JP6398562B2 - 複合口金、複合繊維および複合繊維の製造方法 - Google Patents

複合口金、複合繊維および複合繊維の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、複合口金、複合繊維および複合繊維の製造方法に関する。
ポリエステルやポリアミドなどの熱可塑性ポリマーを用いた繊維は、力学特性や寸法安定性に優れるため、用途が多様化し、様々な機能性を付与した繊維が数多く開発されるようになった。
例えば、衣料用途では、ソフトな風合い等を付与する狙いで単糸細繊度化・多フィラメント化や、吸水・速乾性の向上や光沢感を変更する等の狙いで単糸異形断面化、また、鮮明性に優れた染色の実現等の新たな機能性付与の狙いでポリマーを改質する等の改良が行われている。また、産業資材用途では、同様に単糸細繊度化・多フィラメント化や単糸異形断面化の他、高強度化、高弾性化や、耐候性、難燃性等の新たな機能性付与を狙ったポリマーの改質等の改良が行われている。さらに、上記改良に加えて、2種類以上のポリマーを組み合わせることによって、単一成分のポリマーでは不十分な性能を補完したり、また、全く新しい機能を付与する複合繊維の開発も盛んに行われている。
この複合繊維には、複合口金を用いて得られる芯鞘型、サイドバイサイド型、海島型と、ポリマー同士を溶融混練することで得られるアロイ型がある。芯鞘型は、芯成分を鞘成分が被覆することで、単独繊維では達成されない風合い、嵩高性などといった感性的効果、また、強度、弾性率、耐摩耗性などといった力学特性の付与が可能となる。また、サイドバイサイド型では、単独繊維では不可能であった捲縮性を発現させ、ストレッチ性等を付与することが可能となる。
そして、海島型では、溶融紡糸した後に易溶出成分(海成分)を溶出することにより、難溶出成分(島成分)だけが残存し、単繊維の糸径がナノオーダーの極細繊維を得ることが可能となる。このような極細繊維になると、衣料用途では、一般の繊維では得ることができない柔軟なタッチやきめ細やかさが発現し、人工皮革や新感触テキスタイル等に適用でき、また、繊維間隔が緻密となることから、高密度織物として、防風性、撥水性が必要とされるスポーツ衣料用途にも展開できる。また、産業資材用途では、比表面積が増大し、塵埃捕集性が高まることによる高性能フィルタ等への適用や、また、極細繊維が微細な溝に入りこみ、汚れを拭き取ることによる精密機器などのワイピングクロスや、精密研磨布等にも適用が可能となる。
また、芯鞘型は、芯成分を鞘成分が被覆することで、単独繊維では達成されない風合い、嵩高性などといった感性的効果、また、強度、弾性率、耐摩耗性などといった力学特性の付与が可能となる。また、サイドバイサイド型では、単独繊維では不可能であった捲縮性を発現させ、ストレッチ性等を付与することが可能となる。
また、近年では、海島型の極細繊維でありながら、各単糸では芯鞘型やサイドバイサイド型となる繊維も創出されるようになってきた。更には、芯成分と海成分とを同一成分とすることで、または芯成分と鞘成分と海成分とがそれぞれ異なる3成分ポリマー(芯成分と海成分は溶解性ポリマー)とすることで、中空型の極細繊維も創出されるようになってきた。
例えば、特許文献1では、単糸繊度が1デニール以下であり、中空部の孔径が10μm以下となる中空型の極細繊維が開示されている。また、複合繊維において、芯鞘部(または中空部)の島数が1〜10000島となることが開示されている。しかしながら、特許文献1の実施例では、後述するパイプ方式口金を前提とした技術であり、本発明者らの知見によると、得られる繊維はミクロンオーダーであり、ナノオーダーには到達できない場合がある。これは特許文献1の実施例に記載されている通り、得られる中空繊維の直径が3.6μm、中空孔径が2.7μmであり、ナノオーダーには到達しておらず、また、得られた複合繊維(易溶出処理をする前の繊維)の島数が16であり、数百、数千レベルにまでは到達していない。
中空型(または芯鞘型)の極細繊維を製造する手法としては、複合紡糸法があり、複合口金を用いて複合ポリマー流を精密に制御することで、特に、糸の走行方向において高精度な糸断面形態を均一、均質に形成することが可能となる。当然のことながら、この複合紡糸法における複合口金の技術が、安定的に糸断面形態を決定する上で極めて重要であり、従来から、様々な提案が行われている。
例えば、一般的に分配板方式口金として知られている複合口金が、特許文献2に開示されている。図13は、特許文献2の複合口金であり、(a)は最下層分配板の部分拡大平面図であり、(b)は吐出板の部分拡大平面図である。図中、1は芯成分ポリマー供給孔、2は鞘成分ポリマー供給孔、5は最下層分配板、10は吐出板、19は芯鞘ポリマー吐出孔をそれぞれ示す。特許文献2の複合口金は、分配孔7と分配溝8が形成された分配板を複数枚重ねて構成されており、その下に最下層分配板5、更にその下に吐出板10が順に積層されている。分配板に供給された芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーが、分配板の流路を通過することにより分配される。その後、最下層分配板5の芯成分ポリマー供給孔1に芯成分ポリマー、鞘成分ポリマー供給孔2に鞘成分ポリマーが供給された後、吐出板10の芯鞘ポリマー吐出孔19において合流することで芯鞘ポリマー流を形成し、口金から吐出され、芯鞘型の複合繊維が製造できることが記載されている。
また、特許文献1の中空型の極細繊維を製造する複合口金が、特許文献3にて開示されている。図14は、特許文献3の複合口金の概略断面図であり、一般的にパイプ方式口金と呼ばれている。図中、12は縮小孔、23は口金、30はパイプ、33は上部板、34は中部板、35は下部板、41はパイプ挿入孔、42は口金吐出孔をそれぞれ示す。特許文献3は、パイプ30を設けた上部板33と、パイプ30と、上部板33に設置されたパイプ30の外径と同等、もしくは大きな外径となるパイプ挿入孔41を設けた中部板34と、中部板34に設置されたパイプ30の外径と同等、もしくは大きな孔径となるパイプ挿入孔41を設けた下部板35と、縮小孔12と口金吐出孔42とを設けた口金23で構成されている。そこで、上部板33のパイプ30に供給された島成分ポリマーが、中部板34のパイプ挿入孔41に供給された海成分ポリマーと合流し、芯鞘断面の芯鞘ポリマー流を形成する。その後、芯鞘ポリマー流は、中部板34のパイプ30に供給され、下部板35のパイプ挿入孔41に供給された海成分ポリマーと再度合流し、島成分が芯鞘構造となる海島型の複合繊維を製造することができると記載されている。特許文献1では、この複合口金を用いて、芯成分ポリマーと海成分ポリマーに易溶出性ポリマーを用いることにより、中空型に極細繊維を得ることができると記載されている。
特開昭58−156012号公報 特開平7−278939号公報 特開昭58−132105号公報
しかしながら、特許文献2と特許文献3の複合口金は次のような問題がある。
特許文献2の複合口金で得られた1本の複合繊維には、一つの芯鞘部のみしか形成されないため、1本の複合繊維には、複数の芯鞘部を形成することができない場合がある。また、本発明者らの知見によると、吐出板10において、芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーが合流する際に、隣り合う鞘成分ポリマー供給孔2から吐出された鞘成分ポリマー同士が合流せずに、複合繊維の外表面に芯成分が露呈する場合がある。これは、本発明者らの知見によると、芯成分と鞘成分を形成するポリマーの溶融粘度の差が大きい場合、または、ポリマー同士の界面張力が大きい場合に、顕著となる場合がある。
特許文献3のパイプ方式口金の大きな問題点は、1島を製作するのに、パイプ厚みが加算されることから、1つのパイプ当たりの面積が拡大する。また、口金の製作上、パイプ30を上部板33、中部板34に圧入し溶接固定していることから、溶接代が必要であり、さらに、パイプ30を挿入するための孔を設けることから、強度上の問題によりパイプ間同士の間隙を狭化できない。そのため、パイプ30を単位面積当たりに密に配置することができず、繊維径がナノオーダーの超極細繊維を製造することが困難な場合がある。また、所望の繊維形態を得るためには、複数の複合口金を試作して紡糸評価を幾つか繰り返す必要があるが、この複合口金の構造は非常に複雑であるため、口金の製作に期間や手間、費用が必要となり、この点においても設備費が過大となる問題がある。また、パイプ30が密集して配設されたパイプ群の外周から鞘成分ポリマー、または海成分ポリマーを供給するため、パイプ群の中心にまで充分に到達せず、その結果、芯鞘構造が得られない場合や、島成分ポリマー同士の合流が発生する場合がある。特に、孔充填密度を大きくするために、パイプ30をより密集して配置すれば、上記問題は、より顕著となる。
