JP6416865B2 - 真菌増殖の阻害または低減 - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2013年3月14日に出願された米国仮出願第61/783,395号及び2013年3月14日に出願された米国仮出願第61/783,573号の利益を主張し、これらは、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
真菌は、生命の多数の異なる面に有害であり得る。例えば、真菌(例えば、白カビまたはカビ)は、例えば、物質の分解/劣化を通じて、汚染を通じて、物質、例えば、木材を望ましくない外観にすることによって、または望ましくない毒素の生成を通じて、美的外観またはヒトの生活環境に悪い影響を及ぼし得る。別の例として、果実または野菜の全収穫は、真菌の増殖によって、例えば、汚染及び/または望ましくない毒素の生成を通じて、全滅する可能性があるため、真菌は、果実及び野菜に対して有害であり得る。
多数の真菌はエチレンに応答し、胞子の発芽は真菌のエチレン応答機構であることが多い。一部の真菌は、エチレンを生成することが知られているが、はるかに多くの真菌は、エチレンを合成しないにもかかわらず、エチレンに応答し得る。真菌におけるエチレンに対する応答またはエチレンの生成を標的とする方法は、したがって、真菌増殖の阻害または低減の標的となり得る。
真菌増殖を阻害または低減するための方法及び組成物が本明細書に提供される。本方法は、植物または植物部位を、その場所における真菌増殖を阻害または低減させるのに十分な量で、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、1つ以上の細菌から単離された酵素抽出物、またはこれらの任意の組み合わせに曝露することを含む。1つ以上の細菌は、ロドコッカス属、ブレビバクテリウム属、シュードノカルジア属、ノカルジア属、シュードモナス属、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。1つ以上の酵素は、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、モノオキシゲナーゼ、ジオキシゲナーゼ、シアニダーゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
1つ以上の態様の詳細は、添付の図面及び以下の発明を実施するための形態に記載される。他の特徴、目的、及び利点は、発明を実施するための形態及び図面から、かつ特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
6日目における、市販のモモ(抗菌剤及びワックス処理したもの)(図1A)と、触媒を含有する包装紙中に配置した未処理のモモ(抗菌剤またはワックスコーティングを含まない)(図1B)との間の比較を示す。触媒で処理したモモは、目に見えるカビの増殖がなかったが、抗菌剤で処理したモモは、著しいカビの増殖を示した。 選択された条件下で増殖させたR.ロドクラウス細胞へのクラドスポリウム種の胞子の曝露を示す。図2A1/2B1は、クラドスポリウム種の所定数の胞子を0.2ミクロンのフィルター上で保持し、真菌の胞子を含有するフィルターを、次いで、次のように種々の培地上に配置したときの結果を示す:ロドコッカスが存在しない真菌増殖培地(2A1)及びロドコッカス細胞を含有する熟成遅延のための培地(2B1)上のクラドスポリウム種の胞子;図2A2/2B2は、ロドコッカスが存在しない真菌胞子回収培地(2A2)及びロドコッカス細胞を含有する部分的に誘導された培地(2B2)上のクラドスポリウム種の胞子を含有するフィルターを示し、図2A3/2B3は、ロドコッカスが存在しないロドコッカス増殖培地(2A3)及びロドコッカスが存在するロドコッカスを部分的に誘導する同じ増殖培地(2B3)上のクラドスポリウム種の胞子を含有するフィルターを示す。誘導されたR.ロドクラウスDAP 96253細胞は、クラドスポリウム種の胞子の発芽を明らかに阻害した。 ロドコッカスに6日間曝露した後の真菌阻害を示す。ロドコッカスの増殖を支持する培地が選択されたセクターで使用され、一方で真菌増殖を支持する培地が他のセクターに配置されるように、セクター分割されたプレートを使用した。図3A及び3Bでは、ロドコッカス細胞を誘導する増殖培地を含有するセクターに、ロドコッカスを配置した。他のセクターでは、所定数のフザリウム種胞子を、フザリウムの胞子発芽及び菌糸体増殖を支持する培地に配置した。フザリウムの胞子発芽は、6日後に完全に阻害された。図3C及び3Dでは、増殖を支持するがロドコッカス細胞を誘導しない培地に、ロドコッカス細胞を配置した。図3A及び3Bでは、フザリウム胞子を、胞子発芽及び菌糸体の増殖を支持する培地上に配置した。誘導されていないロドコッカス細胞はフザリウムの胞子発芽及び真菌増殖を阻害しなかったことが、図3C及び3Dから明らかである。フザリウムの胞子を、全てのプレートの別個の仕切りのSAB培地上に接種した。 フザリウム種の胞子形成に対するロドコッカス細胞の影響を示す。図4Aは、リン酸緩衝液中で誘導された細胞に曝露されたフザリウムの増殖を示す。図4Bは、誘導されていないロドコッカスのための非誘導増殖培地である対照を示す。図4C及び4Dは、リン酸緩衝液中で部分的に誘導されたロドコッカスに曝露されたフザリウムの増殖を示す。完全に誘導されたロドコッカス細胞は、フザリウム種の増殖を阻害した。 真菌増殖を阻害または遅延させるための3層装置の非限定的な図を示す。外層は、装置に構造的完全性を提供する。本明細書デイカに定義されるような触媒層は、本明細書に開示される酵素のうちの1つ以上または1つ以上の細菌を含み、外層の間に位置する。 図6A〜6Cは、真菌増殖を阻害または遅延させるための種々の装置の非限定的な図を提供する。これらの装置は、触媒層、構造的完全性を提供することを目的とする1つ以上の層、及び装置の使用前に取り外しされることを目的とする、触媒層、1つ以上の層を備える。これらの層のうちの1つ以上の取り外しは、例えば、別の物理的構造に、装置の取り付けのための接着剤を曝露し得る。 図7A及び7Bは、真菌増殖を阻害または遅延させるための装置の非限定的な図を提供する。装置は、フィルムの層上に固定化され、物理的構造(例えば、果実の保存/輸送に好適な箱)に取り付けられた触媒を含む。 真菌増殖を阻害または遅延させるための装置の非限定的な図を提供する。装置は、以下に定義されるように、1つ以上の触媒モジュール要素の挿入及び交換を可能にする、スロット付きチャンバ構造を備える。物理的構造の外層は、空気が触媒に流入することを可能にする材料からなってもよい。 15℃で、対照の発芽と、胞子をR.ロドクラウスDAP 96253の誘導されていない細胞及び誘導された細胞に曝露したG.デストラクタンス胞子の増殖との比較である。 4℃で、対照の発芽と、胞子をR.ロドクラウスDAP 96253の誘導されていない細胞及び誘導された細胞に曝露したG.デストラクタンス胞子の増殖との比較である。 4℃で3週間保存した対照のモモを示す。 4℃で3週間保存され、次いで、7日間ロドコッカス触媒に曝露した果実を示す。ロドコッカス細胞は、コバルト、尿素、及びアスパラギンを有する培地で増殖させた。 4℃で3週間保存され、次いで、7日間ロドコッカス触媒に曝露した果実を示す。ロドコッカス細胞は、コバルト及び尿素を有する培地で増殖させた。 4℃で3週間保存され、次いで、7日間ロドコッカス触媒に曝露した果実を示す。A−急冷障害を示す対照、B−コバルト及び尿素で誘導された細胞に曝露したもの、C−コバルト、尿素、及びアスパラギンで誘導された細胞に曝露したもの、 6.1℃で7日間保持され、次いで室温で3日間置かれた未処理対照のモモを示す。 6.1℃で7日間保持され、次いで室温で3日間置かれた、市販の抗菌剤で処理した対照のモモを示す。 6.1℃で7日間保持され、次いで室温で3日間置かれた、触媒に近接して配置されたモモを示す。 6.1℃で7日間保持され、次いで室温で3日間置かれた、市販の抗菌剤で処理され、触媒に近接して配置されたモモを示す。 フザリウムの胞子形成に対するロドコッカス細胞の影響を示す、図19A及び19Bは、対照である。図19C及び19Dは、それぞれ、誘導されていない及びコバルトで誘導された真菌増殖及びロドコッカスを示す。 フザリウムの胞子形成に対するロドコッカス細胞の効果を示す、図20A及び図20Bは対照である。図20C及び20Dは、それぞれ、尿素及びコバルト尿素で誘導されたロドコッカスを示す。真菌増殖は、阻害される。 6日後のロドコッカスによる真菌阻害を示す。ロドコッカスを、尿素(図21A)、コバルト及び尿素(図21B)、コバルトのみ(図21C)を補充したか、または補充物質なし(図21D)の培地で増殖させた。同じ濃度のフザリウム胞子を、全てのプレートの別個の仕切りにおいてSAB培地上に接種した。 フザリウム胞子形成に対するシアニド生成の影響を示す。図22Aは、フザリウムのみを接種した対照である。図22Bは、フザリウムとは別個の区画に接種されたシュードモナス・エルギノーザ(GSU3)を示し、ピコリン酸塩紙は、シアニド生成の陽性の色変化を示す。
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示していない限り、複数の指示対象を含む。
本明細書全体を通して、用語「含む」またはその文法上の変化形は、記載される要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群の包含を暗示するが、任意の他の要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群の排除を暗示するものではないことが理解される。
本開示の組成物、装置、及び方法は、1つ以上の細菌が、真菌増殖を阻害または低減させることができるという意外な発見から生じる。任意で、細菌は、真菌増殖を阻害または低減させることができる1つ以上の酵素を生成するように誘導される。任意で、本明細書に記載されるように、1つ以上の酵素の特異的な酵素活性は、真菌増殖を阻害または低減することができる。全体を通して使用されるとき、真菌増殖には、胞子発芽、菌糸体の増殖及び発達、ならびに真菌上の子実体構造の発達及び形成を含むがこれらに限定されない、真菌の生活環の全ての段階が含まれる。
真菌増殖を阻害または低減するための方法及び組成物が本明細書に提供される。本方法は、ある場所を、1つ以上の細菌を含む組成物に曝露することを含み、1つ以上の細菌は、ロドコッカス属、ブレビバクテリウム属、シュードノカルジア属、ノカルジア属、シュードモナス属、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、1つ以上の細菌は、ある場所での真菌増殖を阻害または低減させるのに十分な量で提供される。任意で、細菌は、1つ以上の酵素を生成するように誘導される。いくつかの実施形態では、本方法は、ある場所を、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、モノオキシゲナーゼ、ジオキシゲナーゼ、シアニダーゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の酵素を含む組成物に曝露することを含み、これらの酵素は、その場所での真菌増殖を阻害または低減させるのに十分な量で提供される。
ある場所における真菌増殖を阻害または低減させるための方法及び組成物が図示される。代替または追加として、本方法及び組成物は、真菌による毒素の発生及び放出を阻害または低減させる。本明細書に定義されるように、「真菌増殖を阻害または低減させる」及びその文法上の変化形は、真菌増殖の任意の遅延(slowing)、遮断、抑制、遅延(delay)、または阻害を指す。真菌増殖の阻害または低減は、例えば、胞子発芽、菌糸体発生、ならびに/または真菌上の子実体構造の発生及び/もしくは形成を含み得る、静止状態の真菌細胞の増殖を阻害または低減させることを含み得る。真菌増殖は、例えば、カビ、酵母、白カビ、黒穂病を引き起こす真菌、サビ病を引き起こす真菌、植物の病害を引き起こす真菌、及び動物の疾患を引き起こす真菌からなる群から選択される真菌によってもたらされ得る。任意で、真菌は、トリコデルマ種、クロコウジカビ、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatis)、アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)、エピコッカム・ニグラム(Epicoccum nigrum)、ピキア・パストリス、ジオマイセス・デストラクタンス(Geomyces destructans)、ジオマイセス・アスペルラツス(Geomyces asperulatus)、及びジオマイセス・パノラム(Geomyces pannorum)からなる群から選択される。一例として、真菌増殖の阻害または低減は、真菌増殖し易い任意の物体(例えば、無機表面または医療デバイス)上での真菌の増殖の遅延または阻害をもたらし得る。別の例として、真菌増殖の阻害または低減は、植物または植物部位上での真菌の増殖の遅延または阻害をもたらし得る。
本明細書に定義されるように、ある場所は、真菌が増殖し得るあらゆる場所、例えば、真菌増殖し易い場所である。ある場所は、物体(例えば、無生物物体)または物質であり得る。物体または物質は、カウンタートップ、バスタブまたはシャワー(もしくは湿気に曝露される他の表面)、ダンボール箱、無機表面(例えば、ガラス表面、タイル表面、金属表面、木材表面)、包装紙、プラスチック包装、ワックス紙、金属製の缶、シートロック、壁板、木材、医療デバイス、及び外科用包帯からなる群から選択され得る。場所は、例えば、植物または植物部位を含み得る。一例として、本明細書に記載される方法及び組成物は、植物もしくは植物部位における、またはその付近での真菌増殖を阻害または低減させ得る。
