Vbias2がイオンガイド5に印加されるように、q2電源部12を制御する。
これに対し、後段四重極6では質量電荷比に応じたイオン選別を行わずにイオンを収束させつつ後段に送るために、直流電圧±U3の電圧値をゼロとして振幅値を適宜に決めた高周波電圧±V3・cosωtと直流バイアス電圧Vbias3とを加算した電圧±V3・cosωt+Vbias3が後段四重極6に印加されるようにQ3電源部13を制御する。このとき、高周波電圧±V3・cosωtの振幅値V3は前段四重極3へ印加される高周波電圧±V1・cosωtの振幅値V1よりも小さくなるようにする。振幅値V1は質量走査によって変化するから、例えば振幅値V1に対し所定の定数(1未満の値)を乗じて振幅値V3が決まるようにしておくとよい。また、後段四重極6に印加される直流バイアス電圧Vbias3は、コリジョンセル4から到来するイオンに対し運動エネルギを付与して加速する電場を形成するように決められる。
MS分析ではあるが、MS/MS分析時と同様に、コリジョンセル4内にはCIDに十分なガス圧でCIDガスが存在している。MS分析が行われると、前段四重極3では質量走査が行われるから、イオン源2で生成された試料由来のイオンの中で前段四重極3を通り抜けるイオン(プリカーサイオン)の質量電荷比は順次変化する。或る時点において前段四重極3を通り抜けたイオンは、MS/MS分析時と同様に、前段四重極3とイオンガイド5との間の直流バイアス電圧差に基づく電場により加速され、高い運動エネルギを有してイオン入射開口4aを経てコリジョンセル4内に導入され、CIDガスと衝突する。これにより、プリカーサイオンは解離を生じて様々なプロダクトイオンが生成される。このときにも、CIDガスとの衝突によりイオンの運動エネルギは減じるが、上述したようにイオンガイド5中を進むに従って加速されるため、コリジョンセル4内に停滞することなくイオン出射開口4bから出て後段四重極6に導入される。
また、前段四重極3を通過して来たイオン群が元々有しているエネルギのばらつきやCIDガスとの衝突により生じるエネルギのばらつきに比べて十分大きな運動エネルギをイオンに与えるように直流バイアス電圧Vbias2を決めておきさえすれば、CIDにより生成されたプロダクトイオンの持つエネルギのばらつきは殆ど無視できる程度になる。それにより、同一質量電荷比のプリカーサイオンに由来するプロダクトイオンの飛行速度のばらつきは小さくなり、最終的にほぼ同時に検出器7に到達させることができる。
後段四重極6は質量分離の機能を実質的に果たさないため、導入されたプロダクトイオンは質量電荷比に依らず後段四重極6を通り抜け検出器7に到達する。当然のことながら、これらプロダクトイオンの質量電荷比はCID前のイオンの質量電荷比よりも小さく、開裂の態様によってはかなり質量電荷比が小さなプロダクトイオンも存在し得る。一般に、高周波電場によりイオンを収束させつつ後段に輸送するように四重極が駆動される場合、質量電荷比が小さなイオンほど振動が大きくなるために、ロッド電極に接触する等の要因で消失し易い。これに対し、このタンデム四重極型質量分析装置では、後段四重極6に印加する高周波電圧の振幅を前段四重極3に印加する高周波電圧の振幅よりも小さくしているため、プリカーサイオンの質量電荷比よりも小さな質量電荷比を持つプロダクトイオンの振動を抑え、遮断される質量電荷比を下げることができる。それによって、CIDによって断片化された小さな質量電荷比のイオンも後段四重極6を通過し易くなり、効率よく検出器7まで到達する。
また、後段四重極6に印加される直流バイアス電圧によってイオンは加速されるので、コリジョンセル4から検出器7までの距離が長くてもイオンはこれを迅速に通過する。それにより、前段四重極3で或る質量電荷比を持つイオンが選択された時点から、該イオン由来のプロダクトイオンが検出器7に到達する時点までの時間遅延を小さくすることができる。また、上述したように、或る質量電荷比を持つイオン由来のプロダクトイオンはほぼ同時に検出器7に到達し得る。途中でのイオンの損失は少なく、プロダクトイオンの総量はCID前のイオンの総量とほぼ等しいとみなすことができる。したがって、データ処理部14では、質量走査に伴って検出器7で得られる検出信号に基づいてマススペクトルを作成することができる。
上述した本実施例のタンデム四重極型質量分析装置における特徴的なMS分析で得られるマススペクトルと従来方法で得られるマススペクトルとの相違を、図3及び図4により説明する。図3は本発明による特徴的なMS分析で得られる拡大マススペクトルを示す図であり、(a)、(b)共に右方にいくほど質量電荷比は大きい。図4は従来方法によるMS分析で得られる拡大マススペクトルを示す図であり、これも(a)、(b)共に右方にいくほど質量電荷比は大きい。
