以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
さらに、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「シート」はフィルムや板と呼ばれ得るような部材も含む概念である。
さらに、「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状(フィルム状、板状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状(フィルム状部材、板状部材)の平面と一致する面のことを指す。また、シート状(フィルム状、板状)の部材に対する法線方向とは、当該シート状(フィルム状、板状)の部材のシート面(フィルム面、板面)への法線方向のことを指す。
さらに、本明細書における「上下方向」とは、鉛直方向に平行な面内において水平方向と非平行な方向であり、必ずしても鉛直方向とは一致しない。また、「上」とは、上下方向における一方の側(又は方)であって、鉛直方向における「上」に近接する側(又は方)のことを指す。「下」とは、上下方向における「上」とは反対の側であって、鉛直方向における「下」に近接する側(又は方)のことを指す。
図1〜図7は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は採光システム10を示す側面図であり、図2及び図3は、それぞれ、採光システム10の光制御部材20を示す斜視図または縦断面図であり、図4は採光システム10のブラインド50を示す斜視図であり、図5〜図7はブラインド50のスラット52のスラット角度を自動調整する機構および処理を説明する図である。
以下に説明する採光システム10は、採光用の開口1の周辺に配置される装置であって、太陽光を効率的に採光するためのシステムである。採光システム10は、採光用の開口1の少なくとも上方部分に設けられた光制御部材20と、光制御部材20と少なくとも一部が対向するように配置されたブラインド50と、を有する。光制御部材20は、面方向の広がりを持つシート状に形成されており、図1に示すように、入射光の進行方向を斜め上方に変更して透過させる。ここで説明する採光システム10によれば、詳しくは後述するように、太陽光のうちの直達光の開口を介した進入を効果的に防止して防眩を図りながらも、十分な採光を実施することができる。加えて、この採光システム10によれば、採光システム10によって光を採れ込まれるべき領域に突出する突出物等が設けられておらず、開口1周辺の美感、統一感を損なうこともない。
以下に説明する例による採光システム10は、建物の採光用窓に適用されている。開口1は、壁2に形成されており、ブラインド50は、壁2、天井3及び床4によって区画された室内に配置され、壁2に形成された採光用の開口1に対面するよう、壁2に取り付けられている。そして、開口1には、ガラス等からなる透明な窓材7を含む採光具6が取り付けられ、採光具6によって開口1が塞がれている。そして、光制御部材20は、窓材7に貼り付けられ又は一対の窓材7の間に挟み込まれて支持されて、窓材7とともに採光具6を形成し、或いは、窓材7の一部分に組み込まれて採光具6を形成している。
まず、光制御部材20について説明する。図1に示された例において、光制御部材20は、採光具6の上方部分に貼り付けられている。光制御部材20は、図2に示すように、ベース部31と、ベース部31内に離隔して形成される複数の溝34a内に設けられる複数のルーバ部32とを有する。複数のルーバ部32は、第1方向d1に沿って線状に延びている。第1方向d1は、光制御部材20のシート面と平行に延び、且つ、図1の上下方向と非平行となっている。また、図2に示すように、光制御部材20の光入射側のシート面から眺めると、ベース部31と複数のルーバ部32は、第1方向d1と非平行な第2方向d2に交互に配列されている。第2方向d2は、光制御部材20のシート面と平行に延びており、図示された例においては、上下方向と平行になっている。
図示された例において、窓材7は、鉛直(天地および上下)方向と平行に延び、結果として、光制御部材20のシート面も鉛直方向と平行になっている。また、第1方向d1及び第2方向d2は直交している。この結果、図示された例では、第1方向d1が水平方向に延び、第2方向d2が鉛直方向に延びている。
