本発明は、光通信で用いられる光回路に関する。より詳細には、波長分割多重光信号から特定の波長の光信号を取り出しまたは加えるための光信号終端装置に使用される光可変フィルタに関する。
光ファイバを伝送媒体とする光通信技術は、信号の伝送距離の長延化をもたらし、大規模な光通信網が構築されてきた。近年では、インターネット通信が広く普及するのに伴って、通信トラフィックが急速に増大しており、通信網に対する大容量化、高速化、高機能化および低消費電力化の要求が高まっている。これまでに、波長の異なる複数の光信号を1本の光ファイバ伝送路で同時に伝送する波長多重通信技術の導入によって、2地点間の伝送容量を増大することが可能となった。しかし、通信網においては、複数の伝送路が集まるノードにおいて、信号の経路(パス)を設定(ルーティング)したり、切替(スイッチング)したりする必要がある。近年の急激な伝送容量の増大に伴って、経路設定や切替などの信号処理がボトルネックになってきている。
これまでは、伝送されてきた光信号を一旦電気信号に変換した後に経路設定や経路切替を行ない、再び電気信号を光信号に変換して伝送路に送出する方式が用いられてきた。しかし、今後は光信号を電気信号に変換することなく、光信号のままで信号経路の設定や切替処理を行なう方式を用いる、いわゆるフォトニックネットワークが実現されることになる。フォトニックネットワークを使用することによって、ノードのスループットを飛躍的に拡大するとともに、ノード装置の消費電力を大幅に削減することも期待されている。
フォトニックネットワークを用いた光ノードシステムとしては、複数のノードをリング状またはバス状に接続した再構成可能光アドドロップ多重(ROADM:Reconfigurable Optical Add Drop Multiplexing)システム、および、複数のノードをメッシュ状に接続した光クロスコネクト(OXC:Optical Cross-Connect)システムが知られている。ROADMシステムの各ノードには、1本の入力側光ファイバ伝送路と、1本の出力側光ファイバ伝送路とが接続され、入力側光ファイバ伝送路から入力される波長分割多重光信号に対して、波長ごとに接続を切り替える光スイッチが装備されている。この構成によって、波長分割多重光信号のうち任意の波長の光信号について、スルー状態とアド/ドロップ状態とを切り替えることが可能となる。
スルー状態とは、入力側光ファイバ伝送路から入力された光信号が、出力側光ファイバ伝送路へ出力される状態のことである。また、アド/ドロップ状態とは、入力側光ファイバ伝送路側から入力された光信号がノードに接続された端局装置に出力される「ドロップ状態」、または、端局装置から入力された光信号が出力側光ファイバ伝送路に出力される「アド状態」のことである。
一方、OXCシステムでは、各ノードに複数の入力側光ファイバ伝送路と、複数の出力側光ファイバ伝送路とが接続され、入力側光ファイバ伝送路から入力される波長分割多重光信号に対して、波長ごとに接続経路(方路)を切り替える光スイッチが備えられている。この構成によって、任意の入力側光ファイバ伝送路から入力された波長分割多重光信号のうち任意の波長の光信号を、任意の出力側光ファイバ伝送路へ出力することができる。最近では、柔軟性の高いネットワークを構築するために、OXCノードにおいても端局装置を接続し、入出力光ファイバ伝送路間での接続経路の切替に加えて、端局装置へのアド/ドロップも可能なシステムが必要とされてきている。
図1は、フォトニックネットワークにおけるOXCシステムの構成を概念的に示した図である。図1に示した構成は、当初のOXCシステムにさらにアドシステム/ドロップシステムを追加したものである。視点を変えれば、図1のOXCシステムは、ROADMシステムの方路数を1本から複数(K本)にした構成を持つものと見ることもできる。本発明は、複数の入力伝送路ファイバおよび複数の出力伝送路ファイバを備え、かつ、光信号を伝送路光ファイバからアド/ドロップすることのできるノードで使用される光部品(装置)に関連するものである。以下では、便宜的にOXCシステムに基づいて説明をするが、ROADMシステムにも適用できることは言うまでも無い。尚、フォトニックネットワークにおいて、複数の伝送路が集まり、さらに光レイヤと電気レイヤとの交換および通信信号の処理を行うノードを、フォトニックノードと呼ぶ。
図1に示したOXCシステムは、基本要素として、J個の波長分割多重光信号1−1〜1−Jがそれぞれ入力されるK本の入力側光ファイバ伝送路2−1〜2−Kと、光クロスコネクト部3と、J個の波長分割多重光信号5−1〜5−Jがそれぞれ出力されるK本の出力側光ファイバ伝送路4−1〜4−Kとを備える。さらに、アド/ドロップ機能を実現するために、ドロップシステム6−1およびアドシステム6−2が追加されている。図1において、入力側および出力側の光ファイバの数Kと、波長分割多重光信号の数Jとが、同じ場合であっても良い。
波長分割多重光信号は、異なる波長の複数の光信号を多重化した光信号である。複数の波長の光信号を多重化して1つの波長群を構成し、さらに複数の異なる波長群を多重化して波長分割多重光信号を構成することもできる。また、1つの波長群に含まれる波長は、波長の値が、その長さの順に連続的に配置された複数の波長から構成することができる。例えば、波長(番号)が、λ1、λ2、・・λ8のように、連続して並んでいる8つの波長で1波長群を構成できる。また、波長の長さ順に連続ではなくて、飛び飛びに不連続に配置された複数の波長から構成することもできる。例えば、波長(番号)が、λ1、λ5、λ9・・λ29のように、所定の間隔を置いて不連続(離散的に)に並んだ8つの波長で1波長群を構成することもできる。1つの波長群を構成する波長の数も、上述の所定の間隔なども様々な場合が可能である。
ドロップシステム6−1によってドロップされた光信号は、複数の受信器(伝送路Rxとも呼ぶ)8に接続されて終端信号処理が行われ、電気レイヤの別のネットワーク7(例えば、電気ルータ)などへ供給される電気信号10が出力される。また、電気レイヤの別のネットワーク7から供給される電気信号11が、複数の送信器(伝送路Txとも呼ぶ)9に接続され、アドシステム6−2を経由して光信号がアドされる。上述の終端信号処理とは、光信号および電気信号の間の変換、レベル調整、変換後の電気信号における誤り検出・訂正、適切な信号フォーマットの変換等の信号処理を含む。ドロップシステム6−1およびアドシステム6−2ならびに受信器8および送信器9は、合わせて光信号終端装置とも呼ばれる。また、受信器8および送信器9は、端局装置とも呼ばれる。
一般に、図1に示したようなOXCシステムでは、理想的なアド/ドロップシステムとして、カラーレス(Colorless、波長無依存)、ディレクションレス(Directionless、方路無依存)、およびコンテンションレス(Contentionless)の3つの特性が求められている。カラーレスとは、任意の波長の光信号を任意のドロップポートから受信器へ出力することができ、任意の波長の光信号を、アドシステムを介して送信器からアドポートを経て出力側光ファイバ伝送路へ入力することができる構成のことである。また、ディレクションレスとは、任意の入力側光ファイバ伝送路から入力された光信号を、任意のドロップポート(受信器)から出力することができ、アドシステムへ入力された任意の光信号を任意の出力側光ファイバ伝送路から出力することができる構成のことである。
さらに、当然のことではあるが、同一波長を有する異なる2つ以上の光信号が、同時に、光ファイバ伝送路の同一の光経路に存在すれば、光信号同士の衝突が起きて混信が生じてしまう。その光経路は使用不能(ブロッキング状態)となってしまう。このような衝突は、アド/ドロップ動作に関わる光経路の接続設定においても生じる可能性がある。アド/ドロップ動作に関わる光経路の接続設定は、ブロッキングを生じさせることが無いようコンテンションレスに行う必要がある。アド/ドロップシステムは、その様な光信号同士の衝突が起こらない構成を有している必要がある。
現在、運用が開始されているアド/ドロップシステムでは、予め定められたポートにしか接続ができない、また、ポートの接続変更にマニュアル操作が必要であるなどの制限がある。理想的には、フォトニックネットワークにおける上述の3つの特性(CDC:Colorless, Directionless and Contentionless)を実現する必要がある。次に、理想的フォトニックネットワークとして、現在提案されている構成を説明する。
図2は、OXCシステムにおいて、フルメッシュ接続の光スイッチを用いた従来技術のアド/ドロップシステムの構成を説明する図である。図2の構成は、図1に示したOXCシステムの概要構成において、アド/ドロップ機能部分をより具体化して示したものである。したがって、ここでは図1に示した構成との相違点のみを説明する。入力側光ファイバ伝送路2−1〜2−Kと光クロスコネクト部3との間には、K本の入力側光ファイバ伝送路2−1〜2−Kからの各波長分割多重光信号を分岐する光カプラ21−1〜21−Kが備えられている。1つの光カプラには、分波器22−1〜22−Kの内の対応する1つが接続される。例えば、1番目の入力側光ファイバ伝送路2−1には、光カプラ21−1が接続され、分岐した波長分割多重光信号12は分波器22−1に導かれる。
図2のアド/ドロップシステムにおいて、光カプラで分岐され、受信器へドロップされる波長の光信号は、光クロスコネクト部3において重複しないように適切に処理されるのは言うまでもない。光カプラは、方路切替の機能は持たないが、入力された波長を分岐して出力することが可能である。光カプラのコストは、光マトリックススイッチと比べて非常に小さく、1/100程度である。
分波器22−1〜22−Kの出力は、M入力L出力を持つフルメッシュ構成の光マトリックススイッチ23に接続される。光スイッチ23のL個の出力は、L個の受信器24−1〜24−Lに接続される。一般に、光マトリクススイッチは、任意の粒度の光信号(波長パス、波長群パス)に関して、入力された光信号を任意の順序(ポート位置)に組み替えて各出力ポートに出力する。したがって、光スイッチ23のM入力の内の任意の入力ポートに入る光信号は、L出力の内の任意の出力ポートに現れる。光スイッチデバイスを実現するに当たってのコストは、一般に、入力・出力ポートの数に大きく依存し、ポート数の増加とともにコストは増える。
一例を挙げれば、1つの波長分割多重光信号に96個の異なる波長の光信号が多重化されており、K=8本の入力側光ファイバ伝送路がある場合、光スイッチ23は入力として768の入力ポートを持つ。1つのノード当たりの、アドポート数およびドロップポート数は、入力ポート数に対して所定の割合(ドロップ率/アド率)で決定される。例えば、アドポート数およびドロップポート数をそれぞれ16とすれば、光スイッチ23は、768入力×16出力を持つ巨大なマトリックスを構成することになる。これは、アド側の光スイッチ28についても同様である。
