以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1〜図5は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は、ブラインドを示す斜視図であり、図2及び図3は、ブラインドのスラットの動作、及び、ブラインドの作用を説明するための図である。また、図4及び図5は、スラットを示す斜視図及び断面図である。
図1に示すように、ブラインド10は、上下方向に配列された多数のスラット20と、スラット20を支持及び操作するための手段と、を有している。図2及び図3に示すように、ブラインド10は、窓1に対面する位置に配置される。スラット20は、羽根板とも呼ばれ、上下方向と非平行な方向に細長く延びる薄板状の部材として形成されている。スラット20は、その傾きが可変となるように支持されている。スラット20の傾きを調整することによって、窓1に対面する位置に配置されたブラインド10は、後述するように種々の機能を発揮することができる。
本実施の形態において、ブラインド10に含まれるスラット20は、鉛直方向に並べられるとともに、各スラット20は水平方向に延びている。このブラインド10は、壁2、天井3及び床4によって区画された室内に配置され、壁2に形成された採光用の窓1に対面するよう、壁2に取り付けられている。ブラインド10は、壁2への取付具となる取付ボックス12と、取付ボックス12から垂下し且つ鉛直方向に間隔をあけて多数のスラット20を支持するラダーコード16と、スラット20を引き上げるための昇降コード18と、ラダーコード16及び昇降コード18に連結された操作グリップ14と、を有している。
本実施の形態において、ラダーコード16は、ブラインド10に含まれるすべてのスラット20を概ね平行となるよう、スラット20の傾きを制御する。そして、操作グリップ14を介してラダーコード16を操作することにより、スラット20の傾きを調整することができる。また、一方、操作グリップ14を介して昇降コード18を操作することにより、下方側のスラット20から順に鉛直方向における間隔を狭めるようにして、多数のスラット20を引き上げることができる。この際、多数のスラット20の少なくとも一部が取付ボックス12内に収容され、且つ、窓1が室内に露出する。同様に、操作グリップ14を介して昇降コード18を操作することにより、上方に集められたスラット20を、窓1に対面する位置に下げることができる。本実施の形態におけるブラインド10において、取付ボックス12、操作グリップ14、ラダーコード16,昇降コード18、並びに、操作グリップ14を介してラダーコード16及び昇降コード18を操作する機構は、既知の種々の構成を採用することができる。
次に、スラット20についてさらに詳述する。本実施の形態において、各スラット20は、図2及び図3に示すように、若干湾曲した薄板状に形成されている。多数のスラット20は、その外輪郭において、互いに同一に構成され得る。その一方で、ここで説明するブラインド10では、上下方向における上方に位置する一部のスラット21が、その他のスラット22と異なる機能を発揮し得るように構成されている。とりわけ、本実施の形態においては、ブラインド10に含まれるスラット20が、上下方向における上方となる上方領域10a内に位置する第1スラット21と、上下方向における下方となる下方領域10b内に位置する第2スラット22と、に区分けされ、互いに異なる構成を有している。
なお、ブラインド10に含まれるスラット20のうち、第2スラット22は、既知のスラットと同様に構成され得る。したがって、第2スラット22は、一例として、耐食アルミニウム合金からなる薄板材、木材からなる薄板材、樹脂からなる薄板材を用いることができる。このような第2スラット22は、不透明であり、可視光遮光性を有している。とりわけ、第2スラット22は、可視光を反射する機能を有しており、入射光の進行方向を変化させる。また、第2スラット22の表面に、ブラインド10に対して遮熱、防汚、抗菌、消臭機能を付与するための機能層が形成されていてもよい。一例として、フッ素コートや酸化チタンコートを第2スラット22に設けることができる。
次に、主として図4及び図5を参照しながら、ブラインド10に含まれるスラット20のうちの第1スラット21について説明する。まず、第1スラット21は、可視光が透過することを可能にする透明な部分25を含んでいる。そして、第1スラット21は、透明な部分25を透過する光の進行方向を曲げることができるよう、構成されている。
