JP6345933B2 - プラズマからのイオンビーム引き出し過程のゆらぎに対する信号安定性改善のためにイオン光学系パラメータを最適化する方法 - Google Patents

プラズマからのイオンビーム引き出し過程のゆらぎに対する信号安定性改善のためにイオン光学系パラメータを最適化する方法 Download PDF

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Description

本発明は、プラズマをイオン源として用いる質量分析装置に関し、特にプラズマからの超音速分子ビームの引き込み、イオンビーム引き出し及びイオンビーム伝送過程に関する。
図5は、例示的な誘導結合プラズマ質量分析装置(以下、単に装置ともいう)10の基本的な概念を表す略示図である。図6は、後述されるインタフェース部30とイオンレンズ部50の拡大図である。装置10は、プラズマ22を生成するプラズマトーチ20、プラズマ22に面する位置に置かれるインタフェース部30、当該インタフェース部30の後に置かれるイオンレンズ部50、当該イオンレンズ部50の後に置かれるイオンガイド部70、及びイオンガイド部70の後に置かれるイオン分離部80を有する。尚、イオンガイド部70は装置10に設けられない場合もある。
プラズマトーチ20は、先端近傍に高周波電磁場を発生するためのコイル21を備え、大気圧下に置かれている。コイル21は、図示しないRF電源に接続される。プラズマトーチ20内では、コイル21によって生じる高周波電磁場により、大気圧下において高周波誘導結合プラズマ22が発生する。プラズマトーチ20内において、霧化された図示しない試料が、プラズマトーチ20の前方よりプラズマ22中に導入される(試料の導入の過程)。導入された図示しない試料は、プラズマ22の作用により、蒸発、分解し、大多数の元素の場合、最終的にイオンへと変換される。イオン化された図示しない試料は、プラズマ22に含まれる。また、プラズマトーチ20の内部では後端から先端に向けてガス流が生じているので、プラズマ22はサンプリングコーン31に向かって伸びる。
インタフェース部30には、一般的にサンプリングコーン31及びスキマーコーン33の2つのコーン部材が設けられる。プラズマ22に直接面するサンプリングコーン31のアパーチャ37を通過した一部のプラズマ32は、さらにその後に位置するスキマーコーン33に達する。その後、プラズマ32の一部は、スキマーコーン33に形成されるアパーチャ38を通過し、超音速分子ビームとしてその背後に至る(イオンビームの引き出し過程)。なお、スキマーコーン33を通過し得ない気体分子(中和されたイオンを含む)は、油回転ポンプRPによって、排気口39を介してインタフェース部30から排気される。なお、RPは一般的に油回転ポンプである場合が多いが、他の種類の真空ポンプが使用されている場合もある。また、スキマーコーンの背後にさらなるコーンが使用される場合もある。
イオンレンズ部50には、主として引出電極部を構成する第1電極53及び第2電極54と、イオンレンズを構成する第3電極55及びその後段に位置する第4電極56が設けられる。またその後方に、さらに電極がある場合もある。引出電極部を構成する第1電極53又は第2電極54は、プラズマと異なる十分大きな電位とされるので、プラズマ52から、イオンがイオンビームの形で取り出される。イオンビームは、イオンレンズを介して後段に位置するイオンガイド部70のコリジョン/リアクションセル71内へ導かれる。第1の電極53は、あらゆる電位とすることができるが、典型的には、接地電位とされる場合が多い。なお主なレンズは上記イオンレンズ部に集中するが、イオンガイド部70及びイオン分離部80にもイオンレンズが存在する場合がある。また、イオンレンズ部50、イオンガイド部70およびイオン分離部80にある、イオンビームの軌道に影響を与える電極をまとめてイオン光学系と称する。
イオンガイド部70のコリジョン/リアクションセル71内に導かれたイオンビームは、多重極電極73により生成される電場によって決められる軌道に沿って後段に誘導される。多重極電極73は、例えば、八重極(オクタポール)構造とされる。また、コリジョン/リアクションセル71内には、導入口72から衝突/反応ガスが導入される場合もある。導入されるガスの分子がイオンビームに含まれる種々のイオンと衝突または電荷移動を伴う反応を生じることにより、キャリアガス又は補助ガスの元素を含む、質量スペクトルに干渉を生じるような多原子イオン、即ち干渉イオンが、イオンビームから除去される。導入口72から衝突/反応ガスが導入されない場合には、コリジョン/リアクションセル71はイオンガイドとして働く。
