(第1の実施形態)
図1〜図5に基づいて、本発明の第1の実施形態に係る現像装置1の構成を説明する。現像装置1には、その表面にレジスト膜が形成され、所定のパターンにより当該レジスト膜を露光した後のウエハWが搬送されて処理される。図1、図2に示すように、現像装置1は基板保持部であるスピンチャック11を備えており、スピンチャック11は、ウエハWの裏面中央部に吸着して、ウエハWを水平に保持する。またスピンチャック11は、回転軸12を介して下方に設けられた回転駆動部13に接続されている。スピンチャック11、回転軸12及び回転駆動部13は、ウエハWを鉛直軸周りに回転させるための基板回転部に相当する。
現像装置1には、スピンチャック11に保持されたウエハWを取り囲むようにカップ体2が設けられている。このカップ体2は、外カップ21と内カップ22とから成り、カップ体2の上方側は開口している。外カップ21は上部側が四角形状であり、下部側が円筒状である。外カップ21の下部側には段部23が設けられており、この段部23には、外カップ21を昇降させるための昇降部24が接続されている。内カップ22は円筒状であり、その上部側が内側に傾斜している。内カップ22は、前記外カップ21の上昇時に、その下端面が段部23と当接することによって上方へ押し上げられる。この結果、ウエハWから現像液を除去する際には、図1中に破線で示すようにカップ体2(外カップ21、内カップ22)を上昇させて、ウエハWから飛散する液を受け止めることができる。
スピンチャック11に保持されたウエハWの下方側には円形板25が設けられており、円形板25の外側には縦断面形状が山型のリング状のガイド部材26が設けられている。前記ガイド部材26は、ウエハWよりこぼれ落ちた現像液や洗浄液を、円形板25の外側に設けられた環状の凹部である液受け部27へとガイドする。液受け部27の底面には液受け部27内の気体及び液体を排出する排液管28が接続され、排液管28の下流側に設けられた気液分離器(不図示)を介して気液分離が行われる。気液分離後の排液は不図示の排液タンクに回収される。
スピンチャック11に保持されたウエハWの下方側には、昇降機構15に接続されたピン14が配置されている。ピン14は、スピンチャック11によるウエハWの保持面よりも上方側の位置と、下方側の位置との間を昇降して、図示しない基板搬送機構とスピンチャック11との間でウエハWの受け渡しを実行する。
現像装置1は、ウエハWに現像液を供給して現像液の液膜(現像液膜)である液溜まり30(後述の図6〜図8、図10参照)を形成するためのパッドノズル31と、現像処理後のウエハWに洗浄液である純水を供給する洗浄液ノズル45とを備えている。図2に示すようにパッドノズル31はアーム41の先端部に設けられている一方、アーム41の基端側にはノズル駆動部42が接続されている。ノズル駆動部42は、アーム41を昇降させる機能と、水平に伸びるガイドレール43に沿って移動する機能とを備え、スピンチャック11に保持されたウエハWの径方向に沿ってパッドノズル31を移動させることができる。またカップ体2の外側には、パッドノズル31の先端部と嵌合自在に構成され、排液口を備えたノズルバスからなる待機領域44が設けられている。
洗浄液ノズル45は、アーム47の先端部に設けられ、当該アーム47の基端側にはノズル駆動部48が接続されている。ノズル駆動部48は、アーム47を昇降させる機能と、水平に伸びるガイドレール49に沿って移動する機能とを備える。このノズル駆動部48により、洗浄ノズル45は、スピンチャック11に保持されたウエハWの上方位置と、カップ体2の外側に設けられたノズルバスからなる待機領域40との間を移動することができる。
また図1に示すように洗浄液ノズル45はポンプやバルブなどを備えた洗浄液供給源46に接続されている。
以上に説明した構成を備える現像装置1において、パッドノズル31はレジスト膜から溶解した溶解成分の影響により現像液の反応性が低下することを抑える機能を備えている。以下、図3〜図5を参照しながら当該パッドノズル31を備えたノズルヘッド部3の構成について説明する。
図3に示すようにノズルヘッド部3は、スピンチャック11に保持されたウエハWに対向して配置され、多数の現像液供給孔314が形成された現像液供給面310を備えるパッドノズル31と、このパッドノズル31を鉛直軸周りに回転させるノズル回転機構38と、パッドノズル31に供給される現像液などが流れる流路が形成されたマニホールド部37と、を備えている。
パッドノズル31は、ウエハWの直径(例えば300mm)よりも小さな円板形状の部材の下面側に、内部に空洞部313が形成された現像液供給板312を設けた構造となっている。現像液供給板312の下面側には、多数の現像液供給孔314が形成され、パッドノズル31の中央部に形成された現像液供給路311を介して空洞部313内に流れ込んだ現像液が、これら現像液供給孔314を介して現像液供給面310の下方側に向けて均一に供給される構造となっている。
また、パッドノズル31の上面、側周面及び下面(現像液供給板312との接合面)に沿った領域には、現像液供給面310から供給された現像液の液溜まり30に含まれる反応性の低下した現像液を押し流す気体(本例では窒素ガス)を供給するための窒素ガス流路315が形成されている。パッドノズル31の下面側の窒素ガス流路315は、現像液供給板312の空洞部313を貫通し、現像液供給面310に開口する窒素ガス供給孔316と連通している。
窒素ガス供給孔316は、現像液供給孔314が開口している現像液供給面310の下面よりも下方側に突出し、現像液供給孔314が形成されている領域を現像液供給面310の周方向に沿って、複数の領域に分割するように配形成された突条部317の下面に開口している。
例えば図4に示すように、突条部317aは、円形の現像液供給面310の中心から放射状に直線状に伸びるように形成してもよい。この場合、現像液供給孔314の形成領域は、現像液供給面310の周方向に沿って扇型に分割される。また図5に示すように、突状部317bは、現像液供給面310の中心から、螺旋状に渦を巻くようにして曲線状に伸びるように形成してもよい。この場合、現像液供給孔314の形成領域は、現像液供給面310の周方向に沿って湾曲した扇型に分割される。なお、説明の便宜上、図4、図5における突条部317a、317bの配置は、パッドノズル31を上面側から見て現像液供給面310を透視した状態を示してある。