なお、上述したように、第1スラット21及び第2スラット22を含むスラット20は、湾曲した薄板形状の輪郭を有している。ただし、図5においては、第1スラット21の全体的な光学機能の理解を容易にするため、第1スラット21を平坦な薄板形状の輪郭にて示している。また、図4及び図5に示された第1スラット21は、図3に示されたスラット20のように起立した状態としている。
図4及び図5に示すように、第1スラット21は、基材層40と、基材層40上に支持された光制御層30と、を有している。基材層40及び光制御層30は、第1スラット21の板面に沿って延びている。一方、光の進行方向を変化させる透明な部分25は、第1スラット21の板面への法線方向に当該第1スラット21を横断し、したがって、透明な部分25は、第1スラット21の厚み方向に光が透過することを可能にしている。第1スラット21は、この点において、その厚み方向へ遮光性を有している従来のスラットと大きく異なっている。そして、本実施の形態において、第1スラット21の透明な部分25は、基材層40及び光制御層30の少なくとも一部分によって形成される。より具体的には、光制御層30に含まれる後述の第1部分31を含んで第1スラット21の板面への法線方向へ延びる部分によって、少なくとも形成される。以下、基材層40及び光制御層35について順に説明する。
本実施の形態において、基材層40は、後述する光制御層30の製造方法に起因して設けられているが、特に必須の構成要素ではない。したがって、一例として、単なる透明または半透明な樹脂製フィルムから形成され得る。その一方で、基材層40が積極的に何らかの機能を発揮するよう、基材層40に対して防汚、抗菌、消臭機能等を付与してもよい。同様に、図4及び図5において二点鎖線で示すように、光制御層30の基材層40とは反対側に、何らかの機能、例えば、防汚、抗菌、消臭、保護機能を発現することを期待された機能層45をさらに設けるようにしてもよい。
次に、第1スラット21の光制御層30について説明する。光制御層30は、上下方向と非平行な第1方向d1に延び且つ第2方向d2に配列された多数の第1部分31と、第2方向d2に沿って第1部分31と交互に配列された多数の第2部分32と、を有している。図示された例において、第1部分31及び第2部分32は互いに隣接して交互に配列されている。また、光制御層30は、第1部分31及び第2部分32を支持するシート状のベース部分(ランド部)33をさらに有している。このベース部分33は、第1部分31と一体的に形成されており、第1部分31とともに光制御層本体34を形成している。
言い換えると、光制御層30は、複数の溝34aを形成された光制御層本体34と、光制御層本体34の複数の溝34a内にそれぞれ形成された第2部分32と、を有している。
そして、光制御層本体34のうちの隣り合う溝34aの間の部分が、第1部分31を画成している。
図4に示すように、本実施の形態において、第1部分31及び第2部分32は、第1スラット21の長手方向に平行となるよう、水平方向に延びている。すなわち、第1部分31及び第2部分32の長手方向となる第1方向d1は、水平方向に延びている。また、第1部分31及び第2部分32は、第1方向d1に直交し且つ薄板状からなる第1スラット21の板面と平行である第2方向d2に交互に配列されている。なお、スラット20の板面とは、対象となる板状のスラット20を全体的かつ大局的に観察した場合においてその平面方向と一致する面のことを指す。したがって、本実施の形態においては、スラット20の板面は、曲面となっている。
なお、図4に示すように、各スラット20は、水平方向に延びる軸線を中心として湾曲した形状となっている。また、図4に矢印A1で示すように、各スラット20は、ラダーコード16によって、水平方向に延びる軸線を中心として回動するようにその板面の傾きを変化させることができる。
次に、第1部分31及び第2部分32の形状について説明する。図5には、第1スラット21の主切断面として、第1部分31及び第2部分32の配列方向となる第2方向d2及び第1スラット21の板面への法線方向の両方に平行となる断面にて、第1スラット21が示されている。図5に示すように、第2部分32は、光制御層30の基材層40側とは反対側の面の一部をなす底面35と、底面35から延び出た第1側面36及び第2側面37と、を含んでいる。図示された例において、第1スラット21の板面に沿った第1側面36及び第2側面37の離間間隔は、第1スラット21の板面への法線方向に沿って底面35から離間するにつれて、互いに接近していき、最終的に互いに接続している。図示された例において、第2側面37は平坦面として形成されているが、第1側面36は折れ面として形成されている。とりわけ、図示された例では、第1側面36は、底面35に接続する急斜面36aと、底面35から離間した側に位置して第2側面37と接続する緩斜面36bと、を含んでいる。第1スラット21の板面への法線方向に対して急斜面36aがなす角度は、第1スラット21の板面への法線方向に対して緩斜面36bがなす角度よりも大きくなっている。
