JP2004516928A5 - - Google Patents

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【書類名】 明細書
【発明の名称】 混合モード吸着法及び混合モード吸着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】 イオン交換によって水性液体から物質を除去する方法であって、当該方法が、
上記物質が荷電状態で存在する液体を準備する工程と、
2種以上の構造の異なるリガンドを含む吸着マトリックスであって、少なくとも1つの弱イオン交換体又は少なくとも1つの強イオン交換体を含む吸着マトリックスを準備する工程と、
上記物質を上記マトリックスへ吸着させるのに十分な期間上記液体を上記マトリックスと接触させる工程と、
上記物質を上記マトリックスから脱着させる溶出剤を加える工程と
を含んでおり、各々のリガンドが吸着工程の際に上記物質と相互作用し、かつ上記リガンドの少なくとも1つが荷電されていて上記物質とイオン相互作用することができるものである、方法。
【請求項2】 1つの荷電リガンドが陰イオン交換体であり、除去される前記物質が最初は負に荷電されていて、吸着条件が、その負に荷電した物質のpIよりも高いpH及びリガンドの正荷電基のpKaよりも低いpHによって規定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】 前記物質についての吸着容量が、すべての荷電基が第四級アンモニウム基(q−基)である対応する対照イオン交換体における同じ物質の吸着容量の100%以上である、請求項2記載の方法。
【請求項4】 前記脱着が、イオン強度の増加する勾配をもつ溶出剤を加えることによって実施される、請求項2又は請求項3記載の方法。
【請求項5】 1つの荷電リガンドが陽イオン交換体であり、除去される前記物質が最初は正に荷電されていて、吸着条件が、その正に荷電した物質のpIよりも低いpH及びリガンドに対応する負に荷電した酸のpKaよりも高いpHによって規定される、請求項1記載の方法。
【請求項6】 前記物質についての吸着容量が、すべての荷電基がスルホプロピル基である対応する対照イオン交換体における同じ物質の吸着容量の100%以上である、請求項5記載の方法。
【請求項7】 前記脱着が、イオン強度の増加する溶出剤を加えることによって実施される、請求項5又は請求項6記載の方法。
【請求項8】 前記吸着が0.10MのNaClの水溶液のイオン強度と同一又は高いイオン強度で実施される、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】 前記リガンドが、0.25MのNaClに相当するイオン強度の水性対照液中で前記物質を結合することができる、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】 1以上のリガンドが、疎水性及び/又は電子供与体−受容体相互作用によって前記物質と相互作用する、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】 前記リガンドが荷電可能であって、前記マトリックスからの前記物質の脱着がpHスイッチによって実施される、請求項10記載の方法。
【請求項12】 前記溶出剤の極性は、前記物質が除去される水性液体の極性よりも低い、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】 1以上のリガンドが、
(c)前記物質との電荷−電荷引力相互作用を与える第一のモードの部位と、
(d)前記物質との電荷−電荷引力相互作用及び/又は疎水性相互作用及び/又は電子供与体−受容体相互作用を与える第二のモードの部位と
を含む混合モードリガンドである、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】 請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の方法であって、当該方法が、液体から生体高分子構造を除去するためのものであり、該構造が炭水化物構造、ペプチド構造、ペプチド核酸(PNA)構造及び核酸構造からなる群から選択される、方法。
【請求項15】 pH依存性の電荷をもつ生体高分子を除去するための、請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】 両性物質を除去するための、請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】 請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の方法での使用に適した吸着剤であって、分離すべき物質との電子供与体−受容体相互作用に関与する1以上の官能基を含む第一及び第二のリガンドを含んでおり、該官能基が、
(i)以下のような供与体原子/基:
自由電子対を有する酸素、
自由電子対を有する硫黄、
自由電子対を有する窒素、
ハロゲン、及び
sp−及びsp−混成炭素、又は
(ii)受容体原子/基、即ち、電子不足原子又は基
からなる群から選択される、吸着剤。
【請求項18】 任意の対の組について置換度の比が0.02〜50内である、請求項17記載の方法。
【請求項19】 第一及び第二のリガンドが、支持マトリックスの少なくとも一部に、互いにランダムに存在するように導入されている、請求項17又は請求項18記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
本発明は、水性液体(I)中に存在する荷電物質を除去する方法に関する。この方法は、
(i)液体をイオン交換吸着剤(1)と、吸着剤と物質とが結合する条件下で接触させる工程、及び
(ii)液体(II)を使用して吸着剤から上記脱着させる工程
を含む。
【0002】
本発明は、新規で革新的な方法に使用できる新規イオン交換吸着剤にも関する。
本発明の吸着剤は、同じベースマトリックス上に結合した2種以上の異なるリガンドを含む。リガンドは官能基及び/又は構造元素に関して異なる。「混合モードリガンド」及び「バイモーダルリガンド」という用語は、結合すべき物質と相互作用する2以上の異なる部位を与えることのできるリガンドをいう。これらの部位は官能基及び/種類に関して異なる。
【0003】
荷電物質は典型的には生体有機物質及び/又は両性物質である。物質中の荷電基の数に関しては、2以上の荷電基(例えば、1又は2以上の正荷電基及び/又は1又は2以上の負荷電基)が存在していると、最大の利点が得られる。物質の分子量に関しては、分子量が1,000ダルトン以上(例えば、5,000ダルトン以上又は10,000ダルトン以上)であれば、最大の利点が得られる。
【0004】
【背景技術】
上記で規定した方法としては、一体構造又は粒子状の吸着剤を充填床又は流動床の形態で使用するクロマトグラフィー法、並びに通例粒子状吸着剤のみを含む回分法が挙げられる。一体構造の吸着剤としては、多孔質膜、多孔質プラグ及び管壁その他の形態の一体型マトリックスが挙げられる。これらの方法の目的は、荷電物質の精製であることがあり、そうした場合、物質は工程(i)で吸着剤に結合され、必要に応じて、吸着剤から脱着した後でさらに精製される。もう一つの目的は、液体(I)から望ましくない成分である物質を除去することである。この場合、液体を工程(i)の後でさらに処理してもよい。いずれの場合も、所望に応じて、結合した物質を脱着した後で吸着剤を再使用してもよい。
【0005】
他の用途は、荷電物質又は液体(I)中の残留物質のいずれかの測定を行うアッセイ法である。
【0006】
2種以上のリガンドで官能化された吸着剤について記載した刊行物は数多く存在する。
・WO9600735、WO9609116及びUS5,652,348(Burton等)には、疎水性相互作用に基づく分離法及び媒体が開示されている。一実施形態では、媒体はイオン化性及び非イオン化性のリガンドの両方を含有してもよい。主な思想は、ローディング(添加)を疎水性相互作用を促進する条件下で行い(中性炭化水素リガンド)、吸着したタンパク質とは反対の電荷でリガンドを荷電させるためのpHスイッチ(反発)によって脱着を行うことである。そこで、WO00/69872では、マトリックス上の2種類のリガンドを利用して、その一方は吸着時に核酸と相互作用をし、もう一方は核酸の反発による脱着に利用される。
・Burton et al., Biotechnology and Bioengineering 56(1) (1997) 45−55には、
(a)荷電できるが吸着の際には本質的に荷電していない芳香族炭化水素リガンド(第二級アミン/アンモニウム)、又は
(b)荷電できない芳香族リガンドに加えて、未反応スペーサーに対応する別の陽イオン交換リガンド(−COO/COOH)(芳香族リガンドの導入に使用されたもの)
を含む吸着剤でキモシンを精製する試みが記載されている。
・Issaq et al., J. Liq. Chromatog. 11(14) (1988) 2851−2861; Floyd et al., Anal. Biochem. 154 (1986) 570−577;及びBuzewski et al., J. Liq. Chrom. & Rel. Technol. 20(15) (1997) 2321−2325には、2種類のリガンド(イオン−交換リガンド及び疎水性(アルキル)相互作用リガンド)で誘導体化されたシリカ粒子のクロマトグラフィー特性が記載されている。
・Teichberg, J. Chromtog. 510 (1990) 49−57には、正荷電リガンドが、正荷電反発リガンドも有している吸着剤上の中性アフィニティーリガンドと相互作用するアフィニティー反発クロマトグラフィーが記載されている。
・WO9839094(Amersham Pharmacia Biotech AB)及びWO9839364(Amersham Pharmacia Biotech AB)には、一実施形態として、表面層に1種類の荷電リガンドが存在し、ビーズの内部は反対の電荷をもつリガンドで官能化されたビーズが開示されている。ビーズは生体分子の吸着用として提案されている。
・分離マトリックスへのアフィニティーリガンドの導入において、カップリング反応の非効率性のため2種以上の基及び/又は残留基が導入されることが多いことが知られている。塩化N,N−ジエチルアミノエチルと多糖マトリックスとの反応は、例えば、典型的に(a)1つの第三級アンモニウム基しか含有しないリガンドを(b)第三級及び第四級アンモニウム基の両方を含有するリガンドと一緒に導入する。我々の知る限り、高い塩濃度を含むイオン交換条件下での異常に高い破過容量は、このタイプの従来のイオン交換体については従前報告されていない。Burton et al., Biotechnology and Bioengineering 56(1) (1997) 45−55と比較されたい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、