一方、パッドノズル31の上面側中央部には、筒状の回転筒383が接続されている。回転筒383は、パッドノズル31と接続された下部回転筒383bと、この下部回転筒383bよりも小径、且つ、上下方向の寸法が長い上部回転筒383aとが同軸上に連結された構造となっている。回転筒383の内部は空洞となっていて、当該空洞はパッドノズル31の現像液供給路311へ連通している。さらに下部回転筒383bを構成する筒壁内には、パッドノズル31側の窒素ガス流路315に連通する窒素ガス流路384が形成されている。当該窒素ガス流路384は、その上流端側にて回転筒383の空洞へ向けて開口している。
ノズル回転機構38は、不図示の電動モーター機構を備え、回転筒383を回転子として、当該回転筒383に連結されたパッドノズル31を鉛直軸周りに回転させる。回転筒383は上部回転筒383a部分がノズル回転機構38内に挿入され、ベアリング381、382によって鉛直軸周りに回転自在に保持されている。
ノズル回転機構38や回転筒383は、本例のノズル回転部に相当する。
このノズル回転機構38に対しては、フランジ部376を介してマニホールド部37が接続されている。マニホールド部37内には、現像液が流れる内側の内部流路372と窒素ガスが流れる外側の外部流路371との二重管構造の流路372、371が形成されている。マニホールド部37の下面からは、これらの流路372、371が二重管部377となって下方側へ突出し、当該二重管部377はノズル回転機構38に保持された回転筒383の空洞内に挿入されている。
内部流路372は、二重管部377の下端部にて開口し、回転筒383の空洞を介してパッドノズル31の現像液供給路311へ連通している。一方、外部流路371は、下部回転筒383bに形成された窒素ガス流路384の開口部に対向する位置へ向けて窒素ガスを供給するように、二重管部377の下部側の側周面に開口している。回転筒383の内周面と二重管部377の外周面との間の隙間は、シール部374、375によって区画され、内部流路372から供給された現像液と、外部流路371から供給された窒素ガスとが混ざらないようになっている。なお、回転筒383の内周面はシール部374、375の摺動面を介して摺動自在な状態で現像液や窒素ガスの流れる領域が区画されている。
マニホールド部37に形成された内部流路372の上流端は、現像液供給路391を介して、ポンプやバルブなどを備えた現像液供給源300Aに接続されている。また外部流路371の上流端は、窒素ガス供給路392を介し窒素ガス供給源300Bに接続されている。
本例の現像装置1においては、既述のノズル駆動部42、スピンチャック11などからなる基板回転部、ノズル回転機構38などからなるノズル回転部により、ウエハWとノズルヘッド部3とを相対的に移動させる移動機構が構成されている。
現像装置1には、コンピュータからなる制御部10が設けられる。制御部10は、不図示のプログラム格納部を有している。このプログラム格納部には、後述の作用で説明する現像処理を実行させるようにステップが組まれたるプログラムが格納される。制御部10はこのプログラムに基づいて現像装置1の各部に制御信号を出力し、ノズル駆動部42、48によるパッドノズル31や洗浄液ノズル45の移動、回転機構38によるパッドノズル31の回転、現像液供給源300A、洗浄液供給源46からのパッドノズル31、洗浄液ノズル45への現像液や洗浄液の供給、窒素ガス供給源300Bからのパッドノズル31への窒素ガスの供給、スピンチャック11によるウエハWの回転、ピン14の昇降などの各動作が制御される。前記プログラム格納部は、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクまたはメモリーカードなどの記憶媒体として構成される。
ここで上述の現像装置1に設けられたパッドノズル31に係る各種の設計変数を例示しておくと、スピンチャック11に保持されたウエハWの上方を移動するパッドノズル31の水平方向の移動速度は、例えば10mm/秒〜100mm/秒である。また現像液供給面310の直径は、例えば50mm〜200mmである。ウエハWの回転速度(単位時間当たりの回転数)は、ウエハWに現像液を吐出したときに液跳ねを抑えるために100rpm以下とすることが好ましく、より好ましくは10rpm〜50rpmである。また、パッドノズル31の回転速度は、例えば50rpm〜1000rpmの範囲に調整される。
続いて、図6〜図10を参照しながら上述の現像装置1を用いて行われる現像処理及び洗浄処理の手順について説明する。ここで図9は当該現像処理のタイムチャートである。本タイムチャートでは、現像処理を開始してからの経過時間(処理時間)と、パッドノズル31の回転速度及びウエハWの回転速度との関係を示している。実線のグラフがパッドノズル31の回転速度(「ケース1」と付記してある)、一点鎖線のグラフがウエハWの回転速度を夫々示す。また、このタイムチャートには、パッドノズル31から現像液、窒素ガスが吐出される期間、及び現像液を吐出する間にパッドノズル31が移動している期間を、各々バンドチャートによって示してある。
先ず、図示しない基板搬送機構によって現像装置1内にウエハWが搬送され、スピンチャック11に保持されると、パッドノズル31が待機領域44からウエハWの中央部の上方位置へ移動する。そして、図10に模式的に示すようにウエハWの上面から数mm程度上方側に現像液供給面310が配置されるようにパッドノズル31を降下させる。続いて、パッドノズル31からウエハWに現像液を供給すると共に上面側から見て反時計回りにパッドノズル31を回転させ(図9中の時刻t1)、パッドノズル31の現像液供給面310とウエハWとの間に、当該現像液供給面310に接するように、前記現像液供給面310よりも大きい液溜まり30を形成する。
パッドノズル31が所定の回転速度に到達したら、その回転速度を維持し、次いで、上面から見て時計回りにウエハWを回転させる(図6)。ウエハWの回転速度が例えば10rpmに達したら、その回転速度を維持した状態で、例えば10mm/秒の移動速度で、ウエハWの中央部(図9のパッドノズル移動期間を示すバンドチャートに「C」と記してある)から周縁部(同バンドチャートに「E」と示してある)へ向けてパッドノズル31の移動を開始する(図9の時刻t2)。これによって液溜まり30はパッドノズル31の現像液供給面310に接した状態で、ウエハWの周縁部へ向けて広げられる(図7)。
