JP2004532182A5 - - Google Patents

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低濃度の塩を含有する組成物の製造方法
本発明は、荷電物質を塩と共に含有する液体(I)からの塩の除去、つまり物質の脱塩組成物の製造又は物質の脱塩のための方法に関する。
本発明は、
(i)イオン交換体(1)と物質とが結合し得る条件下で、液体(I)をイオン交換体(1)と接触させる工程、及び
(ii)液体(液II)の使用によって上記物質を上記イオン交換体から脱着させる工程
を含む。
荷電物質は典型的には生物有機物質及び/又は両性物質である。物質中の荷電基の数に関しては、2以上の荷電基(例えば、1又は2以上の正荷電基及び/又は1又は2以上の負荷電基)が存在していると、最大の利点が得られる。物質の分子量に関しては、分子量が1,000ダルトン以上(例えば、5,000ダルトン以上又は10,000ダルトン以上)であれば、最大の利点が得られる。
リガンドは、ベースマトリックスに結合した基であり、液体(I)によって与えられる条件下で、関心物質と引力的相互作用を発揮する。「リガンド」という用語は、同じベースマトリックスに結合した同じ種類の個々のリガンド基が複数存在することを包含する。イオン交換体の少なくとも一部のイオン交換リガンドは、液体(I)によって与えられる条件下で、物質の電荷とは反対の電荷を有する。pH依存性の電荷を有するイオン交換リガンドに対しては、以下のことがいえる。
a)イオン交換リガンド及びその対応する塩基の両方は、液体(I)のpHが≦pKa+2である限り、同じ種類のリガンドであるとみなされる。
b)イオン交換リガンド及びその対応する酸の両方は、液体(I)のpHが≧pKa−2である限り同じ種類のリガンドであるとみなされる。
pKaは、(a)リガンド(選択肢a)又はリガンドに相当する酸(選択肢b)のpKaを意味する。液体(I)のpHがこれらの判定基準に適合しなければ、リガンドの荷電型は非本質的な量でしか存在しない。
別段の記載がない限り、「電荷」という用語とは、それぞれ物質又はリガンドの正味電荷をいう。
本発明の文脈における「塩」という用語は、液体(I)又は液体(II)のいずれかに溶解したときに、正に荷電した部分と負に荷電した部分とを形成する化合物を意味する。脱塩(吸着)すべき物質と同じ電荷を有する塩の部分は、好ましくは非ポリマー性でありかつその物質と同じ種類の少数(例えば、1、2又は3つ)の電荷を有する。塩の他の部分は、大抵は非ポリマー性部分のみを含有する塩を意図するが、これらに限定されない。
塩の種々の荷電部分は緩衝性のものでも、非緩衝性のものでもよい。
荷電した生物有機物質の脱塩組成物は、生物有機物質をさらに処理しなければならない多くの場合に必要とされる。伝統的なイオン交換クロマトグラフィーでは、例えば、物質を吸着すべき溶液のイオン強度は、その物質、存在する他のイオン、使用されるイオン交換体等に応じて特定の値未満のイオン強度を有している必要がある。生物有機物質に用いられる分析法は、塩の存在によって妨害され、不正確な結果をもたらすことがある。典型的な例は、質量分析、元素分析等である。脱塩は、薬学的に許容される純度及び/又は食品工業で許容される純度の生物有機物質の製造におけるしばしば重要なプロセスである。
生物有機物質の従来の脱塩法は、ゲル濾過、膜濾過、限外濾過、透析等であった。また、(a)イオン交換体を、吸着物質とイオン交換体との電荷相互作用を低減させるために生物有機物質の脱着のためのpHスイッチと併用すること、及び(b)強アンモニウムイオン交換体を揮発性緩衝液による脱着と併用することが示唆されている。例えば、アミノ酸及び短鎖ペプチドの脱塩について記載されているHirs et al., J. Biol. Chem 195 (1952) 669−683 and 219 (1956) 623−642; Hirs, Methods in Enzymology XI (ed. Hirs) (1967) 386−390;及びDreze et al., Analytical Chim Acta 11 (1954) 554−558を参照されたい。また、タンパク質の脱塩について提案されているWO9406822(Upfront Chromatography)及びWO9965607(Amersham Pharmacia Biotech AB)も参照されたい。
US5652,348(Burton等)には、疎水性相互作用の条件下で荷電し得るリガンドを利用すると、加塩又は脱塩せずに脱着を達成できることが示唆されている。疎水性相互作用は、リガンドが非荷電型であり、塩濃度が高いことを意味する。
一つの主な目的は、「技術分野」に記載した種類の簡単で信頼性のある脱塩法であって、工程(i)から工程(ii)に進む際に以下の特徴(a)〜(g)の少なくとも1つが存在する方法を提供することである。
(a)簡単さ、各種形式(例えばマイクロ形式)への拡張性、再現性等、
(b)生物有機物質の一次、二次、三次及び/又は四次構造を本質的に変化させずに維持できるような温和な条件;
(c)全塩濃度の少なくとも10分の1、好ましくは少なくとも100分の1(モル/モル)の低減、例えば、液体(I)中の0.1M以上(例えば0.25M以上又は0.5M以上)の全塩濃度から出発して、工程(ii)で得られる脱着物質の大部分を含有する溶出液中の最大0.1M(例えば最大0.05M又は最大0.01M)の全塩濃度まで低下させること、
(d)生物有機物質の濃度の10倍以上(例えば10以上又は10以上の増加、
(e)非緩衝性塩成分(静電的均衡の維持に必要とされる緩衝性成分の対イオンを除く)の濃度の本質的に零になるまでの低減、
(f)他の生物有機化合物(例えば同じ一般構造のもの)の量の少なくとも10分の1(例えば、少なくとも100分の1(重量/重量))低減、
(g)関心生物有機物質の最大60%(例えば最大75%)又は80%以上又は90%以上の収率、好ましくは本質的に100%。
第二の目的は、薬学的に許容される純度及び/又は食品工業で許容される純度の生物有機物質を得るのに役立つ脱塩法を提供することである。
第三の目的は、上述のような分析すべき生物有機化合物のための脱塩プロセス、つまり上述の種類の生物有機化合物のための脱塩工程を含む分析法を提供することである。
第四の目的は、
(a)逆相クロマトグラフィー、及び/又は
(b)塩濃度の増加(例えば、0〜0.5Mの塩濃度範囲(例えば0〜0.1M、0.075〜0.15M及び/又は0.125〜0.5Mの塩の部分範囲の一部)での変化、好ましくは段階的又は連続勾配で起こる変化)による脱着を用いた従来のイオン交換体でのイオン交換クロマトグラフィー
に先立って、本明細書に記載の荷電物質を含有する組成物に使用できる新しい脱塩法を提供することである。
この目的は、対応する回分法も包含する。使用する塩勾配は、2〜3Mの塩まで拡張できる。従来のイオン交換体とは、本発明の革新的な脱塩法で使用するイオン交換体に必要とされる破過容量未満の破過容量を有するイオン交換体を意味する。下記を参照されたい。
本発明者らは、吸着工程(工程(i))で用いるpH及び十分に高いイオン強度で十分に高い破過容量を有するイオン交換体を選択すれば、上記の目的を少なくとも部分的に満足できることを発見した。
本発明の革新的方法の特色の一つは、以下の2つの重要な特徴(A及びB)の少なくともいずれかを有することである。
特徴A:イオン交換体(1)は、
(a)0.1M NaCl(好ましくは0.25M NaCl)に相当するイオン強度の水性対照液中で関心物質を結合することができ、しかも
(b)10%破過及び線流速300cm/時において、液体(I)によって与えられるpHで2mg/mlゲル(沈降)超(例えば4mg/mlゲル超)の破過容量を与えることができる
イオン交換体から選択される。
特徴B:工程(ii)は、液体(II)のpHを、物質とリガンド及び/又はイオン交換体との電荷の差が減少するpH値に調整することを含む。好ましくは、この調整によって、物質及び/又はリガンド/イオン交換体の電荷が零となるか、或いはこれら両方の電荷が同種の電荷(負又は正のいずれか)となる。
