JP6399555B2 - 自己ドーピング機能を持つポリアニリンの製造方法およびその方法により製造されたポリアニリンを含む帯電防止剤。 - Google Patents

自己ドーピング機能を持つポリアニリンの製造方法およびその方法により製造されたポリアニリンを含む帯電防止剤。 Download PDF

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Description

本発明は、導電性ポリアニリンの製造方法および用途に関する。本発明の製造方法によれば、自己ドーピング機能を有する導電性ポリアニリンが得られる。本発明の製造方法により得られる導電性ポリアニリンは、帯電防止剤、静電気防止剤、プラスチック電極の電極材料、EMI材料、有機強磁性体、および各種センサーなどの様々な用途に有用である。
ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどに代表される導電性高分子は近年“有機エレクトロニクス”分野において盛んに開発が行われている化合物群である。この分野においては、一般的に、10−2〜10−6S/m程度の導電性を有する物質が帯電防止剤および静電気除去剤などとして使われている。
これらの導電性高分子の中でも特にポリアニリンは安価な原料より簡単に得ることが可能であって、最も早く実用化されたもののひとつである。そのため、置換基を有さないポリアニリンが導電性材料として使用されている。ただし、置換基を有さないポリアニリンに導電性を発現させるためにはプロトンやヨウ素などでアクセプターまたはドナーによるドーピング(ドープともいう)の処理を行う必要があって、置換基を有さないポリアニリンそのものは導電性を有さない。さらに、置換基を有さないポリアニリンは一般に溶媒に不溶であって、所望の形状に成形することが難しく、加工性に乏しいという課題をかかえている。
このような、置換基を有さないポリアニリンの課題を解決するために、ポリアニリンに長鎖のアルキル基、ケトン基、エーテル基などを導入して有機溶媒に対する溶解性を向上させたポリアニリン類が報告されている。なお、本明細書中では、特に断らない限り、用語「ポリアニリン」は、置換基を有さないものと置換基を有するものとの両方を意味する。
また、ポリアニリンの製造および成形加工などの際の生産性、コストなどの点においては、ポリアニリンが水溶性を有することが望ましいので、最近になってポリアニリンにプロトンを有する酸性置換基を導入することによって水溶性を付与させたものが開発されてきている。さらに、その酸性置換基が導入されたポリアニリンにおいては、その酸性置換基の導入の際に、酸性置換基のプロトンがドーピングされるため、ドーピング処理を別途行う必要なしに導電性が得られるというメリットがある(自己ドープまたは自己ドーピングと呼ばれる)。ここでいう酸性置換基としては、スルホ基(−S(O)OH)またはホスホン酸基(−P(O)(OH))を用いたものが知られている。それらは、その導電性から帯電防止としての使用が展開または期待されているものもある。
スルホ基が導入されたポリアニリンとしては“無置換のポリアニリンを発煙硫酸やクロロ硫酸でスルホン化されたもの”(特許文献1)や“アニリンスルホン酸類を重合させて得られたもの”(特許文献2)などが知られている。特許文献1に記載されているような、スルホン化を行う方法においては、ポリアニリンに対して大過剰のスルホン化剤を用いてスルホン化を行っており、大量の酸性廃棄物が生成し、その処理が困難であるという問題がある。特許文献2に記載されているようなアニリンスルホン酸類を用いる方法は、原料が高価であるために生産コストが高くなるという課題を有している。
ホスホン酸基を有するポリアニリンについては、o−アミノベンジルホスホン酸を重合してポリ(o−アミノベンジルホスホン酸)を得る方法が報告されている(非特許文献1)。しかし、この方法では、重合に使用する原料を得るために多段階の反応を必要とする。すなわち、o−ブロモメチル−ニトロベンゼン(非特許文献1の8518頁のScheme1中の化合物1にはBrが存在するので、8518頁左欄下から9行の「o−methylnitrobenzene 1」との記載は誤記である)にトリエチルホスファイトを反応させてジエチルo−ニトロベンジルホスホネート2を得るステップ(以下、第1ステップ)、ジエチルo−ニトロベンジルホスホネート2をシクロヘキセンで還元してジエチルo−アミノベンジルホスホネート3を得るステップ(以下、第2ステップ)、および、ジエチルo−アミノベンジルホスホネート3を濃塩酸で加水分解してo−アミノベンジルホスホン酸4を得るステップ(以下、第3ステップ)を行って重合に用いるモノマーを得ている。さらに、各反応ごとにおいて精製をほどこさねばならなく、生産性の点で、工業的には多くの課題をかかえている。詳しくは、重合前の原料を得るのに3ステップの反応を行う必要があり、重合も含めると4ステップの反応を行う必要がある。非特許文献1においては、それぞれのステップの収率と精製方法は、第1ステップ:64%(カラムクロマトグラフィーによる精製)、第2ステップ:71%(イオン交換による精製)、第3ステップ:65%(再結晶による精製)、第4ステップ(重合):30%である。
上述したとおり、ポリアニリンについては様々な研究がなされているが、ポリアニリンに酸性置換基を有する技術に関して、その酸性置換基としてはスルホ基が主に研究されており、ホスホン酸基を導入する技術については、製造工程が煩雑になるなどの欠点があるために当業者に着目されておらず、活発な研究は行われていなかった。特に、ホスホン酸基がベンゼン環に直接結合した構造を有するアニリンモノマーを使用することについては、まったく研究されていなかった。
ところで、アニリンモノマーの重合反応のメカニズムならびにポリアニリンの構造および導電性を発現するメカニズムについては、完全には解明されていない部分もあるが、様々な研究がなされており、様々な知見がある。
例えば、矢野ら、BUNSEKI KAGAKU Vol.46,No.5,pp.343−349(非特許文献2)、特開2003−192786号公報(特許文献3)、J.Stejekalら、Progress in Polymer Science 35(2010)1420−1481(非特許文献3)および向井ら、慶應義塾大学日吉紀要.自然科学(The Hiyoshi review of the natural science).No.50(2011.9),p.61−75(非特許文献4)は、アニリンモノマーの重合反応のメカニズムを説明している。
また、日野ら、山形大学紀要(工学)第29巻第2号、平成19年2月(非特許文献5)には、ポリアニリンの酸化重合のメカニズムおよび酸化重合により得られるポリアニリンの構造が説明されている。具体的には、酸化重合により、エメラルディン塩と呼ばれる導電性を有する構造が形成し、このエメラルディン塩をアルカリ溶液中で処理すると、エメラルディン塩基と呼ばれる絶縁性の構造が形成され、エメラルディン塩基を還元すると、ロイコエメラルディンと呼ばれる構造が形成し、エメラルディン塩基を酸化すると、ペルニグラニリンと呼ばれる構造が形成することが記載されている。
ポリアニリンがこのような4種類の構造をとることは周知であり、例えば、特開2004−99673号公報(特許文献4)、特開2008−33203号公報(特許文献5)、特表2011−501379号公報(特許文献6)などにも上記4種類の構造が説明されている。
なお、パラジウム化合物などの触媒の存在下でベンゼン環にホスファイトを結合させる反応が公知である(非特許文献6〜10)が、これらの反応は、あくまでもベンゼン環に置換基を導入する方法を開発することを目的として研究されており、これらの反応をポリマーの合成に利用することは知られていなかった。
特開2000−191774号公報 特開平9−62008号公報 特開2003−192786号公報 特開2004−99673号公報 特開2008−33203号公報 特表2011−501379号公報
Chan et al,Journal of the American Chemical Society,117,8517(1995) 矢野ら、BUNSEKI KAGAKU Vol.46,No.5,pp.343−349 J.Stejekalら、Progress in Polymer Science 35(2010)1420−1481 向井ら、慶應義塾大学日吉紀要.自然科学(The Hiyoshi review of the natural science).No.50(2011.9),p.61−75 日野ら、山形大学紀要(工学)第29巻第2号、平成19年2月 「Palladium−Catalyzed New Carbon−Phosphorus Bond Formation」,Bulletin ofthe Chemical Society Of Japan,55,909−913(1982) 「Microwave−Assisted Palladium−Catalyzed Cross−Coupling of Aryl and Vinyl Halides with H−Phosphonate Diesters」,Organic Letters 2008,Vol.10,No.20,4637−4640 「Development of a room temperature Hirao reaction」,Tetrahedron Letters 50(2009)457−459 「A Novel Synthesis of Dialkyl Arenephosphonates」, Toshikazu Hirao, Toshio Masunaga, Yoshiki Ohshiro and Toshio Agawa, Synthesis, (1), 56−57 (1981). 「Revisiting the Hirao Cross−coupling」, Journal of Organometallic Chemistry,693(2008)3171−3178.
上記のように自己ドーピング機能を有するポリアニリンとして従来より開発されているものは、生産性やコストの面で十分に満足するものとは言えず、その性能がさらに改良されたものの新たな開発が望まれていた。本発明が解決しようとする課題は、従来の方法よりも非常に容易で高収率に、自己ドーピング機能をもつホスホン酸基を有するポリアニリンを製造する方法を提供し、そのポリアニリンを用いた帯電防止剤を提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、上記諸課題は、特定構造のホスホン酸を有するアニリンモノマー化合物またはそのモノマーを含むモノマー混合物を重合してポリアニリンを製造することにより達成されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の方法などを提供する。
(項1)
下記一般式(4):
(式中、
は、NHまたはNHXであり、Xはハロゲン原子であり、
は、各々独立して、以下の一般式(5)で表される置換基であり、
およびMはそれぞれ独立して水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択され、ただし、MまたはMがアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMが存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となり、
は、各々独立してハロゲン原子、炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素原子数1〜15のアルコキシ基、炭素原子数1〜15のアルキルチオ基、炭素原子数1〜15のアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルキル基の炭素原子数が1〜15であるカルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択され、
mは1〜4の整数であり、
nは0〜3の整数であり、
mとnの和は1〜4であり、
ただし、RおよびRのいずれもRに対するパラ位には存在しない。)
で表されるアニリンモノマー化合物または該アニリンモノマー化合物を含むアニリンモノマー混合物を重合する工程を含むポリアニリンの製造方法。
(項2)MおよびMのうちの少なくとも1つが水素原子である上記項1に記載の方法。
(項3)前記アニリンモノマー化合物またはアニリンモノマー混合物に対して0.5〜10当量の酸化剤の存在下で前記重合工程を行う上記項1または2のいずれか1項に記載の方法。
(項4)溶媒の存在下で前記重合工程を行う上記項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
(項5)前記溶媒が、アンモニア水、ピリジン水、ピリジン、トリエチルアミン水、トリエチルアミン、水、塩酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アセトン、2−ブタノンおよびジメチルアセトアミドから選択された少なくとも1種である上記項4に記載の方法。
(項6)一般式(4)で表されるアリニンモノマー化合物を合成する工程をさらに包含し、該合成工程が、下記一般式(6):
(式中、R1Aはニトロ基またはアミノ基であり、Xは各々独立して、ハロゲン原子である。R、mおよびnの定義は上記項1におけるR、mおよびnの定義と同じである。但し、XおよびRのいずれもR1Aのパラ位には存在しない)で表される化合物に、
一般式(7)で表されるジアルキルホスファイト
(式中、M1AおよびM2Aは、それぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基である。)
を結合させることを含む、
上記項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(項7)一般式(4)で表されるアリニンモノマー化合物を合成する工程をさらに包含し、該合成工程が、下記一般式(8):
(式中、R、mおよびnの定義は、上記項1中のR、mおよびnの定義と同じである。ただし、ベンゼン環のニトロ化される炭素に対してパラの位置の炭素には置換基が存在しない。)で表される化合物をニトロ化することを含む、上記項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
(項8) R1Aがアミノ基であり、前記ジアルキルホスファイトを結合させて得られた化合物のM1AおよびM2Aの部分のアルキルエステルを加水分解してアニリンモノマー化合物を得ることを包含する、上記項6に記載の方法。
(項9) R1Aがニトロ基であり、前記ジアルキルホスファイトを結合させて得られた化合物のニトロ基をアミノ基に還元させてアミノ化合物を得ること、および、得られたアミノ化合物のM1AおよびM2Aの部分のアルキルエステルを加水分解してアニリンモノマー化合物を得ることを包含する、上記項6に記載の方法。
(項10) さらに、前記ニトロ化により得られた化合物のニトロ基を還元してアニリンモノマー化合物を得る工程を包含する、上記項7に記載の方法。
(項11)前記重合工程の反応温度が−15℃〜70℃である上記項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
(項12)mが1であり、nが0または1である上記項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
