以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態によるガソリン機関からなるエンジン100の構成について説明する。第1実施形態では、直列4気筒のエンジン100の例を示す。また、以下では、クランクシャフト11の延びる方向をX方向とし、クランクシャフト11に直交する横方向をY方向とし、シリンダ21(図2参照)の延びる方向をZ方向(上下方向)として説明を行う。なお、エンジン100は、本発明の「内燃機関」の一例である。
第1実施形態による自動車用のエンジン100は、図1に示すように、シリンダヘッド1、シリンダブロック2、クランクケース3およびシリンダヘッドカバー(以下、「ヘッドカバー」という)4を含むアルミニウム合金製のエンジン本体10を備えている。シリンダヘッド1と、シリンダブロック2と、クランクケース3と、ヘッドカバー4とは、それぞれ別体として構成されている。エンジン本体10は、エンジン本体10内をX方向に貫通するように配置されたクランクシャフト11と、内部に設けられた燃焼室12(図2参照)とを含む。また、エンジン本体10の外側面のうち、クランクシャフト11が延びるX方向に沿って延びる一方側(Y2側)の外側面10aには、インテークマニホールド5と、オイルセパレータ6とが取り付けられている。第1実施形態では、オイルセパレータ6は、第1吸込経路6aと、吐出経路6bと、第2吸込経路6cとに接続されている。なお、エンジン本体10は、本発明の「内燃機関本体」の一例であり、インテークマニホールド5は、本発明の「吸気装置」の一例である。
インテークマニホールド5は、エンジン本体10に吸気を導入する機能を有する。インテークマニホールド5は、エンジン本体10の複数(4つ)の吸気ポート1aにそれぞれ接続される複数(4つ)の分配配管51と、複数の分配配管51が合流するサージタンク52とを含む。インテークマニホールド5は、図2に示すように、シリンダブロック2の複数(4つ)のシリンダ21の上部にそれぞれ形成される燃焼室12に、シリンダヘッド1の吸気ポート1aを介して吸気を導入する吸気装置である。インテークマニホールド5は、ブローバイガスBGの導入ポート53を含む。第1実施形態では、サージタンク52の下面に、ブローバイガスBGの導入ポート53が設けられている。
オイルセパレータ6は、エンジン本体10のブローバイガスBGに含まれるオイルを分離するために設けられている。すなわち、オイルセパレータ6は、エンジン本体10から流入したブローバイガスBGを、燃焼ガス及び未燃焼の混合気と、液体であるエンジンオイル(以下、単にオイルと呼ぶ)とに気液分離する機能を有している。オイルセパレータ6は、6,6−ナイロンなどの耐油性、耐熱性、耐薬品性、強度を有する樹脂から構成されている。オイルセパレータ6は、第1吸込経路6aが接続される吸込口61と、吐出経路6bが接続される吐出口62と、吸込口61と吐出口62とを接続する流路63とを含む。また、オイルセパレータ6は、図1に示すように、第2吸込経路6cが接続される接続口64を含む。
図3に示すように、吸込口61は、オイルセパレータ6の下端部に設けられている。吸込口61は、エンジン本体10に形成された開口部32に配管部材を介することなく直接接続されることにより、エンジン本体10の内部に連通している。
図4に示すように、吐出口62は、オイルセパレータ6の上端部に設けられている。吐出口62には、PCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブ65が取り付けられており、PCVバルブ65を介して接続配管7の一端が接続されている。
PCVバルブ65は、オイルセパレータ6の吐出口62に直接取り付けられている。PCVバルブ65は、インテークマニホールド5側(図1参照)とオイルセパレータ6側との圧力差に応じて開度を変更するように構成されている。また、PCVバルブ65がブローバイガスBGの流量を調整する。
流路63は、吸込口61と吐出口62とを接続している。流路63は、屈曲したラビリンス構造に形成されている。ラビリンス構造の流路63は、オイルセパレータ6の気液分離を行う分離部として機能する。吸込口61は、流路63の下端部(一端部)に配置され、吐出口62は、流路63の上端部(他端部)に配置されている。
接続口64は、オイルセパレータ6の内部(流路63)において、吸込口61よりも吐出口62に近い位置に配置されている。第1実施形態では、接続口64は、吐出口62と同じく流路63の上端部(他端部)に配置されている。