特徴Aの(b)における代替的な選択基準は、pH範囲2〜12において物質に対する最大破過容量が、イオン交換リガンドが
(i)物質が正電荷を有する場合にはSP基(対照イオン交換体2a)、及び
(ii)物質が負電荷を有する場合にはQ基(対照イオン交換体2b)
である対応するイオン交換体での物質の破過容量の≧100%(例えば、≧125%又は≧200%又は≧300%又は≧500%又は≧1000%)となるものからイオン交換体を選択することである。
「SP基」という用語は、アリル基と亜硫酸水素塩との反応で得ることができるスルホプロピル基を意味し、SP基としては、−CHCHCHSO 及びそのスルホン酸異性体が挙げられる。
「Q基」という用語は、−OCHCH(OH)CHOCHCH=CHをハロゲンと反応させた後トリメチルアミンと反応させることによって得ることができる第四級アンモニウム基を意味し、Q基としては、−OCHCH(OH)CHOCHCH(OH)CH(CH及び第四級トリメチルアンモニウム基を含有するその異性体が挙げられる。
上記の比較とは、イオン交換体(1)と(2a)及びイオン交換体(1)と(2b)に対して本質的に同じ条件下で実施される測定をいい、pH、温度、溶媒組成、流速等は(1)と(2a)の間及び(1)と(2b)の間で同じである。破過容量は、フロースルー方式で同じ相対濃度の物質で(例えば、c/c=10%、c/cについては実施例を参照)測定される。
「対応するイオン交換体」とは、支持マトリックスが同一であることを意味し、支持材料、ビーズ径、孔径、孔容積、充填法等は同一である。イオン交換体1の1以上の荷電リガンドについての全置換度は対照イオン交換体(2a又は2b)(それぞれ、塩化物及びナトリウムイオンとして測定される)におけるものと本質的に同じである。対イオンも同じにすべきである。スペーサー及びカップリング化学は異なっていてもよい。ある種のカップリング化学は支持マトリックスの架橋を招いて、さらに硬質のマトリックスを生じることがある。この場合には、比較を行う流れの条件はマトリックスが本質的に圧縮されていないレベルで選択される。
典型的には、物質に対する有用な破過容量は、
(a)0.18〜0.25mmol/mlゲルの塩化物イオン容量を有する市販の陰イオン交換体であるQ−Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech社製(スウェーデン、ウプサラ))、及び/又は
(b)0.18〜0.25mmol/mlゲルのナトリウムイオン容量を有する市販の陰イオン交換体であるSP−Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech社製(スウェーデン、ウプサラ))
で該物質が呈する最大破過容量よりも高い。
これら2種類の対照イオン交換体におけるベースマトリックスはビーズ状のエピクロロヒドリン架橋アガロースである。ビーズは45〜165μmの範囲内の直径を有する。球状タンパク質についての排除限界は4×10である。
破過容量はすべて室温(約25℃)で実施された測定値をいう。
工程(ii)における電荷差の減少は、物質の正味電荷を変化させることによって達成できる。リガンドがpH依存性の電荷を有する場合には、上記の変化はリガンドの電荷の変化を伴うものであってもよい。例えば物質とリガンドで同種の電荷を達成するために、リガンドで反対の電荷に切り替えることが望まれる場合には、リガンドは両性でなければならない。
リガンド
イオン交換リガンドは、陰イオン交換リガンドでも陽イオン交換リガンドでもよい。リガンドは、その正味電荷が陽イオン交換リガンドでは負であり、負イオン交換リガンドでは正である限り、両方の電荷を含んでいてもよい。
陰イオン交換リガンドは、典型的には、
(a)アンモニウム基(例えば、第一級アンモニウム、第二級アンモニウム、第三級アンモニウム、第四級アンモニウム及びアミジニウム基)、及び
(b)スルホニウム
から選択される荷電基を含む。
芳香族環に窒素原子が存在する複素環式芳香族基も、「第三級アンモニウム」基という用語に包含される。同様に、かかる複素環式芳香族基のN−アルキル化型も、「第四級アンモニウム」基という用語に包含される。
陽イオン交換リガンドは、典型的には、
(c)カルボキシレート(−COO)、ホスホネート又はホスフェート(それぞれ、−PO 2−、−P(OH)O 及び−OP(OH)O 、−OPO 2−)、スルホネート又はスルフェート(それぞれ、−SO 及び−OSO )、−アリール−O(フェノレート/アリーロレート)等
である。
自由結合(原子価)は、基をベースマトリックスに結合する鎖の一部である炭素に直接結合する。
ミックスモード又はバイモーダル型のイオン交換リガンドが、比較的高いイオン強度で極めて高い破過容量を与え得ることが最近判明した。本願出願人の同時係続中の国際特許出願PCT/EP00/11605(Amersham Pharmacia Biotech AB)及びPCT/EP00/11606(Amersham Pharmacia Biotech AB)(両方とも陰イオン交換リガンド)、並びに2000年7月17日に出願したSE 0002688−0(陽イオン交換リガンド)を参照されたい。また、いわゆる確率論的イオン交換体に焦点を絞り、かつこの出願と並行して出願されている、我々の同時継続SE出願「ミックスモード吸着方法及びミックスモード吸着剤」を参照されたい。これらの出願を、出典明示により本明細書の一部とする。
「ミックスモードリガンド」及び「バイモーダルリガンド」という用語は、結合すべき物質と相互作用する2以上の異なるが共同的な部位を与えることのできるリガンドをいう。これらの部位は官能基及び/種類に関して異なる。
典型的なミックスモードイオン交換リガンドは、工程(i)でイオン交換体に吸着すべき物質と引力的相互作用に関与できる2、3又は4個以上の原子又は基を有する。これらの原子又は基は、好ましくは、荷電原子又は基から7原子以内の距離に位置する。疎水性相互作用及び電子−供与体受容体相互作用が、引力的相互作用の例である。
純然たる疎水性相互作用は、典型的には、リガンドの炭化水素構造と物質の疎水性領域との間で起こる。典型的な疎水性構造には、芳香族構造及び/又は互いに連結した2、3又は4個以上のsp−、sp−及び/又はsp−混成炭素を含む。後者では、各炭素原子は他の炭素原子と結合し、おそらくは1以上の水素原子とも結合する。そこで、この種の好ましい構造は、2、3、4、5又は6以上の炭素原子を含む純アルキル、純アルケニル、純アリール、純アラルキル、純アルキルアリール、純アルケニル等、並びに2以上の自由結合(原子価)を含む対応する基である。
電子供与体−受容体相互作用には、典型的には、リガンドの電子受容性原子又は基と物質の電子供与性原子又は基、或いはその逆の組合せが必要とされる。この種の相互作用としては、水素結合、π−π、電荷移動等が挙げられる。電子供与体受容体相互作用に関する議論については、Karger et al.、「分離科学入門」、John Wiley & Sons (1973)42頁を参照されたい。
電子供与体原子/基の例示的な例は、
(a)ヒドロキシ、エーテル、カルボニル及びエステル(−O−及び−CO−O−)及びアミドのように、自由電子対を有する酸素、
(b)チオエーテル(−S−)のように、自由電子対を有する硫黄、
(c)シアノ、アミン、スルホンアミド、カルバミド、カルバメート、アミジン等を含むアミドのように、自由電子対を有する窒素、
(d)ハロゲン(フッ素、塩素、臭素及びヨウ素)、並びに
(e)sp−及びsp−混成炭素
である。
典型的な受容体原子/基は、金属イオン、シアノ、ニトロ中の窒素のような、電子不足原子又は基であり、またヒドロキシ及びカルボキシにあるHO−、アミド及びアミンにある−NH−、チオールにあるHS−等の陰性原子に結合した水素を含む。
吸着すべき物質とのミックスモード相互作用に関与する原子又は基は、
・荷電原子又は荷電基をベースマトリックスに連結する鎖、
・上記鎖に結合した分枝、又は
・荷電原子又は基(特に陰イオン交換基/リガンドについて)に直接結合した別の置換基
に位置し得る。
