JP6311224B2 - 光制御部材 - Google Patents

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本発明は、入射光の採り込みを制御する光制御部材に関する。
光制御部材は、入射光の取り込みを制御するものであり、その光学特性に応じて様々な用途に用いることができる。例えば、可視域の光を反射または屈折する光制御部材によって、窓から入射された自然光を自然光が直接届かない天井等に導くことで、自然光を屋内の間接照明に有効利用することができる。それによって、室内の照明の使用時間を削減でき、また照明強度を弱めることもできることから、二酸化炭素の消費量を削減でき、かつエネルギー消費も抑制できると考えられる。あるいは、赤外域の光を反射または吸収する光制御部材によって、夏場の室内での冷房の使用時間を削減できるので、やはり二酸化炭素の消費量の削減とエネルギー消費の抑制を図ることができると考えられる。
例えば、特許文献1には、透明シート材に繰り返し作製した凹状の溝に充填材を充填して反射面を形成し、この反射面による反射により、窓を透過した太陽光の光路を折り曲げて屋内に導入するようにした採光シートが開示されている。
また、特許文献2には、シート内の一方向に所定ピッチで遮光部を複数配列させて、これら遮光部により、夏季は室内への太陽光の取り込みを遮断し、冬季は太陽光の取り込みを可能とする光制御シートが開示されている。
特開2012−255951号公報 特開2010−259406号公報
特許文献1では、シート内に設けられる複数の凹状の溝を同じ形状にしており、これら凹状溝に充填される充填材も同じ材料であることから、これら充填材によって形成される反射面に入射された光の反射方向も、入射方向が同じであれば、同じになる。よって、シート内の個別の領域ごとに、光学特性を変えることはできない。
また、特許文献2も、同じ形状の遮光部を所定ピッチで配列する例しか開示していない。よって、やはりシート内の個別の領域ごとに、光学特性を変えることはできない。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、一の光制御部材に複数の光学特性を容易に付与して、入射光を有効活用できる光制御部材を提供することを課題とするものである。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、所定方向に離隔して一方の面側にそれぞれ配置された、複数の溝のうち一部の溝に、第1充填物が充填されており、
前記複数の溝のうち前記第1の充填物が充填された一部の溝を除く他の少なくとも一部の溝に、前記第1充填物とは光学特性が異なる第2充填物が充填されていることを特徴とする光制御部材が提供される。
前記第1充填物と前記第2充填物とは、入射光に対する反射特性、屈折特性、吸収特性、および発光特性の少なくとも一つを含む光学特性が互いに異なっていてもよい。
前記第1充填物と前記第2充填物とは、可視域、赤外域、および紫外域の少なくとも一つの波長域における少なくとも一部の光に対する反射率、屈折率、および吸収率の少なくとも一つが互いに異なっていてもよい。
前記第1充填物と前記第2充填物とは、可視域、赤外域、および紫外域の少なくとも一つの波長域における少なくとも一部の光に起因する発光波長および発光強度の少なくとも一方が互いに異なっていてもよい。
前記第1充填物と前記第2充填物とは、含有している光制御材料の種類および含有量の少なくとも一方が互いに異なっていてもよい。
前記第1充填物が充填される溝と、前記第2充填物が充填される溝とは、形状、サイズ、間隔、および数の少なくとも一つが互いに異なっていてもよい。
前記第1充填物が充填される溝の深さ方向と、前記第2充填物が充填される溝の深さ方向とは、互いに異なっていてもよい。
前記第1充填物が充填される溝の長手方向と、前記第2充填物が充填される溝の長手方向とは、互いに異なっていてもよい。
複数の溝のそれぞれに前記第1充填物を充填した複数の第1光学特性部が所定方向に離隔して配置された第1領域と、複数の溝のそれぞれに前記第2充填物を充填した複数の第2光学特性部が所定方向に離隔して配置された第2領域と、を備え、
前記第1領域および前記第2領域が並んで配置されていてもよい。
本発明によれば、一の光制御部材に複数の光学特性を付与することが容易であり、入射光を有効活用できる。
