JP6414688B2 - トンネル鋼製支保工の構造 - Google Patents
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このような早期閉合は、膨張性地山の安定化や周囲地山の変位抑制を目的として採用されている。そして、早期閉合では地山の膨張性が著しいほど、また周辺地山の変位を厳密に抑制しなければならないほど、切羽から支保工による閉合部分までの距離(以下、閉合距離とする)を小さくする必要がある。
このため、早期閉合において閉合距離を小さくすると、下半鋼製支保工と鋼製インバート支保工との接合部に生じる曲げモーメントによって鋼製インバート支保工が損傷する虞がある。
また、地山に支持された連結部を有することにより、一次側支保工の鋼製支保工および二次側支保工の鋼製支保工の軸力を地山に支持させることができる。そして、連結部が一次側支保工の鋼製支保工と二次側支保工の鋼製支保工とを相対変位可能に連結していることにより、地山からの土圧などにより一次側支保工の鋼製支保工が変位した場合も、二次側支保工の鋼製支保工を所定の位置に支持することができる。
特に、インバート掘削時に一次側支保工の下半鋼製支保工と二次側支保工の下半鋼製支保工とが連結部によって連結されていると、一次側支保工の下半鋼製支保工および二次側支保工の下半鋼製支保工が確実に地山に支持されるとともに、いわゆる「鋼製支保工の軸力の抜け」を防止でき、周辺地山の緩みや吹付けコンクリート等、他の支保工メンバーへの支保力の移行を抑制できる。
このような構成とすることにより、現場にて鋼製支保工のトンネル周方向の長さを容易に調整することができる。また、予め複数の長さの調整部を用意し、トンネル周方向に隣り合う鋼製支保工分割体の間隔に合せて調整部を選択することで、効率よく鋼製支保工のトンネル周方向の長さを調整することができる。
また、連結部を有することにより、一次側支保工の鋼製支保工および二次側支保工の鋼製支保工の軸力を地山に支持させることができる。そして、連結部が一次側支保工の鋼製支保工と二次側支保工の鋼製支保工とを相対変位可能に連結していることにより、地山からの土圧などにより一次側支保工の鋼製支保工が変位した場合も、二次側支保工の鋼製支保工を所定の位置に支持することができる。
図1に示す本実施形態によるトンネル鋼製支保工の構造1は、補助ベンチ付き全断面工法等により掘削されたトンネル掘削断面を切羽近傍において早期に支保工でリング状に閉合する早期閉合を行うトンネル構築に用いられる二重支保工の鋼製支保工である。
本実施形態によるトンネル鋼製支保工の構造1では、地山11側に設置された一次側支保工2の鋼製支保工と、一次側支保工2のトンネル内部12側に一次側支保工2と間隔をあけて設置された二次側支保工3の鋼製支保工と、地盤に支持されるとともに一次側支保工2の鋼製支保工と二次側支保工3の鋼製支保工とを連結する連結部4と、を有している。
また、二次側支保工3は、一次側支保工2の上半鋼製支保工21のトンネル内部12側(下側)に配置される上半鋼製支保工31と、上半鋼製支保工31の両端部にそれぞれ接合され一次側支保工2の一対の下半鋼製支保工22のトンネル内部12側にそれぞれ配置される一対の下半鋼製支保工32,32と、下半鋼製支保工32,32の下端部にそれぞれ接合され一次側支保工2の鋼製インバート支保工23のトンネル内部12側(上側)に配置される鋼製インバート支保工33と、を有している。
本実施形態では形鋼211はH形鋼で、フランジの板面がトンネルの内周面と平行となる向きに配置されている。形鋼211は延在方向の両端部211a,211aが略同じ高さに配置され、延在方向の中間部211bが両端部211a,211aよりも地山11側(上側)に突出するように湾曲している。
継手板212,212は、それぞれ板面が略長方形状に形成されていて、一方の板面が形鋼211の端面と接合されている。継手板212,212には、それぞれ形鋼211と干渉しない位置にトンネル軸方向(図1乃至図3の紙面に直交する方向、図4の矢印Bの方向)に間隔をあけて2つのボルト孔213,213(図3および図4参照)が形成されている。