図2及び図3に示すように、本実施の形態における光制御部材20は、ベース部31及びルーバ部32を含む光制御層30と、光制御層30と積層された基材層40と、を有している。なお、本実施の形態において、基材層40は、後述する光制御層30の製造方法に起因して設けられているが、特に必須の構成要素ではない。したがって、一例として、単なる透明または半透明な樹脂製フィルムから形成され得る。
図3は光制御部材20の主切断面図である。すなわち、図3は、第2方向d2と光制御部材20のシート面への法線方向ndとの両方に平行な方向の断面図である。図3に示すように、ルーバ部32は、光制御層30の基材層40側とは反対側の面の一部をなす底面35と、底面35から延び出た第1側面36及び第2側面37と、を含んでいる。図示された例において、光制御部材20のシート面に沿った第1側面36及び第2側面37の離間間隔は、光制御部材20のシート面への法線方向に沿って底面35から離間するにつれて、互いに接近していき、最終的に互いに接続されている。図示された例において、第2側面37は平坦面であり、第1側面36は折れ面である。図示された例では、第1側面36は、底面35に接続する急斜面36aと、底面35から離間した側に位置して第2側面37と接続する緩斜面36bと、を含んでいる。光制御部材20のシート面への法線方向ndに対して急斜面36aがなす角度は、光制御部材20のシート面への法線方向ndに対して緩斜面36bがなす角度よりも大きくなっている。
ここで、各ルーバ部32の第1側面36は、当該ルーバ部32と、当該ルーバ部32に対して上下方向における上側から隣接するベース部31との間の界面を形成する。一方、各ルーバ部32の第2側面37は、当該ルーバ部32と、当該ルーバ部32に対して上下方向における下側から隣接するベース部31との間の界面を形成する。広い角度範囲からの入射光を狭い角度範囲に偏向して採光する観点から、各ルーバ部と当該ルーバ部32に上側から隣接するベース部31との界面は、すなわち、ルーバ部32の第1側面36は、入光側で上下方向における上方に位置し且つ出光側で上下方向における下方に位置するよう、光制御部材20の法線方向ndに対して傾斜している。また、入射光をより狭い角度範囲に偏向して採光する観点からは、図3に示された例のように、光制御部材20への法線方向ndと第1及びルーバ部31,32の配列方向である第2方向d2との両方に沿った図3に示された面内において、各ルーバ部と当該ルーバ部32に上側から隣接するベース部31との界面が光制御部材20への法線方向ndに対してなす角度θa(図3参照)が、入光側から出光側へ向けて小さくなるように変化することが好ましい。
なお、角度θaが、「入光側から出光側へ向けて小さくなるように変化する」とは、角度θaが連続的に減少していく場合だけでなく、図3に示された例のように、角度θaが段階的に減少することも含む。また、本明細書で言及する「入光側」及び「出光側」との用語は、太陽光を採光する光路を基準として用いられる。したがって、図1及び図3においては、図面における左側が入光側で、図面における出光側が右側となる。
図示された例において、ルーバ部32は、第2方向d2に沿って等間隔に配置されている。また、ルーバ部32は、断面形状を変化させることなく、第1方向d1に延びている。さらに、光制御部材20に含まれる多数のルーバ部32は、互いに同一に構成されている。以上のルーバ部32の構成にともない、図示された例では、光制御部材20に含まれるベース部31は、第2方向d2に沿って等間隔に配置され、断面形状を変化させることなく第1方向d1に延び、且つ、互いに同一に構成されている。
図3に示された断面での、ルーバ部32の第2方向d1に沿った配列ピッチpは、一例として、1mm以下とすることができ、光制御部材20のシート面への法線方向ndに沿ったルーバ部32の高さhは、1mm以下とすることができる。また、光制御部材20のシート面への法線方向ndに沿った光制御部材20の厚みは、150μ以上2mm以下とすることができる。
なお、光制御部材20のシート面に沿ったルーバ部32の幅wに対する、光制御部材20のシート面への法線方向に沿ったルーバ部32の高さhの比、すなわち、h/wで表されるアスペクト比は、採光機能、及び、例えば遮光機能等のその他の機能を十分に発揮し得るよう、1より大きくなっていることが好ましく、4以上であることがさらに好ましい。また、このアスペクト比は、製造の安定性を考慮して、10以下であることが好ましい。
