JP2009167307A - アミノ化セルロースおよびその製造法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、新規なアミノ化セルロースおよびその製造法に関するものである。
アミノ化セルロースは、医療用吸着材の素材として提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、陰イオン性染料に対して良い染色性を示す素材(例えば、特許文献2参照)、紙力増強剤の構成成分(例えば、特許文献3参照)としても用いられている。これらの用途に用いられるアミノ化セルロースは、原料セルロースの水酸基に対してエピクロロヒドリンとアルカリを作用させ、次いでアンモニア水や2つ以上のアミノ基を有する化合物(多価アミン)を反応させることで製造されている。別の方法としては、パラトルエンスルホン酸クロリドや、2−フルオロ−1−メチルピリジニウムなどを用いて水酸基を活性化した後、アンモニア水や多価アミンを反応させることによって製造されている。
アミンとして多価アミンを結合させたアミノ化セルロースの別の用途としては、金属イオン、とりわけ水銀、銅、鉛等の重金属イオンを捕捉する吸着材がある(例えば、特許文献4参照)。この用途に対しては、繊維の単位質量あたりなるべく多くのアミノ基を導入する必要があるため、上述の方法に加えて、メタクリル酸グリシジルやアクリル酸グリシジルといったモノマーをグラフト反応により導入し、次いでそのエポキシ基に多価アミンを反応させるという製造方法も利用されている。
本発明者の検討によれば、セルロースに置換している水酸基に対してエピクロロヒドリンとアルカリを作用させ、次いでアンモニア水や多価アミンを反応させる方法においては、アミノ基を導入できる反応点が限られているため、繊維の単位質量あたりのアミノ基導入率は低いレベルにとどまるものであった。また、パラトルエンスルホン酸クロリドや、2−フルオロ−1−メチルピリジニウムなどを用いる方法は、非水反応条件が必要であり、一般性に欠ける特殊なものである。メタクリル酸グリシジルやアクリル酸グリシジルといったモノマーをグラフト反応により繊維に導入し、次いでそのエポキシ基に多価アミンを反応させるという製造方法は、グラフト反応によって導入されたエポキシ基の反応性が低く(例えば、非特許文献1参照)、結果的に低いアミノ基導入率にとどまるのが実状である。
特開2002−369881号公報
特開平8−113821号公報
特開平7−207595号公報
特開2001−123381号公報
J.Appl.Polymer Sci.、第56巻、25ページ(1995年)
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、アミノ基導入率の高いアミノ化セルロースを提供することにあり、かつそのようなセルロースを厳密な非水反応条件を必要としない穏和な条件下に製造できる方法を提供することにある。
本発明者は上記課題を鋭意研究し、下記一般式(1)で示される置換基を有することを特徴とするアミノ化セルロースが、前記課題の解決に極めて有効なことを見出して本発明に到達した。
式(1)中、Rは二価の連結基、Gは多価アミンから水素原子を一つ除いた残基を示す。
また、一般式(1)において、Gがエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、またはポリエチレンイミンから水素原子を一つ除いた残基であることが好ましいことを見出した。
本発明者は、また、親電子基を導入したセルロースに、下記一般式(2)で示される化合物を反応させるという製造方法により、前記課題が解決されることも見出して本発明に到達した。
式(2)中、Rは二価の連結基、Gは多価アミンから水素原子を一つ除いた残基を示す。
また、親電子基がエポキシ基であることが好ましいことを見出した。
本発明によれば、多価アミンから水素原子を一つ除いた残基Gが連結基Rを介して求核性の高いメルカプト基につながれた一般式(2)で示される化合物を利用することにより、穏和な条件かつ高い収率で、アミノ基導入率の高いアミノ化セルロースを得ることができる。本発明においては、パラトルエンスルホン酸クロリドや、2−フルオロ−1−メチルピリジニウムを用いる場合のように、厳密な非水条件を必要としない。メタクリル酸グリシジルやアクリル酸グリシジルといったモノマーをグラフト反応によりセルロースに導入した場合であっても、そのエポキシ基に対して収率良く反応させることができる。本発明によって得られたアミノ化セルロースは、すでに述べてきた医療用吸着材、染色性を示す素材、紙力増強剤の構成成分、重金属イオンを捕捉する吸着材等の用途に有効に使用することができ、産業上有用な素材である。
