〔第1の実施形態〕
以下、図1、図2、図3及び図4を用いて、第1の実施形態について詳細に説明する。図1は、第1の実施形態における、車両制御装置を含むシステム1の一例を概略的に示すシステム構成図である。図2は、第1の実施形態における、ステアリング装置30の一例を概略的に示すシステム構成図である。図3は、第1の実施形態における、抑制部70により実施される処理の一例を示すフローチャートである。図4は、第1の実施形態における、システム1の動作を説明するタイムチャートの一例である。
まず、図1について説明する。システム1は、ECU(Electronic Control Unit)(車両制御装置の一例)10と、センサ20と、ステアリング装置30と、カメラ40と、を含む。また、ECU10は、車線逸脱防止制御部80と、抑制部70と、手放し操作検出部60と、を含む。
ECU10は、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータとして構成されてよい。ROMには、CPUが実行する各種プログラムが格納されてよい。尚、ECU10の機能は、任意のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア及びそれらの任意の組み合わせで実現されてもよい。
センサ20は、例えば、ステアリングホイールの1個所、又は複数個所において温度変化や振動(心拍による)、圧力変化、電圧変化等を検出することにより、ステアリングホイールがドライバの手に触れられているか(すなわち、保持されているか)を検出するためのセンサである。センサ20の出力データは、ECU20に送信される。尚、センサ20は、ドライバがステアリングを保持することでステアリングに入力される回転トルクを検出するセンサ(トルクセンサ34)であってもよい。このとき、回転トルクが所定閾値以下(0を含む)場合に、ステアリングホイールがドライバの手に触られていないこと(すなわち、ステアリングが保持されていないこと)を検出する。
ステアリング装置30は、例えば、図2に示すように、操舵角センサ32と、トルクセンサ34と、アシストモータ36と、コントローラ38と、を備える電動パワーステアリング装置である。
操舵角センサ32は、操舵角信号をコントローラ38に送信する。なお、操舵角信号は、ECU10に送信される。トルクセンサ34は、ステアリングトルクに応じた信号をコントローラ38に送信する。アシストモータ36は、車両の操舵に必要なトルクを出力してドライバのステアリング操作をアシストする。コントローラ38は、車線逸脱防止制御が行われない通常時には、トルクセンサ34からのトルク信号等に基づいて、車両の操舵に必要な操舵力を出力するように、アシストモータ36に制御信号を出力する。また、車線逸脱防止制御が行われているときには、上記通常時の操舵力に加えて(又は、代えて)、ECU10からの指示信号に基づいた補助操舵力を出力するように、アシストモータ36を制御する。
カメラ40は、例えば、ウィンドシールド中央上部に配設されたCCDカメラやCMOSカメラであり、車両前方斜め下方向に光軸を有し、車両前方の道路を撮像する。カメラ40の撮像画像は、ECU10に送信される。
車速センサ50は、例えば、車両の各車輪に取り付けられた車輪速センサとスキッドコントロールコンピュータからなり、車輪速センサが出力する車輪速パルス信号をスキッドコントロールコンピュータが車速矩形波パルス信号(車速信号)に変換してECU10に送信する。
手放し操作検出部60は、ドライバのステアリングに関する手放し操作を検出する。手放し操作検出部60は、センサ20からの入力により、ドライバがステアリングに関する手放し操作をしているか否かを判定する。また、判定結果を抑制部70に出力する。手放し操作検出部60は、センサ20からの入力が、所定時間t0以上継続して、ステアリングホイールがドライバの手に触れられていない旨の入力であった場合に、ドライバがステアリングに関する手放し操作していると判定してよい。