電子供与体/受容体の原子又は基は、リガンドをベースマトリックスに連結する鎖に結合した分枝に、荷電原子又は荷電基から7原子以上の距離に存在し得る。かかる場合、完全な分岐は別のリガンドと考えられる。
特に興味深いミックスモード荷電リガンドは、荷電原子又は基の上述の距離内に、チオエーテル(−S−)及び/又は芳香族炭素のようなsp−混成炭素を有する。例えば、本願出願人の係属中の国際特許出願PCT/EP00/11605(Amersham Pharmacia Biotech AB)及びPCT/EP00/11606(Amersham Pharmacia Biotech AB)(両方とも陰イオン交換リガンドについて記載)、並びに2000年7月17日に出願したSE 0002688−0(陽イオン交換リガンド)及びWO996507(Amersham Pharmacia Biotech AB)(陽イオン交換リガンド)を参照されたい。WO9729825(US6,090,288)(Amersham Pharmacia Biotech AB)には、1以上のヒドロキシ及び/又はアミノ/アンモニウム窒素を第一級、第二級又は第三級アンモニウム窒素から2〜3炭素の位置に有するミックスモード陰イオン交換リガンドが開示されている。本特許の方法で潜在的に有用であるミックスモードイオン交換リガンドは、WO9808603(Upfront Chromatography)、WO9600735、WO9609116及びUS5,652,348(Burton等)に記載されている。この段落で参照した全ての出版物は出典明示により本明細書の一部とする。
上記に示したチオエーテル(−S−)において、自由結合(原子価)の各々はsp−又はsp−混成炭素に結合するが、sp−又はsp−混成炭素は、環状構造(芳香族又は非芳香族のいずれでもよい)の一部であっても、一部でなくてもよい。ここでいう「チオエーテル」という用語は、チオフェン、並びに環原子として硫黄を含む他の複素環式芳香族環を包含する。
上記に示した芳香族環構造は、1以上の芳香族環、例えば、フェニル、ビフェニル又はナフチル構造及び単環、縮合環及び/又は二環式構造を含む他の芳香族環系を含んでもよい。芳香族環は、複素環式つまり1以上の窒素、酸素又は硫黄を含むものでもよく、置換基を有していてもよい。置換基は、上述のような純然たる炭化水素基、及び/又は電子供与体又は受容体の原子又は基、例えば水素結合及び/又は他の電子供与体−受容体相互作用を可能ならしめるものを含有してもよい。例示的な芳香族環構造は、ヒドロキシフェニル(2−、3−及び4−)、2−ベンズイマドゾイル、メチルチオキシフェニル(2−、3−及び4−)、3−インドリル、2−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル、アミノフェニル(2−、3−及び4−)、4−(2−アミノエチル)フェニル、3,4−ジヒドロキシフェニル、4−ニトロフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル、4−イミダゾリル、4−アミノピリジン、6−アミノピリミジル、2−チエニル、2,4,5−トリアミノフェニル、4−アミノトリアジニル、4−スルホンアミドフェニル等である。
好ましい陰イオン交換リガンド及び好ましい陽イオン交換リガンドについて対応する酸のpKaは3以上の範囲にあり、好ましくは11以下であり、好ましくはイオン交換リガンドを適切に脱荷電できるように4〜9の範囲内にある。
特に興味のある陰イオン交換リガンドはpH依存性の電荷を有し、≦12.0のpKa値(例えば≦10.5)を有する。これは、これらのリガンドが、好ましくは第一級又は第二級アンモニウム基又は第三級アンモニウム基から選択される荷電基を含むことを意味する。窒素が芳香族構造の部分である第三級アンモニウム基及びそのα−又はβ−位に芳香族炭素を有するアンモニウム基は、8以下のpKa値を有してもよい。通常、陰イオン交換リガンドのpKaは≧3であり、例えば≧4である。
特に興味のある負荷電リガンドはpH依存性の電荷を有する。対応する酸についてのpKa値は通常≧3(例えば≧4)である。かくして、これらの種類のリガンドは、カルボキシレート(−COO)、ホスホネート又はホスフェート(それぞれ、−PO 2−、−P(OH)O 及び−OP(OH)O 、−OPO 2−)、−アリール−O(フェノレート/アリーロレート)並びに他の弱酸基から選択される荷電基を含むべきである。
ただし、これは、
・強酸(pKa≦3、例えば≦2又は≦0)(対応する塩基は陽イオン交換リガンドとして作用する)、及び
・弱酸(pKa≧10、例えば≧12)又はpHに依存しない電荷を有するリガンド
に対応するイオン交換リガンドも、我々の新しい革新的な脱塩方法に用いるイオン交換体中にそれらを導入したときに、利点を有するであろうことを除外するものではない。他のイオン交換基については、これらの利点は脱塩すべき物質の性質、例えば、その等電点及びイオン交換体との相互作用の強さ等に依存する。
リガンドのpKa値は、問題とするリガンドの50%が滴定されたときのpHとして得られる。
確率的イオン交換体
本発明の方法で使用する適当なイオン交換体は、2種以上の異なるリガンド(リガンド1、リガンド2等)を含んでいてもよい。この場合、リガンドのうちの少なくとも1つ(リガンド1)は、他のリガンド(例えば、リガンド2)とは異なるイオン交換リガンドである。この種のイオン交換体は確率的と呼ばれ、この出願と並行して提出した表題「ミックスモード吸着方法及びミックスモード吸着剤」のSE出願に十分記載されている。このSE出願は出典明示により本明細書の一部とする。
リガンド1は、一般にイオン交換体について上述したものと同じ種類の構造部分を有し得る。リガンド1は、上述のようなpH依存性の電荷を有していても、有していなくてもよい。
リガンド2はイオン交換リガンドでもよいし、或いは脱塩すべき物質と疎水性相互作用及び/又は電子供与体−受容体相互作用のみで相互作用するリガンドであってもよい。リガンド2が荷電している場合、リガンド1と同じ又は反対の電荷を有し得る。
リガンド1とリガンド2は、吸着すべき物質との疎水性及び/又は電子供与体−受容体相互作用を与える原子又は基の存在及び組合せに関して異なっていてもよい。上記を参照されたい。
リガンド2は、液体(I)によって与えられる条件下で、非荷電であってもよい。主として2種類の非荷電リガンドがある:即ち
(a)pHスイッチによって荷電し得るリガンド(クラスI)、及び
(b)pHスイッチでは荷電できないリガンド(クラスII)
である。
クラスIは、pH依存性の電荷を有することができる非荷電型リガンドを含む。上記を参照されたい。
クラスIIリガンドは、上述の通り、疎水性相互作用及び電子供与体−受容体相互作用を起こすことのできる1以上の構造要素を含有する。典型的なクラスIIリガンドにおいては、上記で定義したような2、3又は4以上の電子供与体−受容体原子又は基がある。各原子又は基は、電子供与体−受容体原子又は基から、互いに直接連結した2、3又は4個以上のsp−混成炭素だけ離れている。
クラスIIのリガンドは、ベースマトリックから突き出ていてかつ前段落の定義に適合する基の最も外側の部分として定義される。「最も外側」という用語は上記で定義した電子供与体−受容体相互作用又はアルキル基を伴う疎水性相互作用に関与できる最も外側の原子から1〜7原子の距離にある原子を意図する。
かくして、第二のカテゴリーの各リガンドは、そのリガンドが電子供与体−受容体相互作用及び/又は疎水性相互作用を可能にする1以上の原子を含むという条件で、イオン交換体におけるリガンド2として使用することができる。存在し得る原子及び/又は基の例は、フェニル基を含み、置換又は未置換であってもよいアリール、純粋なアルキル及び純粋なアルキレン(C以上で好ましくはC以下)、チオエーテル、エーテル、非荷電アミノ、ヒドキシ、アミド(スルホンアミド、カルバミド、カルバメート等を含むカルボキサミド)、ニトロ、スルホン、非荷電カルボキシ等である。この種類のリガンドにおいて、上記原子又は基は、直接結合した2個以上のsp−混成炭素原子によって互いに隔てられていることが多い。