液だまり30を広げる際に、パッドノズル31が回転していることにより、液だまり30内の現像液が撹拌され、レジスト膜から現像液中に溶解した成分を含む現像液の濃度が均一化する。この結果、露光後のレジスト膜から現像されるパターンのCD(Critical Dimension)の均一性を高めることができる。なお、パッドノズル31の回転方向は、上面側から見て反時計回りに回転させる場合に限定されるものではなく、ウエハWと同様に時計回りに回転してもよい。ただし、図7に示すように、ウエハWとパッドノズル31とを互いに逆方向に回転させることにより、現像液を撹拌する力が大きくなり、現像液の濃度の均一性をより高める効果が得られる。
そしてパッドノズル31の移動を開始してから所定時間、例えば1〜2秒経過後の時刻t3にて、パッドノズル31の回転を継続したまま、窒素ガス供給孔316から窒素ガスの供給を開始する。図4、図5を用いて説明したように、現像液供給孔314の形成領域は、窒素ガス供給孔316が形成された突条部317により現像液供給面310の周方向に分割されている。図10は、これら現像液供給孔314の形成領域、及び窒素ガス供給孔316の形成領域(突条部317)の下方側に形成される液溜まり30を拡大して模式的に示している。既述のように、パッドノズル31及びウエハWは各々回転しているが、図10中には、パッドノズル31とウエハWとの相対的な移動方向を矢印で示してある。
ここで図4、図5には、交互に配置されている現像液供給孔314の形成領域、及び窒素ガス供給孔316の形成領域(突条部317)に、パッドノズル31の回転方向に沿って(A)〜(E)の符号を付してある。図10に示す模式図が、これら領域(A)〜(E)の下方側に形成される液溜まり30の様子を示していると考える。このとき、現像液供給孔314の形成領域である、領域(A)、(C)、(E)においては、現像液供給面310とウエハWとの隙間を満たす現像液の液溜まり30が形成される。一方で、窒素ガス供給孔316の形成領域の下方側では、窒素ガス供給孔316から下方側へ向けて吐出される窒素ガスにより、現像液が押し流されて気相部301を生じ、液溜まり30を構成する現像液膜が薄くなる領域である薄膜部302が形成される。
このとき、パッドノズル31とウエハWとの相対的な移動方向を考慮し、例えば図10に示したウエハW上の(a)点に着目する。当該(a)点には、領域(A)の液溜まり30→領域(B)の薄膜部302→領域(C)の液溜まり30→領域(D)の薄膜部302→領域(E)の液溜まり30→…と、液溜まり30と、薄膜部302とが交互に通過していく。
なお既述のように、パッドノズル31は回転しながらウエハWの中央部側から周縁部側へ向けて移動し、またウエハW自体も鉛直軸周りに回転しているので、(a)点上を液溜まり30及び薄膜部302が交互に通過していく回数は、これらパッドノズル31の移動速度やウエハWの回転速度によって変化する。
このように現像液供給孔314の形成領域と窒素ガス供給孔316の形成領域とが交互に通過する際の現像処理の進行について説明する。例えばウエハW上の(a)点が領域(A)の現像液供給孔314から供給された現像液の液溜まり30と接触すると、レジスト膜は露光されたパターンに対応してその一部が現像液中に溶解する。このレジスト膜の溶解に伴って現像液の反応性は低下する。
このように現像液の反応性が低下したところに、領域(B)の窒素ガス供給孔316が移動してくると、窒素ガス供給孔316から吐出された窒素ガスによりレジスト膜から溶解した成分を含む現像液が押し流されて薄膜部302となる。押し流された現像液は例えば突条部317の伸びる方向に沿って流れ、気相部301の外方領域へと排出される。
この薄膜部302が形成されているところに領域(C)が到達して現像液供給孔314から新たな現像液が供給されると、レジスト膜から溶解した成分を含む現像液の割合が小さくなり、反応性の高い現像液で(a)点における現像処理が進行する。
こうして、新たな現像液の供給と、反応性の低下した現像液の押し流しとを交互に実行することにより、時間平均で見たとき(a)点に接触する現像液の反応性を高い状態に維持し現像処理に要する時間を短縮することができる。この結果、感度の低い厚膜レジストやEUV用のレジスト膜を現像する場合においても、現像処理に要する時間の増大を抑えることができる。
以上に説明した観点において、窒素ガス供給孔316は、本液溜まり30(現像液膜)を押し流して薄くするための押し流し機構に相当しているといえる。また窒素ガス供給孔316が形成された突状部317を挟んで、パッドノズル31とウエハWとの相対的な移動方向の前方側に位置する現像液供給孔314の形成領域は第1の現像液供給部に相当し、前記移動方向の後方側に位置する現像液供給孔314の形成領域は第2の現像液供給部に相当することとなる。従って、図10の領域(A)、(C)の関係においては、領域(A)は第1の現像液供給部として機能し、領域(C)は第2の現像液供給部として機能する。また、図10の領域(C)、(E)の関係においては、領域(C)は第1の現像液供給部として機能し、領域(E)は第2の現像液供給部として機能する。
なお、液溜まり30を押し流すために用いられる気体は、既述の窒素ガスのほか、アルゴンガスなど現像液やレジスト膜との反応性の小さいものを採用するとよい。但し、これら現像液やレジスト膜への影響が小さい場合には、清浄空気などを利用してもよいことは勿論である。
パッドノズル31は広がる液溜まり30を追い越さないように、回転しながらウエハW上にて移動を続ける。パッドノズル31による液溜まり30の追い越しを避ける理由は、追い越しを行うと現像液の液千切れが発生し、複数の液溜まり30が個別にウエハW表面を広がることとなってしまうためである。これら千切れた液溜まり30の界面同士が合わさると、その影響を受けて当該箇所のレジストパターンのCDが、他の箇所におけるレジストパターンのCDと異なってしまうおそれがある。この結果、レジストパターンの面内の均一性を示すCDU(Critical Dimension Uniformity)が低下してしまうため、パッドノズル31の移動速度は液溜まり30の追い越しが起きない程度に設定される。