抑制部70は、車線逸脱防止制御部80に、車線逸脱防止制御部80が実行する車線逸脱防止制御の抑制、及び、抑制の少なくとも部分的な解除を要求する。尚、車線逸脱防止制御の抑制とは、車線逸脱防止制御の停止を含むものとする(詳細は後述する)。
車線逸脱防止制御部80は、自車両が走行する走行車線を、自車両が逸脱するのを防止するための車線逸脱防止制御を実行する。車線逸脱防止制御部80は、抑制部70からの抑制の要求がある場合と抑制部70からの抑制の要求がない場合とで異なる動作をする。抑制部70からの要求がある場合の車線逸脱防止制御部80の動作(補助操舵力の補正方法)については、後述する。抑制部70からの抑制の要求が無い場合の車線逸脱防止制御の方法は、任意であるが、例えば、以下のような方法であってよい。
車線逸脱防止制御部80は、まず、カメラ40の撮像画像において道路区画線の認識を行ってもよい。この認識は、例えば、カメラ40の撮像画像に対して、2値化処理や特徴点抽出処理を行うことにより、道路上の区画線に該当すると考えられる画素(道路区画線候補点)を選出し、選出した道路区画線候補点のうち連続的に並んだものを道路区画線であると認識する。尚、この他にも、種々の手法により道路区画線を認識することが可能であり、路肩や中央分離帯をパターンマッチング等の手法により検出してもよい。そして、認識された道路区画線が画像に占める位置に基づいて、道路区画線と自車両中央部(車両幅方向に関する中心線上の任意の位置)との位置関係、及び、道路区画線の延在方向を基準とした自車両の走行方向の角度、及び、走行車線の曲率半径等の走行車線の形状を導出する。
車線逸脱防止制御部80は、上記如く得られた位置関係、及び、自車両の走行方向の角度、及び走行車線の曲率半径等に基づいて、所定時間td(例えば、0コンマ数秒から数秒等)後に走行車線から逸脱すると予想された場合に、車線逸脱を防止する補助操舵力(車線逸脱方向と逆方向の操舵力)を要求する指示信号を、ステアリング装置30に出力する。尚、自車両が所定量D1(例えば、車両幅の1/2)以上、車線を逸脱した場合に、車線逸脱を防止する補助操舵力の要求を止めてもよい。また、自車両が所定量D1より小さい所定量D2(例えば、車両幅の1/3)以上、車線を逸脱した場合に、逸脱量に比して車線逸脱を防止する補助操舵力(車線逸脱防止制御の制御量)を減少させてもよい。
或いは、車線逸脱防止制御部80は、道路区画線から車線中央を導出し、車線中央からの自車両中央部の変位量に基づいて、車線中央を走行させるような補助操舵力を要求する指示信号を、ステアリング装置30に出力してもよい。これにより、自車両の走行車線からの逸脱を抑制することができる。以上が、抑制部70からの抑制の要求が無い場合の車線逸脱防止制御の方法の一例である。
次に、図3に示すフローチャートについて説明する。図3のフローチャートは、第1の実施形態における、抑制部70により実施される処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートは、車線逸脱防止制御部80が車線逸脱防止制御を実行可能な状態で、繰り返し、抑制部70により実施される処理である。尚、車線逸脱防止制御を実行可能な状態とは、例えば、図示しない車線逸脱制御SWがON状態である場合等である。
ステップS101では、抑制解除フラグをOFFに設定する。抑制解除フラグは、後述するステップS104の判定に用いるフラグである。
ステップS102では、車線逸脱防止制御中であり、且つ、手放し操作検出部60がドライバによるステアリングに関する手放し操作をしているか否かを判定する。車線逸脱防止制御中であり、且つ、手放し操作検出部60がドライバによるステアリングに関する手放し操作をしていると判定された場合には、ステップS104に進み、そうでない場合には、ステップS108に進む。尚、ここでは、「車線逸脱防止制御中である」とは、自車両が走行車線から逸脱すると予想され、車線逸脱を防止する補助操舵力が必要な場合、又は、車線中央からの自車両の変位量に基づいて、車線中央を走行させるような補助操舵力が必要な場合、とする。即ち、「車線逸脱防止制御中である」とは、仮に抑制部70が存在しなければ、車線逸脱防止制御部80が0よりも大きい補助操舵力を要求する指示信号を、ステアリング装置30に出力することになる状態を指す。
