(第1の実施形態)
図1及び図2は本発明における第1の実施形態に係る現像装置1を示したものであり、レジスト膜がその表面に形成されたウエハWが搬送されて処理される。前記レジスト膜は、所定のパターンに沿って露光されている。この現像装置1は基板保持部であるスピンチャック11を備えており、スピンチャック11は、ウエハWの裏面中央部を吸着して、ウエハWを水平に保持する。またスピンチャック11は、回転軸12を介して下方に設けられた回転駆動部13に接続されている。
現像装置1には、スピンチャック11に保持されたウエハWを取り囲むようにカップ体2が設けられている。このカップ体2は、外カップ21と内カップ22とから成り、カップ体2の上方側は開口している。前記外カップ21は上部側が四角形状であり、下部側が円筒状である。図中23は、外カップ21の下部側に設けられる段部であり、図中24はこの段部23に接続される昇降部である。前記内カップ22は円筒状であり、上部側が内側に傾斜している。内カップ22の下端面が前記外カップ21の昇降時に段部23と当接することによって、上方へ押し上げられる。ウエハWから現像液を除去する際に、点線で示すようにカップ体2は上昇して、ウエハWから飛散する液を受け止める。
スピンチャック11に保持されたウエハWの下方側には円形板25が設けられており、円形板25の外側には縦断面形状が山形のガイド部材26が、リング状に設けられている。前記ガイド部材26は、ウエハWよりこぼれ落ちた現像液や洗浄液を、円形板25の外側に設けられる液受け部27にガイドする。液受け部27は、環状の凹部として構成される。図中28は排液管であり、液受け部27に接続されている。廃液管28は廃液タンク(不図示)に接続され、その途中には気液分離器(不図示)が設けられ、排気と廃液の分離が行われる。15は昇降機構であり、ピン14を昇降させる。ピン14の昇降により、図示しない基板搬送機構とスピンチャック11との間でウエハWを受け渡すことができる。
現像装置1は、現像液ノズル31を備えている。この現像液ノズル31は、ウエハWに現像液を供給して液溜まりを形成すると共に、この液溜まりに旋回流を発生させる役割を有する。つまり、現像液ノズル31は、ノズルの役割の他に旋回流発生機構の役割も果たす。図3は、現像液ノズル31の縦断側面図である。また、図4、図5は、夫々現像液ノズル31の上面図、下面図である。現像液ノズル31は上下に長い円柱形状に構成され、その上面には凹部32が設けられている。凹部32の底面には、現像液ノズル31の中心軸まわりに複数の開口部33が開口している。各開口部33は、当該現像液ノズル31の下面35の中央部に、垂直に開口した吐出口36に接続されている。
前記下面35は円形であり、スピンチャック11に載置されたウエハWと平行するように形成されている。前記吐出口36は現像液ノズル31の中心軸上、つまり前記下面35の中心部に開口している。下面35の直径d1は、ウエハWの直径よりも小さい。ウエハWの直径は、例えば450mmであるが、これより小さい径のウエハWを用いることもできる。ウエハWの径が大きいほど、既述の現像液の消費量、液跳ね及びスループットの各問題に対して大きな改善効果が期待される。現像液ノズル31の材質としては、後述するように表面張力によって現像液を撹拌できるように、例えば樹脂が用いられる。この樹脂としては、例えばPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が用いられる。
前記凹部32の底面から鉛直上方へ、現像液ノズル31の中心軸に沿って軸37が伸びており、当該軸37の上端は回転機構38に接続されている。回転機構38により、現像液ノズル31は前記中心軸まわりに回転(自転)できるように構成されている。つまり、現像液ノズル31は、前記吐出口36の周りに沿って回転する。前記凹部32には、現像液供給管39の下流端が開口し、当該現像液供給管39から凹部32へ供給された現像液は、吐出口36からウエハWに吐出される。現像液供給管39の下流端は、回転機構38に対して固定されている。図中3Aは現像液の供給源であり、現像液供給管39の上流端に接続されている。この現像液供給源3Aはポンプやバルブなどを備え、後述の制御部10からの制御信号に従って、現像液ノズル31へ現像液を供給する。
ウエハWに対して現像処理を行うときに、図3に示すように現像液ノズル31の下面35は、ウエハWに近接して対向する。このとき、ウエハW表面と現像液ノズル31の下面35との距離d2は、例えば0.5mm〜2mmである。このように下面35がウエハWに近接した状態で吐出口36からウエハWに現像液が吐出されることで、現像液ノズル31の下方には当該下面35に接触した状態の液溜まり30が形成される。
このように液溜まり30が形成された状態で、回転機構38により現像液ノズル31が前記中心軸周りに回転する。図6、図7は、このように現像液ノズル31が回転するときの液溜まり30の様子を示す側面図である。形成された液溜まり30と現像液ノズル31の下面35との間には表面張力が働き、これら液溜まり30と前記下面35とは互いに引き合っている。現像液ノズル31が回転すると、この表面張力により、液溜まり30には当該液溜まり30が回転する作用が加えられ、図6中矢印で示すように現像液ノズル31の回転方向に沿った液流れ、即ち旋回流が発生する。図8では、上方から見た旋回流を示している。図8中、鎖線の矢印で現像液ノズル31の回転方向を示し、実線の矢印で液溜まり30における現像液の流れる方向を示している。
このように旋回流が発生することにより、現像液ノズル31の下方では図7に矢印で示すように現像液が撹拌され、現像液の濃度の均一性が高くなる。つまり、ウエハW表面においてレジストと現像液とが反応し、それによってウエハW表面の現像液の濃度が低下しても、上記のように現像液が撹拌されているため、その濃度の低下した現像液はウエハW表面から離れ、レジストと未反応で濃度が高い現像液がウエハW表面に供給される。従って、現像液とレジストとの間における反応が促進される。また、ウエハWの面内において前記現像液ノズル31の下面35の下方領域については、そのように現像液の濃度の均一性が高くなるので、均一性高くレジストと現像液との反応が進行する。即ち、レジストパターンのCDの均一性が高くなる。
この現像装置1では、後述するように現像液ノズル31を水平方向に移動させ、液溜まり30をウエハWの中心部から周縁部へ広げる。そして、この水平移動に並行してウエハWを回転させる。これによって現像液ノズル31の下面35をウエハWの表面全体を通過させ、ウエハW表面全体で現像液の撹拌を行う。前記現像液ノズル31の下面35の直径d1、ウエハWの回転数、現像液ノズルの31の水平移動速度は、そのように現像液ノズル31の下面35がウエハW表面全体を通過できるように設定される。現像液ノズル31の水平移動速度は、例えば10mm/秒〜100mm/秒である。下面35の直径d1は、例えば50mm〜200mmである。ウエハWの回転数は、ウエハWに現像液を吐出したときに液跳ねを抑えるために100rpm以下とすることが好ましく、より好ましくは10rpm〜50rpmである。また、十分に現像液の撹拌を行うために、現像液ノズル31の回転数は、例えば50rpm〜1000rpmとする。
図2に戻って、現像装置1の説明を続ける。回転機構38はアーム41の先端に固定され、アーム41の基端側は移動機構42に接続される。移動機構42によりアーム41が昇降する。また、移動機構42は水平に伸びるガイドレール43に沿って移動し、現像液ノズル31をスピンチャック11に保持されたウエハWの径に沿って移動させることができる。図中44は、現像液ノズル31の待機領域であり、カップ体2の外側に設けられている。
図1、2中45は洗浄液ノズルであり、現像処理後、ウエハWの洗浄処理を行うため、洗浄液(純水)をウエハWに供給する。図1中46は洗浄液供給源であり、ポンプやバルブなどを備え、制御部10からの制御信号に従って前記洗浄液を洗浄液ノズル45に供給する。図2中47は洗浄液ノズル45を支持するアームである。図中48は移動機構であり、アーム47を昇降させると共にガイドレール49に沿って横方向に移動する。図中40は、洗浄液ノズル45の待機領域であり、カップ体2の外側に設けられている。
