以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「シート」はフィルムや板と呼ばれ得るような部材も含む概念である。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
さらに、「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状(フィルム状、板状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状(フィルム状部材、板状部材)の平面と一致する面のことを指す。
図1〜図4は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は、光制御具およびシート状の光制御部材を示す斜視図であり、図2〜図4は、光制御部材の縦断面において光制御具および光制御部材の機能を説明するための図である。
以下に説明する光制御具5は、面方向の広がりを持つ部材としてシート状に形成された光制御部材10と、光制御部材10を支持する支持手段40と、を有している。すなわち、本実施の形態における光制御部材10は、光制御シート、光制御フィルム或いは光制御板とも呼ばれ得る部材として形成されている。光制御部材10は、例えば建物の採光用の開口や、当該開口に取り付けられた透明なガラス窓のような窓部材等に対面する位置に、支持手段40によって支持される。そして、光制御部材10は、室内に入射しようとする光、とりわけ太陽光に対して種々の光学作用を及ぼす。ここで説明する光制御具5では、支持手段40が、光制御部材10の向きを変更可能、言い換えると、光制御部材10のシート面への法線方向ndを変更可能となるように、当該光制御部材10を支持している。この結果、後述するように、光制御部材10がより効果的に機能を発揮することが可能となっている。
なお、光制御部材10が、ガラス窓等からなる窓部材に貼り付けられ、又は、ガラス窓等からなる窓部材の一部分を構成し、又は、一対の窓材50の間に挟み込まれて支持されるようにしてもよい。さらに、一つの開口に対して複数の光制御部材10が設けられていても良く、さらに、複数の光制御部材10が、互いに同一の支持手段40によって支持されていてもよいし又は互いに別個の支持手段40によって支持されていてもよい。
図1に示すように、光制御部材10は、具体的な構成として、そのシート面に沿った第1方向d1に配列された多数の第1部分20と、第1方向d1に沿って第1部分20と交互に配列された多数の第2部分25と、を有している。第1部分20及び第2部分25は、光制御部材10のシート面と平行で第1方向d1と非平行な第2方向d2に線状に延びている。図示された例において、第1部分20及び第2部分25は互いに隣接して第1方向d1に交互に配列されている。また、第1方向d1は第2方向d2に直交している。第1部分20及び第2部分25は、それぞれ、直線状に延びている。
図2〜図4に示すように、本実施の形態における光制御部材10は、第1部分20及び第2部分25を含む光制御層38と、光制御層38と積層された基材層35と、を有している。なお、本実施の形態において、基材層35は、後述する光制御層38の製造方法に起因して設けられているが、特に必須の構成要素ではない。したがって、一例として、単なる透明または半透明な樹脂製フィルムから形成され得る。
一方、光制御層38は、第1部分20及び第2部分25に加えて、第1部分20及び第2部分25を支持するシート状のベース部分(ランド部)30をさらに有している。このベース部分30は、第1部分20と一体的に形成されており、第1部分20とともに本体部33を形成している。言い換えると、光制御部材10の光制御層38は、複数の溝33aを形成された本体部33と、本体部33の複数の溝33a内にそれぞれ形成された第2部分25と、を有している。そして、本体部33のうちの隣り合う溝33aの間の部分が、第1部分20を画成している。
