JP6402546B2 - 結晶観察システムおよび結晶観察方法 - Google Patents
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非特許文献1、2に記載されているように、この種の装置では、イオン銃の軸と電子銃の軸とのなす角度が52°〜54°になるようにしている。
したがって、試料の結晶粒及び結晶粒界の形態を表す像には、試料の表面の凹凸や酸化被膜が反映されやすくなる。また、この試料の表面の凹凸により、試料の結晶粒及び結晶粒界の形態を表す像において、結晶粒と結晶粒との間の領域を捉えることができなくなる虞がある。
そこで、このような試料の凹凸による影響を低減するために、試料を傾斜させることが考えられる。しかしながら、このようにすると、試料の結晶粒及び結晶粒界の形態を表す像の生成と、電子線後方散乱回折パターンの測定とのそれぞれで異なる角度で試料を傾斜させなければならない。このため、測定時間が長くなる虞がある。よって、例えば、金属材料の結晶粒の成長の挙動の観察や結晶粒の結晶方位の観察を数秒間隔で行うことができなくなる虞がある。
以上のように従来の技術では、試料の同一観察領域における結晶粒及び結晶粒界の形態を表す像の生成と結晶方位の測定を短時間に正確に行うことが容易でないという課題があった。
また、試料の同一観察領域における結晶粒及び結晶粒界の形態を表す像の測定と結晶方位の測定を同じタイミングで正確に行うことを、大きな昇温速度で試料を昇温させながら実現できるようにすることを第2の目的とする。
また、本発明によれば、さらに、試料に光を導光し、導光した光を試料に照射することにより試料を加熱するようにした。したがって、試料の昇温速度を向上させることができる。よって、試料の同一観察領域における結晶粒及び結晶粒界の形態を表す像の生成と結晶方位の測定を短時間に行うことを、大きな昇温速度で試料を昇温させながら実現することができる。
図1において、結晶観察システムは、試料Sの同一観察領域内における結晶粒の状態を表す像の生成と結晶方位の測定を、試料Sを昇温しながら行うものである。本実施形態では、試料Sは、鋼材料等の金属材料である。
本実施形態の結晶観察システムは、集束イオンビーム照射器100と、電子ビーム照射器200と、電子検出器300と、CCDカメラ400と、加熱装置510と、レーザ発振器520と、真空フィードスルー530と、温度計600と、結晶解析装置700と、を有する。
真空チャンバー800内には、試料ステージ900があり、試料ステージ900の上面の方向は、水平方向(重力に対し直角の方向。図1のX軸方向)であるものとする。
この試料ステージ900の上に加熱装置510が取り付けられる。そして、試料Sは、その観察面の方向が水平方向になるように加熱装置510に取り付けられる(図2を参照)。このように、本実施形態では、試料Sおよび加熱装置510を試料ステージ900上で傾斜させずに固定する。
集束イオンビーム照射器100としては、一般的に入手可能なものを利用できる。例えば液体金属であるガリウムイオン源からイオンビームを取り出し、試料Sの表面において数10nmのレベルまでイオンビームを集束させることができる装置を集束イオンビーム照射器100として用いることができる。近年は、ガリウムイオン源の他にも、HeやXe等の集束イオン源も開発されており、これらの集束イオン源を使用することも可能である。
電子ビーム照射器200としては、一般的に入手可能なものを利用できる。
電子検出器300としては、一般的に入手可能なものを利用できる。
尚、図1では、電子検出器300を、集束イオンビーム照射器100と電子ビーム照射器200との間の位置であって、試料Sと間隔を有する位置に配置する場合を例に挙げて示す。しかしながら、前述した二次電子を適切に検出することができる位置であれば、電子検出器300を必ずしも集束イオンビーム照射器100と電子ビーム照射器200との間の位置に配置する必要はない。
CCDカメラ400としては、後方散乱電子を検出する検出器として一般的に入手可能なものを利用できる。