(項13)さらに、前記重合反応生成物に対してイオン交換処理を行って、該重合反応生成物中のホスホン酸金属塩、ホスホン酸アンモニウム塩またはホスホン酸ピリジニウム塩の金属原子、アンモニウム基またはピリジニウム基を水素原子に置換する工程を包含する上記項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
(項14)上記項13に記載の方法であって、前記イオン交換処理工程が、前記重合反応生成物に酸性水溶液を添加して前記ホスホン酸塩化合物の塩の部分を水素に置換する工程であり、該イオン交換処理工程の後にポリアニリン化合物を該水溶液から分離する工程を行い、さらに、その後、酸性水溶液を添加して前記ホスホン酸塩化合物の塩の部分を水素に置換する工程およびポリアニリン化合物を該水溶液から分離する工程を繰り返して行う、方法。
(項15)上記項1〜14のいずれか1項に記載の方法で製造されたポリアニリン。
(項16)上記項15に記載のポリアニリンを含有する帯電防止剤。
本発明の製造方法によれば、例えば、以下の実施形態1〜実施形態4のポリアニリン化合物またはその水和物が得られる。
(実施形態1)
一般式(10):
[−A −A −A −A −] (10)
で表される構造を有するポリアニリン化合物またはその水和物であって、ここで、
が以下の一般式(11)で表され:
が以下の一般式(12)で表され:
が以下の一般式(13)で表され:
が以下の一般式(14)で表され:
21が以下の一般式(21)で表される置換基であり:
22が以下の一般式(22)で表される置換基であり:
23が以下の一般式(23)で表される置換基であり:
24が以下の一般式(24)で表される置換基であり:
25が以下の一般式(25)で表される置換基であり:
26が以下の一般式(26)で表される置換基であり:
27が以下の一般式(27)で表される置換基であり:
28が以下の一般式(28)で表される置換基であり:
gは、1以上の任意の整数であり、
hは、0以上の任意の整数であり、
jは、0以上の任意の整数であり、
kは、0以上の任意の整数であり、
gとhの和は、10以上の整数であり、
jとkの和は、g、h、j、kの総和の50%以下であり、
〜M12はそれぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択され、ただし、M〜M12のうちの少なくとも1つがアルカリ土類金属である場合には、そのアルカリ土類金属は、それぞれ、M〜M12のうちの2つが一緒になった構造となっており、
31〜R38は、各々独立してハロゲン原子、炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素原子数1〜15のアルコキシ基、炭素原子数1〜15のアルキルチオ基、炭素原子数1〜15のアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルキル基の炭素原子数が1〜15のカルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択され、
〜mはそれぞれ独立して1〜4の整数であり、
〜nはそれぞれ独立しては0〜3の整数であり、
とnの和は1〜4であり、
とnの和は1〜4であり、
とnの和は1〜4であり、
とnの和は1〜4であり、
とnの和は1〜4であり、
とnの和は1〜4であり、
とnの和は1〜4であり、そして
とnの和は1〜4である、
ポリアニリン化合物またはその水和物。
(実施形態2)
上記実施形態1において、
〜Mは同一であり、
、M、M、M11は同一であり、
、M、M10、M12は同一であり、
21〜R24は同一であり、
25〜R28は同一であり、
31〜R34は同一であり、
35〜R38は同一であり、
〜mは同一であり、
〜mは同一であり、
〜nは同一である、そして
〜nは同一である、
ポリアニリン化合物またはその水和物。
(実施形態3)
上記実施形態1または2において、
hが10以上であり、
jが0であり、そして
kが0である、
ポリアニリン化合物またはその水和物。
(実施形態4)
上記実施形態1〜3のいずれかの実施形態において、
〜M12がそれぞれ水素原子であり、
〜mがそれぞれ1であり、
〜nがそれぞれ0または1であり、そして
31〜R38がそれぞれ炭素原子数1〜15のアルキル基または炭素原子数1〜15のアルコキシ基である、
ポリアニリン化合物またはその水和物。
(有用性)
上述したように、本発明によれば自己ドーピング機能を持つ、ホスホン酸基を有する新規のポリアニリンを得ることができる。さらに、本発明によれば、従来の方法よりも簡単に、高収率かつ安価にポリアニリンを製造することができる。本発明の方法により得られたホスホン酸基を有するポリアニリンは高い導電性を示し、帯電防止剤として有用である。
3−アミノフェニルホスホン酸のFT−IRスペクトル(KBr法)を示す。 3−アミノフェニルホスホン酸のUV−Vis−NIRスペクトル(溶媒:pH9ホウ酸バッファー、濃度0.1mg/mL)を示す。 2−アミノフェニルホスホン酸塩酸塩のFT−IRスペクトル(KBr法)を示す。 2−アミノフェニルホスホン酸塩酸塩のUV−Vis−NIRスペクトル(溶媒:pH9ホウ酸バッファー、濃度0.1mg/mL)を示す。 3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩のFT−IRスペクトル(KBr法)を示す。 3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩のUV−Vis−NIRスペクトル(溶媒:pH9ホウ酸バッファー、濃度0.1mg/mL)を示す。 実施例1Aの精製後のFT−IRスペクトル(KBr法)を示す。 実施例1Aの精製後のUV−Vis−NIRスペクトル(溶媒:pH9ホウ酸バッファー、濃度0.1mg/mL)を示す。 実施例1Bの精製後のFT−IRスペクトル(KBr法)を示す。 実施例1Bの精製後のUV−Vis−NIRスペクトル(溶媒:pH9ホウ酸バッファー、濃度0.1mg/mL)を示す。 実施例2の精製後のFT−IRスペクトル(KBr法)を示す。 実施例2の精製後のUV−Vis−NIRスペクトル(溶媒:pH9ホウ酸バッファー、濃度0.1mg/mL)を示す。 実施例3Aの精製後のFT−IRスペクトル(KBr法)を示す。 実施例3Aの精製後のUV−Vis−NIRスペクトル(溶媒:pH9ホウ酸バッファー、濃度0.1mg/mL)を示す。 実施例3Bの精製後のFT−IRスペクトル(KBr法)を示す。 実施例3Bの精製後のUV−Vis−NIRスペクトル(溶媒:pH9ホウ酸バッファー、濃度0.1mg/mL)を示す。 実施例3Cの精製後のFT−IRスペクトル(KBr法)を示す。 実施例3Cの精製後のUV−Vis−NIRスペクトル(溶媒:pH9ホウ酸バッファー、濃度0.1mg/mL)を示す。 実施例4の帯電防止剤溶液Aを用いた場合のレジストパターンを示す写真である。 実施例5の帯電防止剤溶液Bを用いた場合のレジストパターンを示す写真である。 比較例1の帯電防止剤を用いなかった場合のレジストパターンを示す写真である。
以下、本発明について詳細に説明する。
(ポリアニリンの製造方法)
本発明の製造方法において、ポリアニリンは、ホスホン酸を有するアニリンモノマー化合物またはそのモノマーを含むアニリンモノマー混合物を重合することで製造される。
(アニリンモノマー)
本明細書において、「アニリンモノマー」または「アニリンモノマー化合物」とは、アニリンからポリアニリンを得る重合反応を行うことができるモノマーを意味する。具体的には、無置換のアニリン(CNH)または置換アニリンあるいはそれらの塩である。置換アニリンは、そのベンゼン環およびアミノ基のうちの少なくとも1に置換基を有するものをいう。ベンゼン環においては、アミノ基を1位として、2位、3位、5位および6位(すなわち、オルト位またはメタ位)のうちの1つ〜4つに置換基が存在することができる。ただし、4位(パラ位)に置換基を有する置換アニリンは重合できないので、4位(パラ位)置換アニリンはアニリンモノマーに含まない。無置換もしくは置換アニリンの塩は、アミノ基の部分が塩になったものであって、その塩の部分が重合反応に支障をもたらさないものをいう。無置換もしくは置換アニリンの塩の例としては、例えば、アンモニウム塩が挙げられる。
本明細書において「アニリンモノマー混合物」とは、2種類以上のアニリンモノマー化合物が混合された混合物をいう。
(ポリアニリン)
本明細書においてポリアニリンは、アニリンモノマー化合物またはアニリンモノマー混合物を重合することによって得られるものをいう。ポリアニリンは、通常、アニリンモノマーのアミノ基が別のアニリンモノマーのパラ位に結合した構造を有する。
ポリアニリンの重合度は任意に設定することが可能であり、例えば、4以上、10以上、50以上、100以上または200以上とすることが可能であり、また、2,000以下、1,500以下、1,000以下、800以下または600以下とすることが可能である。
同様に、ポリアニリンの分子量は任意に設定することが可能である。
ポリアニリンの数平均分子量としては、例えば、700以上、2,000以上、10,000以上、20,000以上または30,000以上とすることが可能であり、また、400,000以下、300,000以下、200,000以下、150,000以下または100,000以下とすることが可能である。
ポリアニリンの重量平均分子量としては、例えば、1,400以上、4,000以上、20,000以上、40,000以上または60,000以上とすることが可能であり、また、800,000以下、600,000以下、400,000以下、300,000以下または200,000以下とすることが可能である。
(アニリンホスホン酸またはその塩)
本発明のポリアニリンの製造方法において、重合を行う際に原料となるモノマーとしては、下記一般式(4)で表されるアニリンホスホン酸モノマーまたはこのモノマーを含むアニリンモノマー混合物を使用する。
(式中、Rは、NHまたはNHXであり、Xはハロゲン原子であり、
は、各々独立して、以下の一般式(5)で表される置換基であり、
およびMはそれぞれ独立して水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択され、ただし、MまたはMがアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMが存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となり、
は、各々独立してハロゲン原子、炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素原子数1〜15のアルコキシ基、炭素原子数1〜15のアルキルチオ基、炭素原子数1〜15のアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルキル基の炭素原子数が1〜15であるカルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択され、
mは1〜4の整数であり、
nは0〜3の整数であり、
mとnの和は1〜4であり、
ただし、RおよびRのいずれもRに対するパラ位には存在しない)。
上記一般式(5)においてMおよびMは、水素原子、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択されることが好ましい。但し、MおよびMのうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましい。この水素原子がドーパントとして働く自己ドーピングにより、本発明の製造方法により得られるポリアニリンは導電性を示す。
本明細書において「アルカリ金属」は、周期律表の第1族に属する任意の原子をいう。アルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムなどが挙げられる。
本明細書において「アルカリ土類金属」とは、周期律表の第2族に属する任意の原子をいう。アルカリ土類金属の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムなどが挙げられる。
上記一般式(4)中、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、カルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択される少なくとも1種である。これらのうち、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基などの電子供与性基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基が特に好ましい。
ハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子が好ましい。
なお、本明細書において「アルキル」とは、鎖状または環状の脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいう。鎖状の場合は、一般にC2k+1−で表される(ここで、kは正の整数である)。鎖状のアルキルは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルキルは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルキルの炭素数は、任意の自然数であり得る。アルキルの炭素数は、1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
特に、上記一般式(4)におけるアルキル基については、アルキル基の炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基およびペンタデシル基などが挙げられる。
本明細書において、「アラルキル基」とは、アルキル基の水素原子の一部がアリール基で置換された構造を指す。
本明細書において「アリール基」とは、芳香族炭化水素の環に結合する水素原子が1個離脱して生ずる基をいう。アリール基を構成する芳香族炭化水素の環の数は、1つであってもよく、2つ以上であっても良い。好ましくは、1〜3である。分子内芳香族炭化水素の環が複数存在する場合、それらの複数の環は縮合していてもよく、縮合していなくてもよい。具体的には、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ビフェニリルなどである。
特に、上記一般式(4)のRにおけるアラルキル基を構成するアルキル基は、直鎖であっても良く、分岐状であっても良く、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数が1〜5であることが更に好ましい。アラルキル基を構成するアリール基は、置換基を有していてよい1〜4個のベンゼン環を備えるアリール基が好ましく、例えば、1または2以上の置換基を有しいてよいフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル(ターフェニル)基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基およびフルオレニル基などが挙げられ、フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基が更に好ましい。置換基としては、例えば、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、炭素数7〜21のフェニルアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ハロゲン原子、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基およびスルホン基などが挙げられる。