上述のように、図2に示したOXCノードの構成では、カラーレス、ディレクションレス、コンテンションレスの3特性を実現できるものの、大型で高価な光スイッチを必要とする欠点がある。また、スイッチ素子の数の多さに起因して、信頼性が低下する問題も重要であった。そこで、アド/ドロップシステムに対して、いくつかの改善された構成が提案されている。例えば、特許文献1では、ROADMシステムにおけるカラーレスの構成例が示されている。また、OXCノードに関するものとして、特許文献2では、波長群の分波選択および波長の分波選択をコンパクトな光スイッチを組み合わせて構成する例が提案されている。
図3は、特許文献2による別の従来技術のアド/ドロップシステムの構成を説明する図である。図3に示したOXCシステムの構成は、図2に示した構成において、アド/ドロップ機能部分を異なる構成で実現したものであるので、以下、図2の構成との相違点のみを説明する。図3に示したOXCノードにおけるアド/ドロップシステムは、ドロップ側の光信号終端装置30およびアド側の光信号終端装置31を備えている。K個の光カプラ21−1〜21−Kによって分岐される各入力側光ファイバ伝送路からの各波長分割多重光信号は、光増幅器31−1〜31−Kでそれぞれ光出力レベルを調整される。その後、1×Lの光カプラ(スターカプラ)32−1〜32−Kによって、受信器35−1〜35−Lの数に相当するL個の波長分割多重光信号に分岐される。
L個に分岐された各入力側光ファイバ伝送路からの波長分割多重光信号は、ファイバ選択スイッチ33−1〜33−Lの各々に接続される。ファイバ選択スイッチは、K個の入力側光ファイバ伝送路の中から、いずれか1つのファイバの波長分割多重光信号を選択する。ファイバ選択スイッチは、K入力1出力のスイッチによって構成できる。一例を挙げれば、図3では、K本すべての入力側光ファイバ伝送路からの波長分割光信号がファイバ選択スイッチ33−1に与えられるが、入力側光ファイバ伝送路2−1の波長分割多重光信号1−1、36、37だけが、ファイバ選択スイッチ33−1によって選択される。選択された波長分割多重光信号38−1は、光可変フィルタ(波長可変フィルタ)34−1に与えられ、さらに所望の波長の光信号39−1のみが選択される。光可変フィルタは、複数の波長を含む波長分割多重光信号から、所望の波長のみを選択するので、同調可能なフィルタ(チューナブルフィルタ)とも呼ばれる。
図4は、A入力1出力のスイッチの構成例を示す図である。A入力1出力を持つA×1スイッチは、A個の入力信号の中から1個の信号を抽出する能力を持ち、基本エレメントである1×2スイッチ40、41を組み合わせて構成できる。図4の(a)に示したスイッチは、ツリー型の構成であって、入力ポートによって生じる入力出力間の損失のばらつきを抑えられる点に特徴がある。図4の(b)に示したスイッチは、格子型の構成であって、損失のばらつきの補正が必要となる。ファイバ選択スイッチは、上述のA×1スイッチによって構成できる。
図3に示したアド/ドロップシステムでは、上述の光可変フィルタ34−1〜34−Lの実現方法にその特徴がある。次に述べるように、発明者らは、図3に示したアド/ドロップシステムにおける光可変フィルタを改善してきた。本発明では、発明者らがさらに改善を加えた光可変フィルタが開示されることになる。したがって、まずアド/ドロップシステムにおける光可変フィルタの構成および動作の詳細についてさらに説明する。
図5は、従来技術のアド/ドロップシステムにおける光可変フィルタの構成方法を説明する概念図である。波長選択フィルタは、複数の入力側光ファイバ伝送路から選択された1つのファイバ伝送路の波長分割多重光信号から、所望の波長(光周波数)の光信号のみを選択する機能を持つ。光可変フィルタの構成には、様々なものが考えられるが、図5の(a)は1つの構成例を示す。図5の(a)に示した光可変フィルタは、波長分割多重光信号50を分波器52によって波長パス単位で分波し、その後、分波された光信号を選択スイッチ51によって選択して、ドロップした波長の光信号53を得るよう動作する。しかしながら、図5の(a)の構成の光可変フィルタでは、スイッチの規模が波長パス数と同等かそれ以上となって巨大となるため、コストおよび信頼性の点で問題であった。
図5の(b)は、光可変フィルタの別の構成例を示す図であり、特許文献2において提案された構成である。図5の(b)の光可変フィルタでは、多段階の分波機能を縦続接続することによって、(a)の構成の光可変フィルタの問題を解決しようとしている。すなわち、1段目の分波機能部54−1および選択スイッチ54−2を持つ1段目の光可変フィルタ54から、n段目の分波機能部55−1および選択スイッチ55−2を持つn段目の光可変フィルタ55までが、n段、縦続接続されている。一例として、2段構成の場合を例にとると、第1段目の光可変フィルタ54では、波長分割多重化光信号を波長群に分波し、所望の波長を含む波長群を選択した後、2段目の光可変フィルタ55で、1つの波長群の波長分割多重化光信号を波長ごとに分波し、所望の波長を選択する構成である。
図6は、従来技術の2段構成の光可変フィルタのより具体的な構成例を示す図である。図3に示した特許文献2に開示された従来技術のアド/ドロップシステムにおいて、光信号終端装置内にある光可変フィルタ60の構成例を示している。光可変フィルタ60は、第1段目の波長群選択光可変フィルタ54および2段目の波長選択光可変フィルタ55を備える。第1段目の波長群選択光可変フィルタ54は、1×M周回性アレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)61およびM×1選択スイッチ62から構成される。第2段目の波長選択光可変フィルタ55は、1×N周回性AWG63およびN×1選択スイッチ64から構成される。波長分割多重光信号50が第1段目の波長群選択光可変フィルタ54に与えられ、1×M周回性AWG61によって例えば複数の波長群に群分波されて、1つのある波長群の波長分割多重光信号66が選択される。さらに、ある波長群の波長分割多重光信号66は、1×N周回性AWG63によって各波長に分波され、1つの波長の光信号53が選択される。
詳細は特許文献2に記載されているが、2つの周回性AWGの構成に関して、MおよびNは互いに素の関係にある。また、1×M周回性AWG61のFSRは、チャネル間隔δfのM倍に対応し、1×N周回性AWG63のFSRは、チャネル間隔δfのN倍に対応する関係にあれば良い。選択スイッチ62、64としてコンパクトなスイッチを組み合わせることによって、カラーレス、ディレクションレス、コンテンテョンレスのドロップ機能を実現可能となった。
図6に示した構成の光可変フィルタによれば、多段階構成の光可変フィルタでドロップする波長を選択することによって、光スイッチの規模の小さいデバイスを利用することができる。スイッチの数は、概ね次式によって表される。ここで、nは、光可変フィルタの段数である。
必要なスイッチ規模は、波長多重数が5以上であれば、周回性AWGの段数を増加するほど減少することが知られている。図6の構成によって、図5の(a)に示した1段構成の光可変フィルタと比較すれば、スイッチ構成の規模を減らすことができた。
しかしながら、スマートフォンなどの新たな携帯端末の爆発的な普及に代表されるように、ネットワークトラフィックが急激に増加する現在の状況を踏まえると、特許文献2に開示された構成の光可変フィルタも、スイッチ規模の大きさの点で依然として十分とは言えなかった。ネットワークトラフィックの増加に加えて、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術、各光デバイスの技術的な進展が見込まれており、近い将来には1本の光ファイバ伝送路の中で取り扱われる波長の数は、最大で200を越えることが予測されていた。そのような中、光終信号端装置における光可変フィルタが処理すべき波長パス(波長)の数が増加すれば、光可変フィルタにおけるスイッチ数もさらに増加することは必至であった。したがって、さらにスイッチ規模を抑えることのできる光可変フィルタの新しい構成が望まれていた。発明者らは、図3に示した従来技術のアド/ドロップシステムにおける光信号終端装置内の光可変フィルタをさらに改善する、新しい提案を行った(特許文献3)。
図7は、発明者らが提案した光スイッチの規模をさらに抑えることのできる光可変フィルタの構成を示した図である。発明者らは、従来技術の光可変フィルタにおいて着目されていなかった、周回性波長合分波器の入力ポートによる波長選択機能を利用して、波長光可変フィルタをさらにコンパクトかつ低コストで高信頼性のデバイスにより構成できることを見出した。周回性波長合分波器のFSRを設定し、実際に分波に利用する入力ポートおよび出力ポートを選択し、分波する波長数を特定の条件に決定して、同一ポートに重複することなく各波長を出力するよう動作する。図7の構成によって、波長パス(波長)の数が増加しても、光スイッチの規模を効果的に抑えることができた。
図7に示した光可変フィルタの動作の概略は、以下の通りである。発明者らによって提案された光可変フィルタ70は、図6で示した従来技術の光可変フィルタ60に対応するものである。したがって、図3に示したフォトニックノードにおけるドロップシステム30において、光可変フィルタ34−1〜34−Lを、それぞれ光可変フィルタ70によって置き換えることができる。光可変フィルタ70には、複数の光ファイバの中より選択された1つの入力側光ファイバ伝送路から、波長分割多重光信号50が入力される。光可変フィルタ70によって、所望の波長の光信号が選択されて、ドロップされた光信号53が得られ、受信器35−1〜35−Lのうちの1つに渡される。
光可変フィルタ70は、1入力m出力(1×m)を持つ第1の光スイッチ71と、M入力M出力を持つ第1の周回性AWG72と、m´入力n出力を持つ第2の光スイッチ73と、N入力N出力を持つ第2の周回性AWG74と、n´入力1出力(n´×1)を持つ第3の光スイッチ75とを備えている。波長分割多重光信号50は、第1の光スイッチ71の入力ポート76に入力されて、ドロップされた波長の光信号53は、第3の光スイッチ75の出力ポート77から得られる。フォトニックノードの光信号終端装置においては、光可変フィルタ70は、複数の光受信器の各々に対して備えられる。
1×mの第1の光スイッチ71は、入力された波長分割多重光信号を、m個のいずれかの出力ポートに切り替える機能を持つ。第1の光スイッチ71の出力ポートは、それぞれ、第1の周回性AWGのM個の入力ポートのうちのいずれかm個に接続されている。したがって、少なくともm≦Mの関係が成り立つ。第1の光スイッチ71は、第1の周回性AWG72の入力ポートのうちのいずれか1つを選択する機能を持つことになる。すなわち、第1の周回性AWG72の入力ポート選択機能を持つ。
第1の周回性AWG72は、選択されたいずれか1つの入力ポートに波長分割多重光信号が入力され、その出力ポートに波長(群)ごとに光信号を分波して出力する。第1の周回性AWG72は、M入力M出力を持ち、その分波特性はサイクリックであって周回性を持っている。したがって、第1の周回性AWG72は、周回性波長合分波器またはサイクリック波長合分波器と呼ばれる。Mは同一ポートに入出力されるチャネル番号の周期となる。1つの出力ポートに着目すれば、Mチャネルごとの異なる波長番号を持つ複数の光信号が出力される。