現像装置1には、コンピュータからなる制御部10が設けられる。制御部10は、不図示のプログラム格納部を有している。このプログラム格納部には、後述の作用で説明する現像処理が行われるように命令が組まれた、例えばソフトウエアからなるプログラムが格納される。このプログラムが制御部10に読み出されることで、制御部10は現像装置1の各部に制御信号を出力する。それによって、移動機構42、48による現像液ノズル31、洗浄液ノズル45の移動、回転機構38による現像液ノズル31の回転、現像液供給源3A及び洗浄液供給源46による現像液ノズル31、洗浄液ノズル45への現像液及び洗浄液の供給、スピンチャック11によるウエハWの回転、ピン14の昇降などの各動作が制御され、後述のようにウエハWに現像処理及び洗浄処理を行うことができる。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクまたはメモリーカードなどの記憶媒体に収納された状態でプログラム格納部に格納される。
続いて、図9〜図14の現像装置1の動作図を参照しながら、当該現像装置1を用いて行われる現像処理及び洗浄処理の手順について説明する。また、図15のタイムチャートも適宜参照する。このタイムチャートでは、現像処理を開始してからの経過時間(処理時間)と、現像液ノズル31の回転数及びウエハWの回転数との関係を示している。実線のグラフが現像液ノズル31の回転数、一点鎖線のグラフがウエハWの回転数を夫々示す。また、このタイムチャートでは、現像液ノズル31から現像液が吐出される期間、及び現像液を吐出する間に現像液ノズル31が移動している期間を、各々バーにより示している。
先ず、ウエハWが図示しない基板搬送機構により現像装置1に搬送され、スピンチャック11に保持されると、現像液ノズル31が待機領域44からウエハWの中央部上へ移動し、図3で説明したようにその下面35がウエハWに近接するように下降する(図9)。続いて、現像液ノズル31からウエハWに現像液が供給されると共に現像液ノズル31が平面視反時計回りに回転し(図15のチャート中時刻t1)、現像液ノズル31の下面35とウエハWとの間に、当該下面35に接するように、前記下面35よりも大きい液溜まり30が形成され、図6〜図8で説明したように液溜まり30に旋回流が発生し、前記下面35の下方の現像液が撹拌される(図10)。
現像液ノズル31の回転数が上昇して所定の回転数になると、当該所定の回転数で現像液ノズル31の回転が続けられる。然る後、ウエハWが平面視反時計回りに回転し、回転数が上昇する。ウエハWの回転数が例えば10rpmに達すると、当該10rpmでウエハWの回転が続けられると共に、現像液ノズル31がウエハWの周縁部上へ向けて、ウエハWの半径上をその表面に沿って、例えば10mm/秒で移動開始する(時刻t2)。これによって、液溜まり30は前記現像液ノズル31の下面35に接した状態で、ウエハWの周縁部へ向けて広げられる(図11)。なお、現像液ノズル31は、平面視時計回りに回転してもよい。ただし、各図10、11に示す例では、ウエハWと現像液ノズル31とが互いに逆方向に回転しているため、現像液ノズル31の下方では現像液に作用する力が大きくなり、より確実に現像液の撹拌が行われ、現像液の濃度の均一性がより高くなる。
現像液ノズル31は広がる液溜まり30を追い越さないように、回転しながらウエハW上にて移動を続ける。そのように現像液ノズル31が、液溜まり30を追い越さないようにするのは、追い越しが起きるとすると、ウエハW表面で液溜まり30が複数箇所形成される。即ちウエハW表面で現像液の液千切れが起きることになる。そうなると、各液溜まり30が個別にウエハW表面を広がり、各液溜まり30の界面同士が合わさる。すると、その影響を受けて当該箇所のレジストパターンのCDが、他の箇所におけるレジストパターンのCDと異なってしまうおそれがある。即ち、レジストパターンの面内のCDU(Critical Dimension Uniformity)が低下するおそれがある。そのため、前記追い越しが起きないように現像液ノズル31の移動速度が設定される。
ウエハWの周縁部へ向けて広げられる液溜まり30の下方ではウエハW表面のレジスト膜と、当該液溜まり30を構成する現像液との反応が進行する。この液溜まり30のうち現像液ノズル31の下方では、既述のように旋回流により現像液が撹拌され、現像液の濃度が均一化される。現像液ノズル31がウエハWの周縁部上に移動し、ウエハW全面が現像液に覆われると、現像液ノズル31の移動が停止する(時刻t3、図12)。ところで、ウエハW全面(表面全体)とは、レジストパターンの形成領域全体の意味であり、例えばウエハWの周縁部に前記形成領域が設けられていないウエハWに対しては、ウエハWの周縁部に現像液の液溜まりを形成しなくてもよい。図12では、ウエハWの周端よりも若干内側まで、液溜まり30を形成した例を示しているが、ウエハWの周端についても液溜まり30に被覆されるようにしてもよい。
このように液溜まり30がウエハW全面に形成されるまでに、既述したように現像液ノズル31は、前記ウエハWの全面を通過して現像液の撹拌を行う。図16には、ウエハW表面から見た現像液ノズル31の経路を示している。図中の点線は、現像液ノズル31の吐出口36の軌跡を示す。現像液ノズル31の移動が停止した後、現像液ノズル31の回転数及びウエハWの回転数が低下し、これらの回転が停止する(時刻t4)。例えば現像液ノズル31の回転停止と同時に現像液ノズル31からの現像液の供給が停止し、現像液ノズル31は待機領域44へと戻る。
ウエハW上に静止された液溜まり30により、ウエハWの表面全体でレジスト膜と現像液との反応がさらに進行した後(図13)、洗浄液ノズル45がウエハWの中心部上に位置すると共に、ウエハWが所定の回転数で回転する。ウエハWの中心部上に洗浄液が吐出され、遠心力によりウエハWの周縁部に広げられて、ウエハWから現像液の液溜まり30が除去される(図14)。洗浄液の吐出が停止した後、ウエハWの回転が続けられて洗浄液がウエハWから振り切られ、ウエハWが乾燥される。然る後、図示しない基板搬送機構により、ウエハWは現像装置1から搬出される。
この現像装置1によれば、現像液ノズル31からウエハWの中心部に現像液を吐出して、現像液ノズル31に接するように現像液の液溜まり30を形成すると共に、現像液ノズル31を回転させることにより、この液溜まり30に旋回流を発生させる。そして、現像液ノズル31の回転及び現像液の吐出が続けられながら、現像液ノズル31をウエハWの周縁部上へと移動させると共にウエハWを回転させることにより、ウエハWの全面に現像液の液溜まり30を広げている。現像液ノズル31が周縁部上へ位置した後は、現像液の供給を停止し、ウエハWの外側にこぼれ落ちる現像液の量を抑えることができる。従って、現像液の消費量を抑えることができる。また、ウエハWの遠心力により、現像液をウエハW表面にて広げる必要が無いので、ウエハWの回転数を低く抑えることができる。従って、吐出された現像液がウエハWの回転によって跳ねることが抑えられるので、この液跳ねがパーティクルとなってウエハWを汚染することが抑えられる。また、現像液ノズル31の回転により、現像液ノズル31の下方の現像液が撹拌されるので、未反応のレジストと未反応の現像液とが接触しやすくなり、前記レジストの反応が促進されるので、スループットの向上を図ることができる。
ところで、背景技術の項目で説明した静止現像方式ではウエハW上に現像液のパドルを形成後、パドルの各部が環境による要因で揺らぐおそれがあり、ウエハWの面内でCDがばらつくおそれがある。回転現像方式においてはウエハWの回転により、ウエハW表面を現像液が撹拌されるので、前記揺らぎによるCDのばらつきは抑えられる。しかし、回転現像方式では、ウエハWの径方向に沿って現像液を供給し、ウエハWに供給された供給位置から離れた位置に現像液が流れ、流れる間にレジストに接触して現像液の濃度が変化する。つまり、現像液の液流れ方向におけるCD分布が異なるおそれがある。しかしこの現像装置1によれば、現像液ノズル31の下方に局所的に旋回流を発生させて現像液を撹拌し、現像液ノズル31がウエハWの表面全体を通過するようにウエハWの回転と現像液ノズル31との移動とを行っている。従って、前記回転現像方式のように、液流れによるウエハW面内での現像液の濃度のばらつきが無く、当該面内にて均一性高くレジストと現像液との反応が起こる。つまり、現像装置1の現像方式によれば、静止現像方式及び回転現像方式に比べて、ウエハW面内におけるCDの均一性(CDU)を、より高くすることができる。