なお、装置10の動作時には、イオンガイド部70は、イオンレンズ部50と共に、ターボ分子ポンプ(TMP1)を用いて排気される。従って、プラズマに含まれていたが、イオンレンズ部50又はイオンガイド部70内で中和された分子、或いはコリジョン/リアクションセル内に導入された衝突・反応ガスの分子は、排気口79から排気される。
コリジョンセル71から取り出されたイオンビームは、イオン分離部80内に導入される。イオン分離部80内には一般に、四重極とされる多重極構造81が設けられており、四重極の多重極構造は一般に、四重極質量分析器または四重極マスフィルタとも呼ばれている(以降、多重極構造81を、質量分析器81と呼ぶ)。質量分析器81によって生じる電場によって、イオンビーム中のイオンは、質量電荷比に基づいて分離される。なお、イオン分離部に四重極以外のイオン分離機構を用いている場合がある。代表的なものに、磁場セクターを用いる磁場型、イオンの飛行時間により分離する飛行時間型、3次元四重極などのイオントラップを用いたイオントラップ型、イオンサイクロトロン共鳴及びフーリエ変換を用いたフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型、電場型フーリエ変換を用いたオービトラップ型がある。さらに、前述の質量分析器を複数直列接続したタンデム型のものもある。続いて、分離されたイオンは、後段のイオン検出器82に導かれて検出される。イオン分離部80も、イオンガイド部70と同様に、ターボ分子ポンプ(TMP2)を用いて排気されており、質量分析器81によって分離された不要なイオン及び他の分子等が、排気口84から排気される。なお、TMP1及びTMP2に関して、ターボ分子ポンプ以外の種類の真空ポンプが使用されている場合もある。
イオン検出器82は、質量分析器81において分離されたイオンを受け取って検出して電気信号に変換し、測定信号として出力する。例えば、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)は、ダイナミックレンジの大きな装置であり、検出される信号は極微量(例えば、0.1cps)から主成分(例えば、1010cps)にまで及ぶ。一般に、検出される信号が低い場合にはイオンカウンティングによる計測が使用され、検出される信号が高い場合にはアナログ計測が使用される。例えば、イオンカウンティングの場合には、イオンが、二次電子増倍管に導入されることにより10から10倍に増幅された電子に変換される。そのような電子を電圧パルスに変換して一定時間計数することにより、イオンカウントが求められる。また、検出される信号の強度が大きい場合、ファラデーカップが用いられる場合もある。上述したような誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)の一例が、特許文献1に開示されている。
上記のような装置10は、システムコントローラ(図示せず)を備えており、プラズマトーチ20を含む試料導入部、インタフェース部30、イオンレンズ部50、イオンガイド部70、及びイオン分離部80は、当該システムコントローラにより制御可能である。また、システムコントローラはワークステーションのようなコンピュータによって制御され得る。
上記のような質量分析装置において、被分析試料として高マトリクス試料を分析する場合がある。高マトリクス試料とは、被分析元素以外に高濃度の金属塩他の物質を含む試料である。代表的な高マトリクス試料として、金属溶解液、非金属物質の溶解液、土壌抽出液、鉱水や海水が挙げられる。例えば、金属溶解液のような高マトリクス試料を分析する場合、上述したサンプリングコーン31及びスキマーコーン33には一般に、単体や塩、酸化物が析出して堆積する。この堆積によって、例えば、サンプリングコーン31及びスキマーコーン33の性状が変化する。そのため、サンプリングコーン31及びスキマーコーン33での超音速分子ビームの生成及び引出電極部でのイオンビーム引き出し過程のゆらぎ又は変動、並びに後段のイオン光学系におけるイオン伝送効率の変動が生じる。そのため、測定条件等を変更しなくても、時間の経過と共に測定信号の感度は一般的に変動する。このような測定信号の感度の変化は信号ドリフトと呼ばれている。