ステップS103では、抑制部動作フラグをONにする。抑制部動作フラグが、ステップS103の処理が実行される前(前回以前の処理周期)に、ONになっている場合は、抑制部動作フラグのONを継続する。抑制部動作フラグは、抑制部70が動作しているか否かを示すフラグであり、ONのときは抑制部70が動作していることを示し、OFFのときは抑制部70が動作していないことを示す。ここで、「抑制部70が動作する」とは、後述するステップS104〜S107の処理が、抑制部70により実行されることである。ステップ103の処理が終了すると、ステップS104に進む。
ステップS104では、車線逸脱防止制御の抑制を継続している継続時間T1が所定時間t1(t1>0)以上である、又は、抑制解除フラグがONであるか否かを判定する。所定時間t1は、0より大きい任意の値でもよいし、車線逸脱防止制御の抑制を所定時間t1継続後に、車線逸脱防止制御の抑制が解除された場合に、車線逸脱防止が可能になるように、予め設定される適合値であってもよいし、自車両の走行状態により変化する変化値であってもよい。所定時間t1が変化値である場合の、所定時間t1の算出方法の一例として、以下の式を示す。
t1 = (走行車線の曲率半径[m]/車速[m/s])×A1
上記の式におけるA1は適合値である。本フローチャートの処理において、最初のS104の判定が行われる時のみ、上記の式により所定時間t1を算出してもよいし、S104の判定が行われるたびに上記の式により所定時間t1を算出してもよい。上記の式によれば、t1は走行車線の曲率半径が小さいほど、短くなり、また、車速が大きいほど、短くなる。走行車線の曲率が小さく、車速が大きいほど、自車両が走行車線を逸脱する可能性が高くなるが、t1が短くなるため、後述するステップS105での、車線逸脱防止制御の抑制が継続される時間が短くなり、早期に車線逸脱防止制御の抑制を解除することができる。そのため、車線を逸脱する虞を抑制できる。継続時間T1が所定時間t1以上である、又は、抑制解除フラグがONである場合には、ステップS106に進み、そうでない場合には、ステップS105に進む。
ステップS105では、抑制部70が、車線逸脱防止制御部80がステアリング装置30に送信する指示信号に含まれる補助操舵力を抑制する要求をする。例えば、抑制をしない場合の補助操舵力N0と、抑制した場合の補助操舵力Nとの間には以下の関係が成立する。
N = N0×(1−K)
上記の式のK(0<K≦1)は、抑制度合を示す値であり、ドライバが車線逸脱防止制御の抑制を気づきやすいように、予め設定される適合値であってもよいし、1であってもよいし、自車両の走行状態により変化する変化値であってもよい。Kが変化値である場合の、Kの算出方法の一例として、以下の式を示す。
K = (走行車線の曲率半径[m]/車速[m/s])×A2[1/s]
上記の式におけるA2は適合値であり、予め設定される。また、例えば、上記の式においてKが1より大きい値となる場合は、Kは1に設定される。本フローチャートの処理において、最初にS105の処理が行われる時のみ、上記の式によりKを算出してもよいし、S105の処理が行われるたびに、上記の式によりKを算出してもよい。上記の式によれば、Kは走行車線の曲率半径が小さいほど、小さくなり、また、車速が大きいほど、小さくなる。走行車線の曲率が小さく、車速が大きいほど、自車両が走行車線を逸脱する可能性が高くなるが、Kが小さくなるため、車線逸脱防止制御の抑制度合が小さくなり、車線逸脱防止制御の抑制中に、車線を逸脱する虞を抑制できる。また、車線逸脱防止制御が抑制され、ドライバにステアリングを再び保持するように促すことができる。ステップS105の処理が終了すると、ステップS102に戻る。