確率的(stochastic)イオン交換体における各種リガンドは、支持マトリックス又はその一部で互いに多少なりともランダムに存在し得る。導入方法に応じて、リガンド量の比は変動し得るが、マトリックスの実質的な部分において2種以上のリガンドについて常に0.01〜100でなければならず、0.02〜50が好ましい。支持体内で各種リガンドの不均一又は層状の分布を達成するため、WO9839364(Amersham Pharmacia Biotech AB)に概説された一般原理を用いることができる。これら二つの特許文献における主な目的である鋭い層が導入されないように、リガンド形成試薬の反応性、拡散率及び濃度に関してしかるべき配慮を取らねばならない。WO9839364は出典明示により本明細書の一部とする。
確率的イオン交換体では、以下の事項が当てはまる。
・同一の試薬及び条件を用いて(例えば同一条件で並列に)導入されるリガンドは、たとえそれらが構造的に異なっていたとしても、同一の種類であるとみなされる。これは、特に異なる異性体が同時に導入される場合に当てはまる。
・残留基(未反応基)を最小限にするために大過剰の誘導化試薬を使用した後でも残留基(未反応基)であるリガンドは存在しないとみなされる。典型的には、残留基は、誘導化される基の出発量と比較して10%以下(例えば5%以下)のモル量で存在する。
特に興味がある確率的イオン交換体は、リガンド1として強イオン交換リガンドを、かつリガンド2としてpHスイッチによって荷電/脱荷電し得るリガンドを含む。2つの典型的な組合せは、
(a)リガンド1としての強陽イオン交換リガンドとリガンド2としての弱陰イオン交換リガンドとの組合せ、又は
(b)リガンド1としての強陰イオン交換リガンドとリガンド2としての弱陽イオン交換リガンド
である。
この文脈において、強陽イオン交換リガンドはpKa<3〜4の対応する酸を有する。強陰イオン交換リガンドの例は、第四級アンモニウムリガンド及び、pKa>10(例えば≧11又は≧12)の陰イオン交換リガンドである。他の種類のイオン交換リガンドは弱と考えられる。
他の興味ある組合せは、例えば、同じベースマトリックス上で同様なpKaをもつ2種類の異なる弱陰イオン−又は陽イオン−交換リガンド、又は同じマトリックスに結合した弱陰イオン−及び弱陽イオン−交換リガンドを有する確率的イオン交換体である。リガンドは、pKaの差が2、3又は4pH単位よりも小さく又は大きくなるように選択できる。
異なる種類のリガンドを組合せる最大の利点は両性物質の脱塩に関する。典型的に、リガンドは、一方のリガンドは荷電される(リガンド1)が、もう一方(リガンド2)は工程(i)では荷電せずに、工程(ii)で解離する物質と同じ電荷で荷電されるようになるように組み合わされる。これは、適切な組合せが脱塩すべき物質の等電点(pI)に依存するという結果になる。さらに下記を参照されたい。
支持マトリックス/ベースマトリックス
支持マトリックスはベースマトリックス及びベースマトリックスにリガンドを結合する任意のスペーサーを含む。
ベースマトリックスは有機及び/又は無機材料に基づく。
ベースマトリックスは、好ましくは親水性であって、水に不溶性でかつ多少膨潤性であるポリマーの形態にある。親水性になるように誘導化された疎水性ポリマーはこの定義に含まれる。適当なポリマーは、例えば、アガロース、デキストリン、セルロース、でんぷん、プルラン等の多糖類系のポリヒドロキシポリマー、並びにポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ(ヒドロキシアルキルビニルエーテル)、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)及びポリメタクリレート(例えば、ポリグリシジルメタクリレート)、ポリビニルアルコール並びにスチレン及びジビニルベンゼン系のポリマー、及び上述のポリマーに相当する2以上のモノマーが含まれるコポリマーのような完全に合成されたポリマーである。水に可溶性のポリマーは、例えば、架橋及び吸着又は共有結合によって不溶性となるように誘導化できる。OHに転換し得る基を有するモノマーの重合によって或いは例えば親水性ポリマーのような適当な化合物の吸着による最終ポリマーの親水性化によって、疎水性ポリマーに(例えば、モノビニル及びジビニルベンゼン上に)親水性基を導入することができる。
ベースマトリックに使用される適当な無機材料はシリカ、酸化ジルコニウム、黒鉛、酸化タンタラム等である。
好ましいマトリックスは、シラン、エステル、アミド基及びシリカに存在する基のように、加水分解に不安定な基を含まない。これは特に、使用される液体に直接接触する基に関して当てはまる。
ベースマトリックに使用される適当な無機材料はシリカ、酸化ジルコニウム、黒鉛、酸
マトリックスは多孔質でも、非多孔質であってもよい。これは、マトリックスが、除去すべき物質に対して完全又は部分的に浸透性(多孔質)であっても、或いは完全に非浸透性(非多孔質)であってもよいことを意味し、マトリックスは除去すべき物質に対して0.40〜0.95の範囲内のKavを有しているべきである。ただし、これは、Kavがさに低くてもよいこと(例えば0.10まで、又は例えば増量剤を有する特定のマトリックスではさらに低くてもよい)を除外するものではない。例えば、WO9833572(Amersham Pharmacia Biotech AB)を参照されたい。
本発明の特に興味深い実施形態では、マトリックスは、1〜1000μm、好ましくは高速用途には5〜50μm、分取用には50〜300μmの範囲の粒径をもつ不規則又は球状の形態にある。
これに代えて、マトリックスは、管その他の種類の容器、多孔質プラグ、多孔質膜又はフィルターのように、一体構造であってもよい。
マトリックスは、工程(i)で使用する液体よりも密度の大きいビーズ/粒子の形態であってもよい。この種類のマトリックスは、特に、流動床クロマトグラフィー用及び様々な回分法(例えば攪拌タンク中)での大規模操作に特に応用できる。流動床法はWO9218237(Amersham Pharmacia Biotech AB)及びWO9200799(Kem−En−Tek)に記載されている。
「親水性マトリックス」という用語は、マトリックスの接近可能な表面が、水性液体はマトリックスに浸透できるという点で親水性であることを意味する。典型的には、親水性ベースマトリックスの接近可能な表面は、例えば酸素及び/又は窒素原子を含む複数の極性基を露出する。かかる極性基の例は、ヒドキシル、アミノ、カルボキシ、エステル、低級アルキルのエーテル((−CHCHO−)H等、ただしnは整数である。)である。
スペーサーはベースマトリックスから、上記で定義したリガンドへと伸びる。
かかるスペーサーは伝統的なイオン交換体におけるように従来型であり、かくして、上述の通り、線状、分岐、環状飽和、不飽和及び芳香族の炭化水素基(例えば、炭素原子数1〜20(例えば1〜10)のもの)を含んでもよい。これらの基は、上述のタイプの純粋な炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ及びアリールオキシ並びに対応するチオ類似体、及び/又はアミノ基を含んでもよい。炭化水素基における炭素鎖は、1箇所以上でエーテル酸素及びチオエーテル硫黄で中断されていてもよい。また、アミド及びケトン基におけるようなカルボニル基並びに加水分解に対して比較的安定な基であってもよい。酸素、硫黄及び窒素から選択される1個以下の原子が好ましくは1つの同じsp−混成炭素原子に結合する。
スペーサーは、上述のように例えば水素結合への関与等によって、イオン交換体への所望の物質の結合を促進する1以上の電子供与体又は受容体の原子又は基を与えてもよいことは明らかである。便宜上、この種類の原子又は基はスペーサーの一部とみなす。また、1以上のリガンドを1つの同じスペーサーに結合してもよい。上記の「分岐」を参照されたい。
リガンド密度
