JP6492842B2 - 車両用衝撃吸収体 - Google Patents

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本発明は、車両構成部材、例えばドア、ドアトリムあるいはボディーサイドパネル、ルーフパネル、ピラー、バンパー(特に、バンパーフェイシアとバンパービームとの間に介在させてバンパーフェイシアが受ける衝撃を吸収させるもの)などに内設することによって搭乗員が車両構成部材の内壁への衝突するような内部または他の車両との衝突のような外部からの衝撃を吸収するための衝撃吸収体に関するものである。
この種の衝撃吸収体であって、熱可塑性樹脂をブロー成形して中空二重壁構造で中空部を有し、その表面壁と裏面壁から凹状リブを形成してその互いの先端部を接合して一体化し、衝撃吸収性の向上を企図したものは、特許文献1に開示されている。
特許文献1の衝撃吸収体では、衝撃吸収体が衝撃を吸収する過程において、衝撃吸収体が押し潰されるように破壊される際に、側壁が「>」字状に変形するために衝撃吸収性能を発揮することができないという問題を解決するために、側面が開放された凹状リブ(以下、「溝リブ」)の深さを増大させることによって側壁の「>」字変形を抑制して、側壁を蛇腹状に変形させることによって、圧縮歪みが20〜80%の範囲において圧縮荷重の低下がなく所望の衝撃吸収量を得ることを可能にしている。
特開2006−96308公報
しかし、本発明者らがさらに検討を行ったところ、特許文献1の衝撃吸収体では、圧縮歪みが大きくなるに従って圧縮荷重が過度に上昇してしまう場合があることがあることが分かった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、圧縮荷重の過度な上昇を抑制しつつ衝撃吸収性能を適切に発揮させることができる衝撃吸収体を提供するものである。
本発明によれば、中空部を有するブロー成形体からなる衝撃吸収体であって、前記ブロー成形体は、互いに離間されて対向する前面壁及び背面壁と、前記前面壁及び背面壁をつなぐ側壁を備え、前記側壁には前記前面壁が凹まされて形成された前面側溝リブと前記背面壁が凹まされて形成された背面側溝リブが設けられ、前記前面側溝リブの前面側先端壁と前記背面側溝リブの背面側先端壁は、前記前面側先端壁と前記背面側先端壁が互いに離間された離間部が前記中空部側に設けられ且つ前記前面側先端壁と前記背面側先端壁が互いに溶着された溶着部が前記側壁側に設けられるように、互いに溶着される、衝撃吸収体が提供される。
本発明者は、圧縮荷重が過度に上昇する原因について検討を行ったところ、特許文献1の図4〜図5に示す実施形態では、側壁が「>」字変形せずに蛇腹状に変形するために圧縮歪みの増大に伴って圧縮荷重が増大することが分かった。「>」字変形を生じさせるには、溝リブを浅くすればいいが、その場合には、衝撃吸収体による衝撃吸収性能が大幅に低下してしまうという問題が生じるので、圧縮荷重の過度な上昇を抑制しつつ衝撃吸収性能を適切に発揮させることは極めて困難であった。
このような状況において、本発明者は、溝リブの溶着部の、中空部側の一部を離間させてみたところ、側壁が蛇腹変形しながら徐々に「>」字変形するという現象が起こることによって、圧縮荷重の過度な上昇が抑制され且つ高い衝撃吸収性能が発揮されることを見出し、本発明の完成に到った。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記前面側先端壁と前記背面側先端壁は、前記離間部以外の全面で溶着される。
好ましくは、(前記離間部の幅)/(前記溶着部の幅+前記離間部の幅)の値は、0.1〜0.9である。
好ましくは、前記離間部では、前記前面側先端壁と前記背面側先端壁が最も離れている部位での離間距離が前記前面側先端壁の厚さ以上である。
好ましくは、前記前面側溝リブ及び前記背面側溝リブは、前記前面壁に平行な断面が略半円状である。