アラルキル基の全体の炭素原子数としては7〜34であることが好ましく、7〜15であることが特に好ましい。具体例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、ナフチルブチル基、ナフチルペンチル基、アンスリルメチル基、アンスリルエチル基、アンスリルプロピル基、アンスリルブチル基、アンスリルペンチル基、ビフェニルメチル基、ビフェニルエチル基、ビフェニルプロピル基、ビフェニルブチル基およびビフェニルペンチル基などが挙げられる。
本明細書において「アルコキシ」とは、上記アルキル基に酸素原子が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR−と表した場合にRO−で表される基をいう。鎖状のアルコキシは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルコキシは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルコキシの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
中でも、上記一般式(4)のRにおけるアルコキシ基としては、アルキル基部分が、直鎖であってもよく、分岐状であってもよく、炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基およびペンタデシルオキシ基などが挙げられる。
本明細書において「アルキルチオ」とは、上記アルキル基に硫黄原子が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR−と表した場合にRS−で表される基をいう。鎖状のアルキルチオは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルキルチオは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルキルチオの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
上記一般式(4)のRにおけるアルキルチオ基としては、アルキル基部分が、直鎖であってもよく、分岐状であってもよく、炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ウンデシルチオ基、ドデシルチオ基、トリデシルチオ基、テトラデシルチオ基およびペンタデシルチオ基などが挙げられる。
本明細書において「アルキルアミノ」とは、上記アルキル基にアミノ基が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR−と表した場合にRNH−で表される基をいう。鎖状のアルキルアミノは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のアルキルアミノは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。アルキルアミノの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
上記一般式(4)のRにおけるアルキルアミノ基としては、アルキル基部分が、直鎖であってもよく、分岐状であってもよく、炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ウンデシルアミノ基、ドデシルアミノ基、トリデシルアミノ基、テトラデシルアミノ基およびペンタデシルアミノ基などが挙げられる。
本明細書において「カルボン酸アルキルエステル」とは、上記アルキル基にカルボン酸基が結合した基をいう。すなわち、上記アルキル基をR−と表した場合に−COORで表される基をいう。鎖状のカルボン酸アルキルエステルは、直鎖または分枝鎖であり得る。環状のカルボン酸アルキルエステルは、環状構造のみから構成されてもよく、環状構造にさらに鎖状アルキルが結合した構造であってもよい。カルボン酸アルキルエステルの炭素数は、任意の自然数であり得る。1つの実施形態では1〜30であり、別の実施形態では1〜20である。
上記一般式(4)のRにおけるカルボン酸アルキルエステル基は、そのカルボン酸の炭素原子が一般式(4)のベンゼン環に結合する。すなわち、ベンゼン環をPhと記載すると、Ph−C(=O)−ORの構造となる。このカルボン酸アルキルエステル基としては、アルキル基の炭素原子数が1〜15であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。具体例としては、カルボン酸メチル基、カルボン酸エチル基、カルボン酸プロピル基、カルボン酸ブチル基、カルボン酸ペンチル基、カルボン酸ヘキシル基、カルボン酸ヘプチル基、カルボン酸オクチル基、カルボン酸ノニル基、カルボン酸デシル基、カルボン酸ウンデシル基、カルボン酸ドデシル基、カルボン酸トリデシル基、カルボン酸テトラデシル基およびカルボン酸ペンタデシル基などが挙げられる。
一般式(4)中、mは1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1〜2の整数である。nは0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0〜1の整数である。mおよびnの数が少ないほど、本発明のポリアニリンの製造方法の原料であるアリニンホスホン酸の製造が安価で容易にできる。
また、上記一般式(4)中のRがNHXで表される化合物、すなわち、アニリンホスホン酸の塩も、本発明のポリアニリンの製造方法の原料であるアニリンモノマーとして使用可能である。
(アニリンホスホン酸モノマーの製造方法)
アニリンホスホン酸モノマーは、従来公知の任意の方法で製造することができる。
アニリンホスホン酸モノマーの製造方法としては、収率および操作性を考慮すると、例えば、以下のモノマー製造の実施形態1〜3が好ましい。
(モノマー製造の実施形態1)
モノマー製造において、ハロゲン化アニリンを出発原料に用いる場合は、ハロゲン化アニリンにジアルキルホスファイトを結合させた後、アルキル基を加水分解することによりアニリンホスホン酸を得ることができる(スキーム1)。
<スキーム1>
式中、Rは、各々独立してハロゲン原子、炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素原子数1〜15のアルコキシ基、炭素原子数1〜15のアルキルチオ基、炭素原子数1〜15のアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルキル基の炭素原子数が1〜15であるカルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択され、
mは1〜4の整数であり、
nは0〜3の整数であり、
mとnの和は1〜4であり、
Xはハロゲンであり、そして
およびRはアルキル基である。RおよびRの炭素数は、好ましくは1〜15であり、更に好ましくは1〜8であり、特に好ましくは1〜4である。但し、アミノ基に対してパラ位の位置には置換基は存在しない。
ハロゲン化アニリンにジアルキルホスファイトを結合させる方法としては、例えば、平尾反応と呼ばれる方法が公知である。
なお、本明細書において、「平尾反応」とは、パラジウム化合物などの触媒の存在下でベンゼン環にホスファイトを結合させる反応を言う。平尾反応は、具体的には、以下の文献などに説明されている。
(1)「Palladium−Catalyzed New Carbon−Phosphorus Bond Formation」,Bulletin ofthe Chemical Society Of Japan,55,909−913(1982)(上記非特許文献6)
(2)「Microwave−Assisted Palladium−Catalyzed Cross−Coupling of Aryl and Vinyl Halides with H−Phosphonate Diesters」,Organic Letters 2008,Vol.10,No.20,4637−4640(上記非特許文献7)
(3)「Development of a room temperature Hirao reaction」,Tetrahedron Letters 50(2009)457−459(上記非特許文献8)
(4)「A Novel Synthesis of Dialkyl Arenephosphonates」, Toshikazu Hirao, Toshio Masunaga, Yoshiki Ohshiro and Toshio Agawa, Synthesis, (1), 56−57 (1981).(上記非特許文献9)
(5)「Revisiting the Hirao Cross−coupling」, Journal of Organometallic Chemistry,693(2008)3171−3178.(上記非特許文献10)
平尾反応の触媒は、上記各文献に記載されているような公知の任意の触媒が使用可能であり、好ましくはパラジウム化合物であり、より好ましくはPd(PPhまたはPd(OAc)である。
上記モノマー製造の実施形態1によれば、実質的に上記2ステップのみでモノマーを得ることが可能であり、多くの工程を要することなく、アニリンモノマー化合物を比較的高い収率で得ることができる。
(モノマー製造の実施形態2)
モノマー製造において、例えば、置換もしくは非置換のフェニルホスホン酸を原料に用いる場合は、硝酸でニトロ化した後、ニトロ基を水素で還元しアミノ基とすることによりアニリンホスホン酸を得ることができる(スキーム2)。
<スキーム2>
式中、R、mおよびnの定義は上記スキーム1における定義と同じである。但し、スキーム2の出発化合物のベンゼン環のニトロ化される炭素に対してパラの位置の炭素には置換基が存在しない。すなわち、mとnの和が4の場合、ベンゼン環の置換基の存在しない2つの炭素は互いにパラの位置関係になる。mとnの和が3の場合、ベンゼン環の置換基の存在しない3つの炭素のうちの2つの炭素が互いにパラの位置関係になる。そのため、スキーム2の中間体において、ニトロ基のパラ位に置換基は存在せず、そしてスキーム2の最終生成物であるアニリンホスホン酸化合物においても、アミノ基のパラ位に置換基は存在しない。
一般的に行われるベンゼン環のニトロ化反応(例えば、硝酸および硫酸によるニトロ化反応)の場合、スキーム2の出発化合物においては、ホスホン酸基に対してメタの位置がニトロ化されやすい。そのためスキーム2の中間体化合物としては、ホスホン酸基に対してメタの位置がニトロ化されており、かつそのニトロ基に対してパラの位置にはホスホン酸基が存在しない化合物が高い収率で得られる。
また、R基の位置は、ニトロ基が結合する位置に対してパラの位置にならないように、すなわち、オルトまたはメタの位置になるように選択される。スキーム2の出発化合物のベンゼン環にホスホン酸基が1つ存在する場合、ベンゼン環のホスホン酸基の位置を1位とすると、上述したとおり、メタ(すなわち、3位または5位)がニトロ化されやすい。このような場合、ニトロ化されやすい3位または5位に対してパラの位置(6位または2位)にR基が存在しないように、2位、4位および5位との3箇所のうちの0箇所〜3箇所、または3位、4位および6位との3箇所のうちの0箇所〜3箇所にR基の位置が選択される。そのため、ホスホン酸基に対してオルトの位置関係になる2つの位置(2位および6位)のうち、少なくとも一方にはR基が存在しないようにR基の位置が選択される。
スキーム2の出発化合物のベンゼン環にホスホン酸基が2つ存在する場合、その2つのホスホン酸基の関係はオルトであってもよく、メタであってもよく、パラであってもよい。メタであることが好ましい。2つのホスホン酸基の関係がオルトである場合、その2つのホスホン酸基の位置を1位および2位とすると、3位または6位がニトロ化されて、6位または3位には置換基が存在せず、R基が存在しないかまたはR基の位置が4位および5位から選択される。2つのホスホン酸基の関係がメタである場合、その2つのホスホン酸基の位置を1位および3位とすると、2位または5位がニトロ化されて、5位または2位には置換基が存在せず、R基が存在しないかまたはR基の位置が4位および6位から選択される。2つのホスホン酸基の関係がパラである場合、その2つのホスホン酸基の位置を1位および4位とすると、2位、3位、5位または6位がニトロ化されて、5位、6位、2位または3位には置換基が存在せず、R基が存在しないかまたはR基の位置が、2位、3位、5位および6位からニトロ基の位置とそのパラの位置を除いた残りの位置から選択される。
スキーム2の出発化合物のベンゼン環にホスホン酸基が3つ存在する場合、その3つのホスホン酸基の位置は、そのうちの1つを1位として、1位、2位および4位(あるいは、1位、2位および5位、または1位、3位および4位)である。1位、2位および4位に存在する場合、3位または6位がニトロ化されて6位または3位に置換基が存在せず、R基が存在しないかまたはR基の位置が5位である。3つのホスホン酸基の位置が、1位、2位および3位、あるいは、1位、3位および5位等である場合には、導入したニトロ基に対するパラ位にホスホン酸基が存在するので適切ではない。
スキーム2の出発化合物のベンゼン環にホスホン酸基が4つ存在する場合、その4つのホスホン酸基の位置は、そのうちの1つを1位として、1位、2位、4位および5位(あるいは、1位、3位、4位および6位)である。1位、2位、4位および5位に存在する場合、3位または6位がニトロ化されて6位または3位に置換基が存在せず、R基は存在しない。4つのホスホン酸基の位置が、1位、2位、3位および4位、あるいは、1位、2位、3位および5位等である場合には、導入したニトロ基に対するパラ位にホスホン酸基が存在するので適切ではない。
上述したように出発化合物を選択することにより、スキーム2の中間体化合物としては、ホスホン酸基に対してメタの位置がニトロ化されており、かつそのニトロ基に対してパラの位置には置換基が存在しない化合物が高い収率で得られる。
上記モノマー製造の実施形態2によれば、実質的に上記2ステップのみでモノマーを得ることが可能であり、多くの工程を要することなく、アニリンモノマー化合物を比較的高い収率で得ることができる。
(モノマー製造の実施形態3)
モノマー化合物の製造方法において、例えば、置換もしくは非置換のニトロハロゲンベンゼンを原料に用いる場合は、置換もしくは非置換のニトロハロゲンベンゼンにジアルキルホスファイトを結合させた後、ニトロ基を水素で還元してアミノ基とし、その後、アルキル基を加水分解することにより置換もしくは非置換のアニリンホスホン酸を得ることができる(スキーム3)。ここで、ニトロハロゲンベンゼンにジアルキルホスファイトを結合させる方法としては、平尾反応を利用することができる。
<スキーム3>
式中、R、m、n、X、RおよびRの定義は上記スキーム1における定義と同じである。但し、ニトロ基またはアミノ基のパラ位に置換基は存在しない。
上記モノマー製造の実施形態1〜3によれば、多くの精製工程を経ることなく、原料モノマーのアニリンホスホン酸またはその塩を比較的高い収率で得ることができる。
(アニリンホスホン酸の塩)