本発明で使用する吸着剤のイオン交換リガンドのレベルは、通常0.001〜4mmol/mlマトリックスの範囲内(例えば0.002〜0.5mmol/mlマトリックス)で普通選択され、0.005〜0.3mmol/mlマトリックスが好ましい。好ましい範囲は、特に、マトリックスの種類、リガンドの種類、吸着すべき物質によって決まる。「mmol/mlマトリックス」という表現は、水で飽和した完全に沈降したマトリックスをいう。リガンド密度の範囲は、十分にプロトン化/荷電した形態のマトリックスがナトリウムイオン及び/又は塩化物イオンのような普通の対イオンを結合できる容量をいい、特に、存在する陰イオン及び/又は陽イオンリガンドに依存する。
最良の形態
本発明の様々な最良の実施形態は関心物質に応じて変わる。これまでに判明した最良の形態は実施例で提示する。
吸着/脱着
吸着及び/又は脱着工程(工程(i)及び工程(ii))は、一体構造の形態或いは充填又は流動床の形態の粒子としてのイオン交換体マトリックスによるクロマトグラフィー法として実施できる。粒状マトリックスについては、これらの工程は、液体中で多少なりとも完全に分散した粒子による回分式モードで行ってもよい。
工程(i)及び(ii)で使用する液体は水性つまり水であり、水混和性の溶媒と混合したものであってもよい。
吸着(工程(i))
吸着の際に、荷電物質を含有する液体試料は、例えばイオン交換によって、吸着(結合)する条件下で上記で定義したイオン交換体と接触させる。換言すれば、物質は、イオン交換リガンド/イオン交換体とは反対に荷電される1以上の基又は原子を有する。
好ましくは、物質の正味電荷は工程(i)の間イオン交換体の正味電荷とは反対である。水性液体中に存在する両性物質については、これは、陰イオン交換条件のpHが≧pI−0.5、好ましくは≧pI、陽イオン交換条件のpHが≦pI+0.5、好ましくは≦pIであることを意味する。
本発明の利点の一つは、従来のイオン交換体(例えば、上記で定義した対照陰イオン交換体)で慣用されてきたものよりも高いイオン強度でも吸着/結合を実施できることである。絶対値では、これは、本発明の吸着は15又は20mS/cm以上又は以下のイオン強度で実施できることを意味する。イオン強度は30mS/cmを超えてもよく、場合によっては40mS/cmを超えることもある。有用なイオン強度はしばしば≧0.1MのNaCl濃度(純水)に相当し、例えば≧0.3M又は≧0.5Mであることさえある。用いる伝導率/イオン強度はリガンドの組合せ、マトリックス上のそれらの密度、結合すべき物質及びその濃度等に依存する。
脱着(工程(ii))
脱着プロセスつまり液体(II)による液体(I)の置換は、所望の物質とリガンドとの相互作用を緩和するためのpH変化を含む。同時に、イオン強度又は塩濃度を低下、好ましくは存在する唯一の塩が緩衝性成分及び必要に応じてそれらの非緩衝性対イオンとなるレベルにまで低下させる。
pH変化による相互作用の低下は、(a)イオン−イオン引力相互作用によって所望の物質と結合するリガンドの電荷を減少させること、及び/又は(b)反対電荷を有するリガンドに結合する所望の物質の基の電荷を減少させることを含んでもよい。pHの変化は、工程(ii)でリガンドと脱塩すべき物質が同じ電荷をもつように、何度も行うことができる。
工程(ii)におけるpH変化は、工程(i)における液体(I)のイオン強度に比べて大幅に低下したイオン強度が必要とされることを意味する。こうして、物質を、低濃度の塩(例えば≦100mM、さらには≦10mM)の溶液中に濃縮された形態で溶出することができる。濃度因子は、「発明で解決しようとした課題」に記載したものと同程度でよい。
吸着工程を陰イオン交換条件下で実施した場合には、工程(ii)における適切なpHはpI+2未満又はpI+1未満、好ましくはpH≦pIである。
吸着工程を陽イオン交換条件下で実施する場合には、工程(ii)における適切なpHはpI−2超又はpI−1超、好ましくはpH≧pIとすべきである
前二項における用語pIとは、脱着(脱塩)すべき物質のpIをいう。
イオン強度の変更に使用される典型的な塩は、アルカリ金属又はアンモニウムイオンの塩化物、リン酸塩、硫酸塩等から選択される。
pHの変更に使用される典型的な緩衝性成分は関与するリガンドの種類に依存する。例えば、イオン交換リガンドが陽イオン性である場合には、緩衝性酸−塩基対は、好ましくは、緩衝性成分がリガンドに結合できない酸−塩基対、即ち、ピペラジン、1,3−ジアミノプロパン、エタノールアミン等から選択される。同様に、イオン交換リガンドが陰イオン性である場合に緩衝性酸−塩基対は、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等である。
好ましい緩衝性酸塩基対は、揮発性及び/又は非荷電である1種以上の緩衝性成分(酸又は塩基)を含有する。これは、緩衝性成分を工程(ii)の後で蒸発によって簡単に除去できることを意味する。揮発性緩衝性成分は典型的には25℃で≧1mmHg(例えば、≧10mmHg)の蒸気圧を有する。
脱着は、液体(II)の極性を吸着液体(I)の極性よりも低い値に調整することによって促進できる。これは、液体IIの中に水混和性及び/又は低親水性の有機溶媒を配合することによって達成できる。かかる溶媒の例は、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アクリロニトリル等である。液体IIの極性の低下(水性液体Iに比較して)は恐らく脱着を促進し、マトリックスからの物質の解離に必要なイオン強度を減少させる。好ましくは、有機溶媒は、25℃での蒸気圧が≧1mmHg(例えば、≧10mmHg)の揮発性である。
脱着は、使用されるリガンドの1以上の可溶性構造類似体を配合することによっても促進できる。液体(II)中の構造類似体の濃度は水性液体(I)中のその濃度よりも高くすべきである。「リガンドの構造類似体」又は「リガンド類似体」は、リガンドと構造的類似性を有し、可溶性の形態であり、リガンドと除去すべき物質との結合を阻害することができる物質である。構造的なリガンド類似体を脱着に用いる場合には、有機溶媒について定義したように、中性で好ましくは揮発性であるべきである。
pH変化による脱着は、イオン強度の増加(塩の添加)によって(ただし、液体(I)のイオン強度の半分を超えることを条件とする。)も促進できる。
液体(I)から液体(II)への変更は1以上の段階(段階的勾配)で又は連続的に(連続勾配で)達成できる。マトリックスと接触する液体の様々な変数は個々に又は組合せて変更できる。これは、他のpH値及び/又はイオン強度で溶出する他の吸着物質を含まないように、所望の物質を何度でも溶出できることを意味する。
確率的イオン交換体を利用する重要な変形例
変形例1:リガンド1はpH依存性の負電荷を有する陽イオン交換リガンドであり、リガンド2は荷電し得ないか又は相当部分が工程(i)のpHでは未荷電である荷電可能な塩基である。リガンド1に相当する酸のpKaはリガンド2(荷電可能な場合)に相当する酸のpKaよりも低い。吸着される物質は、リガンド2のpKaよりも高いpIを有する。液体(I)のpHは、物質が正の正味電荷を有し、イオン交換体に吸着するように選択される。pHを下げることによって、物質及び恐らくまたリガンド2はプロトン化されて、正電荷が増す。これは、中程度のpHで物質の解離を促進して、液体(II)中の低い塩濃度での脱着を可能にする。
変形例2:リガンド1はpH依存性の正電荷を有する陰イオン交換リガンドを含んでおり、リガンド2は完全に荷電し得ないか又は相当部分が工程(i)のpHでは未荷電である荷電可能な酸である。リガンド2のpKaはリガンド1のpKaよりも高い。吸着される(脱塩される)物質のpIはリガンド1のpKa及びリガンド2のpKaのいずれよりも低い。液体(I)(工程(i))のpHは、物質が負の正味電荷を有し、リガンド2が本質的に未荷電のままで、リガンド1が正電荷を有するようにする。こうして、物質は工程(i)で吸着される。pHを増加させると、リガンド2は負に荷電されるが、これは液体(II)中の低い塩濃度で物質が脱着することを意味する。
回収率
本発明の脱塩法は吸着された物質の高い回収率、例えば80%以上又は90%以上のような60%以上の回収率(工程(i)と工程(ii)との比)を可能にする。回収率は、95%を超え、本質的に定量的とすることができる。典型的には、イオン交換体に添加する物質の量は、物質に対するイオン交換体の全結合容量の10〜80%の範囲内(例えば、20〜60%)にある。