尚、CCDカメラ400は、前述した後方散乱電子を適切に検出することができる位置であれば、どのような位置に配置されていてもよい。例えば、CCDカメラ400の光軸と電子ビーム照射器200の軸210とのなす角度が90°になるように、CCDカメラ400は、試料Sと間隔を有して配置される。
図2および図3Aに示すように、試料Sは、薄板状である。試料Sの大きさは、例えば、縦10mm、横10mm、厚み0.5mmの大きさを有する。
真空フィードスルー530は、レーザ発振器520から発生したレーザ光を真空チャンバー800内の真空度を保持したまま、真空チャンバー800内の加熱装置510に出力するためのものである。
加熱装置510は、光ファイバ511と、保護管512と、台座513と、支持部材514a〜514eと、試料載置管515と、反射部材516a、516bと、試料押さえ板517と、冷却管518と、を有する。
光ファイバ511は、レーザ発振器520から出力されたレーザ光を導光し、試料Sの観察面の反対側の面(裏面)にレーザ光を導く。このように本実施形態では、光ファイバ511から出たレーザ光が、試料Sの観察面の反対側の面に照射される。
尚、図2では、光ファイバ511の数が1つである場合を例に挙げて示す。しかしながら、試料Sの観察面の反対側の面にレーザ光を導光することができれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、光ファイバ511が配置される領域に、複数の光ファイバを束ねたものを配置してもよい。
保護管512は、例えば、光ファイバ511を保護するのに十分な強度を有し、且つ、熱伝導率が小さい材料(例えば、酸化アルミニウム(アルミナ))により形成される。
図2に示す例では、支持部材514aの中空部分と台座513の中空部分とは同じ大きさを有する。支持部材514aは、それら中空部分が相互に合わさった状態になるように、台座513の上面で固定される。に光ファイバ511が通される。
また、図2、図3Bおよび図3Dに示す例では、支持部材514bは、支持部材514bの外周面と支持部材514aの外周面とが一致する状態になるように、支持部材514aの上面で固定される。
また、図2に示す例では、支持部材514dは、支持部材514dの外周面と支持部材514bの外周面とが一致する状態になるように、支持部材514bの上端面で固定される。
また、図2に示す例では、支持部材514eは、支持部材514eの外周面と支持部材514dの外周面とが一致する状態になるように、支持部材514dの上面で固定される。
図2および図3Bに示す例では、反射部材516a、516bは、中空円筒形の管である。反射部材516a、516bは、加熱装置510の各構成要素の自重や熱による影響を受けない材料であり、且つ、反射率の大きい材料(例えば、金)により形成される。具体的に本実施形態では、反射部材516a、516bを金ミラー(光学研磨した基板に金を蒸着した全反射ミラー)で構成する。
結晶解析装置700は、その機能として、照射指示部710と、結晶方位導出部720と、結晶粒形態導出部730と、表示部740とを有する。
照射指示部710における処理の具体例を説明する。まず、照射指示部710は、集束イオンビーム照射器100、電子ビーム照射器200、電子検出器300、およびCCDカメラ400を所定の位置まで移動させる。その後、照射指示部710は、集束イオンビーム照射器100に対する集束イオンビームの照射指示と、電子ビーム照射器200に対する集束電子ビームの照射指示と、レーザ発振器520に対するレーザ光の出力指示とを行う。この際、照射指示部710は、オペレータによる入力操作に基づくスケジュールに従って、レーザ発振器520に対するレーザ光の出力指示と、集束イオンビーム照射器100に対する集束イオンビームの照射指示と、電子ビーム照射器200に対する集束電子ビームの照射指示とを行う。すなわち、照射指示部710は、レーザ発振器520に対するレーザ光の出力指示と、集束イオンビーム照射器100に対する集束イオンビームの照射指示と、電子ビーム照射器200に対する集束電子ビームの照射指示とを独立に行うことができる。