第1吸込経路6aは、図2に示すように、オイルセパレータ6を燃焼室12よりも下方でエンジン本体10の内部と連通させるように設けられている。第1吸込経路6aは、エンジン本体10の内部のブローバイガスBGをオイルセパレータ6に導入するためのガス導通経路である。第1吸込経路6aは、エンジン本体10の開口部32に接続されている。すなわち、第1実施形態では、第1吸込経路6aは、開口部32と吸込口61とによって直接接続された経路である。なお、第1吸込経路6aは、開口部32と吸込口61とを配管などによって接続した経路であってもよい。
吐出経路6bは、オイルセパレータ6をインテークマニホールド5の内部と連通させるように設けられている。吐出経路6bは、オイルセパレータ6内のブローバイガスBGを吸気側のインテークマニホールド5に還元させるためのガス導通経路である。吐出経路6bは、オイルセパレータ6の吐出口62(PCVバルブ65)と、インテークマニホールド5の導入ポート53とを接続している。第1実施形態では、図1に示すように、吐出口62に設けられたPCVバルブ65の吐出側と、導入ポート53とが、接続配管7によって直接接続されている。すなわち、吐出経路6bは、接続配管7によって吐出口62(PCVバルブ65)と導入ポート53とが接続された経路である。接続配管7は、エンジン本体10やインテークマニホールド5とは別体で形成された管部材からなる。
第2吸込経路6cは、図2に示すように、オイルセパレータ6を燃焼室12よりも上方でエンジン本体10の内部と連通させるように設けられている。第2吸込経路6cは、オイルセパレータ6内の負圧が増大した場合に連通するバイパス経路である。第2吸込経路6cは、ヘッドカバー4の内部と連通している。具体的には、第2吸込経路6cは、オイルセパレータ6の接続口64と、ヘッドカバー4の導出ポート41とを接続するように設けられている。第1実施形態では、図1に示すように、オイルセパレータ6の接続口64と、ヘッドカバー4の導出ポート41とが、バイパス配管8によって直接接続されている。すなわち、第1実施形態では、第2吸込経路6cは、バイパス配管8によって接続口64と導出ポート41とが接続された経路である。後述するように、第2吸込経路6cは、通常時は非連通状態となっている。
なお、図4に示すように、接続口64は、吐出口62と同じ流路63の上端部に配置されているため、接続口64に接続された第2吸込経路6cは、流路63の吸込口61よりも吐出口62に近い位置でオイルセパレータ6に接続されている。バイパス配管8は、エンジン本体10やオイルセパレータ6とは別体で形成された管部材からなる。
第1実施形態では、第2吸込経路6cには、閉弁状態で設けられ、オイルセパレータ6内の負圧の増大に基づいて開放される一方向バルブ66が設けられている。一方向バルブ66は、第2吸込経路6cのオイルセパレータ6側の端部において、オイルセパレータ6に取り付けられている。すなわち、一方向バルブ66は、オイルセパレータ6の接続口64に取り付けられており、一方向バルブ66の吸込側にバイパス配管8が接続されている。
一方向バルブ66は、たとえば、バルブを開閉するための弁体66aと、弁体66aを閉弁側(ヘッドカバー4側)に付勢する付勢部材66bとを含む。一方向バルブ66は、オイルセパレータ6内の負圧が閾値以上の大きさになると、付勢部材66bの付勢力に打ち勝つ引張力が弁体66aに作用することにより、弁体66aが開弁方向に移動(図4の二点鎖線参照)して開弁状態(連通状態)となる。一方向バルブ66は、オイルセパレータ6内の負圧が所定の閾値未満の大きさの通常状態では、弁体66aが接続口64を塞ぐ位置(図4の実線参照)に付勢されることにより、閉弁状態を維持するように構成されている。なお、正確には、オイルセパレータ6内の負圧とは、一方向バルブ66の吸込側であるヘッドカバー4側の内圧(バイパス配管8の内圧)とオイルセパレータ6の内圧との差圧である。
ここで、第1実施形態によるエンジン100は、図5に示すように、たとえばFR(フロントエンジン・リアドライブ)駆動方式が採用された車両101に搭載される。エンジン本体10は、図1に示すように、ブラケット(エンジンマウントブラケット)9により車両101に取り付けられている。エンジン100は、クランクシャフト11が車両101の前後方向に沿うよう配置されて、ブラケット9に支持される。X1方向が車両101の前方であり、X2方向が車両101の後方である。クランクシャフト11は、車両101の後部側から車両101の動力伝達装置と接続される。この場合、車両101の走行時に車両101内に取り込まれる空気流(走行風)が、車両前側(X1側)からX2方向に向けて流れることになる。
第1実施形態では、第2吸込経路6cは、エンジン本体10とオイルセパレータ6とを、インテークマニホールド5に対して車両101の後方側(X2側)を通って直接接続するように設けられている。すなわち、バイパス配管8が、ヘッドカバー4の導出ポート41とオイルセパレータ6の接続口64(一方向バルブ66)とを、インテークマニホールド5に対して車両101の後方側を通って接続している。より具体的には、バイパス配管8(第2吸込経路6c)は、オイルセパレータ6の一方向バルブ66(接続口64)に接続された一端81と、ヘッドカバー4の導出ポート41に接続された他端82との間で、ブラケット9およびインテークマニホールド5の後方側(X2側)を迂回するように設けられている。