第1の周回性AWG72は、その分波機能のうちの一部だけしか利用されていない。図7の光可変フィルタにおいては、M個の入力ポートおよびM個の出力ポートの内で、それぞれ、m個の入力ポートおよびm´個の出力ポートしか利用されていない。したがって、第1の周回性AWG72は、波長合分波器としてM入力M出力の合分波特性を持つように、その構成要素であるスラブ導波路およびアレイ導波路などが設定されているが、デバイスとしての入出力ポート配線は、一部であるm個の入力ポートおよびm´個の出力ポートだけ備えれば良い。
また、mおよびm´は、Mに対して次式の関係を持つ。
M≦m×m´ 式(2)
第1の光スイッチ71によって選択される第1の周回性AWGのm個の入力ポートに応じて、第1の周回性AWGのm´個の出力ポートの各々に現れる光信号の波長が決定される。したがって、m×m´通りの異なる波長群(または波長)を選択できる。第1の周回性AWG72は、チャネル間隔をδf(Hz)とするとき、次式で表されるFSR1を持つ。
FSR1=M×δf 式(3)
第1の周回性AWG72は、同一出力ポートにMチャネル毎にサイクリック(周回的)に異なる波長の光信号を出力するので、式(2)を満たせば、重複することなく波長群(または波長)を分波できる。
第2の光スイッチ73は、第1の周回性AWG72のm´個の出力の内の1つを選択し、かつ、後続の第2の周回性AWG74のn個の入力ポートを選択する機能を持つ。すなわち、第2の光スイッチ73は、(m´×1)スイッチ機能部分(前段部分)と(1×n)スイッチ機能部分(後段部分)とを縦続接続したものとなる。第2の光スイッチ73によって、第1の周回性AWGのm´個の出力ポートの内のいずれか1つの光信号が選択されて、さらに後続の第2の周回性AWG74のn個の入力ポートの1つに入力される。
第2の周回性AWG74は、選択されたいずれか1つの入力ポートに波長分割多重光信号が入力され、その出力ポートに波長ごとに光信号を分波して出力する。第2の周回性AWG74は、N入力N出力を持ち、その分波特性に周回性を持っている。Nは同一ポートに入出力されるチャネル番号の周期となる。したがって、1つの出力ポートに着目すれば、Nチャネルごとの異なるチャネル(波長)番号を持つ複数の光信号が出力され得る。ここで、第2の周回性AWG74も、第1の周回性AWG72同様に、その分波機能のうちの一部だけしか利用されていない。すなわち、N個の入力ポートおよびN個の出力ポートの内で、それぞれ、n個の入力ポートおよびn´個の出力ポートしか利用されていない。したがって、第2の周回性AWG74は、波長合分波器としてN入力N出力の合分波特性を持つように構成要素であるスラブ導波路およびアレイ導波路などが設定されているが、デバイスとしての入出力ポート配線は、一部であるn個の入力ポートおよびn´個の出力ポートだけを備えれば良い。
また、nおよびn´は、Nに対して次式の関係を持つ。
N≦n×n´ 式(4)
第2の周回性AWG74において第2の光スイッチ73によって選択されるn個の入力ポートに応じて、第2の周回性AWG74のn´個の出力ポートの各々に現れる波長が決定される。したがって、第2の周回性AWG74によってn×n´通りの異なる組み合わせに応じて、チャネル(波長)番号を一意に選択できる。第2の周回性AWG74は、チャネル間隔をδf(Hz)とするとき、次式で表されるFSR2を持つ。
FSR2=N×δf 式(5)
第2の周回性AWG74は、同一出力ポートにNチャネル毎にサイクリック(周回的)に異なる波長の光信号を出力するので、式(4)を満たせば、重複することなく波長ごとに光信号を分波できる。ここで、第1の周回性AWG72のMと、第2の周回性AWG74のNは、互いに素の関係にあることが必要である。
第2の周回性AWG74のn´個の出力ポートは、そのうちの1つがn´入力1出力を持つ第3の光スイッチ75によって選択される。第3の光スイッチ75の出力ポート77から、ドロップさせる特定の波長を持つ光信号53が出力される。上述のように、光可変フィルタ70は、全体として第1の周回性AWG72による1段目の光可変フィルタ機能と、第2の周回性AWG74による2段目の光可変フィルタ機能とを備えている。この点では、図6に示した従来技術の光可変フィルタの構成と似ている。しかしながら、図6に示した構成には含まれていない、第1の周回性AWG72の入力ポートを選択する第1の光スイッチと、第2の周回性AWG74の入力ポートを選択する第2の光スイッチを備えている点で、提案された光可変フィルタは従来技術と相違していた。
図8は、提案された光可変フィルタの機能を含む光信号終端部(光信号終端装置)の機能を説明する図である。図8の(a)は、提案された光可変フィルタの機能を説明するものであり、(b)は従来技術の光可変フィルタの機能を対比させて説明するものである。提案された光信号終端部では、従来技術と同様に、ファイバ選択スイッチ33−1〜33−L(図3を参照)によって、複数の入力側光ファイバ伝送路から1本のファイバの選択(段階80)が実行される。さらに、図7に示した提案された光可変フィルタにおいて、第1の光スイッチ71によって、第1の周回性AWG72の入力ポート選択が実行される(段階81)。その後、第1の周回性AWG72によって波長群分波または波長分波が行われる(段階82)。さらに、第2の光スイッチ73の前段の光スイッチ部分によって、第1の周回性AWG72の出力ポート選択が実行される(段階83)。さらに、第2の光スイッチ73の後段の光スイッチ部分によって、第2の周回性AWG74の入力ポート選択が実行される(段階84)。次に、第2の周回性AWG74によって波長分波が行われる(段階85)。最後に、第3の光スイッチ75によって、第2の周回性AWG74の出力ポート選択が実行される(段階86)。
図8の(b)は、従来技術の光可変フィルタにおける機能を、提案された光可変フィルタの機能の(a)と対比させて示している。図8の(b)の従来技術の光可変フィルタの機能は、図5の(b)の概念図に示した機能と対応している。また、図8の(a)および(b)を対比することによって理解されるように、発明者らによって提案された光可変フィルタは、第1の周回性AWGの入力ポート選択機能81および第2の周回性AWGの入力ポート選択機能84を備えている点に新規な特徴があった。
発明者らによって提案された図7の光可変フィルタでは、周回性を持つAWGの入力ポートを選択することによって、AWGの持つ分波機能を効率的に使用していた。これに加えて、周回性AWGのFSRの設定(MおよびNの設定)と利用する入力ポートおよび出力ポートをそれぞれ選択し、出力される波長に重複が生じない構成を選択していた。すなわち、同一の出力ポートからは、所望波の波長の光信号のみが出力される構成となっていた。
発明者らによって提案された図7の光可変フィルタは、第1の周回性AWGの入力ポート選択機能81および第2の周回性AWGの入力ポート選択機能84を利用することで、光スイッチの規模を従来技術の光可変フィルタよりもさらに低減したものであった。光可変フィルタを構成する要素スイッチ素子の数を減らし、光スイッチの規模を大幅に抑えることができる。これによって、ドロップ側の光信号終端装置におけるデバイスの構成を簡略化し、低コスト化を可能とするものであった。さらに回路規模の縮小により、デバイスの信頼性の向上も期待できるものであった。
本発明は、光信号のままで信号経路の設定や切替処理を行なう光パスネットワークにおける光クロスコネクト装置の光信号終端部などで使用される光可変フィルタに関する。光信号終端部は、複数の光ファイバを介してそれぞれ中継ノードへ並列的に伝送されてきた複数の波長分割多重光の中より選択された1つの波長分割多重光から、その波長分割多重光に含まれる所定の波長パスの光信号を選択して、電気レイヤへドロップさせる光可変フィルタを複数備えている。したがって、用語「光可変フィルタ」は、所定の波長の光信号を透過させる透過帯域の中心波長(光周波数)を可変することができるフィルタを意味している。本発明の光可変フィルタは、異なる波長の複数の波長分割多重光信号から1つの波長を選択するものであれば、光信号終端部以外の用途にも当然に利用できる。
本発明の光可変フィルタは、一例を挙げれば、25GHz間隔で192チャネルの光信号が多重化された光通信システムに適用が可能である。しかし、他のチャネル間隔や他の多重化信号数を取り扱う光通信システムにも適用できる。さらに、本発明の光可変フィルタは、光信号終端部だけではなく、複数の光信号から所望波のみを取り出す用途にも適用できる。
本発明の光可変フィルタが取り扱う波長分割多重光信号は、複数の異なる波長の光信号が多重化されたものであるが、波長分割多重光信号の構成は様々なものを含む。例えば、波長分割多重光信号が、複数の波長群から構成され、1つの波長群は、複数の波長を含むような構成とすることができる。光通信システムにおいては、波長の値、または対応する光周波数と、チャネル番号とが関連付けられている。
1つの波長群に含まれる波長は、波長の値が、その長さの順に連続的に配置された複数の波長から構成することができる(連続配置型波長群)。例えば、波長(番号)が、λ1、λ2、・・λ8のように、連続して並んでいる8つの波長(チャネル番号でも連続)で1波長群を構成できる。また、波長の長さ順に連続ではなくて、所定のチャネル番号間隔で選択され飛び飛びに不連続な順に配置された複数の波長から構成することもできる(分散配置型波長群)。例えば、波長(番号)が、λ1、λ5、λ9・・λ29のように、所定の間隔を置いて不連続(離散的に)に並んだ8つの波長で1波長群を構成することもできる。波長群の数、1つの波長群を構成する波長の数、上述の所定のチャネル番号間隔なども様々な場合が可能である。尚、チャネルの間隔は、システムによって、等波長間隔または等光周波数間隔で構成される。
従来技術の光可変フィルタでは、周回性波長合分波器が使用されており、代表的なものとして、アレイ導波路回折格子(AWG)を利用していた。AWGにおいては、入力ポートへ入力された波長分割多重信号を分波して、各出力ポートに分波された光信号が出力される。FSR(Free Spectral Range:自由スペクトル領域)を適切に設定してAWGを構成することによって、出力ポートに現れる波長をサイクリックなもの、すなわち周回性を持ったAWGとすることもできる。図7に示した従来技術の光可変フィルタでは、入力ポートの選択スイッチと組み合わせた周回性AWGを、多段構成で使用することによって実現されていた。図5の(a)の構成のように、通常の非周回性AWGでは、複数の波長を波長グループとして合分波することができない。図7に示した従来技術の光可変フィルタは、波長グループとして複数の波長を扱うことで多段化した構成の実現が可能な周回性AWGの特性に着目したものであった。
本発明は、周回性AWGを使用せずに、通常の非周回性AWGを利用してスイッチ規模の低減を実現すると同時に、透過損失等の増加などのフィルタ特性の劣化を抑えた光可変フィルタを提供する。従来技術において複数段の周回性AWGを利用することで最適な多段化構成を検討してきた前提を見直し、非周回性AWGの低損失な特性に再び着目して本発明に至った。