図2〜図4には、光制御部材10の主切断面として、第1部分20及び第2部分25の配列方向である第1方向d1及び光制御部材10のシート面への法線方向の両方に平行となる断面にて、光制御部材10が、示されている。図2〜図4に示すように、第2部分25は、光制御部材10の基材層35側とは反対側の面の一部をなす底面25aと、底面25aから延び出た第1側面25b及び第2側面25cと、を含んでいる。図示された例において、第1方向d1に沿った第1側面25b及び第2側面25cの離間間隔は、光制御部材10のシート面への法線方向に沿って底面25aから離間するにつれて、互いに接近していき、最終的に互いに接続している。また、第1側面25b及び第2側面25cは平坦面として形成されている。結果として、図示された例では、第2部分25は、その長手方向に直交する断面において三角形形状となっており、第1部分20は、その長手方向に直交する断面において台形形状となっている。
図示された例において、第2部分25は、第1方向d1に沿って等間隔に配置されている。また、第2部分25は、断面形状を変化させることなく、第2方向d2に延びている。さらに、光制御部材10に含まれる多数の第2部分25は、互いに同一に構成されている。以上の第2部分25の構成にともない、図示された例では、光制御部材10に含まれる第1部分20は、第1方向d1に沿って等間隔に配置され、断面形状を変化させることなく第2方向d2に延び、且つ、互いに同一に構成されている。
図5に示された断面での、第2部分25の第2方向d1に沿った配列ピッチは、一例として、1mm以下とすることができ、光制御部材10のシート面への法線方向に沿った第2部分25の高さhは、1mm以下とすることができる。また、光制御部材10のシート面への法線方向に沿った光制御部材10の厚みは、300μ以上2mm以下とすることができる。
なお、光制御部材10のシート面に沿った第2部分25の幅wに対する、光制御部材10のシート面への法線方向に沿った第2部分25の高さhの比、すなわち、h/wで表されるアスペクト比は、光制御部材10がその向きを変更可能に支持されることとの組み合わせにおいて後述の機能を十分に発揮し得るよう、1より大きくなっていることが好ましく、5以上であることがさらに好ましい。また、このアスペクト比は、製造の安定性を考慮して、10以下であることが好ましい。
ただし、以上に説明した第1部分20及び第2部分25の構成は、単なる例示であり、例えば後述する光制御部材10の機能を考慮して適宜変更することが可能である。一例として、第2部分25の第1側面25bを折れ面や曲面として構成してもよいし、第2部分25の断面形状を、台形形状等の種々の形状に変更することができる。また、光制御部材10に含まれる多数の第1部分20の間で、形状や配列が異なるようにしてもよいし、同様に、光制御部材10に含まれる多数の第2部分25の間で、形状や配列が異なるようにしてもよい。
次に、第1部分20及び第2部分25の材料について説明する。第1部分20及び第2部分25の材料は、第1部分20および第2部分25との界面での反射や屈折によって、或いは、第1部分20及び第2部分25の少なくとも一方に含まれた機能性物質28に起因して、光制御部材10への入射光に対して何らかの機能を発揮し得るよう選択される。以下では、例示として、第1部分20が透明または半透明となっている例について説明する。
まず、第1部分20は、透明または半透明として、好ましくは可視光透過率が50%以上、より好ましくは可視光透過率が70%以上となる材料を用いて形成され得る。また、本実施の形態において、ベース部分30は第1部分20と同一の材料を用いて第1部分20と一体的に形成されている。第1部分20及びベース部分30をなす本体部33に用いられる材料として、例えば、樹脂材料、とりわけ電離放射線の照射により硬化する電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、可視光線硬化性樹脂、近赤外線硬化性樹脂等が挙げられる。
なお、本明細書における可視光透過率は、測定対象となる部位をなすようになる材料を東洋紡績製PETフィルム(品番:コスモシャインA4300、厚さ100μm)の上に膜厚1μmで成膜し、分光光度計((株)島津製作所製「UV−2450」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。同様に、後述する熱線透過率は、測定対象となる部位をなすようになる材料を東洋紡績製PETフィルム(品番:コスモシャインA4300、厚さ100μm)の上に膜厚1μmで成膜し、分光光度計((株)島津製作所製「UV−2450」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長900nm〜2500nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