液体(I)から除去される物質
本発明は主として、上記で定義したリガンドと相互作用できる幾らかの構造ユニットを有する高分子量物質のためのものである。適切な物質は1000ダルトン以上の分子量を有し、生物有機及び高分子である。1分子当りの荷電基の数は典型的に1以上であり、pHに依存する。分子量及び電荷の数に関する詳細は「技術分野」の項に記載されている。物質は両性でもよい。典型的に、物質はペプチド構造(例えば、オリゴ−又はポリペプチド構造)、核酸構造、炭水化物構造、脂質構造、ステロイド構造、アミノ酸構造、ヌクレオチド構造、その他荷電又はpH−スイッチによって荷電し得る生物有機構造から選択される構造を含む。
物質は水性媒体に溶解しても、或いは小さな生物粒子の形態(例えばコロイドディメンションのもの)でもよい。生物粒子の例示的な例は、ウイルス、細胞(細菌その他の単細胞生物を含む)並びに細胞凝集体及び細胞小器官を含む細胞の部分である。
本発明は特に、関心物質を高濃度の塩と共に含む生物学的流体から得られる水性液体に適用できると思料される。
上述の種類の生物有機物質を含む、高イオン強度の典型的な液体は、例えば細胞培養からの発酵ブロス/液、及びそれから得られる液体である。細胞は、哺乳動物のような脊椎動物、又は無脊椎動物(例えば、チョウ及び/又はそれらの幼虫からの細胞のような培養昆虫細胞)、又は微生物(例えば、培養真菌、細菌、酵母等)に由来するものでもよい。また、植物細胞その他の好ましくは培養生体細胞も包含される。
液体(I)が不都合な異物を含有する場合には、流動床技術を利用することが有益であろう。これは特に、液体(I)が(a)細胞の培養からの発酵ブロス/液、(b)溶菌細胞を含む液体、(c)細胞及び/又は組織のホモジネートを含む液体、並びに細胞から得られるペーストに由来するときに当てはまる。
本明細書に記載した革新的な脱塩法は、第二〜第四の目的で記載したように使用することができる。
以下、本発明を実施例で例示する。本発明は特許請求の範囲でさらに定義される。
1.イオン交換体の合成
リガンド形成性化合物を表面に固定化するための方法は種々存在し[Hermanson,G.T., Mallia,A.K. & Smith,P.K.,(Eds.)、「アフィニティーリガンドの固定化技法」、Academic Press, INC, 1992.]、その多くは我々の目的に応用できる。以下、我々が新系列の弱陽イオン交換体(カルボン酸系)の調製に採用してきた方法を、実施例として説明する。ベースマトリックスとして、我々は、エピクロルヒドリンで架橋したビーズ状アガロースであるSepharose 6 Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech社製(スウェーデン、ウプサラ))を用いた。
1.1.アリルグリシジルエーテルによるSepharose 6 Fast Flowの活性化
活性化は、基本的にWO97/29825(Amersham Pharmacia Biotech AB)に記載の通り、アルカリ性条件下でアリルグリシジルエーテルをSepharose 6 Fast Flowと反応させることによって実施される。適当な反応容器中で、Sepharose 6 Fast Flow80gをNaBH0.5g、NaSO13g及び50%(重量/重量)NaOH水溶液40mLと混合した。混合液を50℃で1時間撹拌し、アリルグリシジルエーテル100mLを加えた。懸濁液を50℃でさらに18時間撹拌した。混合液を濾過して、ゲルを蒸留水500mL、エタノール500mL、蒸留水200mL、0.2M酢酸200mL及び最終的に蒸留水500mLで順次洗浄した。
滴定分析の結果、アリル基0.3mmol/mLゲルの置換度であった。以下、アリル誘導体化したSepharose 6 Fast Flowを生成物Iと呼ぶ。
1.2.カルボキシル基の導入(方法1)
カルボキシル基を含有する反応性求核試薬(例えばメルカプトプロピオン酸)を生成物Iとカップリングすることによって、カルボキシル基を導入することができる。また、アルカリ性条件下でのクロロ酢酸によるSepharose 6 Fast Flowの従来のカルボキシ−メチル化によっても達成できる。得られる生成物は、それ自体で陽イオン交換体として使用できるし、或いはアミド結合を介して他の陽イオン交換体を合成するための中間体として役立てることもできる。以下の手順は、生成物I(アリル誘導体化Sepharose 6 Fast Flow)にメルカプトプロピオン酸をカップリングするため一実施例を提供する。
1.2.1.生成物I(アリル−Sepharose 6 Fast Flow)の活性化
典型的な手順では、100mLの生成物I、酢酸ナトリウム4g及び蒸留水100mLの撹拌懸濁液に、持続的な黄色が得られるまで臭素水を添加した。かすかな黄色が消失するまで、懸濁液にギ酸ナトリウムを添加することによって、過剰の臭素の還元を達成した。反応混合液を濾過し、アリル誘導体化ゲルを蒸留水500mLで洗浄した。
1.2.2.活性化生成物Iとメルカプトプロピオン酸のカップリング
活性化ゲル(生成物I)を反応容器に移し、次いでメルカプトプロピオン酸17.5mL(アリル基当たり6当量)及び4M NaCl50mLの混合液を加えた。混合液を活性化ゲルに加える前に混合液のpHを、50%(重量/重量)NaOH水溶液でpH11.5に調整した。懸濁液を50℃で18時間撹拌して、次いで濾過した。ゲルを蒸留水500mLで洗浄して、そのカルボキシル基含量を滴定で測定した。COOH基約0.29mmol/mLゲルの置換度が得られた。この生成物を生成物IIと呼ぶ。
1.3.カルボキシル基の導入(方法2)
これは、固体支持体にアミド結合を介してリガンド形成性化合物(アミノ及びカルボキシル官能基を含む)をカップリングするための代替法を提供する。この手順は2つの工程を含み、以下で説明する。
1.3.1.N−ヒドロキシコハク酸イミドによるメルカプトプロピオン酸−Sepharose 6 Fast Flow(生成物II)の活性化
100mLのメルカプトプロピオン酸−Sepharose 6 Fast Flow(生成物II)を1M NaCl300mL、0.1M HCl500mL、50%アセトン水溶液500mL及びアセトン500mLで順次洗浄した。ゲルを沈降させて、上澄みを吸引除去した。次いで、ゲルを定量的に反応容器に移し、次いでアセトン80mL中N−ヒドロキシコハク酸イミド15.2gの溶液と、別のアセトン80mL中ジシクロヘキシルカルボジイミド29.9gの溶液を加えた。スラリーを30℃で18時間撹拌した。混合液を濾過し、ゲルを約8時間かけてイソプロパノール150mL×10で洗浄(重力流による)した。
生成物IIの活性化度をNHOHとの反応で評価したところ、約75%であった。得られた生成物(NHS活性化メルカプトプロピオン酸−Sepharose 6 Fast Flow)を生成物IIIと呼ぶ。
1.3.2.生成物IIIとチエニルセリン(リガンド11)のカップリング
ここで概説する手順は、リガンド形成性化合物をアミド結合を介してカップリングする一般法の実施例を提供する。チエニルセリンの溶液(蒸留水8mL中2g)を1M NaHCO8mL及びエタノール10mLと混合し、50%NaOH水溶液を注意深く添加してpHをpH8.5に調整した。ガラス濾過器上で25mLの生成物III(NHS活性化メルカプトプロピオン酸−Sepharose 6 Fast Flow)を氷冷1mM HCl溶液50mLで速やかに洗浄した。次いで、三角フラスコにゲルを移し、チエニルセリンの溶液を加えた。次いで、反応混合液を穏やかな速度で室温で18時間振盪した。
反応混合液を濾過し、ゲルを蒸留水100mL、エタノール50mL、0.25Mエタノールアミン水溶液50mL、蒸留水50mL、1M NaCl50mL及び最後に蒸留水50mLで順次洗浄した。チエニルセリンのカップリング効率は硫黄元素分析で約70%であると測定され、それはゲル1mL当たり0.15mmolのチエニルセリンの置換度に相当する。脱塩用の陽イオン交換体の大半は、この方法で調製した。
2.クロマトグラフィー