ステップS106では、抑制部70が、車線逸脱防止制御部80に、車線逸脱防止制御の抑制の少なくとも部分的な解除をする要求をする。これにより、ドライバが、所定時間t1以上継続して、ステアリングに関する手放し操作をし、再びステアリングを保持しなかった場合においても、車線逸脱防止制御の抑制の少なくとも部分的な解除をすることができる。よって、かかる場合において、車両が車線を逸脱するのを抑制することができる。ステップS106の処理が終了すると、ステップS107に進む。尚、「車線逸脱防止制御の抑制の少なくとも部分的な解除をする」とは、車線逸脱防止制御の抑制をやめる(K=0)こと、及び、車線逸脱防止制御の抑制度合を小さくする(Kの値を小さくする)ことを含む。
ステップS107では、抑制解除フラグをONにする。抑制解除フラグが、ステップS107の処理が実行される前に、ONになっている場合は、抑制解除フラグのONを継続する。抑制解除フラグは、車線逸脱防止制御の抑制を解除する必要があるか否かを示すフラグであり、ONのときは車線逸脱防止制御の抑制を解除する必要があることを示し、OFFのときは車線逸脱防止制御の抑制を解除する必要がないことを示す。ステップS107の処理が終了すると、ステップS102に戻る。
ステップS108では、抑制部動作フラグがONであるか否かを判定する。抑制部動作フラグがONである場合には、ステップS109に進む。そうでない場合には、本フローチャートの処理を終了する。
ステップS109では、抑制部動作フラグをOFFにする。また、抑制部70の動作を終了する。具体的には、抑制部70が、車線逸脱防止制御部80に、車線逸脱防止制御の抑制を要求すること、及び、車線逸脱防止制御の抑制の少なくとも部分的な解除を要求することを終了する。ステップS109の処理が終了すると、本フローチャートの処理を終了する。
次に、図3に示す処理により、システム1において実現される動作の一例を示すタイムチャートである図4について説明する。
車線逸脱防止制御中でない状態から、車線逸脱防止制御中に遷移した時点(時刻t11)、すなわち補助操舵力が必要になった時点から、車線逸脱防止制御の制御量が立ち上がる。その後、手放し操作検出部60により、手放し操作をしていると判定された時点(時刻t12)から、抑制部70により、車線逸脱防止制御が抑制される。その後、抑制部70により、車線逸脱防止制御の抑制を開始した時点(時刻t12)からの経過時間(車線逸脱防止制御の抑制を継続している継続時間T1)が、所定閾値t1以上になった時点(時刻t13)に、抑制部70は、車線逸脱防止制御部80に、車線逸脱防止制御の少なくとも部分的な解除を要求し、車線逸脱防止制御の制御量が増加する(抑制前の制御量に戻る)。尚、図4においては、一例として、「車線逸脱防止制御の少なくとも部分的な解除」は、Kを0とし、車線逸脱防止制御の抑制量を0にした場合の動作タイムチャートを示している。
これにより、時刻t13以降は、ドライバが手放し操作を継続しているにも関わらず、車線逸脱防止制御の抑制を解除できる。よって、時刻t12から時刻t13の間に、ドライバに再びステアリングを保持するように促すことができ、且つ、ドライバが手放し操作を所定時間t1以上継続した場合に、車線逸脱防止制御の抑制を解除することで、車両が車線を逸脱してしまう虞を抑制できる。
尚、図4に示す例では、時刻t14にて、手放し操作検出部60により、手放し操作をしていると判定されなくなり、或いは、車線逸脱防止制御中でなくなっている。このようにして、図3に示す処理によれば、一旦、車線逸脱防止制御の少なくとも部分的な抑制が解除されると、解除状態は、抑制部動作フラグがOFFになるまで継続される。即ち、車線逸脱防止制御の少なくとも部分的な抑制は、1回の抑制部動作フラグがONになるイベントに対して、1回だけ実行される。
尚、図4に示すタイムチャートでは、時刻t11から制御量を立ち上げる際の(車線逸脱防止制御の制御を開始する際の)制御量の増加勾配と、時刻t13から制御量を立ち上げる際の(車線逸脱防止制御の抑制の少なくとも部分的な解除をする際の)制御量の増加勾配を同じにしているが、時刻t13から制御量を立ち上げる際の制御量の増加勾配を、時刻t11から制御量を立ち上げる際の制御量の増加勾配より大きくしてもよい。これにより、車線逸脱防止制御の抑制の少なくとも部分的な解除をする場合には、早期に、車線逸脱防止制御の制御量を増加することができ、ドライバが手放し操作を所定時間t1以上継続した場合に、車線逸脱防止制御の抑制を解除することで、車両が車線を逸脱してしまう虞をより抑制することができる。