次に、第2部分25に用いられる材料について説明する。第2部分25は、図2〜図4に示すように、主部26と、バインダーとして機能する主部26中に分散された機能性物質28と、を有するようにすることができる。
主部26に用いられる材料として、例えば、樹脂材料、とりわけ電離放射線の照射により硬化する電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、可視光線硬化性樹脂、近赤外線硬化性樹脂等が挙げられる。なお、主部26の屈折率を、第1部分20をなす材料の屈折率と異なるようにしてもよい。この場合、第1部分20と第2部分25との界面が、屈折率差を有して光を反射する反射面として機能し、光制御部材10が後述するように採光機能を発揮することができる。
次に、機能性物質28としては、特定波長域の光、例えば可視光を吸収する機能を有した顔料や染料等の色素、可視光内のさらに特定波長域の光を吸収する機能を有した顔料や染料等の色素、熱線を吸収する機能を有した物質、紫外線を吸収する機能を有した物質を用いることができる。なお、本明細書において、「可視光」及び「熱線」とは、それぞれ、可視光または熱線として一般的に定義される波長領域の光をいう。具体的には、本明細書において、「可視光」は、波長が380nm〜780nmの範囲内となる光とする。また、本明細書において、「熱線」は、可視光よりも長波長となる赤外光または赤外光線であって、具体的には、温度上昇に大きな影響を与え得る900nm〜2500nmの範囲内となる光とする。
可視光を吸収する機能を有した物質としては、カーボンブラックやチタンブラック等の黒色顔料を例示することができる。このような色素を機能性物質28として第2部分25が含む場合、光制御部材10が遮光機能を発揮することができる。可視光内のさらに特定波長域の光を吸収する機能を有した色素を機能性物質28として第2部分25が含む場合、光制御部材10が第2部分25に起因して色味を有することになり、光制御部材10自体の意匠性を向上させることができる。
熱線を吸収する機能を有した機能性物質28として、赤外光領域に吸収特性を有し且つ可視光領域に透過特性を有する粒状物を用いることができる。例えば、アンチモン錫酸化物(ATO)、インジウム錫酸化物(ITO)、六ホウ化ランタン(LaB6)、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、酸化タングステン、六ホウ化セリウム、無水アンチモン酸亜鉛および硫化銅またはそれらの混合物のナノ粒子等を、熱線吸収性を有した機能性物質28として、用いることができる。熱線吸収性を有した機能性物質28を第2部分25が含む場合、光制御部材10が遮熱機能を発揮することができる。
その他の例として、第2部分25が、燐光を発する蓄光物質を機能性物質28として含有していてもよい。蓄光物質は、太陽光や電灯などの光エネルギーを吸収及び蓄積し、蓄光物質への光エネルギーの照射が終了した後においても、それまでに蓄積した光を放出して発光する性質を有している。したがって、光を吸収および蓄積した蓄光物質を含有した第2部分25は、その後、暗闇において発光体として機能することができる。
なお、以上においては、第2部分25が機能性物質28を含有している例を説明したが、この例に限られない。第2部分25が機能性物質28を含有していなくてもよい。また、第2部分25に代えて、第1部分20が機能性物質28を含有するようにしてもよい。さらに、第2部分25に加えて、第1部分20が第2部分25と同一または異なる機能性物質28を含有するようにしてもよい。