本発明は、連続して配置された複数のチャネルを含む所定の通信帯域において、前記複数のチャネルの各信号光が多重化された波長分割多重光の中から所定の波長の光信号を選択する光可変フィルタである。複数の入力ポートおよび複数の出力ポートを有する波長合分波器であって、前記通信帯域において、前記複数の入力ポートの内の1つへ前記波長分割多重光が入力されると、前記複数の出力ポートの1つから前記複数のチャネルの中の1つのチャネルに対応する信号光のみが出力される、波長合分波器と、前記波長合分波器の前記複数の入力ポートの内の1つへ、前記波長分割多重光を選択的に入力する第1の光スイッチと、前記波長合分波器の前記複数の出力ポートの内の1つから、前記波長合分波器によって分波された前記所定の波長の光信号を選択的に出力させる第2の光スイッチとを備える。本発明の光可変フィルタでは、前記波長合分波器によって単一の波長選択段が構成される。本発明の光可変フィルタでは、周回性AWGではない通常の非周回性AWGを使用する。そこで、最初に、本発明の光可変フィルタで使用される非周回性AWGの合分波特性について説明する。
図9は、本発明の光可変フィルタで使用される非周回性AWGの分波動作を説明する図である。非周回性AWG90は、1つの出力ポートに現れる波長の数によって、後述する周回性AWGに対して定義される。したがって、図10とともに説明される周回性AWGの分波動作を合わせて理解されたい。非周回性AWG90は、左側に番号を記載したように入力ポート1〜8を備え、右側に番号を記載したように出力ポート1〜8を備えている。各入力ポートに複数の異なる波長が多重化された多重化信号を入力すると、出力ポート1〜8にそれぞれ1つずつ波長が分波される。
例えば、入力ポート1に波長λ1〜λ8を含む多重光91−1が入力されると、出力ポート1にはλ1の信号光が、出力ポート2にはλ2の信号光が現れ、同様に出力ポート8にはλ8の信号光が現れる。すなわち、多重化光91−1は、非周回性AWG90によって、出力ポート1〜8の各々に1つずつ分波され、分波波長92−1が得られる。入力ポート2に波長λ2〜λ9を含む多重光91−2が入力されると、出力ポート1にはλ2の信号光が、出力ポート2にはλ3の信号光が現れ、同様に出力ポート8にはλ9の信号光が現れる。すなわち、多重化光91−2は、非周回性AWG90によって、出力ポート1〜8の各々に1つずつ分波され、分波波長92−2が得られる。入力ポート1の場合と同様に、多重化光91−2は、非周回性AWG90によって、出力ポート1〜8の各々に1つずつ分波される。同様に、入力ポート3に波長λ3〜λ10を含む多重光91−3が入力されると、非周回性AWG90によって、出力ポート1〜8の各々に1つずつ分波され、分波波長92−3が得られる。
ここで注意すべきは、入力ポートが1つだけずれると、出力ポート1〜8から出力され得る波長番号が1つずつずれることである。これは、入力ポートを選択することによって、同一波長の信号光を異なる出力ポートから出力できることを意味している。また図9において、各入力ポートに入力された多重光91−1、91−2、91−3に含まれる波長は、これらの波長のみを含む多重光を入力しなければならないという意味ではないことに留意されたい。すなわち、入力ポート1には波長λ1〜λ8以外のλ9〜の波長が含まれていても構わない。図9の入力ポートおよび出力ポートに記載された波長は、これらの波長の入力多重光が入力されたときに、漏れなくすべての出力ポート1〜8から異なる波長が1つずつ現れることを意味している。
上述のように、非周回性AWG90では、各出力ポートからは1つの波長の信号光のみが分波される。つまり、本発明の光可変フィルタでは、連続して配置された複数のチャネルを含む所定の通信帯域において、複数のチャネルの各信号光が多重化された波長分割多重光の中から所定の波長の光信号が選択される。そして、非周回性AWG90では、上述の通信帯域において、複数の入力ポートの内の1つへ波長分割多重光が入力されると、複数の出力ポートの1つから複数のチャネルの中の1つのチャネルに対応する信号光のみが出力されることになる(非周回性の定義)。これに対して、従来技術で使用されていた周回性AWGでは、1つの出力ポートからは異なる波長を持つ複数の光信号が現れる。
図10は、周回性AWGの分波動作を説明する図である。周回性AWG100は、左側に番号を記載したように入力ポート1〜8を備え、右側に番号を記載したように出力ポート1〜8を備えている。各入力ポートに複数の異なる波長が多重化された多重化信号を入力すると、出力ポート1〜8にそれぞれ異なる波長を持つ複数の波長が分波される。
例えば、入力ポート1に波長λ1〜λ16を含む多重光101−1が入力されると、出力ポート1にはλ1、λ9の信号光が、出力ポート2にはλ2、λ10の信号光が現れ、同様に出力ポート8にはλ8、λ16の信号光が現れる。すなわち、多重化光101−1は、周回性AWG100によって、出力ポート1〜8の各々に2つの異なる波長の信号光が分波され、分波波長102−1が得られる。入力ポート2に波長λ1〜λ16を含む多重光101−2が入力されると、出力ポート1にはλ2、λ10の信号光が、出力ポート2にはλ3、λ11の信号光が現れ、同様に出力ポート8にはλ1、λ9の信号光が現れる。すなわち、多重化光101−2は、周回性AWG100によって、出力ポート1〜8の各々に2つずつ分波され、分波波長102−2が得られる。入力ポート1の場合と同様に、多重化光101−2は、周回性AWG100によって、出力ポート1〜8の各々に2つの異なる波長の信号光が分波される。同様に、入力ポート3に波長λ1〜λ16を含む多重光101−3が入力されると、周回性AWG100によって、出力ポート1〜8の各々に2つの異なる波長の信号光が分波され、分波波長102−3が得られる。
図10から明らかなように、従来技術で使用された周回性AWG100は、1つの出力ポートに2つ以上の異なる波長を持つ複数の信号光が同時に現れることになる。図10において、例えば入力多重光101−1がλ1〜λ48の48チャネルの信号光を含むものとすれば、出力ポート1からは、λ1、λ9、λ17、λ25、λ33、λ41の6つの出力信号光が同時に現れる。図7に示した従来技術の光可変フィルタでは、この1つの出力ポートに現れる異なる波長を持つ複数の信号光をさらに分離するために、少なくとも2段以上の周回性AWGを使用することが必須であった。
尚、周回性AWG100と非周回性AWG90とは、設定されているFSR値によっても区別ができる。すなわち周回性AWGでは、FSR値は、繰り返し現れる波長番号の周期(図10の例では8)にチャネル帯域幅Δfを乗じたものに対応する。一方で、非周回性AWGでは、FSR値は、光可変フィルタが対象とする光通信システムで想定されるすべてのチャネルを1つの出力ポートへそれぞれ分波できるように、周回性AWGよりも充分に大きい値に設定されている。
本発明の発明者らは、図9に示した非周回性AWGにおいては、1つの入力ポートへ波長分割多重光が入力されたとき、各出力ポートからは1つの波長の信号光のみが分波されという単純な機能に再び着目し、スイッチ規模および透過損失の両方を同時に抑えることのできる構成を検討した。既に述べたように、非周回性AWGによって分波すべき波長の数が96チャネル、192チャネル等と多くなれば、図5の(a)で示したスイッチ51の規模が巨大化することが問題であった。しかしながら、非周回性AWGを用いた場合でも、分波後の出力ポートに対する波長選択スイッチに加えて、入力ポートによる波長選択機能を組みわせることによって、効果的に多数の波長を分波可能であることを見出した。以下、詳細に本発明の光可変フィルタの構成および動作を説明する。
本発明の光可変フィルタは、周回性AWGの代わりに非周回性AWGを用い、かつ、非周回性AWGの入力側および出力側にそれぞれ配置された2つの選択スイッチを組み合わせた単一段の構成のAWGを備える。非周回性AWGを1つの段でのみ使用することで、スイッチ規模および透過損失の両方を抑えた光可変フィルタが実現できる。
**第1の実施形態**
図11は、本発明の光可変フィルタの第1の実施形態の構成および動作を説明する図である。図11の(a)は、本発明の光可変フィルタ110を示し、(b)は光可変フィルタ110によって選択される光信号の波長を概念的に示した図である。図11の(a)を参照すれば、光可変フィルタ110は、非周回性AWG111、非周回性AWG111の入力側に接続された入力ポート選択スイッチ112、非周回性AWG111の出力側に接続された出力ポート選択スイッチ113から構成される。異なる複数の波長を含む多重化された入力光114は、1×M入力ポート選択スイッチ112に入力される。入力ポート選択スイッチ112の出力は、L×L非周回性AWG111の概ね中央部にあり、隣り合う連続するM個の入力ポートに接続されている。図11の構成では、非周回性AWGの隣り合う連続したM個の入力ポートが使用されているが、後に説明される本発明の他の実施形態では入力ポートの使用法の異なる形態が開示される。
非周回性AWG111の出力ポートに現れる光信号は、N×1出力ポート選択スイッチ113によって選択され、出力光115として出力される。非周回性AWG111の出力ポートの内で出力ポート選択スイッチ113に接続されるものは、1番目の出力ポートから始まり、M−1個置きに(繰り返し周期Mで)、(M+1)番目、(2M+1)番目、(3M+1)番目、・・となり、Lを越えない((N−1)×M+1)番目の出力ポートまでとなる。
図11の(b)では、光可変フィルタ110によって選択される光信号の波長を概念的に示している。矢印の各々は異なる波長の光信号を示しており、横軸は波長を概念的に示す。矢印の先端部に記載した数字は、非周回性AWG111の選択される入力ポート番号を示す。116の符号が付されたM個の信号光は、左側から順に、1番目の入力ポート、2番目の入力ポート、・・・、M番目の入力ポートが選択されたときに、1番目の出力ポートに現われる信号光を表している。ここで、M個の信号光116は一度に現われるのではなくて、選択された入力ポートに対応した1つの信号光が現われることに留意されたい。したがって、M個の信号光は、入力ポートの選択による非周回性AWGの波長選択機能を利用していることになる。
同様に、117の符号が付されたM個の信号光は、左側から順に、1番目の入力ポート、2番目の入力ポート、・・・、M番目の入力ポートが選択されたときに、(M+1)番目の出力ポートに現われる信号光を表している。ここでも、M個の信号光117は一度に現われるのではなくて、選択された入力ポートに対応した1つの信号光が現われる。さらに同様に、118の符号が付されたM個の信号光は、左側から順に、1番目の入力ポート、2番目の入力ポート、・・・、M番目の入力ポートが選択されたときに、(2M+1)番目の出力ポートに現われる信号光を表している。M個の信号光118は一度に現われるのではなくて、選択された入力ポートに対応した1つの信号光が現われる。
上述のように、入力ポート選択スイッチ112によって、非周回性AWG111の隣り合う、連続して並んだM個の入力ポートを選択するとき、非周回性AWGの出力ポートをM個の間隔で選ぶことによって、一群の連続した波長番号の信号光を、漏れなく選択できる。したがって、例えば他の例を挙げれば、入力ポート選択スイッチ112で10個の入力ポートを選ぶときには、1番目、11番目、21番目の出力ポートを選べば、1番目の出力ポートにλ1〜λ10の波長を、11番目の出力ポートにλ11〜λ20の波長を、21番目の出力ポートにλ21〜λ30の波長を出力することができる。