図示された例において、第2部分32は、第2方向d2に沿って等間隔に配置されている。また、図示された例において、一つの第1スラット21に含まれる第2部分32は、互いに同一に構成されている。以上の第2部分32の構成にともない、図示された例では、一つの第1スラット21に含まれる第1部分31は、第2方向d2に沿って等間隔に配置され、且つ、互いに同一に構成されている。
図5に示された断面での、第2部分32の第2方向d2に沿った配列ピッチは、一例として、1mm以下とすることができ、第1スラット21の板面への法線方向に沿った第2部分32の高さは、1mm以下とすることができる。また、第1スラット21の板面への法線方向に沿った光制御層30の厚みは、100μ以上2mm以下とすることができる。
しかしながら、図示された第1部分31及び第2部分32の構成は、単なる例示であり、例えば後述する第1スラット21の採光機能を考慮して適宜変更することが可能である。一例として、第2部分32の断面形状を、三角形形状や台形形状等の種々の形状に変更することができる。また、複数の第1スラット21が、互いに同一に構成されていてもよいし、或いは、複数の第1スラット21の間で、第1部分31及び第2部分32の少なくとも一方についての形状や配列が異なるようにしてもよい。
次に、第1部分31及び第2部分32の材料について説明する。第1スラット21は、その厚み方向に光を透過可能とする透明な部分25を有している。したがって、第1スラット21の板面に沿って配列された第1部分31及び第2部分32のうちの少なくとも一方が透明となっている。本明細書において「透明」とは、可視光透過率が50%以上となっていることを意味している。なお、本明細書における可視光透過率は、測定対象となる部位をなすようになる材料を東洋紡績製PETフィルム(品番:コスモシャインA4300、厚さ100μm)の上に膜厚1μmで成膜し、分光光度計((株)島津製作所製「UV−2450」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
本実施の形態では、第1部分31が透明となっており、好ましくは、第1部分20の可視光透過率は70%以上となっており、より好ましくは、第1部分20の可視光透過率は90%以上となっている。すなわち、本実施の形態において、光の進行方向を変化させる透明な部分25は、第1部分31と、ベース部分33及び基材層40のうちの第1スラット21の板面への法線方向に沿って第1部分31と並んだ部分と、によって形成されている。第1部分31及び第1部分31と一体的に形成されるベース部分33をなす光制御層本体34に用いられる材料として、例えば、樹脂材料、とりわけ電離放射線の照射により硬化する電離放射線硬化性樹脂の硬化物を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、可視光線硬化性樹脂、近赤外線硬化性樹脂等が挙げられる。樹脂材料の具体例としては、アクリル樹脂が挙げられる。
一方、第2部分32は、第1部分31とは異なる屈折率を有する。本実施の形態において、第2部分32は、バインダーとして機能する主部32aと、主部32a中に分散された任意の機能性含有物32bと、を有している。主部32aの屈折率は、第1部分31の屈折率と異なっており、この結果、第1部分31と第2部分32との界面が、屈折率差を有し、可視光を反射する面として機能する。第1部分31側から入射した可視光を第1部分31と第2部分との界面で反射させるためには、第2部分32の屈折率を第1部分31の屈折率よりも小さくなるように調節することが好ましい。第2部分32の主部32aに用いられる材料として、例えば、樹脂材料、とりわけ電離放射線の照射により硬化する電離放射線硬化性樹脂の硬化物を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、可視光線硬化性樹脂、近赤外線硬化性樹脂等が挙げられる。樹脂材料の具体例としては、第1部分31に用いるアクリル樹脂とは屈折率が異なるアクリル樹脂が挙げられる。もっとも、機能性含有物32bを有する場合にその機能性含有物32bによって第2部分32の屈折率が変わるのであれば、第1部分31に用いるものと同じアクリル樹脂を用いてもよい。