以上の様に、芯鞘型または中空型となる極細繊維を得ることが切望されているが、繊維径がミクロンオーダーであり、また、適用できるポリマーの種類が制約される問題が残されている。従って、この問題を解決することは、工業上、重要な意味を有するのである。よって、本発明の目的は、芯鞘型、または中空型の複合繊維を製造するための複合口金において、芯鞘ポリマー吐出孔の孔充填密度が高くしつつ、特に、芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの溶融粘度差、界面張力差が大きい場合であっても、合流板、吐出板を用いることで、芯鞘部の不良を抑制し、この芯鞘部の寸法安定性を高く維持できる複合口金、および複合口金を用いた複合紡糸機により溶融紡糸を行い、得られた複合繊維を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の複合口金は次のような構成を有する。すなわち、芯成分ポリマー、鞘成分ポリマーおよび第3成分ポリマーによって構成される複合ポリマー流を吐出するための複合口金であって、
ポリマー紡出経路方向の下流側に向かい順に、1枚以上の分配板、最下層分配板および吐出板を有し、
前記分配板には、前記芯成分ポリマー、鞘成分ポリマーおよび第3成分ポリマーをそれぞれ分配するための分配孔および分配溝が形成されており、
前記最下層分配板には、複数の芯成分ポリマー供給孔、複数の鞘成分ポリマー供給孔および複数の第3成分ポリマー供給孔が形成されており、
前記吐出板には、前記芯成分ポリマー供給孔および2つ以上の前記鞘成分ポリマー供給孔に連通した芯鞘ポリマー吐出孔、並びに前記第3成分ポリマー供給孔に連通した第3成分ポリマー吐出孔が形成されており、
前記芯鞘ポリマー吐出孔をポリマーの紡出経路方向で前記最下層分配板に向けて投影した領域内に、この芯鞘ポリマー吐出孔に連通した前記芯成分ポリマー供給孔および前記2つ以上の鞘成分ポリマー供給孔があり、この領域内で2つ以上の鞘成分ポリマー供給孔が1つの芯成分ポリマー供給孔を取り囲むように前記芯成分ポリマー供給孔および前記鞘成分ポリマー供給孔が形成されている。
また、本発明の複合繊維は、繊維径が2〜30μmの範囲となる単繊維から構成され、この単繊維の断面中に100個以上の芯鞘部が形成されている。
本発明における各用語の意味を以下に列記する。
「ポリマーの紡出経路方向」とは、各ポリマー成分が計量板から吐出板の口金吐出孔まで流れる主方向をいう。
「分配孔」とは、複数の分配板の組合せにより、孔が形成され、ポリマーの紡出経路方向に、ポリマーを分配する役割を果たすものをいう。
「分配溝」とは、複数の分配板の組合せにより、溝が形成され、ポリマーの紡出経路方向に垂直な方向に、ポリマーを分配する役割を果たすものをいう。ここで、分配溝は、細長い穴(スリット)であってもよいし、細長い溝が掘ってあってもよい。
「隣り合う2つの合流孔の最短距離」とは、隣り合う2つの合流孔を形成する壁面を結ぶ線分の最も短い距離のことをいう。
「鞘成分ポリマー供給孔の最短距離」とは、隣り合う2つの鞘成分ポリマー供給孔を形成する壁面を結ぶ線分の最も短い距離のことをいう。
「合流板は1箇所で溝を封止した環状溝であり、この溝を封止した箇所での溝間の最短距離」とは、合流板は1箇所で溝を封止した環状溝であり、環状溝を封止した箇所の壁面を結ぶ線分の最も短い距離のこという。
「吐出板の厚さ」とは、吐出板のポリマー紡出経路方向の厚さをいう。吐出板を2枚以上重ねた場合は、積層された吐出板の全ての厚さをいう。
「芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの溶融粘度の比率R」とは、芯成分ポリマーの溶融粘度を鞘成分ポリマーの溶融粘度にて割ること(比率R=芯成分ポリマーの溶融粘度/鞘成分ポリマーの溶融粘度)により得られる比率をいう。
「孔充填密度」とは、芯鞘ポリマー吐出孔の数を吐出導入孔の断面積で除することによって求めた値をいう。また、本発明以外、従来例の「孔充填密度」とは、芯成分ポリマー供給孔の数を吐出導入孔の断面積で除することによって求めた値を言う。この孔充填密度が大きい程、芯鞘部、または中空部が多数にて構成される複合繊維である。
本発明の複合口金によれば、芯鞘ポリマー吐出孔の孔充填密度を拡大しつつ、鞘成分ポリマー同士を合流させることで、芯鞘部(または中空部)となる断面を高精度に形成し、この断面形態の寸法安定性を高く維持できる。
本発明の実施形態に用いられる分配板、最下層分配板、合流板、吐出板の概略部分断面図である。 図1のX−X矢視図であり、本発明の実施形態に用いられる最下層分配板の部分拡大平面図、または図12のW−W矢視図であり、本発明以外の実施形態に用いられる最下層分配板の部分拡大平面図である。 図1のY−Y矢視図であり、本発明の実施形態に用いられる合流板の部分拡大平面図である。 図1のZ−Z矢視図であり、本発明の実施形態に用いられる吐出板の部分拡大平面図である。 本発明の実施形態に用いられる複合口金の概略断面図である。 本発明の実施形態に用いられる複合口金と、紡糸パック、冷却装置周辺の概略断面図である。 図5のW−W矢視図である。 本発明の実施形態に用いられる複合口金により製造された代表的な複合繊維の断面概略図である。 本発明の別の実施形態に用いられる複合口金により製造された代表的な複合繊維の断面概略図である。 本発明の別の実施形態に用いられる合流板の部分拡大平面図である。 本発明の別の実施形態に用いられる合流板の部分拡大平面図である。 本発明の実施形態では無い、一般的に用いられている分配板、最下層分配板の概略部分断面図である。 従来例の最下層分配板、吐出板の部分拡大平面図である。 従来例の複合口金の概略部分断面図である。 本発明の別の実施形態に用いられる複合口金により製造された代表的な複合繊維の断面概略図である。 本発明の別の実施形態に用いられる最下層分配板の部分拡大平面図である。 本発明の別の実施形態に用いられる合流板の部分拡大平面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の複合口金の実施形態について詳細に説明する。図5は、本発明の実施形態に用いられる複合口金の概略断面図であり、図7は図5のW−W矢視図であり、図1は図5の概略部分断図である(ただし、一体となった複合口金の断面を示すものではなく、後述する、複合口金を構成する分配板、最下層分配板、合流板、吐出板のそれぞれの異なる断面を重ねており、図2のA−A線上、図3のB−B線上、図4のC−C線上の断面を重ねて図示したものである)。また、図2は図1のX−X矢視図であり、本発明の実施形態に用いられる複合口金の最下層分配板の部分拡大平面図であり、図16は、本発明の別の実施形態に用いられる複合口金の最下層分配板の部分拡大平面図ある。図3は図1のY−Y矢視図であり、本発明の実施形態に用いられる複合口金の合流板の部分拡大平面図であり、図10、図11、図17は本発明の別の実施形態に用いられる合流板の部分拡大平面図である。図4は図1のZ−Z矢視図であり、吐出板の部分拡大平面図である。図6は本発明の実施形態に用いられる複合口金と、紡糸パック、冷却装置周辺の概略断面図である。なお、これらは、本発明の要点を正確に伝えるための概念図であり、図を簡略化しており、本発明の複合口金は特に制限されるものでなく、孔および溝の数ならびにその寸法比などは実施の形態に合わせて変更可能なものとする。
本発明の実施形態に用いられる複合口金18は、図6に示すように、紡糸パック15に装備され、スピンブロック16の中に固定され、複合口金18の直下に冷却装置17が構成される。そこで、複合口金18に導かれた2成分以上のポリマーは、各々、計量板9、分配板6、最下層分配板5、合流板11、吐出板10を通過して、口金23の口金吐出孔42から吐出された後、冷却装置17により吹き出される気流により冷却され、油剤を付与された後に、複数の芯鞘部または中空部を形成した海島型複合繊維として巻き取られる。なお、図6では、環状内向きに気流を吹き出す環状の冷却装置17を採用しているが、一方向から気流を吹き出す冷却装置17を用いてもよい。また、計量板9の上流側に装備する部材に関しては、既存の紡糸パック15にて使用された流路等を用いればよく、特別に専有化する必要が無い。