本明細書で使用される場合、「植物」または「植物部位」は、無傷植物及び植物の任意の部位を含むように広く定義される。任意で、植物または植物部位は消費可能である。植物または植物部位の例としては、果実、野菜、花、種子、葉、堅果、胚、花粉、胚珠、枝、仁、穂、穂軸、穀、柄、根、根端、葯、苗などを含むがこれらに限定されない。一実施形態では、植物部位は、果実、野菜、または花(切り花を含む)である。任意で、植物または植物部位は、消費可能な生成物または食物、例えば、種子、例えば、堅果、豆果、穀実、もしくはコーヒー、果実、または野菜である。任意で、植物または植物部位は、間接的または直接的に消費可能である。本明細書で使用される場合、間接的に消費可能な植物または植物部位は、消費可能な生成物または食物を作製するために使用される植物部位、例えば、コーヒー種子または油料種子を指す。
ある特定の実施形態では、果実及び/または野菜における真菌増殖を阻害または低減させるための方法及び組成物が提供される。「果実」または「野菜」としては、リンゴ、アプリコット、アスパラガス、アボカド、バナナ、マメ、キャベツ、カンタロープ、キュウリ、ナス、グレープフルーツ、ブドウ、ハネデューメロン、レモン、レタス、ライマメ、ライム、マンゴー、ネクタリン、オクラ、ブロッコリー、オレンジ、パパイヤ、モモ、ペッパー、パイナップル、ジャガイモ、カボチャ、大豆、ホウレン草、夏カボチャ、サツマイモ、トマト、スイカ、冬カボチャ、及びズッキーニが挙げられ得るがこれらに限定されない。
ある特定の実施形態では、花における真菌増殖を阻害または低減させるための方法及び組成物が提供される。「花」としては、カーネーション、バラ、ラン、マツバボタン(portulca)、ゼニアオイ、ベゴニア、アンスリウム、カトレア、及びポインセチアが挙げられ得るがこれらに限定されない。
ある特定の実施形態では、穀物における真菌増殖を阻害または低減させるための方法及び組成物が提供される。任意で、真菌増殖は、胞子発芽の阻害によって阻害または低減される。穀物は、ヒトの食物または動物の餌のために収穫された種子(莢または果実層が付着しているか、もしくはしていない)である。任意で、穀物は、穀実粒、デンプン粒、穀実用豆果、または油料種子である。穀実粒としては、トウモロコシ(maize)もしくはトウモロコシ(corn)、モロコシ、フォニオ、キビ、例えば、トウジンキビ、プロソミレット(proso millet)、シコクビエ、アワ、ヒエ、コドミレット(kodo millet)、ハトムギ(Job’s tears)、コメ、ライ麦、大麦、オート麦、ライコムギ、ワイルドライス、及びテフが挙げられるがこれらに限定されない。デンプン粒には、アマランス、キノア、及びソバが挙げられるがこれらに限定されない。穀実用豆果には、大豆、インゲンマメ、ヒヨコマメ、ライマメ、サヤマメ、キマメ、レンズマメ、サヤエンドウもしくはエンドウ、ハウチワマメ、緑豆、ソラマメ、及びピーナツが挙げられるがこれらに限定されない。油料種子には、ナタネ(キャノーラを含む)、カラシナ、黒ガラシ、ヒマワリ種子、ベニバナ、亜麻仁(亜麻ファミリー)、麻の実(麻ファミリー)、及び芥子粒(芥子ファミリー)が挙げられるがこれらに限定されない。任意で、1つ以上の細菌または1つ以上の酵素を含む組成物は、穀物の収穫前または最中に田畑の穀物に曝露される。任意で、組成物は、植え付けの前に穀物または他の種子に適用、例えば、コーティングされる。
ある特定の実施形態では、真菌増殖を阻害または低減させる方法及び組成物は、場所を、ロドコッカス属、ブレビバクテリウム属、シュードモナス属、ノカルジア属、シュードノカルジア属、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の細菌に曝露することを含む。1つ以上の細菌は、例えば、ロドコッカス属を含み得る。ロドコッカス属は、例えば、ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253株、ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96622株、ロドコッカス・エリスロポリス、またはこれらの組み合わせを含み得る。任意で、組成物は、ロドコッカス・ロドクラウス及びロドコッカス・エリスロポリスを含む。例示的な生物としては、シュードモナス・クロロラフィス(ATCC43051)(グラム陰性)、シュードモナス・クロロラフィス(ATCC13985)(グラム陰性)、ロドコッカス・エリスロポリス(ATCC47072)(グラム陽性)、及びブレビバクテリウム・ケトグルタミカム(ATCC21533)(グラム陽性)が挙げられるがこれらに限定されない。ノカルジア及びシュードノカルジア種の例は、欧州特許第0790310号、Collins and Knowles J.Gen.Microbiol.129:711−718(1983)、Harper Biochem.J.165:309−319(1977)、Harper Int.J.Biochem.17:677−683(1985)、Linton and Knowles J Gen.Microbiol.132:1493−1501(1986)、及びYamaki et al.,J.Ferm.Bioeng.83:474−477(1997)に記載されている。
いくつかの実施形態では、1つ以上の細菌は、ロドコッカス属、ブレビバクテリウム・ケトグルタミカム、及びシュードモナス・クロロラフィスからなる群から選択されるが、場所に曝露されると真菌増殖を阻害または低減させる任意の細菌が、本方法で使用され得る。例えば、ノカルジア属に属する細菌(日本特許出願第54−129190号を参照されたい)、ロドコッカス(日本特許出願第2−470号を参照されたい)、リゾビウム(日本特許出願第5−236977号を参照されたい)、クレブシエラ(日本特許出願第5−30982号)、アエロモナス(日本特許出願第5−30983号)、アグロバクテリウム(日本特許出願第8−154691号)、バチルス(日本特許出願第8−187092号)、シュードノカルジア(日本特許出願第8−56684号)、バークホルデリア、コリネバクテリア、及びシュードモナスが、使用され得る細菌の限定されない例である。所与の属内の全ての種が同じ種類の酵素活性及び/または生成を示すわけではない。したがって、所望の活性を示すことが可能な株を含むが、所望の活性を自然に示さない1つ以上の株、またはこの活性を示す種と同じ培地上で増殖されるとき、活性を示さない1つ以上の株を有することが概して既知の属を有することが可能である。したがって、宿主微生物は、所望の活性を有することが特に既知ではないが、所望の活性を生成することが可能な特定の株を有することが既知の属からの細菌株を含むことができる。そのような株は、所望の活性を引き起こすのに有用な1つ以上の遺伝子をそこに移動することができる。そのような株の限定されない例としては、ロドコッカス・エクイ及びロドドッカス・グロベルルス(Rhododoccus globerulus)PWD1が挙げられる。
さらに、細菌の特定の例としては、ノカルジア種、ロドコッカス種、ロドコッカス・ロドクラウス、クレブシエラ種、アエロモナス種、シトロバクター・フレウンディ、アグロバクテリウム・リゾゲネス、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、キサントバクター・フラバス、エルウィニア・ニグリフルエンス、エンテロバクター種、ストレプトミセス種、リゾビウム種、リゾビウム・ロティ、リゾビウム・レグミノサルム、リゾビウム・メリオティ、パントエア・アグロメランス、クレブシエラ・ニューモニエ亜種ニューモニエ、アグロバクテリウム・ラジオバクター、バチルス・スミシー、シュードノカルジア・サーモフィラ、シュードモナス・クロロラフィス、ロドコッカス・エリスロポリス、ブレビバクテリウム・ケトグルタミカム、及びシュードノカルジア・サーモフィラが挙げられるがこれらに限定されない。任意に、使用される微生物は、例えば、ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253、及びロドコッカス・ロドクラウスDAP 96622、ならびにこれらの組み合わせを含み得る。
本明細書で使用される場合、場所を1つ以上の細菌に曝露することは、例えば、無傷細菌細胞、細菌細胞溶解物、及び酵素活性を有する細菌抽出物(すなわち、「酵素抽出物」)への曝露を含む。細菌細胞を含む、細胞から溶解物及び酵素抽出物を調製するための方法は、当該技術分野において日常的である。任意に、1つ以上の細菌または酵素抽出物は、グルタルアルデヒドで固定され、架橋される。任意に、架橋されたグルタルアルデヒド固定細菌または抽出物は、担体でスプレーに製剤化される。
ある特定の実施形態では、真菌増殖を阻害または低減させるための方法及び組成物は、場所を酵素に曝露することを含む。酵素は、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACC(1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸)デアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンモノオキシゲナーゼ、アンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、シアニダーゼ、及び/またはこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。酵素は、場所への曝露のための組成物内で提供され得る。酵素はまた、精製された酵素であってもよく、または上記のような酵素抽出物として提供されてもよい。任意に、ある場所における真菌増殖を阻害または低減させるための方法は、酵素を含む組成物にその場所を曝露することを含み、酵素は、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンモノオキシゲナーゼ、アンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、及びシアニダーゼのうちの1つ以上から選択される。本方法で使用される1つ以上の細菌、酵素抽出物、または酵素は、本明細書において、時には、より一般に「触媒」と称される場合がある。
本明細書に提供される方法において、場所は、真菌増殖を阻害または低減させるのに十分な量で、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、1つ以上の細菌から単離もしくは導出される酵素抽出物、またはこれらの任意の組み合わせに曝露される。いくつかの実施形態では、植物または植物部位は、1つ以上の外因性酵素及び/または酵素抽出物と組み合わせた1つ以上の細菌に曝露される。「外因性」とは、実験施設内で単離及び/または精製される酵素または酵素抽出物を指し、自然の位置で細菌によって生成される酵素と区別される。この組み合わされた曝露は、同時または連続的に行われ得る。例えば、植物は、細菌の曝露の1〜60分後、1〜24時間後、または1〜7日後に外因性酵素及び/または酵素抽出物に曝露され得る。
1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、及び/または酵素抽出物に、場所を「曝露すること」は、その場所に細菌、酵素、及び/または抽出物を提示する任意の方法を含む。任意に、場所は、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、及び/または酵素抽出物に間接的に曝露される。間接的な曝露方法は、例えば、大体場所の近所に、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、及び/または酵素抽出物を配置すること(すなわち、間接的曝露)を含む。任意に、場所は、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、及び/または酵素抽出物に直接曝露され、それにより、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、及び/または酵素抽出物は、その場所と直接接触している。
ある特定の実施形態では、細菌、酵素、及び/または細菌から単離される酵素抽出物の曝露は、例えば、液体形態で細菌、酵素、及び/または酵素抽出物を提供し、それを場所上またはその付近に噴霧することによって生じ得る。細菌、酵素、及び/または酵素抽出物は、例えば、液体担体をさらに含んでもよい。液体担体は、芳香族炭化水素、置換ナフタレン、フタル酸エステル、脂肪族炭化水素、アルコール、及びグリコールからなる群から選択され得る。任意に、液体担体は、液体として植物に適用され得るが、周囲温度またはより低い温度で固体である、ワックスまたは同様の種類の材料であってもよい。任意に、細菌、酵素、及び/または酵素抽出物は、霧またはスプレーによって場所上またはその付近に提供される。例えば、細菌、酵素、または酵素抽出物は、真菌が制御されるべき領域において土壌に提供される。
ある特定の実施形態では、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、及び/または細菌から単離される酵素抽出物の曝露は、例えば、固体形態で細菌、酵素、及び酵素抽出物を提供し、それを場所上またはその付近に散布することによって生じ得る。細菌、酵素、及び/または酵素抽出物は、例えば、固体担体を含み得る。固体担体は、細粉、湿潤性粉末、水分散性顆粒、及び無機充填剤からなる群から選択され得る。任意に、固体担体は、無機充填剤である。無機充填剤は、例えば、カルサイト、シリカ、タルク、カオリン、モンモリロナイト、及びアタパルジャイトからなる群から選択され得る。細菌、酵素、及び/または酵素抽出物と使用するための他の固体支持体は、本明細書に記載される。
