JP6409528B2 - アミノ基を含むイオン交換基とブチル基を含む疎水性基とを有する多孔性セルロース粒子及びそれを含むクロマトグラフィー担体ならびにb型肝炎ウィルスのウィルス様粒子の精製方法 - Google Patents
アミノ基を含むイオン交換基とブチル基を含む疎水性基とを有する多孔性セルロース粒子及びそれを含むクロマトグラフィー担体ならびにb型肝炎ウィルスのウィルス様粒子の精製方法 Download PDFInfo
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Description
[1]アミノ基を含むイオン交換基とブチル基を含む疎水性基とを有する多孔性セルロース粒子であって、多孔性セルロース粒子中の窒素原子含有量が1mg/g〜10mg/gの範囲である、多孔性セルロース粒子。
[2]多孔性セルロース粒子が、そのベース担体であるセルロース粒子が架橋剤により架橋された架橋セルロース粒子から得られたものである、[1]に記載の多孔性セルロース粒子。
[3]架橋剤がエピクロロヒドリンである、[2]に記載の多孔性セルロース粒子。
[4]アミノ基を含むイオン交換基が3−アミノ−2−ヒドロキシプロピル基であり、ブチル基を含む疎水性基が3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピル基である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の多孔性セルロース粒子。
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載の多孔性セルロース粒子を含むクロマトグラフィー担体。
[6]B型肝炎ウィルス(HBV)のウィルス様粒子(VLP)を精製するためのものである、[5]に記載のクロマトグラフィー担体。
[7]VLPがHBs抗原のS領域である、[6]に記載のクロマトグラフィー担体。
[8][6]又は[7]に記載のクロマトグラフィー担体を用いてB型肝炎ウィルス(HBV)のウィルス様粒子(VLP)を精製する方法であって、
(a)B型肝炎ウィルス(HBV)のウィルス様粒子(VLP)を含む細胞溶解物又は培養上清を[6]又は[7]に記載のクロマトグラフィー担体と接触させ、前記VLPならびに混入物質であるタンパク質及び核酸を前記クロマトグラフィー担体に吸着させる工程と、
(b)混入物質であるタンパク質及び核酸が前記クロマトグラフィー担体に保持され、VLPが前記クロマトグラフィー担体を通過するように、前記クロマトグラフィー担体の疎水性相互作用を調節して、前記クロマトグラフィー担体から前記VLPを溶出させる工程と、を含む方法。
[9]VLPがHBs抗原のS領域である、[8]に記載の方法。
[10]工程(b)において、前記クロマトグラフィー担体の疎水性相互作用が、移動相として界面活性剤及び有機溶媒を用いることにより調節される、[8]又は[9]に記載の方法。
[11][8]〜[10]のいずれか一項に記載の方法によって調製された前記VLPを含むワクチン。
本発明の多孔性セルロース粒子は、スケールアップ精製に有利な条件で使用することができ、ミックスモード・クロマトグラフィー担体として好適に用いることができる。本発明のクロマトグラフィー担体は、特にB型肝炎ウィルスのVLPの精製に有用である。本発明のクロマトグラフィー担体を用いることにより、B型肝炎ウィルスのVLPをタンパク質及び核酸などの混入物質から分離精製することができる。
本発明の多孔性セルロース粒子は、アミノ基を含むイオン交換基とブチル基を含む疎水性基とを有する多孔性セルロース粒子であって、多孔性セルロース粒子中の窒素原子含有量が1mg/g〜10mg/gの範囲であることを特徴としている。本発明の多孔性セルロース粒子は、上記のようにアミノ基を含むイオン交換基とブチル基を含む疎水性基とをそれぞれ独立に任意の量で導入することができる。
アミノ基を含むイオン交換基としては、少なくともアミノ基を含み、セルロース粒子の水酸基に導入できるものであれば特に制限されない。例えば、多官能性化合物を介してセルロース粒子にアミノ基を付加させることができるものなどが挙げられる。具体的には、エピクロロヒドリンで活性化した後、続いてアンモニアを付加させることで導入される3−アミノ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。アミノ基を含むイオン交換基を有することにより、本発明の多孔性セルロース粒子のイオン交換相互作用を高めることができる。