好ましくは、前記前面壁には前記前面壁が凹まされて形成された略円筒状の前面側凹状リブが設けられ、前記背面壁には前記背面壁が凹まされて形成された略円筒状の背面側凹状リブが設けられ、前記前面側凹状リブと前記背面側凹状リブは、その先端部が互いに溶着され、前記前面側溝リブの深さは、前記前面側凹状リブの半径よりも大きく、前記背面側溝リブの深さは、前記背面側凹状リブの半径よりも大きい。
本発明の第1実施形態の衝撃吸収体10を示し、(a)は一部破断して示す斜視図、(b)は平面図である。 (a)〜(d)は、図1(b)中のA−A断面図を示し、衝撃吸収体10を構成するブロー成形体1に荷重Fが加わった時に変形する態様を示す。 図2(a)中の領域Aの拡大図である。 (a)は溝リブ4f,4rが比較的深く蛇腹変形する従来例1のブロー成形体1を示し、(a)は溝リブ4f,4rが比較的浅く「>」字変形する従来例2のブロー成形体1を示す。 本発明、従来例1及び2のブロー成形体1についての圧縮歪みと圧縮荷重の関係を示すグラフである。 本発明の第2実施形態の衝撃吸収体10を示し、図2(a)に対応した断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
1.第1実施形態
以下、図1〜図2を用いて、本発明の第1実施形態の衝撃吸収体10について説明する。
本実施形態では、衝撃吸収体10は、車両構成部材に内設することによって車両の内部または外部からの衝撃を吸収するための車両用衝撃吸収体である。
図1に示すように、衝撃吸収体10は、中空部8を有するブロー成形体1からなる。ブロー成形体1は、互いに離間されて対向する前面壁1f及び背面壁1rと、前面壁1f及び背面壁1rをつなぐ側壁1sを備える。ブロー成形体1の厚さは、特に限定されないが、例えば、50m以上であり、50〜200mmが好ましい。前面壁1fには、前面壁1fが凹まされて形成された略円筒状の前面側凹状リブ2fが設けられ、背面壁1rには、背面壁1rが凹まされて形成された略円筒状の背面側凹状リブ2rが設けられる。凹状リブ2f,2rは、その先端部3が互いに溶着されている。
側壁1sには、前面壁1fが凹まされて形成された前面側溝リブ4fと、背面壁1rが凹まされて形成された背面側溝リブ4rが設けられている。図2(a)に示すように、溝リブ4fの先端壁5fと溝リブ4fの先端壁5rは、先端壁5fと先端壁5rが互いに離間された離間部6が中空部8側に設けられるように、互いに溶着されている。つまり、先端壁5r,5fは、側壁1s側に設けられた溶着部7においては溶着されていて、中空部8側では互いに離間されている。図3に示すように、離間部6の幅をd1、溶着部7の幅をd2とすると、d1/(d1+d2)の値は、0.1〜0.9が好ましく、0.2〜0.8がさらに好ましい。この値は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。離間部6の幅d1は、溝リブ4f,4rの側壁4fs,4rsの中空部8側の延長面4fs1,4rs1の交線Pと、溶着部7と離間部6の間の境界線Qの間の距離である。溶着部7の幅d2は、交線P及び境界線Qを通る平面と側壁1sの交線Rと、境界線Qの間の距離である。離間部6の幅d1が小さすぎると、側壁1s,4fs,4rsの「>」字変形を誘起する効果が小さくなり、溶着部7の幅d2が小さすぎると先端壁5r,5fの間の溶着が外れやすくなる。離間部6を設けることによって「>」字変形が誘起される点については後述する。
離間部6では、先端壁5r,5fは、テーパー状に離れる形状になっている。境界線Qと交線Pの間で、先端壁5r,5fが最も離れている部位での離間部6の離間距離(前後方向の長さ)/(先端壁5fの厚さ)の値は、1以上であることが好ましい。この場合に、離間部6が「>」字変形を誘起する効果が高まるからである。また、(離間距離/先端壁5fの厚さ)の値は、5以下が好ましい。この値が大きすぎると「>」字変形が過剰に誘起される場合があるからである。(離間距離/先端壁5fの厚さ)の値は、例えば1〜5であり、具体的には例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