したがって、本発明の光可変フィルタでは、第1の光スイッチ(入力ポート選択スイッチ112)は、1つの入力ポートおよびM(2以上の自然数)個の出力ポートを有し、前記M個の出力ポートは、波長合分波器(非周回性AWG111)の複数の入力ポートの内の隣り合う位置に連続して並んだ入力ポート群へ接続され、第2の光スイッチ(出力ポート選択スイッチ113)は、N(2以上の自然数)個の入力ポートおよび1つの出力ポートを有し、波長合分波器の前記複数の出力ポートの内のMの繰り返し周期に位置するN個の出力ポートは、前記第2の光スイッチ素子の前記N個の入力ポートへ接続されることになる。次に、第1の実施形態のより具体的な構成および動作例を説明する。
図16は、本発明の光可変フィルタの第1の実施形態のより具体的な動作を説明する図である。図11に示した光可変フィルタ110において1×4入力ポート選択スイッチ165、9×9非周回性AWG160および3×1出力ポート選択スイッチ166からなる例を示す。入力波長分割多重光信号167は、λ1からλ12までの、12個の異なる波長を持った信号光が多重化されている。入力波長分割多重光信号167は、入力ポート選択スイッチ165によって、非周回性AWG160の9個の入力ポートの中の、概ね中央部にある連続して配置された4つ(M=4)の入力ポートの内の1つを選択する。すなわち、4番目の入力ポートから7番目の入力ポートまでの内の1つが選択される。図16の(a)は4番目の入力ポート161が選ばれた場合を、(b)は5番目の入力ポート162が選ばれた場合を、(c)は6番目の入力ポート163が選ばれた場合を、(d)は7番目の入力ポート164が選ばれた場合をそれぞれ示す。
非周回性AWG160の出力ポート側は、4ポート間隔で1番目の出力ポート、5番目の出力ポート、9番目の出力ポートの3つのポートが利用される。これらの3つの出力ポートの内の1つを出力ポート選択スイッチ166によって選択することによって、λ1からλ12までの12個の異なる波長を持った信号光の内の1つが選択される。
例えば、4番目の入力ポート161が選択されたときに、1番目の出力ポートが選ばれれば、図16の(a)のようにλ1の光信号を出力光168として出力することができる。また、5番目の入力ポート162が選択されたときに、1番目の出力ポートが選ばれれば、図16の(b)のようにλ2の光信号を出力光168として出力することができる。同様に、1番目の出力ポートからは、λ3(図16の(c)の場合)またはλ4(図16の(d)の場合)の出力光を出力できる。
4番目の入力ポート161が選択されたときに、5番目の出力ポートが選ばれれば、図16の(a)のようにλ5の光信号を出力光168として出力することができる。また、5番目の入力ポート162が選択されたときに、5番目の出力ポートが選ばれれば、図16の(b)のようにλ6の光信号を出力光168として出力することができる。同様に、5番目の出力ポートからは、λ7またはλ8の出力光を出力できる。
上述のように、図16に示した光可変フィルタの構成によって、入力波長分割多重光信号167から、λ1〜λ12の光信号のいずれか1つを、漏れ無く選択して取り出すことができる。
したがって、本発明は、連続して配置された複数のチャネルを含む所定の通信帯域において、前記複数のチャネルの各信号光が多重化された波長分割多重光の中から所定の波長の光信号を選択する光可変フィルタが実現される。この光可変フィルタは、複数の入力ポートおよび複数の出力ポートを有する波長合分波器であって、前記通信帯域において、前記複数の入力ポートの内の1つへ前記波長分割多重光が入力されると、前記複数の出力ポートの1つから前記複数のチャネルの中の1つのチャネルに対応する信号光のみが出力される、波長合分波器と、前記波長合分波器の前記複数の入力ポートの内の1つへ、前記波長分割多重光を選択的に入力する第1の光スイッチと、前記波長合分波器の前記複数の出力ポートの内の1つから、前記波長合分波器によって分波された前記所定の波長の光信号を選択的に出力させる第2の光スイッチとを備え、前記波長合分波器によって単一の波長選択段が構成される。
図11および図16から明らかなように、単一の波長選択段を構成する非周回性AWGを利用して、入力ポートの選択スイッチと出力ポートの選択スイッチとを組み合わせることで、異なる波長の複数の信号光が多重化された多重化信号光から、所望の波長の信号光を選択することができる。非周回性AWGの概ね中央部にある、隣り合った連続して配置されているM個の入力ポートと、M個の繰り返し周期にあるN個の出力ポートとを利用することで、連続した波長番号を持った一連のM×N個の信号光を漏れ無く選択することができる。尚、ここで概ね中央部にあるM個の入力ポートを利用するのは、一般にAWGでは中央部に位置する入力ポートにおいて所望のフィルタ特性を実現しやすいためであって、必ずしも中央部だけに限定されない。
図17は、本発明の光可変フィルタの第1の実施形態の様々な構成例を表で示した図である。連続する波長番号を持つ96チャネルの波長選択に対応した光可変フィルタの構成例である。1×M入力ポート選択スイッチの選択数M、非周回性AWGの入力ポートおよび出力ポートの数(AWGサイズ)L、N×1出力ポート選択スイッチの選択数Nの、とり得る組み合わせを示している。一般に、光可変フィルタ全体でのスイッチ規模を最小にするためには、MおよびNの和が最小になるような組み合わせが良い。そのような組み合わせの中で、AWGのサイズLが最小の組み合わせを選択するのが好ましい。図16では、波長多重数がM×Nに等しい構成例の場合であったが、図17に示した各構成例では、M、L、Nの組み合わせによっては、選択可能な波長数が96より大きい場合もあることに留意されたい。このような場合であっても、第1の実施形態の光可変フィルタによれば、連続した波長番号を持った一連の96チャネルの信号光を漏れ無く選択することができることに変わりはない。
図11、図16および図17に示した実施形態では、非周回性AWGの利用する入力ポートは、概ね中央部にあり、隣り合って連続して配置されている入力ポートを利用している。しかしながら、一般にAWGにおいて隣り合う近接した入力ポートまたは出力ポートを利用する場合、透過特性においてお互いのチャネル間のクロストークが問題となり得る。そこで次の第2の実施形態では、波長選択のための非周回性AWGの入力ポートの異なる利用形態について述べる。
**第2の実施形態**
図12は、本発明の光可変フィルタの第2のおよび第3の実施形態の構成を説明する図である。光可変フィルタ120は、非周回性AWG121、非周回性AWG121の入力側に接続された入力ポート選択スイッチ122、非周回性AWG121の出力側に接続された出力ポート選択スイッチ123から構成される。異なる複数の波長を含む多重化された入力光124は、1×M入力ポート選択スイッチ122に入力される。入力ポート選択スイッチ122の出力は、L×L非周回性AWG121の概ね中央部にあり、少なくとも1つの間隔を置いて、等間隔に配置されたM個の入力ポートに接続されている。図11に示した第1の実施形態との相違点は、非周回性AWGのどの入力ポートを利用し、これに応じてどの出力ポートを利用するかにある。
図12に示すように、第2の実施形態における非周回性AWGの入力ポートとしては、概ね中央部にあり、少なくとも1つの間隔を置いて等間隔に配置されたM個の入力ポートが利用される。図12の例では、1つの間隔を置いて、概ね中央部にある1番目入力ポート、3番目入力ポート、5番目入力ポート・・・(2M−1)番目のM個の入力ポートが利用される。このように間隔を置いて非連続で入力ポートを利用する場合において、非周回性AWGの出力ポートの選び方には2種類が提案される。1つは、隣り合う出力ポートを利用する方法であり、もう1つは、隣り合う出力ポートを利用しない方法である。まず、隣り合う出力ポートを利用する第2の実施形態について説明する。
図13は、本発明の光可変フィルタの第2の実施形態の構成および動作を説明する図である。図13の(a)は、本発明の光可変フィルタ120を示し、(b)は光可変フィルタ120によって選択される光信号の波長を概念的に示した図である。図13の(a)は、非周回性AWG121で利用される出力ポートを明示したことを除いて、図12で示した構成と同じである。本実施形態では、非周回性AWG121における出力ポートとして、隣り合う2つの出力ポートを合計N個利用される。ここで、非周回性AWG121の入力ポートは、1番目から(2M−1)番目まで利用されるが、1つ置きに選ばれているので、全体ではM個の入力ポートしか利用されないことに留意されたい。
図13の(b)を参照すると、図11の(b)で説明したのと同様に、光可変フィルタ120によって選択される光信号の波長を概念的に示している。矢印の各々は異なる波長の光信号を示しており、横軸は波長を概念的に示す。矢印の先端部に記載した数字は、非周回性AWG121で選択される入力ポート番号を示す。131−1の符号が付された実線の矢印で示したM個の信号光は、左側から順に、1番目の入力ポート、3番目の入力ポート、・・・、(2M−1)番目の入力ポートが選択されたときに、1番目の出力ポートに現われる信号光を表している。ここで、本実施形態で選択されている入力ポートは、1番目、3番目、5番目、・・(2M−1)番目であって、1つ置きに間を空けた合計M個の入力ポートであることに留意されたい。したがって、M個の信号光131−1は、波長軸上で波長番号が連続したものではなく、波長番号が1つ置きのものに対応している。
一方で、131−2の符号が付された破線の矢印で示したM個の信号光は、左側から順に、1番目の入力ポート、3番目の入力ポート、・・・、(2M−1)番目の入力ポートが選択されたときに、2番目の出力ポートに現われる信号光を表している。そして、M個の信号光131−2は、波長軸上では、M個の信号光131−1において信号光が現われなかった波長番号に対応する信号光であることに注目されたい。これは、非周回性AWGの入力ポートが1つ置きに選択され、かつ、2M個の間隔(繰返し周期)を置いて隣り合う2つの出力ポートの組みを利用することによって得られる。結果として、1番目の出力ポートおよび2番目の出力ポートからは、交互に、波長軸上において合計2M個の連続した波長番号の光信号を選択できることになる。
同様に、131−3の符号が付された太い実線の矢印で示したM個の信号光は、左側から順に、1番目の入力ポート、3番目の入力ポート、・・・、(2M−1)番目の入力ポートが選択されたときに、(2M+1)番目の出力ポートに現われる信号光を表している。そして、波長軸上での波長番号は、先の1番目の出力ポートおよび2番目の出力ポートによって選択された2M個の連続した波長番号に引き続く(2M+1)番目の波長から新たに始まるM個の信号光131−3となる。また、131−4の符号が付された太い破線の矢印で示したM個の信号光は、左側から順に、1番目の入力ポート、3番目の入力ポート、・・・、(2M−1)番目の入力ポートが選択されたときに、(2M+2)番目の出力ポートに現われるM個の信号光を表している。M個の信号光131−4は、波長軸上では、M個の信号光131−3において信号光が現われなかった波長番号に対応する信号光であることに注目されたい。