a)比較的高いイオン強度で、イオン交換リガンドを有する吸着剤への、荷電物質(タンパク質など)の吸着/結合を達成すること、
b)標的物質を結合する十分な容量を保持しつつ、リガンド含量を低減することができるイオン交換媒体を提供すること、
c)イオン交換体に吸着/結合した物質の広いイオン強度範囲での溶出/脱着を可能にすること、つまり選択性を増加させること、
d)高い破過容量(典型的には、>2mg/ml湿潤ゲル、300cm/時のフロースルーで10%破過)、タンパク質の良好な回収率(しばしば95%以上)等を有するイオン交換体を設計すること、
e)高い塩濃度でイオン交換によって結合し、クロマトグラフィー特性をさほど損なわずに、アルカリ性(pH≦13)及び/又は酸性(pH≧3)溶液での再生及び/又は洗浄に耐えることができるイオン交換体を設計すること、
f)低いイオン強度が必要とされるプロセスに用いられるイオン強度の比較的高い試料の大幅な希釈を不要にすること、
g)簡略化脱塩法を提供すること、
h)例えば、生産性の向上及び/又はプロセス装置及び投資のコストを低減させるため、イオン交換体を用いる簡略化プロセスを提供すること、
i)例えばイオン交換体で1リットルを超える試料量(=液体(I))を添加して処理する大規模プロセスなどでの分取用途に適合したイオン交換体を提供すること、
j)イオン交換工程後の疎水性相互作用吸着などの、高い塩濃度でのイオン交換体吸着剤の溶出に基づく新規な分離原理の組合せのための機会を提供すること
である。
【0008】
これらの目的の一以上は、比較的高い塩濃度及び比較的高いイオン強度で吸着するイオン交換体が利点を有するとの知見に基づく。これは、主に脱着を達成するため高い塩濃度及び高いイオン強度を利用する伝統的なイオン交換体とは対照的である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的の一以上は、特許請求の範囲に規定する方法を用いて達成できる。そこで、本発明は、できるイオン交換によって水性液体から物質を除去する方法であって、当該方法が、
上記物質が荷電状態で存在する液体を準備する工程と、
2種以上の構造の異なるリガンドを含む吸着マトリックスであって、少なくとも1つの弱イオン交換体又は少なくとも1つの強イオン交換体を含む吸着マトリックスを準備する工程と、
上記物質を上記マトリックスへ吸着させるのに十分な期間上記液体を上記マトリックスと接触させる工程と、
上記物質を上記マトリックスから脱着させる溶出剤を加える工程と
を含んでおり、各々のリガンドが吸着工程の際に上記物質と相互作用し、かつ上記リガンドの少なくとも1つが荷電されていて上記物質とイオン相互作用することができるものである、方法に関する。
【0010】
したがって、2種類のリガンドを使用するがその一方だけが核酸を吸着するのに有効であるWO00/69872と対比すると、本発明では、吸着時に関心物質と両方共に有効に相互作用する2種類のリガンドを使用する。
【0011】
さらに、本発明は主としてイオン相互作用を利用するので、本方法は、疎水性相互作用を利用する上述のWO96/09116とも異なる。WO96/09116の実験では同じ条件を用いて幾つかのリガンドを試験しているが、その各々は組合せではなく単独で試験されており、1種類のリガンドしかもたない吸着剤が示唆されている。さらに、この文献の溶出は、疎水性相互作用クロマトグラフィーで典型的にみられるように、塩濃度を下げることによって実施される。これとは対照的に、本発明では、溶出に塩濃度の増加を利用できるが、これは本吸着の主な相互作用がイオン型であることを示している。
【0012】
一実施形態では、1以上の荷電リガンドは陰イオン交換体であり、除去される物質は最初は負に荷電されていて、吸着条件は、その負に荷電した物質のpIよりも高いpH及びリガンドの正荷電基のpKaよりも低いpHによって規定される。本発明の利点は、その吸着効率が予期し得ないほど高いことが判明したことである。例えば、負荷電物質についての吸着容量は、本質的にすべての荷電基が第四級アンモニウム基(q−基)である対応する対照イオン交換体における同じ物質の吸着容量の≧100%と高く、≧200%であることもある。
【0013】
別の実施形態では、1以上の荷電リガンドは陽イオン交換体であり、除去される物質は最初は正に荷電されていて、吸着条件は、その正に荷電した物質のpIよりも低いpH及びリガンドに対応する負に荷電した酸のpKaよりも高いpHによって規定される。この場合、この物質についての吸着容量は、本質的にすべての荷電基がスルホプロピル基である対応する対照イオン交換体における同じ物質の吸着容量の≧100%と高く、≧200%であることもある。
【0014】
本文脈において、吸着容量は、本出願において時々使用されている破過容量と同じ変数をいうことを理解すべきである。動的吸着容量は、水性液体を吸着剤を通して流す際のクロマトグラフィー法における容量をいう。同様に、静的吸着容量は回分法について用いられる。
【0015】
本方法の一実施形態では、吸着は、0.10MのNaCl、好ましくは0.20MのNaCl又は0.30MのNaClの水溶液のイオン強度と同一又は高いイオン強度で実施される。
別の実施形態では、リガンドは、0.25MのNaClに相当するイオン強度の水性対照液中で関心物質を結合することができることで特徴付けることができる。
【0016】
特定の実施形態では、1以上のリガンドは疎水性及び/又は電子供与体−受容体相互作用によって物質と相互作用する。該リガンドは好ましくは荷電可能であり、マトリックスから物質の脱着はpHスイッチによって実施される。
本方法のさらに別の実施形態では、溶出剤の極性は、物質が除去される水性液体の極性よりも低い。
【0017】
有利な実施形態では、本方法は液体から生体高分子構造を除去するためのものであり、該構造は炭水化物構造、ペプチド構造、ペプチド核酸(PNA)構造及び核酸構造からなる群から選択される。特定の実施形態では、本方法は、pH依存性の電荷をもつ生体高分子の除去のためのものである。
本方法は、両性物質の除去にも使用できる。
【0018】
本発明はまた、本発明の方法での使用に好適な、2種以上のリガンドを含む吸着剤であって、1以上のリガンドが混合モードリガンドである吸着剤に関する。かかる混合モードリガンドは、
(a)物質との電荷−電荷引力相互作用を与える第一のモード部位、及び
(b)物質との電荷−電荷引力相互作用及び/又は疎水性相互作用及び/又は電子供与体−受容体相互作用を与える第二のモード部位
を含む。
【0019】
一実施形態では、本吸着剤は、分離すべき物質との電子供与体−受容体相互作用に関与する1以上の官能基を含む第一及び第二のリガンドを含んでおり、該官能基が、
(i)以下のような供与体原子/基:
・ヒドロキシ、エーテル、ニトロ、カルボキシなどのカルボニル、エステル(−O−及び−CO−O−)及びアミドのように、自由電子対を有する酸素、
・チオエーテル(−S−)のように、自由電子対を有する硫黄、
・アミン、スルホンアミドを始めとするアミドのように、自由電子対を有する窒素、
・ハロゲン(フッ素、塩素、臭素及びヨウ素)、並びに
・sp−及びsp−混成炭素、又は
(ii)受容体原子/基、即ち、金属イオン、シアノ、ニトロ中の窒素、例えばHO−(ヒドロキシ、カルボキシ等)、−NH−(アミド、アミン等)、HS−(チオール等)等のように陰性原子に結合した水素のような、電子不足原子又は基
からなる群から選択される。
【0020】
一実施形態では、吸着剤における任意の対の組について置換度の比は0.02〜50内である。一実施形態では、第一及び第二のリガンドは、支持マトリックスの少なくとも一部に、互いに本質的にランダムに存在するように導入される。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の態様
以下、本発明の理解を図り、さらに様々な実施形態を例示するため、番号を付した工程を参照してさらに詳しく説明する。そこで、本発明者が見出した事項は、イオン交換吸着剤(1)を、
(a)液体(I)によって与えられる条件下で、1以上のリガンドが物質に存在する電荷と反対の電荷を有し、
(b)液体(I)によって与えられる条件下で、各リガンドが物質と結合のため相互作用することができる
2種以上の異なるリガンド(リガンド1、リガンド2)で官能化されたベースマトリックスを含むことを特徴とするイオン交換吸着剤の中から選択すれば、技術分野の項で定義したプロセスによって上記目的の一以上を達成できることである。
上記相互作用は、もう一方のリガンドから独立したもの及びもう一方のリガンドと共同的なもののいずれかである。
【0022】
本発明の文脈で意図される典型的なリガンドの分子量は<1000ダルトン(例えば<700)である。存在し得るハロゲンの分子量の寄与は上記の範囲には含まれていない。
【0023】
リガンド1は荷電リガンド、つまり工程(i)の条件下で荷電した単一及び混合モードリガンドから選択される(第一カテゴリー)。
リガンド2は、リガンド1とは異なる種類のリガンドであり、例えば、
(a)電荷−電荷引力相互作用を伴わずに相互作用できるもの(第二カテゴリー)、つまり工程(i)の条件下で荷電しないリガンド、又は
(b)電荷−電荷相互作用による相互作用できる電荷を有するが、リガンド1とは異なる種類のもの、つまり第一カテゴリーから選択されるもの
である。
(a)については、相互作用は、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用及び/又は電子供与体−受容体相互作用を伴うものでもよい。
【0024】
本発明の方法で使用するイオン交換吸着剤のもう一つの特徴は、吸着剤が、
(A)0.25MのNaClに相当するイオン強度の水性対照液中で関心物質を結合することができ、しかも
(B)物質が上記電荷を有するpH範囲2〜12の部分範囲における物質に対する最大破過容量が、
(a)本質的に全ての荷電リガンドがQ−リガンドである対応する陰イオン交換体(吸着剤2a)、又は
(b)本質的に全ての荷電リガンドがSP−リガンドである、対応する陽イオン交換体(吸着剤2b)
での物質の破過容量の≧100%(例えば、≧200%又は≧300%又は≧500%又は≧1000%)となる
ように、複数のリガンドの組合せが(置換の種類及び置換度に応じて)選択されていることである。
【0025】
「SP基」という用語は、アリル基と亜硫酸水素塩との反応で得ることができるスルホプロピル基を意味し、SP基としては、−CHCHCHSO 及びそのスルホン酸異性体が挙げられる。