図4(a)と(b)とを比べれば明らかなように、従来方法では、コリジョンセル内のCIDガス圧を高くすると、CIDガスとの衝突による相対的なエネルギの拡がりによって分解能が低下し、飛行速度の低下によって質量電荷比軸がm/zの大きいほうにずれている。この結果はスキャン速度が1000[u/sec]の場合のものであるが、スキャン速度を上げるとさらにこの傾向は顕著になる。これに対し、図3に示したマススペクトルは、イオンガイド5に印加される直流バイアス電圧Vbias2を−15〜−35[V]の範囲で質量電荷比に応じて設定し、後段四重極6へ印加される高周波電圧の振幅値V3を前段四重極3へ印加される高周波電圧の振幅値V1の20%に設定して取得したものであるが、CIDガス圧:0.8Pa、スキャン速度:2500[u/sec]の条件の下でも質量電荷比軸のずれや分解能低下が殆ど現れていないことが分かる。
本実施例のタンデム四重極型質量分析装置における上記MS分析はコリジョンセル4内にCIDガスが存在する状態で行われるから、MS分析とその結果を利用してプリカーサイオンを決めるMS/MS分析とを短い時間間隔で繰り返すオートMS/MS分析の際に特に有用である。
もちろん、前段四重極3を通過したイオン由来のプロダクトイオンが検出器7に到達するまでの時間は短いものの、時間遅れは必ず生じるから、上記のようなMS分析の制御の下で、予め質量較正や質量分解能の調整を行うことが好ましい。また、ニュートラルロススキャン測定やプリカーサイオンスキャン測定のように前段四重極3の質量走査を伴ったMS/MS分析を実行する際に、上記のようなMS分析の制御の下で予め行った質量較正や分解能調整を利用するとともに同様のスキャン速度で質量走査を行うことにより、高いスループットで分析を行うことができる。
また、上記実施例において、MS分析の際に、イオンガイド5に印加される直流バイアス電圧Vbias2、後段四重極6に印加される直流バイアス電圧Vbias3は質量走査に応じて、つまり、通過しようとするイオンの質量電荷比に応じて変化させるのが好ましい。通常、質量電荷比の大きなイオンは質量電荷比の小さなイオンよりも加速されにくいから、質量電荷比を大きくする方向に質量走査される場合には、それに伴って加速のための電場を強くするように直流バイアス電圧を変化させるとよい。また、測定対象の化合物が既知である場合には、その化合物に応じて、イオンガイド5や後段四重極6への直流バイアス電圧を変更してもよい。
また、上記各実施例は本発明の一例であるから、本発明の趣旨の範囲で適宜に変形、追加、修正を行っても本願請求の範囲に包含されることは明らかである。
1…分析室
2…イオン源
3…前段四重極マスフィルタ
4…コリジョンセル
4a…イオン入射開口
4b…イオン出射開口
5…多重極型イオンガイド
6…後段四重極マスフィルタ
7…検出器
10…制御部
11…Q1電源部
12…q2電源部
13…Q3電源部
14…データ処理部
C…イオン光軸

Claims (2)

  1. 試料をイオン化するイオン源と、該イオン源で生成された各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別するための前段四重極と、イオンを収束させつつ後段に輸送するイオンガイドが内部に配設され、前記プリカーサイオンをCIDガスと衝突させて解離させるコリジョンセルと、その解離により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別するための後段四重極と、該後段四重極を通過したイオンを検出する検出器と、を具備するタンデム四重極型質量分析装置において、
    a)前記前段四重極、前記イオンガイド、及び、前記後段四重極にそれぞれ所定の電圧を印加する電圧印加手段と、
    b)前記コリジョンセル内にCIDガスが存在する状況の下で、前記前段四重極において質量走査を行うべく時間経過に従って変化する高周波電圧及び直流電圧を該前段四重極に印加し、前記コリジョンセル内でイオンを解離させるべく該イオンを加速させるような直流バイアス電圧を前記イオンガイドに印加し、且つ、前記後段四重極において実質的な質量分離を伴わないイオン収束がなされるように前記前段四重極に印加される高周波電圧よりも小さな高周波電圧を該後段四重極に印加するとともに、イオンを加速させるような直流バイアス電圧を該後段四重極に印加するように、前記電圧印加手段を制御する制御手段と、
    c)前記制御手段の制御により前記前段四重極で質量走査が行われるに伴って前記検出器に到達したプロダクトイオンに応じて得られる検出信号に基づいて、前記イオン源で生成されたイオンに対するマススペクトルを作成する処理手段と、
    を備えることを特徴とするタンデム四重極型質量分析装置。
  2. 請求項1に記載のタンデム四重極型質量分析装置であって、
    前記前段四重極で選択されるイオンの質量電荷比に応じて、前記イオンガイドの直流バイアス電圧、前記後段四重極の直流バイアス電圧のいずれか一方又は両方を変化させることを特徴とするタンデム四重極型質量分析装置。
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