アニリンモノマー化合物としてアニリンホスホン酸の塩を用いる場合、アニリンホスホン酸の塩としては、従来公知の任意の方法により得られたものを使用することができる。例えば、置換または非置換のアニリンホスホン酸をハロゲン化水素、金属水酸化物あるいはアンモニア等で処理する方法などにより得られる。
(その他のモノマー)
本発明のポリアニリンの製造方法においては、上述した、置換または非置換のホスホン酸もしくはその塩を有するアニリンモノマー化合物または混合物のみを重合反応の際のモノマーとして使用することが好ましい。しかし、必要に応じて、ポリアニリン製造の際の原料となるモノマー混合物には、上記置換または非置換のホスホン酸もしくはその塩を有するアニリンモノマー化合物以外の酸化重合可能なモノマー(以下、「他種モノマー」)を、本発明の効果を妨げない程度の少量含んでいてもよい。すなわち、ホスホン酸を有さない置換もしくは非置換のアニリンモノマー化合物またはその塩を必要に応じて、共重合させても良い。例えば、酸性の置換基を有さない置換もしくは非置換のアニリンモノマー化合物を少量用いても良いし、ホスホン酸以外の酸性の置換基(例えば、スルホン酸)を有する置換もしくは非置換のアニリンモノマー化合物を少量用いても良いし、あるいは、ホスホン酸基が直接ベンゼン環に結合せずに間接的に結合している置換もしくは非置換のアニリンモノマー化合物(例えば、非特許文献1に記載されているアニリンベンジルホスホン酸)を少量用いても良い。
ただし、上記他種モノマーの使用量が多すぎると、本発明の利点が損なわれることになるので、他種モノマーの使用量は多すぎないことが好ましい。他種モノマーの使用量は、重合に使用される置換または非置換のアニリンモノマー化合物総量のうちの40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましく、10モル%以下であることがいっそう好ましく、5モル%以下であることがひときわ好ましく、3モル%以下であることが特に好ましく、1モル%以下であることが最も好ましい。
(ポリアニリンの製造)
ポリアニリンは、アニリンモノマー化合物またはアニリンモノマー混合物を調製する工程、およびアニリンモノマー化合物またはアニリンモノマー混合物を重合する工程により、製造することができる。必要に応じて、重合により得られたポリアニリンについて、さらに精製工程を行うこともできる。
(重合反応)
アニリンモノマー化合物またはアニリンモノマー混合物を重合することにより、ポリアニリンが得られる。重合方法としては、アニリンモノマーからポリアニリンを得る重合方法として従来公知の任意の方法を採用することができる。
好ましくは、酸化重合と呼ばれる方法を採用することができる。
本明細書中において「酸化重合」とは、酸化剤を用いてアニリンモノマー化合物またはアニリンモノマー混合物を重合してポリアニリンを合成する反応を意味する。ここで、「酸化」とは、この重合反応において、アニリンモノマー化合物から水素原子を引き抜くことを意味する。本明細書中において「酸化剤」とは、そのような酸化反応を引き起こす試薬をいう。アニリンモノマーの酸化重合のメカニズムについては、例えば、上記非特許文献5などに説明されている。なお、酸化重合との用語について、化学大辞典においては、「二重結合を含む炭化水素残基をもつ化合物が酸素に触れて漸次重合する過程をいう。最もよい例は油脂の乾燥である。」と記載されている。しかし、アニリンモノマーの重合は一般に空気中の酸素を酸化剤として使用するものではないので、その点において、本明細書中の「酸化重合」との用語は、化学大辞典等において使用される意味と若干異なる意味を有する。
(酸化剤)
本発明における重合反応においては、アニリンモノマー化合物から水素原子が除去される。すなわち、アニリンモノマーが酸化されることになる。反応を伴いながら進行する。そのため、重合反応は、この脱水素を引き起こすための酸化剤の存在下で行われる。酸化剤としては、ポリアニリンの酸化重合において一般的に用いられている酸化剤が使用できる。好ましく使用可能な具体例としては、ペルオキソ二硫酸塩(例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム)、ペルオキソ硫酸塩(例えば、ペルオキソ硫酸ナトリウム)、過酸化水素、第二塩化鉄などが挙げられ、より好ましく用いられるものとしてはペルオキソ二硫酸アンモニウムが挙げられる。
酸化剤の使用量は、重合が進行し得る量である限り限定されない。重合するアニリンモノマーの総量に対して、0.5当量以上であることが好ましく、0.7当量以上であることがより好ましく、1.0当量以上であることがさらに好ましく、1.5当量以上であることが特に好ましく、2.0当量以上であることが最も好ましい。そして、必要に応じて、2.1当量以上、2.2当量以上、2.4当量以上、2.6当量以上、2.8当量以上または3.0当量以上とすることも可能である。また、重合するアニリンモノマーの総量に対して、10当量以下であることが好ましく、8当量以下であることがより好ましく、6当量以下であることがさらに好ましく、5当量以下であることが特に好ましく、4当量以下であることが最も好ましい。そして、必要に応じて、3.9当量以下、3.7当量以下、3.6当量以下、3.5当量以下、3.4当量以下、3.3当量以下、3.2当量以下、または3.1当量以下とすることも可能である。
なお、ここで、1当量は、アニリンモノマーから水素原子1モルを引き抜く酸化剤の量(モル数)である。例えば、過硫酸塩などの、1モルの酸化剤が2モルの水素を引き抜くことができる酸化剤であれば、その酸化剤の0.5モルが1当量である。
酸化剤の使用量が適切な範囲であれば反応がスムーズに進行し、導電性ポリアニリンを効率良く得ることができる。酸化剤の使用量が少なすぎる場合または多すぎる場合には、重合反応の効率が低下しやすくなる。
なお、空気中の酸素は、通常、アニリンモノマーの重合のための酸化剤とはならないので、空気の存在下で重合反応を行う場合においても、通常、空気中の酸素は、重合反応に使用される酸化剤の量に含めない。すなわち、「酸化重合」という用語は、空気中に存在する酸素を酸化剤として使用する重合反応を意味するものとして使用される場合があるが、本発明における重合反応はこのような重合反応とは異なる。
(溶媒)
重合反応は、必要に応じて、溶媒を用いて行ってもよい。溶媒としては、アニリンモノマー化合物を溶解または分散し得る任意の液体が使用可能である。アニリンモノマー化合物を溶解し得る液体が好ましい。
具体的には、好ましい溶媒としてはアンモニア水、ピリジン水、ピリジン、トリエチルアミン水、トリエチルアミン、水、塩酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アセトン、2−ブタノン、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。より好ましい溶媒としては、アンモニア水、ピリジン水、ピリジン、トリエチルアミン水、トリエチルアミンが挙げられる。なお、本明細書中では、塩基性化合物の水溶液について、「アンモニア水」と同様に記載する。すなわち、「ピリジン水」とは、ピリジンを水に溶解した溶液をいう。また「トリエチルアミン水」とは、トリエチルアミンを水に溶解した溶液をいう。
一つの好ましい実施形態においては、塩基性の液体化合物または塩基性化合物を水に溶解した溶液(例えば、上述したアンモニア水、ピリジン水など)が溶媒として使用される。なお、この溶液において塩基性化合物が完全に溶解した状態である必要はなく、いわゆる混和と呼ばれる状態であっても良い。すなわち、塩基性化合物と水とが十分に混ざり合って、混合溶媒として機能できる状態であれば良い。このように水と混合して好ましい混合溶媒を形成する塩基性化合物としては、塩基性窒素を含有する化合物などが挙げられる。より具体的には、アンモニア、芳香族アミン化合物、脂肪族アミン化合物などが挙げられる。芳香族アミン化合物の例としては、へテロ原子として窒素を有する複素環化合物(例えば、ピリジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール)などが挙げられる。芳香族アミン化合物の芳香環には、アルキル基、ハロゲンなどの置換基が存在しても良い。脂肪族アミン化合物は鎖状脂肪族アミン化合物であってもよく、環状脂肪族アミン化合物(例えば、ピペリジン)であってもよい。環状脂肪族アミン化合物は第一級アミンであってもよく、第二級アミンであってもよく、第三級アミンであってもよい。鎖状脂肪族アミン化合物は第一級アミンであってもよく、第二級アミンであってもよく、第三級アミンであってもよい。鎖状脂肪族第一級アミン化合物の例としては、例えば、アルキル基に1つ以上のアミノ基が結合した化合物が挙げられる。鎖状脂肪族第二級アミン化合物の例としては、例えば、−NH−基に2つのアルキル基が結合した化合物が挙げられる。鎖状脂肪族第三級アミン化合物の例としては、例えば、窒素原子に3つのアルキル基が結合した化合物(トリアルキルアミン)(例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリ−n−デシルアミン)が挙げられる。
ここで、塩基性化合物の水溶液中の塩基性化合物の濃度は特に限定されない。例えば、0.01M以上とすることが可能であり、0.1M以上とすることも可能であり、1M以上とすることも可能である。また、10M以下とすることが可能であり、7M以下とすることも可能であり、5M以下とすることも可能である。
好ましい実施形態においては、アニリンモノマー化合物を上述した溶媒に溶解してアニリンモノマー化合物の溶液を調製し、そして酸化剤を別途溶媒に溶解して酸化剤の溶液を調製し、アニリンモノマー化合物溶液と酸化剤溶液とを混合して重合反応を行う。ここで、酸化剤を溶解する溶媒としては、酸化剤を溶解できる任意の溶媒が使用可能である。好ましい実施形態においては酸化剤を溶解する溶媒は水である。
(反応温度)
本発明における重合の反応温度は、重合反応が進行し得る温度であれば特に限定されない。好ましくは、−20℃以上であり、より好ましくは−15℃以上であり、さらに好ましくは、−10℃以上であり、0℃以上とすることも可能である。また、好ましくは80℃以下であり、より好ましくは70℃以下であり、さらに好ましくは60℃以下であり、いっそう好ましくは50℃以下であり、ひときわ好ましくは40℃以下であり、特に好ましくは30℃以下であり、最も好ましくは20℃以下であり、10℃以下とすることも可能である。
反応温度が上記適切な範囲内であれば収率良く、優れた導電性を有するポリアニリンホスホン酸誘導体が得られる。反応温度が低すぎる場合または高すぎる場合には、反応効率が低下しやすい。
(反応時間)
本発明における重合の反応時間は、各々の条件において、反応するのに充分な時間を適宜選択すればよい。反応が充分に進行していれば、反応時間の違いが本発明の効果に大きな影響を及ぼすことはない。
反応時間は、好ましくは、1時間以上であり、より好ましくは、3時間以上であり、さらに好ましくは、6時間以上であり、いっそう好ましくは、9時間以上であり、特に好ましくは12時間以上であり、必要に応じて、15時間以上、18時間以上、21時間以上、または24時間以上とすることも可能である。また、好ましくは、7日間以下であり、より好ましくは、5日以下であり、さらに好ましくは、3日以下であり、いっそう好ましくは、2日以下であり、特に好ましくは36時間以下であり、必要に応じて、30時間以下、28時間以下または26時間以下とすることも可能である。
(精製)
重合反応により得られたポリアニリンには、必要に応じて、精製操作を行うことができる。精製操作としては、ポリアニリンの精製方法として公知の任意の方法を使用することができる。例えば、遠心分離、濾過、脱水、乾燥、蒸留、洗浄、限外濾過、透析などの操作を行うことができる。精製操作の回数および種類は特に限定されない。1種類の精製操作を1回行うことのみによって精製操作を終了しても良いが、必要に応じて、2回以上の精製操作を行ってもよい。例えば、精製操作を3回以上、4回以上または5回以上行ってもよい。ここで、1種類の精製操作を繰り返して2回以上行ってもよく、複数種類の精製操作を組み合わせて合計として2回以上の精製操作を行ってもよい。精製操作の回数に特に上限はないが、好ましくは20回以下であり、より好ましくは15回以下であり、さらに好ましくは10回以下である。回数が多すぎる場合には、製造プロセス全体として長時間を要することになり、製造効率が低下する。
(イオン交換)
重合反応により得られたポリアニリンには、必要に応じて、イオン交換を行ってドープの量を調節しても良い。イオン交換は酸性水溶液やイオン交換樹脂などにより行うことが出来る。
すなわち、重合により得られたポリアニリンのホスホン酸またはホスホン酸一水素塩の水素がポリマー全体として所望の量よりも少ない場合には、ホスホン酸に結合している金属イオンやピリジニウムイオンやアンモニウムイオンを水素イオンにイオン交換することにより、ドープの効果を大きくすることができる。
また逆に、重合により得られたポリアニリンのホスホン酸またはホスホン酸一水素塩の水素がポリマー全体として所望の量よりも多すぎる場合には、ホスホン酸またはホスホン酸一水素塩の水素イオンを他のイオン(例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)にイオン交換することにより、ドープの効果を小さくすることができる。
イオン交換は、ポリアニリンを重合した後に行うことができる。上記精製の操作と同時に行うことも可能であり、精製の操作より前に行ってもよく、精製の操作の後に行ってもよい。例えば、ろ過により精製を行う際には、ろ過を行うカラムにイオン交換樹脂を充填しておけば、ろ過による精製と同時にイオン交換を行うことができる。
イオン交換の方法としては、従来公知のイオン交換の方法が使用可能である。
例えば酸性水溶液を用いる場合、重合により得られたポリアニリン生成物を酸性水溶液に接触させることにより、イオン交換を行うことができる。具体的には例えば、ポリアニリン生成物を酸性水溶液中で攪拌してポリアニリン生成物中に存在するホスホン酸塩化合物の塩の部分を水溶液中の水素イオンと反応させるなどの方法により、イオン交換を行うことができる。ドープの効果を大きくするために水素イオンを増やす場合には、ポリアニリン生成物の酸性置換基に対して過剰量の酸を用いることが好ましい。ドープの効果を小さくするためには用いる酸の量を少なくすればよい。つまり、用いる酸の量によりドープの効果は任意に設定できる。また、ポリアニリン生成物と酸を反応させる時間も任意に設定できる。
例えばイオン交換樹脂を用いる場合、ポリアニオン生成物を水中でイオン交換樹脂に接触させるなどの方法により、イオン交換を行うことができる。ドープの効果を大きくするために水素イオンを増やす場合には、強酸性陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。ドープの効果を小さくするために水素イオンを減らす場合には、強塩基性陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。イオン交換樹脂にポリアニリン生成物を接触させる方法としては任意の方法が使用可能である。例えば、カラムにイオン交換樹脂を詰めて、ポリアニリン生成物を含む溶液を流してもよいし、また、単に容器にイオン交換樹脂を入れて、その容器にポリアニリン生成物を含む溶液を入れてもよい。また、ポリアニリン生成物とイオン交換樹脂とを接触させる場合には、その容器を振盪させたり、溶液を攪拌したりすることにより、その効率を向上させても良い。ポリアニリン生成物とイオン交換樹脂とを接触させる時間は任意に設定できる。例えば、カラムに少量(例えば、1滴)のポリアニリン生成物溶液を流す場合であれば、その少量の溶液がイオン交換樹脂に上部に接触した時間からイオン交換樹脂の下部から離れるまでの時間として設定される。また例えば、カラムに大量のポリアニリン生成物溶液を流す場合であれば、その溶液の最初の部分がイオン交換樹脂に上部に接触した時間からイオン交換樹脂の下部から離れるまでの時間と、その溶液の最後の部分がイオン交換樹脂に上部に接触した時間からイオン交換樹脂の下部から離れるまでの時間との平均として設定される。また、容器にイオン交換樹脂とポリアニリン生成物溶液を入れる場合であれば、その溶液とイオン交換樹脂が容器中で混合される時間として設定される。