このような信号ドリフトを補正するために、予め分かっている濃度の特定の元素を被分析試料に添加して測定を行い、時間的に変化するこの特定の元素の信号ドリフトの変化率を求めて、当該変化率を用いて分析対象の元素の測定結果を計算的に補正することは一般的に行われている。しかしながら、信号ドリフトの量は、元素によって変化することが多く、このような計算的な補正を行っても十分ではなかった。また、分析手法によっては上記の方法が適用できない場合もあった。
また、このような信号ドリフトを低減するために、プラズマトーチ20のプラズマの温度を上げて試料の分解を促進すること、サンプラーコーン及びスキマーコーンの先端部の温度を高い温度に保って析出量を低減すること、及び試料を希釈する(感度の低下を招く)ことなども行われていた。しかしながら、このようなことを行っても、信号ドリフトの問題に対処するには十分ではなかったり、感度の大幅な低下を招いたりしていた。例えば、特許文献2及び特許文献3には、高マトリクス試料を希釈することが開示されており、特許文献4にはプラズマ温度を制御することが記載されている。
特許第5308641号 特開2008−045901号 特開2008−275372号 特開2008−111744号
従って、本発明の課題は、誘導結合プラズマ質量分析装置において、信号ドリフトの量を低減して信号安定性を改善することである。
本発明の一態様によれば、導入される試料をイオン化するためのプラズマを発生するプラズマ手段と、プラズマの一部を真空中に引き込み超音速分子ビームを生成するインターフェース手段と、真空中に引き込まれたプラズマからイオンをイオンビームとして引き出すための引出電極手段と、イオンビームと光子の分離および後方への伝送を担うイオンレンズ手段と、必要に応じ設置される干渉イオンを除去するためのイオンガイド手段と、イオンを質量電荷比に応じて分離するイオン分離手段と、イオン分離手段により分離されたイオンを検出して検出信号を出力する検出手段とを含む、誘導結合プラズマ質量分析装置において、前記検出信号の安定性を高めるための方法が提供される。その方法は、1)少なくとも1種類の元素を含む擬似試料(この元素は試料の導入の過程で混合してもよい)を準備し、2)前記擬似試料を前記誘導結合プラズマ質量分析装置に導入して、時間経過とともに前記引出電極手段、前記イオンレンズ手段、前記イオンガイド手段及び前記イオン分離手段からなるイオン光学系に印加される電圧の少なくとも1つを変更しながら、前記元素のイオンを検出し、3)各電圧において前記検出信号が前記検出の間に変化する変化量を求め、4)前記求めた変化量に基づいて、前記検出信号が最も安定する電圧を選択して当該電圧を試料の分析のために使用することを含む。
試料は、高マトリクス試料とすることができる。擬似試料は、当該試料と類似または類似しない組成の高マトリクス試料とすることができ、複数の異なる種類の擬似試料とすることができる。擬似試料を測定する際には、検出信号の変化を促進するためにプラズマ手段の動作条件をはじめ、インターフェース手段の動作条件、疑似試料の濃度、導入量を変更することができる。変化量を求めることは、統計学的処理を用いることを含む。統計学的処理は線形フィッティングである。元素の数は複数であり、変化量は各元素の変化量の平均として求められる、又は各元素間の変化量の差の平均として求められ得る。引出電極手段は、第1電極及び第2電極を含むことができる。イオンレンズ手段は、第3電極及び第4電極、またはそれに続く電極を含むことができる。イオンガイド手段は、多重極電極およびその周囲に前後に配置されている電極を含むことができる。イオン分離手段は、多重極電極及びその前後に配置されている電極を含むことができる。上記電圧は、第1電極、第2電極、第3電極、第4電極、及びそれに続く電極を含む、イオン光学系のそれぞれに印加される電圧とすることができる。