また、例えばウエハWに水に対する接触角が比較的高いレジスト膜が成膜され、このレジストが液浸露光により露光されているものとする。即ち、未露光部については前記接触角が高い状態のまま現像処理を行うものとする。このウエハWを静止現像方式により現像すると、未露光部の前記接触角が高いまま処理が進み、現像後、洗浄液(純水)が供給されたときに当該未露光部の撥水性によって、液ちぎれが起きてしまうおそれがある。しかし、この現像装置1によれば液溜まり30がウエハWの周縁部へ広げられるにあたり、現像液が撹拌されることにより、レジストの溶解生成物が未露光部へと広げられる。そして、前記未露光部が前記溶解生成物に接することで親水化される。そのため、未露光部における洗浄液の液ちぎれが発生することが抑えられるので、現像欠陥の発生を抑えることができる。また、現像液が撹拌されることにより、溶解生成物が現像液に掻き出されるため、当該溶解生成物が残渣としてレジストパターン上に残り、パターンの開口不良としての現像欠陥となることが抑制される。
また、現像装置1による上記の現像手法によれば、ウエハW上の現像液ノズル31の各位置における当該現像液ノズル31の回転数、及び/または現像液ノズル31の移動速度を調整することで、ウエハW面内のCD分布を調整することができる。このように少ないパラメータで前記CD分布を調整できるので、ウエハWの面内でCDの均一性を高くするために、現像装置1の調整に要する時間が少なくて済む。
第1の実施形態の変形例である現像処理について説明する。図17は、この変形例におけるタイムチャートを示しており、図15で説明したタイムチャートとは現像液ノズル31の回転数の制御について異なっている。この変形例では、現像液ノズル31がウエハWの中心部上から周縁部上に向けて移動するにつれて、次第にその回転数が上昇する。そして、周縁部上に位置した後も所定の時間、前記回転数は上昇を続ける。然る後、回転数が低下して、現像液ノズル31の回転が停止する。このような差異を除いて、第1の実施形態と同様に現像装置1の各部の動作が制御される。
液溜まり30を中心部から周縁部へ向けて広げているので、現像液に接する時間がウエハWの周縁部に向かうほど短い。従って、前記変形例では、現像液ノズル31が周縁部側に向かうほど、その回転数が高くなるように制御して現像液の撹拌を促進し、現像液とレジストとの反応性が高くなるようにしている。このように回転数を制御することによって、ウエハWの面内におけるCDの均一性が、より高くなるようにしている。
第1の実施形態では液溜まり30をウエハWの中心部から周縁部に広げるために、ウエハWの回転を行っているが、そのように回転を行わなくてもよい。例えば、現像液ノズル31の下面35を、ウエハWと同じかそれよりも大きく形成し、下面35をウエハWに近接させる。下面35の吐出口36はウエハWの中心部上に位置させる。そして、現像液ノズル31から現像液を供給し、現像液ノズル31を回転させる。現像液ノズル31の横方向の移動は行わないものとする。これによって、液溜まり30は旋回流を形成しながら、ウエハWの中心部から周縁部に向けて広げられ、ウエハW表面全体で現像液が撹拌される。ところで現像液ノズル31が回転すると、下面35の下方の液流れに沿って、下面35よりも若干外側の領域にも液流れが発生し、旋回流が形成される。そのため、上記のようにウエハWの回転及び現像液ノズル31の横方向の移動を行わずに旋回流を形成する場合、現像液ノズル31の下面35の大きさは、ウエハW表面の大きさより若干小さく形成してもよい。
基板としては円形のものに限られず、角型の基板をこの現像装置1により処理してもよい。なお、上記の例では現像液の液溜まりをウエハWに形成しているが、このようにウエハWに供給される処理液としては現像液に限られず、前記洗浄液を現像液と同様にウエハWに液盛りして、ウエハWを洗浄してもよい。
上記の第1の実施形態において、現像液ノズル31をウエハWの中央部上から周縁部上へ向けて移動させる代わりに、現像液ノズル31を周縁部上から中心部上へ移動させてもよい。この移動中においては、第1の実施の形態と同じく現像液ノズル31の回転、現像液の吐出、ウエハWの回転を行う。つまり、ウエハWの周縁部から中心部へ向けて現像液の液溜まり30を広げると共に、液溜まり30に旋回流を形成する。ただし、このように液溜まり30を広げると、ウエハWの中心部にて、ウエハW表面を広がった現像液の界面同士が接触し、現像液が合流することになる。このように現像液が合流することで、上記のようにウエハWの面内におけるCDUが低下するおそれがあるため、液溜まり30はウエハWの中心部から周縁部へ向けて広げることが好ましい。
また、上記の例では現像液ノズル31のウエハWの径方向に沿った移動と、ウエハWの回転とを互いに並行して行って、液溜まり30をウエハWの全面に形成しているが、このように液溜まり30を形成することに限られない。例えば、ウエハWを静止させた状態で、現像液ノズル31を既述のようにウエハWの中心部から周縁部に向けて移動させ、ウエハWの径方向に沿って現像液を液盛りする。然る後、ウエハWを回転させ、遠心力によりウエハW表面で現像液を流動させ、ウエハW全体が現像液に被覆されるようにしてもよい。このように処理を行っても、現像液の使用量削減、現像液の液跳ねの低下、前記現像液の流動による反応の促進を図ることができる。ただし、ウエハW面内でCDUを高くするために、上記のようにウエハWの回転と、現像液ノズル31の移動とを並行して行うことが有効である。
(第2の実施形態)
続いて第2の実施形態について、第1の実施形態との差異点を中心に説明する。図18に第2の実施形態で用いられる現像装置5の平面図を示している。この現像装置5の現像装置1との差異点としては、現像液ノズル31が2つ設けられている点である。そして、現像液供給管39、アーム41、移動機構42、ガイドレール43及び待機領域44については、現像液ノズル31毎に設けられている。これによって、回転、現像液の吐出、及びウエハWの径方向上における移動について、各現像液ノズル31で独立して行うことができる。説明の便宜上、これらの現像液ノズル31を、第1の現像液ノズル31A、第2の現像液ノズル31Bとして示す。
続いて、第2の実施形態の現像処理について、図19〜図22の現像装置5の動作図と、図23のタイムチャートを参照しながら説明する。この図23のタイムチャートは、図15と同様に、ウエハWの回転数、現像液ノズルの回転数、現像液を吐出する期間及び現像液ノズルが移動する期間を示しており、第1の現像液ノズル31Aの回転数の変化を実線のグラフで、第2の現像液ノズル31Bの回転数の変化を二点鎖線のグラフで夫々示している。
先ず、静止したウエハWの中心部上に第1の現像液ノズル31Aが位置し、第1の実施形態と同様にウエハWに近接する(図19)。また、便宜上、図示は省略しているが、第2の現像液ノズル31Bが、ウエハWの直径上における中心部と周縁部との間の所定の位置(便宜上、中間部とする)の上方で待機する。前記第1の現像液ノズル31Aが平面視反時計回りに回転すると共に、当該第1の現像液ノズル31Aから現像液が吐出され(図23のタイムチャート中、時刻s1)、第1の現像液ノズル31Aの下方に液溜まり30が形成されると共に、液溜まり30に旋回流が発生する(図20)。
平面視時計回りにウエハWの回転が開始され、所定の回転数に達すると、第1の現像液ノズル31AがウエハWの周縁部上へ向けて移動し(時刻s2)、液溜まり30がウエハWの周縁部に広げられる。その後、第2の現像液ノズル31BがウエハWの前記中間部に近接するように下降し、第1の現像液ノズル31Aによって形成された液溜まり30上に位置する。第2の現像液ノズル31Bが平面視反時計回りに回転すると共に当該第2の現像液ノズル31Bから現像液が吐出される(図21、時刻s3)。これによって、第2の現像液ノズル31Bの下方においても液溜まり30に旋回流が形成される。また、第2の現像液ノズル31Bは、前記回転及び現像液の吐出を行うと同時に、第1の現像液ノズル31Aの移動方向とは逆方向に、ウエハWの半径上をウエハWの周縁部に向かって移動する。
