JP6409142B1 - 偏光膜、偏光板、および偏光膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の偏光膜は、厚みが8μm以下であり、単体透過率が43.5%以上であり、偏光度が99.940%以上である。
【選択図】図1
Description
1つの実施形態においては、単体透過率が44.0%以下であり、偏光度が99.990%以下である。
本発明の別の局面によれば、偏光板が提供される。この偏光板は、偏光膜と、上記偏光膜の少なくとも一方の側に配置された保護層とを有する。
本発明の別の局面によれば、偏光膜の製造方法が提供される。この製造方法は、上記偏光膜の製造方法であって、長尺状の熱可塑性樹脂基材の片側に、ヨウ化物または塩化ナトリウムとポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層体とすること、および、上記積層体に、空中補助延伸処理と、染色処理と、水中延伸処理と、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理と、をこの順に施すことを含む。
1つの実施形態においては、上記ポリビニルアルコール系樹脂層における上記ヨウ化物または上記塩化ナトリウムの含有量が、上記ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して5重量部〜20重量部である。
1つの実施形態においては、上記空中補助延伸処理における延伸倍率が2.0倍以上である。
1つの実施形態においては、上記乾燥収縮処理工程が、加熱ロールを用いて加熱する工程である。
1つの実施形態においては、上記加熱ロールの温度が60℃〜120℃であり、上記乾燥収縮処理による上記積層体の幅方向の収縮率が2%以上である。
本発明の1つの実施形態による偏光膜は、厚みが8μm以下であり、単体透過率が43.5%以上であり、偏光度が99.940%以上である。一般的に、単体透過率と偏光度とは互いにトレードオフの関係にあり、単体透過率を高めると偏光度が低下し得、偏光度を高めると単体透過率が低下し得る。このため、従来、単体透過率43.5%以上、かつ、偏光度99.940%以上の光学特性を満足する薄型の偏光膜を実用に供するのは困難であった。本発明の1つの実施形態による偏光膜は、上記のとおり、単体透過率が43.5%以上であり、かつ、偏光度が99.940%以上であるという優れた光学特性を有している。このような薄型の偏光膜を実現したことが、本発明の成果の一つである。このような偏光膜は、画像表示装置に用いられ得、特に、液晶表示装置の背面側偏光板に好適に用いられる。
偏光度(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
図1は、本発明の1つの実施形態による偏光板の概略断面図である。偏光板100は、偏光膜10と、偏光膜10の一方の側に配置された第1の保護層20と、偏光膜10の他方の側に配置された第2の保護層30とを有する。偏光膜10は、上記A項で説明した本発明の偏光膜である。第1の保護層20および第2の保護層30のうち一方の保護層は省略されてもよい。なお、上記のとおり、第1の保護層および第2の保護層のうち一方は、上記の偏光膜の製造に用いられる樹脂基材であってもよい。
本発明の1つの実施形態による偏光膜の製造方法は、長尺状の熱可塑性樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)とを含むポリビニルアルコール系樹脂層(PVA系樹脂層)を形成して積層体とすること、および、積層体に、空中補助延伸処理と、染色処理と、水中延伸処理と、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理と、をこの順に施すことを含む。PVA系樹脂層におけるハロゲン化物の含有量は、好ましくは、PVA系樹脂100重量部に対して5重量部〜20重量部である。乾燥収縮処理は、加熱ロールを用いて処理することが好ましく、加熱ロールの温度は、好ましくは、60℃〜120℃である。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は、好ましくは、2%以上である。このような製造方法によれば、上記A項で説明した偏光膜が得ることができる。特に、ハロゲン化物を含むPVA系樹脂層を含む積層体を作製し、上記積層体の延伸を空中補助延伸及び水中延伸を含む多段階延伸とし、延伸後の積層体を加熱ロールで加熱することにより、優れた光学特性(代表的には、単体透過率および偏光度)を有する偏光膜を得ることができる。
熱可塑性樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を作製する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。好ましくは、熱可塑性樹脂基材の表面に、ハロゲン化物とPVA系樹脂とを含む塗布液を塗布し、乾燥することにより、熱可塑性樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成する。上記のとおり、PVA系樹脂層におけるハロゲン化物の含有量は、好ましくは、PVA系樹脂100重量部に対して5重量部〜20重量部である。
熱可塑性樹脂基材の厚みは、好ましくは20μm〜300μm、より好ましくは50μm〜200μmである。20μm未満であると、PVA系樹脂層の形成が困難になるおそれがある。300μmを超えると、例えば、後述の水中延伸処理において、熱可塑性樹脂基材が水を吸収するのに長時間を要するとともに、延伸に過大な負荷を要するおそれがある。
塗布液は、上記のとおり、ハロゲン化物とPVA系樹脂とを含む。上記塗布液は、代表的には、上記ハロゲン化物および上記PVA系樹脂を溶媒に溶解させた溶液である。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が挙げられる。これらは単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、好ましくは、水である。溶液のPVA系樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部〜20重量部である。このような樹脂濃度であれば、熱可塑性樹脂基材に密着した均一な塗布膜を形成することができる。塗布液におけるハロゲン化物の含有量は、好ましくは、PVA系樹脂100重量部に対して5重量部〜20重量部である。