本発明の実施形態に用いられる複合口金18は、図5に示すように、計量板9と、少なくとも1枚以上の分配板6、最下層分配板5、合流板11、吐出板10を順に積層して構成され、特に、分配板6と最下層分配板5、合流板11、吐出板10は薄板にて構成されるのが好ましい。その場合、計量板9と分配板6、最下層分配板5、合流板11、吐出板10とは、位置決めピンにより、紡糸パック15の中心位置(芯)が合うように位置決めを行い、積層した後に、ネジ、ボルト等で固定してもよく、熱圧着により金属接合(拡散接合)させてもよい。特に、分配板6同士や、分配板6と最下層分配板5、最下層分配板5と合流板11、合流板11と吐出板10は、薄板を使用するため、熱圧着により金属接合(拡散接合)させるのが好ましい。
ここで、薄板の板厚みは、0.01〜0.5mmの範囲とするのが良く、更には、0.05〜0.3mmの範囲となるのが好適である。薄板の板厚みを薄くすることで、加工できる孔の孔径や溝幅、そして孔間、溝間ピッチを小さくでき、孔充填密度を大きくできる利点を有する。具体的には、最下層分配板5の芯成分ポリマー供給孔1、鞘成分ポリマー供給孔2、第3成分ポリマー供給孔21の中で最小となる孔の直径DMINと、板厚みBTとが、式(1)を満たすことで、孔充填密度をより大きくすることができる。また、分配板6において、分配溝8が形成されている場合には、溝幅をDMINとし、分配板6の板厚みBTとが、式(1)を満たすことで、上記と同様に、孔充填密度をより大きくすることができる。
・BT/DMIN≦2 ・・・(1)。
ここで、BT/DMIN>2の場合には、上記の通り、孔充填密度をより大きくすることが可能であるが、更に、芯成分ポリマー、または鞘成分ポリマーの吐出斑を最小化しようとすると、式(1)を満たすことがより好ましい。
ただし、分配板6、最下層分配板5、合流板11、吐出板10の板厚みを0.01〜0.5mmの範囲の中において、薄くすると、薄板の強度が低下し、撓みが発生し易くなるため、使用できるポリマーの種類が制限される場合がある(高粘度ポリマーでは圧損が大きくなり、撓みが発生する)。その場合、薄板を複数枚積層させて、それらを金属接合させることで、全体厚みを大きくし、強度を向上させれば良い。また、薄板の板厚みを厚くすることで、一枚当りの強度が向上することから、使用できるポリマーの種類が増える利点を有する。但し、厚くし過ぎると、加工できる孔径、溝幅、孔・溝間ピッチを狭くできず、ひいては、孔充填密度を大きくできない場合がある。その場合には、孔数が多い分配板6の厚みを薄くし、孔数が少なくなるに従い厚みを厚くすればよい。
そこで、計量板9より供給された各成分のポリマーは、少なくとも1枚以上積層された分配板6の分配溝8、および分配孔7を通過した後、最下層分配板5の芯成分ポリマーを供給するための芯成分ポリマー供給孔1、鞘成分ポリマーを供給するための鞘成分ポリマー供給孔2、および第3成分ポリマーを供給するための第3成分ポリマー供給孔21を通過し、合流板11の合流孔14にて鞘成分ポリマー同士が合流し、吐出板10の芯鞘ポリマー吐出孔19にて、芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーが合流し、その後、第3成分ポリマー吐出孔22より吐出された第3成分ポリマーと合流することで、3成分ポリマーから成る複合ポリマー流が形成される。その後、複合ポリマー流は、口金23の縮小孔12を通過して、口金吐出孔42より吐出される。
ここで、最下層分配板5に配設された芯成分ポリマー供給孔1の孔径は、全て均等な大きさが好ましく、また、鞘成分ポリマー供給孔2の孔径も、全て均等な大きさが好ましく、第3成分ポリマー供給孔21の孔径も、全て均等な大きさが好ましい。また、合流板11に配設された芯ポリマー導入孔3の孔径は、全て均等な大きさが好ましく、また、合流孔14の孔径、溝幅も、全て均等な大きさが好ましく、第3成分ポリマー導入孔4の孔径も、全て均等な大きさが好ましい。また、吐出板10に配設された芯鞘ポリマー吐出孔19の孔径は、全て均等な大きさが好ましく、また、第3成分ポリマー吐出孔22の孔径も、全て均等な大きさが好ましい。それにより、最下層分配板5の芯成分ポリマー供給孔1から吐出される芯成分ポリマー、鞘成分ポリマー供給孔2から吐出される鞘成分ポリマー、および第3成分ポリマー供給孔21から吐出される第3成分ポリマーの吐出速度を均一化でき、更に、合流板11の芯成分ポリマー導入孔3から吐出される芯成分ポリマー、合流孔14から吐出される鞘成分ポリマー、および第3成分ポリマー導入孔4から吐出される第3成分ポリマーの吐出速度を均一化でき、更に、吐出板10の芯鞘ポリマー吐出孔19から吐出される芯鞘ポリマー、第3成分ポリマー吐出孔22から吐出される第3成分ポリマーの吐出速度を均一化できることから、芯均斉度の優れた芯鞘成分断面を得ることができる。
芯成分ポリマー供給孔1と鞘成分ポリマー供給孔2、第3成分ポリマー供給孔21の孔径が異なっていてもよく、芯成分ポリマー/鞘成分ポリマー/第3成分ポリマーの比率により適宜決定すればよい。また芯成分ポリマー導入孔3と第3成分ポリマー導入孔4の孔径が異なっていてもよく、芯鞘ポリマー吐出孔19と第3成分ポリマー吐出孔22の孔径が異なっていてもよい。ここで、芯成分ポリマー導入孔3から吐出される芯成分ポリマーと、合流孔14から吐出される鞘成分ポリマーとの吐出速度(吐出速度とは、吐出流量を、芯成分ポリマー導入孔3または合流孔14の断面積で除した値を言う。)をおよそ等しくなるように、孔径、および孔形状を適宜決定することが好ましい。また、芯鞘ポリマー吐出孔19から吐出される芯鞘ポリマーと、第3成分ポリマー吐出孔22から吐出される第3成分ポリマーとの吐出速度をおよそ等しくなるように、孔径、孔形状を適宜決定することが好ましい。それにより、得られる芯成分ポリマー、芯鞘ポリマーの断面形態を著しく安定させ、精度よく形態を維持することができる。
まず、本発明の最も重要なポイントである、芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの溶融粘度差、または界面張力差が大きい場合において、芯鞘部の形成不良(芯成分ポリマーの周囲に鞘成分ポリマーが形成されず、芯成分ポリマーと第3成分ポリマーとが合流する)を抑制し、これを高い孔充填密度にて達成できる原理について説明する。
海島型の複合繊維を形成する方法としては、一般的に、分配方式口金を用いることが知られている。この口金を用いて、一つの島成分が芯鞘部(または中空部)となる複合繊維を得るためには、図12、図2(投影領域29は除く)に示すように、最下層分配板5に芯成分ポリマー供給孔1と鞘成分ポリマー供給孔2、および第3成分ポリマー供給孔21を形成する。そして、1つの芯成分ポリマー供給孔1の外周に、複数の鞘成分ポリマー供給孔2を配置し、これを1つの芯鞘孔群27とし、隣り合う2つの芯鞘孔群27の間に第3成分ポリマー供給孔21を配置する。そこで、最下層分配板5に配置された各供給孔の孔径を加工限界にまで小さくし、且つ各供給孔の孔間ピッチを狭くすることで、孔充填密度を高めることが可能となる。そして、最下層分配板5の各供給孔より、ポリマーの紡出経路方向の下流に向かい、各成分ポリマーを吐出し、一斉に合流させることで、第3成分ポリマーの中に複数の芯鞘部を有した複合繊維を得ることが可能となる。
しかしながら、本発明者らの知見によると、1つの芯鞘孔群27において、隣り合う鞘成分ポリマー供給孔2から吐出された鞘成分ポリマー同士が合流せず、芯成分ポリマーと第3成分ポリマーとが合流し、芯鞘部の形成不良が発生する。特に、芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーの溶融粘度差が大きい場合には、隣り合う鞘成分ポリマー供給孔2から吐出された鞘成分ポリマーの間に、芯成分ポリマーが介在し易くなることから、芯鞘部の形成不良が顕著となる。また、界面張力差が大きい場合には、鞘成分ポリマー供給孔2から吐出された鞘成分ポリマーが丸化するため、隣り合う鞘成分ポリマー同士が合流せずに、芯鞘部の形成不良が顕著となる。
また、芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーの比率(以降は芯鞘比率とする)の鞘成分ポリマー比率が小さい(=芯成分ポリマーの比率が大きい)場合にも、芯鞘部の形成不良が顕著となる。また、一つの芯成分ポリマー供給孔1の周囲に、多数の鞘成分ポリマー供給孔2を密集して配置させ、鞘成分ポリマー同士を合流させることが挙げられるが、複合口金に配置できる孔数には制約があり、その結果、孔充填密度を大きくすることができず、数百、数千の芯鞘部を有した複合繊維を形成するには限界がある。