以上のような構成からなる、シート状の光制御部材10は次のようにして製造され得る。まず、第1部分20及びベース部分30をなす本体部33を、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線の照射により硬化する特徴を有したエポキシアクリレート等の樹脂材料を用いて、作製する。具体的には、本体部33の溝33aの構成(配置、形状等)に対応した凸部を有した型ロール、言い換えると、第1部分20の構成(配置、形状等)に対応した凹部を有した型ロールを準備する。当該型ロールとニップロールとの間に基材層35をなすようになるシートを送り込み、該シートの送り込みに合わせて、樹脂材料を型ロールと基材層35との間に供給する。その後、基材層35上に供給された未硬化状態で液状の樹脂材料が型ロールの凹部に充填されるように、型ロールおよびニップロールで該光樹脂材料を押圧する。このとき、型ロールの凹部の深さより厚くなるように、すなわち、型ロールと基材層35とが接触しないように、樹脂材料を基材層35上に供給しておくことによって、上述したベース部分(ランド部)30が、第1部分20と一体的に樹脂材料から形成されるようになる。以上のようにして基材層35と型ロールとの間に未硬化で液状の樹脂材料を充填した後、光を照射して該樹脂材料を硬化(固化)させることによって基材層35上に本体部33を形成することができる。
次に、硬化することによって主部26をなすようになる樹脂材料と、機能性物質28と、を含んだ未硬化で液状の組成物を用いて第2部分25を作製する。硬化することによって主部26をなすようになる樹脂材料として、電離放射線により硬化する特徴を有したウレタンアクリレート等の樹脂材料を用いることができる。まず、先に形成された本体部33上に組成物を供給する。その後、隣り合う第1部分20の間の形成された溝33a、すなわち、型ロールの凸部に対応していた部分の内部に、ドクターブレードを用いながら、組成物を充填しつつ、該溝33a外に溢出した余剰分の組成物を掻き落としていく。その後、第1部分20の間の組成物に電離放射線を照射して硬化させることにより、第2部分25が形成される。これにより、基材層35、並びに、基材層35上に設けられたベース部分30と、ベース部分30上に設けられた第1部分20及び第2部分25と、を有した光制御部材10が作製される。
次に、支持手段40について説明する。上述したように、支持手段40は、光制御部材10の向きを変更可能、言い換えると、光制御部材10のシート面への法線方向ndを変更可能となるように、当該光制御部材10を支持している。図示された例において、支持手段40は、第1部分20及び第2部分25の長手方向となる第2方向d2が、水平方向に延びるようにして、光制御部材10を支持している。そして、支持手段40は、第2方向d2と平行な軸線を中心として回動可能に光制御部材10を支持している。
具体的な構成として、支持手段40は、光制御部材10に接続された支持軸部材44と、支持軸部材44を駆動可能な駆動装置42と、を有している。支持軸部材44は、第2方向d2に延びており、駆動装置42は、第2方向d2と平行な支持軸部材44の軸線方向を中心として支持軸部材44を回転させることができる。
ただし、ここで説明した例に限れられず、支持手段40が、図1に二点鎖線で示すように、第1方向d1に延びる支持軸部材44と、支持軸部材44をその軸線方向に沿って回転駆動可能な駆動装置42と、を有するようにして、光制御部材10における第1方向d1と平行な軸線を中心として回動可能に光制御部材10を支持していてもよい。さらに、光制御部材10が、第1方向d1と平行な軸線を中心として回動可能、且つ、第2方向d2と平行な軸線を中心としても回動可能となるよう、光制御部材10が支持手段40によって支持されるようにしてもよい。この際、第1方向d1と平行な軸線を中心とした光制御部材10の回動動作と、第2方向d2と平行な軸線を中心とした光制御部材10の回動動作とが独立して制御されるようにしてもよい。
次に、以上に説明した本実施の形態の光制御具5及び光制御部材10の作用について説明する。まず、図2を参照して、光制御部材10の第1部分20及び第2部分25そのものによって奏される作用効果について説明する。その後、光制御部材10の向きを支持手段40によって調整し得ることに起因した光制御具5の作用効果について説明する。
図2の状態において、光制御部材10のシート面が鉛直方向に延びるよう、光制御部材10は支持手段40によって支持されている。すなわち、光制御部材10における第1方向d1が鉛直方向に延び、このため、第1部分20及び第2部分25が鉛直方向に交互に配列されている。図2に示すように、太陽光が降り注ぐ日中において、光制御部材10のシート面への法線方向に対して上方に大きく傾斜した方向から光制御部材10に入射する太陽光L21,L22は、光制御部材10の第1部分20に入射すると、その後、第2部分25へ向かう。