ブラケット9は、エンジン本体10のY2側の外側面10aにおいて、インテークマニホールド5よりも下方(Z2側)に取り付けられている。ブラケット9は、インテークマニホールド5とオイルセパレータ6との間の位置に配置されている。また、吐出経路6bの接続配管7は、図3に示すように、ブラケット9に設けられた配管用通路9aを貫通して、導入ポート53とPCVバルブ65とを直接接続している。接続配管7は、配管用通路9aを上下方向に直線状に通過(貫通)している。なお、図示しないが、吐出経路6bの接続配管7を、バイパス配管8と同じようにインテークマニホールド5およびブラケット9の後方を迂回するように設けてもよい。
次に、エンジン本体10の構造について説明する。
図2に示すように、シリンダヘッド1の内部には、カムシャフト(図示せず)およびバルブ機構などが配置されているとともに、シリンダ21に連通する吸気ポート1aと排気ポート1bとを含んでいる。シリンダブロック2は、上端がシリンダヘッド1の下端(Z2側)に接続されている。シリンダブロック2の内部には、ピストン22がZ方向に往復動する4個のシリンダ21が形成されている。この4個のシリンダ21には、吸気ポート1aを介して、4本の分配配管51(図1参照)から各々吸気が供給される。
シリンダ21の上端部と、上死点位置におけるピストン22の上面と、シリンダヘッド1の凹部とによって囲まれた空間が、燃焼室12である。第2吸込経路6cが接続されるヘッドカバー4は、下端がシリンダヘッド1の上端(Z1側)に接続されており、燃焼室12よりも上方に配置されている。第1吸込経路6aが接続されるクランクケース3(開口部32)は、燃焼室12よりも下方に配置されている。
クランクケース3は、上端がシリンダブロック2の下端(Z2側)に接続されている。シリンダブロック2とクランクケース3とによって、エンジン本体10の内部に中空のクランク室10bが形成されている。クランク室10bには、X方向(図3参照)に沿って延びる回転軸線A回りに回転可能に接続されたクランクシャフト11が配置されている。
クランクシャフト11は、シリンダブロック2とクランクケース3との合わせ面に配置されるとともに回転可能に軸受けされている。この結果、クランクシャフト11の回転軸線Aと、シリンダブロック2とクランクケース3との合わせ面とは、上下方向(Z方向)位置が略一致している。クランクシャフト11は、コンロッド(コネクティングロッド)13を介してピストン22と連結されており、ピストン22がシリンダ21内を上下移動するのに伴ってクランクシャフト11が回転駆動される。その際、ピストン22の上方(Z1側)の燃焼室12からピストン22とシリンダ21との微小な隙間を介してブローバイガスBGがクランク室10bに漏れ出てくる。
クランク室10bの下部(Z2側)には、オイルが貯留されるオイル貯留部31が設けられている。オイルは、図示しないオイルポンプによりオイル貯留部31からエンジン本体10内の上部に汲み上げられてカムシャフトなどの動弁系タイミング部材(図示せず)やピストン22の外周面などの摺動部を潤滑した後、自重により落下してオイル貯留部31に戻される。また、クランクケース3の上端(シリンダブロック2とクランクケース3との合わせ面)は、オイル貯留部31に貯留されたオイルSの油面Gよりも上方に位置する。なお、本明細書においてオイルSの油面Gとは、オイル貯留部31に許容量(上限量)のオイルSが貯留された状態における油面を意味している。
また、クランクケース3のY2側の外側面3aには、オイルセパレータ6の吸込口61が接続される開口部32が設けられている。図3に示すように、開口部32は、クランクケース3の内部のクランク室10bと外部(オイルセパレータ6)とを接続するように、クランクケース3のY2側の外側面3aをY方向に貫通している。オイルセパレータ6は、吸込口61の位置を開口部32の位置に一致させ、Oリングなどのシール部材67を介してシールした状態で、締結部材(ボルト)によりエンジン本体10の外側面10aに固定されている。また、開口部32と吸込口61とは、それぞれ、上下方向に延びる縦長の長円形状(図4参照)に形成されている。
ここで、オイルセパレータ6と開口部32との位置関係について詳細に説明する。