「Q基」という用語は、−OCHCH(OH)CHOCHCH=CHをハロゲンと反応させた後トリメチルアミンと反応させることによって得ることができる第四級アンモニウム基を意味し、Q基としては、−OCHCH(OH)CHOCHCH(OH)CH(CH及び第四級トリメチルアンモニウム基を含有するその異性体が挙げられる。
【0026】
吸着剤2aは物質の電荷が負であるときに、吸着剤2bは物質の電荷が正であるときに使用される。水性対照液は、NaCl、緩衝剤及び荷電した関心物質を含有する。
【0027】
上記の比較とは、イオン交換体(1)と(2a)及びイオン交換体(1)と(2b)に対して本質的に同じ条件下で実施される測定をいい、pH、温度、溶媒組成、流速などは(1)と(2a)の間及び(1)と(2b)の間で同じである。破過容量は、フロースルー方式で同じ相対濃度の物質で(例えば、300cm/時の流速でc/c=10%、c/cについては実施例を参照)測定される。
【0028】
「対応する陰イオン交換体/陽イオン交換体」という用語は、支持マトリックスが同一であることを意味し、支持材料、ビーズ径、孔径、孔容積、充填法などは同一である。イオン交換体1の1以上の荷電リガンドについての全置換度は対照イオン交換体(2a又は2b)(それぞれ、塩化物及びナトリウムイオンとして測定される)におけるものと本質的に同じである。対イオンも同じにすべきである。スペーサー及びカップリング化学は異なっていてもよい。ある種のカップリング化学は支持マトリックスの架橋を招いて、さらに硬質のマトリックスを生じることがある。この場合には、比較を行う流れの条件はマトリックスが本質的に圧縮されていないレベルで選択される。
【0029】
典型的には、物質に対する有用な破過容量は、
(a)0.18〜0.25mmol/mlゲルの塩化物イオン容量を有する市販の陰イオン交換体であるQ−Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech社製(スウェーデン、ウプサラ))、及び/又は
(b)0.18〜0.25mmol/mlゲルのナトリウムイオン容量を有する市販の陰イオン交換体であるSP−Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech社製(スウェーデン、ウプサラ))
で該物質が呈する最大破過容量よりも高い。
【0030】
これら2種類の対照イオン交換体におけるベースマトリックスはビーズ状のエピクロロヒドリン架橋アガロースである。ビーズは45〜165μmの範囲内の直径を有する。球状タンパク質についての排除限界は4×10である。
【0031】
実用的見地から、上記の事項は、流速300cm/時及び0.25M NaClでの10%破過について、物質に対する破過容量が>2mg/ml湿潤ゲル(例えば>4mg/ml湿潤ゲル)であるべきであることを意味する。
破過容量は、室温つまり約25℃で実施された測定値をいう。
【0032】
同一の試薬及び条件を用いて(例えば同一条件で並列に)導入されるリガンドは、たとえそれらが構造的に異なっていたとしても、同一の種類であるとみなされる。これは、特に形成されるリガンドが異性体である場合に当てはまる。
【0033】
残留基(未反応基)を最小限にするために大過剰の誘導化試薬を使用した後でも残留基(未反応基)であるリガンドは存在しないとみなされる。典型的には、このタイプの基は、誘導化される基の出発量に比較して10%以下(例えば5%以下)のモル量で存在する。
典型的には、異なるリガンド同士のモル比は0.01〜100の範囲内であり、0.02〜50の範囲内にあるのが往々にして好ましい。
【0034】
第一カテゴリー:工程(i)の条件下で荷電する単一及び混合モードリガンド
このカテゴリーのリガンドは、荷電原子又は基及び/又は近接した1〜7原子(例えば近接した1〜3原子)の1原子以上に関して異なり、
(a)正に荷電した各種窒素(例えば、第一級アンモニウム、第二級アンモニウム、第三級アンモニウム、第四級アンモニウム及びアミジニウム)、
(b)正に荷電した各種硫黄(例えば、スルホニウム)、
(c)負に荷電した各種酸素(例えば、カルボキシレート(−COO)、ホスホネート又はホスフェート(それぞれ、−PO 2−、−P(OH)O 及び−OP(OH)O 、−OPO 2−)、スルホネート又はスルフェート(それぞれ、−SO 及び−OSO )、−アリール−O(フェノラート/アリーロラート)などの基における酸素)
である。
自由結合(原子価)は、基をベースマトリックスに結合する鎖の一部である炭素に直接結合する。
【0035】
異なる種類の荷電リガンドの概念には、以下の相違点:
(i)上記の(a)及び/又は(b)の荷電原子が線状又は環状構造の一部であるか、或いは環状構造が芳香族もしくは非芳香族及び/又は4員環、5員環、6員環、7員環、8員環などの環を含んでいること、
(ii)上記の(a)又は(b)の荷電原子又は上記の(c)の荷電基に連結する鎖が、これらの原子/基に隣接して、炭素原子及び/又はヘテロ原子の種類が異なる1〜3個の原子の一部を有すること、
(iii)リガンドがは単一又は混合モードリガンドであること
も含まれる。
(ii)で概説した相違点は、全て又は一部の炭素原子がsp−、sp−及びsp−混成炭素から選択されること、或いはチオエーテル硫黄、エーテル酸素及びハロゲンから選択されるヘテロ原子が存在していても存在していしなくてもよいことを含む。
【0036】
リガンドはpKa値に関して異なっていてもよい。適切な相違は、典型的には≧0.5pH単位(例えば、≧1又は≧2pH単位)である。
pH依存性の電荷を有するリガンドは酸及び塩基の形態で存在する。pH依存性の電荷を有するイオン交換リガンドに対しては、以下のことがいえる。
a)イオン交換リガンド及びその対応する塩基の両方は、液体(I)のpHが≦pKa+2である限り、同じ種類のリガンドであるとみなされる。
b)イオン交換リガンド及びその対応する酸の両方は、液体(I)のpHが≧pKa−2である限り同じ種類のリガンドであるとみなされる。
pKaは、(a)リガンド(選択肢a)又はリガンドに相当する酸(選択肢b)のpKaを意味する。液体(I)のpHがこれらの判定基準に適合しなければ、リガンドの荷電型は非本質的な量で存在する。
【0037】
「単一モード荷電リガンド」という用語は、荷電原子(上記のa又はb)又は荷電基(上記のc)をベースマトリックスに連結する鎖が、かかる原子又は基から7原子以内の距離にあるsp−混成炭素及び単一のエーテル酸素から選択される原子からなることを意図する。鎖に結合した他の基は、主に水素及び/又はヒドロキシであり、さらにメチル及びメトキシであることもある。正の窒素原子は、例えば、水素及び/又はメチル又はエチルのような低級アルキル(C1〜5)から選択される他の基と結合する。正荷電硫黄原子については、これらの追加的な基は、メチル又はエチルのような低級アルキル(C1〜5)から主に選択される。
【0038】
「混合モード荷電リガンド」という用語は、荷電原子(上記のa又はb)から又は荷電基(上記のc)から7原子以内の距離にあるリガンドが、上記で定義した疎水性相互作用及び/又は電子供与体−受容体相互作用に関与することができる1又は2以上の原子又は基を有することを意図しているが、これらの原子又は基が単一のエーテル酸素、単一のヒドロキシ又はsp−炭素でないことが条件とされる。典型的には、距離は1、2、3、4原子である。
【0039】
疎水性相互作用としては、リガンドの純然たる炭化水素基と物質の疎水性基つまり脂質様基との間の相互作用が挙げられる。適当な純炭化水素基は、2、3、4、5又は6以上の炭素原子(純アルキル、純アリール、純アラルキル、純アルキルアリール、純アルケニル、純アルキニルなど、並びに2以上の自由結合(原子価)を含む対応する基)を含む。ファンデルワールス相互作用は、疎水性相互作用の重要な部分をなすであろう。
【0040】
電子供与体−受容体相互作用としては、水素結合、π−π、電荷移動などの相互作用が挙げられる。電子供与体−受容体相互作用は、自由電子対を有する陰性原子が供与体として作用して、供与体の電子対に対する受容体として作用する電子不足原子に結合することを意味する。電子供与体−受容体相互作用に関する議論については、Karger et al.、「分離科学入門」、John Wiley & Sons(1973)42頁を参照されたい。
【0041】
供与体原子/基の例示的な例は、
(a)ヒドロキシ、エーテル、カルボニル及びエステル(−O−及び−CO−O−)及びアミドのように、自由電子対を有する酸素、
(b)チオエーテル(−S−)のように、自由電子対を有する硫黄、
(c)アミン、スルホンアミド、カルバミド、カルバメート、アミジン等を含むアミド、シアノのように、自由電子対を有する窒素、
(d)ハロゲン(フッ素、塩素、臭素及びヨウ素)、並びに
(e)sp−及びsp−混成炭素
である。
典型的な受容体原子/基は、金属イオン、シアノ、ニトロ中の窒素のような、電子不足原子又は基であり、またヒドロキシ及びカルボキシにあるHO−、アミド及びアミンにある−NH−、チオールにあるHS−などの陰性原子に結合した水素を含む。
【0042】
供与体及び受容体の原子又は基は、
・荷電原子又は荷電基をベースマトリックスに連結する鎖、
・上記鎖に結合した分枝、又は
・荷電原子又は基(特に陰イオン交換基/リガンドについて)に直接結合した別の置換基
に位置し得る。
電子供与体/受容体の原子又は基は、リガンドをベースマトリックスに連結する鎖に結合した分枝に、荷電原子又は荷電基から7原子以上の距離に存在し得る。かかる場合、完全な分岐は別のリガンドと考えられる。
【0043】
特に興味深い混合モード荷電リガンドは、荷電原子又は基の上述の距離内に、チオエーテル(−S−)及び/又は芳香族炭素のようなsp−混成炭素を有する。例えば、本願出願人の係属中の国際特許出願のPCT/EP00/11605(Amersham Pharmacia Biotech AB)及びPCT/EP00/11606(Amersham Pharmacia Biotech AB)(両方とも陰イオン交換リガンドについて記載)、並びに2000年7月17日に出願したSE 0002688−0(陽イオン交換リガンド)及びWO996507(Amersham Pharmacia Biotech AB)(陽イオン交換リガンド)を参照されたい。WO9729825(US6,090,288)(Amersham Pharmacia Biotech AB)には、1以上のヒドロキシ及び/又はアミノ/アンモニウム窒素を第一級、第二級又は第三級アンモニウム窒素から2〜3炭素の位置に有する混合モード陰イオン交換リガンドが開示されている。本特許の方法で潜在的に有用である混合モードイオン交換リガンドは、WO9808603(Upfront Chromatography)、WO9600735、WO9609116及びUS5,652,348(Burton等)に記載されている。この段落で参照した全ての出版物は出典明示により本明細書の一部とする。
【0044】