ブチル基を含む疎水性基としては、少なくともブチル基を含み、セルロース粒子の水酸基に導入できるものであれば特に制限されない。例えば、分子内に反応性官能基とブチル基を持つ化合物などが挙げられる。具体的には、ブチルグリシジルエーテルのグリシジル基を利用して導入される3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。ブチル基を含むことにより、多孔性セルロース粒子の疎水性相互作用を高めることができる。
また、本発明の多孔性セルロース粒子中のブチル基含有量は、実施例1に記載した方法で評価した時に、標準タンパク質であるリゾチームの溶出ピークが12〜20分の範囲に出現するように調整されることが好ましく、より好ましくは12.5〜15.0分の範囲に出現するように調整される。
球状の架橋セルロース粒子は、前述した方法などを用いて球状セルロース粒子を架橋することで得ることができる。
体積平均粒子径(Mv) = Σ(nd4)/Σ(nd3)
[式中、dは光学顕微鏡写真から求めたそれぞれの粒子径の値を表し、nは、測定した粒子の個数を表す。]
ゲル分配係数Kavは、特定の分子量を有する標準物質(例えば、ポリエチレンオキシド)の溶出体積およびカラム体積の関係から次式により求めることができる。
Kav=(Ve−V0)/(Vt−V0)
[式中、Veはサンプルの保持容量(mL)、Vtは空カラム体積(mL)、V0はブルーデキストラン保持容量(mL)を表す。]
セルロース粒子に含まれる水酸基の一部にブチル基を含む疎水性基を導入する方法としては、例えば、ブチル基と反応性官能基を含む化合物を用いる方法などが挙げられる。中でも、ブチル基とグリシジル基とを含む化合物をセルロース粒子と反応させる方法が好ましい。この方法によれば、毒物を使用することなく、簡便な方法で、セルロース粒子にアミノ基を含むイオン交換基を導入することができる。
セルロース粒子に含まれる水酸基の他の一部にアミノ基を含むイオン交換基を導入する方法としては、例えば、多官能性の試薬を用いてアミノ基を導入する方法などが挙げられる。中でも、セルロース粒子にエピクロロヒドリンを反応させて、他の水酸基の一部をエポキシ化し、その後、アンモニアと反応させる方法が好ましい。この方法によれば、毒物を使用することなく、簡便な方法で、セルロース粒子にブチル基を含む疎水性基を導入することができる。
まず、架橋セルロース粒子にブチルグリシジルエーテルを反応させてブチル基を導入する。
反応容器に水及び硫酸ナトリウム、更に架橋セルロース粒子を加えて均一なスラリーとなるように攪拌する。これに水酸化ナトリウム水溶液を加え、0.5〜2.0時間攪拌する。
次いで、ブチルグリシジルエーテルを加え、反応液を45〜55℃まで昇温し、液温が一定温度に達した後、6〜48時間攪拌しながら反応させる。
反応終了後、反応液を吸引濾過し、得られた湿ゲルを水で中性になるまで洗浄して、架橋セルロース粒子にブチル基が導入された化合物を湿ゲルとして得ることができる。
硫酸ナトリウムの使用量は、反応液中の水分に対して、通常、5〜50質量%の範囲であり、好ましくは20〜30質量%の範囲である。
水酸化ナトリウム水溶液の濃度及び使用量は、反応液中の濃度が1〜10質量%になるように加えることが好ましい。
ブチルグリシジルエーテルの使用量は、架橋セルロース粒子に導入したいブチル基の量に応じて適宜調整することができる。例えば、セルロースモノマーのモル数の0.05〜2.0倍量が好ましく、より好ましくは0.1〜0.6倍量、更に好ましくは0.2〜0.4倍量である。ここで、「セルロースモノマー」とは、セルロースの構成単位であるグルコースユニットを意味し、セルロースモノマーのモル数(すなわち、重合度)は、グルコース1ユニットから水分を引いた量、すなわち分子量162を1モルとして、セルロースの乾燥重量から計算する。
次に、工程aで得られたブチル基を導入した架橋セルロースの他の水酸基の一部をエポキシ化する。
反応容器に水及び工程aで得られた湿ゲルを加え、0.5〜2.0時間攪拌する。次いで、反応液を25〜35℃まで昇温し、液温が一定温度に達した後、水酸化ナトリウム水溶液、エピクロロヒドリンの順に加え、1.0〜5.0時間攪拌する。