図3に示すように、クランクケース3の開口部32およびオイルセパレータ6の吸込口61は、共に、上下方向(Z方向)において、クランクシャフト11の回転軸線A(クランクセンター)よりも下方(Z2側)で、かつ、オイル貯留部31に溜められたオイルSの油面Gよりも上方(Z1側)に位置するように配置されている。つまり、クランクケース3の開口部32およびオイルセパレータ6の吸込口61は、共に、クランクシャフト11の回転軸線Aよりも上側のシリンダヘッド1やシリンダブロック2(図2参照)には配置されていない。
次に、図2〜図4を参照して、流路63におけるブローバイガスBGの流通について説明する。
クランク室10bから開口部32および吸込口61を介してオイルセパレータ6の内部に流入したブローバイガスBG(図2参照)は、図4に示すように、吸込口61からラビリンス構造の流路63を通過する過程で、流路63を区画する内壁面に衝突する。衝突の結果、ブローバイガスBGに含まれる液体のオイルがブローバイガスBGから分離される。液体のオイルが分離されたブローバイガスBGは、吐出口62、PCVバルブ65および接続配管7を介してインテークマニホールド5(図2参照)に還元される。
オイルセパレータ6で分離されたオイルは、図3に示すように、オイルの自重により、オイルセパレータ6の流路63をブローバイガスBGの流通方向とは逆方向に流れて、吸込口61および開口部32の下部からクランク室10bのオイル貯留部31に戻される。このように、第1実施形態では、オイルセパレータ6のブローバイガスBGの吸込口61と、分離したオイルの排出口とが共通となっている。ブローバイガスBGの吸込口61と、分離したオイルの排出口とを別個に設けた場合には、吸込口61と排出口とに圧力差が生じてブローバイガスBGの吸気側への還元効率に悪影響を及ぼすことがある。これに対して、第1実施形態では、吸込口61とオイルの排出口とを共通にすることにより、圧力差が発生しない構造となっている。
次に、図2および図4を参照して、第2吸込経路6cの作用について説明する。
図2に示すように、通常時は、インテークマニホールド5の負圧によって、オイルセパレータ6の吸込口61にブローバイガスBGが吸い込まれる。オイルセパレータ6とクランク室10bの内部とは、第1吸込経路6aを介して連通状態にあり、オイルセパレータ6の負圧は一方向バルブ66の閾値未満に維持される。このため、一方向バルブ66は閉弁状態に維持され、第2吸込経路6cは非連通状態となる。
そして、吸込口61に吸い込まれたブローバイガスBGは、オイルセパレータ6で気液分離された後、吐出経路6bからインテークマニホールド5のサージタンク52内に還元される。サージタンク52内に還元されたブローバイガスBGは、各分配配管51を経て各吸気ポート1aに吸気と共に供給される。
一方、たとえば車両101の登坂、降坂、旋回時などで油面Gが傾いた場合や、振動によってオイルの液滴が跳ね上げられた場合などに、第1吸込経路6aの開口部32(吸込口61)がオイルによって塞がれる可能性がある。この場合、オイルセパレータ6内では、第1吸込経路6aおよび第2吸込経路6cの両方が閉鎖されることにより、一時的に負圧が増大する。この結果、オイルセパレータ6の負圧が一方向バルブ66の閾値以上の大きさになるまで増大すると、図4の二点鎖線で示したように、一方向バルブ66が開弁する。そして、オイルセパレータ6内とヘッドカバー4内とが、第2吸込経路6cを介して連通する。
ヘッドカバー4からのガスHGは、第2吸込経路6cを通って接続口64からオイルセパレータ6内に導入される。この結果、オイルセパレータ6内の負圧増大が速やかに解消される。接続口64から導入されたガスHGは、流路63内の吸込口61側に流れることなく、近傍の吐出口62から吐出経路6bに吸い出されることになる。この結果、接続口64から導入されたガスHGの流れが、吸込口61を閉塞したオイルの液滴を吐出経路6bに運ぶことが抑制される。オイルによる閉塞が解消されてオイルセパレータ6内の負圧が所定の閾値未満に戻ると、一方向バルブ66が閉弁して第2吸込経路6cが閉鎖される。
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、第1実施形態では、上記のように、燃焼室12よりも下方でエンジン本体10の内部と連通する第1吸込経路6aと、インテークマニホールド5の内部と連通する吐出経路6bと、燃焼室12よりも上方でエンジン本体10の内部と連通する第2吸込経路6cとにオイルセパレータ6を接続するとともに、第2吸込経路6cに、閉弁状態で設けられ、オイルセパレータ6内の負圧の増大に基づいて開放される一方向バルブ66を設ける。これにより、燃焼室12よりも下方の第1吸込経路6aがオイルにより閉塞され、オイルセパレータ6内の負圧が一時的に増大した場合に、一方向バルブ66を開放させてオイルセパレータ6とエンジン本体10の内部とを第2吸込経路6cによってバイパスさせることができる。この結果、オイルの液滴をインテークマニホールド5側に吸い上げるような大きな負圧状態が一時的に発生しても、オイルセパレータ6内の負圧の増大を速やかに解消することができる。これにより、第1吸込経路6aにおけるブローバイガスBGの吸込口61がオイルによって塞がれる場合にも、インテークマニホールド5側にオイルの液滴を吸い上げることを抑制することができる。