一方、第2部分32の機能性含有物32bは、種々の機能を期待されて主部32a中に分散されており、一例として、熱線吸収材や着色材とすることができる。熱線吸収材として、赤外光波長帯域に吸収特性を有し、且つ、可視光波長帯域に透過特性を有する粒子が用いられる。具体的には、熱線吸収材として、透明性を有する無機ナノ粒子を用いることができ、例えば、アンチモン錫酸化物(ATO) 、インジウム錫酸化物(ITO)、六ホウ化ランタン(LaB6)、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、酸化タングステン、六ホウ化セリウム、無水アンチモン酸亜鉛および硫化銅またはそれらの混合物のナノ粒子等を用いることができる。
また、着色材としては、可視光波長帯域の少なくとも一部の波長域の光を吸収する機能を有する粒子を用いることができる。着色材の一例として、顔料、より具体的には、カーボンブラック、黒鉛、窒化チタン等の黒色顔料や、酸化チタン等の白色顔料を用いることができる。また、紺色、青色、紫色等の青みを帯びた粒子、赤みを帯びた粒子、黄色みを帯びた粒子等を着色材として用いてもよい。着色材としての機能性含有物32bを第2部分32に用いることにより、第2部分32を着色することができる。この際、第2スラット22の色味等も考慮した上で、ブラインド10に意匠性を付与することができる。
なお、以上のような構成からなる、光制御層30は次のようにして製造され得る。まず、第1部分31及びベース部分33をなす光制御層本体34を、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線の照射により硬化する特徴を有するエポキシアクリレート等の硬化性材料を用いて、作製する。具体的には、光制御層本体34の溝34aの構成(配置、形状等)に対応した凸部を有する型ロール、言い換えると、第1部分31の構成(配置、形状等)に対応した凹部を有する型ロールを準備する。当該型ロールとニップロールとの間に基材層40をなすようになるシートを送り込み、該シートの送り込みに合わせて、硬化性材料を型ロールと基材層40との間に供給する。その後、基材層40上に供給された未硬化状態で液状の硬化性材料が型ロールの凹部に充填されるように、型ロールおよびニップロールで該硬化性材料を押圧する。このとき、型ロールの凹部の深さより厚くなるように、すなわち、型ロールと基材層40とが接触しないように、硬化性材料を基材層40上に供給しておくことによって、上述したベース部分(ランド部)33が、第1部分31と一体的に硬化性材料から形成されるようになる。以上のようにして基材層40と型ロールとの間に未硬化で液状の硬化性材料を充填した後、光を照射して該硬化性材料を硬化(固化)させることによって光制御層本体34を形成することができる。
次に、硬化することによって主部32aをなすようになる硬化性材料と、任意の機能性含有物32bと、を含んだ未硬化で液状の組成物を用いて第2部分32を作製する。硬化することによって主部32aをなすようになる硬化性材料として、電離放射線により硬化する特徴を有するウレタンアクリレート等の硬化性材料を用いることができる。まず、先に形成された光制御層本体34上に組成物を供給する。その後、隣り合う第1部分31の間の形成された溝34a、すなわち、型ロールの凸部に対応していた部分の内部に、ドクターブレードを用いながら、組成物を充填しつつ、該溝34a外に溢出した余剰分の組成物を掻き落としていく。その後、第1部分31の間の組成物に電離放射線を照射して硬化させることにより、第2部分32が形成される。これにより、基材層40、並びに、基材層40上に設けられたベース部分33と、ベース部分33上に設けられた第1部分31及び第2部分32と、を有する第1スラット21が作製される。
次に、以上に説明した本実施の形態のブラインド10の作用について説明する。まず、操作グリップ14を操作することにより、窓1に対面する位置において上下に間隔をあけて配列された多数のスラット20の傾きを調整する。本実施の形態では、その板面が互いに平行となるようにして、薄板状のスラット20が配列されている。そして、操作グリップ14を操作することにより、ブラインド10に含まれるすべてのスラット20の傾きを調節することができる。
まず、図2に示された状態でのブラインド10の作用について説明する。図2に示された状態において、スラット20の板面は、室外側から室内側に向けてしだいに下方に位置するようにして、水平方向および鉛直方向の両方向に対し傾斜している。とりわけ、スラット20の板面が、太陽光の入射方向と概ね平行となるように、スラット20の傾きが調整されている。このようなブラインド10によれば、太陽光L21,L22,L23を高い効率にて室内へ採光することができ、太陽光L21,L22,L23によって室内を明るく照明することができる。また同時に、下方領域10bに設けられた、第2スラット22は不透明であることから、この第2スラット22によって、室外から室内の視認性を悪化させることができる。すなわち、第2スラット22により、採光を可能にしながら、併せて、室外から室内を覗かれることを防止することができる。