第1及び第2の現像液ノズル31A、31BがウエハWの周縁部に向かって移動を続け、周縁部上に到達して液溜まり30がウエハW全面に形成されると、これら現像液ノズル31A、31Bの移動が停止する(図22、時刻s4)。その後、現像液ノズル31A、31Bの回転数が低下し、回転が停止すると共に当該現像液ノズル31A、31Bからの現像液の吐出が停止する(時刻s5)。このように現像液の吐出を停止するまでに、第1の現像液ノズル31Aは、第1の実施形態の現像液ノズル31と同様に、ウエハWの全面を通過する。各現像液ノズル31A、31Bからの現像液の吐出停止後は、第1の実施形態と同様に現像液の液溜まり30により、レジストの反応が進行し、時刻s5から所定の時間経過後に、ウエハWの回転及び洗浄液の供給が行われて、現像液がウエハWから除去される。
この第2の実施形態においては、上記のようにウエハWの中心部は、現像液ノズル31Aにより現像液の撹拌が行われ、ウエハWの前記中間部から周縁部に至るまでは、現像液ノズル31A、31Bにより現像液の撹拌が行われる。つまり、第2の現像液ノズル31Bは、中間部から周縁部に至る領域で、第1の現像液ノズル31Aによる液溜まり30の撹拌作用を補助するために設けられている。このように処理を行うことで、中間部から周縁部に至る領域で前記現像液の撹拌を促進して、現像液濃度の均一性を高めることができる。それによって、ウエハWの面内におけるレジストパターンのCDの均一性を、より確実に高くすることができる。特に、ウエハWが大型であると、第1の実施形態で説明した液溜まり30の流れに従ってウエハWの周縁部側に流れ出す溶解生成物の量が多くなり、現像液の濃度の均一性を高くし難くなるおそれがあるため、このように各現像液ノズル31A、31Bを用いて撹拌をすることが有効である。
図24には、第2の実施形態の変形例のタイムチャートを示している。図23のタイムチャートとの差異点は、第1の実施形態の変形例と同様に、現像液ノズル31の回転数を、ウエハWの周縁部に向かうにつれて上昇させていることである。この例では第1及び第2の現像液ノズル31A、31B共に回転数を上昇させているが、いずれか一方のみを上昇させるようにしてもよい。
上記の例では、第1の現像液ノズル31Aと第2の現像液ノズル31Bとは、同じ方向に回転しているが、互いに逆方向に回転するようにしてもよい。現像液ノズル31A、31Bの回転数については、例えば50rpm〜1000rpmである。互いに同じ回転数に設定してもよいし、異なる回転数に設定してもよい。また、第2の現像液ノズル31Bの下面35と、第1の現像液ノズル31Aの下面35とは同じ大きさに構成してもよいし、互いに異なる大きさに構成してもよい。異なる大きさに構成する場合、第2の現像液ノズル31Bは、第1の現像液ノズル31Aの撹拌を補助する目的から、例えば第2の現像液ノズル31Bの下面35は、第1の現像液ノズル31Aの下面35よりも小さく構成される。また、第2の現像液ノズル31Bについては現像液の吐出を行わず、回転による撹拌のみを行うようにしてもよい。
(第3の実施形態)
続いて、第3の実施形態について説明する。この第3の実施形態においては、第2の実施形態で説明した現像装置5が用いられる。第3の実施形態の現像処理について、図25〜図28の現像装置5の動作図を参照しながら説明する。また、この第3の実施形態の現像処理におけるウエハWの回転数、各現像液ノズルの回転数、現像液の吐出期間及び各現像液ノズルの移動期間を、第2の実施形態と同様に、図29のタイムチャートに示している。
ウエハWの中心部上に第1の現像液ノズル31Aが、ウエハWの周縁部上に第2の現像液ノズル31Bが夫々位置し、ウエハWに近接するように下降する(図25)。第1の現像液ノズル31A及び第2の現像液ノズル31Bから現像液が夫々吐出されると共にこれらの現像液ノズル31A、31Bが平面視反時計回りに回転し、各現像液ノズル31A、31Bの下方に液溜まり30が各々形成されると共に、各液溜まり30に旋回流が形成される(図26、図29のチャート中、時刻v1)。ウエハWが平面視時計回りに回転を開始して所定の回転数になると、第1の現像液ノズル31AはウエハWの周縁部側に、第2の現像液ノズル31BはウエハWの中心部側に、互いに同じ方向に移動する(時刻v2)。
第1の現像液ノズル31A、第2の現像液ノズル31Bにより夫々形成された液溜まり30は、各現像液ノズル31A、31Bの移動によりウエハW表面を広げられ(図27)、互いにその界面同士が合わさり、ウエハW全体が液溜まり30に被覆される。その間、他の実施形態と同様に現像液ノズル31A、31Bの下方では旋回流により、現像液が撹拌される。第1の現像液ノズル31A、第2の現像液ノズル31Bが夫々ウエハWの中間部に位置すると、これらの現像液ノズル31A、31Bの移動が停止する(時刻v3、図28)。然る後、現像液ノズル31A、31Bの回転が停止すると共に各現像液ノズル31A、31Bから現像液の吐出が停止する(時刻v4)。現像液ノズル31A、31Bの回転が開始してから停止するまでに、ウエハWの全面は、第1の現像液ノズル31Aの下方か第2の現像液ノズル31Bの下方の少なくともいずれかを通過する。これによって、ウエハW全面で現像液の撹拌が行われる。
この第3の実施形態によれば、第1の現像液ノズル31A、第2の現像液ノズル31BがウエハWの面内の互いに異なる領域に、互いに並行して液溜まり30を形成し、当該液溜まり30を広げると共に、各液溜まり30に旋回流を発生させる。従って、ウエハW全面に速やかに液溜まり30を形成すると共にウエハW全面で現像液の撹拌を行うことができる。結果として現像処理に要する時間を、より短くすることができるという効果がある。ただし、上記のようにウエハW上で現像液の界面同士が合わさると、CDUが低下するおそれがあることから、当該CDUを高くするためには第1の実施形態及び第2の実施形態のように処理を行うことが好ましい。
図30には、第3の実施形態の変形例のタイムチャートを示している。図29
のタイムチャートとの差異点は、第1の現像液ノズル31Aの回転数を、当該第1の現像液ノズル31AがウエハWの中心部上から中間部上へ移動するにつれて上昇させていること、第2の現像液ノズル31Bの回転数を、当該第2の現像液ノズル31BがウエハWの周縁部上から中間部上へ移動するにつれて上昇させていることである。この第3の実施形態では中間部に向かって液溜まり30が広がるので、当該中間部に向かうほど現像液とレジストとの接触時間が短い。そのため、この図30のタイムチャートで示すように現像液ノズル31A、31Bの回転数を制御して、ウエハW面内におけるCDUの向上を図っている。この第3の実施形態においても、現像液ノズル31A、31Bの回転方向及び回転数は、互いに異なっていてもよい。各現像液ノズル31A、31Bの下面35の大きさも互いに異なっていてもよい。
(第4の実施形態)
続いて、第4の実施形態について説明する。この第4の実施形態においては第1の実施形態で説明した現像装置1が用いられる。第4の実施形態の現像処理について、第1の実施形態の現像処理との差異点を中心に、図31〜図34の工程図を参照しながら説明する。また、この第4の実施形態のタイムチャートである図35も適宜参照する。
第1の実施形態と同様にウエハWの中心部上に現像液ノズル31が近接し、現像液が吐出されて液溜まり30が形成されると共に、現像液ノズル31の回転により液溜まり30に旋回流が形成される(図31、図35のチャート中、時刻x1)。ウエハWが回転し、現像液ノズル31がウエハWの周縁部上に向けて移動して(時刻x2)、液溜まり30がウエハWの周縁部へ広げられる(図32)。ウエハWの周縁部上に現像液ノズル31が位置し、液溜まり30がウエハW全体に広げられると、現像液ノズル31からの現像液の吐出が停止し(時刻x3)、現像液ノズル31が回転を続けながらウエハWの中心部上へ向かって移動する(図33)。これによって、引き続き液溜まり30には旋回流が形成される。現像液ノズル31が、ウエハWの中心部上に位置すると(図34)、現像液ノズル31の回転及びウエハWの回転が停止する(時刻x4)。そして、例えばウエハWの回転が停止すると略同時に、洗浄液ノズル45より洗浄液を供給してウエハWを洗浄する。
上記のように現像液ノズル31をウエハWの中心部上と周縁部上との間で往復移動させることにより、ウエハWの全面の各部は2回、現像液ノズル31の下方を通過し、当該各部の現像液が撹拌される。従って、この第4の実施形態によれば、第1の実施形態よりもさらに、現像液とレジストとの反応を促進することができる。結果として、現像液ノズル31の回転を停止させてから、洗浄液ノズル45により洗浄液を吐出するまでの時間は、第1の実施形態よりも短く設定することができる。この第4の実施形態によれば、第1の実施形態よりもさらにスループットの向上を図ることができる。