本実施形態では形鋼221は上半鋼製支保工21と同じ断面形状のH形鋼で、フランジの板面がトンネルの内周面と平行となる向きに配置されている。形鋼221は延在方向の一方の端部221aが他方の端部221bよりも上側に配置され、延在方向の中間部221cが両端部221a,221bよりも地山11側(トンネル軸方向から見た側方)に突出するように湾曲している。
継手板222,222は、上半鋼製支保工21の継手板212と同様にそれぞれ板面が略長方形状に形成されていて、一方の板面が形鋼221の端面と接合され、板面が形鋼221の延在方向と直交するように配置されている。継手板222,222には、形鋼221と干渉しない位置にトンネル軸方向に間隔をあけて2つのボルト孔223,223(図3および図4参照)が形成されている。
2つの鋼製インバート支保工分割体24,24は、それぞれトンネル周方向に延在する形鋼241と、形鋼241の延在方向の両端部にそれぞれ接合された2つの継手板242,242と、を有している。
本実施形態では形鋼241は上半鋼製支保工21および下半鋼製支保工22と同じ断面形状のH形鋼で、フランジの板面がトンネルの内周面と平行となる向きに配置されている。形鋼241は延在方向の中間部241bが両端部241a,241aよりも地山11側に突出するように湾曲している。
継手板242,242は、上半鋼製支保工21および下半鋼製支保工22それぞれの継手板212,222と同様にそれぞれ板面が略長方形状に形成されていて、一方の板面が形鋼241の端面と接合され、板面が形鋼241の延在方向と直交するように配置されている。継手板242,242には、形鋼241と干渉しない位置にトンネル軸方向に間隔をあけて2つのボルト孔243,243(図5参照)が形成されている。
本実施形態では形鋼251は鋼製インバート支保工分割体24と同じ断面形状のH形鋼で、フランジの板面がトンネルの内周面と平行となる向きに配置されている。
継手板252,252は、鋼製インバート支保工分割体24の継手板242と同様にそれぞれ板面が略長方形状に形成されていて、一方の板面が形鋼251の端面と接合され、板面が形鋼251の延在方向と直交するように配置されている。継手板252,252には、形鋼251と干渉しない位置にトンネル軸方向に間隔をあけて2つのボルト孔253,253が形成されている。
また、調整駒25は、長さの異なる複数の種類のものが製造されていて、鋼製インバート支保工分割体24,24の間隔に合せて最適な長さの調整駒25を選択して設置できるように構成されている。
また、下半鋼製支保工22と鋼製インバート支保工23とは、互いの継手板222,242どうしを突き合わせるようにしてボルト接合されている。また、下半鋼製支保工22と鋼製インバート支保工23とは、それぞれの軸線が隅角を成さずにトンネル周方向に連続するように接合されている。
二次側支保工3の一対の下半鋼製支保工32,32は、それぞれ設置されるトンネル掘削断面の形状に合わせて一次側支保工2の下半鋼製支保工22と同様に構成され、形鋼321および2つの継手板322,322を有している。
二次側支保工3の鋼製インバート支保工33は、設置されるトンネル掘削断面の形状に合わせて一次側支保工2の鋼製インバート支保工23と同様に構成され、鋼製インバート支保工分割体34,34および調整駒35を有している。鋼製インバート支保工分割体34,34は、それぞれ設置されるトンネル掘削断面の形状に合わせて一次側支保工2の鋼製インバート支保工分割体24と同様に構成され、形鋼341および2つの継手板342,342を有している。調整駒35は、設置されるトンネル掘削断面の形状に合わせて一次側支保工2の調整駒25と同様に構成され、形鋼351および2つの継手板352,352を有している。