パッドノズル31がウエハWの周縁部側に移動し、ウエハWの全面が現像液の液溜まり30に覆われると、パッドノズル31の移動及び現像液の供給を停止する(図8、図9の時刻t4)。ここでウエハWの全面とは、レジストパターンの形成領域全体の意味であり、例えばウエハWの周縁部に前記形成領域が設けられていないウエハWにおいては、当該周縁部に液溜まり30を形成しなくてもよい。図8では、ウエハWの周端よりも若干内側まで、液溜まり30を形成した例を示しているが、ウエハWの周端まで液溜まり30によって覆われる状態を形成してもよい。
このようにウエハWの全面が液溜まり30で覆われた状態となるまで、パッドノズル31は回転を継続して現像液の撹拌を行う。そして、パッドノズル31の移動、及び現像液の供給を停止した後、パッドノズル31の回転及びウエハWの回転を停止すると共に、窒素ガス供給孔316からの窒素ガスの供給を停止する(図9の時刻t5)。しかる後、パッドノズル31を上昇させて、パッドノズル31を待機領域44まで移動させる。
パッドノズル31を退避させた後のウエハWの表面は、静止した液溜まり30によって覆われた状態となり、ウエハWの表面全体でレジスト膜と現像液との反応がさらに進行する(不図示)。そして所定時間が経過したら、ウエハWの中央部の上方位置に洗浄液ノズル45を移動させると共に、ウエハWを所定の回転速度で回転させる。そして、洗浄液ノズル45からウエハWに洗浄液を供給し、洗浄液に作用する遠心力によりウエハWの全面に洗浄液を広げて、ウエハWから現像液の液溜まり30を除去する(不図示)。次いで洗浄液ノズル45からの洗浄液の吐出を停止し、ウエハWの回転を継続すると洗浄液が振り切られ、ウエハWが乾燥される。然る後、図示しない基板搬送機構により、ウエハWは現像装置1から搬出される。
本実施の形態に係る現像装置1によれば、以下の効果がある。露光後のレジスト膜が形成されているウエハWの表面に供給された現像液の液溜まり30(現像液膜)に窒素ガス供給孔316から窒素ガスを吹き付けて、当該液溜まり30中の現像液を押し流して薄膜部302を形成する。この薄膜部302が形成された領域に新たな現像液の供給を行うことにより、レジスト膜から現像液膜中に溶解した成分を含む反応性の低下した現像液に替えて反応性の高い現像液膜を形成し、時間平均で見たとき効率的な現像処理を行うことができる。
ここで図9のケース1に例示したように、ウエハWの中央部側から周縁部側への移動中、パッドノズル31の回転速度は一定としなければならないといった制約はない。例えば図9中に「ケース2」として破線で示したように、パッドノズル31がウエハWの中央部から周縁部に向けて移動するにつれて、次第にその回転速度を上昇させる制御を行ってもよい。図6〜図8を用いて説明した例の如く、ウエハWの中央部側から周縁部側へ向けて液溜まり30を広げる場合には、ウエハWの表面と現像液との接触時間はウエハWの周縁部側へ向かうほど短くなる。
そこで、図9のケース2では、パッドノズル31が周縁部側に向かうほど、その回転速度が高くなるようにして現像液の撹拌を促進し、さらにウエハWの表面を液溜まり30と薄膜部302が交互に形成される回数を多くして、現像液とレジストとの反応性が高くなるようにしている。このようにパッドノズル31の回転速度を制御することによって、現像処理の効率を向上させつつ、ウエハWの面内におけるCDの均一性が、より高くなるようにしている。
しかし本発明においてパッドノズル31を鉛直軸周りに回転させることは必須の要件ではない。例えばパッドノズル31の回転を行わない場合であっても、スピンチャック11上のウエハWを回転させつつ、現像液供給孔314や窒素ガス供給孔316を備えたパッドノズル31をウエハWの中央部側から周縁部側に移動させることにより、図10を用いて説明した液溜まり30及び薄膜部302を形成することができる。この結果、溶解成分を含む現像液を押し流した後、反応性の高い新たな現像液を供給して現像処理を進行させる作用、効果が得られる。
第1の実施形態では液溜まり30をウエハWの中央部から周縁部に広げるために、ウエハWの回転を行っているが、ウエハWの回転は必須の要件ではない。例えば、パッドノズル31の現像液供給面310を、ウエハWと同じかそれよりも大きく形成し、現像液供給面310をウエハWに近接させる。そして、現像液供給面310における現像液供給孔314の形成領域、及び窒素ガス供給孔316の形成領域から各々現像液及び窒素ガスを供給し、パッドノズル31を回転させる。このときパッドノズル31の横方向の移動は行わないものとする。これによって、現像液供給面310の下面では、現像液が撹拌されながら液溜まり30を形成してウエハWの中央部から周縁部に向けて広がると共に、ウエハWの表面の各位置は、液溜まり30と薄膜部302とが交互に通過する。従って、本例においても処理効率を向上させつつ、CDの面内均一性が高い現像処理を行うことができる。
ところでパッドノズル31を回転させると、現像液供給面310の下方の液流れに沿って、現像液供給面310よりも若干外側の領域にも液流れが発生する。そのため、上記のようにウエハWの回転及びパッドノズル31の横方向の移動を行わずに旋回流を形成する場合においては、パッドノズル31の現像液供給面310の大きさを、ウエハWの大きさより若干小さくしてもよい。
ここで上述の現像処理が行われる基板は円形のウエハWに限られず、角型の基板を処理してもよい。なお上記の例では、ウエハWに形成される液溜まり30は現像液に限られているが、ウエハWにパッドノズル31を用いて洗浄液を液盛りして洗浄処理を行ってもよい。
さらには、パッドノズル31の移動方向は、ウエハWの中央部側から周縁部側へ向けて移動させる場合に限定されない。上述の例とは反対に、ウエハWの周縁部側から中央部側へパッドノズル31を移動させてもよい。この場合には、液溜まり30はウエハWの周縁部側から中央部側へ向けて広がることになるが、ウエハWの中央部にて、現像液が合流し、異なる界面同士が接触すると、既述のようにCDの均一性が低下するおそれもある。そこで、周縁部側から中央部側へのパッドノズル31は、高いCD均一性が要求されない現像処理などにて採用するとよい。
