JP3766049B2 - 耐熱性ポリパラキシリレン誘導体膜の製造方法 - Google Patents

耐熱性ポリパラキシリレン誘導体膜の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パラシクロファン化合物を用いて化学蒸着法により耐熱性ポリパラキシリレン誘導体膜を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
下記一般式2で表される(2,2)−パラシクロファン化合物は、その構造の特徴により、下記反応式Iに示すように、600〜700℃に加熱すると容易に分解し、キシリレン−ラジカルとなり、これは物体の表面で重合し、ポリパラキシリレンよりなるコーティング膜を形成する。
このコーティング方法によればあらゆる形状の被着体にコンフォーマルなコーティングが可能である。また、この方法で形成された膜はガスバリアー性、絶縁性、耐薬品性に優れているため、電子部品、宇宙・航空機器部品、あるいは医療器具のコーティングに広く用いることができる。
【0003】
【化4】
【0004】
(式2中、X1、X2は水素、低級アルキル基、またはハロゲン元素を表し、X1、X2は同一でも異なっていてもよい。)
【0005】
【化5】
【0006】
現在、膜原料として工業的に使用されている(2,2)−パラシクロファン化合物は、(2,2)−パラシクロファン(一般式2においてX1 ,X2 =水素)、ジクロロ−(2,2)−パラシクロファン(一般式2において、X1 =水素、X2 =塩素)およびテトラクロロ−(2,2)パラシクロファン(一般式2においてX1 ,X2 =塩素)である。(2,2)パラシクロファンからはポリパラキシリレンが、ジクロロ−(2,2)−パラシクロファンからはポリモノクロロパラキシリレンが、及びテトラクロロ−(2,2)−パラシクロファンからはポリジクロロパラキシリレンが生成する。
【0007】
これらの原料が使用されている割合は、ポリパラキシリレン膜の物性、及びコーティングの容易さで全体の約90%をジクロロ−(2,2)−パラシクロファンが占めている。
【0008】
しかし、半導体、電子部品分野では材料に塩素を嫌う傾向が強く、そのため塩素を含まない(2,2)−パラシクロファンを使ってコーティングする用途も拡大する傾向にある。また、テトラクロロ−(2,2)−パラシクロファンは以下に述べる理由で使用量はごく僅かである。
【0009】
このコーティング膜は上記したように非常に優れた性能にもかかわらず、その使用に際し、一つの大きな問題点がある。それは、ポリパラキシリレン構造において、ベンゼン核を結びつけている−CH2 −CH2 −構造のメチレン基が、一般的にいって、酸化され易いことに帰因する。また、この酸化は温度上昇により加速される。
【0010】
したがって、不活性ガスや真空中の酸素のない環境では高温領域で使用可能であるが、酸素の存在する環境では使用に際し、温度的な限界がある。
【0011】
ただし、置換基の種類、数によっては耐熱性に差が生じてくる。因みに、置換基を持たないポリパラキシリレン膜の最高使用温度は100℃、ベンゼン核に1つの塩素置換基を持つポリモノクロロパラキシリレン膜の最高使用温度は120℃といわれている。一方、ベンゼン核に2つの塩素置換基を持つポリジクロロパラキシリレン膜の最高使用温度は140℃といわれ、かなりの耐熱性を有し、ポリパラキシリレン膜では高耐熱性グレードに位置づけられている。
【0012】
事実、この耐熱性に惹かれ、テトラクロロ−(2,2)−パラシクロファンをフェライトコアのコーティング材料として使用しようとする試みもあった。だが、このテトラクロロ−(2,2)−パラシクロファンの熱分解で生じるビラジカルの重合性が強すぎること、そのベーパーが重いことから拡散がし難く、コーティングチャンバーの入り口付近で重合してしまい、被着体に効率よく、均一なコーティングを行うことが困難であった。このため、現在ではそのような検討もなされていない。これらの材料は、特殊用途に少量使用されているだけである。
【0013】
ポリパラキシリレン膜の耐熱性向上の試みは、例えば米国特許第4,176,209号、米国特許第5,267,390、および米国特許第5,270,082号などに示されるように種々なされており、パラシクロファンに酸化防止剤を混ぜて、蒸着、成膜を行うこと等が提案されている。
【0014】