ポリアニリン生成物のイオン交換の1回の操作を行う時間(例えば、上述したポリアニリン生成物と酸性水溶液の接触時間あるいはイオン交換樹脂とポリアニリン生成物の接触時間)は、所望とされるイオン交換の程度に応じて任意に設定されるが、例えば、5秒間以上とすることが好ましく、10秒間以上とすることがより好ましく、いっそう好ましくは1分間以上であり、さらに好ましくは、10分間以上である。接触時間が短すぎる場合にはイオン交換が不十分になりやすい。また、1日以下とすることが好ましく、より好ましくは12時間以下であり、さらに好ましくは、2時間以下である。接触時間が長すぎる場合には、製造プロセス全体として長時間を要することになり、製造効率が低下する。
イオン交換の操作を行う回数は特に限定されない。ポリアニリン生成物に対して1回のみのイオン交換の操作でイオン交換を完了してもよく、イオン交換の操作を2回以上繰り返して行っても良い。2回以上繰り返して行えば、ドープ効果が高いポリアニリンを容易に得ることができる。具体的には、3回以上繰り返して行うことが好ましく、4回以上繰り返して行うことがより好ましく、5回以上繰り返して行うことがさらに好ましい。また、イオン交換の操作を行う回数は、好ましくは20回以下であり、より好ましくは15回以下であり、さらに好ましくは10回以下である。回数が多すぎる場合には、製造プロセス全体として長時間を要することになり、製造効率が低下する。
また、イオン交換の操作を2回以上行う場合、同一のイオン交換の操作のみを2回以上繰り返してもよく、2種類以上のイオン交換の操作を行ってもよい。
1つの好ましい実施形態においては、イオン交換の操作を精製の操作と組み合わせて一連の工程とすることができる。例えば、ポリアニリン生成物に酸性水溶液を添加してイオン交換を行った後、ポリアニリン粗成物の精製工程(例えば、遠心分離)を行って水等を除去して純度が高くなったポリアニリンを取り出すことにより、ドープ効率が高く、かつ純度も高いポリマーを得ることができる。さらに、このイオン交換の操作を精製の操作と組み合わせた一連の工程を一つのサイクルとして、このサイクルを複数回繰り返して行うこともできる。例えば、ポリアニリン生成物に酸性水溶液を添加してイオン交換を行った後、ポリアニリン生成物の精製工程(例えば、遠心分離)を行って純度が高くなったポリアニリンを取り出し、その第1回精製後のポリアニリンに再度酸性水溶液を添加して2回目のイオン交換を行い、その後、再度精製工程を行って純度がさらに高くなった第2回精製後のポリアニリンを取り出す、という一連の工程を繰り返すことにより、ドープ効率が非常に高く、かつ純度も高いポリマーを効率良く得ることができる。すなわち高純度で電導性の高いポリマーを効率良く得ることができる。イオン交換の操作および精製の操作を含む一連の工程からなるサイクルを繰り返す回数は特に限定されない。具体的には、3回以上繰り返して行うことが好ましく、4回以上繰り返して行うことがより好ましく、5回以上繰り返して行うことがさらに好ましい。また、好ましくは20回以下であり、より好ましくは15回以下であり、さらに好ましくは10回以下である。回数が多すぎる場合には、製造プロセス全体として長時間を要することになり、製造効率が低下する。
(ポリアニリン)
上記製法により製造されるホスホン酸基を有するポリアニリンは、例えば、一般式(1)で表される:
−(A)− (1)
ここで、Aはそれぞれ独立してアニリンモノマー残基である。qは重合度であって、任意の正の整数である。具体的には、例えば、4以上、10以上、100以上または200以上とすることが可能であり、また、2,000以下、1,000以下、800以下または600以下とすることが可能である。一般式(1)のポリアニリンの分子量は、重合度に対応する量になる。なお、数平均分子量および重量平均分子量について、本明細書中のポリアニリンに関して上述した説明は一般式(1)のポリアニリンにも当てはまる。
隣接するアニリンモノマー残基どうしは、パラ位置で結合している。すなわち、第1のアニリンモノマー残基に第2のアニリンモノマー残基が結合し、そして第2のアニリンモノマー残基に第3のアニリンモノマー残基が結合している場合、第1のアニリンモノマー残基と第3のアニリンモノマー残基は、第2のアニリンモノマー残基中のベンゼン環においてパラの位置関係にある。
なお、ポリアニリンの構造を一般式で記載する場合、その両末端を省略することが一般的であるので、本明細書においても、原則として、ポリアニリンの構造を記載する際には両末端は省略する。しかしながら、例えば、上記一般式(1)に敢えて両末端基を記載すれば、以下の一般式(1A)となる。
−(A)−E (1A)
ここで、EおよびEはそれぞれ末端基である。通常は、一方が重合開始末端であって他方が重合終了末端である。
ポリアニリンの末端の構造は、完全には解明されていない。アニリンモノマーの化学構造から単純に予想されるように、アニリンモノマーのアミン部分が別のアニリンモノマーのパラ位に結合するという反応が起こる場合であれば、ポリアニリンの一方の末端のアニリンモノマー残基においては、パラ位の水素がそのまま残存して末端を形成し、他方の末端のアニリンモノマー残基においては、アミノ基がそのまま残存して末端を形成すると考えられる。例えば、矢野ら、BUNSEKI KAGAKU Vol.46,No.5,pp.343−349の論文においては、348頁の反応式(1)〜(4)に、そのようなポリアニリンの重合が記載されている。また、特開2003−192786号の0007段落には、そのようなポリアニリンの重合が記載されている。この場合、上記式(1)に敢えて両末端の水素(一方の末端のパラ位の水素および他方の末端のアミノ基の水素)を記載すると、以下の一般式(1B)で表される。
[H−A−H] (1B)
他方、例えば、J.Stejekalら、Progress in Polymer Science 35(2010)1420〜1481、および向井ら、慶應義塾大学日吉紀要.自然科学(The Hiyoshi review of the natural science).No.50(2011.9),p.61−75には、アニリンの重合の初期段階においてフェナジン環構造を有するアニリンオリゴマーが生成し、そのオリゴマー残基がポリマーの重合開始側末端となって、以下の式で表される構造のポリマーが形成されることが説明されている。
しかし、このように繰り返し単位におけるモノマー残基の構造と異なる構造が末端に存在する場合においても、そのポリアニリンの末端基の種類がポリアニリンの性能に与える影響は小さいので、末端基の構造は無視することができる。
ポリアニリン中のモノマー残基(上記一般式(1)中の「A」)は、すべて同一であっても良く、複数種類であっても良い。すなわち、ホモポリマーであっても良く、コポリマーであっても良い。コポリマーであることが好ましい。また、コポリマーはブロックコポリマーであっても良く、ランダムコポリマーであっても良い。ランダムコポリマーにおいては、複数種類のモノマー残基が無秩序に並ぶ。なお、上述した非特許文献5などに記載されているとおり、アニリンモノマーを酸化重合して得られるポリアニリンは、一定の規則的な繰り返し単位を有する構造となることが知られている。本発明の製造方法においても、そのような規則性を有するポリアニリンが生成され得ると考えられるものであり、そのような規則性を有するポリアニリンを本発明の製造方法の目的とするポリマーとして使用することができる。
ポリアニリンは、少なくともホスホン酸基(−PO)またはホスホン酸一水素塩基(−POHM、ここでMは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択される)を有するモノマー残基を含む。ホスホン酸基またはホスホン酸一水素塩基は、その水素原子により、ポリアニリン主鎖の窒素に対してドーピングすることが可能である。
なお、本明細書中においてホスホン酸一水素塩基とは、ホスホン酸一水素塩の構造を有する基を意味する。すなわち、ホスホン酸基の2つの水素のうち、1つの水素のみが金属原子等で置換されて塩となり、他方の水素がそのまま残っている基をいう。
上記一般式(1)中のモノマー残基Aは、例えば、以下の一般式(2)で表される。
上記一般式(2)において、R30は各々独立してハロゲン原子、炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素原子数1〜15のアルコキシ基、炭素原子数1〜15のアルキルチオ基、炭素原子数1〜15のアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルキル基の炭素原子数が1〜15のカルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択される。m10は1〜4の整数であり、n10は、0〜3の整数であり、m10とn10の和は1〜4である。また、一般R20は以下の一般式(2A)の基である。
式中、M21、M22はそれぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択され、ただし、M21またはM22のうちの少なくとも1つがアルカリ土類金属である場合には、そのアルカリ土類金属は、それぞれ、分子中に存在するすべてのM21およびM22のうちのいずれか2つが一緒になった構造となっている。
このような構造を含むことにより本発明の製造方法により得られるポリアニリンは水溶性および導電性を示す。
一般的に、ポリアニリンは下記一般式(15)の還元型単位のフェニレンジアミン骨格および
下記一般式(16)の酸化型単位のキノンジイミン骨格の2種類の骨格をとることが知られている。
したがって、本発明の製造方法により得られるポリアニリンは、上記一般式(16)の骨格構造を有するものであり得る。
本発明の製造方法により得られるポリアニリンは、自己ドープの作用のために、プロトンを提供できるホスホン酸基またはホスホン酸一水素塩を有するアニリンモノマー残基を含む。しかし、モノマー残基のすべてがプロトンを提供できる置換基を有する必要はない。
そのため、本発明の製造方法により得られるポリアニリンは、そのアニリンモノマー残基中に、本発明の効果を阻害しない範囲で、ドープ作用を有さないモノマー残基を繰り返し単位として含んでいてもよい。例えば、下記一般式(3):
(式中、R、nおよびmは上記一般式(4)中における定義と同じであり、M13およびM14は各々独立して、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびアンモニウム基、ピリジニウム基よりなる群から選ばれた少なくとも1つである。)で表される繰り返し単位などが挙げられる。
上述したようにポリアニリン中にはキノンジイミン骨格が形成されることを考慮すると、上記ポリアニリンの一般式(1)は、以下の一般式(9)として記載することができる。
上記式において、m1A、m3A、m4Aはそれぞれ独立して0〜4の整数であり、n1A、n3A、n4Aはそれぞれ独立して0〜4の整数であり、m1Aとn1Aの和は1〜4であり、m3Aとn3Aの和は1〜4であり、m4Aとn4Aの和は1〜4であり、R3A、R3B、R3Cはそれぞれ独立して上記一般式(4)中における定義と同じであり、R2A、R2B、R2Cはそれぞれ独立して以下の一般式(2A)で表される基である。
式中、M21、M22はそれぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択され、ただし、M21またはM22のうちの少なくとも1つがアルカリ土類金属である場合には、そのアルカリ土類金属は、それぞれ、分子中に存在するすべてのM21およびM22のうちのいずれか2つが一緒になった構造となっている。
また、一般式(9)において、tおよびuはそれぞれの構造を単位とする重合度を示す数であり、任意の正の整数である。tとuの2倍との和がポリマー全体の重合度、すなわち一般式(1)におけるqに対応する。tは、uの2倍に等しいかもしくはほぼ等しいことが好ましい。
ポリアニリン中に存在するフェニレンジアミン骨格およびキノンジイミン骨格に関して、先行技術の説明に関して上述した文献:日野ら、山形大学紀要(工学)第29巻第2号、平成19年2月(非特許文献5)には、以下のことが説明されている:
・ポリアニリンが四量体で一つの構造単位として考えられている。
・酸化重合により合成直後のポリアニリンには酸成分がドーパントとして入り込んで静電的に結合し、ハーフ酸化状態の導電体が得られる。この状態のポリアニリンは緑色のエメラルド色をしており、エメラルディン塩と呼ばれて導電性を示す。
・このエメラルディン塩をアルカリ溶液中で処理すると、無機酸の塩から無機酸が外れて脱ドープ状態となり、色も緑色から青色となり、エメラルディン塩基と呼ばれる絶縁性の構造となる。
・エメラルディン塩のハーフ酸化状態から還元すると、ロイコエメラルディンと呼ばれる完全還元状態のポリアニリンとなる。
・ハーフ酸化状態のエメラルディン塩基について、さらに酸化を進めると、完全酸化状態のペルニグラニリンが得られる。
・ポリアニリンにおいては、エメラルディン塩のみが導電性を示し、エメラルディン塩基、ロイコエメラルディン、ペルニグラニリンは導電性を示さない。
したがって、この文献には以下のとおり、4種類のポリアニリンが説明されている。
このように、アニリンモノマーを酸化重合すると、まず、導電性のエメラルディン塩と呼ばれる構造のポリアニリンが得られることが公知である。そして、エメラルディン塩以外の3種類の構造のポリアニリンについては、エメラルディン塩を脱ドープした後に必要に応じて酸化または還元を行うことによって得られることが公知である。
従って、本発明においても、アニリンモノマーを酸化重合した際には、導電性のエメラルディン塩の構造を有するポリアニリンが得られることが理解される。
本発明の製造方法により得られるポリアニリンを、フェニレンジアミン型構造(A1A)およびキノンジイミン型構造(A2A)に分けて構造を記載すると、以下の一般式(9A)で表される:
[−A1A −A2A −] (9A)
ここで、rはフェニレンジアミン型構造(A1A)の数であり、任意の正の整数である。sはキノンジイミン型構造(A2A)の数であり、任意の正の整数である。
上記一般式(9A)において、2種類の部分構造の並び方は任意である。すなわち、上記一般式(9A)は、そのポリマーがフェニレンジアミン型構造のブロック[−A1A −]と、キノンジイミン型構造のブロック[−A2A −]を連結したものに限定した意味を有するものではない。すなわち、フェニレンジアミン型構造の[−A1A−]と、キノンジイミン型構造単位[−A2A−]とはランダムに存在するものであってもよく、あるいは一定の規則性に従ってフェニレンジアミン型構造の[−A1A−]と、キノンジイミン型構造単位[−A2A−]とが繰り返される構造であっても良い。一般的には、アニリンの酸化重合においては、フェニレンジアミン型構造単位の[−A1A−]と、キノンジイミン型構造単位[−A2A−]とが交互に連結された構造が主に形成されることが知られている。ポリアニリンが完全にその交互に連結された構造となる場合、フェニレンジアミン型構造単位の数と、キノンジイミン型構造単位の数は同数(すなわち、r=s)となり、上記一般式(9A)は、以下の一般式(9B)となる。