続いて図11には、2組のノズルヘッド部3(ノズルヘッド部3A、3B)を備えた現像装置1aを示している。ノズルヘッド部3A、3Bは図3に示したノズルヘッド部3と共通の構造を備え、各々パッドノズル31(以下、便宜上、第1のパッドノズル31A、第2のパッドノズル31Bと呼んで区別することがある)を備えている。これらノズルヘッド部3A、3Bはアーム41を介してノズル駆動部42に接続され、ガイドレール43に沿って、スピンチャック11に保持されたウエハWの上方位置と、待機領域44との間を移動できることも図2に示した現像装置1場合と同様である。これによって、回転、現像液の吐出、及びウエハW上での移動動作を、各パッドノズル31で独立して行うことができる。
以下、図11〜図25を用いて説明する各実施形態においては、図1〜図10を用いて説明したものと共通の構成要素には、これらの図で用いたものと同じ符号を付してある。
図12〜図14を参照して上記現像装置1aを用いた現像処理について説明する。ここで図14におけるタイムチャートの構成は、図9にて説明した例とほぼ同様であるが、各第1のパッドノズル31A、第2のパッドノズル31Bからの現像液、及び窒素ガスの供給タイミングをまとめて示してある点が図9に示した例と異なる。また、第1のパッドノズル31Aの回転速度の変化を実線で示し、第2のパッドノズル31Bの回転速度の変化を二点鎖線で示している。
先ず、静止したウエハWの中央部の上方位置に第1のパッドノズル31Aを移動させ、所定の高さ位置まで降下させた後、第1のパッドノズル31AからウエハWに現像液を供給すると共に第1のパッドノズル31Aを上面側から見て反時計回りに回転させる点については、図6に示したパッドノズル31の場合と同様なので、別途の図示を省略する(図14の時刻t1)。次いでウエハWを回転させ、所定の回転速度に達したらウエハWの周縁部側へ向けて第1のパッドノズル31Aの移動を開始し、移動開始時点から所定時間経過後に窒素ガス供給孔316からの窒素ガスの供給を開始する(図14の時刻t2)。
こうして現像液の液溜まり30をウエハWの中央部側から周縁部側へ向けて広げながら、第1のパッドノズル31Aが予め定めた位置に到達するタイミングにて、図12に示すようにウエハWの中央部を挟んで当該中央部からの距離が第1のパッドノズル31A、第2のパッドノズル31Bでほぼ同じとなる位置に第2のパッドノズル31Bを進入させる。そして当該第2のパッドノズル31Bにおいても第2のパッドノズル31Bの回転、現像液供給孔314からの現像液の供給、窒素ガス供給孔316からの窒素ガスの供給を順次開始すると共に、第1のパッドノズル31Aとは反対の方向へ第2のパッドノズル31Bを移動させる(図14の時刻t3)。
こうして第1、第2のパッドノズル31A、31BをウエハWの中央部側から周縁部側に向かって移動させ、両パッドノズル31A、31Bが周縁部に到達してウエハWの全面に液溜まり30が形成されたら、各パッドノズル31A、31Bの移動を停止する(図13、図14の時刻t4)。しかる後、両パッドノズル31A、31B、及びウエハWの回転停止と、これらパッドノズル31A、31Bからの現像液、及び窒素ガスの供給停止とを実行する(図14の時刻t5)。
両パッドノズル31A、31Bからの現像液の吐出を停止した後は、図8を用いて説明した例と同様に現像液の液溜まり30により、レジスト膜の反応を進行させ、所定の時間経過後に、ウエハWの回転及び洗浄液の供給を実行して、現像液をウエハWから除去する。
これら2つのパッドノズル31A、31BがウエハW上を移動する際にも、各現像液供給面310における現像液供給孔314の形成領域では現像液が吐出され、窒素ガス供給孔316の形成領域では窒素ガスが吐出される。これにより、図10に示すように処理対象のウエハWの表面を液溜まり30と、薄膜部302とが交互に通過して効率的な現像処理が実現される点については図1、図2に示した現像装置1と同様である。
2つのパッドノズル31A、31Bを用いる本実施の形態に係わる現像装置1aにおいては、ウエハWの中央部は、第1のパッドノズル31Aを用いた現像処理が行われ、第1のパッドノズルがウエハWの中央部から周縁部寄りの所定位置に移動した後、周縁部に至るまでは、2つのパッドノズル31A、31Bを用いて現像処理が行われる。各パッドノズル31A、31Bでは図10を用いて説明した現像処理が繰り返し行われ、ウエハWの表面を液溜まり30及び薄膜部302が交互に通過していく回数が増加し、より高い処理効率にて均一な現像処理を実行することができる。
この結果、処理時間の短縮を図りつつ、ウエハWの面内におけるレジストパターンのCDの均一性を、より確実に向上させることができる。特に、ウエハWの大型化に伴って、処理面積が広くなるウエハWの周縁部側においては液溜まり30中に溶解する成分の量が多くなり、現像液の反応性が低下し易くなるおそれがあるため、このように複数のパッドノズル31A、31Bを用いて現像処理を行う方式が有効である。
ここでこれら図9のケース2に示したように、パッドノズル31A、31Bの一方側、または双方において、パッドノズル31A、31Bが周縁部側に向かうほど、その回転速度が高くなるように回転速度の制御を行ってもよい。
(第2の実施形態)
図15〜図20を用いて説明する第2の実施形態に係わる現像装置1bは、スリット形状の現像液供給孔である複数の現像液供給スリット318a、318bを備えたノズルヘッド部であるスリットノズル部31Cがアーム41の先端部に固定して設けられている点が、回転するパッドノズル31の現像液供給面310に多数の現像液供給孔314が形成された第1の実施形態に係わる現像装置1と異なる。
図15、図16に示すように、本例のスリットノズル部31Cは、アーム41側から見て、左右方向に細長い直方体形状のスリットノズル部31Cの本体が当該アーム41の先端部に固定して設けられている。スリットノズル部31Cの左右方向の幅は、処理対象のウエハWの半径よりも短く、その底面には左右方向に直線状に伸びるように形成された2本の現像液供給スリット318a、318bが互いにほぼ平行に、前後に離間して配置されている。またスリットノズル部31Cの底面の、互いに離間して配置された現像液供給スリット318a、318bの間に挟まれる位置には、これら現像液供給スリット318a、318bとほぼ平行に直線状に伸びる気体供給孔である窒素ガス供給スリット316aが設けられている。