しかし、これらの文献に開示されている技術でも十分な解決策とはなっていない。また、膜特性を損なう恐れもある。
【0015】
一方、(2,2)−パラシクロファンの4つのメチレン基の水素全てをフッ素に置き代えた下記式5の構造のオクタフルオロ−(2,2)−パラシクロファンをコーティング材料に用い、
【0016】
【化6】
【0017】
その化学蒸着で作製した下記式6のポリテトラフルオロパラキシリレン膜(式6)は、優れた耐熱性を有することが以前から知られており、その化合物(式6)の製造方法について、例えば米国特許第3,268,599号、米国特許第3,274,267号、米国特許第3,297,591号、特開平5−255149号、特開2001−213818および特開2001−226300号などに示されるように、いくつかの検討がなされている。
【0018】
【化7】
【0019】
(式中のnは重合数を表す。)
【0020】
また、本発明者は、(2,2)−パラシクロファンの4つのメチレン基のうち、対角線の2つのメチレン基の水素をフッ素に置き換えた下記式7のテトラフルオロ(2,2)−パラシクロファンをコーティング材料に用い、その化学蒸着で作製した下記式8のポリ−α,α−ジフルオロパラキシリレン膜は優れた耐熱性を有することを明らかにした(特開平9−25252号公報及び特開平10−195181号公報)。
【0021】
【化8】
【0022】
【化9】
【0023】
(式中nは重合数を表す。)
【0024】
しかし、上記2つのコーティング材料は、その製造に際しフッ素化工程を必要とするため、その製造コストが上昇することは避けられない。また、重合に際しても熱分解で生じたビラジカルの重合速度が非常に遅いため、重合を速めるためには被着体を冷却するなどの特別の操作が必要となる。
【0025】
従って、低価格の汎用品のコーテイングに使用は難しいのが現状である。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
ポリパラキシリレン膜のさらなる応用範囲拡大のためには、その使用温度範囲を拡大することが必要である。しかも、この解決手段がコーティング容易性を損なうものであってはならない。また、経済性を大きく損なうものであってはならない。
【0027】
本発明の目的は、蒸着性を損なうことなく、また経済性が問題となることもなく、耐熱性ポリパラキシリレン誘導体膜を製造する方法を提供することである。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、特別な蒸着操作を施すことなく、かつコーティング材料の大きなコスト上昇を来すことなく、ポリパラキシリレン膜の使用温度範囲を拡大することを目標に検討をおこなった。
【0029】
本発明者は種々の検討の結果、ポリパラキシリレン膜の成膜に際し、成膜材料である(2,2)−パラシクロファン化合物にアミノ−(2,2)−パラシクロファン化合物を混入して成膜することで、生成したポリパラキシリレン膜の耐熱性が向上することを発見した。
【0030】
すなわち上記目的は以下の本発明の構成により達成される。
(1) 下記一般式1で表されるポリパラキシリレン膜を化学蒸着法により成膜するに際し、
【0031】
【化10】
【0032】
(式1中、X1、X2は水素、低級アルキル基、またはハロゲン元素を表し、X1、X2は同一でも異なっていてもよい。nは重合数を表す。)
その原料として、下記一般式2で表される(2,2)−パラシクロファン化合物に、
【0033】
【化11】
【0034】
(式2中、X1、X2は式1と同義である。)
下記一般式3で表されるアミノ(2,2)−パラシクロファン化合物を混入して成膜する耐熱性ポリパラキシリレン誘導体膜の製造方法。
【0035】
【化12】
【0036】
(式3中、X3は水素、または低級アルキル基を表し、Y1,Y2は水素またはアミノ基を表し、Y1,Y2の両方が同時に水素となることはない。)
(2) 前記ポリパラキシリレン膜がポリパラキシリレン(一般式1においてX1、X2=水素)、モノクロロポリパラキシリレン(一般式1においてX1=水素、X2=塩素)、あるいはジクロロポリパラキシリレン(一般式1においてX1、X2=塩素)である上記(1)の耐熱性ポリパラキシリレン誘導体膜の製造方法。
(3) 前記アミノ(2,2)パラシクロファン化合物がモノアミノ(2,2)−パラシクロファン(一般式3においてY1=水素、Y2=アミノ基)、あるいはジアミノ(2,2)−パラシクロファン(一般式3においてY1,Y2=アミノ基)である上記(1)または(2)の耐熱性ポリパラキシリレン誘導体膜の製造方法。
