JP6398853B2 - 衝撃吸収部材 - Google Patents

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本発明は、木材と、その木材を収納する密閉容器とを備え、衝撃荷重を受けて前記木材と密閉容器とが共に潰れることで前記衝撃荷重を吸収できるように構成された衝撃吸収部材に関する。
上記した衝撃吸収部材に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の衝撃吸収部材100は、図10に示すように、木材102と、その木材102を収納する密閉容器104とを備えている。衝撃吸収部材100は、衝撃荷重を受けたときに木材102と密閉容器104とが共に潰れることで、衝撃荷重を主に木材102の部分で吸収できるように構成されている。ここで、木材102は、使用場所の湿度によって含水率が変化する。そして、含水率が変化することで、木材102の潰れ性能、即ち、木材102の衝撃吸収性能が変化する。このため、特許文献1に記載の衝撃吸収部材100では、木材102を缶詰状の密閉容器104に収納することで、使用場所の湿度によって木材102の含水率が影響を受けないようにしている。
特開2014−184899号公報
しかし、上記した衝撃吸収部材100では、木材102は缶詰状の密閉容器104に収納されている。このため、衝撃荷重を受けて木材102と密閉容器104とが共に潰れる際、木材102が密閉容器104から排出されず、密閉容器104の内側で潰れるようになる。この結果、木材102が潰れ難くなり、木材102の潰れ方向における潰れ残り量が多くなる。このため、衝撃吸収部材100の衝撃吸収性能が低くなる。この点を改善するためには、木材102及び密閉容器104の潰れ方向における長さ寸法を増加させる必要がある。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、木材の含水率を変化させない構造で衝撃荷重を受けたときの木材の潰れ残り量を少なくできるようにして、同じサイズで衝撃吸収部材の衝撃吸収能力を向上させることである。
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。請求項1の発明は、木材と、その木材を収納する密閉容器とを備え、衝撃荷重を受けて前記木材と密閉容器とが共に潰れることで前記衝撃荷重を吸収できるように構成された衝撃吸収部材であって、前記密閉容器の所定位置には、前記木材を介して受けた衝撃荷重により破断する脆弱部が設けられており、前記脆弱部は、前記木材の潰れ方向における端面を覆う位置に設けられている
本発明によると、衝撃荷重を受けて木材と密閉容器とが共に潰れる際、その密閉容器の脆弱部は木材を介して受けた衝撃荷重により破断する。これにより、潰れた木材が破断した脆弱部から密閉容器の外部に排出されるようになる。このため、木材が密閉容器内で比較的潰れ易くなり、木材が密閉容器の内部で潰れ切る場合と比較して、木材の潰れ残り量を少なくできる。即ち、同じサイズで木材の潰れ量を大きくできるため、衝撃吸収部材の衝撃吸収能力が向上する。また、密閉容器の脆弱部は、木材の潰れ方向における端面を覆う位置に設けられているため、衝撃荷重により密閉容器の脆弱部が破断することで、密閉容器内の木材を効率的に排出できるようになる。
請求項2の発明によると、密閉容器と木材とは貫通穴を備える荷重受け部によって支持されており、前記密閉容器の脆弱部が前記荷重受け部の貫通穴と潰れ方向において重なる位置に形成されている。このため、衝撃荷重により密閉容器の脆弱部が破断して、その密閉容器から排出された木材が荷重受け部の貫通穴から外部に排出されるようになる。
請求項3の発明によると、密閉容器の脆弱部の肉厚寸法は、前記密閉容器の脆弱部以外の肉厚寸法よりも小さな値に設定されている。このため、密閉容器の脆弱部を容易に形成できるようになる。
請求項4の発明によると、密閉容器の脆弱部は溝状に形成されており、前記溝状の脆弱部の底位置に破断起点が設けられており、前記破断起点の肉厚寸法が前記密閉容器の肉厚寸法のなかで最も小さな値に設定されている。このように、脆弱部に破断起点が設けられているため、脆弱部が常に同じ位置で破断するようになる。このため、木材の排出性能も一定になる。また、請求項5の発明によると、破断起点は、直線状に形成されている。
請求項6の発明によると、密閉容器の脆弱部の材料は、前記密閉容器の脆弱部以外の部分の材料よりも強度の小さい材料が使用されている。このため、密閉容器の脆弱部を他の部分と同じ厚み寸法で形成できるようになる。