上記に示したチオエーテル(−S−)において、自由結合(原子価)の各々はsp−又はsp−混成炭素に結合するが、sp−又はsp−混成炭素は、環状構造(芳香族又は非芳香族のいずれでもよい)の一部であっても、一部でなくてもよい。ここでいう「チオエーテル」という用語は、チオフェン、並びに環原子として硫黄を含む他の複素環式芳香族環を包含する。
上述の距離内に3、4、5以上の炭素原子を含むアルキル型の純粋な炭化水素基もあり得る。
【0045】
上記に示した芳香族環構造は、1以上の芳香族環、例えば、フェニル、ビフェニル又はナフチル構造及び縮合環又は二環式構造を含む他の芳香族環系を含んでもよい。芳香族環は、複素環式つまり1以上の窒素、酸素又は硫黄を含むものでもよく、置換基を有していてもよい。これら他の置換基は、例えば水素結合及び/又は他の電子供与体−受容体相互作用を可能ならしめる電子供与体又は受容体の原子又は基を含有してもよい。例示的な芳香族環構造は、ヒドロキシフェニル(2−、3−及び4−)、2−ベンズイマドゾイル、メチルチオキシフェニル(2−、3−及び4−)、3−インドリル、2−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル、アミノフェニル(2−、3−及び4−)、4−(2−アミノエチル)フェニル、3,4−ジヒドロキシフェニル、4−ニトロフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル、4−イミダゾリル、4−アミノピリジン、6−アミノピリミジル、2−チエニル、2,4,5−トリアミノフェニル、4−アミノトリアジニル、4−スルホンアミドフェニルなどである。
【0046】
好ましい陰イオン交換リガンド及び好ましい陽イオン交換リガンドについて対応する酸のpKaは3以上の範囲にあり、好ましくは11以下であり、好ましくはイオン交換リガンドを適切に脱荷電できるように4〜9の範囲内にある。
【0047】
特に興味のある陰イオン交換リガンドはpH依存性の電荷を有し、≦12.0のpKa値(例えば≦10.5)を有する。これは、これらのリガンドは、好ましくは第一級又は第二級アンモニウム基又は第三級アンモニウム基から選択される荷電基を含むことを意味する。窒素が芳香族構造の部分である第三級アンモニウム基及びそのα−又はβ−位に芳香族炭素を有するアンモニウム基は、8以下のpKa値を有してもよい。通常、陰イオン交換リガンドのpKaは≧3であり、例えば≧4である。
【0048】
特に興味のある負荷電リガンドはpH依存性の電荷を有する。対応する酸についてのpKa値は通常≧3(例えば≧4)である。かくして、これらの種類のリガンドは、カルボキシレート(−COO)、ホスホネート又はホスフェート(それぞれ、−PO 2−、−P(OH)O 及び−OP(OH)O 、−OPO 2−)、−アリール−O(フェノラート/アリーロレート)並びに他の弱酸基から選択される荷電基を含むべきである。
【0049】
ただし、これは、
・強酸(pKa≦3、例えば≦2又は≦0)(対応する塩基は陽イオン交換リガンドとして作用する)、及び
・弱酸(pKa≧10、例えば≧12)又はpHに依存しない電荷を有するリガンド
に対応するイオン交換リガンドも、我々の新しい革新的な脱塩方法に用いるイオン交換体中にそれらを導入したときに、利点を有するであろうことを除外するものではない。他のイオン交換基については、これらの利点は脱塩すべき物質の性質、例えば、その等電点及びイオン交換体とのその相互作用の強度などに依存する。
リガンドのpKa値は、問題とするリガンドの50%が滴定されたときのpHとして得られる。
【0050】
第二カテゴリー:工程(i)の条件下で荷電しないが所望の荷電物質と相互作用することができるリガンド
主として2種類の非荷電リガンドがある:即ち
(a)pHスイッチによって荷電し得るリガンド(クラスI)、及び
(b)pHスイッチでは荷電できないリガンド(クラスII)
である。
【0051】
クラスIは、pH依存性電荷を有することができる非荷電型リガンドを含む。上記を参照されたい。
クラスIIリガンドは、上述の通り、疎水性相互作用及び電子供与体−受容体相互作用を起こすことのできる1以上の構造要素を含有する。典型的なクラスIIリガンドにおいては、上記で定義したような2、3又は4以上の電子供与体−受容体原子又は基がある。各原子又は基は、電子供与体−受容体原子又は基から、互いに直接連結した2、3又は4以上のsp−混成炭素だけ離れている。
【0052】
クラスIIのリガンドは、ベースマトリックから突き出ていてかつ前段落の定義に適合する基の最も外側の部分として定義される。「最も外側」という用語は上記で定義したアルキル基を伴う電子供与体−受容体相互作用又は疎水性相互作用に関与できる最も外側の原子から1〜7原子の距離にある原子を意図する。
【0053】
かくして、第二のカテゴリーの各リガンドは、そのリガンドが電子供与体−受容体相互作用及び/又は疎水性相互作用を可能にする1以上の原子を含むという条件で、イオン交換体におけるリガンド2として使用することができる。存在し得る原子及び/又は基の例は、フェニル基を含み、置換又は未置換であってもよいアリール、純粋なアルキル及び純粋なアルキレン(C以上で好ましくはC以下)、チオエーテル、エーテル、非荷電アミノ、ヒドキシ、アミド(スルホンアミド、カルバミド、カルバメート等を含むカルボキサミド)、ニトロ、スルホン、非荷電カルボキシなどである。この種類のリガンドにおいて、上記原子又は基は、直接結合した2以上のsp−混成炭素原子によって互いに隔てられていることが多い。
【0054】
確率的(stochastic)イオン交換体における各種リガンドは、支持マトリックス又はその一部で互いに多少なりともランダムに存在し得る。導入方法に応じて、リガンド量の比は変動し得るが、マトリックスの実質的な部分において2種以上のリガンドについて常に0.01〜100でなければならず、0.02〜50が好ましい。支持体内で各種リガンドの不均一又は層状の分布を達成するため、WO9839364(Amersham Pharmacia Biotech AB)に概説された一般原理を用いることができる。これら二つの特許文献における主な目的である鋭い層が導入されないように、反応性、拡散率及びリガンド形成試薬の濃度に関してしかるべき配慮を取らねばならない。WO9839364は出典明示により本明細書の一部とする。
【0055】
特に興味がある確率的イオン交換体は、リガンド1として強イオン交換リガンドを、かつリガンド2としてpHスイッチによって荷電/脱荷電し得るリガンドを含む。2つの典型的な組合せは、
(a)リガンド1としての強陽イオン交換リガンドとリガンド2としての弱陰イオン交換リガンドとの組合せ、又は
(b)リガンド1としての強陰イオン交換リガンドとリガンド2としての弱陽イオン交換リガンド
である。
この文脈において、強陽イオン交換リガンドはpKa<3〜4の対応する酸を有する。強陰イオン交換リガンドの例は、第四級アンモニウムリガンド及び、pKa>10(例えば≧11又は≧12)の陰イオン交換リガンドである。他の種類のイオン交換リガンドは弱と考えられる。
【0056】
他の興味ある組合せは、例えば、同じベースマトリックス上で同様なpKaをもつ2種類の異なる弱陰イオン−又は陽イオン−交換リガンド、又は同じマトリックスに結合した弱陰イオン−及び弱陽イオン−交換リガンドを有する確率的イオン交換体である。リガンドは、pKaの差が2、3又は4pH単位よりも小さく又は大きくなるように選択できる。
【0057】
異なる種類のリガンドを組合せる最大の利点は両性物質の脱塩に関する。典型的に、リガンドは、一方のリガンドは荷電される(リガンド1)が、もう一方(リガンド2)は工程(i)では荷電せずに、工程(ii)で解離する物質と同じ電荷で荷電されるようになるように組み合わされる。これは、適切な組合せが脱塩すべき物質の等電点(pI)に依存するという結果になる。さらに下記を参照されたい。
【0058】
支持マトリックス/ベースマトリックス
支持マトリックスはベースマトリックス及びベースマトリックスにリガンドを結合する任意のスペーサーを含む。
ベースマトリックスは有機及び/又は無機材料に基づく。
【0059】
ベースマトリックスは、好ましくは親水性であって、水に不溶性でかつ多少膨潤性であるポリマーの形態にある。親水性になるように誘導化された疎水性ポリマーはこの定義に含まれる。適当なポリマーは、例えば、アガロース、デキストリン、セルロース、でんぷん、プルランなどの多糖類系のポリヒドロキシポリマー、並びにポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ(ヒドロキシアルキルビニルエーテル)、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)及びポリメタクリレート(例えば、ポリグリシジルメタクリレート)、ポリビニルアルコール並びにスチレン及びジビニルベンゼン系のポリマー、及び上述のポリマーに相当する2以上のモノマーが含まれるコポリマーのような完全に合成されたポリマーである。水に可溶性のポリマーは、例えば、架橋及び吸着又は共有結合によって不溶性となるように誘導化できる。OHに転換し得る基を有するモノマーの重合によって或いは例えば親水性ポリマーのような適当な化合物の吸着による最終ポリマーの親水性化によって、疎水性ポリマーに(例えば、モノビニル及びジビニルベンゼン上に)親水性基を導入することができる。
【0060】
ベースマトリックに使用される適当な無機材料はシリカ、酸化ジルコニウム、黒鉛、酸化タンタラムなどである。
好ましいマトリックスは、シラン、エステル、アミド基及びシリカに存在する基のように、加水分解に不安定な基を含まない。これは特に、使用される液体に直接接触する基に関して当てはまる。
【0061】
マトリックスは多孔質又は非多孔質であってもよい。これは、マトリックスが、除去すべき物質に対して完全又は部分的に浸透性(多孔質)であっても、或いは完全に非浸透性(非多孔質)であってもよいことを意味し、マトリックスは除去すべき物質に対して0.40〜0.95の範囲内のKavを有しているべきである。ただし、これは、Kavがさに低くてもよいこと(例えば0.10まで、又は例えば増量剤を有する特定のマトリックスではさらに低くてもよい)を除外するものではない。例えば、WO9833572(Amersham Pharmacia Biotech AB)を参照されたい。
【0062】
本発明の特に興味深い実施形態では、マトリックスは、1〜1000μm、好ましくは高速用途には5〜50μm、分取用には50〜300μmの範囲の粒径をもつ不規則又は球状の形態にある。
これに代えて、マトリックスは、管又は或る他の種類の容器の壁、多孔質プラグ、多孔質膜又はフィルターのように、一体構造であってもよい。
【0063】