【0039】
【発明の実施の形態】
本発明に係る耐熱性ポリパラキシリレン誘導体膜の製造方法は、下記一般式1で表されるポリパラキシリレン膜を化学蒸着法により成膜しようとする場合において、
【0040】
【化13】
【0041】
(式1中、X1、X2は水素、低級アルキル基、またはハロゲン元素を表し、X1、X2は同一でも異なっていてもよい。nは重合数を表す。)
【0042】
その原料として、下記一般式2で表される(2,2)−パラシクロファン化合物に、
【0043】
【化14】
【0044】
(式2中、X1 、X2 は式1と同義である。)
【0045】
下記一般式3で表されるアミノ(2,2)−パラシクロファン化合物を混入して成膜するものである。
【0046】
【化15】
【0047】
(式3中X3 は水素、または低級アルキル基を表し、Y1 ,Y2 は水素またはアミノ基を表し、Y1 ,Y2 の両方が同時に水素となることはない。)
【0048】
このように、(2,2)−パラシクロファン化合物にアミノ(2,2)−パラシクロファン化合物を混入して成膜することにより、製膜された薄膜の熱特性を大幅に向上させることができる。
【0049】
耐熱性は熱重量分析、示差熱分析および加熱炉中のポリパラキシリレン膜の状態を観測することで評価した。
【0050】
ポリパラキシリレン膜は、熱重量分析に際し、温度上昇させたとき酸化に基づく重量増加をした後、重量減少を示すものと、重量増加の現象が無く重量減少を示す2種類がある。ポリパラキシリレン膜及びポリモノクロロパラキシリレン膜は前者に属し、ポリジクロロパラキシリレン膜は後者に属する。これらの状態変化は耐熱性の比較の指標とすることができる。
【0051】
なお、熱重量分析の際、重量変化が生じるときに、ほぼ同時に示差熱分析で発熱が見られる。
【0052】
ポリパラキシリレン膜の耐熱性の比較の指標として、熱重量分析においては、重量変化開始の温度(以下T点とする)、及び示差熱分析においては発熱による最初のピークの立ち上がり温度(以下D点とする)及び加熱炉で加熱したときの膜の状態の比較を採用した。本発明では、これらの評価項目において、何れも顕著な効果を表し、また上記材料の何れにおいても効果があることが確認された。
【0053】
上記一般式1について説明すると、式1中、X1 、X2 は水素、低級アルキル、またはハロゲン元素のいずれかを表し、X1 、X2 は同一でも異なっていてもよい。
【0054】
このような一般式1で表されるポリパラキシリレン膜は、ポリパラキシリレン(一般式1においてX1 、X2 =水素)、モノクロロポリパラキシリレン(一般式1においてX1 =水素、X2 =塩素)、あるいはジクロロポリバラキシリレン(一般式1においてX1 、X2 =塩素)等が好ましい。
【0055】
原料として用いられるのは、上記一般式2で表される(2,2)−パラシクロファン化合物である。この式2において、X1 、X2 は式1と同義である。
【0056】
熱安定性向上に用いるアミノ−(2,2)−パラシクロファン化合物は、上記一般式3で表されるものであり、式3中X3 は水素、または低級アルキル基を表し、Y1 ,Y2 は水素またはアミノ基を表し、Y1 ,Y2 の両方が同時に水素となることはない。
【0057】
このようなアミノ−(2,2)−パラシクロファン化合物としては、モノアミノ(2,2)−パラシクロファン(一般式3においてY1=水素、Y2=アミノ基)、およびジアミノ(2,2)−パラシクロファン(一般式3においてY1,Y2=アミノ基)が代表的なものである。
【0058】
アミノ−(2,2)−パラシクロファン化合物を混合する場合の量は、少なくても効果はあるもののその度合いは小さい。一方、多ければ多いほど効果が大きいというものではなく、ある点で限界に達する。また、アミノ−(2,2)−パラシクロファン化合物だけでは、それから得られた膜は優れた耐熱性を示さない。一般に使用する量は、モノアミノパラシクロファンの場合には原料に対して質量比で1〜20%、好ましくは2〜10%である。なお、アミノ−(2,2)−パラシクロファン化合物の使用量が少ないほど経済的である。
【0059】
混合方法は、粉末状態で単に両者を混合するだけでよいが、できるだけ均一な状態とすることが望ましい。
【0060】