反応終了後、酢酸などの弱酸を反応液が中性になるまで加え、水で洗浄した後、反応液を吸引濾過してエポキシ化した湿ゲルを得る。
水酸化ナトリウム水溶液の濃度及び使用量は、反応液中の水分に対し、1〜20質量%であり、エピクロロヒドリンに対し、1〜10倍量であることが好ましい。
エピクロロヒドリンの使用量は、次の工程で架橋セルロース粒子に導入したいアミノ基の量に応じて適宜調整することができる。例えば、工程aで得られた湿ゲルのセルロースモノマーのモル数の0.1〜50倍量が好ましく、より好ましくは1.0〜20倍量、更に好ましくは5.0〜10倍量である。
次に、工程bで得られたエポキシ化した架橋セルロースのエポキシ基を介してアミノ基を導入する。
反応容器に工程bで得られた湿ゲルとアンモニア水を加え、均一なスラリーとなるよう攪拌する。この反応液を30〜40℃まで昇温し、液温が一定温度に達した後、液温を維持した状態で1.0〜5.0時間攪拌しながら反応させる。
反応終了後、反応液を吸引濾過し、得られた湿ゲルを中性になるまで洗浄して、架橋セルロース粒子にブチル基及びアミノ基が導入された化合物を湿ゲルとして得ることができる。
アンモニア水の使用量は、セルロースモノマーのモル数の10倍量以上であることが好ましい。
本発明の多孔性セルロース粒子は、アミノ基及びブチル基が導入されていることによりイオン交換相互作用及び疎水性相互作用を有する。この性質を利用して、本発明の多孔性セルロース粒子を、例えば、クロマトグラフィー担体として好適に使用することができる。本発明の多孔性セルロース粒子は、アミノ基及びブチル基の導入量及びその量比を調節することができるので、イオン交換相互作用及び疎水性相互作用のバランスを制御して、目的に応じた所望の分離特性を付与することができる。また、イオン交換相互作用及び疎水性相互作用のバランスを変化させることによって目的物質の吸着及び溶出を制御することができる。
また、本発明のクロマトグラフィー担体は、ベースゲルとしてセルロース粒子を使用しているため広いpH領域で使用することが可能であり、低塩化ナトリウム濃度で目的物を吸着させ、界面活性剤で溶出させるといったスケールアップ精製に有利な条件で使用することができる。また、本発明のクロマトグラフィー担体は、毒物を使用せず、安定供給が可能であるといった利点も有している。
上述したとおり、本発明の多孔性セルロース粒子は、B型肝炎ウィルス(HBV)のウィルス様粒子(VLP)を精製するためのミックスモード・クロマトグラフィー担体として好適に用いることができる。本発明のB型肝炎ウィルス(HBV)のウィルス様粒子(VLP)の精製方法によれば、本発明のクロマトグラフィー担体を用いることにより、B型肝炎ウィルス(HBV)のウィルス様粒子(VLP)を工業的に精製することが可能である。
本発明のクロマトグラフィー担体は、酸性域で使用できることから、例えば、米国特許第4707542号明細書に記載される従来法で用いられるミックスモード・クロマトグラフィーであるブチルアガロースの代替品として使用することもできる。ブチルアガロースクロマトグラフィー担体に替えて本発明のクロマトグラフィー担体を用いることにより、スケールアップ精製が可能であり、且つ、毒物を使用せずに安定してB型肝炎ウィルス(HBV)のウィルス様粒子(VLP)を工業的に精製することができる。
(a)B型肝炎ウィルス(HBV)のウィルス様粒子(VLP)を含む細胞溶解物又は培養上清を本発明のクロマトグラフィー担体と接触させ、前記VLPならびに混入物質であるタンパク質及び核酸を前記クロマトグラフィー担体に吸着させる工程と、
(b)混入物質であるタンパク質及び核酸が前記クロマトグラフィー担体に保持され、VLPが前記クロマトグラフィー担体を通過するように、前記クロマトグラフィー担体の疎水性相互作用を調節して、前記クロマトグラフィー担体から前記VLPを溶出させる工程とを含むことができる。
B型肝炎ウィルス(HBV)のウィルス様粒子(VLP)を含む細胞溶解物は、組換えDNA技術を利用してVLPを産生するように形質転換されたVLP産生組換え微生物、例えば、大腸菌、酵母及び動物細胞等を、適当な培地及び培養条件で培養して、VLPを産生し蓄積させた後、得られた培養液を緩衝液中で破砕処理することにより得られる。
VLP産生組換え微生物としては、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Hansenura polymorphaなどの酵母を用いることが好ましい。