なお、上方領域10aに位置する第1スラット21は、少なくとも一部分において透明となっている。しかしながら、通常、窓1の上縁は人間の目身長よりも高い位置に配置されていることから、当該窓1が配置されている周辺環境にもよるが、窓1の上方部分を介して室内が覗かれることが問題となることは稀である。したがって、第1スラット21が透明部分を含むことにより、ブラインド10の目隠し機能が著しく劣化することは想定し難い。
ただしこの観点から、第1スラット21が配置される上方領域10aは、一般的な人間の身長や室内にいる人間の目線よりも高い位置にあること、例えば180cmより上方に位置していることが好ましい。また、第1スラット21の第1部分31及び第2部分32の少なくとも一方が着色されている場合、例えば、第2部分32の機能性含有物32bが着色材である場合には、第1スラット21によっても、室外から室内が覗かれることを効果的に防止することができ、これにより、ブラインド10が、室内への太陽光の採光を可能としながら、プライバシー保護機能を十分に発揮することができる。
次に、図3に示された状態でのブラインド10の作用について説明する。図3に示された状態において、スラット20の板面は、概ね鉛直方向に延びている。このようなブラインド10によれば、下方領域10bに位置する不透明な第2スラット22が目隠し機能を発揮し、室外から室内を覗かれることを極めて効果的に防止することができ、例えばプライバシーの保護が図られる。また、太陽光L32,L33が進行方向を変えることなくそのまま室内に入射することを防止することができる。すなわち、ブラインド10が、防眩の観点から、室内への直達光を規制する遮光機能を発揮することができる。また、スラット20が閉じたブラインド10は、室内及び室外の間での熱移動を規制し、遮熱機能を発揮することができる。
ところで、図3に示された全閉状態において、従来のブラインドであれば、太陽光の室内への入射が規制されるため、室内が暗くなってしまい、室内照明を用いる必要が生じる。一方、本実施の形態によれば、ブラインド10に含まれるスラット20のうちの、上方に位置する一部の第1スラット21が、屈折率界面を構成する第1部分31及び第2部分32を含んだ光制御層30を有している。そして、第1部分31及び第2部分32の配列方向である第2方向d2は、図3に示された全閉状態において、図5に示すように概ね鉛直方向に延びるようになり、且つ、本実施の形態では、第2部分32の底面35の側が室外側に位置して第1側面36が上方に位置するようになる。このため、図5に示すように、第1スラット21に斜め上方から入射する太陽光L51,L52は、第1部分31と第2部分32の第1側面36との界面において、反射する。したがって、図3に示すように、斜め上方からの太陽光L31が、室内の上方の領域、典型的には、入射した第1スラット21よりも上方の領域に跳ね上げられるようになる。このため、第1スラット21による採光は、窓1から離間した室内の奥側の領域まで太陽光L31を導くことができる。
とりわけ第2部分32の屈折率が第1部分31の屈折率よりも低い場合には、第1部分31に入射して第1部分31及び第2部分32の界面に到達した光を全反射することができる。全反射によれば、反射損失を生じさせることがないので、期待した方向に太陽光を高い効率にて採光することができ且つ第1スラット21の温度上昇を回避することもできる点においても好ましい。
加えて、本実施の形態では、図5に示すように、第2部分32の第1側面36は、入光側となる室外側に急斜面36aを有し、室内側に緩斜面36bを有している。このため、図5に示すように、水平方向に対して比較的に大きく傾いた方向に進む光L52が急斜面36aに入射しやすくなる。急斜面36aは、このような傾斜のきつい方向からの光L52の進行方向を大きく立ち上げ過ぎないように曲げ、室内の窓1から離間した奥側へ効果的に誘導することができる。一方、水平方向に対して比較的に緩やかに傾いた方向に進む光L51が緩斜面36bに入射しやすくなる。緩斜面36bは、このような傾斜の緩やかな方向からの光L51の進行方向を大きく立ち上げ過ぎないように曲げ、室内の窓1から離間した奥側へ効果的に誘導することができる。