請求項7の発明によると、木材は、年輪の軸心方向に潰れることで衝撃荷重を吸収できるように構成されている。このため、木材の圧縮強度の大きい部分で衝撃荷重を受けられるようになり、車両衝突等の大きな衝撃荷重を木材により吸収できるようになる。
本発明によると、木材の含水率を変化させない構造で衝撃荷重を受けたときの木材の潰れ残り量を少なくでき、同じサイズで衝撃吸収部材の衝撃吸収能力を向上させることができる。
本発明の実施形態1に係る衝撃吸収部材を備える車両前部の模式平面図である。 本実施形態に係る衝撃吸収部材の模式平面図である。 前記衝撃吸収部材の車両への取付け構造を表す模式平断面図である。 前記衝撃吸収部材に対して車両前方衝突時の衝撃荷重が加わった様子を表す模式平断面図である。 前記衝撃吸収部材に加わる衝撃荷重と、その衝撃吸収部材の潰れ量(ストローク)との関係を表すグラフである。 変更例に係る衝撃吸収部材を表す模式平断面図である。 変更例に係る衝撃吸収部材を表す模式平断面図である。 変更例に係る衝撃吸収部材を表す模式平断面図である。 変更例に係る衝撃吸収部材を表す模式平断面図である。 従来の衝撃吸収部材を表す模式平断面図である。
[実施形態1]
以下、図1から図9に基づいて本発明の実施形態1に係る衝撃吸収部材について説明する。ここで、図中に示す前後左右、及び上下は、衝撃吸収部材が取付けられる車両の前後左右、及び上下に対応している。
<衝撃吸収部材10の概要について>
本実施形態に係る衝撃吸収部材10は、車両前方衝突時の衝撃荷重Fを受けてその衝撃荷重Fを吸収する機構である。衝撃吸収部材10は、図1に示すように、フロントバンパ(図示省略)のバンパーリインフォース3と車両2の左右のサイドメンバ5との間に配置されるクラッシュボックス(図示省略)の内側に取付けられている。
<衝撃吸収部材10の構成について>
衝撃吸収部材10は、図2、図3に示すように、角柱形の木材12と、その木材12を収納する角筒状の密閉容器20とから構成されている。木材12は、軸方向からの衝撃荷重Fを受けて密閉容器20と共に軸方向に潰れることにより、その衝撃荷重Fを吸収する部材である。木材12は、図2、図3に示すように、年輪12kの軸心方向と角柱の軸心方向とが一致するように成形されており、衝撃荷重Fを年輪12kの軸心方向で受けられるように構成されている。即ち、衝撃荷重Fは、木材12の圧縮強度の大きい部分で受けられるようになり、車両衝突等の大きな衝撃荷重Fを木材12により吸収できるようになる。ここで、木材12としては、例えば、杉材が好適に使用される。
<密閉容器20について>
密閉容器20は、木材12の含水率が使用場所の湿度によって変化しないように、図2に示すように、木材12を密閉状態で収納する容器である。密閉容器20は、木材12とほぼ等しい形状に成形された角筒部22と、その角筒部22の前端側開口を塞ぐ前平板部24と、角筒部22の後端側開口を塞ぐ後平板部25とを備えている。そして、密閉容器20の角筒部22には、前記木材12が年輪12kの軸心方向を角筒部22の軸心方向と一致するように収納されている。
密閉容器20の前平板部24は、角筒部22の前端側開口を塞いだ状態で一定寸法だけ前記角筒部22の周囲に張り出すフランジ部24fを備えている。そして、前平板部24のフランジ部24fが、図3に示すように、バンパーリインフォース3の裏面に、例えば、ボルト止めされるように構成されている。密閉容器20の前平板部24は、角筒部22と等しい肉厚寸法で成形されている。
密閉容器20の後平板部25は、図2等に示すように、角筒部22の後端側開口を塞いだ状態で一定寸法だけ前記角筒部22の周囲に張り出すフランジ部25fを備えている。そして、後平板部25のフランジ部25fが、図3に示すように、サイドメンバ5のメンバ本体5sの先端に設けられた荷重受け部50に、例えば、ボルト止めされるように構成されている。密閉容器20の後平板部25のフランジ部25f、及びその周囲は、角筒部22と等しい肉厚寸法で成形されている。
密閉容器20の後平板部25において木材12の後端面12eを覆う部分の中央には、図2に示すように、その後平板部25の他の部分よりも肉厚寸法が小さい薄肉部25uが形成されている。ここで、後平板部25の薄肉部25uと、その薄肉部25uの周囲とは、その後平板部25の外側に形成された段差25dにより区分されている。このため、密閉容器20では、その密閉容器20(後平板部25)の薄肉部25uがその他の部分と比較して強度が小さくなる。即ち、密閉容器20の後平板部25における薄肉部25uが本発明の密閉容器の脆弱部に相当する。