図1(b)に示すように、溝リブ4fの深さdは、凹状リブ2fの半径rよりも大きくなっている。同様に、溝リブ4rの深さは、凹状リブ2rの半径よりも大きくなっている。このような構成によって、特許文献1で説明されているように、ブロー成形体1の側面1sが「>」字変形しにくくなっている。d/rの値は、例えば1.1〜2であり、具体的には例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。深さdの値は、ブロー成形体1のサイズによっても変わるが、一例では、15mm以上であり、15〜30mmが好ましく、15〜20mmが好ましい。
ここで、図2を用いて、ブロー成形体1の前面壁1fに荷重Fが加わったときのブロー成形体1の変形態様について説明する。
図2(a)に示すように、前面壁1fに荷重Fが加わると、ブロー成形体1は前面壁1fと背面壁1rの間の間隔が狭まるように変形する。この際に、荷重Fは、ブロー成形体1の側壁1s,溝リブ4f,4rの側壁4fs,4rs,及び凹状リブ2f,2rの側壁2fs,2rsに伝達されて、図2(b)に示すように、側壁1s,4fs,4rsが蛇腹状に変形する(なお、この際、側壁2fs,2rsも蛇腹状に変形するが、以下の説明ではこの点は説明を省略する。)。また、溝リブ4f,4rの先端壁5f,5rは、荷重Fによって互いに押し付けられて、離間部6においても先端壁5f,5rが互いに当接するように変形する。先端壁5f,5rが当接する際に、図2(b)に示すように、側壁1s,4fs,4rsの前後方向の略中央部が幅方向外側に広がりながら、側壁1s,4fs,4rsがわずかに「>」字変形する。このわずかな「>」字変形によってその後の「>」字変形が誘起される。
前面壁1fに荷重Fがさらに加わると、図2(c)〜(d)に示すように、側壁1s,4fs,4rsがさらに「>」字変形しながら、側壁1s,4fs,4rsがさらに蛇腹状に変形する。
ここで、図4〜図5を用いて、従来例と比較しながら、本発明では、圧縮荷重の過度な上昇を抑制しつつ衝撃吸収性能を適切に発揮させることが可能である点について説明する。
図4(a)〜(b)は、それぞれ、特許文献1の図3及び図5に示す衝撃吸収体を示し、前者を従来例1、後者を従来例2と称する。従来例1,2のどちらにも溝リブ4f,4rが形成されており、その先端壁5f,5rは全面が溶着部7となっていて、離間部6が存在していない。
従来例1では、側壁1sに比較的深い溝リブ4f,4rが形成されており、前面壁1fに荷重Fが加わってブロー成形体1が圧縮されると、側壁1s,4fs,4rsが「>」字変形することなく、側壁1s,4fs,4rsが蛇腹状に変形する。このような変形態様では、図5に示すように、ブロー成形体1の圧縮歪みが50%を超えると圧縮荷重が急激に上昇して衝撃エネルギーが適切に吸収されない場合がある。
従来例2では、側壁1sの溝リブ4f,4rが従来例1よりも浅くなっており、前面壁1fに荷重Fが加わってブロー成形体1が圧縮されると、側壁1s,4fs,4rsがほとんど蛇腹状に変形することなく容易に「>」字変形する。このような変形態様では、図5に示すように、ブロー成形体1の初期荷重(圧縮の初期段階でのピーク荷重)が非常に低くなってしまうという問題がある。
一方、本発明では、側壁1sに比較的深い溝リブ4f,4rが形成されており、且つ先端壁5f,5rの中空部8側に離間部6が設けられているので、前面壁1fに荷重Fが加わってブロー成形体1が圧縮されると、側壁1s,4fs,4rsが蛇腹状に変形しながら「>」字変形する。このため、ブロー成形体1の圧縮歪みが増大すると、側壁1s,4fs,4rsの蛇腹変形と「>」字変形の両方が進行する。この結果、図5に示すように、圧縮荷重の上昇が抑制され、且つ初期荷重が高くなっている。