ある特定の実施形態では、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、及び/または細菌から単離される酵素抽出物の曝露は、例えば、固体形態で細菌、酵素、及び酵素抽出物を、鉄または他の金属材料を含む組成物として提供することによって生じ得る。鉄合金マトリックスを含む鉄に基づく組成物は、磁力を有し、細菌、酵素、及び/酵素抽出物を、磁石を使用して、物質、例えば、濾過または清浄した作物に送達するために使用することができる。このプロセスにより、有利なことに、細菌、酵素、または酵素抽出物を含む提供される組成物を除去することに加えて、穀物から任意の望まれない金属片を除去する。例として、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、または細菌から単離される酵素抽出物は、スプレーの形態で、穀物、例えば、穀作物に適用され得る。次いで穀作物が収穫され、収穫された穀物は、次いで、収穫した穀物を濾過または清浄するための磁石を含む機械または装置を通して処理し、望まれない金属片、ならびに細菌、酵素、及び/または酵素抽出物を含む組成物を、収穫した穀物から除去する。
ある特定の実施形態では、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、及び/または酵素抽出物は、コーティングをさらに含み、ここで、コーティングは、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、及び/または酵素抽出物を耐水性にする。コーティングは、疎水性脂肪酸ポリエステルコーティングまたはワックスから選択され得る。任意に、疎水性脂肪酸ポリエステルコーティングは、スクロース、ソルビトール、ソルビノース、グリセロール、またはラフィノースから得られる長鎖脂肪酸ポリエステルである。
真菌増殖を阻害または低減させるための組成物もまた、本明細書に提供される。本組成物は、例えば、真菌増殖を阻害または低減させることができる、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、及び/または1つ以上の酵素抽出物を含み得る。組成物は、上記に開示されるような固体、液体、及びゼラチン状担体、ならびに/または以下に開示されるように、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、及び/または酵素抽出物を誘導及び安定化するための培地及び培地成分をさらに含み得る。任意に、組成物は、植物または植物部位への分配または適用のために、ペレット形態に変換されてもよい。
任意に、1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、及び/または酵素抽出物は、真菌増殖を阻害または低減させる他の薬剤と組み合わせて使用される。例えば、提供される方法は、真菌増殖を阻害または低減させる薬剤、例えば、殺菌剤に、植物または植物部位を曝露するステップをさらに含み得る。同様に、提供される組成物は、真菌増殖を阻害または低減させる薬剤、例えば、殺菌剤をさらに含み得る。真菌増殖を阻害または低減させる薬剤としては、アントシアニン、有機酸、例えば、プロピオン酸及びソルビン酸、アルミノケイ酸塩、粘土、ゼオライト、及びプロパン酸カルシウムが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書に定義されるように、細菌、酵素、及び/または酵素抽出物の「十分な」量または有効な量は、方法で利用される特定の細菌、酵素、及び/または酵素抽出物、細菌が場所に曝露される形態(例えば、上記のような無傷細菌細胞(生もしくは死)、細胞溶解物、酵素抽出物、及び/または酵素として)、細菌、酵素、及び/または酵素抽出物が場所に曝露される手段、曝露時間の長さ、ならびに真菌増殖の阻害または低減をもたらす真菌シグナル化合物の種類及び量を含むがこれらに限定されない、種々の要因によって決まる。任意に、場所に曝露される細菌の量は、1〜250mgの範囲の細胞乾燥重量または酵素抽出物及び酵素に対してその同等量である。1mgの乾燥重量の細胞に対して、典型的には、150〜300単位のニトリルヒドラターゼ、10〜25単位のアミダーゼ、7〜15単位のシアニダーゼ、7〜20単位のACCデアミナーゼ、及び7〜20単位のシアノアラニンシンターゼ様酵素がある。他の例として、場所に曝露される細菌の量は、0.1mg〜1g、0.1〜400mg、1〜200mg、1〜80mg、もしくは1〜10mgの範囲の細胞乾燥重量、または酵素抽出物及び酵素に対してその同等量である。例として、場所に曝露される細菌の量は、例えば、9〜10キロ(kg)の植物または植物部位当たり、0.1mg〜1gの範囲である。真菌増殖を阻害または低減させるのに必要な1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、または酵素抽出物の「十分な」量を決定することは、当業者の日常的な実験の問題であろう。例えば、真菌増殖の阻害または低減に必要な細菌、1つ以上の酵素、または酵素抽出物が、固定化または安定化される場合、細菌、1つ以上の酵素、または酵素抽出物の量は、真菌増殖を阻害または低減させるように調整される。
ある特定の実施形態では、1つ以上の細菌は、好適な誘導剤を用いた曝露または処理によって、所望の特徴(例えば、細菌の酵素の所望の活性レベルの発現)を示すように「誘導」される。誘導剤としては、尿素、カルバミン酸メチル、コバルト、アスパラギン、グルタミン、及びこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。任意に、1つ以上の細菌は、尿素、カルバミン酸メチル、メタクリルアミド、またはアセトアミドに曝露されるか、またはそれで処理される。任意に、1つ以上の細菌は、尿素またはカルバミン酸メチル、ならびにアスパラギン及びコバルトのうちの1つ以上を含む、誘導剤の混合物に曝露されるか、またはそれで処理される。いくつかの実施形態では、組成物及び方法は、コバルトなどの誘導剤を任意に除外する。
誘導剤は、使用される場合、所望の細胞の培養中いつでも添加され得る。例えば、細菌に関して、培養培地は、細菌の培養の開始前に誘導剤が補充され得る。あるいは、細菌は、細菌を増殖するために所定の時間にわたって培地上で培養され得、誘導剤は、細菌中の所望の酵素活性を誘導するために1回以上の所定の時間に添加され得る。さらに、誘導剤は、細菌の増殖が完了した後、または第2の増殖もしくは維持段階中、細菌中の所望の活性を誘導するために、増殖培地に(またはすでに増殖した細菌を含む別個の混合物に)添加され得る。
特定の機構に限定されることを意図しないが、細菌を「誘導すること」は、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンモノオキシゲナーゼ、アンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、及び/またはシアニダーゼなどの酵素のうちの1つ以上の生成もしくは活性化(または増加した生成もしくは増加した活性)をもたらし得、これらの酵素のうちの1つ以上の誘導は、真菌増殖を阻害または低減するのに関与し得る。「ニトリルヒドラターゼ」、「アミダーゼ」、「アスパラギナーゼ」、「ACCデアミナーゼ」、「シアノアラニンシンターゼ様酵素」、「AMO様(アルカンまたはアンモニウム)モノオキシゲナーゼ」、「メタンモノオキシゲナーゼ」、「トルエンジオキシゲナーゼ」、及び「シアニダーゼ」は、細菌、真菌、植物、及び動物が挙げられるがこれらに限定されない、種々の生物からの細胞中に存在する酵素のファミリーを含む。そのような酵素は、よく知られており、酵素の各クラスは、認識された酵素活性を有する。
酵素活性を誘導する方法は、環境にアクリロニトリルなどの有害なニトリルを導入する必要なく達成され得る。すでに、ある特定の微生物中の特定の酵素活性の誘導が、化学誘導物質の添加を必要とすることが考えられていた。例えば、ロドコッカス・ロドクラウス及びシュードモナス・クロロラフィスにおけるニトリルヒドラターゼ活性の誘導において、アセトニトリル、アクリロニトリル、アクリルアミドなどの有害な化学物質を補充することが必要であることが、概して考えられた。しかしながら、ニトリルヒドラターゼ生成微生物における酵素活性は、アミノ酸及びその誘導体を含有するアミドなど、非有害な培地添加剤を用いて誘導され、任意にトレハロースで安定化され得る。任意に、アスパラギン、グルタミン、またはこれらの組み合わせが誘導物質として使用され得る。微生物中の酵素活性を誘導及び安定化する方法は、米国特許第7,531,343号及び米国特許第7,531,344号に記載され、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。
酵素活性を誘導する開示された方法は、本明細書に記載されるように、改変培地、固定化、及び安定化技術を使用して、多くの酵素の生成及び安定性を提供する。例えば、酵素活性は、アミド含有アミノ酸またはその誘導体を含む培地を用いて誘導及び安定化され、任意にトレハロースによって安定化され得る。いくつかの実施形態では、誘導及び安定化方法は、1つ以上のアミド含有アミノ酸またはその誘導体、及び任意にトレハロースを含む培地中で、ニトリルヒドラターゼ生成微生物を培養することを含む。任意に、好ましくはアスパラギン、グルタミン、またはこれらの組み合わせを含む、アミド含有アミノ酸またはその誘導体が補充された培地を使用して、ニトリルヒドラターゼを誘導するための方法が開示される。任意に、アスパラギンのみが補充された、栄養的に完全な培地を使用して、ニトリルヒドラターゼを誘導するための方法が開示される。任意に、グルタミンのみが補充された、栄養的に完全な培地を使用して、ニトリルヒドラターゼを誘導するための方法が開示される。任意に、トレハロースのみが補充された、栄養的に完全な培地を使用して、ニトリルヒドラターゼを安定化するための方法が開示される。より具体的には、誘導及び安定化方法は、培地中で微生物を培養し、任意に、培養された微生物または微生物によって生成された酵素を回収することを含む。
酵素の誘導及び安定化は、有害なニトリルを使用することなく達成され得る。しかしながら、誘導方法が酵素活性誘導のための有害な化学物質の必要性を排除する一方で、そのようなさらなる誘導物質の使用は排除されない。例えば、1つ以上のニトリルは、特定の活性発現を補助するために使用され得る。コハク酸ニトリル及びコバルトが補充された培地は、例えば、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼI、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンモノオキシゲナーゼ、アンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、及びシアニダーゼを含む、酵素の誘導に有用であり得る。しかしながら、ニトリルの使用は、酵素活性の誘導に必要ではない。ニトリル及び他の有害な化学物質の使用は確実に好ましくないが、任意に、そのような使用は可能である。
酵素活性の安定化は、付着、封入、及び架橋などの固定化方法によって達成され、それにより酵素活性が使用され得る時間を延長することができる。したがって、いくつかの実施形態では、誘導方法及び低温障害反応を遅延する方法は、微生物を少なくとも部分的に固定化することをさらに含む。安定化は、酵素、酵素抽出物、または酵素もしくは酵素抽出物を生成する微生物を固定化することによって提供され得る。例えば、微生物から採取された酵素もしくは酵素抽出物、または誘導された微生物自体は、誘導された活性を安定化する手段として、基質に固定化され得る。任意に、ニトリルヒドラターゼ生成微生物は、少なくとも部分的に固定化される。任意に、酵素または微生物は、少なくとも部分的に封入されるか、または基質の表面上に位置される。これは、対象とする材料と触媒との反応及び所望の生成物の回収を促進すると同時に反応培地中で、かつ反応性の高い状態で触媒を保持する方法で、誘導された活性を有する固定化された材料(例えば、触媒)の提示を可能にする。ある特定の実施形態では、付着及び封入などの固定化方法を通じた1つ以上の細菌の安定化は、1つ以上の細菌を死滅させるか、または不活性化する。したがって、任意に、本方法で使用される誘導された微生物は、死んで(死滅させられて)いるか、または不活性化されているが、なおも触媒活性を示すことが可能である。
酵素、酵素抽出物、及び/または微生物の付着に概して有用な任意の基質が使用され得る。任意に、基質は、アルギン酸塩またはその塩を含む。アルギン酸塩は、それぞれが異なる配列またはブロックで一緒に共有結合された、(1−4)結合β−D−マンヌロン酸(M)及びそのC−5エピマーα−L−グルロン酸(G)残基のホモポリマーブロックを有する、線状コポリマーである。モノマーは、連続G残基(G−ブロック)、連続M残渣(M−ブロック)、交互M及びG残渣(MG−ブロック)、またはランダムに組織化されたブロックのホモポリマーブロック中に現れ得る。任意に、アルギン酸カルシウムは、基質として使用される。アルギン酸カルシウムは、例えば、硬化アルギン酸カルシウム基質を形成するために、ポリエチレンイミンなどと架橋され得る。そのような固定化技術のさらなる記載は、Bucke,“Cell Immobilization in Calcium Alginate,”Methods in Enzymology,vol.135,Part B(ed.K.Mosbach)pp.175−189(1987)に見られ、それは参照により本明細書に組み込まれる。ポリエチレンイミン架橋アルギン酸カルシウムを使用した固定化の安定化効果は、2007年4月2日出願の米国特許出願第11/695,377号で考察され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