結局、図13の(b)に示したように、非周回性AWGの入力ポートが1つ置きに選択され、かつ、2M個の間隔(繰返し周期)を置いた隣り合う2つの出力ポートの組みを利用することによって、波長軸上において連続した波長番号を持つ一連のM×N個の信号光を、漏れ無く選択することができる。ここで、図11の第1の実施形態と比較すると、図13に示した第2の実施形態では、非周回性AWGの入力ポートの利用形態が異なっている。第1の実施形態では、概ね中央部にある、隣り合った連続して配置されているM個の入力ポートと、M個の間隔(繰り返し周期)で選んだN個の出力ポートとを利用することで、連続した波長番号を持った一連のM×N個の信号光を漏れ無く選択することができる。これに対して、第2の実施形態では、非周回性AWGの入力ポートが少なくとも1つ置きにM個選択され、かつ、M個の整数倍の間隔(繰返し周期)を置いた隣り合う2つの出力ポートを合計N個利用することによって、波長軸上において連続した波長番号の一連のM×N個の信号光を、漏れ無く選択することができる。
図13の例では、入力ポートは1つ置きに(繰返し周期Aが2)M個選択され、2M個の間隔を置いて隣り合う2個の出力ポートを使用した。しかし容易に推測できるように、入力ポートが2つ置きに(繰返し周期Aが3)M個選択され、3M個の間隔(繰り返し周期)を置いて隣り合う3個の出力ポートの組みを使用しても、波長軸上において連続した波長番号の一連の信号光を、漏れ無く選択することができることが分かるだろう。したがって、非周回性AWGの入力ポートを、少なくとも1つの間を空けて等間隔で利用することによって、波長軸上において連続した波長番号の一連のM×N個の信号光を、漏れ無く選択することができる。
したがって、本実施形態の光可変フィルタでは、第1の光スイッチ(入力ポート選択スイッチ122)は、1つの入力ポートおよびM(2以上の自然数)個の出力ポートを有し、前記M個の出力ポートは、波長合分波器(非周回性AWG121)の前記複数の入力ポートの内のA(2以上の自然数)の繰り返し周期に位置する、相互に隣り合わない入力ポート群へ接続されることになる。
本実施形態によれば、入力ポート側で隣り合う入力ポートを利用しないため、クロストークの点で非周回性AWGのフィルタ特性の所要性能をより緩く設計することが可能となる。透過損失やフィルタ特性の形状についても、設計の自由度を増すことができる。上述の第2の実施形態は、利用する出力ポートの選び方を変形して、さらに所要フィルタ特性を緩和することもできる。
**第3の実施形態**
図14は、本発明の光可変フィルタの第3の実施形態の構成および動作を説明する図である。図14の(a)は、本発明の光可変フィルタ120を示し、(b)は光可変フィルタ120によって選択される光信号の波長を概念的に示した図である。図14の(a)は、非周回性AWG121で利用される出力ポートを明示したことを除いて図12で示した構成と同じである。本実施形態では、図13に示した第2の実施形態とは異なり、非周回性AWG121における出力ポートは、隣り合わない2つの出力ポートを組とした、合計N個の出力ポートが利用される。非周回性AWG121の入力ポートは、第2の実施形態同様に、1番目から(2M−1)番目までの2M個が利用される。入力ポートは1つ置きに選ばれているので、全体ではM個の入力ポートしか利用されないことに留意されたい。
図14の(b)を参照すると、図13の(b)で説明したのと同様に、光可変フィルタ120によって選択される光信号の波長が概念的に示されている。矢印の各々は異なる波長の光信号を示しており、横軸は波長を概念的に示す。矢印の先端部に記載した数字は、非周回性AWG121で選択される入力ポート番号を示す。141−1の符号が付された実線の矢印で示したM個の信号光は、左側から順に、1番目の入力ポート、3番目の入力ポート、・・・、(2M−1)番目の入力ポートが選択されたときに、1番目の出力ポートに現われる信号光を表している。ここで、本実施形態で選択されている入力ポートは、1番目、3番目、5番目、・・(2M−1)番目の、1つ置きに間を空けた合計M個の入力ポートである。したがって、M個の信号光141−1は、波長軸上で波長番号が連続したものではなく、波長番号が1つ置きの信号光に対応している。
一方で、141−2の符号が付された破線の矢印で示したM個の信号光は、左側から順に、1番目の入力ポート、3番目の入力ポート、・・・、(2M−1)番目の入力ポートが選択されたときに、4番目の出力ポートに現われる信号光を表している。そして、M個の信号光141−2は、波長軸上では、M個の信号光141−1において信号光が現われなかった波長番号に対応する信号光であることに注目されたい。ただし、第2の実施形態とは異なり、M個の信号光141−1の最初の信号光を波長番号1番とした場合に、M個の信号光141−2は2番目から始まるのではなく、4番目の波長番号に対応する信号光から始まることに留意されたい。したがって、2番目の波長番号に相当する信号光142は光可変フィルタの設計の前提とした波長番号の中には存在せず、選択をすることができない。
しかしながら、上述の選択不能な信号光142である不完全部分を無視すれば、1番目の出力ポートおよび4番目の出力ポートによって、波長軸上において合計2M個の連続した波長番号の光信号を選択できることになる。実際には、信号光142は利用できないので、図14の(b)では、M個の信号光141−1の内の入力ポート3および出力ポート1の組み合わせで選択される信号光143から順に連続した波長番号の一連の複数の光信号を選択できる。
同様に、141−3の符号が付された太い実線の矢印で示したM個の信号光は、左側から順に、1番目の入力ポート、3番目の入力ポート、・・・、(2M−1)番目の入力ポートが選択されたときに、(2M+1)番目の出力ポートに現われる信号光を表している。そして、波長軸上での波長番号は、先の1番目の出力ポートおよび4番目の出力ポートによって交互に選択される連続した波長番号に引き続き、(2M+1)番目の波長から新たに始まるM個の信号光141−3となる。また、141−4の符号が付された太い破線の矢印で示したM個の信号光は、左側から順に、1番目の入力ポート、3番目の入力ポート、・・・、(2M−1)番目の入力ポートが選択されたときに、(2M+4)番目の出力ポートに現われるM個の信号光を表している。M個の信号光141−4は、波長軸上では、M個の信号光141−3において信号光が現われなかった波長番号に対応する信号光となる。
結局、図14に示した光可変フィルタの構成によれば、選択不能な信号光142である不完全部分を除けば、波長軸上において連続した波長番号の一連の信号光を、漏れ無く選択することができる。本実施形態では、上述の不完全部分は、出力ポートを隣り合わない2つを組みとして、この2つの出力ポートの間を空けることによって、この結果、波長軸上の端部には選択の対象としない波長、すなわち不完全部分が現われる。入力ポートを1つ置きに選択している場合では、1番目の出力ポートと3番目の出力ポートとを1つの組として選択すると、波長番号が完全に重なってしまう。1番目の出力ポートと5番目の出力ポートとを1つの組として選択するのも同様である。つまり、本実施形態では、出力ポートの組みの一方は他方から奇数ポートずらした位置にあることになる。1ポートずらした場合が、隣り合う出力ポートを利用する第2の実施形態となる。したがって、本実施形態の基本的な構成は、図14のように3ポートずらした場合となる。これより大きく出力ポートをずらした場合、例えば、1番目の出力ポートと6番目の出力ポートを1つの組として選ぶと、波長軸上の端部で2つの選択不能な信号光となる不完全部分が生じることが容易に分かるだろう。
図18は、本発明の光可変フィルタの第3の実施形態のより具体的な動作を説明する図である。図14に示した光可変フィルタにおいて1×4入力ポート選択スイッチ187、12×12非周回性AWG180および4×1出力ポート選択スイッチ188からなる12チャネル対応の光可変フィルタの例を示す。入力波長分割多重光信号189は、λ1からλ12までの、12個の異なる波長を持った信号光が多重化されている。入力波長分割多重光信号189は、入力ポート選択スイッチ187によって、非周回性AWG180の12個の入力ポートの中の、概ね中央部にある1つおきに配置された4つ(M=4)の入力ポートの内の1つを選択する。すなわち、4番目、6番目、8番目および10番目の入力ポートの内の1つが選択される。図18の(a)は4番目の入力ポート181が選ばれた場合を、(b)は6番目の入力ポート182が選ばれた場合を、(c)は8番目の入力ポート183が選ばれた場合を、(d)は10番目の入力ポート184が選ばれた場合をそれぞれ示す。
非周回性AWG180の出力ポート側は、1番目の出力ポートおよび4番目の出力ポートを組として、8ポートの繰返し周期で、次に9番目の出力ポートおよび12番目の出力ポートが利用される。これらの4つの出力ポートの内の1つを出力ポート選択スイッチ188によって選択することによって、λ1からλ12までの12個の異なる波長を持った信号光の内の1つが選択される。
例えば、4番目の入力ポート181が選択されたときに、4番目の出力ポートが選ばれれば、図18の(a)のようにλ2の光信号を出力光190として出力することができる。また、6番目の入力ポート182が選択されたときに、1番目の出力ポートが選ばれれば、図18の(b)のようにλ1の光信号を出力光190として出力することができる。同様に、1番目の出力ポートからは、λ3(図18の(c)の場合)またはλ5(図18の(d)の場合)の出力光を出力できる。
8番目の入力ポート183が選択されたときに、9番目の出力ポートが選ばれれば、図18の(c)のようにλ11の光信号を出力光190として出力することができる。また、10番目の入力ポート184が選択されたときに、12番目の出力ポートが選ばれれば、図18の(d)のようにλ16の光信号を出力光190として出力することができる。
上述のように、第3の実施形態において、λ1からλ12までの12個の異なる波長を持った信号光を選択しようとする場合には、非周回性AWGは、12ポートの入力ポートおよび出力ポートが必要となる。しかしながら、図18からわかるように、λ0、λ15を選択することができず、また不要な(λ−1)を選択可能となっている。選択不能なλ0、λ15は、図14で説明した選択不能な信号光142の不完全部分に対応する。この不完全性が存在するために、所定の連続した一連の波長を持つ複数の信号光を分波するためには、その所要数(12チャネル)と比べてより広い波長番号の範囲を分波できる能力を持つ大きめのサイズの非周回性AWGおよび選択スイッチが必要となる。例えば本例では、12チャネルの光可変フィルタを想定しているが、入力ポート選択スイッチおよび出力ポート選択スイッチで選択可能な組み合わせは、4×4=16となっている。