結晶粒形態導出部730は、電子検出器300により検出された二次電信の信号から、試料Sの観察領域における結晶粒及び結晶粒界の形態を表す像(SIM像)を生成する。そして、結晶粒形態導出部730は、生成した結晶粒及び結晶粒界の形態を表す像(SIM像)と、当該像が得られたときに温度計600により測定された試料Sの温度とに基づいて、試料Sの各温度における結晶粒及び結晶粒界の形態を表す像の表示データを生成する。尚、SIM像を生成する方法は、公知の技術で実現することができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
表示部740は、結晶方位導出部720および結晶粒形態導出部730により生成された表示データをコンピュータディスプレイに表示する。
背景技術で説明したように、従来のイオン銃を備えた電子顕微鏡は、試料の断面の観察や、透過電子顕微鏡用の薄膜試料の作製を主な目的としており、それらを行いやすいように、電子銃とイオン銃が配置される。この場合、イオン銃の主たる用途は、試料の断面を形成する加工や、試料を薄片化する加工を施すことである。また、電子銃の主たる用途は、このような加工が施された試料の観察である。
一方、本実施形態では、試料の同一観察領域内における結晶粒及び結晶粒界の形態と結晶方位を観察する。電子銃(電子ビーム照射器200)は、試料Sの結晶粒の結晶方位の測定のために利用される。一方、イオン銃(集束イオンビーム照射器100)は、試料Sの表面の結晶粒及び結晶粒界の形態を表す像の生成のために利用される。このように、本実施形態と背景技術で説明した技術とは、イオン銃と電子銃の用途が異なる。
図4に示す結果から、集束イオンビームが試料Sの観察面の法線方向に沿って試料Sの観察面に入射する場合の方が(図4(a)を参照)、集束イオンビームが試料Sの観察面の法線方向から10°以上傾いた角度で試料Sの観察面に入射する場合よりも(図4(b)を参照)、結晶粒及び結晶粒界の形態を明瞭に識別することができることが分かる。
また、本実施形態では、観察面が水平方向となるように試料Sを配置し、加熱装置510を傾斜させないようにした。したがって、試料Sの位置や、加熱装置510の位置がずれることを抑制することができる。
また、本実施形態では、光ファイバ511の周囲に、試料Sからの輻射熱を試料Sの方向に反射する反射部材516a、516bを配置するようにした。したがって、試料Sの加熱をより一層促進させることができる。
また。本実施形態では、加熱装置510の下部(試料Sよりも試料ステージ900に近い位置)に冷却管518を配置し、冷却管518の中に冷却媒体を循環させるようにした。したがって、試料ステージ900が過熱されることを抑制することができる。
前述したように、観察面が水平方向となるように試料Sを配置すると共に、集束イオンビーム照射器100の軸の方向を鉛直方向にすることにより、試料Sおよび加熱装置510を傾斜させないようにするのが好ましい。しかしながら、試料Sの観察面の法線方向と集束イオンビーム照射器100の軸の方向とが一致するようにしていれば、必ずしもこのようにする必要はない。このようにする場合には、加熱装置510を傾斜させることになる。したがって、試料Sの位置や、加熱装置510の位置がずれないように、試料Sおよび加熱装置510を固定する必要がある。
また、本実施形態では、試料Sの観察面の反対側の面にレーザ光を照射する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、レーザ光を照射する領域は、試料Sの観察面の反対側の面に限定されない。例えば、試料Sの観察面の反対側の面に加えてまたは代えて、試料Sの側面(厚み部分)にレーザ光を照射してもよい。
また、光ファイバ511から射出されるレーザ光を集光レンズで集光した上で試料Sに照射してもよい。
また、レーザ光の代わりにまたは加えて赤外光や遠赤外光を照射してもよい。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
Claims (9)
- 試料の観察面に集束イオンビームを照射する集束イオンビーム照射器と、
前記試料の観察面に前記集束イオンビームが照射されることにより前記試料から発生する二次電子および二次イオンの少なくとも何れか一方を検出する第1の検出器と、