成膜条件は、それぞれの膜原料単独の場合と同じ蒸着プログラムを用いて行うことができる。なぜ、アミノ−(2,2)−パラシクロファン化合物がパラキシリレン膜の耐熱性向上に効果があるのか、その理由やメカニズムは現時点では明らかでない。
【0061】
ここで、使用するモノアミノ−(2,2)−パラシクロファンあるいはジアミノ−(2,2)−パラシクロファンの製法についてはいくつかの文献が見られるが、モノアミノ−(2,2)−パラシクロファンに関しては、本発明者は(2,2)−パラシクロファンをメチレン溶媒中で、メタンスルホン酸と発煙硝酸の混酸でニトロ化し、得られたモノニトロ−(2,2)−パラシクロファンを鉄−塩酸を使用し、還元する方法が収率的にも、操作的にも優れた方法であることを発見した。ジアミノ−(2,2)−パラシクロファンも同様の方法で製造することができる。
【0062】
本発明品を用いるコーティング方法によればあらゆる形状の被着体にコンフォーマルなコーティングが可能である。また、この方法で形成された膜はガスバリアー性、絶縁性、耐薬品性に優れているため、電子部品、宇宙・航空機器部品、あるいは医療器具のコーティングに広く用いることができる。
【0063】
このようにして製造されたポリパラキシリレン誘導体は、下記一般式4で表わされる。
【0064】
【化16】
【0065】
上記式4中、X1、X2は水素、低級アルキル基、またはハロゲン元素を表し、X1、X2は同一でも異なっていてもよい。X3は水素、または低級アルキル基を表し、Y1,Y2は水素またはアミノ基を表し、Y1,Y2の両方が同時に水素となることはない。また、n,m,pはそれぞれのユニットの重合数を示す。各ユニットは、それぞれX1、X2およびY1,Y2で表される置換基は、それぞれ異なっていてもよいし、それぞれのユニットにおいて異なるものが複数存在していてもよい。
【0066】
得られたポリパラキシリレン誘導体は、共重合体であり、薄膜を形成している。薄膜の膜厚としては、通常0.1〜20μm 、特に0.5〜10μm 程度である。
【0067】
【実施例】
以下に、実施例を示し、本発明の方法により形成された膜の耐熱性試験の結果を示す。本発明は実施例に限定されるものではない。
【0068】
参考例1(モノアミノ−(2,2)−パラシクロファンの合成)
(2,2)−パラシクロファン 8gを200mlの塩化メチレンに懸濁した。この溶液に、メタンスルホン酸 8gと発煙硝酸(d=1.52) 5gから成る混酸を、反応液を5℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後30分撹拌したのち、水 200mlを加えた。水層を分離後、塩化メチレン層をスチーム蒸留し、塩化メチレンを留去した。
【0069】
析出している反応物をトルエンに溶解し、そのトルエン溶液を5%苛性ソーダ水溶液50mlで3回洗浄した。その後、洗浄液が中性になるまで水洗した。以上の操作により、モノニトロ−(2,2)−パラシクロファンのトルエン溶液を得た。
【0071】
トルエン溶液を40gまで濃縮し、これに還元鉄 6g、エタノール 48ml及び水 12mlを加えて加熱、還流した。加熱、還流しながら、濃塩酸 6ml、エタノール 12ml及び水 12mlからなる溶液を滴下した。ガスクロマトグラフィー分析でニトロ体がアミノ体の1%以下になった時点で反応を終了した。
【0072】
反応液に、水 200mlを加え、ろ過し、不溶物を除去した。トルエン層と水層を分離した。トルエン溶液から希塩酸でアミノ−(2,2)−パラシクロファンを抽出した。苛性ソーダ水溶液で中和し、アミノ−(2,2)−パラシクロファンを沈殿させた。沈殿をろ過、水洗、乾燥して、粗アミノ−(2,2)−パラシクロファン 4.6gを得た。
【0073】
粗結晶4.6gを昇華し、昇華物をメタノールと共に加熱、還流した。さらに、メタノール溶液を濃縮し、濃縮液を冷凍庫中で冷却した。その後、ろ過、乾燥してアミノ−(2,2)−パラシクロファン 4.1gを得た。
【0074】
参考例2(ジアミノ−(2,2)−パラシクロファンの合成)
ジニトロ−(2,2)−パラシクロファンの合成
(2,2)−パラシクロファン 48gを200mlの塩化メチレンに懸濁した。この溶液にメタンスルホン酸 104gと発煙硝酸(d=1.50) 65gからなる混酸を、反応液を5℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後、そのまま翌朝まで撹拌した(約16時間)。反応液に水 300mlを加え、さらに苛性ソーダ水溶液を加えて中和した。水層を分離後、塩化メチレン層をスチーム蒸留し、塩化メチレンを留去した。