なお、上述したように、上方領域10aに位置する第1スラット21は、少なくとも一部分において透明となっているが、通常、窓1の上方部分を介して室内が覗かれることが問題となることは稀である。したがって、第1スラット21が透明部分を含むことにより、通常であれば、ブラインド10の目隠し機能が著しく劣化することはない。また、第1スラット21は、太陽光L31を上方に跳ね上げるように採光するので、室内の人間が第1スラット21によって採光された光に眩しさを感じることが効果的に防止される。さらに遮熱機能について言えば、冬場における太陽光線の採光は、室内から室外への熱の放出を回避して蓄熱を図るといったそもそもの遮熱の目的に合致し、省エネルギーの観点から促進されるべきである。また、夏場については、第1スラット21が熱線吸収材を含有していれば、具体的には、第2部分32が機能性含有物32bとして熱線吸収材を含有していれば、室外から室内への熱移動を効果的に防止することができるため、ブラインド10の遮熱機能を害することは生じ得ないし、加えて、上方領域10aの位置や大きさを調整しておくことにより、ブラインド10の遮熱機能を著しく害することはい。すなわち、図3に示されたスラット20の全閉状態において、スラット20のうちの第1スラット21は、ブラインド10の目隠し機能、遮光機能、遮熱機能を害することなく、太陽光の室内への有効な採光を実現することができる。
また、第1スラット21の第1部分31及び第2部分32の少なくとも一方が着色されている場合、ブラインド10は、有用な種々の機能をさらに発現することができる。例えば、第2部分32が、着色材としての機能性含有物32bを含んでいる場合、第1部分31が、可視光波長帯域内の少なくとも一部の波長域の光を吸収することができる。この例によれば、図5に示すように、第1部分31及び第2部分32の界面で反射されずに第2部分32内に入射した光L53を吸収することができる。したがって、第1スラット21が、採光機能だけでなく、目隠し機能や遮光機能をも積極的に発現することになる。
さらに、図2及び図3に示された状態とは異なる状態として、室外から室内に積極的に採光した場合には、操作グリップ14を介して昇降コード18を操作することにより、図3の状況から、ブラインド10の下方領域10b内にある第2スラット22を上方に引き上げるようにしてもよい。この状態において、窓1の下方部分がブラインド10で覆われることなく露出し、この窓1の下方部分を介して、ブラインド10による制限無く採光することができる。その一方で、上方領域10a内にある第1スラット21については、図3と同様にその板面が鉛直方向に延びるように傾きを調整しておくことにより、太陽光L31を跳ね上げて室内の全域へ採光を行うことができる。
以上のような本実施の形態によれば、上方に位置する一部のスラット21が、可視光が透過することを可能にする透明な部分25を含み、透明な部分を透過する光の進行方向を曲げる。より具体的には、上方に位置する一部のスラット21が、ストライプ状に配列された第1部分31及び第2部分32を有し、第1部分31が透明な部分25を形成し且つ第2部分32は第1部分31とは異なる屈折率を有する。このため、ブラインド10が、ブラインド10に求められるその他の機能を害することなく、例えば目隠し機能及び遮光機能を十分に発揮しながら、同時に優れた採光機能を発揮することができる。
また、上述した実施の形態において、第1部分31及び第2部分32の少なくとも一方が着色されていてもよく、この場合、優れた採光機能を発揮しながら、目隠し機能及び遮光機能等のその他の機能をより十分に発揮することができる。また、第1スラット21の第1部分31及び第2部分32の少なくとも一方が第2スラット22と同様の色に着色されている場合には、ブラインド10が全体として落ち着きのある意匠性を発揮してブラインド10が設けられた部屋に調和することも可能となる。さらに、第1スラット21の第1部分31及び第2部分32の少なくとも一方が積極的に着色されることにより、当該ブラインド10が設置された室内の装飾を担うことも可能となる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いており、重複する説明を省略する。
例えば、上述した実施の形態において、スラット20が湾曲した形状を有するようにした例を示したが、これに限られない。スラットは平坦な薄板状に形成されていてもよい。