前記試料の観察面に電子ビームを照射する電子ビーム照射器と、
前記試料の観察面に前記電子ビームが照射されることにより発生する後方散乱電子を検出する第2の検出器と、を有する結晶観察システムであって、
前記集束イオンビームと前記電子ビームは、前記試料の観察面の同一観察領域内に照射され、
前記集束イオンビーム照射器の軸の方向は、前記試料の観察面の法線方向であり、
前記集束イオンビーム照射器の軸と前記電子ビーム照射器の軸とのなす角度は60°以上80°以下であり、
前記集束イオンビーム照射器、前記電子ビーム照射器、前記第1の検出器、前記第2の検出器、および前記試料を固定した状態で、前記集束イオンビームおよび前記電子ビームを同じタイミングまたは異なるタイミングで照射することにより、前記第1の検出器による二次電子および二次イオンの少なくとも何れか一方の検出と、前記第2の検出器による後方散乱電子の検出とを行い、前記二次電子または前記二次イオンの検出の結果から前記試料の結晶粒及び結晶粒界の形態を表す像を生成すると共に、前記後方散乱電子の検出の結果から前記試料の結晶粒の結晶方位を測定することを特徴とする結晶観察システム。 - 前記試料の観察面の方向は、水平方向であり、
前記集束イオンビーム照射器の軸の方向は、鉛直方向であることを特徴とする請求項1に記載の結晶観察システム。 - 前記試料に光を導光する導光手段を備え、
前記導光手段により導光された光を前記試料に照射することにより前記試料を加熱する加熱装置を更に有することを特徴とする請求項1または2に記載の結晶観察システム。 - 前記加熱装置は、前記試料から発生する光を前記試料の方向に反射させる反射部材を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の結晶観察システム。
- 前記加熱装置は、前記試料よりも、前記加熱装置が置かれる試料ステージに近い位置に配置された冷却管を更に備え、
前記冷却管には、冷却媒体が供給されることを特徴とする請求項3または4に記載の結晶観察システム。 - 前記導光手段は、前記試料の観察面の反対側の面に光を導光することを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の結晶観察システム。
- 前記光の波長は、0.5μm以上1.5μm以下であることを特徴とする請求項3〜6の何れか1項に記載の結晶観察システム。
- 前記加熱装置は前記試料の温度を1000〜1200℃に加熱可能であることを特徴とする請求項3〜7の何れか1項に記載の結晶観察システム。
- 試料の観察面に集束イオンビームを照射する集束イオンビーム照射器と、
前記試料の観察面に前記集束イオンビームが照射されることにより前記試料から発生する二次電子および二次イオンの少なくとも何れか一方を検出する第1の検出器と、
前記試料の観察面に電子ビームを照射する電子ビーム照射器と、
前記試料の観察面に前記電子ビームが照射されることにより発生する後方散乱電子を検出する第2の検出器と、を有する結晶観察システムを用いて、前記試料の結晶粒の状態を表す像の測定と前記試料の結晶粒の結晶方位の測定とを行う結晶観察方法であって、
前記集束イオンビームと前記電子ビームは、前記試料の観察面の同一観察領域内に照射され、
前記集束イオンビーム照射器の軸の方向は、前記試料の観察面の法線方向であり、
前記集束イオンビーム照射器の軸と前記電子ビーム照射器の軸とのなす角度は60°以上80°以下であり、
前記集束イオンビーム照射器、前記電子ビーム照射器、前記第1の検出器、前記第2の検出器、および前記試料を固定した状態で、前記集束イオンビームおよび前記電子ビームを同じタイミングまたは異なるタイミングで照射することにより、前記第1の検出器による二次電子および二次イオンの少なくとも何れか一方の検出と、前記第2の検出器による後方散乱電子の検出とを行い、前記二次電子または前記二次イオンの検出の結果から前記試料の結晶粒及び結晶粒界の形態を表す像を生成すると共に、前記後方散乱電子の検出の結果から前記試料の結晶粒の結晶方位を測定することを特徴とする結晶観察方法。
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