図36には、第4の実施形態の変形例のタイムチャートを示している。図36のタイムチャートとの差異点は、現像液ノズル31の回転数を、当該現像液ノズル31がウエハWの中心部上から周縁部上に移動するにつれて上昇させ、周縁部上から中心部上に移動するにつれて低下させていることである。これは、第1の実施形態の変形例で説明したように、ウエハWの周縁部に向かうほど、現像液とレジストとの接触時間が短いため、当該周縁部における現像液とレジストとの反応を促進させるためである。
また、上記の各例では現像液ノズル31がウエハWの周縁部上に位置した後は、現像液の消費量を抑えるため当該現像液の吐出を停止させているが、現像液ノズルを中心部上へ移動させるときにも現像液を吐出してもよい。また、ウエハWの中心部上と周縁部上との間における回転する現像液ノズル31の移動回数は、上記の例に限られず、上記の例よりも多く行ってもよい。つまり、例えば上記の例で、現像液ノズル31が、ウエハWの中心部上に戻った後、再度前記現像液ノズル31をウエハWの周縁部上に移動させてもよい。
また、ウエハWの周縁部上にて現像液の吐出を開始して、ウエハWの中心部上へ移動させた後、ウエハWの周縁部上へ戻るように、現像液ノズル31をウエハW上で往復移動させてもよい。ただし、第1の実施形態で説明したように、CDUを高くするために、上記の例のようにウエハWの中心部上にて吐出を開始することが好ましい。
(第5の実施形態)
続いて、第5の実施形態について説明する。この第5の実施形態において用いられる現像装置は、第1の実施形態で説明した現像装置1と略同様に構成されているが、差異点として、現像液のウエハWにおける広がりを規制するための規制部材51が設けられている。図37、図38に規制部材51について示している。この規制部材51は、液溜まり30を広げるために現像液ノズル31が移動するときの当該現像液ノズル31の進行方向に、現像液ノズル31に対して離れるように設けられる。現像液ノズル31を移動させるときに、その現像液ノズル31が移動する勢いで液溜まり30を構成する現像液が、前記進行方向へ流れ出しても、このように進行方向に設けた規制部材51により液流れを規制する。
規制部材51は、この例では平面視円弧状に形成されている。規制部材51の表面は、例えばPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの材質により構成される。図中52は支持部であり、回転機構38に対して規制部材51を支持している。従って規制部材51は、アーム41の移動により現像液ノズル31と共に移動する。
現像液ノズル31により液溜まり30が形成されるときに、規制部材51はウエハWの表面から上方に若干離れるように設けられる。液溜まり30がウエハW表面を広がり、規制部材51の下方に流れこんでも、この規制部材51に接触して、表面張力により規制部材51に引きつけられ、規制部材51の外側に流れ出すことが防がれる。
第5の実施形態の現像処理について、図39〜図41の現像装置の動作図を参照しながら説明する。また、この第5の実施形態においては、例えば第1の実施形態の図15のタイムチャートで説明したように、現像装置の各部の動作が制御される。つまり、第1の実施形態と同様に、ウエハWの中心部上に現像液ノズル31が近接し、現像液が吐出されて液溜まり30が形成されると共に現像液ノズル31が回転する。それによって当該液溜まり30に旋回流が形成される(図39)。
規制部材51により液溜まり30が現像液ノズル31の進行方向に、過度にウエハW面内を広がることが抑えられた状態となる。この状態で、現像液ノズル31の移動により当該液溜まり30は、ウエハWの周縁部に広げられる(図40)。現像液ノズル31がウエハWの周縁部に移動し、液溜まり30がウエハWの全面に広げられ、現像液ノズル31の回転及びウエハWの回転が停止する(図41)。
このように規制部材51を設けることで、液溜まり30を構成する現像液が、ウエハWの外側にこぼれ落ちることが防がれる。従って、現像液の使用量をより確実に抑えることができる。この第5の実施形態において、図17に示した第1の実施形態の変形例と同様に、現像液ノズル31がウエハWの周縁部に向けて移動するに従って、現像液ノズル31の回転数を上昇させるようにしてもよい。また、規制部材51はウエハWの外側への現像液の液流れを規制することができればよく、形状は円弧状にすることに限られない。例えば、平面視直線状に形成してもよい。
また、規制部材51は現像液ノズル31と共に移動しなくてもよい。例えば現像液ノズル31の移動機構42とは、別個の移動機構に規制部材51が接続されるようにする。そして、ウエハWの処理時には、規制部材51がウエハWの外方からウエハWの周縁部上へ移動して、当該周縁部上で静止するように装置を構成してもよい。
(他のノズルの構成例)
各実施形態で使用される現像液ノズルとしては、上記の現像液ノズル31に限られない。現像液ノズルの他の構成例について説明する。図42は現像液ノズル61の側面、図43は現像液ノズル61の下面35を夫々示している。現像液ノズル61における現像液ノズル31との差異点を説明すると、この現像液ノズル61の下端部は拡径され、現像液ノズル31よりも広い範囲で旋回流を形成することができる。
前記現像液ノズル61の下面35は、平坦に構成されているが、このように構成することには限られない。図44、45は、夫々現像液ノズル62の側面図、下面図である。この現像液ノズル62は、現像液ノズル61と略同様に構成されているが、差異点として下面35に突起63が設けられている。この突起63は、下面35の周方向に間隔をおいて複数設けられ、下面35の周縁部から中心部側に向かうように、平面視円弧状に形成されている。現像液ノズル62が回転するときには、突起63により下面35の中心部へ向かうように現像液の液流れが形成され、撹拌が助長される。図45中、前記液流れを点線の矢印で表示している。また、このように現像液が中心部に向かうように流れることで、現像液ノズル62の回転時において、現像液が現像液ノズル62の外方に流れるように移動することが抑えられる。つまり、吐出口36から吐出された現像液は、比較的長い時間、現像液ノズル62の下方に保持される。従って、当該現像液ノズル62の下方においてより確実に現像液を撹拌し、その濃度の均一性を高くすることができる。
下面35の中心部へ向けて現像液の液流れを形成するためには、突起63を設ける代わりに溝を設けてもよい。図46、47では、複数の溝64を設けた現像液ノズル62の側面図、下面図を夫々示している。溝64は、突起63と同じく、下面35の周縁部から中心部側に向かう円弧状に形成されている。
図48、図49は、夫々現像液ノズル65の縦断側面図、下面図である。現像液ノズル65は、現像液ノズル61と略同様に構成されているが、差異点としてその下面35には多数の吐出口66が間隔をおいて設けられ、シャワー状に現像液がウエハWに供給される。現像液ノズル65に供給された現像液は、各吐出口66から分散してウエハWに吐出されるので、ウエハWに対する現像液の吐出圧を抑え、より確実にウエハWからの現像液の液跳ねを抑えることができる。また、前記現像液ノズル65の下面35を多孔質体により構成して、前記液跳ねを抑えてもよい。
さらに他の現像液ノズルの構成例について説明する。図50、51は、夫々現像液ノズル71の縦断側面図、下面図である。図中72は流路部材回転機構であり、現像液ノズル31の回転機構38と同様にアーム41に設けられている。流路部材回転機構72は鉛直下方に伸びる回転棒73を、その中心軸周りに回転させる。図中74は回転棒73に設けられるフランジであり、フランジ74の周方向には現像液の流路をなす孔75が穿孔されている。フランジ74の下方における回転棒73の下部側面には、流路形成部材をなす螺旋状の突起76が形成されている。即ち、回転棒73はねじ状に構成されている。
前記突起76に近接するように回転棒73の側周を覆うスリーブ77が設けられており、スリーブ77の下方の開口部は現像液の吐出口78を構成する。また、スリーブ77の下端部は、現像液ノズル61と同様に、その回転により広い範囲で現像液を撹拌できるように拡径されている。このスリーブ77の下面を79として示している。前記フランジ74は、スリーブ77の内側の溝81に進入し、スリーブ77を支持している。スリーブ77にはベルト82が巻き掛けられ、アーム41に設けられた回転機構83により駆動する。このベルト82の駆動によって、スリーブ77が鉛直軸周りに回転することができる。現像液供給管39は、その下流端からスリーブ77の上側の開口部に現像液を供給できるように、アーム41に設けられている。