本発明の別の態様によれば、導入される試料をイオン化するためのプラズマを発生するプラズマ手段と、プラズマを真空中に引き込み超音速分子ビームを生成するインターフェース手段と、真空中に引き込まれたプラズマからイオンをイオンビームとして引き出すための引出電極手段と、イオンビームと光子の分離および後方への伝送を担うイオンレンズ手段と、必要に応じ設置される干渉イオンを除去するためのイオンガイド手段と、イオンを質量電荷比に応じて分離するイオン分離手段と、イオン分離手段により分離されたイオンを検出して検出信号を出力する検出手段を含む、誘導結合プラズマ質量分析装置を作動させるために用いられるコンピュータプログラムとして実現することができ、1)誘導結合プラズマ質量分析装置に導入される少なくとも1種類の元素を含む疑似試料について、時間経過とともに前記引出電極手段、前記イオンレンズ手段、前記イオンガイド手段及び前記イオン分離手段からなるイオン光学系に印加される電圧の少なくとも1つを変更しながら、前記元素のイオンを検出する手順、2)各電圧において前記検出信号が前記検出の間に変化する変化量を求める手順、3)前記求めた変化量に基づいて、前記検出信号が最も安定する電圧を選択して、当該電圧を試料の分析のために誘導結合プラズマ質量分析装置に設定する手順をコンピュータに実行させる、コンピュータプログラムとして実現される。
本発明によれば、引出電極部、イオンレンズ部、イオンガイド部、及びイオン分離部の各電極に印加される電圧を最適にすることにより、信号安定性が改善される。
例示的な擬似試料の測定結果としての感度(y)と時間(x)の関係を、1次関数として表した例を示す図である。 本発明に従って、システムコントローラの制御を示す流れ図である。 従来技術による複数の元素に関する測定結果の感度−対−時間の関係を表すグラフである。 本発明を適用した場合の複数の元素に関する測定結果の感度−対−時間の関係を表すグラフである。 誘導結合プラズマ質量分析装置の基本的な概念を表す略示図である。 図5の装置のインタフェース部とイオンレンズ部の拡大図である。
背景技術で述べられたように、図5に示された誘導結合プラズマ質量分析装置10において、被分析試料として高マトリクス試料(例えば、金属溶解液など)を分析する場合には、信号ドリフトが生じるという問題があった。
誘導結合プラズマ質量分析装置では一般に、引出電極部、イオンレンズ部、イオンガイド部およびイオン分離部の電極を含むイオン光学系の電極電圧は、装置の感度を最大にすること及びバックグラウンドノイズを最小にすることを目的として調整されている。一方で、このイオン光学系の電極電圧は、イオンビームの引き出し過程及びイオンの伝送効率等に影響を与える。本出願人は、イオンビーム引き出し過程のゆらぎ又は変動、並びに後段のイオン光学系におけるイオン伝送効率の変動に対処することにより、信号ドリフトを抑制する、即ちイオン検出器から出力される検出信号の安定性を高めることを見出した。特に、本出願人は、イオン光学系の電極の電圧を最適化することにより、信号ドリフトの問題に対処できることを見出した。
図5に示された誘導結合プラズマ質量分析装置において、引出電極部は、第1電極53及び第2電極54により構成され、イオンレンズ部は第3電極55及びその後段に位置する第4電極56により構成されている。しかしながら、このような引出電極部及びイオンレンズの電極の構成は、このような構成に限られているわけではないことに留意されたい。例えば、引出電極部は、1つの電極であったり3つ以上の電極により構成される場合もある。また、イオンレンズに関しても、1つの電極であったり3つ以上の電極を備える場合もある。また、他のイオン光学系の電極が同様の役割を担っている場合もある。本明細書では、例示のために、引出電極部が、第1電極53及び第2電極54により構成され、イオンレンズ部が第3電極55及び第4電極56により構成されたものを例として説明を行う。
引出電極部の第1電極53及び第2電極54、並びにイオンレンズ部の第3電極55及び第4電極56をはじめとするイオン光学系には、様々な電圧を印加することができる。本出願人は、第1電極53、第2電極54、第3電極55及び第4電極56を含むイオン光学系に印加する電圧に関して、様々な電圧の組み合わせを用いて高マトリクス試料を測定することにより、装置の感度を大幅に下げることなく、信号ドリフトを低く抑えることができる電圧の組み合わせがあることを実験的に発見した。例えば、このような電圧の組み合わせの一例は、第1電極53は0V、第2電極54は−250V、第3電極55は7.5V、第4電極56は−100Vである。しかしながら、分析対象物、分析条件、分析対象となる元素に応じて、信号ドリフトも変化し、同じ装置であってもその装置が使用される環境に応じて信号ドリフトも変化するため、分析を行うために最適な電圧の組み合わせを選択することは容易ではない。