マトリックスは、工程(i)で使用する液体よりも密度の大きいビーズ/粒子の形態であってもよい。この種類のマトリックスは、特に、流動床クロマトグラフィー用及び様々な回分法(例えば攪拌タンク中)での大規模操作に特に応用できる。流動床法はWO9218237(Amersham Pharmacia Biotech AB)及びWO9200799(Kem−En−Tek)に記載されている。
【0064】
「親水性マトリックス」という用語は、マトリックスの接近可能な表面が、水性液体はマトリックスに浸透できるという点で親水性であることを意味する。典型的には、親水性ベースマトリックスの接近可能な表面は、例えば酸素及び/又は窒素原子を含む複数の極性基を露出する。かかる極性基の例は、ヒドキシル、アミノ、カルボキシ、エステル、低級アルキルのエーテル((−CHCHO−)Hなど、ただしnは整数である。)である。
【0065】
スペーサーはベースマトリックスから、上記で定義したリガンドへと伸びる。
かかるスペーサーは伝統的なイオン交換体におけるように従来型であり、かくして、上述の通り、線状、分岐、環状飽和、不飽和及び芳香族の炭化水素基(例えば、炭素原子数1〜20(例えば1〜10)のもの)を含んでもよい。これらの基は、上述のタイプの純粋な炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ及びアリールオキシ並びに対応するチオ類似体、及び/又はアミノ基を含んでもよい。炭化水素基における炭素鎖は、1箇所以上でエーテル酸素及びチオエーテル硫黄で中断されていてもよい。また、アミド及びケトン基におけるようなカルボニル基並びに加水分解に対して比較的安定な基であってもよい。酸素、硫黄及び窒素から選択される1個以下の原子が好ましくは1つの同じsp−混成炭素原子に結合する。
【0066】
スペーサーは、上述のように例えば水素結合への関与などによって、イオン交換体への所望の物質の結合を促進する1以上の電子供与体又は受容体の原子又は基を与えてもよいことは明らかである。便宜上、この種類の原子又は基はスペーサーの一部とみなす。また、1以上のリガンドを1つの同じスペーサーに結合してもよい。上記の「分岐」を参照されたい。
【0067】
リガンド密度
本発明で使用する吸着剤のイオン交換リガンドのレベルは、通常0.001〜4mmol/mlマトリックスの範囲内(例えば0.002〜0.5mmol/mlマトリックス)で普通選択され、0.005〜0.3mmol/mlマトリックスが好ましい。好ましい範囲は、特に、マトリックスの種類、リガンドの種類、吸着すべき物質によって決まる。「mmol/mlマトリックス」という表現は、水で飽和した完全に沈降したマトリックスをいう。リガンド密度の範囲は、十分にプロトン化/荷電した形態のマトリックスがナトリウムイオン及び/又は塩化物イオンのような普通の対イオンを結合できる容量をいい、特に、存在する陰イオン及び/又は陽イオンリガンドに依存する。
【0068】
最良の形態
本発明の様々な最良の実施形態は関心物質に応じて変わる。これまでに判明した最良の形態は実施例で提示する。
【0069】
使用するイオン交換体の安定性
本発明で使用するイオン交換体/イオン交換リガンドは、イオン交換吸着を含むプロセスで典型的に適用される条件に耐えなければならない。一般側として、これは、本発明の吸着剤は0.1又は1M NaOH水溶液に少なくとも10時間、全イオン結合容量を実質的に低下させずに、耐えることができなければならないことを意味する。「全イオン結合容量を実質的に低下させずに」とは、全イオン結合容量が最大でも10%しか低下しないことを意図する。これは、イオン交換リガンド並びにベースマトリックスは、純粋な炭化水素基(ホモ芳香族及び複素環式芳香族構造を含む)、チオエーテル及びエーテル基(アセタール及びケタール基を含む)、ヒドロキシ基、スルホン基、カルボキサミド基、スルホンアミド基並びに同様な加水分解安定性をもつ基から選択される構造のみを含んでいるべきであることを意味する。
【0070】
吸着/脱着
吸着及び/又は脱着工程は、一体構造の形態或いは充填又は流動床の形態の粒子としての陰イオン交換体マトリックスによるクロマトグラフィー法として実施できる。粒状マトリックスについては、これらの工程は、液体中で多少なりとも完全に分散した粒子による回分式モードで行ってもよい。
工程(i)及び(ii)で使用する液体は水性つまり水であり、水混和性の溶媒と混合したものであってもよい。
【0071】
吸着
吸着の際に、荷電物質を含有する液体試料は、好ましくはイオン交換によって、吸着(結合)する条件下で上記で定義したイオン交換体と接触させる。換言すれば、物質は、吸着工程(i)の際に荷電される傾向の強いリガンドとは反対に荷電される1以上の基又は原子を有する。
【0072】
好ましくは、物質の正味電荷は工程(i)の間イオン交換体の正味電荷とは反対である。水性液体中に存在する両性物質については、陰イオン交換条件は典型的にpH≧pI−0.5、好ましくはpH≧pI、陽イオン交換条件はpH≦pI+0.5、好ましくはpH≦pIを意味する。
【0073】
本発明の利点の一つは、従来のイオン交換体(例えば、上記で定義した対照陰イオン交換体)で慣用されてきたものよりも高いイオン強度でも吸着/結合を実施できることである。絶対値では、これは、本発明の吸着は15又は20mS/cm以上又は以下のイオン強度で実施できることを意味する。イオン強度は30mS/cmを超えてもよく、場合によっては40mS/cmを超えることもある。有用なイオン強度はしばしば≧0.1のNaCl濃度(純水)に相当し、例えば≧0.3又は≧0.5のこともある。用いる伝導率/イオン強度はリガンドの組合せ、マトリックス上のそれらの密度、結合すべき物質及びその濃度等に依存する。
【0074】
脱着
脱着プロセスは以下の方法の少なくともいずれかを含むべきである。
(A)塩濃度(イオン強度)の増加、
(B)所望の物質とリガンドとの相互作用を緩和するためのpH変化、
(C)水性液体(I)の極性を低下させるリガンド類似体又は試薬(例えば溶媒)の添加。
方法(B)は、(a)イオン−イオン引力相互作用によって所望の物質と結合するリガンドの電荷を減少させること、並びに(b)反対電荷を有するリガンドに結合する所望の物質の基の電荷を減少させることを含んでもよい。pHの変化は、工程(ii)でリガンドと物質が同じ電荷をもつように、何度も行うことができる。
【0075】
(A)〜(C)で与えられる条件を組合せて又は単独で使用してもよい。適切な選択は、
(1)脱着すべき物質と、
(2)イオン交換体(リガンド、マトリックスの種類、スペーサー及びリガンド密度)と、
(3)水性液体IIの各種変数(濃度、極性、温度、pH等)と
の具体的な組合せに依存する。
そこで、水性液体(I)(吸着緩衝液)を水性液体(II)(脱着緩衝液)で置き換えることは、脱着が起こるように他の条件は変化させずに保持したまま、温度、pH、極性、イオン強度、可溶性リガンド類似体などの1以上の変数を変更することを意味する。
【0076】
最も簡単な場合には、これは、水性液体Iから水性液体IIへ変更する際に、
(a)イオン強度の増加、及び/又は
(b)上記で概説したpHの変更
を意味する。選択肢(a)はpHの減少、維持又は増加を含む。選択肢(b)はイオン強度の低下、増加又は維持を含む。
【0077】
クロマトグラフィー及び/又は回分法において、脱着すべき物質が結合したマトリックスは、液体(I)に接触するカラムその他の適当な容器内に存在する。次いで、その液体によって与えられる条件を、所望の物質がマトリックスから溶出されるまで、上述の通り変更する。典型的な脱着プロセスは、吸着時に用いたものよりもイオン強度を増加させ、多くの場合、他の変数を全く変更しない場合には、0.4M以上のNaCl(例えば0.6MのNaCl)に相当することを意味する。溶出/脱着についての実際のイオン強度値は、好ましい事例では、さらに低くてもよく、上述の様々な要因に依存する。適切なリガンドを選択すれば、リガンド及び/又は物質の正味電荷をそれらが反対の電荷となるように変更するのにpHの変更で十分とすることができる。これは、使用する緩衝液の濃度と本質的に同じ程度となるように塩濃度を低下できることを意味する。
【0078】
脱着のために増加したイオン強度を用いる条件は、水性液体IIによって与えられる条件に応じて緩和することができる。下記を参照されたい。
液体(I)から液体(II)への変更は1以上の段階で(段階的勾配)又は連続的に(連続勾配)達成できる。マトリックスと接触する液体の様々な変数は個々に又は組合せて変更できる。
【0079】
イオン強度の変更に使用される典型的な塩は、アルカリ金属又はアンモニウムイオンの塩化物、リン酸塩、硫酸塩等から選択される。
pHの変更に使用される緩衝成分は関与するリガンドの種類に依存し、典型的には吸着工程の間は同じである。例えば、イオン交換リガンドが陽イオン性である場合には、緩衝作用をもつ酸−塩基対は、好ましくは、緩衝成分がリガンドに結合できない酸−塩基対、即ち、ピペラジン、1,3−ジアミノプロパン、エタノールアミンなどから選択される。同様に、イオン交換リガンドが陰イオン性である場合に緩衝作用をもつ酸−塩基対は、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩などである。
【0080】
脱着は、液体(II)の極性を吸着液体(I)の極性よりも低い値に調整することによって促進できる。これは、液体IIの中に水混和性の及び/又は低親水性の有機溶媒を配合することによって達成できる。
【0081】
かかる溶媒の例は、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アクリロニトリルなどである。水性液体IIの極性の低下(水性液体Iに比較して)は恐らく脱着を促進し、マトリックスからの物質の解離に必要なイオン強度を減少させる。
【0082】
脱着は、使用されるリガンドの1以上の可溶性構造類似体を配合することによっても促進できる。液体(II)中の構造類似体の濃度は水性液体(I)中のその濃度よりも高くすべきである。「リガンドの構造類似体」又は「リガンド類似体」は、リガンドと構造的類似性を有し、可溶性の形態であり、リガンドと除去すべき物質との結合を阻害することができる物質である。
【0083】
重要な変形例
変形例1:リガンド1はpH依存性の負電荷を有する陽イオン交換リガンドであり、リガンド2は荷電し得ないか又は相当部分が工程(i)のpHでは未荷電である荷電可能な塩基である。リガンド1に相当する酸のpKaはリガンド2(荷電可能な場合)に相当する酸のpKaよりも低い。吸着される物質は、リガンド2のpKaよりも高いpIを有する。液体(I)のpHは、物質が正の正味電荷を有し、イオン交換体に吸着するように選択される。pHを下げることによって、物質及び恐らくまたリガンド2はプロトン化されて、正電荷が増す。これは、中程度のpHで物質の解離を促進して、液体(II)中の低い塩濃度での脱着を可能にする。