この実験では、2種類の精製タンパク質、即ちヒト免疫グロブリン(IgG)及びウシ血清アルブミン(BSA)を用いて、2つの重要なパラメーターに関して新系列の脱塩用陽イオン交換体を特性決定した。その2つのパラメーターとは、本発明の陽イオン交換体に添加したタンパク質の高塩条件下での破過容量(Qb10%)及び低塩条件下での回収率であった。IgGは、緩衝性成分に加えて比較的高濃度の塩(0.25M)を含有する移動層を用いて、pH4.5で結合させた。IgGは、次いでpH7.0に調整した0.10Mリン酸緩衝液で溶出した。BSAは、pH4.0で同じく高塩条件下(以下の緩衝液を参照)で結合させ、IgGの場合と同様に、pHを7.0に上昇させて溶出した。新系列の脱塩用リガンドについての破過容量及びそれらに結合したタンパク質の回収率の測定に用いた手順については、以下に概説する。
2.1.「高塩」条件下での破過容量(Qb 10%
陽イオン交換リガンドが脱塩法に適しているか否かの主な判定基準の一つは、同一条件下で操作される対照イオン交換体と比較して比較的高濃度の塩(例えば0.25M NaCl)の存在下でのタンパク質についての結合容量である。これは、以下に記載の先端分析(frontal analysis)の方法を用いて測定される。
2.1.1.実験
緩衝液
緩衝液1:20mM酢酸ナトリウム、0.25M塩化ナトリウム、pH4.0
緩衝液2:20mM酢酸ナトリウム、0.25M塩化ナトリウム、pH4.5
緩衝液3:100mMリン酸ナトリウム、pH7.0(BSA及びIgGの溶出用)
タンパク質溶液
1.BSA:緩衝液1中4mg/mL
2.IgG:緩衝液2中4mg/mL
全ての緩衝液及びタンパク質溶液は、使用前に、0.45μmのMillipore Millex HAフィルターで濾過した。
クロマトグラフィー系
全ての実験は、Unicorn 3.1ソフトウエアを装備したAekta Explorer 100クロマトグラフィー系を用いて室温で実施した。試料は150mLスーパーループからカラムに加えた。終始、1mL/分(約300cm/時)の流速を用いた。溶出液を10mmフローセルを用いて280nmにおける吸光度測定により連続的にモニターした。
2.1.2.先端分析
各プロトタイプの陽イオン交換体をHR5/5カラム(充填ベッド体積=1mL、Amersham Pharmacia Biotech AB社製)に充填し、適切なpH及び塩濃度の緩衝液で平衡化した。系のボイド体積は、非結合条件下でカラムに適当なタンパク質の溶液を添加することによって測定した。溶出液のA280が、添加したタンパク質溶液のA280の10%に達するのに要する時間を、系のボイド体積(分単位で表される)とする。
適切な緩衝液(緩衝液1又は2)で平衡化したカラムに、適切な平衡緩衝液(上記参照)に溶解した試料タンパク質を1mL/分(即ち300cm/時)の流速で(例えば150mLスーパーループから)連続的に供給した。試料の添加は、溶出液のA280がカラムに加えた試料のA280の10%レベルに達するまで継続した。こうして得たデータに基づいて、添加タンパク質の濃度の10%レベルにおける充填ゲルの破過容量(Qb10%)を計算できる。こうして得られた結果は、脱塩のための数多くの候補をスクリーニングするための基礎をなし、以下、2種類のタンパク質、即ち、ウシ血清アルブミン(BSA)及びヒト免疫グロブリン(IgG)について例示する。
評価
最大吸光度の10%レベルでの破過(Qb10%)は以下の関係式を用いて計算した。
Qb10%=(TR10%−TRD)×C/V
R10%=最大吸光度の10%での保持時間(分)
RD=系のボイド体積(分)
C=供給タンパク質の濃度(4mg/mL)
=カラムの充填ベッド体積(mL)
2.2.「高塩」陽イオン交換リガンドに結合したタンパク質の回収率
陽イオン交換リガンドは、それらに結合したタンパク質の低塩条件下での回収率に関してもスクリーニングする。これは、高塩条件下での比較的高い吸着容量とそれらに適用されるタンパク質の低塩条件下での高度又は定量的な回収率を兼ね備えた正しい種類のリガンドを選択するための付加的で重要な判定基準である。回収率は、以下に概説する通り測定した。
2.2.1.実験
カラムの種類、充填ベッド体積、緩衝液、タンパク質溶液、流速及び器具の種類に関する詳細については、2.1.1.及び2.1.2.の項で概説した。BSAについては、カラムを緩衝液1で平衡化し、結合したタンパク質を緩衝液3で溶出し、IgGについては、カラムを緩衝液2で平衡化し、結合したタンパク質を緩衝液3で溶出した。
適切な緩衝液(緩衝液1又は2)で平衡化したカラムに、50mLスーパールーフから、タンパク質の溶液(BSA又はIgG)をその破過容量の30%に相当する量が添加されるまで、添加した。次いで、カラムを2ベッド体積の平衡緩衝液で洗浄し、結合したタンパク質を適切な脱着緩衝液(緩衝液3)で溶出した。溶出したタンパク質を20mLメスフラスコに定量的に収集し、その体積及び280nmにおける吸光度(BSA及びIgGについて)を正確に測定した。それぞれの溶出試料における全吸光度に基づいて、溶出液中のタンパク質の量を適切な検量線(以下参照)を用いて計算した。
2.2.2.評価
各タンパク質の標準溶液を、カラム平衡緩衝液中で0〜10mg/mLの濃度範囲で調製した。一連の希釈液のA280(BSA又はIgG)を測定して、x軸上にタンパク質濃度(mg/mL)、y軸上に吸光度を取って検量線を作製した。それぞれの検量線の直線式及び回帰係数を計算した。これらの標準曲線に基づいて、溶出試料中のタンパクの濃度(mg/mLで)を、該試料のA280の測定によって以下の関係式を用いて計算した。
=A/ε・b
:溶出試料中のタンパク質濃度(mg/mL)
A:吸光度(A280
ε:特定の波長でのモル吸光率(M−1cm−1
b:セル光路長(cm)
次いで、以下の関係式を用いて、結合タンパク質の回収率を計算する。
回収率(%)=C・V/C・V
:溶出タンパク質試料の体積(mL)
:添加した試料中のタンパク質濃度(mg/mL)
:添加した試料の体積(mL)
結果
1.高塩条件下での破過容量
一連の代表的な脱塩用陽イオン交換リガンドの破過容量及び回収率について得られた結果を表1にまとめた。表1に示す実施例は、種々のリガンドの幾つかの特異的な性質を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。大多数のこれらの新しい陽イオン交換体のリガンド置換度は約0.18〜0.20mmol/mL充填ゲルであった。少数の交換体では、0.27mmol/mL充填ゲルであった。対照陽イオン交換体として、そのリガンド濃度がこの新系列の陽イオン交換体と同じ範囲(即ち、0.18〜0.25mmol/mL充填ゲル)にある市販のSP Sepharose 6 Fast Flowを使用した。結果は以下の傾向を示す。
1.新しい陽イオン交換リガンドは、対照陽イオン交換体SP Sepharose 6 Fast Flowに比べて、2種類のタンパク質両方に対して格段に高いQb10%を有する。SP Sepharose 6 Fast FlowでのQb10%値は、BSA及びIgGに対して、それぞれ2.6mg/mL及び0.8mg/mLであった。
2.リガンド13はBSAに対して最大値(57mg/mL)を与え、リガンド1はIgGに対して最大値(33mg/mL)を与えた。これらの値は、上記2種類のリガンド(13及び1)で、対照陽イオン交換体(SP Sepharose 6 Fast Flow)に比べて、BSA及びIgGについてそれぞれ2192%及び4125%の破過容量の増加に相当する。
3.以下に示す17種類のリガンドの全てで、対照陽イオン交換体に比べて、2種類のタンパク質両方に対して大幅に高いQb10%を示した。これは、これらのリガンドが将来の脱塩用リガンドの構築のための基礎となり得ることを示す。
4.幾つかのリガンドはIgGに対して比較的低いQb10%値(8mg/mL未満)を示すが、BSA(例えばリガンド11、12、14、15、16及び17)に対しては高いQb10%値を示す。そこで、これらの結果は将来の「特異的」タイプの脱塩用陽イオン交換体の構築のための手引きとして役立ち得る。
2.「高塩」陽イオン交換リガンドに結合したタンパク質の回収率