また、分配方式口金を用いて、芯鞘型となる複合繊維(但し、芯成分ポリマー表面に一部露呈している)を作成する例として、図13に示すように、芯成分ポリマー供給孔1の周囲に対角線上に4つの鞘成分ポリマー供給孔2を配置させることが挙げられる。この場合には、芯成分ポリマー供給孔1から吐出された芯成分ポリマーと、鞘成分ポリマー供給孔2から吐出された鞘成分ポリマーとが合流し、最終的には手裏剣形の断面形態が得られるが、鞘成分ポリマーが芯成分ポリマーを完全に包囲した芯鞘型の複合繊維を得ることはできない。また、上記の孔配置を海島型(1つの島成分が芯鞘部を形成)にそのまま適用しても、隣り合う芯成分ポリマー供給孔1から吐出される芯成分ポリマー同士で合流し、その結果、数百、数千の芯鞘部からなる海島型の複合繊維を得ることはできない。
従って、孔充填密度を大きくし、芯鞘部の形成不良を抑制し、特に、高精度な繊維断面形態を有する複合繊維を製造するのは、極めて重要な技術となる。そこで、本発明者らは、従来の技術では、何の配慮もされていなかった、上記問題に関して、鋭意検討を重ねた結果、本発明の新たな技術を見出すに至った。
すなわち、本発明の実施形態の複合口金18は、ポリマー紡出経路方向の下流側に向かい順に、1枚以上の分配板6、最下層分配板5および吐出板10から構成されている。そして、分配板6には、芯成分ポリマー、鞘成分ポリマーおよび第3成分ポリマーをそれぞれ分配するための分配孔7および分配溝8が形成されており、最下層分配板5には、複数の芯成分ポリマー供給孔1、複数の鞘成分ポリマー供給孔2および複数の第3成分ポリマー供給孔21が形成されており、吐出板10には、芯成分ポリマー供給孔1および2つ以上の鞘成分ポリマー供給孔2に連通した芯鞘ポリマー吐出孔19、並びに第3成分ポリマー供給孔21に連通した第3成分ポリマー吐出孔22が形成されている。そして、芯鞘ポリマー吐出孔19をポリマーの紡出経路方向で最下層分配板5に向けて投影した領域内(投影領域29と呼ぶ)に、この芯鞘ポリマー吐出孔19に連通した芯成分ポリマー供給孔1および2つ以上の鞘成分ポリマー供給孔2があり、この領域内で2つ以上の鞘成分ポリマー供給孔2が1つの芯成分ポリマー供給孔1を取り囲むように、芯成分ポリマー供給孔1および鞘成分ポリマー供給孔2が形成されている。
1つの芯成分ポリマー供給孔1とこの芯成分ポリマー供給孔1を取り囲む2つ以上の鞘成分ポリマー供給孔2とを1つの芯鞘孔群としたとき、図2に示すように、1つの投影領域29内に1つの芯鞘孔群が形成されていても、図16に示すように、1つの投影領域内に複数の芯鞘孔群が形成されていてもよい。
最下層分配板5から吐出された芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーは、吐出板10の投影領域29において、鞘成分ポリマーが芯成分ポリマーを取り囲むように合流し、芯鞘ポリマーが形成される。
1つの投影領域29内に1つの芯鞘孔群が形成されている場合、投影領域29の中央に位置した芯成分ポリマーはポリマー紡出経路方向の垂直な方向に拡幅することで、鞘成分ポリマーは芯鞘ポリマー吐出孔19の外壁に移動する。一方、鞘成分ポリマーは、ポリマー紡出経路方向の垂直な方向に拡幅しつつ、芯鞘ポリマー吐出孔19の外周壁面31を沿って円周方向に流れることで、隣り合う鞘成分ポリマー同士と合流する。その結果、中央に芯成分ポリマー、外周にリング状に繋がった鞘成分ポリマーからなる芯鞘ポリマーが形成される。その後、芯鞘ポリマーと第3成分ポリマーとが吐出板10から一斉に吐出されて合流し、複合ポリマーが形成される。
1つの投影領域29内に複数の芯鞘孔群が形成されている場合、芯鞘孔群の中央に位置した芯成分ポリマーはポリマー紡出経路方向の垂直な方向に拡幅し、また、芯鞘孔群の鞘成分ポリマーもポリマー紡出経路方向の垂直な方向に拡幅する。一つの芯鞘孔群において、互いに拡幅し合うポリマー同士が合流することで、中央に芯成分ポリマー、外周にリング状に繋がった鞘成分ポリマーからなる芯鞘ポリマーが形成される。その際、投影領域29の外周側に配置された芯鞘孔群の中の鞘成分ポリマーは、外周壁面31に沿って流れることで、隣り合う鞘成分ポリマーとが合流する。そして、複数個の芯鞘孔群から吐出された芯鞘ポリマー同士が合流し、その後、芯鞘ポリマーと第3成分ポリマーとが吐出板10から一斉に吐出されて合流し、複合ポリマーが形成される。
ここで、本発明の重要なポイントは、芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとが合流するための区間として、芯鞘ポリマー吐出孔19を形成していることである。この区間の役割としては、第3成分ポリマーが合流する前に、芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーを事前に合流させることで、第3成分ポリマーからの影響を小さくできる。そして、もう一つの重要な役割は、鞘成分ポリマーは、芯鞘ポリマー吐出孔19の外周壁面31に接触し、表面張力が働き、円周方向に流れることで、隣り合う鞘成分ポリマー同士が合流し易くなる。その結果、芯鞘ポリマー吐出孔19において、均一な形状(ポリマー紡出経路方向に垂直な断面における形状)の芯鞘ポリマーを形成することが可能となり、ひいては、島成分が均一な芯鞘部を形成した海島型の複合繊維を得ることができる。
また、芯鞘ポリマー吐出孔19の外周壁面31の表面粗さを粗くすることで、外周壁面31と鞘成分ポリマーとの接触角が小さくなり、鞘成分ポリマーが外周壁面31に沿って流れ易くなる。また、鞘成分ポリマーに界面活性剤を添加することにより、表面張力を低下させることにより、鞘成分ポリマーが外周壁面31に沿って流れ易くなる。また、芯成分ポリマーの溶融粘度が、鞘成分ポリマーの溶融粘度よりも小さい場合には、芯鞘ポリマー吐出孔19において、芯成分ポリマーが鞘成分ポリマーの間に介在し易くなるため、鞘成分ポリマーの外周壁面31の沿って流れさせる本発明の効果が顕著となる。また、芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの界面張力が大きい場合には、鞘成分ポリマーが丸化するため、鞘成分ポリマーを外周壁面31に沿って流れさせる本発明の効果が顕著となる。
本発明の別の実施形態では、図10、図11に示すように、最下層分配板5と吐出板10との間に合流板11を有し、合流板11には、芯成分ポリマー供給孔1と芯鞘ポリマー吐出孔19とを連結する芯成分ポリマー導入孔3、鞘成分ポリマー供給孔2と芯鞘ポリマー吐出孔19とを連結する合流孔14、および第3成分ポリマー供給孔21と第3成分ポリマー吐出孔22とを連結する第3成分ポリマー導入孔4が形成されており、1つの芯成分ポリマー導入孔3が2つ以上の合流孔14で取り囲まれており、1つの芯成分ポリマー導入孔3を取り囲む隣り合う2つの合流孔14の最短距離Lが、これら2つの合流孔14のそれぞれに連通した鞘成分ポリマー供給孔2の最短距離Xよりも短くなるように形成されている。合流孔14は、例えば図10に示すように環状溝(C型状の溝)を4箇所で封止した形状でもよく、封止の箇所の数は限定しない。また、図11に示すようにL字状の溝であってもよく、個数は限定しない。また、1つの合流孔14には1つの鞘成分ポリマー供給孔2がつながっていても、複数の鞘成分ポリマー供給孔2がつながっていてもよい。
鞘成分ポリマー供給孔2から吐出された鞘成分ポリマーは、合流孔14において合流孔14の形状に沿って拡がり(1つの合流孔14に複数の鞘成分ポリマー供給孔2がつながっている場合は、合流孔14において鞘成分ポリマーが合流し、合流孔14の形状に沿って拡がり)、その後、芯鞘ポリマー吐出孔19に吐出される。一方、芯成分ポリマーは、芯成分ポリマー供給孔1から芯成分ポリマー導入孔3に導入された後、芯鞘ポリマー吐出孔19に吐出され、合流孔14の形状に形成された鞘成分ポリマーと合流し、鞘成分ポリマーの外周が円周状に繋がることで、芯鞘ポリマーを形成する。この場合、合流板11において、隣り合う鞘成分ポリマー供給孔2から吐出された鞘成分ポリマーが芯成分ポリマーの影響を受けずに合流するため、C型状の鞘成分ポリマー流れを容易に形成することが可能となり、芯鞘部の形成不良を抑制することができる。また、最下層分配板5の隣り合う鞘成分ポリマー供給孔2の最短距離Xよりも、合流板11での隣り合う合流孔14の最短距離Lを短くすることで、隣り合う鞘成分ポリマー同士の距離が近接化し、合流し易くなる役割を果たしている。
本発明のさらに別の実施形態では、図3に示すように、合流板11に1箇所で溝を封止した環状溝の合流孔14が形成されており、1つの芯成分ポリマー導入孔3が1つの環状溝の合流孔14で取り囲まれている。この合流孔14は2つ以上の鞘成分ポリマー供給孔2と芯鞘ポリマー吐出孔19とを連結しており、この溝を封止した箇所での溝間の最短距離Lが、この合流孔14に連通した鞘成分ポリマー供給孔2の最短距離Xよりも短くなるように形成されている。