【0084】
変形例2:リガンド1はpH依存性の正電荷を有する陰イオン交換リガンドを含んでおり、リガンド2は完全に荷電し得ないか又は相当部分が工程(i)のpHでは未荷電である荷電可能な酸である。リガンド2のpKaはリガンド1のpKaよりも高い。吸着される(脱塩される)物質のpIはリガンド1のpKa及びリガンド2のpKaのいずれよりも低い。液体(I)(工程(i))のpHは、物質が負の正味電荷を有し、リガンド2が本質的に未荷電のままで、リガンド1が正電荷を有するようにする。こうして、物質は工程(i)で吸着される。pHを増加させると、リガンド2は負に荷電されるが、これは液体(II)中の低い塩濃度で物質が脱着することを意味する。
【0085】
回収率
副態様において、本発明方法は吸着された物質の高回収率、例えば80%以上又は90%以上のような60%以上の回収率を可能にする。回収率は、吸着/結合工程でイオン交換体に添加した物質の量に対する脱着した物質の量である。多くの例において、回収率は、本発明の効果にしたがい、95%を超え、本質的に定量的とすることができる。典型的には、イオン交換体に添加する物質の量は、物質に対するイオン交換体の全結合容量の10〜80%の範囲内(例えば、20〜60%)にある。
【0086】
液体(I)から除去される物質
本発明は主として、上記で定義したリガンドと相互作用できる幾らかの構造ユニットを有する高分子量物質のためのものである。適切な物質は1000ダルトン以上の分子量を有し、生体有機及び高分子である。1分子当りの荷電基の数は典型的に1以上であり、pHに依存する。分子量及び電荷の数に関する詳細は「技術分野」の項に記載されている。物質は両性でもよい。典型的に、物質はペプチド構造(例えば、オリゴ−又はポリペプチド構造)、核酸構造、炭水化物構造、脂質構造、ステロイド構造、アミノ酸構造、ヌクレオチド構造、その他荷電又はpH−スイッチによって荷電し得る生体有機構造から選択される構造を含む。
【0087】
物質は水性媒体に溶解しても、或いは小さな生物粒子の形態(例えばコロイドディメンションのもの)でもよい。生物粒子の例示的な例は、ウイルス、細胞(細菌その他の単細胞生物を含む)並びに細胞凝集体及び細胞小器官を含む細胞の部分である。
本発明は特に、関心物質を高濃度の塩と共に含む生物学的流体から得られる水性液体に適用できると思料される。
【0088】
上述の種類の生体有機物質を含む、高イオン強度の典型的な液体は、例えば細胞培養からの発酵ブロス/液、及びそれから得られる液体である。細胞は、哺乳動物のような脊椎動物、又は無脊椎動物(例えば、チョウ及び/又はそれらの幼虫からの細胞のような培養昆虫細胞)、又は微生物(例えば、培養真菌、細菌、酵母等)に由来するものでもよい。また、植物細胞その他の好ましくは培養生体細胞も包含される。
【0089】
液体(I)が不都合な異物を含有する場合には、流動床技術を利用することが有益であろう。これは特に、液体(I)が(a)細胞の培養からの発酵ブロス/液、(b)溶菌細胞を含む液体、(c)細胞及び/又は組織のホモジネートを含む液体、並びに細胞から得られるペーストに由来するときに当てはまる。
【0090】
本明細書で説明したイオン交換体は、塩濃度の高い水性出発組成物よりも塩濃度の低い生体有機物質含有水性組成物の製造に特に適している。この種のプロセスは問題の物質の脱塩を意味する。この出願に並行して出願して、表題「低濃度の塩を含む組成物の製造方法」を有する本願出願人のSE特許出願をさらに参照されたい。
【0091】
本発明の第二の態様
この態様は、2種以上の異なるリガンド(リガンド1、リガンド2)で官能化された支持マトリックスを含むことを特徴とするイオン交換吸着剤から選択されるイオン交換吸着剤(1)を包含し、1以上のリガンドは荷電(pH依存性であってもなくてもよい)を有する。
【0092】
リガンド1は荷電されていて、単一又は混合モードのイオン交換種に属する。したがって、リガンド1は、該リガンドがファンデルワールス相互作用及び/又は電子供与体−受容体相互作用に関与できるようにする中性基を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。関与する原子及び/又は基は本発明の第一の態様について上記で定義したのと同じである。
【0093】
リガンド2は中性であっても荷電していてもよい。荷電している場合、このリガンドの荷電原子又は基は典型的にはリガンド1の荷電原子又は基とは異なる種類に属する。関連する相違点については、本発明の第一の態様を参照されたい。荷電リガンドは、リガンド1と同様に単一モード又は混合モードのリガンドであってもよい。荷電しているか否かとは無関係に、リガンド2は、上記の本発明の第一の態様でリガンド1について説明したように、リガンドが疎水性相互作用及び/又は電子供与体−受容体相互作用に関与できるようにする非荷電基及び/又は原子を含んでいてもよい。
【0094】
この態様のイオン交換体は、オバルブミン、コンアルブミン、ウシ血清アルブミン、β−ラクトアルブミン、α−ラクトアルブミン、リゾチーム、IgG、大豆トリプシンインヒビター(STI)から選択され対照物質の1種以上に対して、
(A)0.25MのNaClに相当するイオン強度の水性対照液体中で上記1種以上の対照物質を結合することができ、かつ
(B)pH範囲2〜12の部分範囲において、荷電リガンドと反対の正味電荷を有する上記1種以上の対照物質に対する最大破過容量が、
(a)物質の正味電荷が負であってイオン交換吸着剤の正味電荷が正である場合にはQ−Sepharose Fast Flow(イオン交換体2a)、及び/又は
(b)物質の正味電荷が正であってイオン交換吸着剤の正味電荷が負である場合にはSP−Sepharose Fast Flow(イオン交換体2b)
での上記1種以上の物質の破過容量の≧100%(例えば≧200%又は≧300%又は≧500%又は≧1000%)であることをさらに特徴とする。
原理的に、水性対照液体は、NaCl、緩衝成分及び荷電した関心物質を含有する。Q−Sepharose Fast Flow及びSP−Sepharose Fast Flowについては、本発明の第一の態様で説明した。
【0095】
上記の比較は、イオン交換体(1)と(2a)又はイオン交換体(1)と(2b)について本質的に同じ条件下で実施される測定をいい、pH、温度、溶媒組成、対イオン及び流速は同一である。破過容量は、フロースルー方式で同じ相対濃度の物質で(例えば、c/c=10%、c/cについては実施例を参照)測定される。
【0096】
典型的には、本発明のこの態様のイオン交換体に対して1種、2種又は3種以上の対照物質についての破過容量(300cm/時の流速のフロースルーで10%)は>2mg/mlゲル(例えば>3又は4mg/mlゲル)である。
【0097】
様々な実施形態及びそれらの優先性は、本発明の第一の態様について定義されたイオン交換体に対するものと同じである。
以下、本発明を実施例で例示する。本発明は特許請求の範囲でさらに定義される。
【0098】
【実施例】
1.確率的イオン交換吸着剤の合成
概要:
マトリックスの容積は沈降床の容積をいう。グラム単位で示すマトリックスの重量は吸引した乾燥重量をいう。大規模反応では、攪拌をモーター駆動式攪拌機で実施した。小規模反応(ゲル20mlまで)は振盪テーブル上の密封バイアル中で実施した。イオン交換体のアルキル化、エポキシ化、置換度の測定は従来法で実施した。必要に応じて、特に硫黄について元素分析を行った。
合成したイオン交換吸着剤は、ベースマトリックスとしてSepharose 6 Fast Flow(APBiotech AB社製(スウェーデン、ウプサラ))を有していた。
【0099】
1.1.Phenyl Sepharose 6 Fast Flowでのアリル基の導入
アリル化をアリルグリシジルエーテルで実施した。他の代替経路、例えば臭化アリルとの反応も存在する。
【0100】
1.1.1.Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(低置換度、フェニル20μmol/mlゲル)でのアリル基の導入
a)低度アリル置換
水10ml中の50g(固形ゲル50ml)のPhenyl Sepharose 6 Fast Flow(低置換度、フェニル20μmol/mlゲル)をNaOH含有(50%)水溶液20ml、NaBH0.2g及びNaSO0.5gと共に混合した。混合液を50℃で1時間攪拌した。アリルグリシジルエーテル7mlの添加後、懸濁液を激しい攪拌下に50℃でさらに18時間置いた。混合液を濾過後、ゲルを蒸留水5×50ml、エタノール5×50ml、蒸留水2×50ml、0.2M酢酸2×50ml及び蒸留水5×50mlで順次洗浄した。置換度はアリル0.13mmol/mlゲルであった。
b)中程度アリル置換
手順は、アリルグリシジルエーテル28mlを使用したこと以外は、1.1.1.aと同じであった。置換度はアリル0.22mmol/mlゲルであった。
c)高度アリル含量
手順は、アリルグリシジルエーテル50mlを使用したこと以外は、1.1.1.aと同じであった。置換度はアリル0.4mmol/mlゲルであった。
【0101】
1.1.2.Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(高度置換、フェニル40μmol/mlゲル)でのアリル基の導入
a)低度アリル含量
水10ml中の50g(固形ゲル50ml)のPhenyl Sepharose 6 Fast Flow(高度置換、フェニル40μmol/mlゲル)をNaOH含有(50%)水溶液20ml、NaBH0.2g及びNaSO0.5gと共に混合した。混合液を50℃で1時間攪拌した。アリルグリシジルエーテル7mlの添加後、懸濁液を激しい攪拌下に50℃でさらに18時間置いた。混合液を濾過後、ゲルを蒸留水5×50ml、エタノール5×50ml、蒸留水2×50ml、0.2M酢酸2×50ml及び蒸留水5×50mlで順次洗浄した。置換度はアリル0.17mmol/mlゲルであった。
b)中程度アリル含量
手順は、アリルグリシジルエーテル28mlを使用したこと以外は、1.1.2.aと同じである。置換度はアリル0.22mmol/mlゲルであった。
c)高度アリル含量
手順は、アリルグリシジルエーテル50mlを使用したこと以外は、1.1.2.aと同じである。置換度はアリル0.4mmol/mlゲルであった。
【0102】
1.2.スルホプロピルPhenyl Sepharose 6 Fast Flowの調製
1.2.1.Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(低置換度、フェニル20μmol/mlゲル)でのスルホプロピルの導入
a)1.1.1.aで調製した中間生成物から。得られた生成物をCat3と呼ぶ。