また、上述した実施の形態において、第1スラット21が配置されている領域と、第2スラット22が配置されている領域とが、上下に区分けされている例を示したが、これに限られない。例えば、上述した第1スラット21の採光機能を発現する上で、上方に位置する一部のスラット20が、第1スラット21として構成されていればよい。したがって、例えば、上述した上方領域10a内に、第1スラット21とともに第2スラット22が含まれていてもよい。この場合、上方領域10a内に配置された第1スラット21によって上述した優れた採光機能を発現することができるとともに、上方領域10a内においても、第2スラット22に起因したブラインド10の本来的な機能、例えば目隠し機能、遮光機能、遮熱機能等を発現することが可能となる。
さらに、上述した実施の形態において、第1スラット21の第1部分31及び第2部分32の少なくとも一方を着色するための構成として、着色材としての機能性含有物32bを第2部分32に含有させる例を示したが、この例に限られない。第2部分32に着色剤を含有させることに代えて或いは第2部分32に着色剤を含有させることに加えて、第1部分31に着色材を含有することにより、或いは、第1部分31及び第2部分32の少なくとも一方の表面に着色層を設けることにより、第1部分31及び第2部分32の少なくとも一方を着色してもよい。
さらに、上述した実施の形態において、ブラインド10に含まれるすべてのスラット20の傾きが、平行となるようにして、一括してラダーコード16によって操作される例を示した。しかしながら、図6に示すように、例えば、上方領域10a内に配置されたスラット20と、下方領域10b内に配置されたスラット20とが、別々のラダーコードによって操作されることにより、上方領域10a及び下方領域10bの間において、互いに独立してスラット20の傾きが調整されるようにしてもよい。図6に示された例において、上方領域10a内に第1スラット21が配置され、下方領域10b内に第2スラット22が配置されている。図6に示された状態において、第1スラット21は、その板面が鉛直方向に延び、上述した採光機能を効果的に発揮している。一方、第2スラット22は、太陽の位置や、ブラインド10が配置された部屋固有の状況(例えば室外の環境)等に応じて、目隠し機能、遮光機能、遮熱機能等を所望の程度に発現できるように、第1スラット21の傾きとは独立して、傾きを調整されている。
さらに、上述した実施の形態において、第1スラット21の第1部分31が透明な部分25を形成し且つ透明な部分25内を進む光を第1部分31と第2部分32との界面によって反射してその進行方向曲げることにより、所望の方向に太陽光L31,L51,L52を取り込む採光機能を発現するようにしたが、この例に限られない。図7に示すように、第1スラット21が、プリズム面50を有し、プリズム面50での反射や屈折によって光の進行方向を曲げて当該光を取り込むようにしてもよい。図7に示された例において、第1スラット21は、シート状の本体部51と、本体部51上に配列された多数の単位プリズム52と、を有しており、本体部51及び単位プリズム52は、光が透過可能となるよう透明に形成されている。また図7に示された例において、単位プリズム52は、第1スラット21の長手方向に直交する第2方向d2に配列され、第1スラット21の長手方向と平行な第1方向d1に延びる。さらに、本体部51の一方の面上に単位プリズム52が隙間無く配列されている。
単位プリズム52は、第2方向d2に対向して配置された第1面52a及び第2面52bと、を有している。この第1スラット21では、第1面52a及び第2面52bの一方から単位プリズム52に入射した光を、当該単位プリズム52の第1面52a及び第2面52bの他方で反射、とりわけ全反射することにより、太陽光の進行方向を変化させ且つ当該太陽光が第1スラット21を透過することを可能にする。すなわち、図7に示された例では、第1スラット21の全ての部分が、光の進行方向を変化させて透過させる透明な部分25をなしている。そして、ラダーコード16等を用いて第2方向d2と平行な軸線を中心として第1スラット21の傾きを変化させた場合には、第1スラット21に入射する太陽光が向けられる方向を変化させることもできる。
なお、本明細書における「単位プリズム」とは、屈折や反射等の光学的作用を光に及ぼして、当該光の進行方向を変化させる機能を有する要素のことを指し、「単位形状要素」、「単位光学要素」および「単位レンズ」といった要素と呼称の違いのみに基づいて区別されるものではない。同様に、「プリズム」、「レンズ」及び「光学要素」は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。そして、第1スラット21に用いられる単位プリズム52の形状は、図7に示されたものに限られず、種々の構成の単位プリズムを用いることができる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。