本実施形態では、対象とする波長範囲よりも広い範囲をカバーできるように、非周回性AWGおよびスイッチを多少大きく選ぶことで、不完全部分を避けて、連続した波長番号の一連の複数の光信号を選択可能となる。AWGおよびスイッチに若干の無駄は生じるものの、入力ポートおよび出力ポートのいずれにおいても、連続した位置にあるポートを使用せず、隣り合わないポートを利用することになる。この結果、非周回性AWGに求められるフィルタ特性はより緩和されたもので済む。
図19は、本発明の光可変フィルタの第3の実施形態の様々な構成例を表で示した図である。連続する波長番号を持つ96チャネルの波長選択に対応した光可変フィルタの構成例である。1×M入力ポート選択スイッチの選択数M、非周回性AWGの入力ポートおよび出力ポートの数(AWGサイズ)L、N×1出力ポート選択スイッチの選択数Nの、とり得る組み合わせを示している。一般に、光可変フィルタ全体でのスイッチ規模を最小にするためには、MおよびNの和が最小になるような組み合わせが良い。そのような組み合わせの中で、AWGのサイズLが最小の組み合わせを選択するのが好ましい。
図14、図18および図19に示した第3の実施形態の構成では、入力ポートおよび出力ポートのいずれにおいても、隣り合った連続したポートを使用せず、隣り合わないポートを利用する。この結果、非周回性AWGに求められるフィルタ特性の仕様はより緩和されたもので良くなる。例えば、非周回性AWGのフィルタ特性について、透過損失を極力減らすような設計が可能となる。また、透過特性の形状をガウス波形ではなく矩形(高次ガウシアン)に近づけるような設計も可能となる。光可変フィルタにより選択する信号光の伝達特性の、様々な観点からの改善および柔軟性の獲得が可能となる。図13に示した第2の実施形態では、非周回性AWGの出力ポート側は、連続した隣り合った出力ポートを利用していた。これに対し、図14に示した第3の実施形態では、非周回性AWGの出力ポート側で、相互に離れた出力ポートを利用することで、AWGのフィルタ特性をさらに有効に改善することが可能となる。
第3の実施形態の構成では、取り扱う波長範囲の端部において選択不能な波長の信号光(不完全部分)があるので、波長番号の欠落がなく連続した波長番号の一連の複数の信号光を処理するためには、この不完全部分を避ける必要がある。第1の実施形態では、1番目の出力ポートから最後の出力ポートまでをすべて使用して、かつ、連続した波長番号の信号光を選択できる。したがって、必要とする波長帯域の仕様およびAWGの構成を選べば、すべての出力ポートを無駄なく完全に使い切ることもできる。一方で、本実施形態では、上述の不完全部分を避けるようにして、対象となるシステムの波長帯域の仕様を考慮しながら、AWGの構成を選ぶ必要がある。結果として、非周回性AWGおよび選択スイッチにはやや大き目のサイズのものが必要と成り得る。
しかしながら、非周回性AWGのフィルタ特性の設計に自由度が得られると共に、製造工程においても誤差の許容度に余裕が生まれ製造上の歩留まり向上などのメリットも大きくなる。詳細な性能比較は後に述べるが、図7に示した従来技術の複数段構成の光可変フィルタと比べると、図14の本発明の光可変フィルタ構成では、非周回性AWGの単一段の構成によって、従来技術と同等のスイッチ規模の低減効果を維持したままで、非周回性AWGの利用による低損失特性を実現できる。AWGが1つで済むことによって光可変フィルタの構成が非常にシンプルなものと成る。
上述の3つの実施形態では、単一の非周回性AWGを1段で使用し、単一の波長選択段を構成する例を示した。対象とする波帯域が192チャネルのように非常に広い場合には、1つのAWGの大きさが大きくなってしまう場合がある。このような場合には、非周回性AWGを分割することもできる。次の第4の実施形態で分割型の光可変フィルタの構成例を示す。
**第4の実施形態**
図15は、本発明の光可変フィルタの第4の実施形態の第1の構成を説明する図である。本実施形態の光可変フィルタ150は、これまでの実施形態と異なり並列に使用される2つ以上の非周回性AWGを含み、例えば、第1の非周回性AWG151−1および第2の非周回性AWG151−2を備えている。各々の非周回性AWGはL×Lの構成を持ち、さらに、各非周回性AWGの入力側に接続された入力ポート選択スイッチ152、各非周回性AWGの出力側に接続された出力ポート選択スイッチ153から構成される。異なる複数の波長を含む多重化された入力光154は、1×M入力ポート選択スイッチ152に入力される。入力ポート選択スイッチ152の出力は、各L×L非周回性AWGの概ね中央部であって、連続した隣り合うM/2個の入力ポートにそれぞれ接続されている。図15の構成では、各々の非周回性AWGの隣り合う連続したM/2個の入力ポート(群)が使用されている。しかしながら、第2の実施形態、第3の実施形態のように、各々の非周回性AWGで、少なくとも1つの間隔を置いて等間隔に配置された入力ポート(群)を利用しても良い。
本実施形態では、非周回性AWGを2つに分割することによって、1つの非周回性AWGのサイズを小さくし、1つの非周回性AWGで担う光信号の数を減らす。第1〜第3の実施形態と比べて1つの非周回性AWGのサイズが小さくて済むので、各入力・出力ポートの間で得られる透過特性の中心周波数ずれを小さく抑えることができる。他のフィルタ帯域特性についても、所要性能を実現するための要件が緩いものとなる。したがって、例えば、非周回性AWGのフィルタ特性について、透過損失を極力減らすような設計が可能となる。また、透過特性の形状をガウス波形ではなく矩形(高次ガウシアン)に近づけるような設計も可能となる。光可変フィルタによって波長選択をする信号光の伝達特性の、様々な観点からの改善および柔軟性の獲得が可能となる。次に、第4の実施形態の光可変フィルタのより具体的な構成例および動作を説明する。
図20は、本発明の第4の実施形態の光可変フィルタの、より具体的な動作を説明する図である。図20に示した光可変フィルタ200において1×4入力ポート選択スイッチ206、2つの5×5非周回性AWG201−1、201−2および6×1出力ポート選択スイッチ207からなる例を示す。入力波長分割多重光信号208は、λ1からλ12までの、12個の異なる波長を持った信号光が多重化されている。入力ポート選択スイッチ206によって、非周回性AWG201−1、201−2の各々の5個の入力ポートの中の、概ね中央部にある連続して配置された2つ(M/2=2)の入力ポートの内の1つが選択され、入力波長分割多重化光信号208が入力される。すなわち、3番目の入力ポートおよび4番目の入力ポートの内の1つが選択される。図20の(a)は第1の非周回性AWG201−1の3番目の入力ポート203が選ばれた場合を、(b)は4番目の入力ポート204が選ばれた場合を、(c)は第2の非周回性AWG201−2の3番目の入力ポート205が選ばれた場合を、(d)は4番目の入力ポート206が選ばれた場合をそれぞれ示す。
図20に示した光可変フィルタでは、各々の非周回性AWGで隣り合う入力ポートが使用されている。したがって、個々の非周回性AWGでは、第1の実施形態と同様の動作によって波長の選択が可能である。図20の(a)および(b)からわかるように、第1の非周回性AWG201−1によって、λ1からλ6までの連続した波長番号の一連の信号光が分波される。同様に、図20の(c)および(d)からわかるように、第2の非周回性AWG201−2によって、λ7からλ12までの連続した波長番号の一連の信号光が分波される。
図21は、第4の実施形態の光可変フィルタで利用可能な非周回性AWGの異なる分波特性を説明する図である。図21の(a)の非周回性AWG210は、図20に示した光可変フィルタに用いられる非周回性AWGの分波特性を示している。尚、(b)の非周回性AWG211は、後に説明する第4の実施形態の第2の構成例の光可変フィルタに用いられる非周回性AWGの分波特性を示しており、後に(a)と比較しながら詳述する。(a)に示したように、非周回性AWG210は、1番目の入力ポートに多重光212が入力されると、6つの出力ポートの各々からλ1からλ6の内の1つの信号光214が出力される。入力ポートが1つだけずれて、2番目の入力ポートに多重光213が入力されると、6つの出力ポートの各々からλ2からλ7の内の1つの信号光215が出力される。したがって、1つのポートが1つのチャネル(中心波長λ、中心光周波数f)に対応している。この時の各チャネルの信号の中心周波数の間隔(チャネル間隔)をΔfとすると、非周回性AWGは、その隣接するポート間の周波数間隔がΔfに構成されたものを使用すれば良い。このとき、非周回性AWGの透過帯域幅もΔfに構成される。AWGの(1つのポートの)透過帯域幅は、信号のチャネル間隔Δfおよび信号のビットレートに応じて設計することになる。したがって、図20の構成の場合は、2つの非周回性AWGは全く同一の構成の周波数間隔Δfのものを利用する。
したがって、本実施形態の光可変フィルタは、波長合分波器(非周回性AWG)は、対象とするシステムの通信帯域において、複数のチャネルのチャネル間隔をΔfとするとき、Δfのポート間周波数間隔を持つように構成された複数個の波長合分波器で構成され、これらの複数個の波長合分波器の各々は、前記第1の光スイッチおよび前記第2の光スイッチと接続され、前記単一の波長選択段を構成することになる。
本実施形態の構成によって、非周回性AWGを2つ以上に分割することによって、1つの非周回性AWGのサイズを小さくし、1つの非周回性AWGで担う光信号の数を減らすことができる。これによって、各入力・出力ポートの間で得られる透過特性の中心周波数ずれを小さく抑えることができる。分割型の構成は、非周回性AWGで1つ置きに間を空けた入力ポートを利用する第2および第3の実施形態に適用することもできることも言うまでもない。図20の可変波長光フィルタでは、1つの非周回性AWGで担う波長を単純に2つ以上のグループに分割していた。しかしながら、図20の例とは中心周波数間隔の異なるAWGを利用することで、次の第2の構成例のように非周回性AWGの設計条件および製造条件をさらに緩和することが可能となる。
図22は、本発明の第4の実施形態の光可変フィルタの第2の構成例について、具体的な動作を説明する図である。図20に示した第1の構成例では、中心周波数間隔がΔfに設定された同一構造の非周回性AWGを利用する例を示したが、図22に示した第2の構成例では、ポート間の周波数間隔がより広い非周回性AWGを利用する構成例である。光可変フィルタ220の構成は、図20に示した光可変フィルタ200の構成と同一であるが、利用される非周回性AWGの構成および2つの非周回性AWGによって分担する波長の分割の仕方が異なる。以下、これらの相違点に絞って説明する。
図22の(a)からわかるように、第1の非周回性AWG221−1の3番目の入力ポート223を選択して出力ポートから出力される波長は、図20の構成例と異なっている点に注意されたい。すなわち、3番目の出力ポートからはλ3ではなくてλ5の信号光が出力される。つまり、1番目の出力ポートからのλ1から2チャネル分の差異を持つλ3ではなくて、4チャネル分の差異を持つλ5の信号光が出力されている。また、5番目の出力ポートからはλ5ではなくてλ9の信号光が出力される。つまり、1番目の出力ポートのλ1から4チャネル分の差異を持つλ5ではなくて、8チャネル分の差異を持つλ9の信号光が出力されている。図22の(b)に示したように、第1の非周回性AWG221−1の4番目の入力ポート224を選択して出力ポートから出力される波長も、同様に、1番目の出力ポートのλ3から4チャネル分の差異を持つλ7の光信号および、8チャネル分の差異を持つλ11の信号光が出力されている。