密閉容器20は、樹脂の射出成形品であり、例えば、角筒部22と後平板部25とが一体に成形される。また、前平板部24は、角筒部22等とは別に成形される。そして、含水率が一定に調整された木材12が密閉容器20の角筒部22に収納された状態で、角筒部22の前端側開口が前平板部24によって塞がれる。ここで、前平板部24は、例えば、溶着等により角筒部22に前端面に固定される。密閉容器20は、衝撃荷重Fを受けて木材12と共に潰れる際、図4に示すように、割れずにジャバラ状に潰れることが可能な比較的柔らかい樹脂により構成されている。
<衝撃吸収部材10の車両2への取付けについて>
衝撃吸収部材10は、図3に示すように、密閉容器20の前平板部24のフランジ部24fが、前述のように、バンパーリインフォース3の裏面にボルト止めされ、後平板部25のフランジ部25fがサイドメンバ5の荷重受け部50にボルト止めされる。サイドメンバ5の荷重受け部50は、衝撃吸収部材10を介して車両前方衝突時の衝撃荷重Fを受ける部分である。サイドメンバ5の荷重受け部50には、衝撃吸収部材10の密閉容器20の薄肉部25uに対応する位置に角形開口55が形成されており、その角形開口55の奥に潰れた木材12と密閉容器20の一部が入り込める空間58が形成されている。ここで、衝撃吸収部材10の密閉容器20は、荷重受け部50の角形開口55と同軸、かつ同位相となるように、荷重受け部50に対してボルト止め等により固定される。即ち、前記角形開口55が本発明の荷重受け部における貫通穴に相当する。
<衝撃吸収部材10の動作について>
車両2が前方衝突をして衝撃荷重Fがバンパーリインフォース3に加わると、その衝撃荷重Fが、図2に示すように、衝撃吸収部材10の密閉容器20の角筒部22及び木材12に対して軸方向に加わるようになる。即ち、衝撃吸収部材10は、図3に示すように、バンパーリインフォース3とサイドメンバ5の荷重受け部50とに前後から挟まれて、軸方向両側から衝撃荷重Fと等しい押圧力を受けるようになる。この結果、図4に示すように、衝撃吸収部材10の木材12が軸方向に潰れ、密閉容器20の角筒部22が木材12の周囲でジャバラ状に潰れるようになる。これにより、木材12が密閉容器20の潰れた角筒部22によって周囲から支えられ、木材12の倒れ防止が図られる。
また、密閉容器20の後平板部25が木材12を介して衝撃荷重Fを受けることで、後平板部25の薄肉部25u(脆弱部)が破断し、潰れた木材12が密閉容器20から排出される。そして、密閉容器20から排出された木材12が荷重受け部50の角形開口55を通過して空間58に入り込むようになる。このため、衝撃吸収部材10が潰れ始めるまでの荷重が大きくならず、図5のグラフに示すように、衝撃吸収部材10の潰れ開始時(ストローク0mm近傍)に荷重のピークが発生しなくなる。即ち、衝撃吸収部材10は衝撃荷重Fを受けると速やかに潰れて衝撃荷重Fを吸収し始める。そして、衝撃吸収部材10の潰れ状態が長く継続することで、木材12等の潰れ残り量が少なくなる。
<本実施形態に係る衝撃吸収部材10の長所について>
本実施形態に係る衝撃吸収部材10によると、衝撃荷重Fを受けて木材12と密閉容器20とが共に潰れる際、その密閉容器20の薄肉部25u(脆弱部)は木材12を介して受けた衝撃荷重Fにより破断する。これにより、潰れた木材12が破断した薄肉部25u(脆弱部)から密閉容器20の外部に排出されるようになる。このため、木材12が密閉容器20内で比較的潰れ易くなり、木材12が密閉容器20の内部で潰れ切る場合と比較して、木材12の潰れ残り量を少なくできる。即ち、同じサイズで木材12の潰れ量を大きくできるため、衝撃吸収部材10の衝撃吸収能力が向上する。また、木材12は、年輪12kの軸心方向に潰れることで衝撃荷重Fを吸収できるように構成されている。このため、木材12の圧縮強度の大きい部分で衝撃荷重Fを受けられるようになり、車両衝突等の大きな衝撃荷重Fを木材12により吸収できるようになる。
また、密閉容器20の薄肉部25u(脆弱部)は、木材12の潰れ方向における端面12eを覆う位置に設けられているため、密閉容器20の薄肉部25u(脆弱部)が破断することで、密閉容器20内の木材12を効率的に排出できるようになる。また、密閉容器20の脆弱部(薄肉部25u)の肉厚寸法は、密閉容器20の脆弱部以外の肉厚寸法よりも小さな値に設定されているため、密閉容器20の脆弱部を容易に形成できる。さらに、密閉容器20は樹脂により形成されているため、複雑な形状の密閉容器20の製造が可能になる。