また、二次側支保工3の下半鋼製支保工32と鋼製インバート支保工33とは、互いの継手板322,342どうしを突き合わせるようにしてボルト接合されている。また、下半鋼製支保工32と鋼製インバート支保工33とは、それぞれの軸線が隅角を成さずにトンネル周方向に連続するように接合されている。
連結部4は、地山11に支持され一次側支保工2の下半鋼製支保工22に固定された第1固定部41と、二次側支保工3の下半鋼製支保工32に固定された第2固定部42と、を有している。
支持部43は、一次側支保工2よりも地山11側に配置され、上下方向に延在する形鋼431と、形鋼431の下端部に接合された鋼板432と、を有している。
形鋼431は一次側支保工2の下半鋼製支保工22の形鋼221と略同じ断面形状に形成されている。そして、形鋼431は、一次側支保工2の下半鋼製支保工22の形鋼221とトンネル軸方向に同じ位置に配置され、上端部が一次側支保工2の下半鋼製支保工22の形鋼221に接合されている。
鋼板432は、地山11を掘削して形成した水平面上に設置されていて、鋼板432を介して形鋼431の軸力が地山11に伝わるように構成されている。
これにより、一次側支保工2の鋼製支保工の荷重の一部が第1固定部41を介して地山11に伝わるように構成されている。
L型材441は、垂直に接合された2枚の板部441a,441bのうちの一方の板部441aの板面が水平面となり、他方の板部441bの板面が鉛直面となり、一方の板部441aが他方の板部441bよりも上側となるように配置されている。ここで、一方の板部441aを水平板部441aとし、他方の板部441bを鉛直板部441bとする。
L型材441の水平板部441aには、上下方向に貫通しL型材441の延在方向に延びる長孔441eが形成されている。
水平板部46には、上下方向に貫通するボルト孔46eが形成されている。
そして、第1固定部41と第2固定部42とは、長孔441eの延在長さの範囲で水平方向に相対変位可能となっている。これにより、第1固定部41が固定された一次側支保工2の鋼製支保工と第2固定部42が固定された二次側支保工3の鋼製支保工とが水平方向に相対変位可能となっている。
また、第1固定部41と第2固定部42とは上下方向に連結されている。これにより、二次側支保工3の鋼製支保工の荷重の一部が第2固定部42および第1固定部41を介して地山11に伝わるように構成されている。なお、一次側支保工2に沈下がある場合は水平板部441aと水平板部46の間に調整駒等を介して二次側支保工3を設計高さに設置することもできる。
まず、トンネル軸方向の所定範囲においてトンネル掘削断面の上下半掘削を補助ベンチ付き全断面工法等で行うとともに、一次側支保工2の上半鋼製支保工21および下半鋼製支保工22と、二次側支保工3の上半鋼製支保工31および下半鋼製支保工32とを設置する。なお、各鋼製支保工は吹付けコンクリート、ロックボルト等の他の支保工メンバーと合わせて支保工として施工される。また、上下半掘削、支保工施工時には、インバート掘削は行われていないため、一次側支保工2および二次側支保工3の下半鋼製支保工22,32の下端部と地山11との間に接地部材(足付けプレート)5を配置する。
そして、このとき連結部4で一次側支保工2の下半鋼製支保工22と二次側支保工3の下半鋼製支保工32とを連結する。
なお、インバート掘削を行う際には、接地部材5を撤去して行うが、連結部4が設置されていることにより、地山11が連結部4を介して一次側支保工2の上半鋼製支保工21、下半鋼製支保工32および二次側支保工3の上半鋼製支保工31、下半鋼製支保工32の軸力を保持することができる。
このようにして、鋼製インバート支保工33を建て込み、吹付けコンクリートを実施すれば、トンネル掘削断面が一次側支保工2および二次側支保工3によって閉合される。
続いて、再度、上下半の掘削、支保工を所定回実施した後、閉合されたトンネル掘削断面の掘削方向の前側の所定範囲を同様に掘削して一次側支保工2および二次側支保工3を設置し、掘削されたトンネル掘削断面を一次側支保工2および二次側支保工3によって閉合する。