破砕処理は、例えば、超音波破砕、グラスビーズ破砕、マントン・ゴーリン破砕、あるいは、細胞の細胞壁を酵素的に溶解せしめてスフエロプラスト化した後、これに界面活性剤を作用させて破砕するなどの方法により実施することができる。
得られた細胞溶解物は、遠心分離にかけ、細胞壁破片等の破砕物を分離し、必要に応じてメンブランフィルターを用いて濾過処理して大きな粒子物を取り除いて培養上清としてもよい。
緩衝液としては、リン酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、トリス、ビストリス、またはグッドバッファーなどを用いることができる。緩衝液の濃度は1〜1000mMの範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜200mM、更に好ましくは10〜50mMの範囲である。
移動相として用いる緩衝液に界面活性剤を配合することによりクロマトグラフィー担体の疎水性相互作用を弱めるように調節することができる。界面活性剤としては、クロマトグラフィー担体の疎水性相互作用を弱めるものであれば特に制限されない。例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アシルソルビタン、ステロイド系界面活性剤、アルキルグリコシド、アルキルアルコールの硫酸エステル塩、アルキルアルコールのスルホン酸エステル塩、リゾレシチン、アルキルβアミノ酸などを用いることができる。
以上のようにして、B型肝炎ウィルス(HBV)のウィルス様粒子(VLP)を含む細胞溶解物又は培養上清からVLPを分離精製することができる。得られたVLPは、B型肝炎用ワクチンとして利用することができる。
クロマトグラフィー担体のイオン強度は、例えば塩化ナトリウムを添加することによって調節することができる。塩化ナトリウムの濃度は、0.5Mの以上が好ましく、より好ましくは2.0M以上である。
〔6%球状セルロース粒子(含水)の製造〕
(1)100gのチオシアン酸カルシウム60重量%水溶液に6.4gの結晶性セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:セオラスPH101)を加え、110〜120℃に加熱して溶解した。
(2)この溶液に界面活性剤としてソルビタンモノオレエート6gを添加し、130〜140℃に予め加熱したo−ジクロロベンゼン480ml中に滴下し、200〜300rpmにて攪拌分散した。
(3)次いで、上記分散液を40℃以下まで冷却し、メタノール190ml中に注ぎ、粒子の懸濁液を得た。
(4)この懸濁液を濾過分別し、粒子をメタノール190mlにて洗浄し、濾過分別した。この洗浄操作を数回行った。
(5)さらに大量の水で洗浄した後、球状セルロース粒子を得た。
(6)次いで、この球状セルロース粒子をJIS標準ふるい規格53μm〜125μmのふるいにかけて、所望の粒子径(実粒子サイズ間隔50〜150μm、平均粒子径約100μm)にし、目的の6%球状セルロース粒子(含水:セルロース溶解濃度6%)を得た。なお、ここでの平均粒子径は、光学顕微鏡で撮影した画像の粒子径を、ノギスなどを用いて計測して撮影倍率から元の粒子径を求め、それぞれの粒子径の値から、下記の式によって算出して求めた。
体積平均粒子径(MV)=Σ(nd4)/Σ(nd3)
[式中、dは光学顕微鏡写真から求めたそれぞれの粒子径の値を表し、nは測定した粒子の個数を表す。]
(1)上記で得られた6%球状セルロース粒子(含水)100gに121gの純水を加え、攪拌しながら加温した。30℃に到達したところで45重量%のNaOH水溶液3.3gとNaBH40.5gとを加え、撹拌した。初期アルカリ濃度は0.69%(w/w)であった。
(2)30分後、60gのNa2SO4を反応液に加え、溶解させた。混合物の温度が50℃に到達した時点で、2時間撹拌を継続した。
(3)50℃で混合物の撹拌を継続しながら、45重量%のNaOH水溶液48gと、エピクロロヒドリン50gとをそれぞれ25等分した量を、15分置きにおよそ6時間かけて添加した。
(4)添加終了後、この混合物を温度50℃で16時間反応させた。
(5)この混合物を温度40℃以下に冷却した後、酢酸2.6gを加え、中和した。