本発明では、高マトリクス試料の分析を行う前の準備段階において、擬似試料を使用して信号の変化を測定することにより、引出電極部、イオンレンズ部、イオンガイド部及びイオン分離部の電極を含むイオン光学系の電圧を最適にする。擬似試料は信号強度の変化を引き起こす高濃度成分と、信号強度を観測するための少なくとも1種類の元素、例えば3種類の元素を含むような試料とすることができる。また、この擬似試料は、被分析試料と類似した組成の高マトリクス試料または大きな信号変化を起こす高マトリクス試料とすることができ、擬似試料は装置を調整するためのチューニング液または装置を洗浄するためのリンス液などとすることもできる。誘導結合プラズマ質量分析装置には複数の種類の擬似試料を順次に導入することができる。このような擬似試料を誘導結合プラズマ質量分析装置に一定時間導入して測定を行う。ここで、時間の経過(例えば、5秒)とともに引出電極部の第1電極53と第2電極54、及びイオンレンズ部の第3電極55と第4電極56をはじめとするイオン光学系に印加される各電圧を変更しながら、擬似試料を測定する。ここで使用される電圧は、上記で実験的に求められた電圧の組み合わせ(以降、電圧組み合わせと称する)であり、2種類以上の電圧組み合わせである。1つの電圧組み合わせを用いて、所定時間の間に擬似試料を測定し、少なくとも1種類の元素、好適には3種類の元素に対して、測定結果を取得する。その測定結果について所定時間の間に変化する変化量を計算により求める。この変化量の計算方法は後述する。そして、このような測定を全ての電圧組み合わせについて行い、各電圧組み合わせに対する変化量を求める。この求められた変化量の中で、最も少ない変化量に対応する電圧組み合わせを選択する。この選択された電圧組み合わせを、引出電極部とイオンレンズ部をはじめとするイオン光学系の各電極に印加する電圧として使用することにより、試料の分析を行う。従って、このような電圧組み合わせを用いることにより、信号ドリフトの量が低減されて信号安定性が改善される。なお、このような本発明の方法は、コンピュータで実行されるプログラムとして実施可能である。例えば、図4の装置10のシステムコントローラ(図示せず)は、上記の電圧組み合わせをテーブルとしてコンピュータ内のメモリ内に格納することができる。
本発明において、上述したように少なくとも1種類の元素、好適には3種類の元素に対して、変化量を求めている。この変化量については、同じ電圧組み合わせを用いても、元素によって変わることが判明している。例えば、Aという元素は、変化量が少ないけれども、Bという元素は、A元素に比べて変化量が大きい等である。本発明では、例えば3種類の元素間で変化量の差が少ない電圧組み合わせを選択することができる。そのような電圧組み合わせを用いて被分析試料を測定することにより、信号ドリフトの補正を計算的に補正した場合でも、測定結果の精度及び確度を向上できる。
背景技術で説明したように、信号ドリフトの原因は主に、サンプリングコーン31及びスキマーコーン33に対して析出物が堆積することである。上記のような擬似試料の測定時間を短縮する、即ち変化量の変化する速度を促進するためには、サンプリングコーン31及びスキマーコーン33に対して析出物が堆積しやすくすることである。そこで、本発明では、誘導結合プラズマ手段の動作条件(例えば、プラズマの温度)をはじめ、インターフェース手段の動作条件(例えば、サンプリングコーン及びスキマーコーンの温度)、疑似試料の濃度、導入量の制御も行い、擬似試料の測定時間を短縮する。