本発明に係わるセルロースは、天然型、再生型の区分に制限されず、例えば綿、麻等の植物繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセル等の再生繊維を使用することができる。これらの中でも天然セルロースは、機械的強度が強いため好ましい。セルロースの形状には格別の制限はなく、長繊維のモノフィラメント、マルチフィラメント、短繊維の紡績糸であっても構わない。さらに、これを織物状もしくは編物状に製織もしくは製編した布帛、あるいは不織布の形態であってもよい。2種以上の繊維を複合もしくは混紡した繊維や織・編物、不織布であってもよい。
一般式(1)のGで示される基は、多価アミンから水素原子を一つ除いた残基を示す。具体的な例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(3−アミノプロピル)アミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等から水素原子を一つ除いた残基を挙げることができる。ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンの数平均分子量は特に制限されるものではないが、反応性やコストの点から、500以上10,000,000以下が好ましく、より好ましくは500以上5,000,000以下である。これらの中で、陰イオン性染料に対する染色性を改善するためのセルロース改質剤や、重金属イオン捕捉材として用いられているポリエチレンイミンと、その低分子量同族体であり、入手が容易なエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、およびペンタエチレンヘキサミンが好ましい。
一般式(1)のRで示される基は、二価の連結基を示す。具体的にはアルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、−SO2−、−SO−、−O−、−S−、−CO−、−NQ−(Qは、アルキル基、アリール基または水素原子を示す)を単独または組み合わせて構成されるものが挙げられる。アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基は、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコシキ基、フェニル基等のアリール基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、水酸基等の置換基を有していても良い。これらの中でRの好ましい例としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキレン基と−CO−の組み合わせを挙げることができる。具体的には、1,2−エタンジイル基、1,3−プロパンジイル基、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジイル基、2−ブテン−1,4−ジイル基、1−オキソ−1,2−エタンジイル基、1−オキソ−1,3−プロパンジイル基等が挙げられる。
一般式(2)で示される化合物を反応させるために、セルロースに導入される親電子基としては、塩素原子や臭素原子等のハロゲン原子を有する基やエポキシ基を挙げることができる。中でもエポキシ基は、比較的安定なために取り扱いが容易である一方で、一般式(2)で示される化合物とよい反応性を示すことから好ましい。これらの基をセルロースに導入するには、セルロース上の水酸基にエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、クロロアセチルクロリド等を反応させる方法や、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等をグラフト重合させてエポキシ基を導入する方法がある。
親電子基を導入したセルロースと一般式(2)で示される化合物との反応の条件には特別な制限はない。溶媒としては水のほかに、メタノール、エタノール、2−プロパノール、メチルセロソルブ等のアルコール類、DMF、DMSO等の非プロトン性極性溶媒が好ましく用いられる。親電子基が塩素原子や臭素原子等のハロゲン原子を有する基である場合には、遊離するハロゲン化水素をトラップするために、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を併用する。
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものでない。なお、実施例中の部数や百分率は質量基準である。
実施例1