第2部分25の主部26をなす材料と、第1部分20をなす材料が屈折率差を有している場合、図2に示すように、光制御部材10に入射して第2部分25に向かう太陽光の一部L21は、第1部分20と第2部分25との界面にて反射する。とりわけ、第2部分25の主部26が、第1部分20よりも低い屈折率の材料を用いて形成されている場合には、入射角度にも依存するが、光制御部材10に入射して第2部分25に向かう太陽光L22は第1部分20と第2部分25との界面にて全反射する。そして、図2に示すように、第1部分20と第2部分25との界面で反射した太陽光L21は、室内の上方の領域に跳ね上げられるようになる。この結果、光制御部材10を介した採光は、窓材50が設置された位置から離間した室内の奥側の領域まで太陽光L21を導くことができる。すなわち、光制御部材10は、優れた採光機能を発揮することができる。光制御部材10が採光機能を十分に発揮することができれば、室内灯具の使用を抑制することができ、省エネルギー及びCO2の削減を図ることができる。
次に、第2部分25が、機能性物質28を含む場合について説明する。機能性物質28が可視光を吸収する機能を有している場合、図2の示すように、第2部分25内に入射した太陽光L22のうちの可視光の多くが、機能性物質28の可視光吸収性に起因して、第2部分25に吸収される。したがって、太陽からの可視光が、進行方向を変化させることなくそのまま室内に入射することを効果的に回避することができる。すなわち、防眩の観点から、室内への直達光を規制する遮光機能を発揮し、室内の人が眩しく感じることを防止することができる。また、機能性物質28が熱線を吸収する機能を有している場合、図2の示すように、第2部分25内に入射した太陽光L22のうちの熱線の多くが、機能性物質28の熱線吸収性に起因して、第2部分25に吸収される。したがって、太陽からの熱線が室内に入射することを効果的に回避することができ、遮熱機能を発揮することができる。
以上のようにして、光制御部材10は、光制御部材10に入射する太陽光に対して、種々の有用な機能を発揮することができる。とりわけ、光制御部材10が、例示した採光機能、遮光機能、遮熱機能を有効に発揮することができれば、空調機器や灯具等の電化製品の使用量を抑制することが可能となり、省エネルギー及びCO2の削減を図ることができる。
ところで、光制御部材10によって発揮される種々の機能は、第1部分20及び第2部分25の構成に依存して、光制御部材10のシート面への法線方向ndに対して所定の範囲内の角度だけ上方に傾斜した光に対してのみ有効に発揮される。その一方で、太陽の高度は、一日中変化し続け、また、同時刻であっても日が異なれば変化する。具体的には、一日の中で太陽は正午に最も高い高度に到達し、また、一年の中で太陽は、夏至に最も高い高度に到達する。さらに、光制御部材10が設置される場所の緯度に応じても、太陽の高度は変化する。
この結果、図2に二点鎖線で示す光L23の進行方向から、主として太陽光が入射してくる時期または時間帯も生じる。光制御部材10は、この光L23に対して上述した採光機能を発揮することができない。また、第1部分20を介すことなく第2部分25へ直接入射する光を除くと、光制御部材10は、この光L23に対して上述した遮光機能及び遮熱機能を発揮することもできない。
一方、ここで説明した光制御具5では、支持手段40によってシート状の光制御部材10の向きを変更することができる。とりわけ、図1に示された支持手段40は、第2方向d2に平行な軸線を中心として光制御部材10を回動させることができる。そして、図3に示すように光制御部材10の向きを調整することにより、図2の光L23と同様の方向から光制御部材10に向かう太陽光に対して、上述した採光機能、遮熱機能および遮光機能を効果的に発揮することが可能となる。また、室内に太陽光をそのまま取り込みたい場合、すなわち、光制御部材10による機能を及ぼすことなく太陽光をそのまま取り込みたい場合には、図4に示すように、光制御部材10の向きを調節することにより、太陽光が、第2部分25に入射することなく、光制御部材10を透過することが可能となる。