本発明が適用される質量分析装置において、その装置のシステムコントローラは、図2に示された流れ図200に従って、例えば以下のような制御を行う。システムコントローラは、装置に導入される擬似試料(単数または複数)について、時間経過と共に、メモリに格納された電圧テーブルから電圧組み合わせを順次読み出して、引出電極部及びイオン光学系の各電極に印加する各電圧を、読み出した電圧組み合わせの電圧に変更しながら、擬似試料の元素(単数又は複数)のイオンを測定する。この測定において、システムコントローラは、必要に応じてプラズマ手段の動作条件(例えば、プラズマの温度)をはじめ、インターフェース手段の動作条件(例えば、サンプリングコーン及びスキマーコーンの温度)、擬似試料の濃度、導入量を変更する(ステップ210)。システムコントローラは、元素に関して、各電圧組み合わせにおいて元素の測定の間に測定信号が変化する変化量を求めて、必要に応じてメモリに格納する(ステップ220)。システムコントローラは、求められた変化量の中から、測定信号が最も安定する電圧、例えば変化量が最も小さい電圧、複数の元素の変化量の平均が最も小さい電圧、又は複数の元素間の変化量の差の平均が最も小さい電圧組み合わせを選択する(ステップ230)。選択した電圧組み合わせを引出電極部およびイオン光学系の各電極に印加する電圧として使用する(ステップ240)。
次に変化量を求めるための計算方法について説明する。なお、ここで計算する変化量は2つあり、それぞれ用途に応じて選択する。絶対的な感度変化を重視し、特定の一つ以上の元素の信号変動を抑制したい場合は変化量の大きさそのものを評価し、幅広い元素に対して同様の挙動を期待する場合は各元素における変化量の差の大きさを評価する。いずれの場合も、信号変化を元素毎の角度として表した後、計算される。3種類の元素を、例えば元素1、元素2、元素3とする。このような擬似試料を用いて所定時間の間に測定を行った場合の測定結果としての感度(y)と時間(x)の関係を、線形フィッテイングを用いて1次関数として表したものが図1である。尚、本明細書では、統計学的処理として線形フィッテイングを用いた一例に関して説明されるが、非線形または他のフィッテイング及びそれに類する統計学的処理を用いて測定結果の関数を求めて、最終的に各元素における変化量の差の大きさを評価することができる。ここで、元素1は、yに対応し、元素2はyに対応し、元素3はyに対応する。yからyのそれぞれを式で表すと、
=ax+b
=ax+b
=ax+b
となり、aからa及びbからbは定数である。本発明では、変化量は、図1に示した角度α、α、αのような角度として求める。即ち、上記1次関数の傾きを、x軸となす角度に変換する。このような角度は、例えば、以下の式により計算され得る。即ち、
α=tan−1
α=tan−1
α=tan−1
1つ目は擬似試料(単数または複数)の導入中において、信号変化の大きさを取り扱う。元素1、元素2及び元素3間の変化量が少ない電圧組み合わせを選択するために、変化量の大きさの平均値を示すパラメータβを以下の計算により求める。(3元素の場合)
β=1/3(|α+α+α|)
以上のβが最小となる電圧組み合わせを採用する。
また、元素1、元素2及び元素3間の変化量の差が少ない電圧組み合わせを選択するために、変化量の差の大きさの平均値を示すパラメータβを以下の計算により求める。(3元素の場合)
β=1/3(|α−α|+|α−α|+|α−α|)
以上のβが最小となる電圧組み合わせを採用する。
本発明の効果について、アジレント・テクノロジー社のICP質量分析装置7700xを用いて、内部標準として添加された元素を含む試料を測定することにより検証を行った。図3は、本発明を適用する前の測定結果を示し、図4は本発明を適用した場合の測定結果を示す。図3及び図4において、縦軸は感度の比率を表し、横軸は時間を表している。図3では、例えばLi元素は、他の元素と比べて、時間の経過と共に感度の値が大きくずれていることが看取される。一方で、本発明を適用した図4では、Li元素の感度は、最初の段階では他の元素と比べてやや感度のずれがあるけれども、時間が経過するにつれて、Li元素の感度は他の元素とほぼ同様の動きをしており、元素間の信号変動が抑制されたことが証明された。
10 誘導結合プラズマ質量分析装置
30 インタフェース部
50 イオンレンズ部
53、54、55、56 電極

Claims (16)

  1. 導入される試料をイオン化するためのプラズマを発生するプラズマ手段と、プラズマを真空中に引き込み超音速分子ビームを生成するインターフェース手段と、真空中に引き込まれたプラズマからイオンをイオンビームとして引き出すための引出電極手段と、イオンビームと光子の分離および後方への伝送を担うイオンレンズ手段と、イオンを質量電荷比に応じて分離するイオン分離手段と、イオン分離手段により分離されたイオンを検出して検出信号を出力する検出手段を含む、誘導結合プラズマ質量分析装置において、前記検出信号の安定性を高めるための方法であって、