任意に、基質は、アミド含有ポリマーを含む。1つ以上のアミド基を含む任意のポリマーが使用され得る。任意に、基質は、ポリアクリルアミドポリマーを含む。
安定化はさらに、架橋によって達成され得る。例えば、誘導された微生物は、細胞の凝集を形成するために、化学的に架橋され得る。任意に、誘導された微生物は、グルタルアルデヒドを使用して固定化され、架橋される。例えば、微生物は、脱イオン水及びグルタルアルデヒドの混合物中に懸濁され得、続いて最大軟凝集が達成されるまで、ポリエチレンイミンが添加され得る。架橋された微生物(典型的には、多くの細胞から形成される粒子の形態で)は、単純な濾過によって採取され得る。そのような技術のさらなる記載は、Lopez−Gallego,et al.,J.Biotechnol.119:70−75(2005)に提供され、それは参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、架橋は、微生物を死滅させるか、または不活性化する。したがって、任意に、本方法で使用される誘導された微生物は、死んで(死滅させられて)いるか、または不活性化されているが、なおも触媒活性を示すことが可能である。
任意に、微生物、酵素、及び/または酵素抽出物は、古典的なブラウン運動をしているままにされるよりもむしろ、カプセル化される。そのようなカプセル化は、微生物の回収、保持、及び再使用を促進し、概して、基質への微生物の付着を含む。そのような付着もまた、上記のような微生物、酵素、及び/もしくは酵素抽出物の安定化を促進し得るか、または誘導された微生物、酵素、もしくは酵素抽出物の取り扱いの容易さを促進するためのみであってもよい。
微生物、酵素、及び/または酵素抽出物は、収着、静電結合、共有結合など、微生物、酵素、及び/または酵素抽出物の固定化が概して認識されている任意の方法によって固定化され得る。概して、微生物、酵素、及び/または酵素抽出物は、微生物酵素、または解毒反応混合物などの混合物もしくは溶液からの酵素抽出物の回収を補助する、固体支持体上に固定化または封入される。好適な固体支持体としては、粒状活性炭、堆肥、木材または木材製品(例えば、紙、ウッドチップ、ウッドナゲット、細断されたパレットもしくは木)、ぬか(例えば、ふすま)、金属または金属酸化物粒子(例えば、アルミナ、ルテニウム、酸化鉄)、イオン交換樹脂、DEAEセルロース、DEAE−SEPHADEX(登録商標)ポリマー、ワックス/コーティング材料(果実及び野菜ならびに無機表面のためのコーティングとして使用されるもの)、セラミックビーズ、架橋ポリアクリルアミドビーズ、キューブ、小球、または他のゲル形態、アルギン酸ビーズ、κ−カラギーナンキューブ、ならびに固有の磁気能力により水溶液から回収され得る固体粒子が挙げられるがこれらに限定されない。触媒の形状は可変である(特定の物体の所望の動的特性が、触媒活性に影響を及ぼす体積/表面積の関係と一体化される点で)。任意に、誘導された微生物は、ポリエチレンイミンと架橋されたアルギン酸ビーズに固定化されるか、またはポリアクリルアミド系ポリマーに固定化される。
いくつかの実施形態では、誘導及び安定化方法で使用される組成物及び培地は、1つ以上のアミド含有アミノ酸もしくはその誘導体、及び/またはトレハロースをさらに含む。アミド含有アミノ酸は、例えば、アスパラギン、グルタミン、その誘導体、またはこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、アミド含有アミノ酸は、それぞれがL−異性体またはD−異性体の形態の、アスパラギン、無水アスパラギン、アスパラギン一水和物の自然形態、またはグルタミン、無水グルタミン、及び/もしくはグルタミン一水和物の自然形態を含んでもよい。
培地中のアミド含有アミノ酸またはその誘導体の濃度は、培養の所望の最終結果によって異なり得る。例えば、培養は、特定の酵素活性を有する微生物を生成する目的で実施されてもよい。任意に、培養は、培養された微生物から特定の酵素を形成及び回収する目的で実施されてもよい。任意に、培養は、同じまたは異なる活性及び機能を有する複数の酵素を形成及び回収する目的で実施されてもよい。
増殖培地または混合物に添加されるアミド含有アミノ酸またはその誘導体の量は、培地または混合物の全重量に基づき、概して最大で10,000百万分の一(ppm)(すなわち、1重量%)であってもよい。しかしながら、誘導方法は、酵素活性がさらに少ない量の添加によって誘導され得るという点で、特に有益である。任意に、1つ以上のアミド含有アミノ酸は、少なくとも50ppmの濃度で存在する。他の例として、アミド含有アミノ酸またはその誘導体の濃度は、50ppm〜5,000ppm、100ppm〜3,000ppm、200ppm〜2,000ppm、250ppm〜1500ppm、500ppm〜1250ppm、または500ppm〜1000ppmの範囲内である。
いくつかの実施形態では、安定化方法は、トレハロースの使用を含む。誘導方法で使用される組成物または培地中のトレハロースの濃度は、少なくとも1グラム/リットル(g/L)であってもよい。任意に、トレハロースの濃度は、1g/L〜50g/Lまたは1g/L〜10g/Lの範囲内である。任意に、培地中のトレハロースの濃度は、少なくとも4g/Lである。
アミド含有アミノ酸もしくはその誘導体及び/またはトレハロースは、栄養的に完全な培地に添加される。好適な栄養的に完全な培地は、概して、炭素及び/または窒素源を最小限含む、その増殖のために必要とされる必要な栄養素を微生物に供給することができる、増殖培地である。1つの特定の例は、市販のR2A寒天培地であり、それは典型的には、寒天、酵母抽出物、プロテオースペプトン、カゼイン加水分解物、グルコース、可溶性でんぷん、ピルビン酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、及び硫酸マグネシウムからなる。栄養的に完全な液体培地の別の例は、酵母抽出物麦芽抽出物寒天(YEMEA)であり、それは、グルコース、麦芽抽出物、及び酵母抽出物からなる(が、特に寒天は除く)。また、同様の組成物であるが、野菜由来の培地が、開示された方法のために使用され得る。当該技術分野において既知の任意の栄養的に完全な培地が、開示された方法のために使用され得る、上記の培地は、例示目的のみで記載されている。そのような栄養的に完全な培地は、本明細書に記載される組成物中に含まれ得る。
任意に、開示された組成物及び培地は、さらなる添加剤を含有することができる。典型的には、他の補足物または栄養素は、より大きい細胞増殖、より大きい細胞量、または加速された増殖の補助に有用なものである。例えば、組成物及び培地は、栄養的に完全な培地中にすでに存在している任意の炭水化物源に加えて、炭水化物源を含むことができる。
上記の通り、ほとんどの培地は、典型的には、ある程度の含有量の炭水化物(例えば、グルコース)を含有するが、さらなる炭水化物源(例えば、デキストロースのポリマーであるデキストロース同等物など、マルトースもしくはあまり精製されていない糖、または細胞の増殖及び所望の活性の誘導を支持する、任意の炭水化物)を含むことが有用であり得る。提供される過剰な炭水化物の種類は、培養の所望の結果によって決まり得る。例えば、マルトースまたはマルトデキストリンなどの炭水化物の添加は、アスパラギナーゼIの改善された誘導をもたらすことがわかった。加えて、マルトースまたはマルトデキストリンなどの炭水化物の添加は、酵素活性(例えば、ニトリルヒドラターゼ活性)の安定性を潜在的に改善する。
いくつかの実施形態では、組成物及び培地は、コバルトをさらに含む。コバルトまたはその塩は、混合物または培地に添加され得る。例えば、培地へのコバルト(例えば、塩化コバルト)の添加は、培養された微生物によって生成される酵素の質量を増加させるのに特に有用であり得る。コバルトまたはその塩は、例えば、コバルト濃度が最大で400ppmになるように、培養培地に添加され得る。コバルトは、例えば、5ppm〜400ppm、10ppm〜100ppm、10ppm〜80ppm、または10ppm〜25ppmの濃度で存在し得る。
いくつかの実施形態では、組成物及び培地は、尿素をさらに含む。尿素またはその塩は、混合物または培地に添加され得る。尿素またはその塩は、例えば、尿素濃度が最大で10g/Lになるように、培養培地に添加され得る。尿素は、例えば、5g/L〜30g/L、5g/L〜20g/L、5g/L〜12g/L、または7g/L〜10g/Lの濃度で存在し得る。任意に、尿素は、7.5g/Lの濃度で存在する。任意に、尿素及びコバルトの両方が培地に添加される。
組成物及び培地はまた、さらなる成分も含み得る。例えば、他の好適な培地成分は、綿実タンパク質、マルトース、マルトデキストリン、及び他の市販の炭水化物など、市販の添加剤を含んでもよい。任意に、培地は、マルトースまたはマルトデキストリンをさらに含む。マルトースまたはマルトデキストリンは、例えば、マルトースまたはマルトデキストリン濃度が少なくとも1g/Lになるように、培養培地に添加され得る。任意に、組成物及び培地は、任意のニトリル含有化合物を含まない。ニトリル化合物は、2つ以上のニトリル化合物に向かって酵素活性を誘導するために、培養培地中で以前必要とされた。本明細書に記載される組成物は、完全に安全なトレハロース及び/またはアミド含有アミノ酸もしくはその誘導体を用いて、これを達成する。したがって、培地は、任意のニトリル含有化合物を含まなくてよい。
本明細書で使用される場合、「酵素活性」は、概して、1つの化合物から別の化合物への変換などの過程中に触媒としての機能を果たす、酵素の能力を指す。同様に、本明細書で言及される所望の活性は、1つ以上の微生物によって活発に発現されている1つ以上の酵素の活性を含むことができる。具体的に、ニトリルヒドラターゼは、ニトリル(またはシアノヒドリン)から対応するアミド(またはヒドロキシ酸)への加水分解を触媒する。アミダーゼは、アミドの対応する酸またはヒドロキシ酸への加水分解を触媒する。同様に、アスパラギナーゼIなどのアスパラギナーゼ酵素は、アスパラギンのアスパラギン酸への加水分解を触媒する。ACCデアミナーゼは、1−アミノシクロプロパン−1−カルボキシレートのアンモニア及びα−ケトブチレートへの加水分解を触媒する。β−シアノアラニンシンターゼは、システイン及びシアン化物からの非タンパク質アミノ酸シアノアラニンの形成を触媒する。シアニダーゼは、シアン化物のアンモニア及びギ酸への加水分解を触媒する。アルカンまたはアンモニウムモノオキシゲナーゼ(AMO)及びメタンモノオキシゲナーゼは、エチレンのエチレンエポキシドへの加水分解を触媒する。トルエンジオキシゲナーゼは、例えば、エチレンを酸化させることができ、AMO様酵素として既知である。エチレン分解活性は、生成されたエチレンの分解をもたらす。
活性は、酵素または細胞の質量当たりの「単位」の観点から言及され得る(典型的には、mgの細胞に基づく。例えば、単位/mg cdw)。「単位」は、概して、時間の関数として、定義された条件のセット下で、特定の含有量の化合物を異なる化合物に変換する能力を指す。任意に、ニトリルヒドラターゼ活性の1「単位」は、7.0のpH及び30℃の温度で、1ミリグラムの細胞(乾燥重量)当たり、1分当たり、1μmolのアクリロニトリルをその対応するアミドに変換する能力を指す。同様に、アミダーゼ活性の1単位は、7.0のpH及び30℃の温度で、1ミリグラムの細胞(乾燥重量)当たり、1分当たり、1μmolのアクリルアミドをその対応する酸に変換する能力を指す。さらに、アスパラギナーゼI活性の1単位は、7.0のpH及び30℃の温度で、1ミリグラムの細胞(乾燥重量)当たり、1分当たり、1μmolのアスパラギンをその対応する酸に変換する能力を指す。さらに、ACCデアミナーゼ活性の1単位は、7.0のpH及び30℃の温度で、1ミリグラムの細胞(乾燥重量)当たり、1分当たり、1μmolの1−アミノシクロプロパン−1−カルボキシレートをアンモニア及びα−ケトブチレートに変換する能力を指す。さらに、シアノアラニンシンターゼ様酵素活性の1単位は、7.0のpH及び30℃の温度で、1ミリグラムの細胞(乾燥重量)当たり、1分当たり、1μmolのシステイン及びシアン化物をシアノアラニンに変換する能力を指す。さらに、シアニダーゼ活性の1単位は、7.0のpH及び30℃の温度で、1ミリグラムの細胞(乾燥重量)当たり、1分当たり、1μmolのシアン化物をアンモニア及びギ酸に変換する能力を指す。さらに、アルカンもしくはアンモニウムモノオキシゲナーゼ(AMO)またはメタンモノオキシゲナーゼ活性の1単位は、1μmolのエチレンをエチレンエポキシドに変換する能力を指す。さらに、トルエンジオキシゲナーゼの1単位は、1μmolのエチレンをエチレンエポキシドに変換する能力を指す。ニトリルヒドラターゼ活性、アミダーゼ活性、アスパラギナーゼ活性、ACCデアミナーゼ活性、シアノアラニンシンターゼ様酵素活性、アルカンまたはアンモニウムモノオキシゲナーゼ(AMO)活性、メタンモノオキシゲナーゼ活性、トルエンジオキシゲナーゼ(AMO様)活性、及びシアニダーゼ活性を測定するためのアッセイは、当該技術分野において既知であり、例えば、遊離アンモニアの検出を含む。例えば、Fawcett and Scott,J.Clin.Pathol.13:156−9(1960)を参照されたい。