(a)は第1の実施形態に係る光制御部材1の部分断面図、(b)は光制御部材1の平面図。 (a)は太陽光の入光角度が低い場合のひさし9による遮光範囲を示し、図2(b)は太陽光の入光角度が高い場合のひさし9による遮光範囲を示す図。 第2の実施形態に係る光制御部材1の断面図。 第3の実施形態に係る光制御部材1を貼り付けたロールカーテン30を示す図。 図4のロールカーテン30の使用方法の一例を示す図。 第4の実施形態に係る光制御部材1の例を示す図。 ライトシェルフを設ける例を示す図。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1(a)は第1の実施形態に係る光制御部材の部分断面図、図1(b)はその光制御部材の平面図である。図1の光制御部材1は、例えば窓用のガラス3に貼り付けて窓または採光具を作製することが可能であり、いわゆるウインドウフィルムと呼ばれる。この場合、図1の上下が鉛直方向になる。
図1の光制御部材1の内部構造は、例えば複合ガラスの一部として窓または採光具3に一体に組み込まれてもよい。本実施形態では、図1の光制御部材1の内部構造が窓または採光具に一体に組み込まれた場合を含めて、光制御部材1と呼ぶことにする。
図1の光制御部材1の一方の面(入光面)1aは、例えば接合層2を介して窓または採光具3に貼り付けられている。また、光制御部材1の他方の面(出光面)1bは保護層4で覆われている。
図1の光制御部材1は、所定方向に離隔して一方の面1a側にそれぞれ配置された、複数の溝を備えている。そして、複数の溝のうち一部の溝には、第1充填物が充填されており、また、複数の溝のうち第1の充填物が充填された一部の溝を除く他の少なくとも一部の溝には、第1充填物とは光学特性が異なる第2充填物が充填されている。
具体的には、第1充填物と第2充填物とは、入射光に対する反射特性、屈折特性、吸収特性、および発光特性の少なくとも一つを含む光学特性が互いに異なっていることが好ましい。このとき、第1充填物の光学特性と前記第2充填物との光学特性は、可視域、赤外域、および紫外域の少なくとも一つの波長域における少なくとも一部の光に対する光学特性が異なっていればよい。赤外域では熱的作用に特に影響する近赤外域に含まれる波長範囲、紫外域では化学的作用に特に影響する近紫外域に含まれる波長範囲の光に対する光学特性が異なっていることが特に好ましい。なお、本明細書では、熱線は赤外域の光と同義であり、化学線は紫外域の光と同義である。
第1充填物と第2充填物とは、入射光に対する反射特性、屈折特性、吸収特性、および発光特性の二以上を含む光学特性が互いに異なっていることが好ましい。複数の光学特性が相違することで、より相補的になるので、入射光をさらに有効活用しやすくなるためである。
光学特性の相違する場合の例として、第1充填物と第2充填物とは、可視域、赤外域、および紫外域の少なくとも一つの波長域の光に対する反射率、屈折率、および吸収率の少なくとも一つが互いに異なっているか、その光に起因する発光波長および発光強度の少なくともいずれかが互いに異なっていることが挙げられる。第1充填物と第2充填物との光学特性の相違が明確である方が、それぞれの光学特性の相違を利用して入射光を有効活用しやすいので、反射率、屈折率、吸収率、または発光強度は、第2充填物の値が第1充填物の値よりも10%以上大きいか10%以上小さいことが好ましい。さらに、光学特性の相違がより明確に生じるようにするためには、この差は、50%以上であることがより好ましく、100%以上であることがもっと好ましい。また、反射、屈折、もしくは吸収する光のピーク波長または発光のピーク波長の少なくとも一つの値は、第2充填物の値が第1充填物の値よりも10nm以上離れていることが好ましく、30nm以上離れていることが好ましく、100nm以上であることがさらに好ましい。
以下では、光制御部材1の内部で、第1充填物が充填された溝を第1光学特性部7と呼び、第2充填物が充填された溝を第2光学特性部8と呼ぶ。
光制御部材1には、少なくとも一つの第1光学特性部7が一方の面側に沿って離隔して配置される領域(以下、第1領域)5と、少なくとも一つの第2光学特性部8が一方の面側に沿って離隔して配置される領域(以下、第2領域)6とがある。
光制御部材1では、第1領域5に存在する第1充填物が充填された第1光学特性部7、および第2領域6に存在する第2充填物が充填された第2光学特性部8は、それぞれ複数ずつ所定方向に離隔して配置されており、かつ第1領域5および第2領域6が並んで配置されていることが、特に好ましい。一の光制御部材1に、互いに異なる光学特性が付与された複数の領域が配置されていることで、光制御部材1の使用状況に応じて適した光学特性を各領域ごとに選択することができるからである。また、一定範囲の領域内の複数の溝に一括して同じ充填物を充填できるので、製造効率が向上するからである。したがって、第1領域5や第2領域6はそれぞれ一定の面積範囲を占めていることが好ましく、第1領域5および第2の領域6はいずれも、光制御部材全体の少なくとも1%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上の面積範囲を占めていることが好ましい。