図16に破線で示すように、スリットノズル部31Cの本体の内部は各スリット318a、318b、316aに対応して区画されている。そして既述の現像液供給源300Aから現像液供給路391a、391bを介して各現像液供給スリット318a、318bに現像液が供給され、また窒素ガス供給源300Bから窒素ガス供給路392を介して窒素ガス供給スリット316aに窒素ガスが供給される。従って本例では第1の現像液供給スリット318aが第1の現像液供給部に相当し、第2の現像液供給スリット318bが第2の現像液供給部に相当する。また、窒素ガス供給スリット316aが気体供給部に相当する。
図16に示すように、現像液供給スリット318a、318bはスリットノズル部31Cの底面よりも下方側に突出していて、スピンチャック11に保持されたウエハWと直交する方向へ向けて下方側へ現像液を吐出する。一方、窒素ガス供給スリット316aは第2の現像液供給スリット318bが配置されている後方側へ向けて斜め下方に窒素ガスを吐出する。また窒素ガス供給スリット316aは、前後に離間して設けられた現像液供給スリット318a、318bの間の第1の現像液供給スリット318a寄りの位置に配置されている。
なおここで、窒素ガス供給スリット316aが窒素ガスを吐出する方向は、斜め後方側に向けて吐出するように設定する場合に限られるものではなく、現像液供給スリット318a、318bと同様に、下方側へ向けて窒素ガスを吐出する構成としてもよい。
図15に示すようにアーム41は、スピンチャック11に保持されたウエハWの中央部の上方を通過可能な位置にてスリットノズル部31Cを保持している。また、スリットノズル部31Cに形成された各スリット318a、318b、316aは、スリットノズル部31Cの移動方向に沿った方向に伸びている。
本例の現像装置1bにおいては、既述のノズル駆動部42、スピンチャック11などからなる基板回転部により、ウエハWとノズルヘッド部3とを相対的に移動させる移動機構が構成されている。
図17〜図20を参照して上述のスリットノズル部31Cを用いたウエハWの現像処理について説明する。図19のタイムチャートには、各現像液供給スリット381a、381b、窒素ガス供給スリット316aからの現像液、窒素ガスの供給期間及びスリットノズル部31Cの移動期間をバンドチャート表示してある。また、本例では回転速度のグラフはウエハWの回転速度のみを示している。
先ず、静止したウエハWの中央部の上方位置にスリットノズル部31Cを移動させ、所定の高さ位置まで降下させた後、ウエハWの回転を開始すると共に、ウエハWの周縁部側へ向けてスリットノズル部31Cの移動を開始する(図19の時刻t1)。そしてウエハWが所定の回転速度に達した時刻t2にて第1の現像液供給スリット318aからの現像液の供給、及び窒素ガス供給スリット316aからの窒素ガスの供給を開始する。このとき、現像液の供給を開始するタイミングは、第1の現像液供給スリット318aにおけるウエハWの中央部側の一端が、当該ウエハWの中心の上方をカバーする位置から移動してしまう前に現像液の供給を開始することが好ましい。これにより、ウエハWの中央部にも現像液の液溜まり30を形成することができる。
第1の現像液供給スリット318aから回転するウエハWに現像液を吐出するとき、図17に示すように当該第1の現像液供給スリット318aは、ウエハWの半径方向に伸びるように配置されている。このため、第1の現像液供給スリット318aの形状に対応して形成される現像液の吐出領域は、スリットノズル部31Cに対するウエハWの相対的な移動方向と交差する方向に線状に伸びるように形成される。また、窒素ガス供給スリット316aの形状に対応して形成される窒素ガスの吐出領域(気体吐出領域)についてもスリットノズル部31CとウエハWとの相対的な移動方向と交差する方向に線状に伸びるように形成されることとなる。
そして、第1の現像液供給スリット318a、窒素ガス供給スリット316aから現像液、窒素ガスの供給を開始してから所定時間経過後のタイミングにて、第2の現像液供給スリット318bより現像液の供給を開始する(図19の時刻t3)。第2の現像液供給スリット318bの形状に対応して形成される現像液吐出領域についても、スリットノズル部31Cに対するウエハWの相対的な移動方向と交差する方向に線状に伸びるように形成される。
従って図20に示すように、スリットノズル部31Cの下方側においては、第1の現像液供給スリット318a、第2の現像液供給スリット318bの下方位置にて、前記相対的な移動方向(図20中に矢印で示してある)と交差する方向に2本の現像液吐出領域が形成され、当該領域は現像液の液溜まり30となる。一方、第1の現像液供給スリット318a、第2の現像液供給スリット318bの間に配置された窒素ガス供給スリット316aから供給された窒素ガスが吹き付けられる窒素ガス吐出領域では、現像液が押し流されて気相部301が発生し、液溜まり30を構成する現像液膜が薄くなる領域である薄膜部302が形成される。
このとき、例えば図20に示したウエハW上の(a)点に着目すると、当該(a)点は、第1の現像液供給スリット318aの現像液吐出領域の液溜まり30→窒素ガス供給スリット316a窒素ガス吐出領域の薄膜部302→第2の現像液供給スリット318bの現像液吐出領域の液溜まり30を通過していく。この結果、図10を用いて説明したパッドノズル31の作用と同様に、新たな現像液の供給と、反応性の低下した現像液の押し流しとが交互に実行されて時間平均で見たとき(a)点に接触する現像液の反応性を高い状態に維持し現像処理に要する時間を短縮することができる。
こうして第1の現像液供給スリット318a、第2の現像液供給スリット318bからの現像液の供給、窒素ガス供給スリット316aからの窒素ガスの供給を行いながらスリットノズル部31CをウエハWの周縁部側に移動させ、ウエハWの全面が現像液の液溜まり30で覆われた状態となったら、スリットノズル部31Cの移動、及び第1の現像液供給スリット318a、窒素ガス供給スリット316aからの現像液、窒素ガスの供給を停止する(図18、図19の時刻t4)。次いで、所定時間経過後、ウエハWの回転を停止したタイミングで第2の現像液供給スリット318bからの現像液の吐出を停止する(図19の時刻t5)。