概して、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ活性、シアノアラニンシンターゼ様酵素活性、アルカンもしくはアンモニウムモノオキシゲナーゼ(AMO)活性、メタンモノオキシゲナーゼ活性、トルエンジオキシゲナーゼ活性、及びシアニダーゼ活性、またはこれらの任意の組み合わせを生成すること、または生成するように誘導されることが可能な、任意の細菌、真菌、植物、または動物細胞が、本明細書で使用され得る。ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンまたはアンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、及び/またはシアニダーゼは、特定の生物からの細胞(例えば、細菌、真菌、植物細胞、または動物細胞)中で構成的に生成されてもよく、あるいは細胞は、好適な誘導剤による「誘導」後にのみ、所望の酵素または複数の酵素を生成し得る。「構成的に」は、本明細書に開示される少なくとも1つの酵素が、特定の細胞型において連続的に生成または発現されることを意味することを目的とする。しかしながら、他の細胞型が、酵素増殖に十分な量または酵素活性レベルで、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンまたはアンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、及びシアニダーゼを発現するために、上記の通り「誘導される」必要がある場合がある。すなわち、本明細書に開示される酵素は、好適な誘導剤への曝露またはそれによる処理後にのみ生成(または十分なレベルで生成)され得る。そのような誘導剤は、既知であり、上記で概説される。例えば、1つ以上の細菌は、尿素、カルバミン酸メチル、コバルト、アスパラギン、グルタミン、またはこれらの任意の混合物、より具体的には、任意にアスパラギンまたはコバルトと組み合わせた尿素またはカルバミン酸メチルなどの誘導剤で処理される。さらに、“Induction and Stabilization of Enzymatic Activity in Microorganisms”と題する、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,531,343号及び同第7,531,344号に開示されるように、アスパラギナーゼI活性は、アミド含有アミノ酸またはその誘導体が補充された培地中で、ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96622(グラム陽性)またはロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253(グラム陽性)中で誘導され得る。ロドコッカスの他の株もまた、アミド含有アミノ酸またはその誘導体を利用してアスパラギナーゼI酵素活性を示すように選択的に誘導され得る。
アスパラギン及びACCデアミナーゼの存在下でアスパラギナーゼI活性を生成する、P.クロロアフィス(ATCC寄託番号43051)、ならびに同様にアスパラギナーゼ活性を生成することが示されているグラム陽性細菌である、B.クレトグルタミカム(kletoglutamicum)(ATCC寄託番号21533)もまた、開示された方法で使用される。ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、及び/またはアスパラギナーゼを発現する、フザリウム属などからの真菌細胞、植物細胞、及び動物細胞もまた、全細胞として、または上記の酵素うちの1つ以上を単離する源のいずれかとして、本明細書で使用され得る。
種々の生物からのいくつかのニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、及びアスパラギナーゼ(例えば、I型アスパラギナーゼ)に対するヌクレオチド及びアミノ酸配列は、公的に入手可能な配列データベースに開示される。当該技術分野において既知の代表的なニトリルヒドラターゼ及び脂肪族アミダーゼの限定されないリストは、表1及び2、ならびに配列リストに記載される。表1及び2中で言及される「プロテインスコア」は、質量分析データに基づき、単離されたタンパク質の識別の百分率の信頼区間(%信頼区間)の概要を提供する。
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任意に、トリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、及び/またはシアニダーゼを発現するように遺伝子操作された宿主細胞は、真菌増殖または真菌増殖の発生を阻害または低減させるために、ある場所に曝露され得る。具体的には、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンまたはアンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、もしくはシアニダーゼをコードする、ポリヌクレオチド(またはそれぞれがニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンまたはアンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、もしくはシアニダーゼをコードする、ポリヌクレオチドは、酵素のうちの1つ以上を発現する遺伝子導入細胞を生成するために、標準的な分子生物学的技術によって、宿主細胞に導入されてもよい。用語「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド構築物」、「ヌクレオチド」、または「ヌクレオチド構築物」の使用は、DNAを含むポリヌクレオチドまたはヌクレオチドに限定することを意図しない。当業者は、ポリヌクレオチド及びヌクレオチドが、リボヌクレオチド、ならびにリボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドの組み合わせを含むことができることを認識するであろう。そのようなデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドは、自然発生分子及び合成類似体の両方を含む。本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、一本鎖形態、二本鎖形態などを含むがこれらに限定されない、全ての形態の配列を包含する。
所望の酵素活性(すなわち、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンまたはアンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、またはシアニダーゼ活性)を保持するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドの変異体及びフラグメントもまた、本明細書で使用され得る。「フラグメント」とは、ポリヌクレオチドの一部分を意味し、したがって、対応するタンパク質の一部分もコードする。酵素ヌクレオチド配列のフラグメントであるポリヌクレオチドは、概して、少なくとも10、15、20、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、もしくは1,400個の連続ヌクレオチド、または最大で完全長酵素ポリヌクレオチド配列中に存在するヌクレオチドの最大数を含む。ポリヌクレオチドフラグメントは、所望の酵素活性を有するポリペプチドをコードし、概して、少なくとも15、25、30、50、100、150、200、もしくは250個の連続アミノ酸、または最大で完全長酵素アミノ配列中に存在するアミノの総数を含む。「変異体」は、実質的に同様の配列を意味することを目的とする。概して、特定の酵素配列の変異体は、標準的な配列アライメントプログラムによって決定されるような、参照酵素配列に対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有する。本明細書に記載される変異体ポリヌクレオチドは、所望の酵素活性を有するポリペプチドをコードする。一例として、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチドの間の関係は、同一性として記載され得る。2つの配列間の同一性は、EMBOSSパッケージのニードルプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276−7)で実行されるように、ニードルマン−ウンシュアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443−453)を使用して決定され得る。ニードル標識された「最長同一性」の出力は、パーセント同一性として使用され、以下の通り計算される:(同一残基(すなわち、ヌクレオチドまたはペプチド)×100)/(アライメントの長さ−アライメント中のギャップの総数)。
遺伝子導入細胞の生成の文脈で使用される場合、用語「導入すること」は、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンまたはアンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ(monooxygenase)、トルエンジオキシゲナーゼ、及び/またはシアニダーゼをコードするポリヌクレオチドを用いて、宿主細胞、特に大腸菌などの微生物に提示することを意味することを目的とする。任意に、ポリヌクレオチドは、配列が、宿主細胞のゲノムへのその潜在的な挿入を含む、宿主細胞の内部へのアクセスを得るような方法で提示される。開示された方法は、宿主細胞に配列を導入するための特定のプロトコルに依存しないが、ただし、ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの宿主細胞の内部へのアクセスを得る。安定導入方法、一過性導入方法、及びウイルス媒介方法を含むがこれらに限定されない、宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための方法はよく知られている。「安定導入」は、宿主細胞に導入されるポリヌクレオチド構築物が、宿主のゲノムに統合し、その子孫によって遺伝されることが可能であることを意味することを目的とする。「一過性導入」または「一過性発現」は、ポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されるが、宿主のゲノムに統合しないことを意味することを目的とする。
さらに、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンまたはアンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、またはシアニダーゼヌクレオチド配列は、例えば、宿主細胞への導入のためのプラスミドに含有されてもよい。対象となる典型的なプラスミドは、定義されたクローニング部位、複製起点、及び選択マーカーを有するベクターを含む。プラスミドは、転写及び翻訳開始配列ならびに転写及び翻訳ターミネータをさらに含んでもよい。プラスミドはまた、少なくとも1つの非依存性ターミネータ配列と、真核生物、原核生物、または両者におけるカセットの複製を可能にする配列(例えば、シャトルベクター)と、原核及び真核細胞系の両方に対する選択マーカーとを含有する遺伝子発現カセットを含むことができる。ベクターは、原核生物、真核生物、または任意に両方における複製及び組み込みに好適である。クローニング、パッケージング、及び発現システム及び方法の一般的な記載については、Giliman and Smith,Gene 8:81−97(1979);Roberts et al.,Nature 328:731−734(1987);Berger and Kimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology,Vol.152(Academic Press,Inc.,San Diego,California)(1989);Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Vols.1−3(2d ed;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York)(1989);及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Current Protocols(Greene Publishing Associates,Inc.,and John Wiley&Sons,Inc.,New York;1994 Supplement)(1994)を参照されたい。酵素のうちの1つ以上を発現する遺伝子導入宿主細胞が、全細胞として、または1つ以上の酵素が単離され得る生物源として、開示された方法で使用されてもよい。
真菌増殖を阻害または低減させるための、及び開示された方法を実施するための装置及び担体が、さらに提供される。特定の実施形態では、ロドコッカス属、シュードモナス・クロロラフィス、ブレビバクテリウム・ケトグルタミカム、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の細菌を含む触媒を含む、真菌増殖を阻害または低減させるための装置または担体が、本明細書に開示される。ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253株、ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96622株、ロドコッカス・エリスロポリス、またはこれらの混合物は、ある特定の態様で使用されてもよい。装置または担体の1つ以上の細菌は、本明細書で上記に定義される通り、真菌増殖を阻害または低減させるのに十分な量で提供される。他の態様では、触媒は、真菌増殖を阻害または低減させるのに十分な量または酵素活性レベルで、1つ以上の酵素(すなわち、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンまたはアンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、及び/またはシアニダーゼ)を含む。本明細書に開示される装置または担体で触媒として使用するための所望の酵素源もまた、上記に詳述される。例えば、触媒は、酵素のうちの1つ以上を生成する(または生成するように誘導もしくは遺伝子操作される)、全細胞の形態で使用されてもよく、または単離、精製、または半精製形態で酵素(複数可)自体を含んでもよい。真菌増殖を阻害または低減させるための組成物に対する担体は、例えば、紙、DEAE、セルロース、ワックス、グルタルアルデヒド、及び粒状活性炭からなる群から選択され得る。