鞘成分ポリマー供給孔2から吐出された鞘成分ポリマーは、合流孔14において合流し、環状のポリマー流を形成し、その後、芯鞘ポリマー吐出孔19に吐出される。一方、芯成分ポリマーは、芯成分ポリマー供給孔1から芯成分ポリマー導入孔3に導入された後、芯鞘ポリマー吐出孔19に吐出され、環状に形成された鞘成分ポリマーと合流し、鞘成分ポリマーの外周が円周状に繋がることで、芯鞘ポリマーを形成する。この場合、合流板11において、隣り合う鞘成分ポリマー供給孔2から吐出された鞘成分ポリマーが合流孔の中で芯成分ポリマーの影響を受けずに合流するため、環状の鞘成分ポリマー流れを容易に形成することが可能となり、芯鞘部の形成不良を抑制することができる。また、最下層分配板5の隣り合う鞘成分ポリマー供給孔2の最短距離Xよりも、合流孔14の環状溝を封止した箇所での溝間の最短距離Lを短くすることで、隣り合う鞘成分ポリマー同士の距離が近接化し、合流し易くなる役割を果たしている。
また、1つの投影領域29内に複数の芯鞘孔群が形成されている実施形態では、図17に示すように、環状溝の合流孔14をポリマーの紡出経路方向で最下層分配板5に向けて投影した投影像の溝を封止した箇所が投影領域29の外側に向くように、環状溝の合流孔14を形成することが好ましい。環状溝の溝を封止した箇所が投影領域29の外側を向くようにすることで、合流孔14から吐出された鞘成分ポリマーは、外周壁面31に沿って広がるため、鞘成分ポリマー同士が合流し易くなる。その結果、図15に示すように、芯成分ポリマーの中に複数個の鞘成分ポリマーを有した海島構造(図15では4個の海)を形成された繊維を得ることができる。
本発明の吐出板10では、図4に示すように、芯鞘ポリマー吐出孔19を中心に、第3成分ポリマー吐出孔22が三角格子、四角格子または六角格子のいずれかで配列されている。(格子の節点に第3成分ポリマー吐出孔22を配置し、格子の中心に芯鞘ポリマー吐出孔19を配置する。)この場合には、孔充填密度が高くすることが可能となる。第3成分ポリマー吐出孔22の配置は、これに限定されず、隣り合う芯鞘ポリマー吐出孔19から吐出される芯鞘ポリマーが合流しないように、第3成分ポリマー吐出孔22が周囲を包囲していればよい。これにより、隣り合う芯鞘ポリマー吐出孔19との間に第3成分ポリマーを介在できるため、芯鞘ポリマーの比率が高い(第3成分ポリマーの比率が低い)場合においても、芯鞘ポリマー同士の合流を抑制することができる。
本発明の合流板11に配置された隣り合う2つの合流孔14の最短距離L(または、合流板11に形成された1箇所で溝を封止した環状溝の、この溝を封止した箇所での溝間の最短距離L)と、吐出板10の厚さHが、式(2)を満足するように配置されている。
・2≦H/L ・・・(2)。
ここで、吐出板10の厚さは、芯鞘ポリマー吐出孔19のポリマー紡出経路方向の長さとなり、この区間が長い、つまりは吐出板10が厚い方が、合流孔14から吐出された鞘成分ポリマーが、芯成分ポリマー導入孔3から吐出された芯成分ポリマーを囲い込み易くなる。一方、吐出板10を厚くすると、第3成分ポリマー吐出孔22と芯鞘ポリマー吐出孔19との孔間ピッチを狭くできないため、孔充填密度を高めることができない。よって、孔充填密度の向上と、芯鞘部の均一性の向上とを両立させるためには、式(2)を満足することが有効であることを見出した。特に、芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーの溶融粘度差が大きい場合、または界面張力が大きい場合には、隣り合う鞘成分ポリマーが合流し難くなることから、本発明の効果が顕著となる。2>H/Lの場合には、鞘成分ポリマーが芯成分ポリマーを完全には包囲できない場合があり、適用できるポリマーの種類が限定される。
次に、図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7、図10、図11、図16、図17に示した本発明の実施形態の複合口金18に共通した各部材、各部材の形状について詳細に説明する。
本発明における複合口金18は、円形状に限定されず、四角形であってもよく、多角形であってもよい。また、複合口金18における口金吐出孔42の配列は、複合繊維の本数、糸条数、冷却装置17に応じて、適宜決定すればよい。冷却装置17として、環状の冷却装置17では、口金吐出孔42を一列、もしくは複数列に渡り環状に配列するのがよく、また、一方向の冷却装置17では、口金吐出孔42を千鳥に配列するのがよい。口金吐出孔42のポリマーの紡出経路方向に垂直な方向の断面は丸形状に限定されず、丸形以外の断面状や中空断面状であってもよい。但し、丸形以外の断面形状とする場合は、ポリマーの計量性を確保するために、口金吐出孔42の長さを大きくするのが好ましい。
本発明における芯成分ポリマー供給孔1、鞘成分ポリマー供給孔2、第3成分ポリマー供給孔21、芯成分ポリマー導入孔3、第3成分ポリマー導入孔4、第3成分ポリマー吐出孔22は、ポリマーの紡出経路方向に垂直な方向の断面は丸形状に限定されず、丸形以外の異形断面状であってもよい。また、本発明における芯鞘ポリマー吐出孔19は、ポリマーの紡出経路方向に垂直な方向の断面は丸形状に限定されず、丸形以外の異形断面状であってもよい。この場合、芯鞘部が異形断面形状を有した複合繊維を得ることができる。
本発明における縮小孔12のポリマー紡出経路方向の最上流側の孔径は、芯鞘ポリマー吐出孔19と第3成分ポリマー吐出孔22からなる吐出孔群25の外接円の外径よりも大きく、かつ、外接円の断面積と、縮小孔12のポリマー紡出経路方向の最上流側との断面積比が極力小さくなるように構成されるのが好ましい。それにより、吐出板10より吐出された各ポリマーの拡幅が抑えられ、複合ポリマー流を安定化させることができる。
本発明における分配板6、最下層分配板5、合流板11、吐出板10に形成された各孔は、ポリマー紡出経路方向に孔断面積が一定であるのが好適であるが、断面積が漸減、または漸増、もしくは漸減と漸増していてもよい。これは、本発明では、主にエッチング処理を用いて孔加工していることから、微小な孔を加工する際に、孔断面積が一定とならない場合があるためであり、その場合には、加工条件等を適宜適正化すれば良い。
本発明における分配板6、最下層分配板5、合流板11、吐出板10は、1枚であってもよいが、複数枚が積層されていてもよい。この場合、1枚の各板では、ポリマー計量性が得られず、繊維形態が経時的に変化した場合には、複数枚を積層することで、ポリマーの計量性を確保することができる。
本発明の1枚の分配板6には、分配板6の上流側に分配孔7が配設され、それに連通して分配溝8(下流側)が配設されていてもよく、また、分配板6の上流側に分配溝8が配設され、それに連通して分配孔7(下流側)が配設されていてもよい。このように、分配孔7と分配溝8を連通させ、これを1回以上繰り返すことで、ポリマーを分配することができる。ここで、吐出板10の芯鞘ポリマー吐出孔19の孔充填密度を大きくした、つまりは、芯鞘ポリマー吐出孔19と第3成分ポリマー吐出孔22との間隔を小さくするために、本発明の分配板6、最下層分配板5、合流板11、吐出板10は、薄板の積層構造となっている。各薄板に配設された孔は、主にポリマー紡出経路方向にポリマーを分配し、溝は、主にポリマー紡出経路方向に垂直な方向にポリマーを分配する。孔が配設された薄板と、溝が配設された薄板を交互に積層させることで、繊維断面方向にポリマーを自由、かつ容易に分配することができる。これを利用して、極めて狭い領域に孔を密集させることが可能となる。
本発明の分配板6、最下層分配板5、合流板11、吐出板10の作製方法としては、通常電気・電子部品の加工に用いられる、薄板にパターンを転写し、化学的に処理することで微細加工を施すエッチング加工が好適である。ここで、エッチング加工とは、エッチング液などの化学薬品による化学反応・腐食作用を応用して薄板を食刻(溶解加工・化学切削)する加工方法であり、目的とする加工形状にマスキング(必要な部分表面を部分的に被覆保護すること)による防食処理を施した上で、エッチング液などの腐食剤によって不要部分を除去することで目的の加工形状を非常に高精度に得ることができる。エッチング液などの腐食剤は一般的なものを用いれば足りる。例えば、硝酸、硫酸、塩酸などを用いることができる。この加工方法では、被加工物の歪への配慮が必要ないため、上記した他の加工方法と比較して、被加工物の厚みの下限に制約がなく、極めて薄い金属板に孔や溝を穿設することができる。また、エッチング加工で作製した薄板は1枚当たりの厚みを薄くすることが可能になるため、複数枚積層させても、複合口金18の総厚みに与える影響はほとんど無く、所望の断面形態の複合繊維に合わせて、他のパック部材を新設する必要がない。また、他の作製方法としては、従来の口金作製で用いられるドリル加工や金属精密加工である旋盤、マニシング、プレス、レーザー加工等を用いることで可能である。但し、これらの加工は被加工物の歪抑制という観点から、加工板の厚みの下限に制約があるため、複数の分配板を積層させる本発明の複合口金に適用するには板厚みを考慮する必要がある。 次に、図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7に示した本発明の実施形態の複合口金18に共通した複合繊維の製造方法について詳細に説明する。