このように、太陽の位置に応じて光制御部材10の向きを調節することが可能である場合、図2〜図4に示されたシート状の光制御部材10のシート面への法線方向ndと第1方向d1との両方に変更な面内における第2部分25のアスペクト比(h/w)を大きく設定することが有効となる。アスペクト比(h/w)を大きく設定すると、法線方向nd近傍の方向に進む光の透過率を大きく確保しながら、法線方向ndに対して傾斜した方向からの光に対して期待した光学機能を極めて効果的に発揮することができる。すなわち、法線方向ndから観察した場合における光制御部材10の透明性を大幅に改善しながら、光制御部材10が予定した機能をより効果的に発揮することを可能にすることができる。
ただし、光制御部材10の向きが一定である場合には、所定の高度に位置する太陽からの光に対しては予定した機能が発揮されるが、所定の高度以外に位置する太陽からの光に対しては意図しない機能が発揮されるようになる、といった不具合が生じる。単純に第2部分25のアスペクト比を大きく設定するとこの傾向が強まって、不具合も顕著となる。一方、本実施の形態では光制御部材10の向きが調整可能であることから、所定の高度以外に位置する太陽光に対して意図しない機能を発揮してしまうことを回避することが可能となるだけでなく、光制御部材10の向きを調節することで当該光に対しても予定された機能を発揮することが可能となる。
なお、図1に二点鎖線で示すように、第1方向d1と平行な軸線を中心として光制御部材10が回動可能に支持手段40によって支持されている場合、水平方向において、光制御部材10が正面から太陽光を受けることが可能となる。この場合、光制御部材10の受光面積が増え、加えて、例えば第1部分20及び第2部分25の界面への入射角度の変化を抑制することが可能となる。したがって、支持手段40が、第1方向d1と平行な軸線を中心として回動可能に光制御部材10を支持する場合にも、程度の差があるものの、第2方向d2と平行な軸線を中心として回動可能に光制御部材10を支持する場合と同様の作用効果を確保することができる。
以上のような本実施の形態においては、支持手段40が光制御部材10の向きを変更可能に支持している。したがって、設置位置、時期、時間等に応じて光制御部材10の向きを調整することにより、時期や時間に依らず光制御部材10が太陽光に対して採光機能、遮光機能、遮熱機能等の予定された機能を発揮することができる。すなわち、単一の光制御部材10が、予定された機能を極めて効果的に発揮することができ、複数の光制御部材を用意すること、並びに、用意された複数の光制御部材から最適な光制御部材を選択して設置する必要性を排除することが可能となり、コスト面および使用時における利便性において優れる。また、光制御部材10が太陽光に対して予定された機能を効果的に発揮することができるので、照明器具や空調機器等の使用を抑制することができ、省エネルギー及びCO2の削減を図ることができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。例えば、上述した実施の形態において、光制御部材10の第2方向d2が水平方向と平行になる例について説明したが、これに限られない。例えば、光制御部材10の第2方向d2が、水平方向と非平行であってもよいし、さらには、水平方向に対して直交するようにしてもよい。
また、光制御部材10が、第1部分20及び第2部分25に加えて、種々の機能を期待された機能層をさらに有するようにしてもよい。例えば、光制御部材10が、最も室内側となる層として、耐擦傷性を有したハードコート層をさらに有するようにしてもよい。
次に、主として図5〜図9を参照して、上述した実施の形態とは別の実施の形態となる第2の実施の形態について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図5に示すように、光制御具55は、一方向に配列された多数の光制御部材60と、光制御部材60の向きを変更可能に支持する支持手段65と、を有している。第2の実施の形態において、光制御具55は、いわゆるブラインドとして形成されている。図7〜図9に示すように、光制御具55は、採光窓91に対面する位置に配置される。光制御部材60は、スラットまたは羽根板とも呼ばれ、上下方向と非平行な方向に細長く延びる薄板状の部材として形成されている。光制御部材60は、支持手段65によって、その向きが可変となるように支持されている。光制御部材60の向きを調整することによって、採光窓91に対面する位置に配置された光制御具55は、上述した実施の形態と同様の作用効果を奏することができ、とりわけ、ブラインドの形態を取った光制御具55によれば、光制御部材60の向きの変化量、言い換えると、薄板状の光制御部材60の板面への法線方向が移動可能な角度範囲を大きく確保することができ、この点において、上述した作用効果をより効果的に発揮することができると言える。以下、図5〜図9に示された光制御具55についてさらに詳細に説明する。