スリットノズル部31Cからの現像液の供給を停止した後は、図8を用いて説明した例と同様に現像液の液溜まり30により、レジスト膜の反応を進行させ、所定の時間経過後に、ウエハWの回転及び洗浄液の供給を実行して、現像液をウエハWから除去する。
本例においては図15に示した現像装置1bの如くスリットノズル部31Cを1組だけ設ける場合に限定されるものではない。例えば図11に示した現像装置1aと同様に2組のスリットノズル部31Cを設けてウエハWの処理を行ってもよい。
またアーム41によってスリットノズル部31Cを移動させながら処理を行うことも必須ではない。例えば左右方向の幅がウエハWの半径よりも長い第1の現像液供給スリット318a、第2の現像液供給スリット318b、窒素ガス供給スリット316aを備えたスリットノズル部31Cを設け、これらのスリット318a、318b、316aがウエハWの半径がカバーされるようにスリットノズル部31Cを配置してもよい。そしてウエハWを回転させながら各スリット318a、318b、316aより現像液、窒素ガスを供給すると、図20に示した例と同様の作用を発揮させつつ、ウエハWの全面に現像液の液溜まり30を形成することができる。
さらに図21に示すように、ウエハWの一端から他端に亘る領域をカバーする長さの第1の現像液供給スリット318a、第2の現像液供給スリット318b及び窒素ガス供給スリット316aを備えるスリットノズル部31Dを設け、ウエハWを停止した状態で、不図示のノズル駆動機構(移動機構)によりスリットノズル部31DをウエハWの一端側から他端側まで移動させて現像液の液溜まり30を形成してもよい。
またスリットノズル部31C、31Dにおいて、ウエハWの相対的な移動方向と交差する方向に線状に伸びる現像液吐出領域、窒素ガス吐出領域を形成する手法は、スリット318a、318b、316aを用いる場合に限定されない。例えば、複数個の供給孔を前記交差方向に向けて線状に並べて配置し、これらの複数の供給孔から同時に現像液や窒素ガスを供給することにより、線状に伸びる現像液吐出領域、窒素ガス吐出領域を形成してもよい。
さらには、複数の現像液吐出領域間に、窒素ガス吐出領域を形成する手法は、図16に示したスリットノズル部31Cの如く、1本ずつ形成された第1の現像液供給スリット318a、第2の現像液供給スリット318b間に1本の窒素ガス供給スリット316aを配置する構成に限定されない。複数本ずつ設けられた第1の現像液供給スリット318a、第2の現像液供給スリット318b間に複数本の窒素ガス供給スリット316aを配置してもよい。これらに加えて例えばスリットノズル部31Cの前後方向の幅をさらに広げ、第1の現像液供給スリット318aの前方や第2の現像液供給スリット318bの後方に、窒素ガス供給スリットと現像液供給スリットの組を追加して設けてもよい。
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係わる現像処理では、例えば図11に示す2つのパッドノズル31A、31Bを備えた現像装置1aを用い、これらのパッドノズル31A、31Bの相対的な移動動作を利用して、現像液の液溜まり30や薄膜部302の形成を行う。現像装置1aの構成については図11に示したものと同様なので、再度の説明を省略する。
図22〜図27を用いて本例の現像処理を説明すると、本例においては図22に示すように第2のパッドノズル31BをウエハWの中央部の上方位置に移動させ、第1のパッドノズル31Aを前記中央位置よりもやや側方に外れた位置(図26のバンドチャート中に「M」と記してある)に移動させる。
そしてウエハW及び両パッドノズル31A、31Bを回転させると共に第2のパッドノズル31BからウエハWの中央部に向けて現像液供給孔314からの現像液の供給を開始する(図22、図26の時刻t1)。これらの動作と並行して、第1のパッドノズル31AはウエハWの中央部から周縁部側へと移動し、第2のパッドノズル31Bは既述の中央位置よりもやや側方に外れた位置から第1のパッドノズル31Aと同じ方向へ向けて移動する。このとき、第1のパッドノズル31Aの移動速度は、第2のパッドノズル31Bの移動速度よりも遅くなるように制御される。
そして、第1のパッドノズル31AがウエハWの中央部近傍位置に移動したタイミングにて第1のパッドノズル31Aからの現像液の供給を開始する(図23、図26の時刻t2)。ここで第2のパッドノズル31Bを移動させながら現像液の供給を実行すると、ウエハWの表面を広がる液溜まり30aに働く慣性の影響で当該液溜まり30aの中央部側の現像液が周縁部側へと押し流され、図27に示すように中央部側に現像液膜が薄くなる領域である薄膜部302が形成される。
この第2のパッドノズル31Bの移動方向の上流側の位置にて、第1のパッドノズル31Aから現像液を供給すると、薄膜部302に新たな現像液が供給されて液溜まり30bとなる。この結果、ウエハW上の(a)点に着目すると、当該(a)点は、第2のパッドノズル31Bによって形成された液溜まり30a→第2のパッドノズル31Bの移動に伴って形成される薄膜部302→第1のパッドノズル31Aによって形成された液溜まり30bを通過していく。従って、図10を用いて説明したパッドノズル31の作用と同様に、新たな現像液の供給と、反応性の低下した現像液の押し流しとが交互に実行されて時間平均で見たとき(a)点に接触する現像液の反応性を高い状態に維持し現像処理に要する時間を短縮することができる。
こうして第2のパッドノズル31Bからの現像液の供給、及び当該第2のパッドノズル31Bの移動方向の上流側の位置における第1のパッドノズル31Aからの現像液の供給を行い、第2のパッドノズル31BがウエハWの周縁部に到達したら、第2のパッドノズル31Bの回転、及び現像液の供給を停止する(図24、図26の時刻t3)。そして第2のパッドノズル31Bは待機領域44へと退避させる。
この期間中においても第1のパッドノズル31Aは、第2のパッドノズル31Bの移動経路を辿ってウエハWの周縁部側へ移動しながら現像液の供給を継続する。そして第1のパッドノズル31AがウエハWの周縁部に到達したら、第1のパッドノズル31Aの回転、及び現像液の供給を停止する(図25、図26の時刻t4)。この結果、ウエハWの全面が現像液の液溜まり30bで覆われた状態となる。