本開示に包含される真菌増殖を阻害または低減させるための装置は、種々の好適な形式で提供されてもよく、単回使用または複数回使用(例えば、「再充電可能」)に適していてもよい。さらに、装置または担体は、住宅及び商業的環境の両方で使用される。例えば、そのような装置または担体は、家庭用もしくは商業用冷蔵庫、シャワー、または望ましくない真菌が増殖し得る任意の場所に組み込まれ得る。例示的な限定されない装置は、本明細書で以下に記載され、図5〜8に示される。
特定の実施形態では、触媒は、固定化された形式で提供される。真菌増殖を阻害または低減させる1つ以上の細菌(または酵素)の能力が保持される限り、触媒を固定化するための任意の過程またはマトリクスが使用され得る。例えば、触媒は、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸カルシウム)、カラギーナン、DEAE−セルロース、またはポリアクリルアミドを含むマトリクス中で固定化されてもよい。他のそのようなマトリクスは、当該技術分野においてよく知られており、触媒マトリクスの機械的強度を増加させるために、グルタルアルデヒド及び/またはポリエチレンイミンが挙げられるがこれらに限定されない、任意の適切な架橋剤でさらに架橋されてもよい。一態様では、触媒は、グルタルアルデヒドで架橋されたDEAE−セルロースマトリクス中で固定化される。触媒、特に、固定化された形態の触媒は、「触媒モジュール要素」としてさらに提示されてもよい。触媒モジュール要素は、例えば、触媒との潜在的な接触を低減する、触媒の交換を促進する、または触媒にわたる空気流を可能にする、さらなる構造内の固定化された触媒などの触媒を含む。
一実施形態では、マトリクスは、アルギン酸塩またはその塩を含む。アルギン酸塩は、それぞれが異なる配列またはブロックで一緒に共有結合された、(1−4)結合β−D−マンヌロン酸(M)及びそのC−5エピマーα−L−グルロン酸(G)残基のホモポリマーブロックを有する、線状コポリマーである。モノマーは、連続G残基(G−ブロック)、連続M残渣(M−ブロック)、交互M及びG残渣(MG−ブロック)、またはランダムに組織化されたブロックのホモポリマーブロック中に現れうる。一実施形態では、アルギン酸カルシウム、より具体的には、硬化アルギン酸カルシウム基質を形成するために、ポリエチレンイミンなどと架橋されたアルギン酸カルシウムが、基質として使用される。そのような固定化技術のさらなる記載は、Bucke(1987)“Cell Immobilization in Calcium Alginate”in Methods in Enzymology,Vol.135(B)(Academic Press,Inc.,San Diego,California;Mosbach,ed.)に見られ、それは参照により本明細書に組み込まれる。ポリエチレンイミン架橋アルギン酸カルシウムを使用した固定化の例示的な方法はまた、以下の実施例5に記載される。別の実施形態では、マトリクスは、アミド含有ポリマーを含む。1つ以上のアミド基を含む任意のポリマーが使用され得る。一実施形態では、基質は、ポリアクリルアミドポリマーを含む。
固定化された触媒マトリクスの機械的強度の増加は、架橋によって達成され得る。例えば、細胞は、細胞の凝集を形成するために、化学的に架橋され得る。一実施形態では、採取された細胞は、グルタルアルデヒドを使用して架橋される。例えば、細胞は、脱イオン水及びグルタルアルデヒドの混合物中に懸濁され得、続いて最大凝集が達成されるまで、ポリエチレンイミン(PEI)が添加され得る。架橋された細胞(典型的には、多くの細胞から形成される粒子の形態で)は、単純な濾過によって採取され得る。そのような技術のさらなる記載は、Lopez−Gallego et al.(2005)J.Biotechnol.119:70−75に提供され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
ある特定の態様では、固定化された触媒または1つ以上の触媒モジュール要素は、「物理的構造」中に配置されるか、その上に配置されるか、またはそれに付着される。物理的構造としては、1つ以上の触媒モジュール要素を保持することが可能なフィルム、シート、コーティング層、箱、パウチ、バッグ、またはスロット付きチャンバが挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、物理的構造は、果実、野菜、または花の輸送または保存に好適な容器を含む。物理的構造は、1つ以上の個別の構造をさらに備えてもよく、それにより個別の構造の全てが中央の触媒または触媒モジュール要素に接続される。本明細書で上記に記載される物理的構造は、外部手段によって任意に冷蔵されてもよく、または物理的構造自体内に冷蔵ユニットを備えてもよい。例として、物理的構造は、真菌増殖を阻害または低減させるのに必要な1つ以上の細菌、1つ以上の酵素、または酵素抽出物の「十分な」量を含む、シートまたはフィルムであり得る。任意に、シートまたはフィルムは、プルランまたはセロハンである。そのようなシートまたはフィルムは、植物または植物部位を包むために使用され得る。例として、フィルムは、プルラン製であり得、花を包むために使用され得る。ある特定の実施形態では、物理的構造は、穀物の輸送または保存のための容器を含むか、またはその容器、例えば、穀物サイロである。
特定の実施形態では、複数の層を含む、真菌増殖の阻害または低減のための通気性触媒装置が提供される。例えば、図5に示されるように、触媒装置10は、外層12及び14と、外層12と14との間に位置する中間触媒層16とを含むことができる。触媒層16は、1つ以上の細菌(例えば、ロドコッカス属、シュードモナス・クロロラフィス、ブレビバクテリウム・ケトグルタミカム、及びこれらの混合物)、または酵素(ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンまたはアンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、シアニダーゼ、及びこれらの混合物)を含み、1つ以上の細菌または酵素は、真菌増殖を阻害または低減させるのに十分な量で提供される。本実施形態では、外層12及び14のうちの1つ以上は、触媒装置10に構造的完全性を提供する。外層12及び14は、典型的には、触媒層16への空気流を可能にするが、いくつかの実施形態では、例えば、装置が箱の側面を形成し、箱の最外層が触媒層を環境に曝露させないことが望ましい場合、通気性ではない一個の外層を有することが有利であり得る。触媒装置10は、再利用可能または再利用不可能なバッグまたはパウチで提供され得る。一実施形態では、触媒層16は、ロドコッカス種細胞、特に、ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253株、ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96622株、ロドコッカス・エリスロポリス、またはこれらの混合物を含む。本明細書に開示される装置中で触媒として利用される細菌細胞は、上記で詳述されるように、1つ以上の誘導剤(例えば、尿素、カルバミン酸メチル、コバルト、アスパラギン、グルタミン、またはこれらの混合物)で誘導されてもよい。
図6は、真菌増殖を阻害または低減させるための代替的な装置を図示する。これらの装置は、複数の層を備え、層のうちの1つ以上は、取り外し可能である。図6の一番上の図に示されるように、装置は、通気性構造層22と、触媒層24とを含むことができる。取り外し可能層26及び/または28は、構造層22及び/または触媒層24に沿って提供され得、典型的には、触媒の使用または活性化前に取り外しされることを目的とする。ある特定の態様では、取り外し可能層26及び28の取り外しは、別個の物理的構造に、触媒構造の配置または取り付けを促進する接着剤を曝露する。図6の中央の図は、装置30が2つの通気性構造層32及び34と、中間触媒層36と、取り外し可能層38とを含む、代替の実施形態を示す。図6の一番下の図は、装置40が2つの通気性構造層42及び44と、中間触媒層46と、2つの取り外し可能層48及び50とを含む、さらに別の実施形態を示す。
図7は、触媒が段ボール箱などの容器の内部に付着される、代替の実施形態60を示す。図7の上の図に示されるように、容器の側面62は、接着剤層66を使用してそれに取り付けられた触媒層64を含む。触媒層を環境への曝露から保護するために、剥離可能フィルム68が触媒層64に隣接して提供され得る。剥離可能フィルム68は、触媒を容器中に提供される物体に曝露することによって触媒層64中の触媒を活性化し、それにより真菌増殖を阻害または低減させるために、取り外しされ得る。
図7の下の図は、図7の下の図に示される方法で、容器内部に触媒構造を付着させる前の触媒構造70を示す。触媒層64、接着剤層66、及び剥離可能フィルム68に加えて、触媒構造70は、追加の剥離可能フィルム72を含む。剥離可能フィルム72は、剥離可能フィルム68と同様に、触媒構造70が包装、出荷、または保存されるときにそれを保護する。剥離可能フィルム72は、触媒構造70が図7Aに示される方法で容器内部に付着されることを可能にするために、接着剤層66を曝露するために取り外しされ得る。
図8は、触媒モジュール(例えば、モジュール86)を受容するための2つのスロット82及び84を含む、触媒構造80を示す。触媒モジュール86は、通気性であり、容易にスロット84に挿入、またはそれから取り外しされ得る。したがって、触媒モジュール86は、新しい触媒モジュールが触媒構造80中での使用に望ましい場合、容易に交換され得る。触媒モジュール86は、本明細書に記載されるものなどであり、好ましくはマトリクスに固定化された、触媒を含む。触媒構造80は、触媒モジュール86を通る空気流を可能にするために、メッシュスクリーンなどの対向する通気性表面88及び90を含むことができる。触媒構造80は、代替の実施形態において、当業者に理解され得るように、1つのみの通気性表面、2つの対向しない通気性表面、または3つ以上の通気性表面を含むことができる。図8は、触媒モジュール(例えば、モジュール86)を受容するための2つのスロット82及び84を含むが、触媒構造80がモジュールを受容するための1つまたはそれ以上のスロットを含むことができるが、当業者に理解されるであろう。触媒構造80は、物体を輸送するために使用される容器内に提供され得るか、または、例えば、本明細書に考察されるような接着剤層を使用して、容器に付着され得る。
当業者はさらに、本明細書に開示される方法、装置、物理的構造、組成物、または担体のうちのいずれも、真菌増殖を阻害または低減させるための他の既知の方法、装置、物理的構造、組成物、及び担体と組み合わされ得ることを認識するであろう。さらに、上記の通り、増加したエチレン生成は、病原生物による植物または植物部位の攻撃中にも観察されている。したがって、本明細書に開示される方法及び装置は、病原体への植物反応の改善にもさらに使用され得る。
開示された方法及び組成物の生成物のために使用され得る、その生成物と併用され得る、その生成物の調製のために使用され得る、またはその生成物である、材料、組成物、及び成分が開示される。これら及び他の材料が本明細書に開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示されるとき、これらの化合物のそれぞれの種々の個々及び集合の組み合わせ及び並べ替えの特定の参照は明示的に開示されない場合があるが、それぞれは、本明細書で具体的に考慮及び記載されることが理解される。例えば、方法が開示及び考察され、その方法を含む、多くの分子に行われ得る多くの修正が考察される場合、その方法のありとあらゆる組み合わせ及び並べ替え、ならびに考えられる修正は、特にそれとは反対の指示がない限り、具体的に考慮される。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせもまた、具体的に考慮及び開示される。この概念は、開示された組成物を使用した方法のステップを含むがこれらに限定されない、本開示の全ての態様に適用される。したがって、実施され得る種々の追加のステップがある場合、これらの追加のステップのそれぞれは、開示された方法の任意の特定の方法ステップまたは方法ステップの組み合わせと併せて実施され得ること、及びそれぞれのそのような組み合わせまたは組み合わせのサブセットは、具体的に考慮され、開示されたと見なされるべきであることが理解される。
本明細書に列挙された出版物及びそれらが列挙される資料は、それらの全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
実施例
実施例1:クラドスポリウム真菌感染の阻害
図1に示される画像は、モモへの誘導された触媒の曝露を含む全ての実験に典型的なものである。実験を、ハイドロクーリング、洗浄、ならびにワックス及び抗菌剤の適用のプロセスを行ったモモに実行した。誘導された触媒で処理したモモは、目に見えるカビの増殖がなかったが、抗菌剤で処理したモモは、著しいカビの増殖を見せた(図1)。全てのモモ(処理及び未処理)を、まず、同様のモモ(寸法、色、一般的な見た目、及び斑点/傷のないもの)の群に分け、次いで、対照(処理したモモ)及び実験(誘導された細胞から作製した触媒に曝露したもの)という亜群に無作為化した。したがって、対照及び実験のいずれの亜群も、類似のモモを含んだ。したがって、対照のモモのカビの外観は、対照及び実験群の試料を選択するプロセスに起因するものではなかった。