この現像液ノズル71は、既述の各現像液ノズルと同様にウエハW表面に現像液の液溜まり30を形成し、この液溜まり30に旋回流を発生させることができる。スリーブ77の下面79がウエハWに近接した状態で、スリーブ77及び回転棒73が、図51で実線の矢印で示すように、下方から見て時計回りに回転する。そのようにスリーブ77及び回転棒73が回転しながら、スリーブ77の上側に現像液が供給される。供給された現像液は、図中に点線の矢印で示すように、突起76に沿って旋回しながら下方へ流れ、螺旋状の液流を形成する。吐出口78の周方向に回転する回転棒73の作用により、この液流は加速されて、当該吐出口78からウエハWに吐出され、スリーブ77の下面79に接する液溜まり30を形成すると共に、当該液溜まり30に旋回流が形成される。そして前記下面79の回転により、この旋回流は加速され、下面79の下方において現像液が大きく撹拌される。
上記の例では現像液の撹拌作用を高くするためにスリーブ77を回転させているが、スリーブ77の回転を行わないようにしてもよい。また、回転棒73の回転も行わなくてもよい。つまり、回転棒73の突起76に現像液をガイドさせることによってのみ、液溜まり30に旋回流を形成するようにしてもよい。
既述の各現像液ノズルの下面には、例えばヒーターを埋設することができる。現像液を撹拌する際に、当該ヒーターにより前記下面を昇温させ、現像液とレジストとの反応をさらに促進させることができる。
(第6の実施形態)
続いて、第6の実施形態について第1の実施形態との差異点を中心に説明する。第6の実施形態では、第1の実施形態で説明した現像装置1が用いられる。以下、第6の実施形態の処理工程について図を参照して説明するが、各図の現像液ノズル31については、図48の現像液ノズル65と同様に、その下面には多数の孔66が形成され、シャワー状に現像液を供給できるように構成されているものとして示す。また、この第6の実施形態の図に示す現像液ノズル31は、図44、図45で説明した例と同様に突起63を備えている。ただし、この突起63は図45に示す例とは異なり、現像液ノズル31の下面35の中心部側から周縁部側へ向けて直線状に伸びるように構成されている。
第6の実施形態では、ウエハWの表面のレジストは、例えばKrFエキシマレーザーにより露光されている。図52は、図15と同様に現像液ノズル31の回転数、ウエハWの回転数、現像液が吐出される期間及び現像液ノズル31が移動している期間を示すチャートである。
先ず、スピンチャック11に保持されたウエハWの中心部に、ウエハWの中心部上に移動した洗浄液ノズル45が純水を供給し、当該中心部に局所的な液溜まり101を形成する(図53、チャート中時刻f1)。洗浄液の供給停止後、洗浄液ノズル45がウエハWの中心部上から退避する。然る後、現像液ノズル31が第1の実施形態と同様にウエハWの中心部に近接し、現像液が吐出される(時刻f2)。この吐出された現像液が前記洗浄液により希釈されて、ウエハWの表面と現像液ノズル31の下面35との間に満たされ、液溜まり30を形成する(図54)。
ウエハWの回転が例えば30rpmで続けられる一方、現像液ノズル31が回転すると共に、当該ウエハWの周縁部に向かって例えば30mm/秒で移動する(時刻f3)。第1の実施形態で説明したように現像液ノズル31の移動により液溜まり30が広げられながら、現像液ノズル31が例えば130rpmで回転を続ける。ウエハWの回転と現像液ノズル31の回転とによって、現像液ノズル31の下方にて現像液が撹拌される(図54)。現像液ノズル31がウエハWの周縁部上に移動すると、当該移動が停止すると共にウエハWの回転数が低下し(時刻f4)、例えば15rpmとなる。現像液の吐出及び現像液ノズル31の回転が続けられ、ウエハWの全面が現像液により被覆されると、現像液の供給が停止される(時刻f5)。現像液の供給停止後もウエハW及び現像液ノズル31の回転が続けられ、ウエハWの周縁部で現像液の撹拌が進行する。然る後、現像液ノズル31の回転及びウエハWの回転が停止し(時刻f6)、現像液ノズル31がウエハW上から退避し、静止状態で現像が進む。現像終了後、第1の実施形態で説明したようにウエハWへの洗浄液の供給、洗浄液の振り切りが順に行われる。
この第6の実施形態において、上記のようにウエハWの中心部で現像液を希釈する理由を説明すると、ウエハWの中心部ではウエハWの周縁部に比べて、単位面積あたりに供給される現像液の供給量が多く、さらにウエハWの中心部は周縁部に比べて、現像液に接触している時間が長い。従って、ウエハWの中心部では、周縁部に比べて現像液とレジストとの反応が進行しやすい。そこで、この第6の実施形態では、ウエハWの中心部に供給された現像液を希釈液である純水により希釈し、当該中心部の反応の進行を抑えている。従って、第6の実施形態では、第1の実施形態で得られる効果に加えて、より確実にウエハWの面内でCDの均一性を高くする効果が得られる。さらに、この第6の実施形態では、現像液ノズル31をウエハWの周縁部上に移動させ、ウエハWの表面全体で現像液の撹拌を行った後も、現像液ノズル31をウエハWの周縁部上に位置させて現像液の撹拌を継続して行っている。これによって、ウエハWの周縁部では現像液とレジストとの反応が促進されるので、この点からもウエハWの中心部と周縁部との間における上記の反応の偏りを抑えることができ、結果として、より確実にウエハWの面内でCDの均一性を高くすることができる。
上記の処理では現像液ノズル31がウエハWの周縁部上に位置した後、ウエハWの回転速度を低下させて、現像液の撹拌度合を調整し、ウエハWの周縁部におけるレジストと現像液との反応を調整して、当該周縁部におけるレジストパターンの線幅を調整している。ウエハWの回転数の代わりに現像液ノズル31の回転数を低下させて、撹拌度合を調整するようにしてもよい。
この第6の実施形態も、各実施形態に組み合わせることができる。例えば、現像液ノズル31A、31Bを使用する第2の実施形態においても、ウエハWの中心に現像液を供給する前に洗浄液を供給しておき、ウエハWの中心に供給される現像液を希釈してもよい。また、この第6の実施形態においても他の実施形態と同様に、現像液ノズル31がウエハWの径方向に沿った各位置に位置するときのウエハWの回転数及び/または当該現像液ノズル31の回転数は一定にしてもよいし、互いに異なるようにしてもよい。現像液ノズル31からの現像液の供給量も、現像液ノズル31の位置に応じて変更してもよいし、各位置で一定であってもよい。
ところで、図7、図8では現像液ノズル31が回転すると、現像液ノズル31と現像液との間に働く表面張力の作用により、当該現像液ノズル31の下方で現像液が撹拌されると説明したが、現像液ノズル31が回転せずにウエハWが回転しても、現像液ノズル31の下方の現像液は、当該ウエハWの回転による力の作用と、前記現像液ノズル31に対する表面張力の作用とを受けて撹拌される。従って、第6の実施形態において、現像液ノズル31を回転させずに処理を行ってもよい。図55は、その場合の処理を示すチャートを示している。この図62に示すように、現像液ノズル31の回転が行われないことを除いては、現像装置1において図52で説明した動作と同様の動作が行われて、ウエハWが現像処理される。例えばこの図55のチャートの処理は、例えばArFエキシマレーザーでレジストが露光処理されたウエハWに用いられる。レジストの現像液に対する感度に応じて、このように現像液ノズル31の回転を行うか行わないかを選択してよい。他の各実施形態についても、各現像液ノズル31、31A、31Bの回転は行わず、ウエハWの回転のみを行うことで現像液の撹拌を行うようにしてもよい。