第2のパッドノズル31Bからの現像液の供給を停止した後は、図8を用いて説明した例と同様に現像液の液溜まり30により、レジスト膜の反応を進行させ、所定の時間経過後に、ウエハWの回転及び洗浄液の供給を実行して、現像液をウエハWから除去する。
上述の現像処理において、第2のパッドノズル31Bは第1の現像液供給部に相当し、第1のパッドノズル31Aは第2の現像液供給部に相当する。また図11に示した2つのノズル駆動部42は、各々のパッドノズル31B、31Aからの現像液の供給位置を調整するための第1の供給位置調整部、第2の供給位置調整部に相当している。
さらにここで、第1のパッドノズル31Aの移動速度は、第2のパッドノズル31Bの移動速度よりも遅くすることは必須ではなく、両バッドノズル31A、31Bの移動速度を同じにしてもよい。この場合は、第1のパッドノズル31Aが第2のパッドノズル31Bに追いつかないタイミングで第2のパッドノズル31Bに遅れて、第1のパッドノズル31Aの移動を開始するとよい。
以上、図22〜図27を用いて説明した現像処理方法においては、第2のパッドノズル31Bと第1のパッドノズル31Aとの相対的な移動動作を利用して、ウエハWの全面を液溜まり30a→薄膜部302→液溜まり30bに接触させて効率的な現像処理を行う。このため、例えば図4に示すパッドノズル31の窒素ガス供給孔316から窒素ガスの供給を行わなくても、2つの第2のパッドノズル31B、第1のパッドノズル31A間に薄膜部302が形成される。
よって、パッドノズル31に窒素ガス供給孔316を設けることは必須ではない。例えば図3に示すパッドノズル31に形成される現像液供給路311を現像液供給面310の下面に向けて開口させ、現像液供給面310とウエハWとの間の隙間に現像液供給路311から供給された現像液を広げると共に、パッドノズル31を回転させて現像液を撹拌する構成のノズルヘッド部3を採用してもよい。なお窒素ガス供給孔316を備えるパッドノズル31を利用することにより、各パッドノズル31A、31Bの下方領域での新たな現像液の供給、薄膜部302の形成が繰り返され、より効果的に現像処理を実行できることは勿論である。
さらには、図22〜図27を用いて説明した現像処理方法においては図16などに示すスリットノズル部31Cを利用してもよいし、現像液の供給配管の下端が開口しているストレートノズルを用いてよい。
また、第2のパッドノズル31Bの移動経路を辿って第1のパッドノズル31Aが移動しながら現像液を供給して液溜まり30bを形成することも必須ではない。例えば第2のパッドノズル31Bの移動方向の上流側の位置であるウエハWの中央部に停止して現像液を供給してもよい。
(実験)
図3に示すように鉛直軸周りに回転自在な状態でノズルヘッド部3に保持され、現像液供給路311がパッドノズル31の下面に直接開口するパッドノズル31を用いて現像液の供給を行い、パッドノズル31を回転させるタイミングや回転時間と、パッドノズル31の下方側に形成されるパターンのCDとの関係を調べた。なお、パッドノズル31の現像液供給面310には、現像液供給孔314や窒素ガス供給孔316は形成されていない。
A.実験条件
(参考例1−1)直径10cmのパッドノズル31を用いて、合計60秒間現像液を供給し、後半の20秒間だけパッドノズル31を回転させた。
(参考例1−2)60秒間の現像液供給期間の内、中盤の20秒間だけパッドノズル31を回転させた。
(参考例1−3)60秒間の現像液供給期間の内、前半の20秒間だけパッドノズル31を回転させた。
(参考例1−4)60秒間の現像液供給期間の内、5秒間パッドノズル31を回転させ、その後10秒間パッドノズル31の回転を停止する動作を4回繰り返した。
(参考例1−5)50秒間の現像液を供給し、その期間中パッドノズル31の回転動作を継続した。
(参考例1−6)60秒間の現像液供給期間の内、最初の1秒間だけパッドノズル31を回転させた。
(参考例1−7)60秒間の現像液供給期間の内、最初の5秒間だけパッドノズル31を回転させた。
(比較例1−1)50秒間の現像液を供給し、その期間中パッドノズル31の回転は行わなかった。
B.実験結果
図28に、参考例1−1〜1−5、比較例1−1に係わる実験結果を示し、図29に参考例1−1、1−3、1−6〜1−7係わる実験結果を示す。各グラフにおいて、棒グラフの高さは現像されたパターンのCD[nm]を示しており、当該CDの値が小さいほど、現像処理が進行していることを示している。
図28に示した実験結果によれば、パッドノズル31の回転時間を長くするほど、現像処理が進行する一方(参考例1−5)、パッドノズル31の回転時間を揃えた場合には、現像液の供給開始時に近いタイミングで回転を行うほど現像処理が進行することが分かる(参考例1−1〜1−3)。また図29に示すように、パッドノズル31の回転時間が短い場合であっても、現像液の供給開始直後に回転を行った方が、現像液の供給期間の後半に長くパッドノズル31を回転させる場合よりも、現像処理を進行させる効果が高い(参考例1−6、1−7、1−1)。
パッドノズル31を回転させる動作は、現像液供給面310とウエハWとの間に形成される現像液の液溜まり30を撹拌し、現像液の濃度を均一にする効果がある。このとき、現像液の供給直後に撹拌を行った方が現像処理を進行させる効果が高いということは、現像液とレジスト膜との界面付近では、現像液がレジスト膜に接触した直後に溶解成分の影響により反応性の低下の影響が現れることを示している。従って、本発明のように現像液の液溜まり30を形成した後、直ちに現像液を押し流して薄膜部302を形成し、次いで新しい現像液を供給することにより、反応性の低下を抑えて現像処理を進行させる効果が得られることが分かる。
そしてウエハW及び両パッドノズル31A、31Bを回転させると共に第2のパッドノズル31BからウエハWの中央部に向けて現像液供給孔314からの現像液の供給を開始する(図22、図26の時刻t1)。これらの動作と並行して、第2のパッドノズル31BはウエハWの中央部から周縁部側へと移動し、第1のパッドノズル31Aは既述の中央位置よりもやや側方に外れた位置から第2のパッドノズル31Bと同じ方向へ向けて移動する。このとき、第2のパッドノズル31Bの移動速度は、第1のパッドノズル31Aの移動速度よりも遅くなるように制御される。