また、第2吸込経路6cを常時連通状態とすると、インテークマニホールド5側の負圧が第1吸込経路6aおよび第2吸込経路6cに分散されるため、その分ブローバイガスBGの換気性能が低下することになる。これに対して、第1実施形態のエンジン100によれば、通常時には一方向バルブ66を閉弁状態にして第2吸込経路6cを閉鎖しておくことができるので、第2吸込経路6cを設けた場合でも第1吸気経路6a側でのブローバイガスBGの換気性能を維持することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第2吸込経路6cを、ヘッドカバー4の内部と連通するように設ける。これにより、導出ポート41の形成が容易なヘッドカバー4に第2吸込経路6cを接続することができるので、第2吸込経路6cを容易に設けることができる。また、第2吸込経路6cをオイル貯留部31から離間したヘッドカバー4に接続することにより、第2吸込経路6cがオイルなどにより閉塞されることを防ぐことができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第2吸込経路6cのオイルセパレータ6側の端部において、一方向バルブ66をオイルセパレータ6に取り付ける。これにより、一方向バルブ66をオイルセパレータ6の内部に近接させることができる。この結果、オイルセパレータ6内の圧力変化に対する応答性を向上させることができるので、第2吸込経路6cの開閉を速やかに行うことができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第2吸込経路6cを、インテークマニホールド5に対して車両101の後方側(X2側)を通ってエンジン本体10とオイルセパレータ6とを直接接続するように設ける。これにより、第2吸込経路6cの前方にインテークマニホールド5が配置されるので、走行中の車両101の走行風が第2吸込経路6cに当たることを抑制することができる。この結果、寒冷環境で車両101が走行する場合に、第2吸込経路6c内のガスに含まれる水分が走行風によって凍結することを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、クランクシャフト11の回転軸線Aよりも下方(Z2方向)に配置された開口部32をエンジン本体10に設ける。そして、オイルセパレータ6の第1吸込経路6aを、開口部32に接続する。これにより、ブローバイガスBGが漏れ出す位置に開口部32を近づけて配置することができる。その結果、第1吸込経路6aから効率よくブローバイガスBGを吸い出すことができるので、エンジン100内部の換気性を向上させることができる。この場合、開口部32がオイルSの油面G近傍に配置されることになるが、第1実施形態のエンジン100によれば、上述したように、ブローバイガスBGの吸込口61がオイルによって塞がれる場合にも、インテークマニホールド5側にオイルの液滴を吸い上げることを抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、図5および図6を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、第2吸込経路6cを、インテークマニホールド5の後方側を通ってエンジン本体10とオイルセパレータ6とを直接接続するように設けた上記第1実施形態と異なり、第2吸込経路106cを、インテークマニホールド5の前方側を通ってエンジン本体10とオイルセパレータ6とを直接接続するように設けた例について説明する。なお、第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、第2実施形態のエンジン200では、第2吸込経路106cは、エンジン本体10とオイルセパレータ6とを、インテークマニホールド5に対して車両101(図5参照)の前方側(X1側)を通って直接接続するように設けられている。すなわち、バイパス配管108が、ヘッドカバー4の導出ポート141とオイルセパレータ6の接続口164とを、インテークマニホールド5に対して車両101の前方側を通って直接接続するように設けられている。なお、図6では、ブラケット9の図示を省略している。なお、エンジン200は、本発明の「内燃機関」の一例である。