【0075】
析出している反応物をトルエンに溶解し、さらに苛性ソーダ水溶液で洗浄した。水洗後、トルエン溶液が33gとなるまで濃縮した。濃縮液を冷凍庫で冷却し、ろ過、メタノールで洗浄してジニトロ−(2,2)−パラシクロファン 7.4gを、さらに濾液より1.6g回収し、計9gを得た。
【0076】
ジアミノ−(2,2)−パラシクロファンの合成
上記のようにして得た、ジニトロ−(2,2)−パラシクロファン 16.9g、トルエン 100g、還元鉄 30g、エタノール 210g、水 52mlからなる溶液を加熱、還流した。加熱、還流しながら、濃塩酸 30ml、エタノール 60ml、及び水 60mlからなる溶液を滴下した。ガスクロマトグラフィー分析でニトロ体がアミノ体の1%以下になった時点で反応を終了した。
【0077】
反応液をろ過し、不溶物を除去した。この濾液に水 300mlを加え、撹拌した。水層を分離後、トルエン溶液を 39gまで濃縮し、冷凍庫で冷却した。
【0078】
ろ過、メタノール洗浄、乾燥し、7.2gを、更に濾液から2.4g回収し、計9.6gのジアミノ−(2,2)−パララシクロファンを得た。さらにこれを昇華・精製し、7.5g精製ジアミノ−(2,2)−パラシクロファンを得た。
【0079】
〔実施例1〕
(2.2)−パラシクロファン95部と、モノアミノ−(2,2)−パラシクロファン5部を混合した試料を作った。この試料を用い(2,2)−パラシクロファンの蒸着に用いる通常の蒸着プログラムで成膜した。
【0080】
耐熱性は熱重量分析、示差熱分析および加熱炉中のポリパラキシリレン膜の状態を観測することで評価した。
【0081】
ポリパラキシリレン膜の耐熱性の比較の指標として、熱重量分析においては、重量変化開始の温度(以下T点とする)、及び示差熱分析においては発熱による最初のピークの立ち上がり温度(以下D点とする)及び加熱炉で加熱したときの膜の状態の比較を採用した。
【0082】
この膜の熱分析におけるT点は282.7℃、D点は282.7℃だった。
【0083】
〔実施例2〕
ジクロロ−(2,2)−パラシクロファン 99部とモノアミノ−(2,2)−パラシクロファン 1部を混合した試料を作った。この試料を用いジクロロ−(2,2)−パラシクロファンの蒸着に用いる通常の蒸着プログラムで成膜した。この膜の熱分析におけるT点は265.3℃、D点は267.3℃であった。
【0084】
〔実施例3〕
ジクロロ−(2,2)−パラシクロファン 95部とモノアミノ−(2,2)−パラシクロファン 5部を混合した試料を作った。この試料を用い、実施例2と同様に成膜した。この膜の熱分析におけるT点は292.9℃、D点は291.1℃であった。また、この膜を電気炉中で200℃に加熱し、そのときの状態をアミノ−(2,2)−パラシクロファン化合物を混合しない場合の膜と比較したところ、耐熱性向上が認められた。比較を表2に示す。
【0085】
〔実施例4〕
ジクロロ−(2,2)−パラシクロファン 90部とモノアミノ−(2,2)−パラシクロファン 10部を混合した試料を作った。この試料を用い、実施例2と同様に成膜した。この膜の熱分析におけるT点は296.4℃、D点は295.4℃であった。
【0086】
〔実施例5〕
テトラクロロ−(2,2)−パラシクロファン 95部とモノアミノ−(2,2)−パラシクロファン 5部を混合した試料を作った。この試料を用い、テトラクロロ−(2,2)−パラシクロファンの蒸着に用いる通常の蒸着プログラムで、シリコン・ウエハー上に成膜した。この膜の熱分析におけるT点は330.6℃、D点は320.4℃であった。
【0087】
〔実施例6〕
ジクロロ−(2,2)−パラシクロファン 97.5部とジアミノ−(2,2)−パラシクロファン 2.5部を混合した試料を作った。この試料を用い、実施例2と同様に成膜した。この膜の熱分析におけるT点は291.1℃、D点は288.9℃であった。
【0088】
〔比較例1〕
(2.2)−パラシクロファンを通常の蒸着プログラムで成膜した。その膜の熱分析によるT点は206.5℃、D点は205.4℃であった。
【0089】
〔比較例2〕
ジクロロ−(2,2)−パラシクロファンを通常の蒸着プログラムで成膜した。この膜の熱分析によるT点は、232.3℃、D点は232.3℃であった。