ただし、以上に説明したルーバ部32の形状およびピッチは、単なる例示であり、例えば後述する光制御部材20の機能を考慮して適宜変更することが可能である。一例として、ルーバ部32の第1側面36を曲面として構成してもよい。第1側面36が曲面となっている場合にも、上述したように、各ルーバ部と当該ルーバ部32に上側から隣接するベース部31との界面が光制御部材20への法線方向ndに対してなす角度θa(図3参照)が、入光側から出光側へ向けて小さくなるように変化することが好ましい。また、ルーバ部32の断面形状を、台形形状等の種々の形状に変更することができる。また、光制御部材20に含まれる多数のベース部31の間で、形状や配列が異なるようにしてもよいし、同様に、光制御部材20に含まれる多数のルーバ部32の間で、形状や配列が異なるようにしてもよい。
次に、ベース部31及びルーバ部32の材料について説明する。
まず、ベース部31は透明に形成されている。本明細書において「透明」とは、可視光透過率が50%以上となっていることを意味している。ただし、本実施の形態におけるベース部20の可視光透過率は、70%以上となっていることが好ましく、90%以上となっていることがより好ましい。
なお、本明細書における可視光透過率は、測定対象となる部位をなすようになる材料を東洋紡績製PETフィルム(品番:コスモシャインA4300、厚さ100μm)の上に膜厚1μmで成膜し、分光光度計((株)島津製作所製「UV−2450」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。同様に、後述する熱線透過率は、測定対象となる部位をなすようになる材料を東洋紡績製PETフィルム(品番:コスモシャインA4300、厚さ100μm)の上に膜厚1μmで成膜し、分光光度計((株)島津製作所製「UV−2450」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長900nm〜2500nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
ベース部31をなす光制御層本体34に用いられる材料として、例えば、樹脂材料、より具体的には電離放射線の照射により硬化する電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、可視光線硬化性樹脂、近赤外線硬化性樹脂等が挙げられる。樹脂材料の具体例としては、アクリル樹脂が挙げられる。
一方、ルーバ部32は、ベース部31とは異なる屈折率を有する。本実施の形態において、ルーバ部32は、バインダーとして機能する主部32aと、主部32a中に分散された任意の機能性含有物32bと、を有している。主部32aの屈折率は、ベース部31の屈折率と異なっており、この結果、ベース部31とルーバ部32との界面が、屈折率差を有し、可視光を反射する面として機能する。ベース部31側から入射した可視光をベース部31とルーバ部32との界面で反射させるためには、ルーバ部32の屈折率をベース部31の屈折率よりも小さくなるように調節することが好ましい。
ルーバ部32の主部32aに用いられる材料として、例えば、樹脂材料、より具体的には電離放射線の照射により硬化する電離放射線硬化性樹脂の硬化物を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、可視光線硬化性樹脂、近赤外線硬化性樹脂等が挙げられる。樹脂材料の具体例としては、ベース部31に用いるアクリル樹脂とは屈折率が異なるアクリル樹脂が挙げられる。もっとも、機能性含有物32bを有する場合にその機能性含有物32bによってルーバ部32の屈折率が変わるのであれば、ベース部31に用いるものと同じアクリル樹脂を用いてもよい。
一方、ルーバ部32の機能性含有物32bは、種々の機能を期待されて主部32a中に分散されており、一例として、熱線吸収材や着色材とすることができる。熱線吸収材として、赤外光波長帯域に吸収特性を有し、且つ、可視光波長帯域に透過特性を有する粒子が用いられる。具体的には、熱線吸収材として、透明性を有する無機ナノ粒子を用いることができ、例えば、アンチモン錫酸化物(ATO)、インジウム錫酸化物(ITO)、六ホウ化ランタン(LaB6)、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、酸化タングステン、六ホウ化セリウム、無水アンチモン酸亜鉛および硫化銅またはそれらの混合物のナノ粒子等を用いることができる。
また、着色材としては、可視光波長帯域の少なくとも一部の波長域の光を吸収する機能を有した粒子を用いることができる。着色材の一例として、顔料、より具体的には、カーボンブラック、黒鉛、窒化チタン等の黒色顔料や、酸化チタン等の白色顔料を用いることができる。また、紺色、青色、紫色等の青みを帯びた粒子、赤みを帯びた粒子、黄色みを帯びた粒子等を着色材として用いてもよい。着色材としての機能性含有物32bをルーバ部32に用いることにより、ルーバ部32を着色することができる。この際、ルーバ部32の色味等も考慮した上で、光制御部材20に意匠性を付与することができる。