本発明の複合繊維の製造方法は、公知の複合紡糸機で、本発明の複合口金18を使用すればよい。例えば、溶融紡糸の場合には、紡糸温度は、2種類以上のポリマーのうち、主に高融点や高粘度ポリマーが流動性を示す温度とする。この流動性を示す温度としては、分子量によっても異なるが、そのポリマーの融点が目安となり、融点+60℃以下で設定すればよい。これ以下であれば、紡糸ヘッドあるいは紡糸パック15内でポリマーが熱分解等することなく、分子量低下が抑制されるため、好ましい。紡糸速度はポリマーの物性や複合繊維の目的によって異なるが、500〜6000m/分程度とすることができる。特に、産業資材用途で高い力学的特性が必要な場合には、高分子量ポリマーを用い、500〜2000m/分とし、その後高倍率延伸することが好ましい。延伸に際しては、ポリマーのガラス転移温度など、軟化できる温度を目安として、予熱温度を適切に設定することが好ましい。予熱温度の上限としては、予熱過程で繊維の自発伸長により糸道乱れが発生しない温度とすることが好ましい。例えば、ガラス転移温度が70℃付近に存在するPETの場合には、通常この予熱温度は80〜95℃程度で設定される。
本発明の芯成分ポリマー導入孔3、合流孔14から吐出される各成分のポリマーの吐出速度比は、吐出量、孔径および孔数によって、制御することが好ましい。また、本発明の芯鞘ポリマー吐出孔19、第3成分ポリマー吐出孔22から吐出される各成分のポリマーの吐出速度比は、吐出量、孔径および孔数によって、制御することが好ましい。この吐出速度の範囲としては、単孔当たりの吐出速度の比が0.05〜20であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜10の範囲であり、この範囲であれば、ポリマーは層流として形成されるため、断面形態が著しく安定し、精度よく形態を維持することができる。
本発明に使用される芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーの溶融粘度の比率R(=芯成分ポリマーの溶融粘度/鞘成分ポリマーの溶融粘度)は、0.6以上7.0以下が好ましい。溶融粘度の比率Rを0.6以上7.0以下とすることで、安定的に芯鞘部を形成することができる。ポリマーの溶融粘度の比率Rが7.0以下であると、芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの界面が安定化し、芯鞘部が経時的に変動することが少なくなる。比率Rが0.6以上であると、芯成分ポリマーを鞘成分ポリマーが包囲し易くなり、芯鞘部の不良の発生を抑えられる。
本発明に使用される芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの間の界面張力は、0.1mN/m未満が好ましい。界面張力を0.1mN/m未満とすることで、安定的に芯鞘部を形成することができる。界面張力が0.1mN/m未満であると、芯成分ポリマーを鞘成分ポリマーが包囲し易くなり、芯鞘部の不良の発生を抑えられる。
次に、本発明の複合口金18によって得られる複合繊維とは、2種類以上のポリマーが組み合わされた繊維のことを意味し、繊維横断面において1種類、または2種類のポリマーが島状形態をとって存在し、各島において、芯鞘を形成されている繊維のことを言う。ここで、本発明のポリマーとは、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン等々の分子構造が異なるポリマーを2種類以上使用するということが含まれるのは言うまでもないが、製糸安定性等を損なわない範囲で、二酸化チタン等の艶消し剤、酸化ケイ素、カオリン、着色防止剤、安定剤、抗酸化剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、着色顔料、表面改質剤等の各種機能性粒子や有機化合物等の添加剤や粒子の添加量が異なること、また、分子量が異なること、あるいは、共重合がなされている等などが含まれる。また、セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアクリルニトリル等のポリマーを溶媒に溶解させたポリマー溶液であってもよい。
本発明の複合口金18によって得られる複合繊維の単糸断面は、丸形状はもとより、三角、扁平等の丸形以外であってもよい。また、本発明は、極めて汎用性の高い発明であり、複合繊維の単糸繊度により特に限られるものではなく、複合繊維の単糸数により特に限られるものではなく、さらに、複合繊維の糸条数により特に限られるものでも無く、1糸条であってもよく、2糸条以上の多糸条であってもよい。
本発明の複合口金18によって得られる芯鞘型の複合繊維とは、図8に示すように、異なる2種類のポリマーが繊維軸方向に垂直な断面において、海島構造を形成し、各島成分において、芯鞘構造が形成されている繊維、または、図15に示すように、海島構造を形成し、各島成分の中に、更に小さく分割された島成分が形成されている繊維を言う。(ここで言う海島構造とは、芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーで構成されている島部分が、第3成分ポリマーポリマーで構成されている海部分により複数に区別されている構造をいう)また、本発明の中空型の複合繊維とは、図9に示すように、芯鞘型の複合繊維の芯成分ポリマーと第3成分ポリマーとが、同一成分のポリマーで構成される複合繊維を言う。
本発明の複合口金18を用いて得られる芯鞘部の個数に関しては、理論的には1個からスペースの許す範囲で無限に作製することは可能であるが、実質的に実施可能な範囲として1〜10000個が好ましい範囲である。本発明の複合口金18の優位性を得る範囲としては100〜2000個がさらに好ましい範囲である。
本発明においては、孔充填密度が0.2孔/mm以上であることが好ましい。孔充填密度が0.2孔/mm以上であれば、従来の複合口金技術との差異がより明確となる。本発明者等が検討した範囲では、孔充填密度は0.5〜4孔/mmの範囲であれば実施可能であった。この孔充填密度という観点では、本発明の複合口金18の優位性が得られる範囲としては0.2〜2孔/mmが好ましい範囲である。
本発明におけるマルチフィラメントとは、複合繊維の第3成分ポリマーを溶出することで得られる芯鞘型の極細繊維であり、それぞれの外接繊維径が10〜2000nmである。
本発明の複合口金18は、溶融紡糸法の適用に限定されず、湿式紡糸法や、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法にも適用することができる。湿式紡糸法に適用する場合は、凝固浴槽内に複合口金18を浸漬させ、芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーには、溶媒に溶解させたポリマー溶液、第3成分ポリマーには凝固液を用いることで、芯鞘型のマルチフィラメントを形成することができる。この複合口金18の特徴は、吐出板10を出た直後から芯鞘ポリマーと凝固液との液流の速度差が無くなるため、液抵抗が低減され、その結果、引取速度を高めることが可能となる。また、芯成分ポリマーも凝固液を用いることで、中空型のマルチフィラメントを形成することが可能となる。
また、乾式紡糸法を適用する場合は、図5に示す複合口金18の口金23部分を取り除いた構成とし、これを、凝固浴槽の上方に設置する。そこで、吐出板10の芯鞘ポリマー吐出孔19から芯鞘ポリマー、第3成分ポリマー吐出孔22から凝固液を吐出させることで、芯鞘型のマルチフィラメントを形成することができる。この複合口金18の特徴は、隣り合う芯鞘ポリマー吐出孔19の間に第3成分ポリマー吐出孔22を配置し、凝固液を供給しているため、芯鞘ポリマーが液面に着水した直後より、凝固液との液流の速度差が無くなるため、液抵抗が低減され、その結果、引取速度を高めることが可能となる。
以下実施例を挙げて、本実施形態の複合口金の効果を具体的に説明する。
(1)芯鞘型の複合繊維の芯鞘部の析出