特に、高い光学特性を得るためには、乾式延伸(補助延伸)とホウ酸水中延伸を組み合わせる、2段延伸の方法が選択される。2段延伸のように、補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂基材の結晶化を抑制しながら延伸することができ、後のホウ酸水中延伸において熱可塑性樹脂基材の過度の結晶化により延伸性が低下するという問題を解決し、積層体をより高倍率に延伸することができる。さらには、熱可塑性樹脂基材上にPVA系樹脂を塗布する場合、熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度の影響を抑制するために、通常の金属ドラム上にPVA系樹脂を塗布する場合と比べて塗布温度を低くする必要があり、その結果、PVA系樹脂の結晶化が相対的に低くなり、十分な光学特性が得られない、という問題が生じ得る。これに対して、補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVA系樹脂を塗布する場合でも、PVA系樹脂の結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVA系樹脂の配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVA系樹脂の配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。
必要に応じて、空中補助延伸処理の後、水中延伸処理や染色処理の前に、不溶化処理を施す。上記不溶化処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬することにより行う。不溶化処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与し、水に浸漬した時のPVAの配向低下を防止することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。不溶化浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。
上記染色処理は、代表的には、PVA系樹脂層をヨウ素で染色することにより行う。具体的には、PVA系樹脂層にヨウ素を吸着させることにより行う。当該吸着方法としては、例えば、ヨウ素を含む染色液にPVA系樹脂層(積層体)を浸漬させる方法、PVA系樹脂層に当該染色液を塗工する方法、当該染色液をPVA系樹脂層に噴霧する方法等が挙げられる。好ましくは、染色液(染色浴)に積層体を浸漬させる方法である。ヨウ素が良好に吸着し得るからである。
必要に応じて、染色処理の後、水中延伸処理の前に、架橋処理を施す。上記架橋処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。架橋処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与し、後の水中延伸で、高温の水中へ浸漬した際のPVAの配向低下を防止することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜5重量部である。また、上記染色処理後に架橋処理を行う場合、さらに、ヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜5重量部である。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。架橋浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。
水中延伸処理は、積層体を延伸浴に浸漬させて行う。水中延伸処理によれば、上記熱可塑性樹脂基材やPVA系樹脂層のガラス転移温度(代表的には、80℃程度)よりも低い温度で延伸し得、PVA系樹脂層を、その結晶化を抑えながら、高倍率に延伸することができる。その結果、優れた光学特性を有する偏光膜を製造することができる。
上記乾燥収縮処理は、ゾーン全体を加熱して行うゾーン加熱により行っても良いし、搬送ロールを加熱する(いわゆる加熱ロールを用いる)ことにより行う(加熱ロール乾燥方式)こともできる。好ましくは、その両方を用いる。加熱ロールを用いて乾燥させることにより、効率的に積層体の加熱カールを抑制して、外観に優れた偏光膜を製造することができる。具体的には、加熱ロールに積層体を沿わせた状態で乾燥することにより、上記熱可塑性樹脂基材の結晶化を効率的に促進させて結晶化度を増加させることができ、比較的低い乾燥温度であっても、熱可塑性樹脂基材の結晶化度を良好に増加させることができる。その結果、熱可塑性樹脂基材は、その剛性が増加して、乾燥によるPVA系樹脂層の収縮に耐え得る状態となり、カールが抑制される。また、加熱ロールを用いることにより、積層体を平らな状態に維持しながら乾燥できるので、カールだけでなくシワの発生も抑制することができる。この時、積層体は、乾燥収縮処理により幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。PVAおよびPVA/ヨウ素錯体の配向性を効果的に高めることができるからである。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は、好ましくは1%〜10%であり、より好ましくは2%〜8%であり、特に好ましくは4%〜6%である。
好ましくは、水中延伸処理の後、乾燥収縮処理の前に、洗浄処理を施す。上記洗浄処理は、代表的には、ヨウ化カリウム水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。