第1領域5と第2領域6は、光制御部材1の鉛直方向または水平方向に二分割された領域のそれぞれに割り当てられてもよいし、第1領域5と第2領域6が鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に交互に複数回ずつ配置されてもよい。
図1の光制御部材1の第1光学特性部7と第2光学特性部8はそれぞれ、溝の深さ方向とを互いに相違させてもよい。第1光学特性部7と第2光学特性部8が互いに異なる充填物で構成されることに加えて、第1光学特性部7と第2光学特性部8用の各溝の長手方向と深さ方向の少なくとも一方が互いに異なることで、入射光の光学特性をより大きく相違させることができる。
図1の光制御部材1の第1光学特性部7と第2光学特性部8はそれぞれ、溝が光制御部材1の一方の面1a側に沿って延びている方向、すなわちその長手方向を、光制御部材1の水平方向(図1の紙面の表裏方向)にしているが、その長手方向を水平方向から傾けてもよい。その際、第1光学特性部7と第2光学特性部8で、それぞれの長手方向を互いに相違させてもよい。第1光学特性部7と第2光学特性部8が互いに異なる充填物で構成されることに加えて、第1光学特性部7と第2光学特性部8の長手方向が互いに異なることで、第1領域5と第2領域6の光学特性をより大きく相違させることができる。
第1光学特性部7と第2光学特性部8の断面形状は、特に限定されず、例えば、三角形、台形、矩形および円形のいずれでもよい。第1光学特性部7と第2光学特性部8とで、断面形状およびそのサイズを互いに変えることでも、第1領域5と第2領域6の光学特性をより大きく相違させることができる。断面形状の相違とは、例えば、第1光学特性部7と第2光学特性部8の断面形状の底辺の長さと高さの少なくとも一方が異なることや、底辺とそれに接する辺との為す角度が異なることや、底辺に対向する辺の長さが異なることが考えられる。
また、第1領域5内の第1光学特性部7の配置間隔および数と、第2領域6内の第2光学特性部8の配置間隔および数とを互いに変えてもよく、これによっても、第1領域5と第2領域6の光学特性をより大きく相違させることができる。なお、第1領域5内の第1光学特性部7の配置間隔は必ずしも均一である必要はない。同様に、第2領域6内の第2光学特性部8の配置間隔も必ずしも均一である必要はない。
このように、第1光学特性部7と第2光学特性部8の充填物の光学特性を互いに相違させることに加えて、第1光学特性部7と第2光学特性部8の形状、サイズ、配置間隔、数、溝の方向などを互いに変えて、第1光学特性部7と第2光学特性部8の光学特性を互いに相違させてもよい。
図1(b)に示すように、第1領域5は第2領域6よりも上方に設けられているが、第1領域5と第2領域6の面積は、同じでもよいし、異なっていてもよい。また、後述するように、第1領域5と第2領域6は、光制御部材1の水平方向の一端側から他端側まで配置されていなくてもよく、水平方向の一部だけに配置されていてもよい。
接合層2と保護層4で挟まれる光制御部材1の内部構造には、溝が形成された母材と前記溝に充填された充填物とが用いられている。
母材は、可視領域の光の少なくとも一部を透過する透明な基材である。母材の主要構成材料は、例えば、アクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、またはポリカーボネートなどを主成分とする樹脂である。これらの樹脂は変性されていてもよい。
充填物は、母材に形成された溝に充填され、光制御材料を含有するものである。光制御材料は、充填物の光学特性を付与するためや調節するために用いられる材料である。光制御材料の含有量は、光制御材料の種類や所望の光学特性の程度によって適宜変えることができ、光学特性への影響が大きい光制御材料を用いるときは少量であってもよい。充填物には、光制御材料を保持する機能を有するバインダーや、光制御以外の機能を付与する添加剤などを含有させてもよい。充填物は、例えば、光制御材料、硬化後にバインダーや架橋部として機能する硬化性材料、および任意の添加剤を含む組成物を母材に形成された溝に充填した後、その組成物を加熱したり光や電子線などの電離放射線を照射したりして得ることができる。このとき、光制御材料自体が硬化性材料であったり、光制御材料が熱可塑性樹脂であったりすれば、光制御材料だけでも形状を保持することができるので、充填物はバインダーを含有していなくてもよい。