従来例においても、溝リブ4f,4rの深さが従来例1と従来例2の中間程度である場合には、側壁1s,4fs,4rsの蛇腹変形と「>」字変形の両方が生じる可能性があるが、その場合には、必然的に従来例1よりも初期荷重が低下してしまって衝撃吸収性能が低下するという問題がある。また、製造のばらつきによっては側壁1s,4fs,4rsの蛇腹変形と「>」字変形の一方のみが起こってしまう可能性もあるので、安定して性能が発揮されない可能性もある。一方、本発明においては、離間部6が「>」字変形のきっかけとなるので、溝リブ4f,4rが十分に深い場合でも、確実に「>」字変形を起こさせることが可能である。このため、本発明の衝撃吸収体では、高い衝撃吸収性能が安定して発揮される。
2.第2実施形態
以下、図6を用いて、本発明の第2実施形態の衝撃吸収体10について説明する。
第1実施形態では、離間部6では、先端壁5r,5fがテーパー状に広がる形状になっているが、本実施形態では、離間部6では、先端壁5r,5fは略平行になっている。このような形態であっても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
1:ブロー成形体、1f:前面壁、1r:背面壁、1s:側壁、2f:前面側凹状リブ、2r:背面側凹状リブ、4f:前面側溝リブ、4r:背面側溝リブ、5f:前面側先端壁、5r:背面側先端壁、6:離間部、7:溶着部、8:中空部、10:衝撃吸収体、F:荷重

Claims (7)

  1. 中空部を有するブロー成形体からなる衝撃吸収体であって、
    前記ブロー成形体は、互いに離間されて対向する前面壁及び背面壁と、前記前面壁及び背面壁をつなぐ側壁を備え、
    前記側壁には前記前面壁が凹まされて形成された前面側溝リブと前記背面壁が凹まされて形成された背面側溝リブが設けられ、
    前記前面側溝リブの前面側先端壁と前記背面側溝リブの背面側先端壁は、前記前面側先端壁と前記背面側先端壁が互いに離間された離間部が前記中空部側に設けられ且つ前記前面側先端壁と前記背面側先端壁が互いに溶着された溶着部が前記側壁側に設けられるように、互いに溶着され
    (前記離間部の幅)/(前記溶着部の幅+前記離間部の幅)の値は、0.20〜0.90である、衝撃吸収体。
  2. 中空部を有するブロー成形体からなる衝撃吸収体であって、
    前記ブロー成形体は、互いに離間されて対向する前面壁及び背面壁と、前記前面壁及び背面壁をつなぐ側壁を備え、
    前記側壁には前記前面壁が凹まされて形成された前面側溝リブと前記背面壁が凹まされて形成された背面側溝リブが設けられ、
    前記前面側溝リブの前面側先端壁と前記背面側溝リブの背面側先端壁は、前記前面側先端壁と前記背面側先端壁が互いに離間された離間部が前記中空部側に設けられ且つ前記前面側先端壁と前記背面側先端壁が互いに溶着された溶着部が前記側壁側に設けられるように、互いに溶着され、
    前記離間部では、前記前面側先端壁と前記背面側先端壁が最も離れている部位での離間距離が前記前面側先端壁の厚さの2.0倍以上である、衝撃吸収体。
  3. 前記前面側先端壁と前記背面側先端壁は、前記離間部以外の全面で溶着される、請求項1又は請求項2に記載の衝撃吸収体。
  4. (前記離間部の幅)/(前記溶着部の幅+前記離間部の幅)の値は、0.1〜0.9である、請求2に記載の衝撃吸収体。
  5. 前記離間部では、前記前面側先端壁と前記背面側先端壁が最も離れている部位での離間距離が前記前面側先端壁の厚さ以上である、請求項1に記載の衝撃吸収体。
  6. 前記前面側溝リブ及び前記背面側溝リブは、前記前面壁に平行な断面が略半円状である、請求項1〜請求項の何れか1つに記載の衝撃吸収体。
  7. 前記前面壁には前記前面壁が凹まされて形成された略円筒状の前面側凹状リブが設けられ、
    前記背面壁には前記背面壁が凹まされて形成された略円筒状の背面側凹状リブが設けられ、
    前記前面側凹状リブと前記背面側凹状リブは、その先端部が互いに溶着され、
    前記前面側溝リブの深さは、前記前面側凹状リブの半径よりも大きく、
    前記背面側溝リブの深さは、前記背面側凹状リブの半径よりも大きい、請求項1〜請求項の何れか1つに記載の衝撃吸収体。
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