芯鞘型複合繊維から芯鞘部を析出するために、易溶出成分の第3成分が溶出可能な溶液などに芯鞘型複合繊維を浸漬して除去し、難溶出成分の芯鞘部のマルチフィラメントを得た。易溶出成分が、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが共重合された共重合PETやポリ乳酸(PLA)等の場合には、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いた。また、アルカリ水溶液は50℃以上に加熱すると、加水分解の進行を早めることができる。また、流体染色機などを利用して処理すれば、一度に大量に処理をすることができる。
(2)マルチフィラメントの繊維径および繊維径バラツキ(CV%)
得られたマルチフィラメントをエポキシ樹脂で包埋し、Reichert社製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結した。この凍結したサンプルをダイヤモンドナイフを具備したReichert−Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した。この切削面を(株)キーエンス製 VE−7800型走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率5000倍で撮影した。得られた写真から無作為に選定した150本の繊維を抽出し、写真について画像処理ソフト(WINROOF)を用いて全ての外接円径(繊維径)を測定し、平均繊維径求めた。以上の値は全て3ヶ所の各写真について測定を行い、3ヶ所の平均値とし、nm単位で小数点1桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入した。
(3)芯鞘部バラツキ(CV%)
紡糸開始時より72時間連続して紡糸を行い、この72時間後の芯鞘型複合繊維を繊維軸方向の任意の位置で切断した。この繊維断面を(株)キーエンス製 VE−7800型走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率3000倍で撮影した。上記で撮影した断面写真より、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、得られた複合繊維の全ての芯鞘部の外接円形を測定し、平均繊維径、繊維径標準偏差を求めた。これらの結果から下記式に基づき芯鞘部バラツキCV%(変動係数:Coefficient of Variation)を算出した。ここで、測定した全ての芯鞘部において、鞘成分が芯成分を包囲せず、リング状となる鞘成分が形成されていない場合、芯鞘部の形成不良(表1では‐で表示している)とした。
・芯鞘部バラツキ(CV%)=(繊維径標準偏差/平均繊維径)×100。
(4)繊度
芯鞘型複合繊維を丸編みとし、水酸化ナトリウム3質量%水溶液(80℃ 浴比1:100)に浸漬することで易溶解成分を99%以上溶解除去した後、編みを解くことでマルチフィラメントを抜き出した。この抜き出したマルチフィラメント1m分の重量を測定し、10000倍することで繊度を算出した。これを10回繰り返し、その単純平均値の小数点第2位を四捨五入した値を繊度とした。
(5)ポリマーの溶融粘度
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、東洋精機製“キャピログラフ1B”によって、歪速度を段階的に変更して、溶融粘度を測定した。なお、測定温度は紡糸温度と同様にし、実施例あるいは比較例には、1216s−1の溶融粘度を記載している。ちなみに、加熱炉にサンプルを投入してから測定開始までを5分とし、窒素雰囲気下で測定を行った。
(6)ポリマー同士の界面張力
各ポリマーの表面張力をペンダントドロップ法((株)KRUSS社製 DSA25)で測定し、Fowkesの式[γ=σ1+σ2−2(σ1・σ2)^0.5、σ1:芯成分ポリマーの表面張力、σ2:鞘成分ポリマーの表面張力]を用いて、界面張力γを算出した。なお、測定温度は紡糸温度と同様とした。
[実施例1]
芯成分ポリマーとして極限粘度[η]0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘成分ポリマーとして極限粘度[η]0.59のポリエチレンテレフタレート(PET)および第3成分ポリマーとして極限粘度[η]0.58の5−ナトリウムスルホイソフタル酸5.0モル%共重合したPET(共重合PET)を285℃で別々に溶融した。これら溶融したポリマーを下記の複合口金18を用いて、芯/鞘/第3成分ポリマーの吐出比を24/6/70にて吐出した。吐出したポリマーを冷却装置17で冷却し、その後、給油、交絡処理、熱延伸を行い、巻取ローラで1500m/分の速度で巻き取り、150dtex−10フィラメント(単孔吐出量2.25g/min)の未延伸繊維を採取した。巻き取った未延伸繊維を90℃と130℃に加熱したローラ間で2.5倍延伸を行い、60dtex−10フィラメントの芯鞘型複合繊維とし、前述した方法で、第3成分を99%以上溶解し、2000本のマルチフィラメントを採取した。芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの溶融粘度の比率は1.6であった。
用いた複合口金18は、分配板6、最下層分配板5および吐出板10にて構成されている。吐出板10は、図4に示すように芯鞘ポリマー吐出孔19の周囲に8個の第3成分ポリマー吐出孔22が配置されている。芯鞘ポリマー吐出孔19は直径φ1mmであり、孔径孔数200個、孔充填密度は0.5孔/mmとした。第3成分ポリマー吐出孔22、芯成分ポリマー供給孔1、鞘成分ポリマー供給孔2および第3成分ポリマー供給孔21の直径はそれぞれφ0.2mmとした。そして、1個の芯成分ポリマー供給孔1の周囲に4個の鞘成分ポリマー供給孔2を円周方向に等配分になるように配置している。隣り合う鞘成分ポリマー供給孔2間の最短距離は0.35mmである。結果を表1にまとめた。芯鞘部の不良(鞘成分がリング状にならず、第3成分との合流が発生する)が無く、芯鞘部バラツキは7.2%となり、このマルチフィラメントの繊維径は1266nmとなった。
[実施例2]
最下層分配板5と吐出板10の間に合流板11配置し、それ以外は実施例1と同じ複合口金18を用いた。合流板11には、図10に示すように、1個の芯鞘ポリマー導入孔3の周囲を、環状溝の一部を封止したように4個の合流孔14が配置されている。吐出板10の厚み0.3mm、芯鞘ポリマー導入孔3、第3成分ポリマー導入孔4の直径φ0.2mm、合流孔14の溝幅0.2mm、隣り合う2つの合流孔14との最短距離は0.1mmとした。実施例1と同等のポリマー、同等の繊度、紡糸条件で紡糸し、マルチフィラメントを採取した。結果を表1にまとめた。芯鞘部の不良が無く、芯鞘部バラツキは5.1%となった。合流孔14の中で、鞘成分ポリマーが芯成分ポリマーに影響されることなく環状に拡がることができたため、実施例1と比べて芯鞘部バラツキは小さくなった。
[実施例3]
図3に示すように、合流孔14を1箇所で溝を封止した環状溝とした以外は、実施例2と同じ複合口金18を用いた。合流孔14の溝幅0.2mm、合流溝14の溝を封止した箇所での溝間の最短距離は0.1mmとした。実施例1と同等のポリマー、同等の繊度、紡糸条件で紡糸し、マルチフィラメントを採取した。結果を表1にまとめた。芯鞘部の不良が無く、芯鞘部バラツキは5.4%となった。合流孔14の中で、鞘成分ポリマーが芯成分ポリマーに影響されることなく環状に拡がることができたため、実施例1と比べて芯鞘部バラツキは小さくなった。
[実施例4]
実施例2と同じ複合口金18を用いて、芯成分ポリマーを極限粘度[η]0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘成分ポリマーを極限粘度[η]0.71のポリエチレンテレフタレート(PET)とし、それ以外は、実施例2と同等の吐出比、同等の繊度、紡糸条件で紡糸し、マルチフィラメントを採取した。結果を表1にまとめた。芯鞘部の不良が無く、芯鞘部バラツキは9.2%となった。芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの溶融粘度の比率が0.6となったため、実施例2に比べて芯鞘部バラツキが大きくなったものの、芯鞘部の径は充分に均一であった。
[実施例5]