(6)反応混合物を濾過してゲルを回収し、純水で濾過洗浄し、目的の架橋6%セルロース粒子を得た。この時、株式会社堀場製作所のレーザ回折/散乱式の粒子径分布測定装置LA−950を用いて分析した平均粒子径は85μmであった。また、重量平均分子量1.5×105Daの標準ポリエチレンオキシドにおいて純水を移動相として使用したときのゲル分配係数Kavは0.38であった。
〔陰イオン交換体の製造〕
0.5L容のガラス容器に参考例1の架橋6%セルロース粒子70g、純水35mLを加え攪拌した。反応液の温度を38℃に上げ、カチオマスター(四日市合成)122g、48.7%(w/w)水酸化ナトリウム4.1gを投入した。反応温度を40±2℃に維持したまま6時間攪拌した。6時間後、酢酸で反応液を中性にし、減圧ろ過を使って純水でゲルの洗浄を行った。このゲルに0.2mol/L塩酸を加え、30分間攪拌した。その後、再び減圧濾過を使って純水で中性になるまで洗浄した。減圧濾過により余分な水分を取り除き、湿ゲル61gを得た。このゲルのN含量は7300ppmであった。
〔ミックスモード担体の製造 ブチル基を含む疎水性基の導入(工程a)〕
2L容のガラス容器に純水480mL、硫酸ナトリウム185gを加えた。次に参考例1の架橋6%セルロース粒子を250g加え、均一なスラリーとなるよう攪拌した。得られたスラリーに48.7%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液76.6gを加え、1時間攪拌した。1時間後、反応液にブチルグリシジルエーテル(日本油脂株式会社製「エピオール(登録商標)B」)をそれぞれ4.8g加え、反応液を50℃まで昇温した。液温が50℃に達してから、16時間攪拌しながら反応させた。16時間後攪拌を止めスラリーを吸引ろ過した。得られた湿ゲルを純水で5回、メタノールで15回洗浄した。最後に純水で洗浄液が中性になるまで洗浄した。得られた湿ゲルは余分な水分を取り除いた状態で保存した。
(製造例1b)
1L容のガラス容器に純水85mLを入れ、工程aで製造したブチル基を有したセルロースゲル70gを加え、30分間攪拌した。反応液の温度を28〜35℃の範囲に調整し、48.7%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液38g、エピクロロヒドリン43gの順に加え、2時間攪拌した。2時間後、酢酸を反応液が中性になるまで加えた。純水で上澄み液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで洗浄した後、吸引ろ過した湿ゲル86gを回収した。得られたゲルのエポキシ導入量は乾燥ゲル1gあたり47μmolであった。
(製造例2b)
純水85mLに代えて209mLを用いたこと以外は、製造例1bと同様にして湿ゲル69gを得た。得られたゲルのエポキシ導入量は乾燥ゲル1gあたり、128μmolであった。
(製造例3b)
純水85mLに代えて518mLを用いたこと以外は、製造例1bと同様にして湿ゲル69gを得た。得られたゲルのエポキシ導入量は乾燥ゲル1gあたり、229μmolであった。
(製造例1c)
0.3L容のガラス容器に工程b(製造例1b)で製造した湿ゲル50gと25%アンモニア水75mLを加え、均一なスラリーとなるよう攪拌した。反応液の温度を35〜40℃まで上げ、維持したまま2時間攪拌した。2時間後、吸引ろ過でろ液を除き、上澄み液が中性になるまで純水で洗浄した。その後、減圧濾過により余分な水分を取り除き、湿ゲル34gを得た。ゲルを乾燥させCHN(Carbon Hydrogen Nitrogen)元素分析により乾燥重量あたりの窒素原子含有量を求めた。得られたゲルの窒素原子含有量は2400ppm(2.4mg/g)であった。
(製造例2c)
製造例2bで製造した湿ゲル50gを用いたこと以外は、製造例1cと同様にして湿ゲル33gを得た。得られたゲルの窒素原子含有量は3100ppm(3.1mg/g)であった。
(製造例3c)
製造例3bで製造した湿ゲル50gを用いたこと以外は、製造例1cと同様にして湿ゲル34gを得た。得られたゲルの窒素原子含有量は5000ppm(5.0mg/g)であった。
〔HBsAg粗精製液の調製〕