広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)10gを水1リットルに懸濁させ、硫酸第一鉄アンモニウム・6水和物0.4gを加えて、室温で30分攪拌した。濾過、水洗後、メタクリル酸グリシジル12.0g、ノニオン系界面活性剤0.6g、二酸化チオ尿素0.5g、蒸留水400mlを加えて、窒素雰囲気下に置き、60℃に加温して、過酸化水素1.4gを滴下した。同温にてさらに3時間攪拌した後、濾過し、蒸留水0.4リットル、メタノール0.2リットルにて洗浄した。得られたグラフト化物の収量は20.6gであった。水冷下、ジエチレントリアミン0.62gにチオグリコール酸メチル0.18mlを加えたのち、75℃の湯浴にて1時間加熱した。GC分析により、チオグリコール酸メチルが完全に消失していることを確認した。ここへ上記のグラフト化物1.00gとメタノール20mlを加えて、4時間還流した。生成物を濾取し、蒸留水200mlと攪拌洗浄、濾取、乾燥して、アミノ化セルロース1.28gを得た。IR:1719、1643、1540cm-1。セルロースの質量増加分0.28gは、ジエチレントリアミンとチオグリコール酸メチルの1:1縮合物に換算して1.58mmolに相当する。
広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)10gを水1リットルに懸濁させ、硫酸第一鉄アンモニウム・6水和物0.4gを加えて、室温で30分攪拌した。濾過、水洗後、メタクリル酸グリシジル12.0g、ノニオン系界面活性剤0.6g、二酸化チオ尿素0.5g、蒸留水400mlを加えて、窒素雰囲気下に置き、60℃に加温して、過酸化水素1.4gを滴下した。同温にてさらに3時間攪拌した後、濾過し、蒸留水0.4リットル、メタノール0.2リットルにて洗浄した。得られたグラフト化物の収量は20.6gであった。水冷下、ジエチレントリアミン0.62gにチオグリコール酸メチル0.18mlを加えたのち、75℃の湯浴にて1時間加熱した。GC分析により、チオグリコール酸メチルが完全に消失していることを確認した。ここへ上記のグラフト化物1.00gとメタノール20mlを加えて、4時間還流した。生成物を濾取し、蒸留水200mlと攪拌洗浄、濾取、乾燥して、アミノ化セルロース1.28gを得た。IR:1719、1643、1540cm-1。セルロースの質量増加分0.28gは、ジエチレントリアミンとチオグリコール酸メチルの1:1縮合物に換算して1.58mmolに相当する。
(比較例1)
ジエチレントリアミンを、チオグリコール酸メチルとあらかじめ反応させることを省く以外は、実施例1と同様に操作した。生成物の収量は1.03gであった。セルロースの質量増加分0.03gは、ジエチレントリアミンに換算して0.29mmolに相当する。
ジエチレントリアミンを、チオグリコール酸メチルとあらかじめ反応させることを省く以外は、実施例1と同様に操作した。生成物の収量は1.03gであった。セルロースの質量増加分0.03gは、ジエチレントリアミンに換算して0.29mmolに相当する。
(比較例2)
ジエチレントリアミンを、チオグリコール酸メチルとあらかじめ反応させることを省き、パルプとの反応条件をメタノール還流からDMSO中75℃加熱に換える以外は、実施例1と同様に操作した。生成物の収量は1.05gであった。セルロースの質量増加分0.05gは、ジエチレントリアミンに換算して0.49mmolに相当する。
ジエチレントリアミンを、チオグリコール酸メチルとあらかじめ反応させることを省き、パルプとの反応条件をメタノール還流からDMSO中75℃加熱に換える以外は、実施例1と同様に操作した。生成物の収量は1.05gであった。セルロースの質量増加分0.05gは、ジエチレントリアミンに換算して0.49mmolに相当する。
実施例2
ジエチレントリアミン0.62gをトリエチレンテトラミン0.88gに換えた以外は実施例1と同様に操作して、アミノ化セルロース1.32gを得た。セルロースの質量増加分0.32gは、トリエチレンテトラミンとチオグリコール酸メチルの1:1縮合物に換算して1.45mmolに相当する。
ジエチレントリアミン0.62gをトリエチレンテトラミン0.88gに換えた以外は実施例1と同様に操作して、アミノ化セルロース1.32gを得た。セルロースの質量増加分0.32gは、トリエチレンテトラミンとチオグリコール酸メチルの1:1縮合物に換算して1.45mmolに相当する。
実施例3
ジエチレントリアミン0.62gをテトラエチレンペンタミン1.13gに換えた以外は実施例1と同様に操作して、アミノ化セルロース1.34gを得た。セルロースの質量増加分0.34gは、テトラエチレンペンタミンとチオグリコール酸メチルの1:1縮合物に換算して1.30mmolに相当する。
ジエチレントリアミン0.62gをテトラエチレンペンタミン1.13gに換えた以外は実施例1と同様に操作して、アミノ化セルロース1.34gを得た。セルロースの質量増加分0.34gは、テトラエチレンペンタミンとチオグリコール酸メチルの1:1縮合物に換算して1.30mmolに相当する。