実施例2と同じ複合口金18を用いて、芯成分ポリマーを極限粘度[η]0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘成分ポリマーをポリスチレンとする以外は、実施例2と同等の吐出比、同等の繊度、紡糸条件で紡糸し、マルチフィラメントを採取した。結果を表1にまとめた。芯鞘部で不良が無く、芯鞘部バラツキは9.7%となった。芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの溶融粘度の比率が7.0となったため、実施例2に比べて芯鞘部バラツキが大きくなったものの、芯鞘部の径は充分に均一であった。
[実施例6]
吐出板10の厚みを0.1mmにした以外は、実施例2と同じ複合口金18を用い、実施例2と同等の吐出比、同等の繊度、紡糸条件で紡糸し、マルチフィラメントを採取した。結果を表1にまとめた。芯鞘部の不良が無く、芯鞘部バラツキは9.9%となった。実施例1に比べて吐出板10の厚みが薄くなったため、鞘成分ポリマーが芯成分ポリマーを囲みにくくはなったものの、芯鞘部の径は充分に均一であった。
[比較例1]
図12に示すように、吐出板10を取り除いた以外は実施例1と同じ複合口金18を用いて、実施例1と同等のポリマー、同等の繊度、紡糸条件で紡糸した。結果を表1にまとめた。吐出板10がないため、全ての芯鞘部において芯鞘構造が形成されず、マルチフィラメントを得ることができなかった。
[参考例1]
実施例2と同じ複合口金18を用いて、鞘成分ポリマーを極限粘度[η]0.76のポリエチレンテレフタレート(PET)とし、それ以外は、実施例2と同等のポリマー、同等の繊度、紡糸条件で紡糸し、マルチフィラメントを採取した。結果を表1にまとめた。芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの溶融粘度の比率が0.6未満であったため、全ての芯鞘部において芯鞘構造が形成されず、マルチフィラメントを得ることができなかった。
[参考例2]
実施例2と同じ複合口金18を用いて、芯成分ポリマーを極限粘度[η]0.68のポリエチレンテレフタレート(PET)とし、鞘成分ポリマーにポリスチレンとする以外は、実施例2と同等の繊度、紡糸条件で紡糸し、マルチフィラメントを採取した。結果を表1にまとめた。芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの溶融粘度の比率が7.0を越えたため、一部の芯鞘部において形成不良が見られ、芯鞘部バラツキは28.4%となった。
[参考例3]
実施例2と同じ複合口金18を用いて、鞘成分ポリマーをポリプロピレンとし、それ以外は実施例2と同等のポリマー、同等の繊度、紡糸条件で紡糸し、マルチフィラメントを採取した。結果を表1にまとめた。芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの間の界面張力が0.1以上であったため、全ての芯鞘部において芯鞘構造が形成されず、マルチフィラメントを得ることができなかった。
Figure 0006398562
本発明は、一般的な溶液紡糸法に用いられる複合口金に限らず、メルトブロー法およびスパンボンド法に用いられる口金にも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
1 芯成分ポリマー供給孔
2 鞘成分ポリマー供給孔
3 芯成分ポリマー導入孔
4 第3成分ポリマー導入孔
5 最下層分配板
6 分配板
7 分配孔
8 分配溝
9 計量板
10 吐出板
11 合流板
12 縮小孔
13 芯成分ポリマー(芯部分)
14 合流孔
15 紡糸パック
16 スピンブロック
17 冷却装置
18 複合口金
19 芯鞘ポリマー吐出孔
20 鞘成分ポリマー(鞘部分)
21 第3成分ポリマー供給孔
22 第3成分ポリマー吐出孔
23 口金
24 第3成分ポリマー
25 吐出孔群
26 芯鞘ポリマー
27 芯鞘孔群
28 複合ポリマー
29 投影領域
30 パイプ
31 外周壁面
32 吐出導入孔
33 上部板
34 中部板
35 下部板
41 パイプ挿入孔
42 口金吐出孔

Claims (12)

  1. 芯成分ポリマー、鞘成分ポリマーおよび第3成分ポリマーによって構成される複合ポリマー流を吐出するための複合口金であって、
    ポリマー紡出経路方向の下流側に向かい順に、1枚以上の分配板、最下層分配板および吐出板を有し、
    前記分配板には、前記芯成分ポリマー、鞘成分ポリマーおよび第3成分ポリマーをそれぞれ分配するための分配孔および分配溝が形成されており、
    前記最下層分配板には、複数の芯成分ポリマー供給孔、複数の鞘成分ポリマー供給孔および複数の第3成分ポリマー供給孔が形成されており、
    前記吐出板には、前記芯成分ポリマー供給孔および2つ以上の前記鞘成分ポリマー供給孔に連通した芯鞘ポリマー吐出孔、並びに前記第3成分ポリマー供給孔に連通した第3成分ポリマー吐出孔が形成されており、
    前記芯鞘ポリマー吐出孔をポリマーの紡出経路方向で前記最下層分配板に向けて投影した領域内に、この芯鞘ポリマー吐出孔に連通した前記芯成分ポリマー供給孔および前記2つ以上の鞘成分ポリマー供給孔があり、この領域内で2つ以上の鞘成分ポリマー供給孔が1つの芯成分ポリマー供給孔を取り囲むように前記芯成分ポリマー供給孔および前記鞘成分ポリマー供給孔が形成されている、複合口金。
  2. 1つの前記芯成分ポリマー供給孔とこの芯成分ポリマー供給孔を取り囲む2つ以上の前記鞘成分ポリマー供給孔とを1つの芯鞘孔群としたとき、
    前記芯鞘ポリマー吐出孔をポリマーの紡出経路方向で前記最下層分配板に向けて投影した領域内に、複数の前記芯鞘孔群が形成されている、請求項1の複合口金。
  3. 前記最下層分配板と前記吐出板との間に合流板を有し、
    前記合流板には、前記芯成分ポリマー供給孔と前記芯鞘ポリマー吐出孔とを連結する芯成分ポリマー導入孔、前記鞘成分ポリマー供給孔と前記芯鞘ポリマー吐出孔とを連結する合流孔、および前記第3成分ポリマー供給孔と前記第3成分ポリマー吐出孔とを連結する第3成分ポリマー導入孔が形成されており、
    1つの前記芯成分ポリマー導入孔が2つ以上の前記合流孔で取り囲まれており、
    前記芯成分ポリマー導入孔を取り囲む隣り合う2つの前記合流孔の最短距離が、これら2つの合流孔のそれぞれに連通した前記鞘成分ポリマー供給孔の最短距離よりも短い、請求項1または2の複合口金。
  4. 隣り合う2つの前記合流孔の最短距離Lと前記吐出板の厚さHが、下記式を満足する請求項3の複合口金。
    ・2≦H/L
  5. 前記最下層分配板と前記吐出板との間に合流板を有し、
    前記合流板には、前記芯成分ポリマー供給孔と前記芯鞘ポリマー吐出孔とを連結する芯成分ポリマー導入孔、2つ以上の前記鞘成分ポリマー供給孔と前記芯鞘ポリマー吐出孔とを連結する合流孔、および前記第3成分ポリマー供給孔と前記第3成分ポリマー吐出孔とを連結する第3成分ポリマー導入孔が形成されており、
    1つの前記芯成分ポリマー導入孔が1つの前記合流孔で取り囲まれており、
    前記合流孔は1箇所で溝を封止した環状溝であり、この溝を封止した箇所での溝間の最短距離が、この合流板に連通した前記2つ以上の鞘成分ポリマー供給孔の最短距離よりも短い、請求項1または2の複合口金。
  6. 1つの前記芯成分ポリマー供給孔とこの芯成分ポリマー供給孔を取り囲む2つ以上の前記鞘成分ポリマー供給孔とを1つの芯鞘孔群としたとき、
    前記芯鞘ポリマー吐出孔をポリマーの紡出経路方向で前記最下層分配板に向けて投影した領域内に、複数の前記芯鞘孔群が形成されており、
    前記環状溝をポリマーの紡出経路方向で前記最下層分配板に向けて投影した投影像の溝を封止した箇所が、前記領域の外側を向いている、請求項5の複合口金。
  7. 前記合流孔の溝を封止した箇所での溝間の最短距離Lと前記吐出板の厚さHが、下記式を満足する請求項5または6の複合口金。
    ・2≦H/L
  8. 芯鞘ポリマー吐出孔の孔充填密度が0.2個/mm以上である、請求項1から7のいずれかの複合口金。
  9. 繊維径が2〜30μmの範囲となる単繊維から構成され、この単繊維の断面中に100個以上の芯鞘部が形成されており、この芯鞘部を構成する芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの溶融粘度の比率Rが0.6以上7.0以下である複合繊維。
  10. 前記芯鞘部を構成する芯成分ポリマーと鞘成分ポリマーとの間の界面張力が0.1mN/m未満である、請求項の複合繊維。
  11. 請求項1から8のいずれかの複合口金を用いた複合紡糸機により複合繊維を製造する、複合繊維の製造方法。
  12. 前記芯成分ポリマーと前記第3成分ポリマーとが同一成分のポリマーである、請求項11の複合繊維の製造方法。
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