上述した本実施形態によるトンネル鋼製支保工の構造1では、下半鋼製支保工22,32と鋼製インバート支保工23,33とがそれぞれの軸線が隅角を成さずに連続するように接合されることにより、上半鋼製支保工21,31および下半鋼製支保工22,32の軸力が鋼製インバート支保工23,33の軸方向に作用するため、下半鋼製支保工22,32および鋼製インバート支保工23,33の接合部に生じる曲げモーメントを抑えることができる。これにより、鋼製インバート支保工23,33の変位や座屈・曲げ破壊などの変形を防止することができる。
なお、二次側支保工3の鋼製インバート支保工33についても、一次側支保工2の鋼製インバート支保工33と同様に効率よくトンネル周方向の長さを調整することができる。
例えば、上記の実施形態では、連結部4は一次側支保工2の下半鋼製支保工22と二次側支保工3の下半鋼製支保工22とを連結しているが、一次側支保工2の上半鋼製支保工21と二次側支保工3の上半鋼製支保工21とを連結してもよい。
また、上記の実施形態では、トンネル周方向に隣り合う鋼製支保工はボルト接合されているが、溶接などによって接合されていてもよい。
さらに、二重以上の三重等の鋼製支保工の構造にも適用してもよい。
また、一次側支保工2と二次側支保工3とを相対変位可能な方向は、水平・鉛直方向以外としてもよい。
また、上記の実施形態では、一次側支保工2のトンネル周方向に隣り合う鋼製インバート支保工分割体24,24の間隔に1つの調整駒25が設けられているが、トンネル周方向に隣り合う鋼製インバート支保工分割体24,24の間隔に合せて複数の調整駒25が設けられていてもよいし、調整駒25が設けられていなくてもよい。
調整プレート26は、板面が鋼製インバート支保工分割体24の継手板242と略同じ形状に形成された鋼板で、継手板242のボルト243孔に対応する位置から1つの辺に向かって延びる切欠き部261が形成されている。このような調整プレート26は、トンネル周方向に隣り合う鋼製インバート支保工分割体24と調整駒25との間に、切欠き部261にボルトが挿入された状態にはめ込まれるように構成されている。
なお、鋼製インバート支保工分割体24,24の間には調整駒25が設けられず調整プレート26のみが設けられていてもよい。
なお、二次側支保工3の鋼製インバート支保工33についても一次側支保工2の鋼製インバート支保工23と同様である。
2 一次側支保工
3 二次側支保工
4 連結部
11 地山
12 トンネル内部
21,31 上半鋼製支保工
22,32 下半鋼製支保工
23,33 鋼製インバート支保工
24,34 鋼製インバート支保工分割体(鋼製支保工分割体)
25,35 調整駒(調整部)
26 調整プレート(調整部)
Claims (2)
- 補助ベンチ付き全断面工法等により掘削されたトンネル掘削断面を、地山側に設置されトンネル周方向に配列された複数の鋼製支保工を有する一次側支保工と、該一次側支保工よりも前記トンネル掘削断面の内側に設置されトンネル周方向に配列された複数の鋼製支保工を有する二次側支保工と、で切羽近傍においてリング状に閉合するトンネル鋼製支保工の構造であって、
前記一次側支保工および前記二次側支保工は、トンネル周方向に隣り合う前記鋼製支保工どうしがそれぞれの軸線がトンネル周方向に連続するように接合されていて、
地山に支持されて前記一次側支保工の前記鋼製支保工および前記二次側支保工の前記鋼製支保工の軸力を負担するとともに、前記一次側支保工の前記鋼製支保工と前記二次側支保工の前記鋼製支保工とを相対変位可能に連結する連結部を有することを特徴とするトンネル鋼製支保工の構造。 - 前記鋼製支保工はトンネル周方向に複数の鋼製支保工分割体に分割されていて、
トンネル周方向に隣り合う前記鋼製支保工分割体の間には、前記鋼製支保工のトンネル周方向の長さを調整する調整部を設置可能であることを特徴とする請求項1に記載のトンネル鋼製支保工の構造。
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