実施例4
ジエチレントリアミン0.62gをペンタエチレンヘキサミン1.39gに換えた以外は実施例1と同様に操作して、アミノ化セルロース1.38gを得た。セルロースの質量増加分0.38gは、ペンタエチレンヘキサミンとチオグリコール酸メチルの1:1縮合物に換算して1.24mmolに相当する。
ジエチレントリアミン0.62gをペンタエチレンヘキサミン1.39gに換えた以外は実施例1と同様に操作して、アミノ化セルロース1.38gを得た。セルロースの質量増加分0.38gは、ペンタエチレンヘキサミンとチオグリコール酸メチルの1:1縮合物に換算して1.24mmolに相当する。
実施例5
ジエチレントリアミン0.62gをエチレンジアミン0.36gに換えた以外は実施例1と同様に操作して、アミノ化セルロース1.19gを得た。セルロースの質量増加分0.19gは、エチレンジアミンとチオグリコール酸メチルの1:1縮合物に換算して1.42mmolに相当する。
ジエチレントリアミン0.62gをエチレンジアミン0.36gに換えた以外は実施例1と同様に操作して、アミノ化セルロース1.19gを得た。セルロースの質量増加分0.19gは、エチレンジアミンとチオグリコール酸メチルの1:1縮合物に換算して1.42mmolに相当する。
実施例6
ジエチレントリアミン0.62gをポリエチレンイミン(BASF社、商品名:LupasolFG)4gに換え、チオグリコール酸メチルの量を0.18mlから0.49mlに変えた以外は実施例1と同様に操作して、アミノ化セルロース1.44gを得た。IR:1722、1645、1551cm-1。
ジエチレントリアミン0.62gをポリエチレンイミン(BASF社、商品名:LupasolFG)4gに換え、チオグリコール酸メチルの量を0.18mlから0.49mlに変えた以外は実施例1と同様に操作して、アミノ化セルロース1.44gを得た。IR:1722、1645、1551cm-1。
(比較例3)
ポリエチレンイミン(BASF社、商品名:LupasolFG)を、チオグリコール酸メチルとあらかじめ反応させることを省き、パルプとの反応条件をメタノール還流からDMSO中75℃加熱に換えた以外は、実施例6と同様に操作した。生成物の収量は1.21gであった。
ポリエチレンイミン(BASF社、商品名:LupasolFG)を、チオグリコール酸メチルとあらかじめ反応させることを省き、パルプとの反応条件をメタノール還流からDMSO中75℃加熱に換えた以外は、実施例6と同様に操作した。生成物の収量は1.21gであった。
実施例7
N,N−ジエチル−N′−メチルエチレンジアミン1.30g、エピクロロヒドリン0.93g、メタノール30mlの溶液を3時間還流し、NaSH0.62gをメタノール5mlに溶解したものを加えて、さらに2時間還流した。ここへ実施例1で用いたグラフト化パルプ1.0gと炭酸ナトリウム1.06gを加えてさらに2時間還流した後、実施例1と同様に後処理して、アミノ化セルロース1.27gを得た。セルロースの質量増加分0.27gは、N,N−ジエチル−N′−メチルエチレンジアミン、エピクロロヒドリン、NaSHの1:1:1反応物に換算して1.22mmolに相当する。
N,N−ジエチル−N′−メチルエチレンジアミン1.30g、エピクロロヒドリン0.93g、メタノール30mlの溶液を3時間還流し、NaSH0.62gをメタノール5mlに溶解したものを加えて、さらに2時間還流した。ここへ実施例1で用いたグラフト化パルプ1.0gと炭酸ナトリウム1.06gを加えてさらに2時間還流した後、実施例1と同様に後処理して、アミノ化セルロース1.27gを得た。セルロースの質量増加分0.27gは、N,N−ジエチル−N′−メチルエチレンジアミン、エピクロロヒドリン、NaSHの1:1:1反応物に換算して1.22mmolに相当する。
実施例1〜7と比較例1〜3から明らかなように、本発明によれば穏和な条件下に、アミノ基導入率の高いセルロースが得られる。また実施例1と比較例2、実施例6と比較例3から明らかなように、DMSOのような酸化性を有する溶媒を用いることなく、アミノ基導入率の高いセルロースが得られる。
本発明によるアミノ化セルロースは、医療用吸着材の素材、陰イオン性染料に対して良い染色性を示す素材、紙力増強剤、あるいは金属イオン吸着材の構成成分として利用可能である。
Claims (4)
- 一般式(1)において、Gがエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、またはポリエチレンイミンから水素原子を一つ除いた残基である請求項1記載のアミノ化セルロース。
- 親電子基がエポキシ基である請求項3記載のアミノ化セルロースの製造法。
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