(1)厚み
干渉膜厚計(大塚電子社製、製品名「MCPD−3000」)を用いて測定した。
(2)単体透過率および偏光度
実施例および比較例の偏光板(保護フィルム/偏光膜)について、紫外可視分光光度計(日本分光社製V−7100)を用いて測定した単体透過率Ts、平行透過率Tp、直交透過率Tcをそれぞれ、偏光膜のTs、TpおよびTcとした。これらのTs、TpおよびTcは、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。なお、保護フィルムの屈折率は1.50であり、偏光膜の保護フィルムとは反対側の表面の屈折率は1.53であった。
得られたTpおよびTcから、下記式により偏光度Pを求めた。
偏光度P(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
なお、分光光度計は、大塚電子社製 LPF−200などでも同等の測定をすることが可能である。一例として、下記実施例と同様の構成の偏光板のサンプル1〜サンプル3について、V−7100およびLPF−200を用いた測定により得られる単体透過率Tsおよび偏光度Pの測定値を表1に示す。表1に示されるように、V−7100の単体透過率の測定値と、LPF−200の単体透過率の測定値との差は0.1%以下であり、いずれの分光光度計を用いた場合であっても同等の測定結果が得られることが分かる。
1.偏光膜の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用いた。樹脂基材の片面に、コロナ処理(処理条件:55W・min/m2)を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ410」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加し、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光膜の単体透過率(Ts)が43.5%以上となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4.0重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに約2秒接触させた(乾燥収縮処理)。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は5.2%であった。
このようにして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光膜を形成した。さらに、同様の手順を繰り返し、合計14の偏光膜を作製した。
2.偏光板の作製
上記で得られた各偏光膜の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、保護フィルムとして、アクリル系フィルム(表面屈折率1.50、40μm)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線を保護フィルム側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離し、保護フィルム/偏光膜の構成を有する14の偏光板を得た。
乾燥収縮処理においてオーブン温度を70℃、加熱ロール温度を70℃としたこと以外は実施例1と同様にして、4つの偏光膜および偏光板を作製した。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は2.5%であった。
PVA水溶液(塗布液)にヨウ化カリウムを添加しなかったこと、空中補助延伸処理における延伸倍率を1.8倍としたこと、および乾燥収縮処理において加熱ロールを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、8つの偏光膜および偏光板を作製した。
空中補助延伸処理における延伸倍率を1.8倍としたこと、および乾燥収縮処理において加熱ロールを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、6つの偏光膜および偏光板を作製した。
20 第1の保護層
30 第2の保護層
100 偏光板
Claims (6)
- 厚みが8μm以下であり、単体透過率が43.5%以上であり、偏光度が99.940%以上である偏光膜の製造方法であって、
長尺状の熱可塑性樹脂基材の片側に、ヨウ化物または塩化ナトリウムとポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層体とすること、および
前記積層体に、空中補助延伸処理と、染色処理と、水中延伸処理と、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理と、をこの順に施すことを含む、製造方法。 - 単体透過率が44.0%以下であり、偏光度が99.990%以下である偏光膜の製造方法であって、請求項1に記載の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂層における前記ヨウ化物または前記塩化ナトリウムの含有量が、前記ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して5重量部〜20重量部である、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記空中補助延伸処理における延伸倍率が2.0倍以上である、請求項1から3のいずれか記載の製造方法。
- 前記乾燥収縮処理工程が、加熱ロールを用いて加熱する工程である、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記加熱ロールの温度が60℃〜120℃であり、前記乾燥収縮処理による前記積層体の幅方向の収縮率が2%以上である、請求項5に記載の製造方法。
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