なお、以上のような構成からなる、光制御層30は次のようにして製造され得る。まず、ベース部31をなす光制御層本体34を、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線の照射により硬化する特徴を有するエポキシアクリレート等の硬化性材料を用いて、作製する。具体的には、光制御層本体34の溝34aの構成(配置、形状等)に対応した凸部を有する型ロール、言い換えると、ベース部31の構成(配置、形状等)に対応した凹部を有する型ロールを準備する。当該型ロールとニップロールとの間に基材層40をなすようになるシートを送り込み、該シートの送り込みに合わせて、硬化性材料を型ロールと基材層40との間に供給する。その後、基材層40上に供給された未硬化状態で液状の硬化性材料が型ロールの凹部に充填されるように、型ロールおよびニップロールで該硬化性材料を押圧する。このとき、型ロールの凹部の深さより厚くなるように、すなわち、型ロールと基材層40とが接触しないように、硬化性材料を基材層40上に供給しておくことによって、ベース部31内の溝34aにルーバ部32の材料が充填される。以上のようにして基材層40と型ロールとの間に未硬化で液状の硬化性材料を充填した後、光を照射して該硬化性材料を硬化(固化)させることによって光制御層本体34を形成することができる。
次に、硬化することによって主部32aをなすようになる硬化性材料と、任意の機能性含有物32bと、を含んだ未硬化で液状の組成物を用いてルーバ部32を作製する。硬化することによって主部32aをなすようになる硬化性材料として、電離放射線により硬化する特徴を有するウレタンアクリレート等の硬化性材料を用いることができる。まず、先に形成された光制御層本体34上に組成物を供給する。その後、隣り合うベース部31の間の形成された溝34a、すなわち、型ロールの凸部に対応していた部分の内部に、ドクターブレードを用いながら、組成物を充填しつつ、該溝34a外に溢出した余剰分の組成物を掻き落としていく。その後、ベース部31の間の組成物に電離放射線を照射して硬化させることにより、ルーバ部32が形成される。これにより、基材層40、ベース部31及びルーバ部32と、を有する光制御部材20が作製される。
次に、ブラインド50について説明する。ブラインド50は、図4に示すように、壁2への取付具となる取付ボックス51と、取付ボックス51から垂下し且つ鉛直方向に間隔をあけて配置される多数のスラット52と、これらスラット52を支持するラダーコード53と、スラット52を引き上げるための昇降コード54と、各スラット52のスラット角度を調整するスラット角調整機構55と、昇降コード54を上下させる昇降コード移動機構56と、を有する。スラット角調整機構55と昇降コード移動機構56の少なくとも一部は、取付ボックス51の内部に収納されている。
ラダーコード53は、ブラインド50に含まれるすべてのスラット52を概ね平行となるよう、各スラット52を支持する。そして、スラット角調整機構55によりスラット角度を切り替えると、すべてのスラット52が同じスラット角度になるように傾き調整される。ラダーコード53は、スラット角度が変更されても、各スラット52の短手方向の端面が概略面一となるように、各スラット52を支持する。
昇降コード移動機構56により昇降コード54を上方に引っ張ると、下方側のスラット52から順に鉛直方向における間隔を狭めるようにして、多数のスラット52を引き上げることができる。この際、多数のスラット52の少なくとも一部が取付ボックス51内に収容され、且つ、開口1に装着された採光具6が室内に露出する。同様に、昇降コード移動機構56により昇降コード54を下方に繰り出すと、上方に集められたスラット52を、採光具6に対面する位置に下げることができる。
スラット52は、一例として、耐食アルミニウム合金からなる薄板材、木材からなる薄板材、樹脂からなる薄板材を用いることができる。このようなスラット52は、不透明であり、可視光遮光性を有している。スラット52は、可視光を反射する機能を有し、入射光の進行方向を変化させるようにしてもよい。また、スラット52の表面に、ブラインド50に対して遮熱、防汚、抗菌、消臭機能を付与するための機能層が形成されていてもよい。一例として、フッ素コートや酸化チタンコートをスラット52に設けることができる。