第1充填物と第2充填物にそれぞれ含有されている光制御材料の種類および含有量の少なくとも一方を変えることにより、第1光学特性部7の第1充填物と第2光学特性部8の第2充填物との光学特性を異なるようにすることができる。
第1の実施形態の具体例の一つとして、第1領域5内の第1光学特性部7は、入光面から第1光学特性部7の側面に入射された光を斜め上方に反射させて、屋内の天井に導くような反射特性を持っている。このような反射特性を第1光学特性部7に持たせるには、例えば母材よりも屈折率が低い樹脂を充填物の主要構成材料かつ光制御材料として用いることで、第1光学特性部7に充填する充填物の屈折率を母材よりも低くすることが考えられる。母材と充填物が屈折率差を有するので、母材と充填物との界面が光を反射する反射面として機能する。一方、第2領域6内の第2光学特性部8には、第1充填物に用いたものよりも屈折率が低い樹脂を第2充填物の主要構成材料として用いることが考えられる。これによって、第2領域6は、第1領域1よりも全反射の臨界角が小さくなり、より上方寄りの方向から入射された光も反射させることができる。第1の実施形態では、第1領域の方が第2領域よりも上方に位置しているので、窓の近くにいる人間が外光の直射光で照らされることを防止しつつ、反射された光を有効活用することができる。
また、上述の具体例で、第1充填物および第2充填物の少なくとも一方には、粒子状の無機物や有機物の散乱材を光制御材料として含有させてもよい。これによって、第1領域5および第2領域6の少なくとも一方に、光を界面および充填物内で反射させる機能も付与し、充填物を透過しようとする光を散乱して遮ることができる。あるいは、第1充填物および第2充填物の少なくとも一方には、例えば金属薄片などのミラー材を光制御材料として含有させてもよい。これによって、界面で光を反射させる機能を強化することができる。なお、散乱材やミラー材は、光制御材料として単独で用いることができ、充填物の主要構成材料の樹脂に母材と同じ樹脂を用いつつ、散乱材やミラー材で光学特性を付与してもよい。
別の具体例として、第1領域5を上述とした場合に、第2領域6内の第2光学特性部8は、入光面から第2光学特性部8の側面に入光された光を、斜め下方に屈折させてもよい。これにより、本来は日陰になるエリアを照明することができる。この場合の第2光学特性部8の第2充填物の光制御材料としては、母材や第1充填物よりも屈折率が高い樹脂などが考えられる。
また、さらに別の具体例として、第1光学特性部7と第2光学特性部8の少なくとも一方は、入射光を反射または屈折する機能に加えて、あるいはこの機能に代えて、特定波長領域(例えば、近赤外領域や近紫外領域)の光を吸収する機能を持っていてもよい。近赤外領域の光を吸収する機能を持たせるには、第1充填物と第2充填物8の少なくとも一方の光制御材料として熱線吸収材を用いればよい。熱線吸収材の一例として、アンチモン錫酸化物(ATO) 、インジウム錫酸化物(ITO)、六ホウ化ランタン(LaB)のナノ粒子が挙げられる。
さらに、第1光学特性部7と第2光学特性部8の少なくとも一方は、可視領域の少なくとも一部の光を吸収する着色材を光制御材料として含んでいてもよい。第1光学特性部7の界面または第2光学特性部8の界面では、光の屈折率差が生じるため、上記界面で反射された可視光線は、光制御部材1内で繰り返し多重反射を起こす場合もあり得る。その結果、反射光と入射光とが干渉して、光制御部材1の外観として視認される像が多重像となるおそれもある。第1光学特性部7と第2光学特性部8の少なくとも一方に着色粒子を含めれば、第1光学特性部7または第2光学特性部8に光が入光する際に着色粒子が可視光線の一部を吸収し、第1光学特性部7または第2光学特性部8の界面において反射する可視光線の強度を減衰させることができる。これにより、光制御部材1内での可視光線の多重反射の発生および干渉現象の発生を抑制することができ、光制御部材1全体の可視光領域における透過率を大幅に低減させることなく、多重像の発現を抑制することができる。着色材としては、白色の酸化チタン、黒色のカーボン、各種着色顔料などが挙げられる。あるいは、第1充填物と第1充填物とで着色材の種類を変えることで、第1領域5と第2領域6とを異なる色で着色することができる。また、第1充填物と第1充填物とで着色材の含有量を変えることで、第1領域5と第2領域6とで濃淡を付けることができる。