[−A1A−A2A−] (9B)
ただし、実際には、ポリアニリンが完全にその交互に連結された構造である必要はないので、r=sである必要はなく、rとsが大きく相違しない数であれば、上記フェニレンジアミン型構造単位の[−A1A−]と、キノンジイミン型構造単位[−A2A−]との交互繰り返し連結をポリマー中の主成分とすることが可能になり、ポリマー全体としてその交互繰り返し構造の性質を示すことができると考えられる。勿論、rとsとが大きく相違しないことが好ましい。具体的には、例えば、sがrの0.2倍以上であることが好ましく、0.33倍以上であることがより好ましく、0.5倍以上であることがさらに好ましく、0.8倍以上であることが特に好ましく、0.9倍以上であることが最も好ましい。また、sがrの5倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましく、1.25倍以下であることが特に好ましく、1.1倍以下であることが最も好ましい。
本発明の製造方法により得られるポリアニリンは、上述した一般式(9B)の構造であり得るが、そのフェニレンジアミン型構造単位の[−A1A−]と、キノンジイミン型構造単位[−A2A−]とは、それぞれ、独立して、水素を有してドープ作用を有する構造または水素を有さないためにドープ作用がない構造のいずれかであり得る。ポリアニリンが高い導電性を有するためには、水素を有してドープ作用を有する構造がポリマー中のすべてであるかまたはほとんどであることが好ましいが、必要に応じて、水素を有さない構造が含まれていても良い。
そのため、本発明の製造方法により得られるポリアニリンは、そのモノマー残基を、水素を有するフェニレンジアミン型構造(A)、水素を有するキノンジイミン型構造(A)、水素を有さないフェニレンジアミン型構造(A)および水素を有さないキノンジイミン型構造(A)に分けて構造を記載すると、以下の一般式(10)で表される:
[−A −A −A −A −] (10)
ここで、gは、1以上の任意の整数であり、gは、好ましくは5以上である。より好ましくは、gは25以上であり、さらに好ましくは、50以上である。さらに、gは、必要に応じて、100以上、200以上、400以上、あるいは500以上であっても良い。また、gは、好ましくは1,000以下である。より好ましくは、gは500以下である。gが小さい場合には、ポリアニリンとして所望の性能を十分に得ることが難しくなる。大きすぎる場合には、ポリアニリンの製造を効率的に行うことが難しくなる。
hは、0以上の任意の整数であり、hは、好ましくは1以上である。より好ましくは、hは5以上であり、さらに好ましくは、25以上である。特に好ましくは、50以上である。さらに、hは、必要に応じて、100以上、200以上、400以上、あるいは500以上であっても良い。また、hは、好ましくは1,000以下である。より好ましくは、hは500以下である。hが小さい場合には、ポリアニリンとして所望の性能を十分に得ることが難しくなる。大きすぎる場合には、ポリアニリンの製造効率が低下しやすい。
理論的には、gとhは同じ数であることが好ましい。ただし、必ずしも同じである必要はない。gとhが大きく相違しない数であれば、好ましい性能が得られると考えられる。具体的には、例えば、gがhの0.2倍以上であることが好ましく、0.33倍以上であることがより好ましく、0.5倍以上であることがさらに好ましく、0.8倍以上であることが特に好ましく、0.9倍以上であることが最も好ましい。また、gがhの5倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましく、1.25倍以下であることが特に好ましく、1.1倍以下であることが最も好ましい。
gとhの和は、好ましくは、4以上であり、より好ましくは、10以上であり、さらに好ましくは、50以上である。特に好ましくは、100以上である。さらに、gとhの和は、必要に応じて、200以上、400以上、800以上、あるいは1,000以上であっても良い。また、gとhの和は、好ましくは2,000以下である。より好ましくは、gとhの和は1,000以下である。gとhの和が小さい場合には、導電性ポリアニリンとして所望の性能を十分に得ることが難しくなる。大きすぎる場合には、ポリアニリンの製造効率が低下しやすい。
jは、0以上の任意の整数であり、1つの実施形態ではjが0である。jは、必要に応じて、5以上であってもよく、50以上であってもよく、100以上であってもよい。また、jは、好ましくは、2,000以下であり、より好ましくは、1,000以下であり、さらに好ましくは、500以下であり、特に好ましくは、100以下である。
kは、0以上の任意の整数であり、1つの実施形態ではkが0である。kは、必要に応じて、5以上であってもよく、50以上であってもよく、100以上であってもよい。また、kは、好ましくは、2,000以下であり、より好ましくは、1,000以下であり、さらに好ましくは、500以下であり、特に好ましくは、100以下である。
理論的には、jとkは同じ数であることが好ましい。ただし、必ずしも同じである必要はない。jとkが大きく相違しない数であれば、好ましい性能が得られると考えられる。具体的には、例えば、jがkの0.2倍以上であることが好ましく、0.33倍以上であることがより好ましく、0.5倍以上であることがさらに好ましく、0.8倍以上であることが特に好ましく、0.9倍以上であることが最も好ましい。また、jがkの5倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましく、1.25倍以下であることが特に好ましく、1.1倍以下であることが最も好ましい。
また、理論的には、gとjの和と、hとkの和は同じ数であることが好ましい。ただし、必ずしも同じである必要はない。gとjの和と、hとkの和が大きく相違しない数であれば、好ましい性能が得られると考えられる。具体的には、例えば、gとjの和がhとkの和の0.2倍以上であることが好ましく、0.33倍以上であることがより好ましく、0.5倍以上であることがさらに好ましく、0.8倍以上であることが特に好ましく、0.9倍以上であることが最も好ましい。また、gとjの和がhとkの和の5倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましく、1.25倍以下であることが特に好ましく、1.1倍以下であることが最も好ましい。
jとkの和は、1つの実施形態においてはg、h、j、kの総和の50%以下であり、好ましくは、g、h、j、kの総和の40%以下であり、より好ましくは、g、h、j、kの総和の30%以下であり、さらに好ましくは、g、h、j、kの総和の20%以下であり、いっそう好ましくは、g、h、j、kの総和の10%以下であり、特に好ましくは、g、h、j、kの総和の5%以下であり、最も好ましくは、g、h、j、kの総和の3%以下であり、必要に応じて、g、h、j、kの総和の1%以下とすることも可能であり、0.5%以下とすることも可能であり、0.3%以下とすることも可能であり、0.1%以下とすることも可能である。
上記一般式(10)において、4種類の部分構造の並び方は任意である。すなわち、上記一般式(10)は、そのポリマーが4つのブロック[−A −]、[−A −]、[−A −]および[−A −]を連結したものに限定して解釈されるものではない。
そして、上記一般式(9A)および(9B)に関して説明したとおり、ポリアニリンの酸化重合においては、フェニレンジアミン型構造単位と、キノンジイミン型構造単位とが交互に連結された構造が主に形成され、そのような構造が好ましいから、ポリアニリンの酸化重合においては、一般式(10)においても、フェニレンジアミン型構造単位と、キノンジイミン型構造単位とが交互に連結された構造が主に形成されるのであって、そのような交互連結構造が好ましいと考えられる。
上記一般式(9A)と一般式(10)とは、単位構造が水素を有するか否かの観点から構造を分けて記載するか否かの表現形式において異なるのみであるから、両方の式は、実質的に同じポリマーを意味する。[−A −]および[−A −]が[−A1A −]に対応し、[−A −]および[−A −]が[−A2A −]に対応する。rはgとjの和であり、sはhとkの和である。
上記一般式(10)中のモノマー残基Aは、下記一般式(11)で表される:
上記一般式(10)中のモノマー残基Aは、下記一般式(12)で表される:
は、以下の一般式(13)で表される:
は、以下の一般式(14)で表される:
上記式において、R21は、以下の一般式(21)で表される置換基である:
22は、以下の一般式(22)で表される置換基である:
23は、以下の一般式(23)で表される置換基である:
24は、以下の一般式(24)で表される置換基である:
25は、以下の一般式(25)で表される置換基である:
26は、以下の一般式(26)で表される置換基である:
27は、以下の一般式(27)で表される置換基である:
28は、以下の一般式(28)で表される置換基である:
ここで、M〜Mはそれぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択され、M〜M12はそれぞれ独立して、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択される、ただし、M〜M12のうちの少なくとも1つがアルカリ土類金属である場合には、そのアルカリ土類金属は、それぞれ、M〜M12のうちの2つが一緒になった構造となっている。好ましい実施形態においては、M〜Mは同一であり、M、M、M、M11は同一であり、そしてM、M、M10、M12は同一である。さらに好ましい実施形態においては、M〜Mがそれぞれ水素原子である。
31〜R38は、各々独立してハロゲン原子、炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素原子数1〜15のアルコキシ基、炭素原子数1〜15のアルキルチオ基、炭素原子数1〜15のアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルキル基の炭素原子数が1〜15のカルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択される。好ましい実施形態においては、R21〜R24は同一であり、R25〜R28は同一であり、R31〜R34は同一であり、そしてR35〜R38は同一である。別の好ましい実施形態においては、R31〜R38がそれぞれ炭素原子数1〜15のアルキル基または炭素原子数1〜15のアルコキシ基である。
〜mはそれぞれ独立して1〜4の整数であり、n〜nはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、mとnの和は1〜4であり、mとnの和は1〜4であり、mとnの和は1〜4であり、mとnの和は1〜4であり、mとnの和は1〜4であり、mとnの和は1〜4であり、mとnの和は1〜4であり、そしてmとnの和は1〜4である。好ましい実施形態においては、m〜mは同一であり、m〜mは同一であり、n〜nは同一である、そしてn〜nは同一である。別の実施形態においては、m〜mがそれぞれ1であり、そしてn〜nがそれぞれ0または1である。
(用途)
本発明の製造方法により得られるポリアニリンは、導電性ポリアニリンの用途として従来公知の各種用途に使用することができる。具体的には、例えば、帯電防止剤として使用することができる。
(帯電防止剤)
本発明の製造方法により得られるポリアニリンを帯電防止剤に使用する方法としては、従来の導電性ポリアニオンが帯電防止剤に用いられていた各種公知の方法を採用することができる。例えば、水あるいはその他適当な溶剤中に、本発明の製造方法により得られるポリアニリンを溶解または分散させたものを基材にコーティングすれば、その基材の表面に帯電防止作用が付与される。基材としては、帯電防止作用が望まれる任意の固体物質が挙げられる。具体例としては、例えば、高分子フィルム、高分子繊維、高分子樹脂成形品などが挙げられる。
コーティング方法としては、従来のポリアニリンを基材にコーティングする方法として使用されている任意の方法が、本発明の製造方法により得られるポリアニリンにおいても使用可能である。具体例としては、例えば、スピンコート、ディップコートなどが挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定される訳ではない。
(導電性の測定方法)
本発明の製造方法により得られるポリアニリンの導電性は、その電気伝導度を下記方法で測定することで確認した。
(試験片の作成)
実施例1A、2、3A:測定するポリアニリンの10mg/mL水溶液をドロップキャスト法で下記基板のスリット上に薄膜を作成し、温風により乾燥させた。
実施例1B、3B、3C:得られたポリアニリン1mgに対してピリジン0.0025mmolを加え、さらに水を加え1%水溶液とし、ドロップキャスト法で下記基板のスリット上に薄膜を作成し、温風により乾燥させた。
基板:長さ5mm×幅30mmのガラス基板上に厚み150nmに製膜された幅200μmスリット入りITO基盤
(電気伝導度の測定)
絶縁抵抗計(CUSTOM社製 CX−180N)を用いて、2端子法により測定した。
(合成例1)
(合成例1A)
(3−ニトロフェニルホスホン酸の合成)
フラスコにフェニルホスホン酸10.0g(0.064mol)、98%硫酸40.8mLを入れ、完全に溶解させて、5℃まで冷却した後、攪拌しながらそれに98%硫酸4.0mLと60%硝酸5.2mL(0.068mol)の混合液を少量ずつ滴下しながら加えた。滴下中の温度は5〜10℃で行い、滴下時間は40分間で行った。その後3℃でさらに2時間反応させた。その後、水100gをゆっくり加え固体を析出させた。固体を桐山ろうとでろ別し、133Paの減圧下40℃で乾燥させ、白色板状固体の3−ニトロフェニルホスホン酸を11.58g(0.057mol,収率89%)得た。これ以上の精製はせずにそのまま次の反応に用いた。
得られた3−ニトロフェニルホスホン酸のH−NMR測定結果を下記に記す。
H−NMR(DO,400MHz):δ7.71−7.76(1H,m),8.09−8.15(1H,m),8.37−8.39(1H,m),8.54−8.58(1H,m).
(合成例1B)
(3−アミノフェニルホスホン酸の合成)
フラスコ内を乾燥後、窒素雰囲気下において3−ニトロホスホン酸1.25g(6.15mmol)を入れた。次に、5%Pd−C160mgを入れ、メタノール5mLを加えた。室温で攪拌し、系内を水素雰囲気下にした。2時間後、さらにメタノール5mLを加えた。さらに5時間反応させ、反応終了後、セライトを用いてろ別し、ろ液を溶媒留去した。133Paの減圧下室温で乾燥し、茶色液体の3−アミノフェニルホスホン酸527mg(3.04mmol,収率49%)を得た。これ以上の精製はせずにそのまま次の反応に用いた。
得られた3−アミノフェニルホスホン酸のH−NMR測定結果を下記に記す。
H−NMR(DO,400MHz):δ7.52−7.54(1H,m),7.61−7.66(1H,m),7.69−7.73(1H,m),7.80−7.85(1H,m).
