JP6405020B1 - アルミニウム材のフラックスフリーろう付方法およびフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材 - Google Patents
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例えば、特許文献1では、フィン材およびブレージングシートのろう材にMgを添加し、かつ、添加するMgの量を調整して、真空ろう付時における炉内へのスケール付着の問題を解決しながら、高強度で軽量な熱交換器の製造を可能にしている。
また、特許文献2では、不活性ガス雰囲気下におけるフラックスフリーのろう付方法として、Mg、Si等を含有する芯材用のAl合金に、Ag、Be、Bi等の元素やミッシュメタルを添加したろう材用のAl合金をクラッドしたものを用い、ろう付時の濡れ拡がり性を改善させることが提案されている。
低融点元素が添加されたベア材表面では、ろう付昇温過程でベア材表面に低融点元素が濃縮し、緻密な酸化皮膜の成長を抑制するため、Mgを含有する活性な溶融ろう材と接触した際に、酸化皮膜が分解されやすくなったと考えられる。また、Mgが添加されたベア材表面においても同様に、ろう付昇温過程で低融点元素がベア材表面に濃縮し、MgO皮膜の成長が抑制されるため、安定した接合状態が得られると考えられる。なお、酸化物の標準生成自由エネルギーが低い低融点元素をベア材に添加すると、表面で濃縮した低融点元素が酸化物層を形成して接合を阻害するため、ベア材に添加する元素としては、酸化物の標準生成自由エネルギーが高い低融点元素を選択することが重要である。
前記アルミニウム合金部材中に、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が−150(kg cal/gr mol O2)よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01〜0.5mass%含有することを特徴とする。
前記アルミニウム合金部材中に、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が−150(kg cal/gr mol O2)よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01〜0.5mass%含有することを特徴とする。
融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が−150(kg cal/gr mol O2)よりも高い金属元素の1種または2種以上:0.01〜0.5mass%
上記した金属元素は、ろう付時にベア材表面に濃縮するため、緻密なAl酸化皮膜やMgO皮膜の成長を抑制する。含有量が0.01mass%未満では、この効果が不十分であり、含有量が0.5mass%以上では、その効果が飽和する。したがって、上記金属元素の含有量を上記範囲に定める。なお、下限を0.05mass%、上限を0.3mass%とすることがより好ましい。また、上記金属元素としては、好適には、Bi、In、Sn、K、Se、Na、Pbが挙げられる。
アルミニウム合金部材中に添加されたMgは、ベア材に添加されたSiやろう材から拡散してきたSiと化合物を形成することでMg2Siを形成し、材料強度を高める。また、ベア材表面のAl酸化皮膜(Al2O3)を還元分解する。含有量が0.1mass%未満であれば、その効果が不十分であり、0.7mass%を超えると、開放部を有する継手ではベア材表面でMgO皮膜が成長しやすくなり、接合が阻害される。したがって、所望によりMgを含有する場合は、その含有量を上記範囲に定める。なお、下限を0.2mass%、上限を0.6mass%とすることがなお望ましい。
(1)ろう材
Si:3〜13mass%
Al合金ろう材に添加されたSiは、ろう材の融点を低下させ、ろう付昇温時の共晶温度以上で、接合に必要な溶融ろう材を生成する。Siの含有量が3%未満では生成する液相量が不足するため十分な流動性が得られず、13%を超えると初晶Siが急激に増加して加工性が悪化するとともに、ろう付時に接合部のろう侵食が著しく促進される。したがって、ろう材中のSiの含有量を上記範囲に定める。なお、同様の理由により、下限を5%、上限を12%とすることがより好ましい。
Mgは、ろう付昇温過程において、材料表面に生成する緻密な酸化皮膜(Al2O3膜)に作用して酸化皮膜を分解することで、ろうの濡れ性や流動性を向上させる。ただし、Mgの含有量が0.1mass%未満では、酸化皮膜の分解作用が十分に得られず、5.0mass%を超えると、ろう材強度が高くなり過ぎて加工性が低下する。このため、ろう材中のMgの含有量は、上記範囲とすることが好ましい。なお、同様の理由により、Mgの含有量は、下限を0.2%、上限を3.0%とすることがより好ましい。
上記した金属元素は、ろう付時にろう材表面に濃縮するため、緻密なAl酸化皮膜やMgO皮膜の成長を抑制する。含有量が0.01mass%未満では、この効果が不十分であり、含有量が0.5mass%以上では、その効果が飽和する。したがって、上記金属元素の含有量を上記範囲に定める。なお、下限を0.05mass%、上限を0.3mass%とすることがより好ましい。また、上記金属元素としては、好適には、Bi、In、Sn、K、Se、Na、Pbが挙げられる。
さらに、これらの元素の中でBi、In、Sn、Pbは溶融ろうの表面張力を低下させ、ろう材の濡れ拡がり性を向上する効果があり、特にBiはその効果が高いため好適に用いることができる。
Al製芯材の組成は特に限定されず、一般的に用いられているアルミニウム材料であれば何れも問題なく使用可能である。ただし、Al−Si系合金ろう材によるろう付では、製品温度を600℃付近まで加熱するため、これより固相線温度が低い合金部材を用いるとろう付後の構造寸法精度の確保が難しくなる。本発明では、この問題を生じない何れのアルミニウム合金も使用できるが、熱伝導性や強度に優れるJIS A1000系、A3000系、A6000系合金を用いることが好適である。
本発明のアルミニウム合金部材は、例えば常法により製造することができる。
まず、本発明組成に調製してアルミニウム合金を溶製する。該溶製は半連続鋳造法によって行う。得られたアルミニウム合金鋳塊に対しては、所定条件で均質化処理を行う。すなわち、均質化処理条件は、処理温度350〜600℃、処理時間1〜10時間とする。その後、均熱処理、熱間圧延、冷間圧延などを経て、本発明のアルミニウム合金部材が得られる。アルミニウム合金部材は、例えば熱交換機用のフィン材として製造することができる。均熱処理は均質化処理の温度および処理時間以下とし、温度350〜500℃、保持時間1〜10時間とするのが望ましい。冷間圧延では、75%以上の総圧下率で冷間圧延を行い、温度300〜400℃にて中間焼鈍を行い、その後圧延率40%の最終圧延を行うことができる。中間焼鈍は行わないものとしてもよい。
なお、ろう付は、接合部の表面における酸化皮膜の厚さが、前記ろう付の昇温過程中で前記接合部の実体温度が550℃であるときに20nm以下となるように行い、アルミニウム合金部材がMgを含有している場合には、MgO皮膜の厚さが、前記ろう付の昇温過程中で前記接合部の実体温度が550℃であるときに2nm以下となるように行うのが望ましい。ろう付昇温過程の酸化皮膜やMgO皮膜の厚さは、雰囲気中の酸素濃度、雰囲気に曝される合金中のMg量、ろう付昇温速度、ろう付炉の気密性、ろう付炉内の雰囲気流速、導入する非酸化性ガス中の不純物酸素や水分量などの影響を受けるが、これらを総合的に勘案して調整するため、何れかの条件が特に限定されるものではない。