モモを用いた実験をバナナでも確認した。これらの実験において、抗菌剤で処理したバナナではカビが確認されたが、誘導されたロドコッカス細胞で処理したバナナでは確認されなかった。カビは、バナナの果指/果段がより大きな果段からもぎ取られているところに、特に顕著であった。
モモ及びバナナを用いた実験の結果を確認するために、一般にモモから単離されるクラドスポリウム種から採取した胞子を使用する実験を設計した。所定数の胞子を含有する胞子懸濁液を、フィルター膜(0.2u)に播種し、次いで、ロドコッカス細胞の存在下及び不在下の両方で、異なる培地上に配置した。利用した培地は、異なるレベルの誘導を含む培地で増殖させたロドコッカス細胞の、クラドスポリウムの胞子形成に対する効果を調査するために、a)良好なカビの増殖、低い触媒活性ありまたは触媒活性なしでの良好なロドコッカスの増殖、及びc)誘導触媒活性での良好なロドコッカスの増殖に関して選択した。
1mlのグリセロールストックを250mlの栄養培地に移すことによって、マイナス80℃で保存したグリセロールストックからロドコッカス種DAP 96253培養を開始した。2日間150rpmで撹拌しながら、培養物を30℃でインキュベートした。栄養寒天プレートに接種し、30℃で2日間インキュベートした。これらのプレートからの細胞を擦り取り、グルコースならびに以下の添加剤:コバルト、尿素、及びアスパラギンが補充されたYEMEAプレートのための接種材料として使用した。YEMEAプレートを30℃で1週間インキュベートした。クラドスポリウム種をSABプレートに筋状に蒔き、7日間増殖させた。プロトコルに従って胞子を採取し、10の胞子を膜に移した。膜を、異なる補充物質を有する培地で増殖させたロドコッカス細胞叢上に配置し、データを12日後に収集した。
完全に誘導されたロドコッカス細胞が、胞子発芽及びクラドスポリウム種胞子における菌糸体の発生の阻害を促進することが示された(図2)。モモから単離した他のカビに由来する胞子を使用して追加の実験を行い、これらの実験は、類似の結果をもたらした。
これらの実験から、ロドコッカス細胞は、ロドコッカス細胞が誘導されていたことを条件として、増殖培地に使用された補充物質にかかわらず、クラドスポリウムの胞子形成を阻害したことが明らかであったが、しかしながら、最も顕著な阻害は、ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253が誘導培地で増殖された場合に観察され、果実における高レベルの熟成遅延を示した。
触媒と真菌との間の物理的な接触が真菌阻害に必要であったかどうかを決定するために、実験を行った。
1mlのグリセロールストックを250mlの栄養培地に移すことによって、−80℃で保存したグリセロールストックからロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253培養を開始した。2日間150rpmで撹拌しながら、培養物を30℃でインキュベートした。栄養寒天プレートに接種し、30℃で2日間インキュベートした。
モモから単離したフザリウム種を、SABプレートに筋状に蒔き、7日間増殖させた。胞子を採取し、10の胞子/ml(リン酸緩衝液中)に希釈した。
仕切り付きペトリ皿(プレート1つ当たり3または4つの区画)を。少なくとも1つの区画は、ロドコッカスの増殖に好適な培地(YEMEA)含んだ。他の2つの区画は、フザリウム胞子の増生及びフザリウムの増殖に好適な培地(SAB)を含んだ。YEMEA区画(複数可)にロドコッカス細胞を接種し、次いで、ロドコッカスの菌叢がYEMEA区画(複数可)を覆うまで、30℃で1週間インキュベートした。50μlのアリコートのフザリウム胞子懸濁液を、次いで、プレートのSAB区画に移した。プレートを、30℃でさらに3日間インキュベートした。
ロドコッカス細胞はまた、尿素、塩化コバルト、アスパラギンなどの異なる補充物質を含有し、10mlリン酸緩衝液にけん濁されたYEMEA(8個のプレート)からも擦り取った。細胞懸濁液を、培地を含有しない仕切り付きペトリ皿の区画に移させた。フザリウム種の胞子(10の胞子/ml)を含有する膜を、フザリウム種の豊富な増殖を可能にする培地である、SAB(サブローデキストロース寒天)を含むプレートの区分に移した。
図3に提供される画像は、誘導されたロドコッカス細胞が、胞子発芽及びそれに続く真菌の増殖を阻害するために、必ずしも真菌胞子と接触する必要はないことを示す。この図はまた、誘導されていない細胞が、胞子発芽及びそれに続く増殖に影響を及ぼさないことを示す。図4は、ロドコッカスの細胞が、増殖培地から取り出して緩衝液中に配置した場合でも、依然として真菌(フザリウム種)の発芽及び増殖を阻害したことを示すが、ただし、細胞が取り出される増殖培地がロドコッカス細胞を誘導することを条件とする。誘導されていない細胞は、胞子発芽及びそれに続く増殖に影響を有さなかった。結果は、一旦誘導されると、ロドコッカス細胞は、真菌の胞子発芽及びそれに続く増殖を阻害する能力を保持することを示す。
これらの実験は、真菌の阻害が生じるためにロドコッカス触媒が物理的接触にある必要はないことを示す。真菌の胞子発芽及びカビ増殖の阻害は、モモから得られた真菌単離物の全てにおいて見られた。
さらに、真菌増殖を阻害するためには触媒が新たに調製されたものでなければならないかどうかを決定するために、実験を行った。グルタルアルデヒド/PEI固定化した、ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253の誘導細胞は、触媒が新たに調製されたか、いくらかの期間保存されていたものであるかにかかわらず、果実における真菌増殖を阻害する能力を呈した。触媒は、−80℃、−20℃、4℃、及び室温で保存した。室温で4週間保存した触媒は、依然として真菌増殖を阻害する能力があった。
触媒が果実及び/または植物の不在下で真菌増殖を阻害することができたかどうかを決定するために、誘導されたロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253細胞を真菌に曝露した。真菌への誘導細胞の曝露が長いほど、真菌増殖の阻害に対するより優れた効果が観察されたことを確認した。例えば、真菌が48時間のみ曝露された場合、真菌のいくらかの回収が観察された。しかしながら、触媒を真菌に96時間曝露した場合、真菌は回収されなかった。
カルバミン酸メチルは、真菌増殖を阻害するようにロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253細胞を誘導することができたことが、実験中に観察された。カルバミン酸メチルの濃度範囲は、本質的に、ロドコッカス細胞を誘導する際の尿素と同じであった。
さらに、誘導されていない細胞(例えば、誘導されていないロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253、ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96622、またはロドコッカス・エリスロポリスATCC 47072細胞)に近接して配置された、生きた誘導されたロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253細胞が、誘導されていない細胞を、真菌増殖を阻害するように誘導することができたことが、実験中に観察された。
真菌増殖の阻害が、クロコウジカビ及びG.デストラクタンスを含む、他の胞子に観察された。
実施例2:ジオマイセス・デストラクタンスの胞子における胞子発芽の阻害
好冷真菌であるジオマイセス・デストラクタンスは、冬眠中のコウモリに罹患する、コウモリにおける「白鼻症候群(White Nose Syndrome)」の原因となる物質である。現在までに、400万匹のコウモリがこの疾患により死亡しており、これは、自然受粉に多大な悪影響を有している。
G.デストラクタンスの増殖に最適な温度は15℃であり、増殖は、4℃で生じる。SDA(サブローデキストロース寒天)の対照プレートは、15℃で豊富な菌糸体の増殖及び分生子形成を示し、4℃ではより遅い増殖及び分生子形成を示した。誘導されていないロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253細胞(30℃で増殖させた後、G.デストラクタンスに近接して設置した)は、15℃または4℃のいずれにおいても、SDA上に配置したG.デストラクタンス胞子の発芽、増殖、及び胞子形成に影響を有さなかった。(図9)。しかしながら、誘導されたR.ロドクラウスDAP 96253細胞を、15℃でG.デストラクタンス胞子に近接して設置した場合、G.デストラクタンス胞子の発芽は検出されなかった。誘導されたR.ロドクラウスDAP 96253細胞は、41日(現在の最大実験期間)後にもG.デストラクタンスに対する有効性を示し続ける。
4℃で、低減された発芽及び異常な菌糸体形成が、誘導されたR.ロドクラウスDAP 96253細胞に曝露されたG.デストラクタンス胞子に確認された(図10)。7℃で、低減された増殖が確認された。
G.デストラクタンス胞子(15℃でSDA上)を、誘導されたR.ロドクラウスDAP 96253細胞に数日間曝露し、次いでR.ロドクラウスDAP 96253細胞を除去したとき、G.デストラクタンス胞子は全く発芽できなかったことに留意する。これは、15℃で示される阻害が、G.デストラクタンス胞子にとって致死的であることを示唆する。
15℃で行った実験を、さらにより大きな容器(1.1ガロン)を使用して繰り返しても、完全な阻害が依然として確認される。
実施例3:異なる保存緩衝液中の誘導されたロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253細胞における選択された酵素の活性に対する低温の影響。
誘導されたロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253細胞における選択された酵素の活性に対する低温の影響を、異なる保存緩衝液において評価した。結果を表3に示す。
Figure 0006416865
実施例4:4〜7℃で3週間保存したモモへの影響。
手順
1mlのグリセロールストックを250mlの栄養培地に移すことによって、−80℃で保存したグリセロールストックからロドコッカス種DAP 96253培養を開始した。2日間150rpmで撹拌しながら、培養物を30℃でインキュベートした。栄養寒天プレートに接種し、30℃で2日間インキュベートした。これらのプレートからの細胞を擦り取り、グルコースならびに以下の添加剤:コバルト、尿素、及びアスパラギンが補充されたYEMEAプレートのための接種材料として使用した。YEMEAプレートを30℃で1週間インキュベートした。細胞を、YEMEAプレートから擦り取り、計量し(5〜10g)、細胞の試料を採取し、ニトリルヒドラターゼ(NHase)アミダーゼ及びACCデアミナーゼ活性を決定した。結果を表4に示す。
ロドコッカス細胞(5g〜10g)を10mlの50mMのリン酸緩衝液中に懸濁し、ペトリ皿に移し、それを、3週間4℃で保存した6個のモモを含む茶色の紙袋中に配置した。袋を閉じ、7日間室温で放置した。この実験を3回繰り返した。
炭水化物の決定
10gのモモの試料(3個)を曝露後に採取し、50ml間中の10mlの水に移した。試料を氷上で押し潰し、4,000rpmで10分間遠心分離し、1mlの試料を採取し、微小遠心管に移し、13,000rpmで10分間遠心分離した。試料を1:100で希釈し、続いて1:10で希釈した。
グルコースストック溶液を調製し(1mg/ml)、100ug/mlの標準溶液をストックから調製し、基準として使用した。
5mlのアントロン試薬(100mlの75%硫酸中に溶解した200mgのアントロン)を1mlの試料に添加することによって、ガラス試験管中の試料、基準、及び陰性対照に対して、アントロン反応を実施し、溶液を混合し、3.5分間100℃で水槽中に配置した。管を冷却し、吸光度を625nmで読み取った。結果を表5に示す。
Figure 0006416865
Figure 0006416865
データは、果実が長期間冷蔵保存された後、ロドコッカス触媒が果実の熟成の遅延に有効であったことを示した。触媒はまた、果実上の低温障害及び真菌増殖を防止することができた。
上述の実験を数回繰り返した。全ての事例において、触媒で処理したモモは、4〜7℃での保存による悪影響の低減を示した。また、果実を低温保存庫に配置した時に触媒を導入する並行実験も行った(結果は、本質的に上述のものと同じであった)。
実施例5:出荷の際に厳しい温度過渡に供され、次いで6.1℃で保存されるモモ。
航空便で受容される1セットのモモは、出荷の際に非常に低い温度過渡を経験すると見られた。対照のモモは、極めて加速した腐敗及びカビの関与を示した。触媒処理したモモは、最大2週間4〜7℃で悪影響の低減を示した。
Figure 0006416865
実施例6:揮発物を通じたロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253によるフザリウム胞子形成の阻害
手順
真菌の阻害
ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253培養を、1mlのグリセロールストックを、250mlの栄養培地に移すことによって、−80℃で保存したグリセロールストックから開始した。2日間150rpmで撹拌しながら、培養物を30℃でインキュベートした。栄養寒天プレートに接種し、30℃で2日間インキュベートし、モモから単離したフザリウム種を、SABプレートに筋状に蒔き、7日間増殖させた。胞子を採取し、10の胞子/mlに希釈した。