(実施例1A)
(ポリ(アニリン−2−ホスホン酸)の合成)
フラスコに3−アミノフェニルホスホン酸100mg(0.58mmol)、水1.16mLを入れ、1M−NH水溶液1.16mL(1.16mmol)を加え、攪拌しながら5℃まで冷却し、1.25M−(NH水溶液0.58mL(0.73mmol)を30分間で滴下した。得られた混合物をさらに5℃で24時間保持し、反応を終了させた。得られた反応混合物をアセトン50mL中に加え固体を析出させた。室温で30分攪拌した後、桐山ろうとで固体をろ別し、メタノール数mLで洗浄した。得られた固体を133Paの減圧下40℃で乾燥し、緑色固体95mgを得た。
得られたポリ(アニリン−2−ホスホン酸)粗製品の導電性は上記「導電性の測定方法」に記載した方法により測定した。結果を表1に記す。
(精製およびイオン交換操作)
上記粗製品95mgを水1mLに溶解させ、ゲル濾過カラム(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製PD−10)に通した。その後、イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバーライト200CT)0.1gを加え、振とう機で1時間振とうした後に、ろ過により固形物を除く操作を3回くり返した。得られた水溶液をロータリーエバポレーターを用い脱水し、固体45mgを得た。得られたポリ(アニリン−2−ホスホン酸)の導電性は上記「導電性の測定方法」に記載した方法により測定した。結果を表1に記す。
また、得られた重合物はFT−IRスペクトル(図7)およびUV−Vis−NIRスペクトル(図8)で確認した。UV−Vis−NIRスペクトルから原料の3−アミノフェニルホスホン酸(図2)と比較して、より長波長領域にも吸収が確認され原料が重合しポリマーが得られた事を確認した。
(実施例1B)
(ポリ(アニリン−2−ホスホン酸)の合成)
フラスコに3−アミノフェニルホスホン酸 260mg(1.50mmol)、2.5Mピリジン水2.4mL(6.00mmol)を入れ溶解させた。0℃まで冷却した後、(NH 428mg(1.89mmol)を水1.67mLに溶解させた水溶液を1時間で滴下した。混合物をさらに0℃で93時間撹拌し、反応を終了させた。
(精製およびイオン交換操作)
得られた反応生成物に1M塩酸7mLを加えておよそ60秒間軽く攪拌した後、遠心分離器で固体と液体に分離した。上澄みを除去した後、固体に1M塩酸6mLを加えておよそ60秒間軽く攪拌した後、遠心分離器で固体と液体に分離した。同様の上澄み除去、塩酸添加・攪拌および遠心分離の操作をさらに4回行った。その後、得られた固形物を133Paの減圧下、40℃で乾燥し、固体123mgを得た。得られたポリ(アニリン−2−ホスホン酸)の導電性は上記「導電性の測定方法」に記載した方法により測定した。結果を表1に記す。
また、得られた重合物はFT−IRスペクトル(図9)およびUV−Vis−NIRスペクトル(図10)で確認した。UV−Vis−NIRスペクトルから原料の3−アミノフェニルホスホン酸(図2)と比較して、より長波長領域にも吸収が確認され原料が重合しポリマーが得られた事を確認した。
(合成例2)
(合成例2A)
(2−アミノフェニルホスホン酸ジエチルの合成)
フラスコ内を乾燥後、窒素雰囲気下においてNaCO 407mg(3.84mmol)、Pd(OAc) 78mg(0.35mmol)、2−ブロモアニリン0.38mL(3.49mmol)、ジエチルホスファイト 0.9mL(6.99mmol)、キシレン 3mLを入れた。混合物を120℃で17時間撹拌後、室温に冷却してから、固形物をセライトでろ別し、濾滓をCHClで洗浄した。得られたろ液と濾滓の洗浄液を混合し、溶媒留去した後、カラムクロマトグラフィーで精製し、840mgの黄色液体を得た。その後、残留しているジエチルホスファイトを留去するためクーゲルロール蒸留(100℃/133Pa×20分)を行い、黄色液体の2−アミノフェニルホスホン酸ジエチル653mg(2.85mmol,収率82%)を得た。
得られた2−アミノフェニルホスホン酸ジエチルのH−NMR測定結果を下記に記す。
H−NMR(CDCl,400MHz):δ1.32(6H,t,J=6.9Hz),4.00−4.21(4H,m),5.15(2H,brs),6.63−6.72(2H,m),7.24−7.29(1H,m),7.44(1H,ddd,J=14.5,7.8,1.4Hz).
(合成例2B)
(2−アミノフェニルホスホン酸塩酸塩の合成)
フラスコに2−アミノフェニルホスホン酸ジエチル 2.29g(10mmol)を入れ、氷浴で冷却後、35%塩酸 6.3mL(75mmol)を加えた。得られた混合溶液を85℃で7時間撹拌した後、100℃に昇温し、1時間保持した。得られた反応溶液を室温に冷却し、トルエンを加え溶媒留去した。得られた固形物を133Paの減圧下、室温で乾燥し、2−アミノフェニルホスホン酸塩酸塩の固体 2.04g(9.74mmol,収率97%)を得た。
得られた2−アミノフェニルホスホン酸塩酸塩のH−NMR測定結果を下記に記す。H−NMR(DO,400MHz):δ7.41−7.45(1H,m),7.53−7.69(2H,m),7.84(1H,ddd,J=13.4,7.8,1.4Hz).
(実施例2)
(ポリ(アニリン−2−ホスホン酸)の合成)
フラスコに2−アミノフェニルホスホン酸塩酸塩 173mg(0.83mmol)、水 2.00mLを入れ、1M−NH水溶液 2.00mL(2.00mmol)を加え、攪拌しながら5℃まで冷却後、1.25M−(NH水溶液1.00mL(1.25mmol)を30分間で滴下した。得られた混合物をさらに5℃で24時間保持し、反応を終了させた。得られた反応混合物をアセトン50mLに加え固体を析出させた。室温で30分攪拌した後、桐山ろうとで固体をろ別し、メタノール数mLで洗浄した。得られた固形物を133Paの減圧下、40℃で乾燥し、緑色固体197mgを得た。
得られたポリ(アニリン−2−ホスホン酸)粗製品の導電性は上記「導電性の測定方法」に記載した方法により測定した。結果を表1に記す。
(精製およびイオン交換操作)
上記粗製品150mgを実施例1Aの精製操作と同様の操作を行い、固体105mgを得た。得られたポリ(アニリン−2−ホスホン酸)の導電性は上記「導電性の測定方法」に記載した方法により測定した。結果を表1に記す。
また、得られた重合物はFT−IRスペクトル(図11)およびUV−Vis−NIRスペクトル(図12)で確認した。UV−Vis−NIRスペクトルから原料の2−アミノフェニルホスホン酸塩酸塩(図4)と比較して、より長波長領域にも吸収が確認され原料が重合しポリマーが得られた事を確認した。
(合成例3)
(合成例3A)
(4−メトキシ−3−ニトロフェニルホスホン酸ジエチルの合成)
フラスコ内を乾燥後、窒素雰囲気下において4−ブロモ−2−ニトロアニソール 804mg(3.47mmol)、NaCO 405mg(3.82mmol)、Pd(OAc) 78mg(0.35mmol)、ジエチルホスファイト 0.9mL(6.99mmol)、キシレン3mLを入れた。混合物を120℃で24時間撹拌し、室温に冷却後、固形物をセライトでろ別し、濾滓をCHClで洗浄した。得られたろ液と濾滓の洗浄液を混合し、溶媒留去した後、カラムクロマトグラフィーで精製し、807mgの黄色液体を得た。その後、残留しているジエチルホスファイトを留去するためクーゲルロール蒸留(100℃/133Pa×30分)を行い、黄色液体の4−メトキシ−3−ニトロフェニルホスホン酸ジエチル 689mg(2.38mmol,収率69%)を得た。
得られた4−メトキシ−3−ニトロフェニルホスホン酸ジエチルのH−NMR、31P−NMR、HRMSおよびFT−IRの測定結果を下記に記す。
H−NMR(CDCl,400MHz):δ1.30(6H,t,J=6.9Hz),3.98(3H,s),4.01−4.19(4H,m),7.16(1H,dd,J=8.5,3.2Hz),7.92−7.98(1H,m),8.19(1H,brd,J=13.3Hz).
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ16.22(d,J=6.7Hz),56.70,62.46(d,J=4.8Hz),113.49(d,J=15.3Hz),120.73(d,J=198.4Hz),129.13(d,J=12.5Hz),137.50(d,J=10.5Hz),139.45(d,J=18.2Hz),155.53(d,J=2.9Hz).31P−NMR(CDCl,162MHz):δ16.33.
HRMS(FAB):m/z 290.0789([M+H],C1117NO calcd.290.0788).
FT−IR(ATR):2984,2907,1610,1531,1247,1012,960cm−1
(合成例3B)
(3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸ジエチルの合成)
フラスコ内を乾燥後、窒素雰囲気下において4−メトキシ−3−ニトロフェニルホスホン酸ジエチル 1.14g(3.9mmol)、メタノール 5mLを加え、5%Pd−C 88mgを加えた後、室温で攪拌し、系内を水素雰囲気下にした。4.5時間後、さらに5%Pd−Cを加え、2時間室温で撹拌し、反応を終了させた。得られた反応混合物をセライトを用いてろ別し、ろ液を溶媒留去したところ、830mgの茶色液体3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸ジエチルを得た。
得られた3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸ジエチルのH−NMR、31P−NMR、HRMSおよびFT−IRの測定結果を下記に記す。
H−NMR(CDCl,400MHz):δ1.26(6H,t,J=6.9Hz),3.82(2H,brs),3.86(3H,s),3.94−4.06(4H,m),6.83(1H,dd,J=8.2,4.1Hz),7.05(1H,dd,J=1.8,13.7Hz),7.11(1H,ddd,J=1.8,8.2,13.7Hz).
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ16.20(d,J=6.7Hz),55.41,61.78(d,J=4.8Hz),109.76(d,J=18.2Hz),117.54(d,J=12.5Hz),119.34(d,J=192.7Hz),123.10(d,J=10.5Hz),135.94(d,J=19.2Hz),150.45(d,J=3.8Hz).
31P−NMR(CDCl,162MHz):δ20.47.
HRMS(FAB):m/z260.1045([M+H],C1119NOcalcd.260.1046).
FT−IR(ATR):3467,3329,2980,1620,1584,1511,1285,1223,1015,955cm−1
(合成例3C)
(3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩の合成)
上記合成例3Bで得られた3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸ジエチルに、35%塩酸5mL(60mmol)を加え、90℃を15時間保持し、反応を終了させた。得られた反応混合物の溶媒を留去し、固形物を133Paの減圧下、室温で乾燥し、672mg(2.80mmol,2−step収率72%)の3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩の固体を得た。これ以上の精製はせずにそのまま次の反応に用いた。
得られた3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩のH−NMR、31P−NMR、HRMSおよびFT−IRの測定結果を下記に記す。
H−NMR(DO,400MHz):δ3.98(3H,s),7.27(1H,dd,J=8.5,2.8Hz),7.70(1H,dd,J=12.8,1.8Hz),7.81(1H,ddd,J=12.8,8.7,1.8Hz).
13C−NMR(DO,100MHz):δ57.06,113.27(d,J=16.3Hz),119.48(d,J=19.2Hz),124.46(d,J=190.3Hz),126.73(d,J=12.5Hz),134.08(d,J=10.5Hz),155.92(d,J=2.9Hz).
31P−NMR(DO,162MHz):δ13.42.
HRMS(FAB):m/z 204.0422([M+H],C11NO calcd.204.0420).
FT−IR(KBr):3359,2847,1622,1502,1114,1004,946cm−1
mp:180℃(decomposed).