図1に示すように、ブラインド50の少なくとも一部は、光制御部材20に対向する領域にも広がるように、配置されている。すなわち、図示された例において、ブラインド50は、開口1の全域に対向するように配置されており、開口1の全域から入射してくる光に対して、遮光機能、遮熱機能等を発揮することができる。以下、ブラインド50の一例について説明するが、ここで説明する採光システム10に対しては、種々の既知なブラインド50を用いることができる。
図5はスラット角調整機構55の概略を説明する図である。スラット角調整機構55は、回転軸57aを回転駆動するモータ57と、このモータ57の回転軸57aに噛み合わされるラックギア58と有する。モータ57が回転軸57aを回転させると、ラックギア58はその長手方向に沿って直線運動を行う。各スラット52の長手方向における端面の略中央部には、スラット軸52aが固定されており、このスラット軸52aの先端部には、ギア52bが形成されている。スラット軸52aのギア52bは、ラックギア58に噛み合わされている。よって、ラックギア58がその長手方向に沿って移動すると、その移動量分だけスラット軸52aが回転し、そのスラット軸52aの回転に伴って、スラット軸52aに固定されたスラット52も回転する。これにより、スラット角度が調整される。
モータ57は、回転量を電気信号により段階的に指定可能なステッピングモータを用いるのが望ましい。モータ57の回転量を、例えば20度単位で指定できる場合には、スラット角度を0度〜180度の範囲内で切り替えられるとすると、スラット角度を9通りに可変調整できることになる。
なお、スラット角調整機構55の具体的な構造は、図5に示したものには限定されない。スラット角度を複数段階に自動調整できる機構であれば、どのような機構を採用してもよい。
また、自動調整したスラット角度を必要に応じて手動で微調整できるようにしてもよい。この場合、自動調整したスラット角度を表示する表示器と、自動調整したスラット角度を変更するボタンとを設けて、ユーザがボタンを押すたびに所定角度ずつスラット角度が変更されて、変更したスラット角度を表示器に表示するようにしてもよい。この場合、ユーザがボタンを押す度に、モータ57の回転軸57aが所定角度ずつ回転して、スラット角度が調整されることになる。
図6は本実施形態による採光システム10の制御系60のブロック図である。本実施形態の制御系60は、光制御部材20とブラインド50とが対向配置された面領域において、ブラインド50のスラット角度を最適な角度に自動調整するものである。図6の制御系60を構成する一部の部材は、例えば図4に示す取付ボックス51内に収納され、その他の部材は光制御部材20またはブラインド50の近傍に配置されている。
より具体的には、図6の制御系60は、入射光強度検出部61と、方位検出部62と、位置検出部63と、日時検出部64と、入射角度検出部65と、環境情報検出部66と、第1記憶部67と、第2記憶部68と、調整部69と、スラット駆動制御部70と、照明制御部71とを備えている。
入射光強度検出部61は、光制御部材20の入射面上の入射光強度を検出する。あるいは、光制御部材20を透過してブラインド50に入射される光強度を検出してもよい。入射光強度検出部61はフォトダイオードを用いたフォトセンサで構成可能である。より具体的には、光制御部材20の入射面やブラインド50にフォトダイオードを取り付けて、このフォトダイオードで光電変換した電気信号により、光強度を検出する。
方位検出部62は、光制御部材20の入射面の方位を検出する。より具体的には、方位検出部62は、光制御部材20の近傍に設置された磁気センサを用いて方位を検出する。
採光システム10はいったん設置した後は方位は変化しないため、例えば採光システム10を設置した際に、施工業者が所持する方位センサにて方位を計測し、計測した方位を方位検出部62に設定してもよい。このように、方位検出部62は、スラット角度を調整するたびに方位を検出する必要はなく、何らかの手段で計測した方位を記憶する機能さえ備えておけばよい。よって、方位検出部62は、後述する調整部69に統合することが可能である。
位置検出部63は、本実施形態による採光システム10の設置場所を検出する。位置検出部63は、例えばGPSセンサで構成可能である。採光システム10における位置も、方位と同様に設置後には変化しないため、何らかの手段により計測した位置を位置検出部63に記憶する機能さえ備えておけばよい。よって、位置検出部63も、調整部69に統合することが可能である。