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、図2に示すように、密閉容器20の後平板部25の一部を薄肉にすることで脆弱部(薄肉部25u)を形成する例を示した。しかし、図6に示すように、密閉容器20の後平板部25に断面V字形の直線溝25vを形成することで、この直線溝25vの部分を密閉容器20の脆弱部とすることも可能である。ここで、直線溝25vを断面V字形に成形することで、直線溝25vの底位置の肉厚寸法が密閉容器20の肉厚寸法のなかで最も小さな値に設定される。このため、密閉容器20の脆弱部が破断する際に、直線溝25vの底位置が破断起点Kとなり、脆弱部が常に同じ位置で破断するようになる。このため、木材12の排出性能も一定になる。
また、本実施形態では、図2に示すように、密閉容器20の前平板部24に、角筒部22に周囲に張り出すフランジ部24fを設ける例を示した。しかし、図7に示すように、バンパーリインフォース3の裏面の構造によっては、密閉容器20の前平板部24のフランジ部24fを省略することも可能である。また、本実施形態では、図2に示すように、密閉容器20の後平板部25の一部を薄肉にすることで脆弱部(薄肉部25u)を形成する例を示した。しかし、図8に示すように、密閉容器20の後平板部25を全体的に薄肉にして脆弱部(薄肉部25u)を形成することも可能である。
また、本実施形態では、密閉容器20を等しい材質の樹脂により成形し、脆弱部のみを薄肉にする例を示した。しかし、図9に示すように、密閉容器20の後平板部25(脆弱部)を他の部分と異なる材料、即ち、強度の小さい材料で形成し、厚み寸法を他の部分と等しくすることも可能である。また、本実施形態では、密閉容器20を樹脂により成形する例を示したが、例えば、金属により成形することも可能である。また、木材12を角柱形に成形し、密閉容器20の角筒部22を四角形に成形する例を示したが、例えば、木材12を断面形状が五角形、あるいは六角形に成形し、それに合わせて密閉容器20の角筒部22を五角形、あるいは六角形に成形することも可能である。また、本実施形態では、木材12に水を含ませる例を示したが、水の代わりに油を含ませることも可能である。
10・・・・・衝撃吸収部材
12・・・・・木材
12k・・・・年輪
12e・・・・後端面
20・・・・・密閉容器
25・・・・・後平板部
25u・・・・薄肉部(脆弱部)
25v・・・・直線溝(脆弱部)
K・・・・・・破断起点
50・・・・・荷重受け部
55・・・・・角形開口(貫通穴)

Claims (7)

  1. 木材と、その木材を収納する密閉容器とを備え、衝撃荷重を受けて前記木材と密閉容器とが共に潰れることで前記衝撃荷重を吸収できるように構成された衝撃吸収部材であって、
    前記密閉容器の所定位置には、前記木材を介して受けた衝撃荷重により破断する脆弱部が設けられており、
    前記密閉容器の脆弱部は、前記木材の潰れ方向における端面を覆う位置に設けられている衝撃吸収部材。
  2. 請求項1に記載された衝撃吸収部材であって、
    前記密閉容器と木材とは貫通穴を備える荷重受け部によって支持されており、前記密閉容器の脆弱部が前記荷重受け部の貫通穴と潰れ方向において重なる位置に形成されている衝撃吸収部材。
  3. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載された衝撃吸収部材であって、
    前記密閉容器の脆弱部の肉厚寸法は、前記密閉容器の脆弱部以外の肉厚寸法よりも小さな値に設定されている衝撃吸収部材。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載された衝撃吸収部材であって、
    前記密閉容器の脆弱部は溝状に形成されており、
    前記溝状の脆弱部の底位置に破断起点が設けられており、
    前記破断起点の肉厚寸法が前記密閉容器の肉厚寸法のなかで最も小さな値に設定されている衝撃吸収部材。
  5. 請求項4に記載された衝撃吸収部材であって、
    前記破断起点は、直線状に形成されている衝撃吸収部材。
  6. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載された衝撃吸収部材であって、
    前記密閉容器の脆弱部の材料は、前記密閉容器の脆弱部以外の部分の材料よりも強度の小さい材料が使用されている衝撃吸収部材。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかに記載された衝撃吸収部材であって、
    前記木材は、年輪の軸心方向に潰れることで衝撃荷重を吸収できるように構成されている衝撃吸収部材。
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