(実施例3A)
(ポリ(2−メトキシアニリン−5−ホスホン酸)の合成)
フラスコに3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩 150mg(0.63mmol)、水1.48mLを入れ、1M−NH水溶液 2.96mL(2.96mmol)を加え、3℃まで冷却後、1.25M−(NH水溶液 0.74mL(0.93mmol)を30分間で滴下した。得られた混合物をさらに3℃で24時間撹拌し、反応を終了させた。得られた反応物をアセトン 50mLに加え固体を析出させ、さらに室温で30分攪拌した。桐山ろうとで固体をろ別し、メタノール数mLで洗浄した。得られた固形物を133Paの減圧下、40℃で乾燥し、緑色固体184mgを得た。
得られたポリ(2−メトキシアニリン−5−ホスホン酸)粗製品の導電性は、上記「導電性の測定方法」に記載した方法により測定した。結果を表1に記す。
(精製およびイオン交換操作)
上記粗製品85mgを実施例1Aの精製操作と同様の操作を行い、固体45mgを得た。得られたポリ(2−メトキシアニリン−5−ホスホン酸)の導電性は上記「導電性の測定方法」に記載した方法により測定した。結果を表1に記す。
また、得られた重合物はFT−IRスペクトル(図13)およびUV−Vis−NIRスペクトル(図14)で確認した。UV−Vis−NIRスペクトルから原料の3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩(図6)と比較して、より長波長領域にも吸収が確認され原料が重合しポリマーが得られた事を確認した。
(実施例3B)
(ポリ(2−メトキシアニリン−5−ホスホン酸)の合成)
フラスコに3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩 300mg(1.25mmol)、2.5Mピリジン水1.60mL(4.00mmol)を入れて溶解させた。−5℃まで冷却後、(NH 360mg(1.58mmol)を水1.42mLに溶解させた水溶液を1時間で滴下した。混合物をさらに−5℃で93時間撹拌し、反応を終了させた。
(精製およびイオン交換操作)
得られた反応生成物に水8mLを加え、さらに1M塩酸を数滴加えてpH1とした後、10分間攪拌した。それを遠心分離器で固体と液体に分離した。上澄みを除去した後、固体に水4mL、1M塩酸1mLを加えておよそ60秒間軽く攪拌した後、遠心分離器で固体と液体に分離した。同様の上澄み除去、塩酸添加・攪拌および遠心分離の操作をさらに5回行った。その後、得られた固形物を133Paの減圧下、40℃で乾燥し、固体46mgを得た。得られたポリ(2−メトキシアニリン−5−ホスホン酸)の導電性は上記「導電性の測定方法」に記載した方法により測定した。結果を表1に記す。
また、得られた重合物はFT−IRスペクトル(図15)およびUV−Vis−NIRスペクトル(図16)で確認した。UV−Vis−NIRスペクトルから原料の3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩(図6)と比較して、より長波長領域にも吸収が確認され原料が重合しポリマーが得られた事を確認した。さらに、1000nm以上にポーラロンバンドに基づく吸収が高い値で観測され、高導電性のポリアニリンが得られたことが確認された。
(実施例3C)
(ポリ(2−メトキシアニリン−5−ホスホン酸)の合成)
フラスコに3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩 100mg(0.42mmol)、2.5Mピリジン水0.53mL(1.33mmol)を入れて懸濁させた。−5℃まで冷却した後、(NH 120mg(0.53mmol)を水0.47mLに溶解させた水溶液を30分間で滴下した。混合物をさらに−5℃で24時間撹拌し、反応を終了させた。
(精製およびイオン交換操作)
得られた反応生成物に1M塩酸3mLを加えておよそ60秒間軽く攪拌した後、遠心分離器で固体と液体に分離した。上澄みを除去した後、固体に1M塩酸3mLを加えておよそ60秒間軽く攪拌した後、遠心分離器で固体と液体に分離した。同様の上澄み除去、塩酸添加・攪拌および遠心分離の操作をさらに4回行った。その後、得られた固形物を133Paの減圧下、60℃で乾燥し、固体65mgを得た。得られたポリ(2−メトキシアニリン−5−ホスホン酸)の導電性は上記「導電性の測定方法」に記載した方法により測定した。結果を表1に記す。
また、得られた重合物はFT−IRスペクトル(図17)およびUV−Vis−NIRスペクトル(図18)で確認した。UV−Vis−NIRスペクトルから原料の3−アミノ−4−メトキシフェニルホスホン酸塩酸塩(図6)と比較して、より長波長領域にも吸収が確認され原料が重合しポリマーが得られた事を確認した。さらに、1000nm以上にポーラロンバンドに基づく吸収が高い値で観測され、高導電性のポリアニリンが得られたことが確認された。
上記各実施例の導電性の測定値を非特許文献1(Chan et al,Journalof the American Chemical Society,117,8517(1995))中で製造されたpolymer5〜7(自己ドープ型ポリ(o−アミノベンジルホスホン酸)の導電性の値(非特許文献1の8520頁、表1に記載された値)と比較した。その結果を表1に記す。
実施例1A、1B、2、3A、3B、3Cのポリアニリンは、精製前または精製後において帯電防止剤として充分な電気伝導度を示しており、非特許文献1のポリ(o−アミノベンジルホスホン酸)よりも、電気伝導度が高く導電性に優れていることが分かる。
以下の表2に、実施例と非特許文献1のポリアニリン合成との比較結果をまとめて示す。
(帯電防止効果の確認)
実施例3Cで得たポリ(2−メトキシアニリン−5−ホスホン酸)の帯電防止剤としての効果を以下に評価した。
(合成例4)
(帯電防止剤溶液Aの調整)
実施例3Cで得たポリ(2−メトキシアニリン−5−ホスホン酸)150mg(0.739mmol)に、超純水13.5mLおよび1M−ピリジン水溶液1477μL(1.5 mmol)を加えて溶解させて、帯電防止剤溶液Aを得た。
(合成例5)
(帯電防止剤溶液Bの調整)
実施例3Cで得たポリ(2−メトキシアニリン−5−ホスホン酸)150mg(0.739mmol)に、超純水12.78mL、1M−2,2,2−トリフルオロエチルアミン水溶液1773μL(1.773mmol)および1M−アンモニア水溶液443μL(0.443mmol)を加えて溶解させ、帯電防止剤溶液Bを得た。
(実施例4)
(レジストパターンの形成)
電子線ポジ型レジスト材料(ZEP520−A、日本ゼオン株式会社製)を石英基板上に3000rpmで30秒間スピンコートしてレジスト材料の薄膜を形成してサンプルを作製した。得られた基板上のレジスト材料の薄膜中に含まれる溶媒を揮発させて除去するためにサンプルを180℃で3分間加熱してプリベークした。さらにそのサンプルの上に、帯電防止剤溶液Aを回転数2000rpmで60秒間スピンコートして帯電防止膜を形成させた。そのサンプルに窒素ガスを吹きかけて帯電防止膜上の余分な帯電防止剤を吹き飛ばした。その後、電子ビーム描画装置(ELS−7700,加速電圧75kV;株式会社エリオニクス製)で石英基板の中心に電子線露光量300μC/cmにて100μm×100μmの正方形のパターンを描画した。さらに、その正方形の1辺から1μm離れたところに電子線露光量140μC/cmにて線幅1μm、長さ100μmの直線を描画し、さらにその直線と平行にピッチ2μmの間隔で9本の同様の直線を描画して、正方形の横に10本の直線が平行に並べられたラインアンドスペースパターンを形成した。電子線照射後に、サンプルを、アルカリ水溶液である2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(NMD−3;東京応化工業株式会社製)に30秒間浸して帯電防止膜を溶かした。その後、サンプルを蒸留水で30秒間リンスした後、窒素ガスを吹きかけて水を飛ばして乾燥させた。現像液(ZMD−N50、日本ゼオン株式会社製)中にサンプルを浸漬して60秒間現像した。その後、サンプルを、洗浄液(ZMD−B、日本ゼオン株式会社製)で60秒間リンスしてレジストパターンを得た。得られたレジストパターンを光学顕微鏡で観察し、写真を撮影した。得られた写真を図19に示す。
(実施例5)
(レジストパターンの形成)
帯電防止剤溶液Aを帯電防止剤溶液Bに変更し、帯電防止膜を溶かす液としての2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を蒸留水に代えたことと蒸留水での30秒間のリンスを行わなかったこと以外は実施例4と同様の操作をして、レジストパターンを得た。得られたレジストパターンを光学顕微鏡で観察し、写真を撮影した。得られた写真を図20に示す。
(比較例1)
電子線ポジ型レジスト材料(ZEP520−A、日本ゼオン株式会社製)を石英基板上に3000rpmで30秒間スピンコートしてレジスト材料の薄膜を形成してサンプルを作製した。得られた基板上のレジスト材料の薄膜中に含まれる溶媒を揮発させて除去するためにサンプルを180℃で3分間加熱してプリベークした。その後、電子ビーム描画装置(ELS−7700,加速電圧75kV;株式会社エリオニクス製)で石英基板の中心に電子線露光量300μC/cmにて100μm×100μmの正方形のパターンを描画し、その正方形の1辺から1μm離れたところに電子線露光量140μC/cmにて線幅1μm、長さ100μmの直線を描画し、さらにその直線と平行にピッチ2μmの間隔で9本の同様の直線を描画して、正方形の横に10本の直線が平行に並べられたラインアンドスペースパターンを形成した。電子線照射後に、現像液(ZMD−N50、日本ゼオン株式会社製)中にサンプルを浸漬して60秒間現像した。その後、サンプルを、洗浄液(ZMD−B、日本ゼオン株式会社製)で60秒間リンスしてレジストパターンを得た。得られたレジストパターンを光学顕微鏡で観察し、写真を撮影した。得られた写真を図21に示す。
帯電防止剤を用いなかった比較例1のレジストパターン(図21)においては、10本の直線が正方形から大きくずれていた。特に図21中の正方形の右上角の付近において、そのずれは大きく、最大で約10μmのずれが観測された。すなわち、チャージアップによる設計パターンからの大きいズレが観察された。他方、帯電防止剤溶液Aを用いた実施例4のレジストパターン(図19)および帯電防止剤溶液Bを用いた実施例5のレジストパターン(図20)においては、10本の直線が正方形からずれることなく形成されていた。このように、帯電防止剤溶液Aまたは帯電防止剤溶液Bを用いることにより、チャージアップによる設計パターンからのズレが顕著に低減された。
本発明の製造方法は、非特許文献例1に比べ重合前の原料合成における収率も高く、精製手段も容易である。本発明の製造方法は、非特許文献例1における方法と比べて、より簡便で実用的な方法であることがわかる。特に合成例1および合成例2の方法においては、ステップ数が1つ少なくなる点で有利であり、中でも合成例2の方法においては収率が非常に高い点で非常に有利である。
本発明によれば自己ドーピング機能を有する新規な水溶性ポリアニリンを従来の方法よりも容易に、高収率かつ安価に得ることができる。また、得られたポリアニリンは水溶性という特徴を有し、π電子系を介する電子伝導性とイオン伝導性を有する導電性ポリマーであり、キャスト法などの成膜方法により容易に高導電性ポリマー薄膜を形成することができる。本発明の製造方法により得られるポリマーは、帯電防止剤、静電気防止剤、プラスチック電極の電極材料、EMI材料、有機強磁性体、各種センサー等の様々な用途に適用することができる。

Claims (16)

  1. 下記一般式(4):
    (式中、
    は、NHまたはNHXであり、Xはハロゲン原子であり、
    は、各々独立して、以下の一般式(5)で表される置換基であり、
    およびMはそれぞれ独立して水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、およびピリジニウム基よりなる群から選択され、ただし、M アルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのOに該アルカリ土類金属原子が結合していてMが存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のOを該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となり、 がアルカリ土類金属である場合には、1つのホスホン酸基中の2つのO に該アルカリ土類金属原子が結合していてM が存在しない構造となるか、または、2つのホスホン酸基のO を該アルカリ土類金属原子が架橋する構造となり、
    は、各々独立してハロゲン原子、炭素原子数1〜15のアルキル基、炭素原子数7〜34のアラルキル基、炭素原子数1〜15のアルコキシ基、炭素原子数1〜15のアルキルチオ基、炭素原子数1〜15のアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルキル基の炭素原子数が1〜15であるカルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択され、
    mは1〜4の整数であり、
    nは0〜3の整数であり、
    mとnの和は1〜4であり、
    ただし、RおよびRのいずれもRに対するパラ位には存在しない。)
    で表されるアニリンモノマー化合物または該アニリンモノマー化合物を含むアニリンモノマー混合物を重合する工程を含むポリアニリンの製造方法。
  2. およびMのうちの少なくとも1つが水素原子である請求項1に記載の方法。
  3. 前記アニリンモノマー化合物またはアニリンモノマー混合物に対して0.5〜10当量の酸化剤の存在下で前記重合工程を行う請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
  4. 溶媒の存在下で前記重合工程を行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記溶媒が、アンモニア水、ピリジン水、ピリジン、トリエチルアミン水、トリエチルアミン、水、塩酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アセトン、2−ブタノンおよびジメチルアセトアミドから選択された少なくとも1種である請求項4に記載の方法。
  6. 一般式(4)で表されるアリニンモノマー化合物を合成する工程をさらに包含し、該合成工程が、下記一般式(6):
    (式中、R1Aはニトロ基またはアミノ基であり、Xは各々独立して、ハロゲン原子である。R、mおよびnの定義は請求項1におけるR、mおよびnの定義と同じである。但し、XおよびRのいずれもR1Aのパラ位には存在しない)で表される化合物に、
    一般式(7)で表されるジアルキルホスファイト
    (式中、M1AおよびM2Aは、それぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基である。)を結合させることを含む、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 一般式(4)で表されるアリニンモノマー化合物を合成する工程をさらに包含し、該合成工程が、下記一般式(8):
    (式中、R、mおよびnの定義は、請求項1中のR、mおよびnの定義と同じである。ただし、ベンゼン環のニトロ化される炭素に対してパラの位置の炭素には置換基が存在しない。)で表される化合物をニトロ化することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  8. 1Aがアミノ基であり、前記ジアルキルホスファイトを結合させて得られた化合物のM1AおよびM2Aの部分のアルキルエステルを加水分解してアニリンモノマー化合物を得ることを包含する、請求項6に記載の方法。
  9. 1Aがニトロ基であり、前記ジアルキルホスファイトを結合させて得られた化合物のニトロ基をアミノ基に還元させてアミノ化合物を得ること、および、得られたアミノ化合物のM1AおよびM2Aの部分のアルキルエステルを加水分解してアニリンモノマー化合物を得ることを包含する、請求項6に記載の方法。
  10. さらに、前記ニトロ化により得られた化合物のニトロ基を還元してアニリンモノマー化合物を得る工程を包含する、請求項7に記載の方法。
  11. 前記重合工程の反応温度が−15℃〜70℃である請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. mが1であり、nが0または1である請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  13. さらに、前記重合反応生成物に対してイオン交換処理を行って、該重合反応生成物中のホスホン酸金属塩、ホスホン酸アンモニウム塩またはホスホン酸ピリジニウム塩の金属原子、アンモニウム基またはピリジニウム基を水素原子に置換する工程を包含する請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 請求項13に記載の方法であって、前記イオン交換処理工程が、前記重合反応生成物に酸性水溶液を添加して前記ホスホン酸塩化合物の塩の部分を水素に置換する工程であり、該イオン交換処理工程の後にポリアニリン化合物を該水溶液から分離する工程を行い、さらに、その後、酸性水溶液を添加して前記ホスホン酸塩化合物の塩の部分を水素に置換する工程およびポリアニリン化合物を該水溶液から分離する工程を繰り返して行う、方法。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法で製造されたポリアニリン。
  16. 請求項15に記載のポリアニリンを含有する帯電防止剤。
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