第2の実施の形態において、光制御具55に含まれる光制御部材60は、鉛直方向に並べられるとともに、各光制御部材60は水平方向に延びている。光制御具55は、壁への取付具となる取付ボックス69と、取付ボックス69から垂下し且つ鉛直方向に間隔をあけて多数の光制御部材60を支持するラダーコード66と、光制御部材60を引き上げるための昇降コード67と、ラダーコード66及び昇降コード67に連結された操作グリップ68と、を有している。
ラダーコード66は、第2の実施の形態における支持手段65をなしている。本実施の形態において、ラダーコード66は、光制御具55に含まれるすべての光制御部材60の概ね平行となるよう、光制御部材60の向きを制御する。そして、操作グリップ68を介してラダーコード66を操作することにより、光制御部材60の向きを調節することができる。このとき、細長状の各光制御部材60は、その長手方向と平行な軸線を中心として回動するように、向きを変更するようになる。
一方、操作グリップ68を介して昇降コード67を操作することにより、下方側の光制御部材60から順に鉛直方向における間隔を狭めるようにして、多数の光制御部材60を引き上げることができる。この際、多数の光制御部材60の少なくとも一部が取付ボックス69内に収容され、且つ、採光窓91が室内に露出する。同様に、操作グリップ68を介して昇降コード67を操作することにより、上方に集められた光制御部材60を、採光窓91に対面する位置に下げることができる。
第2の実施の形態における光制御具55において、取付ボックス69、操作グリップ68、ラダーコード66,昇降コード67、並びに、操作グリップ68を介してラダーコード66及び昇降コード67を操作する機構は、広く市販されているブラインドに適用されている既知の種々の構成を採用することができる。
第2の実施の形態における光制御部材60は、図6に示すように、若干湾曲した薄板状に形成されている。また、第2の実施の形態において、各光制御部材60は、細長状に形成されている。第2の実施の形態における光制御部材60は、湾曲していること及びその外輪郭において上述した実施の形態における光制御部材10と異なっており、その他の点において上述した実施の形態における光制御部材10と同様に構成され得る。なお、第2の実施の形態において、光制御部材60は、湾曲している必要はなく、上述した実施の形態と同様に、平板状に形成されていてもよい。
したがって、第2の実施の形態における光制御部材60は、上述した実施の形態の光制御部材10と同様に、複数の第1部分20と複数の第2部分25と、を有している。図6に示すように、複数の第1部分20は、光制御部材60のシート面に沿った第1方向d1に配列され、且つ、各第1部分20は、第1方向d1と非平行であるとともに光制御部材60のシート面に沿った第2方向d2に延びるようにしてもよい。また、第2部分25は、第1部分20と第1方向d1に交互に配列され、且つ、各第2部分25は第2方向d2に延びるようにしてもよい。なお、第1方向d2は、光制御部材60の湾曲したシート面に沿って、曲線状に延びる方向となっている。図6に示された例では、この曲線状の方向d1に沿って、第1部分20及び第2部分25が、交互に配列されている。また、図6に示された光制御部材60は、基材層35と、基材層35上に支持された光制御層38と、を有している。そして、光制御層38は、本体部33と、本体部33の溝33a内に形成された第2部分25と、を有し、本体部33は、ベース部30と、ベース部30上に支持された第1部分20と、を有している。