BSAについての回収率のデータは完全であるが、IgGについてのデータは約50%のリガンドで測定したものである。得られた結果は以下のことを示している。
1.すべてのリガンドは、79%より良好なBSAの回収率を与える。
2.リガンド1は、BSA及びIgGについて、それぞれ93%及び88%の回収率を示すという点で、最適なリガンドである。
3.結果は、pHでの段階的溶出が高い収率をもたらすことを示す。
リガンドの構造
陽イオン交換リガンド(表1)は、
(a)リガンド形成性化合物1〜13、15及び17と、NHSで活性化した形態の生成物IIとの反応、又は
(b)リガンド形成性化合物14及び16と、臭素で活性化した形態の生成物Iとの反応
によって創製された。
変形例(a)は、リガンド形成性化合物がアミド基を介してマトリックスに連結したことを意味する。変形例(b)は、チオエーテルを介した連結を意味する。
は、フロースルー方式での10%破過における破過容量を表す。
mLは、mLゲルを意味する。
表1.イオン交換脱塩に使用した陽イオン交換リガンド
Figure 2004532182
リガンド1.QBSA=50mg/mL、QIgG=33mg/mL、BSA回収率=93%、IgG回収率=88%。
Figure 2004532182
リガンド2.QBSA=44mg/mL、QIgG=20mg/mL、BSA回収率=86%、IgG回収率=68%。
Figure 2004532182
リガンド3.QBSA=42mg/mL、QIgG=27mg/mL、BSA回収率=93%、IgG回収率=79%。
Figure 2004532182
リガンド4.QBSA=44mg/mL、QIgG=24mg/mL、BSA回収率=91%、IgG回収率=測定せず。
Figure 2004532182
リガンド5.QBSA=41mg/mL、QIgG=27mg/mL、BSA回収率=93%、IgG回収率=測定せず。
Figure 2004532182
リガンド6.QBSA=50mg/mL、QIgG=22mg/mL、BSA回収率=93%、IgG回収率=75%。
Figure 2004532182
リガンド7.QBSA=40mg/mL、QIgG=23mg/mL、BSA回収率=93%、IgG回収率=76%。
Figure 2004532182
リガンド8.QBSA=38mg/mL、QIgG=23mg/mL、BSA回収率=93%、IgG回収率=86%。
Figure 2004532182
リガンド9.QBSA=43mg/mL、QIgG=14mg/mL、BSA回収率=79%、IgG回収率=66%。
Figure 2004532182
リガンド10.QBSA=44mg/mL、QIgG=11mg/mL、BSA回収率=93%、IgG回収率=65%。
Figure 2004532182
リガンド11.QBSA=45mg/mL、QIgG=5mg/mL、BSA回収率=92%、IgG回収率=測定せず。
Figure 2004532182
リガンド12.QBSA=49mg/mL、QIgG=6mg/mL、BSA回収率=92%、IgG回収率=測定せず。
Figure 2004532182
リガンド13.QBSA=57mg/mL、QIgG=10mg/mL、BSA回収率=93%、IgG回収率=測定せず。
Figure 2004532182
リガンド14.QBSA=51mg/mL、QIgG=4mg/mL、BSA回収率=92%、IgG回収率=測定せず。
Figure 2004532182
リガンド15.QBSA=46mg/mL、QIgG=3mg/mL、BSA回収率=87%、IgG回収率=測定せず。
Figure 2004532182
リガンド16.QBSA=51mg/mL、QIgG=4mg/mL、BSA回収率=91%、IgG回収率=測定せず。
Figure 2004532182
リガンド17.QBSA=37mg/mL、QIgG=7mg/mL、BSA回収率=93%、IgG回収率=測定せず。

Claims (12)

  1. ペプチド構造を有する物質を含有する水性液体(I)を脱塩する方法であって、当該方法が、
    (i)液体(I)をミックスモードイオン交換体(1)と接触させてイオン交換体(1)に上記物質を結合せしめる工程であって、上記イオン交換体(1)が上記物質とは反対の電荷を有するイオン交換リガンド(リガンド1)を有するベースマトリックスを含む工程と、
    (ii)液体(I)を液体(II)に置き換えることによって上記物質を上記イオン交換体(1)から脱着させる工程であって、液体(II)のイオン強度が液体(I)よりも低い工程と
    を含んでおり、
    (a)工程(i)の結合が0.1M以上のNaCl濃度に相当するイオン強度で実施され、かつ上記リガンド1がミックスモード陽イオン交換リガンドであり、
    (b)工程(ii)の脱着がpH変化を含んでおり、しかも
    (c)工程(ii)で用いられる液体(II)の1種以上の緩衝性成分が揮発性である
    ことを特徴とする、方法。
  2. 前記pH変化によって、前記物質及び/又はリガンド1/イオン交換体の電荷が零となるか、或いは前記物質及びリガンド1/イオン交換体の両方の電荷が同種の電荷(負又は正のいずれか)となることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 前記リガンド1がpH非依存性電荷を有するか或いはpHスイッチによって脱荷電できることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の方法。
  4. 前記イオン交換体が第二のリガンド(リガンド2)を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
  5. 前記リガンド2が、液体(I)によって与えられる条件下で(a)荷電していないがpHスイッチによって荷電可能であるか、又は(b)荷電しておらず、かつ荷電可能でもないか、又は(c)pH非依存性電荷で荷電されているか、又は(d)pH依存性電荷で荷電されていることを特徴とする、請求項4記載の方法。
  6. 前記リガンド2がミックスモードリガンドであることを特徴とする、請求項4記載の方法。
  7. 前記リガンド1及び/又はリガンド2が次式で定義されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
    Figure 2004532182
  8. 脱塩された物質が、工程(ii)の後の液体(II)中に、液体(I)中での濃度の少なくとも10倍の濃度で存在することを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
  9. (a)前記物質が、ペプチド構造、核酸構造、炭水化物構造、脂質構造、ステロイド構造、アミノ酸構造、ヌクレオチド構造から選択される構造を含む他の物質と共に液体(I)中に存在しているとともに、
    (b)上記他の物質の全量が、工程(ii)の後の脱塩された物質も含有している液体(II)の画分で少なくとも10分の1に減少していること
    を特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
  10. 前記液体(I)が、脱塩された物質と塩と水性溶媒から本質的になることを特徴とする、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
  11. 工程(ii)の後で前記物質を含有する液体(II)を直接的に又は間接的に処理して乾燥形態とすることを特徴とする、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
  12. 当該方法が、脱塩された物質又はその誘導体を含有する組成物の分析法又は製造プロセスの一部であり、該組成物が医薬品として或いは食品工業で使用するためのものであることを特徴とする、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の方法。
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