・接合率
以下式にて接合率を求め、各試料間の優劣を評価した。
フィン接合率=(フィンとチューブのろう付後総接合長さ/フィンとチューブのろう付前総接触長さ)×100
ろう付接合状態は上記接合率のみではなく、本発明の目的であるフィレット形成能の向上を確認するため、図2に示すように接合部13の幅Wを各試料で20点計測し、その平均値をもって優劣を評価した。
実施例の何れも良好なろう付性を示したのに対し、比較例では接合率50%以下で十分な接合が得られなかった。
11 コルゲートフィン
12 チューブ
13 接合部
Claims (13)
- Siを3〜13mass%、Mgを0.1〜5.0mass%含有するAl合金ろう材がAl製芯材の片面または両面にクラッドされたブレージングシートと、被接合部材であるベア材のアルミニウム合金部材とを組み付け、非酸化性ガス雰囲気中でフラックスを用いずにろう付するアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法であって、
前記アルミニウム合金部材中に、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が−150(kg cal/gr mol O2)よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01〜0.5mass%含有することを特徴とするアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。 - 前記アルミニウム合金部材は、前記金属元素として、Bi:0.01〜0.5mass%、In:0.01〜0.5mass%、Sn:0.01〜0.5mass%、K:0.01〜0.5mass%、Se:0.01〜0.5mass%、Na:0.01〜0.5mass%、Pb:0.01〜0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
- 前記アルミニウム合金部材は、前記金属元素として、Bi:0.01〜0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01〜0.5mass%、Sn:0.01〜0.5mass%、K:0.01〜0.5mass%、Se:0.01〜0.5mass%、Na:0.01〜0.5mass%、Pb:0.01〜0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
- 前記アルミニウム合金部材は、さらに、Mgを0.1〜0.7mass%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
- 前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01〜0.5mass%、In:0.01〜0.5mass%、Sn:0.01〜0.5mass%、K:0.01〜0.5mass%、Se:0.01〜0.5mass%、Na:0.01〜0.5mass%、Pb:0.01〜0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
- 前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01〜0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01〜0.5mass%、Sn:0.01〜0.5mass%、K:0.01〜0.5mass%、Se:0.01〜0.5mass%、Na:0.01〜0.5mass%、Pb:0.01〜0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
- 前記非酸化性ガス雰囲気は、酸素濃度が100ppm以下の雰囲気であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアルミニウム材のフラックスフリーろう付方法。
- 非酸化性ガス雰囲気でMgを含有するAl合金ろう材によるフラックスフリーでのろう付にベア材の被接合部材として供されるフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材であって、
前記アルミニウム合金部材中に、融点が350℃以下で、600℃における酸化物の標準生成自由エネルギー(ΔG°)が−150(kg cal/gr mol O2)よりも高い金属元素の1種または2種以上をそれぞれ0.01〜0.5mass%含有することを特徴とするフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。 - 前記金属元素として、Bi:0.01〜0.5mass%、In:0.01〜0.5mass%、Sn:0.01〜0.5mass%、K:0.01〜0.5mass%、Se:0.01〜0.5mass%、Na:0.01〜0.5mass%、Pb:0.01〜0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項8に記載のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
- 前記金属元素として、Bi:0.01〜0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01〜0.5mass%、Sn:0.01〜0.5mass%、K:0.01〜0.5mass%、Se:0.01〜0.5mass%、Na:0.01〜0.5mass%、Pb:0.01〜0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項8に記載のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
- 前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01〜0.5mass%、In:0.01〜0.5mass%、Sn:0.01〜0.5mass%、K:0.01〜0.5mass%、Se:0.01〜0.5mass%、Na:0.01〜0.5mass%、Pb:0.01〜0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
- 前記ろう材は、前記金属元素を含有し、前記金属元素として、Bi:0.01〜0.5mass%を含有し、さらに、In:0.01〜0.5mass%、Sn:0.01〜0.5mass%、K:0.01〜0.5mass%、Se:0.01〜0.5mass%、Na:0.01〜0.5mass%、Pb:0.01〜0.5mass%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
- Mg:0.1〜0.7mass%をさらに含有することを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載のフラックスフリーろう付用アルミニウム合金部材。
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