つまり、露光後の基板を基板保持部に水平に保持する工程と、基板の一部に現像液ノズルから現像液を供給して液溜まりを形成する工程と、前記液溜まりに現像液を供給しながら、基板の上方側から基板と直交する軸の周りに液溜まりが回転する作用を加えることにより、当該液溜まりに旋回流を発生させて液溜まりを基板の全面に広げる工程と、を含むように処理を行うことで、次のような効果を得ることができる。1つは、基板の外側に無駄な現像液が供給されることを抑え、現像液の使用量を抑えることであり、2つは、前記旋回流により基板上の現像液が撹拌されることで、この旋回流が形成される領域において現像液の濃度が不均一になることが抑えられるので、現像液と基板のレジストとの反応が低下することを防ぎ、スループットの低下を抑えることができる。3つは、現像液供給中に基板を回転させる必要が無いか、あるいは基板の回転数を高くする必要が無いので、現像液の液跳ねが発生することが抑えられることである。しかし、上記の旋回流を発生させる代わりに基板の回転を行うようにしてもよく、その場合現像液ノズルは、回転する基板の径方向に移動し、現像液に接触しながら移動する。現像液との接触部としては、上記の各実施形態の各現像液ノズルの下面が相当する。そのように構成することによっても、上記の現像液の使用量を抑える効果が得られる。また、現像液が撹拌されるので、スループットの低下を抑える効果も得られる。また、この手法においては、基板を高速で回転させる必要は無く、上記の現像液の液跳ねが抑えられるような回転数に設定することができる。なお、各現像液ノズルの下面は円形に構成されている。ただし、現像液ノズルの下面は円形に構成することには限られず、角形でもよい。また、現像液ノズルの下面はウエハW表面に対向するように構成される。ここで、ウエハW表面に対して対向するとは、ウエハW表面に対して平行であることに限られず、ウエハW表面に対して傾いていてもよい。また、現像液ノズルの下面は平面であることに限られず、曲面であってもよい。
(第7の実施形態)
続いて第7の実施形態について説明する。この第7の実施形態では、第2の実施形態で説明した現像装置5を用いる。以下、第2の実施形態との差異点を中心に説明する。また、第2の実施形態で説明した図23と同様に、現像液ノズル31A、31Bの回転数、ウエハWの回転数、現像液が吐出される期間及び現像液ノズル31が移動している期間を示すチャートである図56、及びウエハWの側面を示した図57も適宜参照する。
この第7の実施形態における処理の目的を説明しておく。レジストに現像液が接触するとレジストが溶解してパターンが形成されるが、この溶解に伴い生成物(以下、溶解生成物と記載する)が当該パターンの表面に生じる。この溶解生成物がパターン表面に残留していると、現像液とパターンの表面との反応が進行し難く、所望の線幅のパターンを得るために要する処理時間が長くなってしまう。そこで、この第7の実施形態では、溶解生成物をパターンの表面から除去し、現像液とパターンとの反応を促進し、処理時間の短縮化を図る。
先ず、第1の現像液ノズル31AがウエハWの中心部上に配置されると共に、第2の現像液ノズル31BがウエハWの中心部から偏心した位置に配置される。そして、ウエハWが回転すると共に、第1の現像液ノズル31Aから現像液が供給される(チャート中時刻g0)。第1の現像液ノズル31Aから現像液の供給が開始された後、第1の現像液ノズル31Aが回転を開始する(時刻g1)。ただし、第2の現像液ノズル31Bからは現像液の供給は行われない。さらに、現像液ノズル31A、31BがウエハWの径方向に沿って移動を開始する。各現像液ノズル31A、31Bは同じ方向へ移動し、現像液ノズル31AはウエハWの周縁部上へ、現像液ノズル31BはウエハWの中心部上へと夫々向かう。
第1の現像液ノズル31Aの移動速度は比較的大きく、例えば第2の現像液ノズル31Bの移動速度よりも大きい。そのように現像液ノズル31Aの移動速度が比較的大きいため、ウエハWの表面の液溜まり30は比較的薄く形成される。つまり第1の現像液ノズル31Aは、ウエハWに現像液の薄膜を形成する。便宜上、この薄膜を30Aとして示すと、第1の現像液ノズル31Aの移動により、薄膜30AがウエハW上に広げられる。このとき、第1の現像液ノズル31Aの下方では、レジストが現像液と接触することにより、既述の溶解生成物102が発生する(図57)。そして、第1の現像液ノズル31Aの速度が比較的大きいため、第1の現像液ノズル31Aの下方に溜まった現像液は、第1の現像液ノズル31Aの下面35に対する表面張力によって、当該現像液ノズルの移動方向に向けて比較的強い引力を受ける。その結果、当該現像液は溶解生成物102と共に、ウエハWの周縁部側へ移動した第1の現像液ノズル31Aの下方へ向けて流れる。つまり、第1の現像液ノズル31Aが位置した場所の下方領域から溶解生成物102が除去されると共に、当該下方領域では現像液の液膜の薄層化が起きる。
そして、第2の現像液ノズル31BがウエハWの中心部上に位置すると、第2の現像液ノズル31Bから現像液が供給され、当該第2の現像液ノズル31Bの下方に、既述の液溜まり30が形成される(時刻g2)。また、第2の現像液ノズル31Bは回転を開始する。図57では、薄膜30Aと区別するために、この第2の現像液ノズル31Bにより形成される液溜まり30を30Bとして示し、斜線を付している。第1の現像液ノズル31Aが現像液を供給しながら移動を続けると共に、第2の現像液ノズル31Bが、第1の現像液ノズル31Aが通過した経路をたどって現像液を供給しながらウエハWの周縁部へ向けて移動する。つまり、溶解生成物102が除去されたウエハW表面に、第2の現像液ノズル31Bにより現像液が供給され、現像液とレジストとの反応が速やかに進行する。
第1の現像液ノズル31AがウエハWの周縁部上に位置すると、第1の現像液ノズル31Aからの現像液の供給及び第1の現像液ノズル31Aの回転が停止し(時刻g3)、第1の現像液ノズル31Aは、ウエハWの外方へ退避する。然る後、第2の現像液ノズル31BがウエハWの周縁部に位置すると第2の現像液ノズル31Bの移動が停止し(時刻g4)、ウエハWの表面全体が液溜まり30Bに被覆されると、第2の現像液ノズル31Bからの現像液の供給が停止する(時刻g5)。以降は第6の実施形態で説明したように、第2の現像液ノズル31BがウエハWの周縁部上に位置した状態で所定の時間、当該現像液ノズル31Bの回転とウエハWの回転とが続けられ、然る後ウエハWから現像液が除去される。
この第7の実施形態においては、第1の現像液ノズル31Aに第2の現像液ノズル31Bが追従するように移動し、第1の現像液ノズル31Aが通過したウエハW上の領域を、第2の現像液ノズル31Bが通過する。それによって、上記のように溶解生成物102が除去され、然る後、当該溶解生成物102が除去されたウエハW表面に現像液が供給されると共に、当該現像液が撹拌される。従って、現像液に対するレジストの反応が促進され、パターンの線幅を速やかに細くすることができる。つまり、スループットの向上を図ることができる。この第7の実施形態においても他の実施形態と同様、各現像液ノズル31A、31Bの回転は行わなくてもよい。
続いて現像液ノズルのさらに他の構成例について、現像液ノズル31との差異点を中心に説明する。図58は現像液ノズル111の下面側を示す斜視図である。現像液ノズル111の下部側を実線で、上部側を鎖線で夫々示している。現像液ノズル111の下面35には、吐出口36に加えて、リング状の吐出口112、113が開口しており、吐出口112、113は、吐出口36を中心とする同心円状、つまり下面35の中心を中心とする同心円状に形成されている。現像液ノズル111の上部側に設けられる流路の下流側が分岐し、これら各吐出口36、112、113に各々現像液が供給されるように構成される。また、現像液ノズル111の前記下面は疎水性に構成されていてもよいし、親水性に構成されていてもよい。他の現像液ノズルの下面も同様に親水性に構成されていてもよいし、疎水性に構成されていてもよい。
図59は現像液ノズル114における下面35を示している。現像液ノズル114の下面35には、現像液の撹拌作用を高めるために断面視三角形状の突起115が設けられ、突起115は下面35の中心から周縁部に向かって平面視渦巻き状に形成されている。
図60は現像液ノズル121の下部側の縦断側面を示している。現像液ノズル121の下面35には、スリット状の吐出口122、123が円形である下面35の直径を挟んで互いに並行するように開口しており、吐出口122、123からは前記下面35の直径に向かうように斜め下方に現像液が供給される。そして、供給された現像液は、図60に矢印で示すようにウエハW表面を流れて前記下面35の直径及びその付近で衝突し、下面35の外方へと流れる。現像液ノズル121の上部側は、現像液ノズル111と同様に、各吐出口122、123に共用される流路が設けられ、この共用の流路の下流側が分岐して、吐出口122、123に接続されており、各吐出口122、123から現像液を各々供給することができる。