バイパス配管108(第2吸込経路106c)は、一端81と他端82との間で、インテークマニホールド5の前方側を迂回するように設けられている。より具体的には、接続口164がオイルセパレータ6の上面(Z1側側面)に設けられており、バイパス配管108の一端81が一方向バルブ66にZ1側から接続されている。また、導出ポート141がヘッドカバー4の前方側部分(X1側部分)で、インテークマニホールド5よりも前方側の位置に設けられており、バイパス配管8の他端82が導出ポート141に接続されている。
第2実施形態のエンジン200は、インテークマニホールド5の前方側(X1側)に、補器類102の設置スペースが設けられるケースにおいて特に有効である。この場合、バイパス配管108(第2吸込経路106c)は、インテークマニホールド5の前方側(X1側)で、かつ、補器類102の設置スペースよりも後方側(X2側)を通るように設けられる。この結果、バイパス配管108(第2吸込経路106c)は、X2方向に流れる走行風に対して、補器類102の下流側(X2側)に配置される。
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、大きな負圧状態が一時的に発生しても、オイルセパレータ6内の負圧の増大を速やかに解消することができるので、第1吸込経路6aにおけるブローバイガスBGの吸込口61がオイルによって塞がれる場合にも、インテークマニホールド5側にオイルの液滴を吸い上げることを抑制することができる。
また、インテークマニホールド5に対して車両101の前方側(X1側)に補器類102などが配置される場合には、これらの補器類102によって走行中の車両101の走行風がバイパス配管108(第2吸込経路106c)に当たることを抑制することができる。その結果、寒冷環境で車両101が走行する場合にも、走行風によってバイパス配管108(第2吸込経路106c)内の水分が凍結するのを抑制することができる。
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
次に、図5および図7を参照して、第3実施形態について説明する。この第2実施形態では、第2吸込経路6c(106c)がインテークマニホールド5を迂回する上記第1および第2実施形態と異なり、第2吸込経路206cを、インテークマニホールド205の内部を通過してエンジン本体10とオイルセパレータ6とを直接接続するように設けた例について説明する。なお、第3実施形態において、上記第1または第2実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。なお、図7でも、ブラケット9の図示を省略している。インテークマニホールド205は、本発明の「吸気装置」の一例である。
第3実施形態のエンジン300では、第2吸込経路206cは、インテークマニホールド205の内部を通過してエンジン本体10とオイルセパレータ6とを直接接続するように設けられている。なお、エンジン300は、本発明の「内燃機関」の一例である。
具体的には、インテークマニホールド205は、第2吸込経路206cの一部を構成する中継通路部251を内部に含む。中継通路部251は、インテークマニホールド205の下面に設けられた第1接続ポート252と、インテークマニホールド205の上面に設けられた第2接続ポート253とを接続するように設けられたガス通路である。また、中継通路部251は、分配配管51およびサージタンク52とは連通せずに独立して設けられたガス通路である。第1接続ポート252は、サージタンク52の下面に下向きに設けられている。中継通路部251は、サージタンク52の周壁部に沿って延びるとともに、4本の分配配管51のうち、中央の2本の分配配管51の間を通るように設けられている。第2接続ポート253は、中央の2本の分配配管51の間の位置で、上方に向けて設けられている。
第2吸込経路206cは、オイルセパレータ6と中継通路部251の一端(第1接続ポート252)とを接続する第1部分261と、中継通路部251の他端(第2接続ポート253)とエンジン本体10とを接続する第2部分262とを含む。なお、第1部分261および第2部分262は、それぞれ、上記第1実施形態のバイパス配管8と同様の管部材からなる。
より具体的には、第1部分261の一端が接続口164の一方向バルブ66にZ1側から接続され、第1部分261の他端が第1接続ポート252にZ2側から接続されている。
また、第2部分262の一端が第2接続ポート253にZ1側から接続され、第2部分262の他端がヘッドカバー4の導出ポート241に接続されている。これにより、第2吸込経路206cは、導出ポート241を介してヘッドカバー4の内部とオイルセパレータ6とを連通させている。導出ポート241は、ヘッドカバー4のX方向の中央部に配置されており、X方向位置を第2接続ポート253のX方向位置に対応させている。
このようにして、第3実施形態では、第2吸込経路206cは、第1部分261および第2部分262と、中継通路部251とによって構成されている。