二亜硫酸ナトリウム9gを、水15ml中の45g(固形ゲル45ml)のアリル低置換度アリル(アリル0.13mmol/mlゲル)低置換度Phenyl(フェニル20μmol/mlゲル)Sepharose 6 Fast Flowのスラリーに加えた。NaOH水溶液(50%)を添加してpHを6.5に調整した。反応混合液を室温で攪拌下にゆっくり空気を吹き込みながら18時間保持した。混合液を濾過後、ゲルを蒸留水4×50ml、0.5M HCl2×50ml及び1mM HCl3×50mlで順次洗浄した。置換度はスルホプロピル0.12mmol/mlゲルであった。
b)1.1.1.bで調製した中間生成物から。得られた生成物をCat4と呼ぶ。
手順は、アリルの置換度が0.22mmol/mlゲルであり、反応時間が17時間であったこと以外は、1.2.1.aと同じである。置換度はスルホプロピル0.18mmol/mlゲルであった。
【0103】
1.2.2.Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(高度置換、フェニル40μmol/mlゲル)でのスルホプロピルの導入
a)1.1.2.aで調製した中間生成物から。得られた生成物をCat1と呼ぶ。
手順は、アリルの含量がアリル0.17mmol/mlゲルであり、Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(高度置換、フェニル40μmol/mlゲル)を使用したこと以外は、1.2.1.aと同じである。置換度はスルホプロピル0.12mmol/mlゲルであった。
b)1.1.2.bで調製した中間生成物から。得られた生成物をCat2と呼ぶ。
手順は、アリルの含量がアリル0.22mmol/mlゲルであり、Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(高度置換、フェニル40μmol/mlゲル)を使用したこと以外は、1.2.1.aと同じである。置換度はスルホプロピル0.15mmol/mlゲルであった。
【0104】
1.3.アリル化Phenyl Sepharose 6 Fast Flowの活性化
50mlのアリル化Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(アリル0.4mmol/mlゲル)、蒸留水50ml及び酢酸ナトリウム2gの攪拌した懸濁液中に、持続する黄色が得られるまで臭素を加えた。次いで、ギ酸ナトリウムを懸濁液が十分に脱色するまで加えた。反応混合液を濾過し、ゲルを蒸留水250mlで洗浄した。次いで、活性化ゲルを反応容器へ移して、適切なリガンド形成化合物とさらに反応させた。
【0105】
1.4.Phenyl Sepharose 6 Fast Flowから得られる陰イオン交換体
1.4.1.Phenyl Sepharose 6 Fast Flowでの1,3−ジアミノプロパン由来のアミンリガンドの導入
a)1.1.2.cで調製した中間生成物から。得られた生成物をAn1と呼ぶ。
5mlの臭素活性化、アリル化Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(アリル0.4mmol/mlゲル;フェニル40μmol/mlゲル)を1,3−ジアミノプロパン(7.5ml、リガンド形成化合物)を含有する反応バイアルに移した。反応を攪拌下55℃で17時間続けた。反応混合液を濾過後、ゲルを蒸留水3×10ml、0.5M HCl3×10ml及び最後に蒸留水3×10mlで順次洗浄した。置換度はイオン交換リガンド0.15mmol/mlゲルであった。
b)1.1.1.cで調製した中間生成物から。得られた生成物をAn2と呼ぶ。
手順は、アリル化Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(アリル0.4mmol/mlゲル;フェニル20μmol/mlゲル)を使用したこと以外は、1.4.1.aと同じである。置換度はイオン交換リガンド0.25mmol/mlゲルであった。
【0106】
1.4.2.Phenyl Sepharose 6 Fast Flowでの1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン由来のアミンリガンドの導入
a)1.1.2.cで調製した中間生成物から。得られた生成物をAn3と呼ぶ。
手順は、アリル化Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(アリル0.4mmol/mlゲル;フェニル40μmol/mlゲル)及び、1,3−ジアミノプロパンの代わりに、蒸留水(1.5ml)中1,3−ジアミノ−2−プロパノール(3g)の溶液を使用したこと以外は、1.4.1.と同じである。置換度はイオン交換リガンド0.16mmol/mlゲルであった。
b)1.1.1.cで調製した中間生成物から。得られた生成物をAn4と呼ぶ。
手順は、アリル化Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(アリル0.4mmol/mlゲル;フェニル40μmol/mlゲル)を使用したこと以外は、1.4.2.aと同じである。置換度はイオン交換リガンド0.16mmol/mlゲルであった。
【0107】
1.5.Phenyl Sepharose 6 Fast Flowから得られる陽イオン交換体
1.5.1.Phenyl Sepharose 6 Fast Flowでのメルカプトプロピオン酸由来のカルボキシリガンドの導入
a)1.1.1.cで調製した中間生成物から。得られた生成物をCat5と呼ぶ。
100mlの臭素活性化、アリル化Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(アリル0.42mmol/mlゲル;フェニル40μmol/mlゲル)を反応容器へ移し、17.5mlのメルカプトプロピオン酸(アリル基当り6当量)及びNaCl12gの水溶液(蒸留水50ml)と反応させた。添加の前に、pHを50%NaOH水溶液で11.5に調整した。反応を攪拌下50℃で18時間続けた。反応混合液の濾過及び蒸留水500mlでの洗浄によって、イオン交換ゲルを得た。置換度はCOHリガンド0.27mmol/mlゲルであった。
b)1.1.1.cで調製した中間生成物から。得られた生成物をCat5と呼ぶ。
手順は、アリル化Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(アリル0.41mmol/mlゲル;フェニル20μmol/mlゲル)を使用し、バッチサイズが50%であったこと以外は、1.5.1.aと同じであった。置換度はCOHリガンド0.28mmol/mlゲルであった。
【0108】
1.6.Sepharose 6 Fast Flowでのメルカプトプロピオン酸由来のカルボキシリガンド及び2−メルカプトピリジン由来のピリジルリガンドの導入
1.6.1.アリル化Sepharose 6 Fast Flowの調製
Sepharose 6 Fast Flow80gをNaBH0.5g、NaSO13g及び50%NaOH水溶液50mlと共に混合した。混合液を50℃で1時間攪拌した。アリルグリシジルエーテル100mlの添加後、懸濁液を激しい攪拌下に50℃でさらに18時間置いた。混合液を濾過後、ゲルを蒸留水500ml、エタノール500ml、蒸留水200ml、0.2M酢酸200ml及び蒸留水500mlで順次洗浄した。置換度はアリル0.41mmol/mlゲルであった。
【0109】
1.6.2.アリル化Sepharose 6 Fast Flowの臭素化による活性化
これは、アリル化Sepharose 6 Fast Flowを使用したこと以外は、上記1.3に記載の通り実施した。
【0110】
1.6.3.2−メルカプトピリジン由来のピリジルリガンド(低置換度)及びメルカプトプロピオン酸由来のカルボキシリガンドで置換されたSepharose 6 Fast Flowの合成。生成物をCatAn1と呼ぶ。
反応バイアル中で、0.5M重炭酸ナトリウム5ml中の2−メルカプトピリジン0.5mmolの溶液のpHを50%NaOH水溶液の添加によってpH10.5に調整した。別に、蒸留水1ml中3−メルカプトプロピオン酸1.2gの溶液を調製し、そのpHを50%NaOH水溶液の添加によって11に調整した。2−メルカプトピリジン溶液を含有するバイアルに、10mlの臭素活性化、アリルSepharose 6 Fast Flow(アリル0.41mmol/mlゲル)を加え、反応を攪拌下50℃で継続した。1.5時間後、3−メルカプトプロピオン酸を含有する溶液を加え、混合液を45℃で16時間攪拌した。反応混合液を濾過し、ゲルを蒸留水5×10mlで洗浄した。微量分析により、ピリジンリガンドについて43μmol/mlゲル及びプロピオン酸リガンドについて251μmol/mlゲルの置換度を得た。
【0111】
1.6.4.2−メルカプトピリジン由来のピリジルリガンド(中程度置換)及びメルカプトプロピオン酸由来のカルボキシリガンドで置換されたSepharose 6 Fast Flowの合成。生成物をCatAn2と呼ぶ。
手順は、2−メルカプトピリジンの量を2倍に増したこと以外は、1.6.3.と同じであった。微量分析により、ピリジンリガンドについて86μmol/mlゲル及びプロピオン酸リガンドについて215μmol/mlゲルの置換度を得た。
【0112】
1.6.5.2−メルカプトピリジン由来のピリジルリガンド(高度置換)及びメルカプトプロピオン酸由来のカルボキシリガンドで置換されたSepharose 6 Fast Flowの合成。生成物をCatAn3と呼ぶ。
手順は、2−メルカプトピリジンの量を3倍に増したこと以外は、1.6.3.と同じであった。微量分析により、ピリジンリガンドについて127μmol/mlゲル及びプロピオン酸リガンドについて171μmol/mlゲルの置換度を得た。
【0113】
2.クロマトグラフィー
2.1.混合リガンド陽イオン交換媒体
3種類の精製タンパク質[塩基性(リゾチーム=Lys)、中性〜弱塩基性(IgG)及び酸性(BSA)タンパク質を代表する]を使用して、新しいシリーズの「高塩」混合リガンド陽イオン交換媒体の破過容量(Qb10%)について特性決定した。リゾチームの結合及び溶出は、通常の陽イオン交換操作法、即ち、中性pHでの吸着と、同じpHにおける高濃度の塩(例えば2MのNaCl)を含有する緩衝液での溶出によって実施した。IgGは、pH4.5で結合させ、比較的低濃度(0.1M)の塩を含有するpH7.0の緩衝液で溶出させた。IgGは、高pHよりも低pHで各種媒体に対する吸着量を大幅に増すことができるので、低いpHで結合させた。BSAは、BSAが正に荷電されるpH4.0(BSAのpI=4.9)で結合させ、IgGと同様に、pHを7.0に上げることによって溶出させた。さらに、3種類の塩基性タンパク質(リボヌクレアーゼ、チトクロームC及びリゾチーム)の溶出伝導率を全ての混合リガンド陽イオン交換媒体について測定した。新しいシリーズの「高塩」混合リガンド陽イオン交換媒体について破過容量及び溶出伝導率の測定に使用した手順を以下に概説する。