日時検出部64は、現在の時刻を検出する。日時検出部64は、時計により代用可能である。ただし、日時検出部64は、日付の情報まで検出する必要がある。同じ時間であっても、日付が異なると、太陽高度は異なるためである。なお、太陽高度の精度は劣るが、日付の代わりに、季節を検出してもよい。季節は、例えば昼間と夜間の長さの比により検出してもよいし、温度により検出してもよい。
入射角度検出部65は、光制御部材20の入射面方向あるいは入射面の法線方向に対する入射角度を検出する。入射角度検出部65は、太陽光などの外光の入射角度を検出する入射角度検出センサを用いて入射角度を直接的に検出してもよいし、上述した方位検出部62で検出される方位と、位置検出部63で検出される位置と、日時検出部64で検出される日時とに基づいて、入射角度を間接的に検出してもよい。すなわち、方位検出部62により光制御部材20の入射面の方向を検知でき、位置検出部63により採光システム10の設置場所を検知でき、日時検出部64により太陽位置を検知できることから、これらの情報に基づいて、太陽光から光制御部材20に入射される入射角度を間接的に検出してもよい。
環境情報検出部66は、本実施形態による採光システム10が設置される建物の内部の温度や湿度などの環境情報を測定するセンサを有する。センサの一具体例は、採光システム10が設置される建物の屋内の温度を測定する温度センサである。
第1記憶部67は、光制御部材20の入射面方向または入射面の法線方向に対する入射角度と、光制御部材20の出射面方向または出射面の法線方向に対する出射角度との対応関係を予め記憶したデータテーブルである。第1記憶部67には、複数の入射角度と、各入射角度に対応する出射角度とが予め記憶されている。第1記憶部67に任意の入射角度が入力されると、その入射角度に対応する出射角度が第1記憶部67から出力される。仮に、第1記憶部67に記憶されていない入射角度が入力された場合には、入力された入射角度に最も近い入射角度に対応する出射角度が出力されるようにしてもよいし、あるいは入力された入射角度に近い複数の入射角度に対応する複数の出射角度が出力されるようにしてもよい。後者の場合、調整部69にて、複数の出射角度を平均化した角度を、入力した入射角度に対応する出射角度とすることができる。
第1記憶部67に記憶する入射角度に対応する出射角度のデータは、光制御部材20の構造から理論的な計算により求めることができる。すなわち、光制御部材20におけるベース部31の厚さ、ルーバ部32のピッチ、ベース部31とルーバ部32との屈折率差、およびルーバ32部の形状などが既知であれば、光制御部材20に入射される光の入射方向を複数通りに変えたときに、光がルーバ部32で反射または屈折されて、光制御部材20から出射する方向を計算により求めることができる。よって、このようにして理論的に計算した入射角度と出射角度との対応関係を第1記憶部67に記憶してもよい。
あるいは、光制御部材20の入射面に入射する光の方向を複数通りに切り替えて、各入射方向での光制御部材20の出射方向を実験により求めて、その実験結果である入射角度と出射角度との対応関係を第1記憶部67に記憶してもよい。
第2記憶部68は、光制御部材20から出射される光の出射角度と最適なスラット角度との対応関係を予め記憶したデータテーブルである。第2記憶部68には、複数の出射角度と、各出射角度に対応するスラット角度とが予め記憶されている。第2記憶部68に任意の出射角度が入力されると、その出射角度に対応する最適なスラット角度が第2記憶部68から出力される。仮に、第2記憶部68に記憶されていない出射角度が入力された場合には、入力された出射角度に最も近いスラット角度が出力されるようにしてもよいし、あるいは入力された出射角度に近い複数の出射角度に対応する複数のスラット角度が出力されるようにしてもよい。後者の場合、調整部69にて、複数のスラット角度を平均化した角度を、入力した出射角度に対応するスラット角度とすることができる。
なお、光制御部材20の入射面の方位によって、最適なスラット角度が異なることが考えられる。例えば、光制御部材20の入射面が西側に面しているときは、スラット52を通過する外光ができるだけ少なくなるようにスラット角度を調整するのが望ましいのに対して、光制御部材20の入射面が東側や南側に面しているときは、スラット52を通過する外光ができるだけ多くなるようにスラット角度を調整するのが望ましいこともありうる。そこで、第2記憶部68を、光制御部材20の入射面の方位ごとに別個に設けて、同じ出射角度を入力しても、第2記憶部68から出力されるスラット角度が異なるようにしてもよい。あるいは、第2記憶部68の入力パラメータとして、光制御部材20からの光の出射角度だけでなく、方位も入力し、出射角度と方位の組合せで決まるスラット角度を第2記憶部68から出力するようにしてもよい。