第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、第3実施形態では、上記第1実施形態と同様に、大きな負圧状態が一時的に発生しても、オイルセパレータ6内の負圧の増大を速やかに解消することができるので、第1吸込経路6aにおけるブローバイガスBGの吸込口61がオイルによって塞がれる場合にも、インテークマニホールド205側にオイルの液滴を吸い上げることを抑制することができる。
また、第3実施形態では、上記のように、第2吸込経路206cの一部を構成する中継通路部251をインテークマニホールド205の内部に形成する。そして、オイルセパレータ6と中継通路部251の一端(第1接続ポート252)とを接続する第1部分261と、中継通路部251の他端(第2接続ポート253)とエンジン本体10とを接続する第2部分262とを含む第2吸込経路206cを設ける。これにより、第2吸込経路206cがインテークマニホールド205内を通過するので、走行中の車両101の走行風が第2吸込経路206cに当たることを抑制することができる。その結果、寒冷環境で車両101が走行する場合に、第2吸込経路206c内のガスに含まれる水分が走行風によって凍結することを抑制することができる。
第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、オイルセパレータ6がエンジン本体10(シリンダブロック2およびクランクケース3)のY2側の外側面10aに取り付けられている例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、オイルセパレータ6をエンジン本体10のクランクケース3のY2側の外側面3aに取り付ける一方、シリンダブロック2のY2側の外側面には取り付けないように構成してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、エンジン本体10がシリンダヘッド1、シリンダブロック2、クランクケース3およびヘッドカバー4を含む例について示したが、本発明はこれに限られない。エンジン本体がシリンダヘッド、シリンダブロック、クランクケースおよびヘッドカバー以外の部材を含んでいてもよい。たとえば、エンジン本体が、クランクシャフトを支持するラダーフレームと、オイル貯留部を有するオイルパンとを含んでもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、シリンダブロック2とクランクケース3とを別体で構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シリンダブロックとクランクケースとを一体として構成してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、FR駆動方式の車両101に搭載するエンジンの例を示したが、本発明はこれに限られない。どのような駆動方式の車両に搭載されるエンジンに本発明を適用してもよい。また、自動車に限らず、どのような車両に搭載されるエンジンに本発明を適用してもよいし、車両以外の用途の内燃機関に本発明を適用してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、ラビリンス構造の流路63からなる分離部を有するオイルセパレータ(いわゆる慣性衝突型のオイルセパレータ)の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、オイルセパレータは、オイルセパレータ内でブローバイガスの旋回流を作り、遠心力によって気液分離を行う遠心分離型のオイルセパレータや、ブローバイガスを通過させるフィルタによって気液分離を行うフィルタ内蔵型のオイルセパレータであってもよい。また、オイルセパレータは、これらの複数方式の分離部の組み合わせにより構成されていてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、第2吸込経路をヘッドカバー4に接続する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば第2吸込経路をシリンダヘッドに接続してもよい。第2吸込経路は、燃焼室よりも上方でエンジン本体の内部と連通するように設けられていればよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、第1吸込経路をクランクケース3(開口部32)に接続する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば第1吸込経路をシリンダブロックに接続してもよい。第1吸込経路は、燃焼室よりも下方でエンジン本体の内部と連通するように設けられていればよい。