さらに、図22の(c)を参照すれば、第2の非周回性AWG221−2の3番目の入力ポート225を選択したときに出力ポートから出力される波長は、1番目の出力ポートからはλ2となり、3番目の出力ポートからはλ6の信号光が出力され、5番目の出力ポートからはλ10の信号光が出力される。つまり、1番目の出力ポートのλ2から4チャネル分の差異を持つλ6の信号光が出力され、1番目の出力ポートのλ2から8チャネル分の差異を持つλ10の信号光が出力されている。図22の(d)に示したように、第2の非周回性AWG221−2の4番目の入力ポート226を選択して出力ポートから出力される波長も、同様に、1番目の出力ポートのλ4から4チャネル分の差異を持つλ8の信号光および、8チャネル分の差異を持つλ12の信号光が出力されている。
第2の構成例を示す図22の(a)〜(d)および第1の構成例を示す図20の(a)〜(d)を比較すると、第2の構成例では、2つの非周回性AWGによって担う波長は単純な分割によるものではなくて、波長は交互に振り分けられている。すなわち、奇数番号の波長(λ1、λ3、・・)を含むグループと偶数番号の波長(λ2、λ4、・・)を含むグループとに分けられていることがわかる。また、1つの出力ポートには1つの波長すなわち1つのチャネルが対応しているのに加えて、図22の構成では、非周回性AWGの出力ポートが1つ異なれば、2チャネル分、出力される波長(番号)が異なっている。
図22の(a)〜(d)に示したようなパターンで各波長を振り分けて出力することのできる非周回性AWGは、図21の(b)に示した分波特性を持つAWG211により実現できる。図21の(b)に示した非周回性AWG211は、1番目の入力ポートに多重光216が入力されると、6つの出力ポートの各々から1つ置きの波長番号を有するλ1、λ3、λ5、λ7、λ9、λ11の内の1つの信号光218が出力される。入力ポートが1つだけずれて、2番目の入力ポートに多重光217が入力されると、6つの出力ポートの各々から波長番号が2ずれたλ3、λ5、λ7、λ9、λ11、λ13の内の1つの信号光219が出力される。このような分波特性は、この時の対象とするシステムの各チャネル(波長)の信号の中心周波数間隔をΔfとすると、隣接するポート間の周波数間隔が2×Δfの非周回性AWGを使用すれば良い。したがって、λ1、λ3、λ5、λ7、λ9、λ11の各波長を出力する図20の第1の非周回性AWG221−1は、ポート間の周波数間隔が2×Δfの非周回性AWGとなる。
一方、図22の(c)および(d)に示した第2の非周回性AWG221−2のように、偶数番号の波長(λ2、λ4、・・)を出力するためには、上述の第1の非周回性AWG221−1と同じポート間周波数間隔2×Δfを持ち、かつ、各透過帯域の中心波長が1チャネル分Δfだけずれるように構成されたAWGを利用すれば良い。尚、非周回性AWG221−1、221−2の透過帯域幅は、それぞれΔfとなる。したがって、図22に示した各波長を出力するためには、各透過帯域の中心波長が異なり、ポート間の周波数間隔が2×Δfであるように構成された2種類の非周回性AWGを準備する必要がある。各透過帯域の中心波長が異なるAWGは、AWG内の入力導波路の接続位置を変えるなど、様々な方法で簡単に実現できる。
したがって、本実施形態の光可変フィルタでは、波長合分波器(非周回性AWG)は、対象とするシステムの通信帯域において、複数のチャネルのチャネル間隔をΔfとするとき、B×Δfのポート間周波数間隔を持ち、かつ、各々の透過帯域の中心がΔfずつずれるように構成されたB個の波長合分波器で構成され、前記B個の波長合分波器の各々は、前記第1の光スイッチおよび前記第2の光スイッチと接続され、前記単一の波長選択段を構成することになる。
図22に示した構成の光可変フィルタでは、全く同一の構成の2つの非周回性AWGを利用する図20の構成と比べて、異なる構成の非周回性AWGが必要となる反面、チャネル間隔が2倍のAWGを利用できる。ポート間の周波数間隔の大きいAWGは、狭いAWGと比べて、フィルタ特性の設計仕様により余裕が生まれ、設計の自由度が大きい。さらに、製造上でもより大きな誤差を許容可能であって、製造上の歩留まり向上などのメリットも得られる。
図22に示した第2の構成例は、対象とする通信帯域を2つに分割して、各透過帯域の中心波長が異なる2つの非周回性AWGを利用するものであったが、3つに分割する構成も可能である。この場合は、出力する波長がλ1、λ4、λ7・・の第1のグループ(波長番号を3で割った剰余が1となる)、出力する波長がλ2、λ5、λ8・・の第2のグループ(波長番号を3で割った剰余が2となる)、出力する波長がλ3、λ6、λ9・・の第3のグループ(波長番号を3で割った剰余が0となる)の3つに分けることができる。容易に推測できるように、この場合は、ポート間の周波数間隔が3×Δfの第1の非周回性AWGを使用すれば良い。そして、透過帯域の中心波長を1チャネル分Δfずらした第2の非周回性AWGおよび透過帯域の中心波長を2チャネル分2Δfずらした第3の非周回性AWGの、合計3種類の非周回性AWGを備えれば良い。
したがって、システムのチャネル数が非常に大きくなった場合であって、フィルタ特性の他の性能上の要請等によってより小型のAWGを利用することが適切な状況には、さらに分割数を4以上に増やしても良いのは言うまでもない。例えば、B(2以上の自然数)分割する場合には、ポート間の周波数間隔がB×Δfの第1の非周回性AWGを備え、各透過帯域の中心波長を順次1チャネル分Δfずらした(B−1)個の非周回性AWGをさらに備えれば良い。図20に示したような連続した波長番号を持つ波長グループに単純に分割する場合でも、フィルタ特性の他の性能上の要請等によってより小型のAWGを利用することが適切な状況には、分割数を増加することができる。
図23は、本発明の第4の実施形態の光可変フィルタの様々な構成例を表で示した図である。図20の構成に対応し、連続する波長番号を持つ96チャネルについて、帯域を2分割して2つの非周回性AWGによって波長選択する光可変フィルタの構成例である。1×M入力ポート選択スイッチの選択数M、1つの非周回性AWGの入力ポートおよび出力ポートの数(AWGサイズ)L、N×1出力ポート選択スイッチの選択数Nの、とり得る組み合わせを示している。一般に、光可変フィルタ全体でのスイッチ規模を最小にするためには、MおよびNの和が最小になるような組み合わせが良い。そのような組み合わせの中で、AWGのサイズLが最小の組み合わせを選択するのが好ましい。
以上詳細に述べたように、図20および図22で具体的な動作を説明したAWG分割型構成を持つ第4の実施形態の各光可変フィルタでは、非周回性AWGを分割することによって、より小型なサイズのAWGを利用することができる。これによって、AWG自体のフィルタ特性等の設計はより緩やかな仕様の下で行うことが可能となり、AWGの製造上においても誤差の許容度が大きく製造歩留りの向上およびコストの低減が可能となる。さらに図22に示したAWG分割型の構成によれば、ポート間の周波数間隔のより大きいAWGを利用可能となる。これによって、フィルタ特性の設計仕様には、さらに余裕および設計自由度が生まれる。製造上でもより大きな誤差を許容可能であって、製造上の歩留まりのさらなる向上が可能となる。将来的にシステムのチャネル数が非常に大きくなった場合であって、フィルタ特性の他の性能上の要請、制限等に理由によって、より小型のAWGを利用することが適切な状況には、本発明の第4の実施形態のAWG分割型の構成はそのメリットを発揮し得る。
図24は、図7に示した従来技術の光可変フィルタおよび本発明の各実施形態の光可変フィルタにおいて、スイッチ規模の削減効果を対比させて示した図である。横軸には、対象とする波長の数(通信帯域のチャネル数に対応)を示し、縦軸には、1×2スイッチ素子数で換算したスイッチ数を示す。凡例に示した「SW一括型」および「SW分割型」の表記は、それぞれ、AWGの出力ポート側のみで一括して波長選択を行う場合、および、AWGの前後で入力ポート選択スイッチおよび出力ポート選択スイッチに分割をして波長選択を行う場合を示している。また、波長選択法の「1段選択」〜「3段選択」の表記は、周回性AWGまたは非周回性AWGによって構成される波長選択段の数を示す。
本発明の光可変フィルタは、非周回性AWGの「1段選択」で構成された「SW分割型」に対応し、白抜き四角プロットの実線で示されている。四角プロットの実線で示された「1段選択」構成でかつ「SW一括型」の光可変フィルタは、従来技術の図5の(a)の構成に対応する。本発明の光可変フィルタによれば、「1段選択」の構成であるにも関わらず、従来技術の図5の(a)の構成と比べて、劇的にスイッチ規模を低減している。図7に示した従来技術の周回性AWGの「2段選択」構成でかつ「SW分割型」の光可変フィルタは、白抜き丸プロットで示されている。スイッチの削減規模は、本発明の非周回性AWGの「1段選択」構成でかつ「SW分割型」の構成(白抜き四角プロット)と比べ、わずかに減少しているのみである。波長選択段の数を「2段選択」、「3段選択」と増加させていっても、スイッチ規模の削減量は頭打ちとなっている。
結局、図24の比較結果からは、本発明の非周回性AWGの「1段選択」構成で、選択スイッチを入力側と出力側に分けた「SW分割型」の構成とすることによって、図7に示した周回性AWGの「多段選択」構成+「SW分割型」の構成と比べて何ら遜色のないスイッチ削減効果があることがわかる。本発明の光可変フィルタでは、非周回性AWGの1段のみ使用するため、図7に示した複数の周回性AWGを使用した多段構成の光可変フィルタと比べて、透過損失は半分以下の非常に小さい値となる。本発明は、非周回性AWG自体が持つ低い透過損失の特性を最大限に利用することによって、従来技術と同程度のスイッチ規模の低減効果を実現しながら、透過損失の増加を大幅に抑えた光可変フィルタを実現できる。
以上の説明では、波長合分波器として非周回性AWGを例に説明をしてきたが、本発明は、AWGと同様の分波特性を持ち、分波機能を多段化することによって透過損失が増加するような他の形態のデバイスの場合にも適用可能となり得る。また、説明した各実施形態や図面では、非周回性AWGの一番端にある1番目の出力ポートから対象とするシステムの最初の波長番号の光信号を出力するものとして説明した。しかし、一番端にある1番目のポートを使用しない場合でも、非周回性AWGの入力側および出力側にそれぞれAWGのポート選択スイッチを備えた本発明の光可変フィルタの基本構成を備えている限りは、当然に本発明の効果を得られる。したがって、すべての非周回性AWGの出力ポートを使用しなくても良い。
以上、詳細に説明してきたように、本発明の光可変フィルタによって、デバイスの構成を簡略化および低コスト化をしながら、光可変フィルタにおける光スイッチの規模を抑えるとともに、透過損失の増加も抑えた新たな構成の光可変フィルタを実現できる。