同様に、季節や温度によって、最適なスラット角度が異なることも考えられる。例えば、夏場や高温時にはできるだけスラット52を通過する外光を抑制し、冬場や低温時にはできるだけスラット52を通過する外光を増やすのが望ましいこともありうる。そこで、例えば、第2記憶部68の入力パラメータとして、光制御部材20からの光の出射角度だけでなく、温度や日時情報も入力し、出射角度と温度(あるいは日時)との組合せで決まるスラット角度を第2記憶部68から出力するようにしてもよい。
光制御部材20とブラインド50との距離、ブラインド50の隣接するスラット52同士の間隔、各スラット52の短手方向の長さ、スラット52の反射特性などが既知であれば、光制御部材20から出射した光をブラインド50にて斜め上方に跳ね上げるのに適したスラット角度は、理論的に計算可能である。よって、光制御部材20からの光の出射角度を複数通りに変化させて、各出射角度ごとに、ブラインド50にて斜め上方に跳ね上げるのに最適なスラット角度を理論的な計算により求めて、第2記憶部68に記憶しておけばよい。あるいは、実際にブラインド50を設置した状態で、ブラインド50への入射角度を複数通りに変化させて、斜め上方に跳ね上げるのに最適なスラット角度を実験により求めて、その実験データを第2記憶部68に記憶してもよい。
第1記憶部67と第2記憶部68に記憶されているデータテーブルは、採光システム10の設置場所や設置方位、日時に依存しないデータであり、一度作製してしまえば、別の場所に設置される別の採光システム10にも流用することができる。よって、採光システム10の設計を行う際に、コンピュータを用いた理論計算、あるいは実験により、これらのデータテーブルを作製しておくのが望ましい。これにより、採光システム10がどの場所にどの方位で設置される場合であっても、同じデータテーブルからなる第1記憶部67と第2記憶部68を用いることができ、採光システム10の制御系60の部材コストを抑制できる。
このように、第1記憶部67と第2記憶部68は、別個の場所に設置される複数の採光システム10で共用できるため、例えば、第1記憶部67と第2記憶部68を遠隔地に設けて、調整部69はインターネット等の通信ネットワークを介して、第1記憶部67と第2記憶部68にアクセスして、最適なスラット角度を通信ネットワーク経由で取得してもよい。
なお、第1記憶部67と第2記憶部68は、一つの記憶部に統合してもよい。すなわち、光制御部材20への光の入射角度を入力すると、対応するスラット角度が記憶部から直接出力されるようにしてもよい。
調整部69は、光制御部材20から出射する光の出射方向と、天候および温度の少なくとも一つを含む環境条件と、に基づいて、スラット角度を調整する。より具体的には、調整部69は、後述するフローチャートに基づいて最適なスラット角度を決定し、スラット駆動制御部70に対してスラット52の角度調整を指示する。調整部69は、プロセッサなどのハードウェア部品で構成可能である。
スラット駆動制御部70は、調整部69から指示されたスラット角度になるように、図5に示すモータ57を駆動する。より具体的には、調整部69から指示されたスラット角度に応じて、モータ57の回転方向および回転量に関する情報を決定し、決定した情報に基づいて、所定の回転方向および回転量でモータ57を駆動する。
照明制御部71は、採光システム10が設置される建物の屋内照明の点灯/消灯を制御する。後述するように、調整部69は、太陽光等の外光を十分に屋内に取り込める場合には、屋内照明を自動消灯し、曇天や夜間のように屋内が暗い場合には、屋内照明を自動点灯する。なお、照明制御部71は、必須の構成部材ではないため、省略してもよい。
図7は調整部69が行うスラット角度調整処理の一例を示すフローチャートである。まず、入射光強度検出部61で検出された入射光強度が第1閾値以下か否かを判定する(ステップS1)。第1閾値以下の場合には、採光システム10が設置される建物の屋内が暗いと判断して、ブラインド50内の全スラット52を閉じるようスラット駆動制御部70に指示するとともに、屋内照明を点灯するよう照明制御部71に指示する(ステップS2)。ここで、スラット52を閉じるとは、光制御部材20を透過した光がブラインド50を透過しないようにスラット角度を調整することである。