さらに、第1領域5内の第1光学特性部7と第2領域6内の第2光学特性部8の少なくとも一方には、入射光を蓄えて発光する蓄光材が光制御部材として添加されていてもよい。これにより、第1領域5や第2領域6を、室内が暗い夜間等に、所定の色で発光させることができる。第1充填物と第2充填物とで蓄光材の種類を変えることで、第1領域5と第2領域6とを異なる色で発光させることができる。また、第1充填物と第2充填物とで蓄光材の含有量を変えることで、第1領域5と第2領域6とを異なる強度で発光させることができる。
上述した幾つかの例では、光制御部材1の母材とは異なる光学特性を光制御部材1の充填物に付与することで、第1領域や第2領域の光学特性を母材のものと変えているが、光制御部材1内の一部領域については、一部または全部の光学特性が母材と同じになるようにしたい場合もある。例えば、充填物の屈折率を母材と同じ屈折率とすることで、入射光が母材と充填物との界面で反射することを抑制しつつ、入射光を母材の屈折率で屈折させて出射させることができる。あるいは、充填物の光制御材料として母材と同一の材料を用いることで、この充填物が充填された溝が存在する領域には、実質的に溝がないものと同様に取り扱うことができる。そのため、例えば、光制御部材1を製造する際に、共通の金型を用いて母材の全域にわたって溝を形成した後、任意の一部の領域の溝に光学特性が母材と異なる充填物を充填し、他の領域の溝に母材と同一の材料の充填物を充填することで、金型をそれぞれ別に用意しなくても、所望の領域だけに光学特性を付与できることから、製造コストの削減が図れる。
また、屈折率差が大きくなると、入光角度が大きい場合であっても、反射させることが可能になるため、第2領域6内の第2光学特性部8については、充填物として空気を用いて中空状態にしてもよい。
ところで、建物には、窓の上方にひさしがついていることが多く、このひさしによって高い入光角度からの太陽光は遮光される。図2(a)は太陽光の入光角度が低い場合のひさしによる遮光範囲を示し、図2(b)は太陽光の入光角度が高い場合のひさしによる遮光範囲を示している。
これらの図からわかるように、ひさしがあるために、窓内の上側領域には、高い入光角度の太陽光は入光されない。よって、図2(c)に示すように、ひさしによる遮光範囲を上述した第1領域5とし、この領域には、低い入光角度からの太陽光を斜め上方に反射させるような光学特性をもった充填物を含む第1光学特性部7を配置してもよい。
一方、第1領域5の下側に配置される第2領域6には、低い入光角度と高い入光角度の太陽光がともに入光されるため、第1光学特性部7よりも入光角度の許容範囲の広い反射特性をもった充填物を含む第2光学特性部8を配置するのが望ましい。
より具体的には、第2領域6内の第2光学特性部8には、例えばミラー材を用いることが考えられる。その理由は、入光角度が高いと、面反射が起きにくくなるため、ミラー反射を利用して面反射を起きやすくするのが望ましいためである。一方、第1領域5内の第1光学特性部7は、例えば樹脂のみのクリヤー材や、散乱材などを用いることが考えられる。入光角度が低いと、面反射が起こりやすくなるため、第1光学特性部7への入射光を散乱させるのが望ましいためである。
また、クリヤー材や散乱材は、ミラー材等に比べて安価であるため、入光角度が低い入射光しか入光されない第1領域5には、安価な材料からなる第1光学特性部7を用いることで、光制御部材全体としての部材コストを抑制できる。
これにより、窓の上方にひさしがある場合には、窓全体としての採光効率を維持しつつ、光制御部材の部材コストの抑制も図れる。
また、窓の近くにビルがある場合、太陽光がビルによって遮光されて、窓の一部の領域には、太陽が高い位置にあるときしか太陽光が入光されないこともありうる。この場合、その領域に、太陽光が入光する角度範囲だけ採光に利用できるような充填物を第1光学特性部7等に充填してもよい。
上述した説明では、鉛直方向に置かれた窓用の光制御部材1について説明したが、天井面や傾斜面に設けられる窓に本実施形態の光制御部材1を用いてもよい。天井面や傾斜面に光制御部材1が配置される場合も、時間帯や季節によって、光制御部材1に入光される太陽光の入光方向と入光角度が変わるため、例えば最適な利用効率が得られるように、複数の領域に分けて、各領域ごとにそれぞれ光学特性が異なる充填物を充填した部材を配置してもよい。
さらに、上述した説明では、光制御部材1内の溝を鉛直方向に2つに分けて、それぞれに異なる充填物を充填して、鉛直方向に2つの領域(第1領域5と第2領域6)を設ける例を説明したが、鉛直方向に分ける領域の数には特に制限はない。太陽光の入光方向および入光角度は随時変化するため、光制御部材1をより細かく複数の領域に分けて、太陽光の入光方向および入光角度に合わせて、より最適な利用効果が得られるように、各領域内の部材の種類、形状、間隔等を調整してもよい。