    1)少なくとも1種類の元素を含む擬似試料を準備し、
    2)前記似試料を前記誘導結合プラズマ質量分析装置に導入して、時間経過とともに前記引出電極手段、前記イオンレンズ手段、及び前記イオン分離手段からなるイオン光学系に印加される電圧の少なくとも1つを変更しながら、前記元素のイオンを検出し、
    3)各電圧において前記検出の間に変化する前記検出信号の変化量を求め、
    4)前記求めた変化量に基づいて、前記検出信号が最も安定する電圧を選択して、当該電圧を試料の分析のために使用することを含む、方法。
  2. 前記イオン光学系が、干渉イオンを除去するためのイオンガイド手段を更に含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記試料および前記擬似試料の一方または双方が、高マトリクス試料である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記擬似試料が、複数の異なる種類の擬似試料からなる、請求項1から3の何れかに記載の方法。
  5. 前記元素のイオンを検出することが、前記検出信号の変化を促進するために前記プラズマ手段及びインターフェース手段の動作条件を変更することを含む、請求項1から4の何れかに記載の方法。
  6. 前記変化量を求めることが、統計学的処理を用いることを含む、請求項1から5の何れかに記載の方法。
  7. 前記統計学的処理が線形フィッテイングである、請求項6に記載の方法。
  8. 前記元素の数が、複数であり、前記変化量は、各元素の変化量の平均として又は各元素間の変化量の差の平均として求められる、請求項1から7の何れかに記載の方法。
  9. 前記引出電極手段が、第1電極及び第2電極を含む、請求項1からの何れかに記載の方法。
  10. 前記イオンレンズ手段が、第3電極及び第4電極を含む、請求項に記載の方法。
  11. 前記電圧は、前記第1から第4電極のそれぞれに印加される電圧である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記電極のそれぞれに印加される電圧が複数の電圧組み合わせとして構成されており、前記電圧の少なくとも1つを変更することは、電圧組み合わせを変更することである、請求項11に記載の方法。
  13. 導入される試料をイオン化するためのプラズマを発生するプラズマ手段と、プラズマを真空中に引き込み超音速分子ビームを生成するインターフェース手段と、真空中に引き込まれたプラズマからイオンをイオンビームとして引き出すための引出電極手段と、イオンビームと光子の分離および後方への伝送を担うイオンレンズ手段と、イオンを質量電荷比に応じて分離するイオン分離手段と、イオン分離手段により分離されたイオンを検出して検出信号を出力する検出手段を含む、誘導結合プラズマ質量分析装置を作動させるために用いられるコンピュータプログラムであって、
    1)前記誘導結合プラズマ質量分析装置に導入される少なくとも1種類の元素を含む似試料について、時間経過とともに前記引出電極手段、前記イオンレンズ手段、及び前記イオン分離手段からなるイオン光学系に印加される電圧の少なくとも1つを変更しながら、前記元素のイオンを検出する手順、
    2)各電圧において前記検出の間に変化する前記検出信号の変化量を求める手順、
    3)前記求めた変化量に基づいて、前記検出信号が最も安定する電圧を選択して、当該電圧を試料の分析のために前記誘導結合プラズマ質量分析装置に設定する手順をコンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。
  14. 前記イオン光学系が、干渉イオンを除去するためのイオンガイド手段を更に含む、請求項13に記載のコンピュータプログラム。
  15. 前記元素のイオンを検出する手順が、前記検出信号の変化を促進するために前記プラズマ手段及びインターフェース手段の動作条件を変更する手順を含む、請求項13又は14に記載のコンピュータプログラム。
  16. 前記擬似試料が、複数の異なる種類の擬似試料からなる、請求項13から15の何れかに記載のコンピュータプログラム。
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