HBsAgを含んだ酵母S.cerevisiae菌体はビークル社より購入し、使用するまで−80 ℃ で保存した。移行の操作は4℃以下を維持するよう努めた。菌体約30gを100mLの破砕用バッファー(0.1mol/Lリン酸ナトリウム、0.5mol/L NaCl、2mmol/L PMSF、pH7.2)に懸濁し、ガラスビーズホモジナイザーを用いて破砕処理を行った。この破砕液を13000gで遠心して菌体破砕物を除去した。上清を回収し、終濃度10%(w/w)となるようゆっくり攪拌しながら33%(w/w)PEG6000をゆっくり加え、2時間攪拌した。攪拌を止め、そのまま一晩放置した後、8000gで30分間遠心した。得られた沈殿を0.05mol/L Tris−HCl、pH8.0でタンパク質濃度が5mg/mL程度になるよう適当に懸濁し、孔径0.2μmのフィルターでろ過した。タンパク質濃度はBCAアッセイ(Thermo Scientific)を用いて測定した。
実施例1の製造例2cで作製したミックスモード担体を純水で適当にスラリー状にし、減圧下で攪拌、脱気した。そのスラリーをφ6.6mmのガラスカラムに流し込みゲル高さが30mmとなるようパッキングした。ゲルを詰めたガラスカラムはLCシステムに接続し、0.02mol/L リン酸緩衝液,pH7.0で平衡化した。これに調製したHBsAgサンプル液(HBsAg粗精製液)2mLを流速0.5mL/分の速度で流し、続いて0.02mol/L リン酸緩衝液(pH7.0)をカラムの8倍容量流して非吸着物を除いた。そして0.1%(w/w)Triton X−100を含んだ0.02mol/L リン酸緩衝液,pH7.0をカラムの10倍容量流して溶出液を回収した。さらに0.1%(w/w)Triton X−100、2mol/L NaClを含んだ0.02mol/L リン酸緩衝液,pH7.0をカラムの10倍容量流して残留物を回収した。各画分のHBsAg濃度はELISAキット(株式会社ビークル)で、核酸濃度は「PicoGreen(登録商標)(Life Technologies社)で測定した。結果を図1及び表1に示す。
Claims (10)
- 3−アミノ−2−ヒドロキシプロピル基と3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピル基とを有する多孔性セルロース粒子であって、多孔性セルロース粒子中の窒素原子含有量が1mg/g〜10mg/gの範囲である、多孔性セルロース粒子。
- 多孔性セルロース粒子が、そのベース担体であるセルロース粒子が架橋剤により架橋された架橋セルロース粒子から得られたものである、請求項1に記載の多孔性セルロース粒子。
- 架橋剤がエピクロロヒドリンである、請求項2に記載の多孔性セルロース粒子。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔性セルロース粒子を含むクロマトグラフィー担体。
- B型肝炎ウィルス(HBV)のウィルス様粒子(VLP)を精製するためのものである、請求項4に記載のクロマトグラフィー担体。
- VLPがHBs抗原のS領域である、請求項5に記載のクロマトグラフィー担体。
- 請求項5又は6に記載のクロマトグラフィー担体を用いてB型肝炎ウィルス(HBV)のウィルス様粒子(VLP)を精製する方法であって、
(a)B型肝炎ウィルス(HBV)のウィルス様粒子(VLP)を含む細胞溶解物又は培養上清を請求項6又は7に記載のクロマトグラフィー担体と接触させ、前記VLPならびに混入物質であるタンパク質及び核酸を前記クロマトグラフィー担体に吸着させる工程と、
(b)混入物質であるタンパク質及び核酸が前記クロマトグラフィー担体に保持され、VLPが前記クロマトグラフィー担体を通過するように、前記クロマトグラフィー担体の疎水性相互作用を調節して、前記クロマトグラフィー担体から前記VLPを溶出させる工程と、を含む方法。 - VLPがHBs抗原のS領域である、請求項7に記載の方法。
- 工程(b)において、前記クロマトグラフィー担体の疎水性相互作用が、移動相として界面活性剤及び有機溶媒を用いることにより調節される、請求項7又は8に記載の方法。
- ウィルス様粒子(VLP)を含むワクチンの製造方法であって、前記VLPを請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法によって調製することを含む、ワクチンの製造方法。
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