なお、屋内照明を点灯する際に全スラット52を閉じる理由は、屋内が明るくなって屋内の様子が屋外から丸見えになり、プライバシを確保できなくなるためである。
ステップS1で入射光強度が第1閾値より大きいと判定された場合、入射光強度が第2閾値以下か否かを判定する(ステップS3)。入射光強度が第1閾値より大きくて第2閾値以下の場合には、屋内照明が必要ではないものの、屋内をできるだけ明るくするために、ブラインド50内の全スラット52を全開にするようスラット駆動制御部70に指示する(ステップS4)。ここで、全開とは、光制御部材20を透過した光をブラインド50で遮断しないようにスラット角度を調整することであり、例えば、スラット面が設置面(水平面)に略平行になるようにスラット角度が設定される。あるいは、ステップS4を実施するにあたって、入射角度検出部65にて外光の入射角度を検出し、外光の入射方向とスラット面の方向とを一致させて、外光をできるだけ屋内に取り込むようにしてもよい。
ステップS3で入射光強度が第2閾値より大きいと判定されると、環境情報検出部66の温度センサを用いて、屋内温度が所定温度以下か否かを判定する(ステップS5)。所定温度は例えば、摂氏10℃であり、屋内温度が所定温度より低い場合は、できるだけ外光を積極的に取り込んで、屋内の温度を短時間で上げるのが望ましいことから、ステップS4に進んで、ブラインド50内の全スラット52を全開にするようスラット駆動制御部70に指示する。
ステップS5で屋内温度が所定温度より高いと判定されると、入射角度検出部65を用いて、太陽光等の外光の光制御部材20への入射角度を検出する(ステップS6)。
次に、検出した入射角度に対応する光制御部材20の出射角度を第1記憶部67から読み出す(ステップS7)。続いて、第1記憶部67から読み出した出射角度に対応するスラット角度を第2記憶部68から読み出して、スラット角度を決定する(ステップS8)。
次に、決定したスラット角度になるようスラット駆動制御部70に指示する(ステップS9)。これにより、図5に示したモータ57が所定長さだけラックギア58を移動させ、ラックギア58の移動に合わせて、ラックギア58と噛み合っているスラット軸52aが回転し、スラット軸52aに固定されているスラット52も同様に回転して、最適なスラット角度に設定される。
このように、本実施形態によれば、光制御部材20とブラインド50を対向させて配置した採光システム10において、光制御部材20に入射された光が光制御部材20で偏向されて出射された後にブラインド50に入射される際、光制御部材20を通過した光の出射角度に合わせてブラインド50のスラット角度を自動調整することができる。より具体的には、採光システム10の設置方位、設置場所、日時、季節、温度、入射光強度などの環境条件に応じて、最適なスラット角度に自動的に調整することができる。よって、従来のように、太陽の動きに合わせて、頻繁にスラット角度を手動で調整する必要がなくなり、ユーザの利便性を向上させることができる。これにより、光制御部材20とブラインド50を対向配置させても、採光性能が落ちることがなく、また、光制御部材20だけでは不十分であった防眩性やプライバシ性の向上が図れる。
図1では、ブラインド50の設置面の一部にだけ光制御部材20が重複して配置されている例を示しているが、光制御部材20と重複して配置されているブラインド50の領域(以下、第1ブラインド領域)と、光制御部材20が配置されていないブラインド50の領域(以下、第2ブラインド領域)とで、スラット角度の調整の仕方を変えてもよい。すなわち、第1ブラインド領域は、上述した図7のフローチャートに従ってスラット角度を調整し、第2ブラインド領域は、外光が直接ブラインド50に入射されることから、外光のブラインド50への入射角度と最適なスラット角度との対応関係を記憶した別個の記憶部を設けて、この記憶部から読み出したスラット角度に基づいてスラット52の角度調整を行ってもよい。
また、本実施形態では、各ブラインド50ごとに、ブラインド50の近傍に制御系60を設けて、スラット角度の自動調整を行う例を説明したが、例えば、採光システム10内に、対向配置された光制御部材20とブラインド50とが、複数組設けられている場合には、各組内の各ブラインド50のスラット角度を同タイミングで自動調整できるように、制御系60を遠隔地に設けて、制御系60から、有線または無線で、各ブラインド50のスラット角調整機構55に、スラット角度の調整を指示してもよい。
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。