このように、第1の実施形態では、互いに光学特性が異なる充填物を充填した第1光学特性部7と第2光学特性部8をそれぞれ有する第1領域5と第2領域6を鉛直方向に並べて配置している。そのため、一の光制御部材1に、複数の光学特性を独立して持たせており、種々の環境条件に見合った光制御部材1といえる。
(第2の実施形態)
以下に説明する第2の実施形態は、複数の溝のそれぞれに光学特性が異なる充填物を充填した第1光学特性部と第2光学特性部溝を有する複数の領域を水平方向に並べて配置するものである。
上述したように、太陽光は、日中の時間によって入光方向が随時変化する。したがって、光制御部材1を第1の実施形態のように鉛直方向に複数の領域に分割して各領域ごとに光学特性を変えても、時間帯によっては、所望の採光効率が得られるとは限らない。
そこで、以下に説明する第2の実施形態に係る光制御部材1では、異なる複数の時間帯で効率よく採光を行える複数の領域を一つの光制御部材1内に設けるものである。
図3は第2の実施形態に係る光制御部材1の断面図である。図3の光制御部材1は、例えば南向きの窓に採光用として貼り付けられる。この光制御部材1は、図3(a)に示すように、それぞれが鉛直方向に配置される第1領域11および第2領域12を備えている。第1領域11は、図3(b)および図3(d)に示すように、斜め左すなわち西側からの外光に対する反射率と、斜め右すなわち東側からの外光に対する反射率とが南側からの外光に対する反射率よりも高い。西側と東側からの外光は、入射角度が低いため、低い入射角度の入射光をより反射させることができるように、第1領域11内の溝に充填される充填物の主要構成材料は、散乱材等の屈折率が比較的大きい材料が望ましい。
一方、第2領域12は、図3(c)に示すように、入射角度の大きい南側からの外光をより反射させることができるように、第2領域12内の溝に充填される充填物の主要構成材料は、屈折率が低い充填物(例えば、金属薄片などのミラー材)が望ましい。あるいは、溝に何も充填せず中空にしてもよい。
図3の光制御部材1は、太陽光の入光角度が一日の間に変化しても、第1領域11および第2領域12のいずれかの領域を用いて、太陽光を室内に導入することができるため、日中の時間帯によらず、採光効率を均一化できる。
図3では、光制御部材1を鉛直方向に2つの領域に分ける例を説明したが、分ける領域の数には特に制限はない。また、各領域の面積は必ずしも同じである必要はない。
また、光制御部材1内の各領域は、必ずしも採光効率を向上させることを意図したものでなくてもよい。すなわち、光制御部材1内の各領域には、第1光学特性部14〜第3溝16に充填する充填物を変えることで、入射光に対する反射特性、屈折特性、吸収特性、および発光特性の少なくとも一つを含む所望の光学特性をそれぞれ設定してもよい。なお、全ての領域の光学特性をそれぞれ変える必要はなく、一部の領域どうしでは同じ充填物を用いて同じ光学特性を持たせてもよい。
このように、第2の実施形態では、光制御部材1の水平方向に沿って複数の領域を設けて、各領域の充填物を変えることで、各領域に独立した光学特性を持たせるため、例えば、太陽光の入光方向が一日の間に変化しても、時間によらず、採光効率を均一化することができる。
なお、上述の第1の実施形態や第2の実施形態では、光制御部材1の鉛直方向や水平方向に沿って複数の領域を設けているが、これに限定されるものではない。
(第3の実施形態)
上述した第1および第2の実施形態では、窓や採光具に貼り付けることが可能な光制御部材1の例を説明したが、以下に説明する第3の実施形態に係る光制御部材1は、必要に応じて窓に重ねて配置可能なロールカーテンに適用されるものである。
図4は第3の実施形態に係る光制御部材1からなるロールカーテン30を示す図である。なお、光制御部材1自体でロールカーテン30を構成してもよいし、ロールカーテン30の透明基材の上に光制御部材1を貼り付けてロールカーテン30を構成してもよい。
図4のロールカーテン30は、太陽光の入光角度が季節によって異なることを考慮に入れて、冬の入光角度に適合した第1領域31と、春および秋用の入光角度に適合した第2領域32と、夏用の入光角度に適合した第3領域33と、季節によらず入射光を散乱させる機能を有する第4領域34と、季節によらず入射光に含まれる熱線を吸収する機能を有する第5領域35とを有する。