図61は、現像液ノズル124の下部側の縦断側面を示している。この現像液ノズル124は、吐出口123が設けられないこと除いて、現像液ノズル121と同様に構成されている。吐出口123が設けられないことで、吐出口122から供給される現像液は図中矢印で示すように、ウエハW表面を、現像液ノズル121の下面35の一端側から他端側へ向かって流れる。
図62は、現像液ノズル131の斜視図を示し、当該現像液ノズル131の下面35にはその直径に沿ってスリット状の吐出口132が設けられている。図62において、前記吐出口132に現像液を供給する流路133を実線で示しており、流路133は、吐出口132の長さ方向の各部から均一に現像液が供給できるように現像液が拡散するための拡散空間134を備えている。
図63は、現像液ノズル141の下部側の縦断側面図である。現像液ノズル141の下部側には、円錐状の末広がりの流路142が形成されており、当該流路142の下端が現像液ノズル31の下面に開口し、吐出口36を形成している。図63では点線の矢印で現像液の流れを示している。この矢印で示すように現像液は、流路142の内周面の上部側に斜め上方から供給される。現像液は、流路142の内周面を伝わって周方向に流れながら下方へ向かって供給される。これによって、図50に示した現像液ノズル71と同様に、現像液ノズル141の下面35とウエハWとの間に形成される液溜まり30に旋回流を形成することができる。
図64は、現像液ノズル145の下部側の縦断側面図である。この現像液ノズル145も、現像液ノズル141と同様に現像液の液溜まり30に旋回流を形成することができる。現像液ノズル141の差異点としては、流路142の代わりに平面視円形の流路146が設けられること、及び流路146の内周面の上部側に水平方向に形成された流路147から現像液が供給されることである。流路146に供給された現像液は、流路146の内周面に沿って周方向に流れると共に下方に向かい、既述の旋回流を形成する。
現像液ノズル145では流路147が1つ設けられていたが、流路147は複数設けられていてもよい。各流路147から流路146に同時に現像液が供給されて、流路146を周方向に流れる。それによって、より確実に旋回流を形成することができる。
図65は、現像液ノズル151の下面側斜視図である。現像液ノズル151の下面35にはリング状の突起152が設けられており、突起152の内側に互いに複数設けられた吐出口153、154、155が開口している。吐出口153〜155は、夫々平面で見て互いに異なる方向に現像液を吐出する。側面から見ると吐出口153〜155は、斜め下方に現像液を吐出する。吐出された現像液は、突起152に衝突してその方向を変え、突起152の周方向に流れる。それによって現像液の液溜まり30に旋回流を形成することができる。
図66は、現像液ノズル161の斜視図である。現像液ノズル161の下面35には、現像液の撹拌を促進するために、当該下面35の一端から他端に向かって伸びるように複数の凹部162が設けられている。そして、これらの凹部162は、当該凹部の伸長方向とは直交するように横方向に配列されている。側面から見て凹部162は概ね半円状に形成されている。
(評価試験)
第1の実施形態に沿ってウエハW全面に液溜まり30の形成を行うにあたって、液千切れが発生しないように液溜まり30を形成することができる現像液ノズル31の移動速度、ウエハWの回転数、現像液ノズル31の下面35の直径d1との関係を調べた。液千切れが発生しないとは、ウエハWに盛られた液溜まり30同士がウエハW表面を広がって合流して液膜を形成しないようにすることであり、さらに言い換えれば現像液ノズル31の下面35がウエハWの全面を通過することである。図67は、この結果を示すグラフである。グラフの横軸は前記ウエハWの回転数(単位、rpm)を示し、グラフの縦軸は前記現像液ノズル31の移動速度(単位、mm/秒)を示している。縦軸及び横軸に囲まれるグラフ中の領域Aを領域R1〜R11に区分して示している。
グラフの右側に示すように、各領域R1〜R11は、前記下面35の直径d1(単位、mm)の範囲に対応している。前記ノズルの下面の直径d1を、一つの領域Rに対応する直径としたとき、グラフ中に示す、この領域Rに対応するウエハWの回転数及び現像液ノズルの移動速度に設定することで、前記液千切れが発生しないように液溜まり30を形成することができる。
また、前記ノズルの移動速度及びウエハWの回転数を夫々所定の値に設定したときに、前記液千切れを起こさないようにして液溜まり30を形成することが可能な前記直径d1の最小値(最低ノズル径とする)を算出した。図68、69、70は、夫々ノズルの移動速度を10mm/秒、30mm/秒、50mm/秒としたときの前記最低ノズル径を実線の円で示し、現像液ノズル31の下面35の中心のウエハW上における軌跡を点線で示している。各図中、5段にウエハWを示しているが、上段のウエハWから下側に向けて回転数を、10rpm、20rpm、30rpm、40rpm、50rpmに設定した状態を示している。図68〜70のウエハWの直径は300mmである。
以下に算出した最低ノズル径を示す。現像液ノズル31の移動速度が10mm/秒で、ウエハWの回転数が10rpm、20rpm、30rpm、40rpm、50rpmであるとき、最低ノズル径は夫々、60mm、30mm、20mm、15mm、12mmである。現像液ノズル31の移動速度が30mm/秒で、ウエハWの回転数が10rpm、20rpm、30rpm、40rpm、50rpmであるとき、最低ノズル径は夫々、180mm、90mm、60mm、45mm、36mmである。現像液ノズル31の移動速度が50mm/秒で、ウエハWの回転数が10rpm、20rpm、30rpm、40rpm、50rpmであるとき、最低ノズル径は夫々、300mm、150mm、100mm、75mm、60mmである。
なお、図示は省略しているが、ノズル移動速度が20mm/秒、40mm/秒であるときの最低ノズル径も算出している。ノズルの移動速度が20mm/秒で、ウエハWの回転数が10rpm、20rpm、30rpm、40rpm、50rpmであるとき、最低ノズル径は夫々、120mm、60mm、40mm、30mm、20mmである。ノズルの移動速度が40mm/秒で、ウエハWの回転数が10rpm、20rpm、30rpm、40rpm、50rpmであるとき、最低ノズル径は夫々、240mm、120mm、80mm、60mm、48mmである。
図67のグラフの説明に戻る。このグラフに示すように、ウエハWの回転数、現像液ノズル31の移動速度、及び現像液ノズル31の下面の直径を適切に設定することで、液千切れを発生させずに液溜まり30を形成することができる。ただし、第1の実施形態で説明したように、ウエハWの回転数は例えば50rpm以下とすることが好ましい。
(評価試験2)
評価用の装置を用いて、液溜まりが回転する作用を加えることで液の撹拌が行えることを調べる試験を行った。前記評価用の装置は、円形の下板と円形の上板とを備え、下板と上板とは互いに対向し、上板はその中心軸まわりに回転する。上板と下板との間の隙間に液体を供給して液溜まりを形成し、上板を回転させたときに、液溜まりの上側、下側とで液の流動が起きているか否かを調べた。この装置において上板と下板との隙間は変更自在であり、当該隙間の液厚を調整することができる。前記液厚及び上板の回転数を変化させて、複数回試験を行った。前記下板の上面の前記液体に対する接触角は77.3°、前記上板の底面の前記液体に対する接触角は91.3°である。
下記の表1は、この評価試験2の結果を示している。前記下板と上板との間の前記液溜まりにおける上面及び底面について、液の流れ具合を○、△、×の3段階で示している。この表1から液厚が1.0mm以下であると、前記液溜まりの上面及び底面において、いずれも液流れが発生している。つまり、液の撹拌が起きている。そのように液厚を1.0mm以下にしたとき、特に上板の回転数が60rpm以上にすると、液溜まりの上面及び底面において、いずれも液流れが大きく発生している。この評価試験2の結果より、ウエハWと上記の現像液ノズル31の下面との高さを適切に設定することで、既述のように旋回流を形成して、現像液を撹拌可能であることが推定される。