仕切り付きペトリ皿(プレート1つ当たり3または4つの区画)をこれらの実験で使用した。2つの区画は、YEMEAを含有し、他の2つの区画はSABを含有した。YEMEA区画にロドコッカス細胞を接種し、プレートをパラフィルムで包み、30℃で1週間インキュベートした。1週間のインキュベーションの後、ロドコッカス区分は細菌叢含有しており、50μlのフザリウム胞子懸濁液をプレートのSAB区画に移した。プレートを、30℃で3日間インキュベートした。
さらに、尿素、塩化コバルト、アスパラギンなどの異なる補充物質を含有するYEMEA(8個のプレート)からロドコッカス細胞を擦り取り、10mlのリン酸緩衝液中に懸濁し、細胞懸濁液を、培地を含有しない仕切り付きペトリ皿の区画に移した。フザリウム種の胞子(10の胞子/ml)を含有する膜を、YEMEA培地を含有するプレートの区画に移した。
シアニド生成
シアニドの生成を、ピクリン酸塩紙方法を使用して評価した。湿式ピクリン酸(1.4g)を100mlの2.5%炭酸ナトリウム中に溶解することによって、ピクリン酸塩紙を調製した。ワットマン濾紙を黄色のピコリン酸塩溶液に20秒間浸漬させ、次いで乾燥させ、小片に切断し、−20℃で暗所において保存した。黄色の小片は、シアニドの存在下でピンク色/赤色に変化する。
ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253を、異なる補充物質(尿素、コバルト、アスパラギン)を含有するYEMEAに接種し、ピクリン酸塩の小片をペトリ皿の蓋にテープで止め、プレートをパラフィルムで包み、7日間インキュベートした。シュードモナス・エルギノーサ(GSU 3)をシアニド生成の陽性対照として使用し、仕切り付きのプレートを使用して細菌によるシアニド生成がフザリウムの胞子形成を阻害し得るという仮説を試験するために、GSU 3はTSAを含有する区画に接種し、一方で真菌はSABを含有する別の区画に接種した。
結果
ロドコッカスを、ペトリ皿において、フザリウムとは別個の区画に尿素、コバルト、及びアスパラギンなどの異なる補充物質において増殖させた。尿素を補充した培地でロドコッカスを増殖させたとき、真菌の胞子形成/増殖に有意な阻害があり(図20)、補充物質不含培地及びコバルトのみを補充した培地は、真菌の胞子形成にいずれの遅延も示さなかった(図19)。図21は、補充物質なしで増殖させたロドコッカス細胞を、尿素補充、コバルト補充、ならびにコバルト及び尿素補充と比較する。図19〜21は、ロドコッカス細胞が培地で増殖している間の阻害を示し、図22は、尿素を補充したプレートから擦り取った細胞が、依然として真菌増殖を遅延させることに有効であり得ることを示す。これらの実験で観察された阻害は、真菌及びロドコッカスの増殖が、仕切り付きプレートを使用して分離されていたため、培地中の代謝産物または化合物に起因するものではなかった。
ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253は、検出にピクリン酸塩の方法を使用して、いずれのシアニド生成も示さなかった。シュードモナス・エルギノーザGSU 3は、ロドコッカス実験において同じ濃度の胞子を使用して、フザリウムの胞子形成にいずれの影響も有さなかったシアニドの生成を示した。
結論
フザリウム及び他の真菌種の存在下で増殖させたロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253は、真菌の胞子形成を阻害する。ロドコッカスを使用した培地はまた、真菌の胞子形成を阻害/遅延させる。
これらの実験は、真菌阻害の機構が複雑であること、及び生物が仕切り付きペトリプレートを使用して分離されたままであったため、揮発物にも関与することを示す。尿素の存在下で増殖させたロドコッカス細胞は、真菌の胞子形成及び増殖の阻害を示した。これは、真菌が胞子形成及び増殖のために必要とする揮発性シグナルを代謝する、尿素によって誘導される酵素(ACCデアミナーゼ、アミダーゼ)に起因し得る。
細菌によるシアニド生成が真菌増殖を阻害することが示されており、ロドコッカス細胞は、ピクリン酸塩紙の方法を使用していずれのシアニド生成も示しておらず、これは、真菌の阻害が、他の揮発物またはエチレンなどの揮発物の破壊に起因し得ることを示唆する。

Claims (36)

  1. 真菌を含んでいるかまたは真菌増殖し易い場所における真菌増殖を阻害または低減させるための方法であって、前記場所の付近であるが直接ではない場所に、1つ以上の細菌を含む組成物を配置することを含み、前記1つ以上の細菌は、ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96253(ATCC番号55899)、ロドコッカス・ロドクラウスDAP 96622(ATCC番号55898)、ロドコッカス・エリスロポリス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記1つ以上の細菌は、前記場所での真菌増殖を阻害または低減させるのに十分な量で提供され、前記1つ以上の細菌は、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、モノオキシゲナーゼ、ジオキシゲナーゼ、シアニダーゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、1つ以上の酵素を生成するように誘導される、方法。
  2. 前記組成物が、尿素、カルバミン酸メチル、メタクリルアミド、アセトアミド、コバルト、アスパラギンもしくはアスパラギン誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される誘導剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記誘導剤が、尿素またはカルバミン酸、ならびにコバルト及びアスパラギンのうちの1つ以上を含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記組成物が、安定剤をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記安定剤が、トレハロースである、請求項4に記載の方法。
  6. 前記1つ以上の細菌は、グルタルアルデヒドで固定され、架橋される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記1つ以上の細菌が、コーティング層中に提供される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記コーティング層が、疎水性脂肪酸ポリエステルコーティングまたはワックスから選択される、請求項7に記載の方法。
  9. 前記組成物が、磁気材料を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記磁気材料が、鉄を含む、請求項9に記載の方法。
  11. 前記場所が、無生物物体または材料である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記無生物物体または材料が、カウンタートップ、ダンボール箱、無機表面、包装紙、壁板、木材、医療デバイス、及び外科用包帯からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
  13. 前記場所が、穀物サイロである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記場所が、田畑であり、前記組成物は、前記穀物の収穫の前または最中に田畑に適用される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記場所が、植物または植物部位である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記植物または植物部位が、果実、野菜、及び花からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
  17. 前記植物または植物部位が、果実または野菜であり、前記果実または野菜は、リンゴ、アプリコット、アスパラガス、アボカド、バナナ、マメ、キャベツ、カンタロープ、キュウリ、ナス、グレープフルーツ、ブドウ、ハネデューメロン、レモン、レタス、ライマメ、ライム、マンゴー、ネクタリン、オクラ、オレンジ、パパイヤ、モモ、ペッパー、パイナップル、ジャガイモ、カボチャ、大豆、ホウレン草、夏カボチャ、サツマイモ、トマト、スイカ、冬カボチャ、及びズッキーニからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
  18. 前記植物または植物部位が、花である、請求項15に記載の方法。
  19. 前記花が、カーネーション、バラ、ラン、マツバボタン、ゼニアオイ、ベゴニア、アンスリウム、カトレア、及びポインセチアからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
  20. 前記植物または植物部位が、穀物である、請求項14に記載の方法。
  21. 前記穀物が、穀実粒、デンプン粒、穀実用豆果、及び油料種子からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
  22. 前記穀実粒が、トウモロコシ、モロコシ、フォニオ、キビ、コメ、ライ麦、大麦、オート麦、ライコムギ、ワイルドライス、及びテフからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
  23. 前記デンプン粒が、アマランス、キノア、及びソバからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
  24. 前記穀実用豆果が、大豆、インゲンマメ、ヒヨコマメ、ライマメ、サヤマメ、キマメ、レンズマメ、サヤエンドウもしくはエンドウ、ハウチワマメ、緑豆、ソラマメ、及びピーナツからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
  25. 前記油料種子が、ナタネ(キャノーラを含む)、カラシナ、黒ガラシ、ヒマワリ種子、ベニバナ、亜麻仁(亜麻ファミリー)、麻の実(麻ファミリー)、及び芥子粒(芥子ファミリー)からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
  26. 前記真菌増殖が、カビ、酵母、白カビ、黒穂病を引き起こす真菌、サビ病を引き起こす真菌、植物の病害を引き起こす真菌、及び動物の疾患を引き起こす真菌から成る群から選択される真菌によってもたらされる、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
  27. 前記真菌が、トリコデルマ種、クロコウジカビ、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・フミガーツス、アルテルナリア・アルテルナータ、エピコッカム・ニグラム、ピキア・パストリス、ジオマイセス・デストラクタンス、ジオマイセス・アスペルラツス、及びジオマイセス・パノラムからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
  28. 前記組成物が、液体形態で提供される、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
  29. 前記液体が、前記場所またはその付近に噴霧される、請求項28に記載の方法。
  30. 前記組成物が、液体担体をさらに含む、請求項28または29に記載の方法。
  31. 前記液体担体が、芳香族炭化水素、置換ナフタレン、フタル酸エステル、脂肪族炭化水素、アルコール、及びグリコールからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
  32. 前記組成物が、固体として提供され、前記固体は、前記場所またはその付近に適用される、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
  33. 前記固体が、固体担体をさらに含む、請求項32に記載の方法。
  34. 前記固体担体が、細粉、湿潤性粉末、水分散性顆粒、及び無機充填剤からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
  35. 前記無機充填剤が、カルサイト、シリカ、タルク、カオリン、モンモリロナイト、アタパルジャイト、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
  36. 前記場所を、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、アスパラギナーゼ、ACCデアミナーゼ、シアノアラニンシンターゼ様酵素、アルカンモノオキシゲナーゼ、アンモニウムモノオキシゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、トルエンジオキシゲナーゼ、シアニダーゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の外因性酵素に曝露することをさらに含み、前記1つ以上の外因性酵素が、前記場所の真菌増殖を阻害または低減させるのに十分な量で、前記植物または植物部位に曝露される、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
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