第1〜第5領域31〜35のそれぞれには、第1および第2の実施形態と同様に、光学特性がそれぞれ異なる充填物を充填した部材が離隔して形成されている。また、第1〜第5領域31〜35内の部材は、その形状やサイズがそれぞれ異なっていてもよいし、配置方向がそれぞれ異なっていてもよい。さらには、第1〜第5領域31〜35内の部材の数や間隔がそれぞれ異なっていてもよい。
なお、図4は、第1領域31〜第5領域35の合計5つの領域を有する例を示しているが、領域の数と各領域の機能は任意に変更して構わない。すなわち、ロールカーテン30は、入射光に対する反射特性、屈折特性、吸収特性、および発光特性の少なくとも一つを含む光学特性がそれぞれ異なる少なくとも2つの領域を備えていればよい。
図5は図4のロールカーテン30の使用方法の一例を示す図である。ロールカーテン30の巻き取り量を調整して、季節に応じた領域を窓に重ねて配置する。ロールカーテン30に設けられる各領域の巻き取り方向のサイズは、窓の上下方向サイズに合わせており、図5(a)のように、窓の全面に対して、一つの領域を重ねて配置することができる。
なお、窓の上部では採光のために入射光を散乱させ、窓の下部では熱線を吸収して断熱機能を持たせたい場合は、図5(b)のように、窓の上部には図4の第4領域34を配置し、窓の下部には図5の第5領域35を配置してもよい。この場合、第4領域34と第5領域35を合わせた上下方向長さを、窓の上下方向長さに合わせる必要がある。また、窓の下部側に配置される第5領域35は、人間の目線が届きやすいことから、可視光透過性を高めるために、クリアフィルムと同材料で構成してもよいし、あるいは、第5領域35内の溝に、ロールカーテン30の基材と同じ光学特性を持つ何等かの材料を充填してもよい。
図5の例では、ロールカーテン30を上下方向に移動させる例を説明したが、ロールカーテン30を水平方向に移動させる場合には、水平方向に沿って複数の領域を設ければよい。
このように、第3の実施形態では、ロールカーテン30に光学特性の異なる複数の領域を設けるため、入射光の入光角度や入光方向に応じて、適切な領域を選択して、窓に重ねて配置することができ、ユーザが任意にロールカーテン30の光学特性を選択できる。
(第4の実施形態)
上述した第1〜第3の実施形態では、光制御部材1内の溝に光学特性が相違する充填物をそれぞれ充填した複数の領域を設ける例を説明したが、光学特性が異なる充填物を充填した部材を備える各領域では、部材の配置により、外観が異なって視認される。そこで、第4の実施形態では、光制御部材1の光学特性が外観に影響を与えることを積極的に利用して、光制御部材1の外観に意匠性を持たせるものである。
図6は第4の実施形態に係る光制御部材1の例を示す図である。図6(a)は鉛直方向に2つの領域41,42を設ける例、図6(b)は水平方向に2つの領域41,42を設ける例、図6(c)は上半分を左右に2つの領域41,42に分けて、下半分に別の領域43を設ける例、図6(d)はそれぞれが異なる複数の領域44を縦横に複数個ずつ配置する例、図6(e)は外観が図形や記号等を表す複数の領域44を設ける例をそれぞれ示している。
領域45には、月、矢印および顔マークが描かれているが、所定の光学特性を持った部材によって表現可能な意匠は、例えば、英数文字記号情報、図形情報および画像情報などである。領域45のように、何等かの意匠を外観に表す場合は、光制御部材1を縦横に細かく領域分けして、各領域内の溝に充填する充填物をそれぞれ変えるようにすればよい。このとき、一部の溝を周囲の透明基材と同じ外観にしたい場合は透明基材と同じ光学特性の何等かの材料を充填すれば、この溝については、透明基材と外観上の区別をつかなくさせることができる。
意匠性を持たせることだけを念頭に置いて、各領域内にそれぞれ光学特性の異なる部材等を配置すると、本来の光学特性が十分に得られないおそれがある。そこで、本来の光学特性が損なわれない範囲で、部材等の配置を工夫して、各領域に意匠性を持たせる必要がある。
また、図6(a)〜図6(d)では、各領域内に種々の充填物を充填した部材を均等に配置しているが、各領域ごとに充填物の種類が異なるために、各領域の外観が異なっている。そこで、外観の異なる複数の領域を一次元方向または二次元方向に任意に配置することで、濃淡や色合いの異なる種々のパターンを作製でき、このパターンにより意匠性を持たせることができる。
さらに、各領域内の第1光学特性部14等に蓄光材や蛍光材を含めることで、所望の色で発光させることができ、発光色や発光強度により、意匠性を持たせてもよい。
第4の実施形態は、上述した第1〜第3の実施形態と任意に組み合わせて実施してもよい。これにより、光制御部材1の各領域に所望の光学特性を持たせることができるとともに、意匠としても優れた光制御部材1を作製できる。