そして、支持手段65としてのラダーコード66は、図6に矢印A1で示すように、第2方向d1に細長く延びる各光制御部材60を、第2方向d2と平行な軸線を中心として回動可能に支持している。すなわち、第2の実施の形態における光制御具55では、第1実施の形態における光制御部材10を第1方向に沿って分割してなる分割片を一方向(図示された例では上下方向)に配列し、且つ、各光制御部材10の分割片を第2方向d2と平行な軸線を中心として回動可能にラダーコード66によって支持している。
このため、図7に示すように、光制御部材60のシート面が概ね鉛直方向に延びる場合には、上述した実施の形態において図2を参照して説明したように、光制御具55は、所定の方向からの太陽光に対し、光制御部材60に期待されている種々の機能、一例として採光機能、遮光機能、遮熱機能等を太陽光に対して発揮することができる。また、太陽の高度が変化した場合には、支持手段65としてのラダーコード66を用いて光制御具55に含まれるすべての光制御部材60の向きを変化させることにより、高度を変化させた太陽からの光に対して、光制御具55が効果的に予定された機能を発揮することができる。すなわち、第2の実施の形態によっても、上述した実施の形態と同様に、設置位置、時期、時間等に応じて光制御部材60の向きを調整することにより、時期や時間に依らず、光制御具55に含まれる光制御部材60が太陽光に対して採光機能、遮光機能、遮熱機能等の予定された機能を発揮することができる。
加えて第2の実施の形態では、光制御部材60は第2方向d2に長細く延び、第1方向における寸法は小さくなっている。したがって、第2方向d2と平行な軸線を中心として光制御部材60を回動させとしても、光制御部材60の配列方向および第2方向d2の両方に直交する方向における光制御具55の寸法、すなわち図7〜8における採光窓91の法線方向における光制御具55の寸法を小さく維持することができる。これにともなって、支持手段65を用いて光制御部材60の向きを広い角度範囲内で制約を受けることなくより自由に調整することも可能となる。したがって、第2の実施の形態によれば、時期や時間に依らず、光制御具55に含まれる光制御部材60が太陽光に対して採光機能、遮光機能、遮熱機能等の予定された機能をより効果的に発揮することが可能となる。
また、図7に示された状態において、すなわちスラットをなす光制御部材60が全閉している状態において、配列方向に隣り合う二つの光制御部材60は、配列方向において一部重なり合っている。このため、太陽光が、隣り合う二つの光制御部材60の間を、当該二つの光制御部材60から所定の機能を発揮されることなく、進むことを防止することができる。
一方、室内に太陽光をそのまま取り込みたい場合、すなわち、光制御部材10による機能を及ぼすことなく太陽光をそのまま取り込みたい場合には、図8に示すように光制御部材60の向きを調節して、配列方向に隣り合う二つの光制御部材60の間を太陽光L81が通過するようにすればよい。このような方法によれば、太陽光が光制御部材60の第1部分20を透過する場合と比較して、より高い透過率にて太陽光を室内に取り込むことが可能となる。また、第2部分25が可視光遮光性を有した機能性物質28を含有している場合、図8に示された状態において、太陽光を取り込みながら、採光窓91の法線方向からの覗き込みを防止することも可能となる。
なお、上述した第2の実施の形態に対しても様々な変更を加えることが可能である。例えば、第2の実施の形態において、光制御部材60の第2方向d2が水平方向と平行になる例について説明したが、これに限られない。例えば、光制御部材60の第2方向d2が、水平方向と非平行であってもよいし、さらには、鉛直方向と平行に延びるようにしてもよい。例えば、細長状の光制御部材60が鉛直方向に延びるようにして、水平方向に沿った一方向に配列されるようにしてもよい。
また、光制御部材60が、第1部分20及び第2部分25に加えて、種々の機能を期待された機能層をさらに有するようにしてもよい。例えば、光制御部材10が、最も室内側となる層として、耐擦傷性を有したハードコート層をさらに有するようにしてもよい。
さらに、第2の実施の形態において、光制御具55に含まれるすべての光制御部材60の向きが、平行となるようにして、一括して支持手段65としてのラダーコード66によって操作される例を示した。しかしながら、図9に示すように、光制御具55に含まれる一部の光制御部材60の向きと、他の光制御部材60の向きとが、別々のラダーコードによって操作されることにより、独立して調節されるようにしてもよい。