【0114】
2.1.1.「高塩」条件下での破過容量(Qb 10%
混合リガンド陽イオン交換媒体が「高塩」媒体としての条件を満足するか否かの主な判定基準の一つは、同一条件下で操作される対照陽イオン交換体と比較して比較的高い濃度の塩の存在下でのタンパク質についての結合容量である。破過容量は以下に記載の先端分析(frontal analysis)の方法を用いて測定される。
【0115】
2.1.2.実験
緩衝液
緩衝液1:20mMリン酸ナトリウム、0.3M塩化ナトリウム、pH6.8
緩衝液2:20mM酢酸ナトリウム、0.25M塩化ナトリウム、pH4.0
緩衝液3:20mM酢酸ナトリウム、0.25M塩化ナトリウム、pH4.5
緩衝液4:20mMリン酸ナトリウム、2M塩化ナトリウム、pH6.8
緩衝液5:100mMリン酸ナトリウム、pH7.0
【0116】
タンパク質溶液
1.リゾチーム:緩衝液1中4mg/mL
2.BSA:緩衝液2中4mg/mL
3.IgG:緩衝液3中4mg/mL
全ての緩衝液及びタンパク質溶液は、使用前に、0.45μmのMillipore Millex HAフィルターで濾過した。
【0117】
2.1.3.クロマトグラフィーシステム
全ての実験は、Unicorn 3.1ソフトウエア(Amersham Pharmacia Biotech AB社製(スウェーデン、ウプサラ))を装備したAekta Explorer 100クロマトグラフィーシステムを用いて室温で実施した。試料を150mLスーパーループからカラムに加えた。溶出液を10mmフローセルを用いて280nmにおける吸光度測定により連続的にモニターした。
【0118】
先端分析
「高塩」混合リガンド陽イオン交換媒体の各々のプロトタイプをHR5/5カラム(充填床容積=1mL)に充填し、適切なpH及び塩濃度(緩衝液1、2又は3)の緩衝液で平衡化した。適切なタンパク質溶液を1mL/分(即ち300cm/時)の流速でカラムに供給した。試料の添加は、溶出液のA280がカラムに加えた試料のA280の10%レベルに達するまで継続した。試料についての最大UVシグナルは、UV検出器に試験溶液を直接注入することによって評価した。こうして得たデータに基づいて(式1参照)、添加タンパク質の濃度の10%レベルにおける充填ゲルの破過容量(Qb10%)を計算できる。こうして得られた結果は、多数の「高塩」混合リガンド陽イオン交換媒体をスクリーニングするための基礎をなし、以下、3種類のタンパク質、即ち、リゾチーム、ウシ血清アルブミン(BSA)及びヒト免疫グロブリン(IgG)について例示する。
【0119】
最大吸光度の10%レベルでの破過(Qb10%)は以下の関係式を用いて計算した。
Qb10%=(TR10%−TRD)×C/V (1)
TR10%=最大吸光度の10%での保持時間(分)
RD=系のボイド容積(分)
C=供給タンパク質の濃度(4mg/mL)
=カラムの充填床容積(mL)
【0120】
2.1.5.機能試験
混合リガンド陽イオン交換媒体を1.0mLのHR5/5カラムに充填し、20カラム容積の緩衝液A(20mMピペラジン緩衝液、pH6.0)で平衡化した。50μlのタンパク質混合液(6mg/mLリボヌクレアーゼ、2mg/mLチトクロームC及び2mg/mLリゾチーム)をカラムに加えて、100%の緩衝液B(緩衝液Aプラス2.0MのNaCl)への直線的勾配(勾配容積=20カラム容積)により溶出させた。流速は0.3mL/分(100cm/時)に保持した。
【0121】
2.2.混合リガンド陰イオン交換媒体
本発明で提案される媒体が対照陰イオン交換体よりも高いイオン強度でタンパク質を吸着することを検証するため、ウシ血清アルブミン(BSA)の破過容量を測定した。Sepharose 6 Fast Flowに結合した陰イオン交換リガンドをベースとする新しい「高塩」混合リガンドをこの試験のQ Sepharose 6 Fast Flowと比較した。加えて、BSAの回収率(脱着できる吸着BSAの量、詳細について以下を参照)についても試験した。さらに、3種類のタンパク質、即ち、コンアルブミン(Con A)、ラクトアルブミン(Lactalb)及び大豆トリプシンインヒビター(STI)、の溶出伝導率をまた全ての陰イオン交換体について測定した。この機能試験を用いて、他のタンパク質について高塩条件下での遅延についても同様に検証した。
【0122】
2.2.1.高塩条件下での破過容量(Qb 10%
Qb10%値は、同一条件下で操作される対照陰イオン交換体Q Sepharose 6 Fast Flowと対比して比較的高い塩濃度で評価した。様々な陰イオン交換媒体についてのQb10%値は以下に記載の先端分析の方法を用いて測定した。
【0123】
BSA(4mg/mL)の溶液は、0.25MのNaClを含有する20mMピペラジン(pH=6.0)中で調製した。緩衝液及びタンパク質溶液は使用前に0.45μmのMillipore Millex HAフィルターで濾過し、実験は2.1.3.に記載したものと同一の装置及び機器設定で実施した。
【0124】
混合リガンド陰イオン交換媒体の各プロトタイプをHR5/5カラム(充填床容積=1mL)に充填し、ピペラジン緩衝液(20mMピペラジン、pH=6.0、0.25MのNaClを含有)で平衡化した。BSA試料溶液の最大吸光度の10%レベルにおける破過容量(Qb10%BSA)を2.1.4.に記載の手順で計算した。
【0125】
2.2.2.回収率
カラムのタイプ、充填床容積、緩衝液、タンパク質溶液、流速及び機器の種類は上記の通りである。ピペラジン緩衝液(20mMピペラジン、HCl、pH=6.0、0.25MのNaCl)で平衡化したカラムに、BSA溶液を50mLスーパールーフから、その破過容量の30%に相当する量が添加されるまで、加えた。次いで、カラムを2床容積の平衡緩衝液で洗浄し、結合したBSAを脱着緩衝液(20mMピペラジン、pH=6.0、2.0MのNaCl)で溶出した。溶出したBSAの量を計算し、BSAの回収率を以下の関係式を用いて確定した。
溶出したBSAの濃度は次の式2で計算した。
=A/ε・b (2)
=溶出したBSA試料の濃度(mg/mL)
A=280nmにおける吸光度
ε=特定の波長におけるモル吸光率、M−1cm−1
b=光路長、cm
次の式3をBSAの回収率の計算に使用した。
回収率、%=C・V/C・V (3)
=溶出したBSA溶液の容積、mL
=添加したBSA溶液の濃度、mg/mL
=添加したBSA溶液の容積、mL
【0126】
2.2.3.機能試験
「高塩」混合リガンド陰イオン交換媒体をHR5/5カラム(1mL床容積)に充填し、20カラム容積のA−緩衝液(20mMリン酸塩緩衝液、pH6.8)で平衡化した。50μlのタンパク質混合液(6mg/mLCon A、4mg/mLラクトアルブミン及び6mg/mLSTI)をカラムに加えて、100%のB−緩衝液(A−緩衝液プラス2.0MのNaCl)への直線的勾配(勾配容積=20カラム容積)により溶出させた。流速を0.3mL/分(100cm/時)に保持した。
【0127】
2.3.結果
2.3.1.高塩条件下での混合リガンド陽イオン交換媒体の破過容量及び通常の陽イオン交換クロマトグラフィー条件下での溶出伝導率
一連の代表的な「高塩」混合リガンド陽イオン交換媒体(表1参照)についての破過容量について得られた結果を表2にまとめた。表1は、本発明の幾らかの基本概念を例示するために用いた様々な媒体の幾らかの特定のリガンド性質を示す。大多数のこれらの新しい混合リガンド陽イオン交換体のリガンド比は3〜14の範囲内にあった。対照陽イオン交換体として、市販のSulphopropyl(又はSP)Sepharose 6 Fast Flowを使用した。そのリガンド濃度は約0.22mmol/充填ゲルmLであった。結果(表2)は以下の傾向を示す。
1.新しい陽イオン交換リガンドは、1種類を除いて、対照陽イオン交換体SP Sepharose 6 Fast Flowに比較して、3種類のタンパク質すべてに対して格段に高いQb10%を有する。
2.CatAn3はLys(54mg/mL)に対して、Cat5及びCat6はHSA(45mg/mL)に対して、CatAn1はIgG(26mg/mL)に対して、最大Qb10%を与えた。これらの値は、上記4種類の媒体で、対照陽イオン交換体(SP Sepharose 6 Fast Flow)に比べて、Lys、HSA及びIgGについてそれぞれ1300%、1500%及び2600%の増加に相当する。
3.媒体Cat1、Cat2及びCat3は、IgGよりもBSAに対して格段に高いQb10%を有する。これらの結果は、これらの媒体がIgG製剤からBSAを除去するのに有用であることを示唆する。
4.3種類の媒体CatAn1〜3は、リゾチーム及びIgGのQb10%値が2つの混合リガンド(メルカプトプロピオン酸及びメルカプトピリジン)のリガンド比にどのように関係しているかを示す。リガンド比(メルカプトプロピオン酸のリガンド密度/メルカプトピリジンのリガンド密度)が減少すると、Qb10%Lysは増加し、Qb10%IgGは減少する(表1及び表2)。3種類のタンパク質の通常の陽イオン交換クロマトグラフィーにおける溶出伝導率(表2)も、媒体CatAn1〜3のリガンド比により選択性に大きい変動を示す。
【0128】
2.3.2.高塩条件下での混合リガンド陰イオン交換媒体の破過容量及び通常の陰イオン交換クロマトグラフィーにおける溶出伝導率
一連の代表的な「高塩」混合リガンド陰イオン交換媒体(An1〜4)についての破過容量について得られた結果を表3にまとめ、リガンドの構造を表1に示した。対照陰イオン交換体として、市販のQ Sepharose Fast Flowを使用した。結果は以下の傾向を示す。
1.新しい混合−リガンド陰イオン交換媒体は、対照陰イオン交換体Q Sepharose Fast Flowに比べて、3種類のタンパク質すべてに対して格段に高い溶出伝導率を有する(表3)。
2.新しい陰イオン交換リガンドは、Q Sepharose Fast Flowに比較して、BSAに対して格段に高い破過容量(Qb10%BSA)を有する。最大Qb10%値を与える媒体は、対照陰イオン交換体に比べて2900%の増加に相当する。表3に示す媒体の中で最も低いQb10%値を与えた媒体は、Q Sepharose Fast Flowに比べて2200%の増加を示した。
3.回収率のデータは、吸着BSAが塩工程によって71%を超える回収率で溶出できることを示す(表3)。
【0129】
【表1】
Figure 2004516928
【0130】
【表2】
Figure 2004516928
【0131】
【表3】
Figure 2004516928
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