上述した各実施形態では、窓3やロールカーテン30に、太陽光の直射光が入光される例を説明したが、図7に示すように、太陽光をいったんライトシェルフ50で受けて、その反射光を窓3やロールカーテン30に入光させてもよい。すなわち、窓3やロールカーテン30は、太陽光の間接光を採光等に利用してもよい。
ライトシェルフ50は、一般に建物の外壁の外側に取り付けられるため、ライトシェルフ50での反射光は、斜め上向きに窓3やロールカーテン30に入射されることになる。よって、窓3やロールカーテン30用の光制御部材1内に、図1に示した第1光学特性部7や第2光学特性部8がある場合には、ライトシェルフ50からの反射光は第1光学特性部7や第2光学特性部8の下側の側面に入射されることになる。この側面の傾斜角度によっては、この側面に入射されたライトシェルフ50からの光は、下方に反射されてしまう。このため、ライトシェルフ50を設けた場合は、第1光学特性部7は第2光学特性部8の下側の側面に入光したライトシェルフ50からの光が斜め上方に反射されるように、この側面の傾斜角度を調整する必要がある。あるいは、ライトシェルフ50からの光を側面で散乱させてもよい。また、ライトシェルフ50からの反射光はライトシェルフ50の下方には届かないため、ライトシェルフ50の上側と下側で、第1光学特性部7や第2光学特性部8の構造を変える必要がある。
図7は、ライトシェルフ50の設置場所よりも上方に第1領域5を設け、下方に第2領域6を設ける例を示している。ライトシェルフ50での反射光は、第1領域5内には入射されるが、第2領域6内には入射されない。このため、第1領域5内の第1光学特性部7は散乱材とし、第2領域6内の第2光学特性部8は上側から下側に向かうに従って、散乱特性が徐々に弱まって可視光透過特性が徐々に高くなるように、第2光学特性部8の主要構成材料またはその添加物を変化させる。
これにより、図7の例では、第1領域5では太陽からの直接光とライトシェルフ50からの間接光の両方を採り込んで室内を明るく照明できるとともに、第2領域6では下側ほど可視光透過率が向上するため、太陽光が入りにくい下側が暗くなるのを防止できる。
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
1 光制御部材、1a 入光面、2 接合層、3 窓または採光具、4 保護層、5 第1領域、6 第2領域、7 第1光学特性部、8 第2光学特性部、9 ひさし、11 第1領域、12 第2領域、13 第3領域、14 第1光学特性部、15 第2光学特性部、16 第3溝、30 ロールカーテン、31 第1領域、32 第2領域、33 第3領域、34 第4領域、35 第5領域、41〜45 領域

Claims (4)

  1. 母材内の所定方向に離隔して一方の面側にそれぞれ配置された、複数の溝のうち一部の溝に、前記母材とは光学特性が異なる第1充填物が充填された第1光学特性部を有する第1領域と
    前記第1領域に対して鉛直方向の下方に配置され、前記母材内の前記複数の溝のうち前記第1の充填物が充填された一部の溝を除く他の少なくとも一部の溝に、前記母材および前記第1充填物とは前記光学特性が異なる第2充填物が充填された第2光学特性部を有する第2領域と
    前記第1領域及び前記第2領域の境界付近の前記一方の面側に配置され、入射光を前記第1光学特性部の方向に反射させる反射部材と、を備え、
    前記第1充填物と前記第2充填物とは、入射光に対する反射特性、屈折特性、吸収特性、および発光特性の少なくとも一つを含む前記光学特性が10%以上相違していることを特徴とする光制御部材。
  2. 前記第1充填物が充填される溝の深さ方向と、前記第2充填物が充填される溝の深さ方向とは、互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の光制御部材。
  3. 前記第1充填物が充填される溝の長手方向と、前記第2充填物が充填される溝の長手方向とは、互いに異なることを特徴とする請求項1または2に記載の光制御部材。
  4. 前記第1領域は、複数の溝のそれぞれに前記第1充填物を充填した複数の前記第1光学特性部が鉛直方向に離隔して配置されており
    前記第2領域は、複数の溝のそれぞれに前記第2充填物を充填した複数の前記第2光学特性部が鉛直方向に離隔して配置されており、
    前記第1領域および前記第2領域が並んで配置されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光制御部材。
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