【0090】
〔比較例3〕
テトラクロロ−(2,2)−パラシクロファンを通常のプログラムで成膜した。この膜の熱分析におけるT点は294.8℃、D点は295.8℃であった。
【0091】
本発明の実施例によって示された結果を表1、2および図1にまとめた。表1、図1には、T点、D点の向上に対する5%混合の効果を示し、表2には、加熱炉での状態観察で現れた5%混合の効果をジクロロ−(2,2)−パラシクロファンについて比較例1〜3の膜状態とともに示した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
これらの結果から、アミノ−(2,2)−パラシクロファン化合物の混合が、パラキシリレン膜の耐熱性向上に及ぼす効果が明らかである。
【0095】
即ち、(2,2)−パラシクロファンやジクロロ−(2,2)−パラシクロファンに5%程度のモノアミノ−(2,2)−パラシクロファンを混合して、蒸着することで、得られたT点、D点はポリパラキシリレン膜の中では耐熱性グレードとして評価されているテトラクロロパラキシリレン膜とほぼ等しい値となり、また、電気炉の加熱試験では前者の膜は後者の膜よりはるかに耐熱性が見られた。
【0096】
また、テトラクロロ−(2,2)−パラシクロファンに5%程度混合することで、その膜の耐熱性を更に高めることができる。有機膜で数十度の使用温度の上昇は大きな意義を持つ。
【0097】
また、蒸着プログラムも何ら変更を必要とせず、従来のプログラムをそのまま適用することができる。このため工程や、設備の変更も全くしないで済むか、ごく僅かで済む。さらに、アミノ−(2,2)−パラシクロファン化合物の使用量が少ないため、経済性が問題となることもない。
【0098】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、蒸着性を損なうことなく、また経済性が問題となることもなく、例えば、T点、D点に関しては、ポリパラキシリレンおよびジクロロポリパラキシリレン等の膜の耐熱性を、モノアミノ−(2,2)−パラシクロファンを混合することにより、耐熱性グレードとして評価されているテトラクロロパラキシリレン膜とほぼ等しい程度の温度まで引き上げ、また、電気炉の加熱試験では前者の膜は後者の膜より耐熱性を向上させることができ、さらに、テトラクロロパラキシリレン膜においてはモノアミノ−(2,2)−パラシクロファンを混合することにより、それ以上の耐熱性に向上させることができる耐熱性ポリパラキシリレン誘導体膜の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に示す各材料の、アミノパラシクロファン混合によるT点、D点の向上を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 下記一般式1で表されるポリパラキシリレン膜を化学蒸着法により成膜するに際し、
    (式1中、X1、X2は水素、低級アルキル、またはハロゲン元素を表し、X1、X2は同一でも異なっていてもよい。nは重合数を表す。
    その原料として、下記一般式2で表される(2,2)−パラシクロファン化合物に、
    (式2中、X1、X2は式1と同義である。)
    下記一般式3で表されるアミノ(2,2)−パラシクロファン化合物を混入して成膜する耐熱性ポリパラキシリレン誘導体膜の製造方法
    (式3中X3は水素、または低級アルキル基を表し、Y1,Y2は水素またはアミノ基を表し、Y1,Y2の両方が同時に水素となることはない。)
  2. 前記ポリパラキシリレン膜がポリパラキシリレン(一般式1においてX1、X2=水素)、モノクロロポリパラキシリレン(一般式1においてX1=水素、X2=塩素)、あるいはジクロロポリラキシリレン(一般式1においてX1、X2=塩素)である請求項1の耐熱性ポリパラキシリレン誘導体膜の製造方法
  3. 前記アミノ(2,2)パラシクロファン化合物がモノアミノ(2,2)−パラシクロファン(一般式3においY1=水素、Y2=アミノ基)、あるいはジアミノ(2,2)−パラシクロファン(一般式3においてY1,Y2=アミノ基)である請求項1または2の耐熱性ポリパラキシリレン誘導体膜の製造方法
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