図5は、抑制部70により実施される処理の他の一例を示すフローチャートである。図6は、図5の処理を説明するタイムチャートの一例である。
まず、図5のフローチャートについて説明する。図5のフローチャートは、車線逸脱防止制御部80が車線逸脱防止制御を実行可能な状態で、繰り返し、抑制部70により実施されてよい処理である。尚、車線逸脱防止制御を実行可能な状態とは、例えば、図示しない車線逸脱制御SWがON状態である場合等である。
ステップS201は、上述した図3のステップS102と同様である。ステップS201の処理が終了すると、ステップS202、又は、ステップS206に進む。
ステップS202は、上述した図3のステップS103と同様である。尚、同様に、「抑制部70が動作する」とは、後述するステップS203〜S205の処理が、抑制部70により実行されることである。ステップS202の処理が終了すると、ステップS203に進む。
ステップS203では、車線逸脱防止制御の抑制を継続している継続時間T1が所定時間t1(t1>0)以上である、又は、前回車線逸脱防止制御の抑制の解除を要求してからの経過時間T2が0より長く、所定時間t2(t2>0)未満であるか否かを判定する(所定時間t1の説明については、上述したステップS104の説明を参照)。所定時間t2は、自車両の車線の逸脱を防止できるように設定される適合値であってもよいし、所定時間t0と同じに設定されてもよい。継続時間T1が所定時間t1以上である、又は、経過時間T2が0より長く、所定時間t2未満である場合には、ステップS205に進む。そうでない場合には、ステップS204に進む。
ステップS204は、上述した図3のステップS105と同様である。ステップS204の処理が終了すると、ステップS201に戻る。
ステップS205は、上述した図3のステップS106と同僚である。ステップS205の処理が終了すると、ステップS201に戻る。
ステップS206は、上述した図3のステップS108と同様である。ステップS206の処理が終了すると、ステップS207に進む、又は、本フローチャートの処理を終了する。
ステップS207は、上述した図3のステップS109と同様である。ステップS207の処理が終了すると、本フローチャートの処理を終了する。
次に、図6を参照して図5の処理について説明する。図6は、図5の処理により実現されるシステム1の動作の他の一例を示すタイムチャートである。
時刻t23までは、上述した図4の説明と同様である(図6のt21、t22、及び、t23がそれぞれ、図4のt11、t12、及び、t13に対応)。時刻t23の後、抑制部70が、車線逸脱防止制御部80に、前回車線逸脱防止制御の抑制の少なくとも部分的な解除を要求した時点(時刻t23)からの経過時間T2が、所定時間t2以上になった時点(時刻t24)に、抑制部70により、車線逸脱防止制御が抑制される。その後、車線逸脱防止制御中、且つ、手放し操作有の状態が続く限り、時刻t22から時刻t24の動作が繰り返される。すなわち、時刻t24から時刻t25では、時刻t22から時刻t23と同じ動作をする。尚、図6においては、一例として、「車線逸脱防止制御の少なくとも部分的な解除」は、Kを0とし、車線逸脱防止制御の抑制度合を0にした場合の動作タイムチャートを示している。
これにより、時刻t23から時刻t24の間、及び、時刻t25から時刻t26の間で、ドライバが手放し操作を継続しているにも関わらず、車線逸脱防止制御の抑制の少なくとも部分的な解除をすることができる。よって、時刻t22から時刻t23の間、及び、時刻t24から時刻t25の間、ドライバに再びステアリングを保持するように促すことができ、且つ、ドライバが手放し操作を継続した場合に、車線逸脱防止制御の抑制を解除することで、車両が車線を逸脱してしまう虞を抑制できる。すなわち、ドライバがステアリングを再び保持するように促しながらも、車両が車線を逸脱するのを抑制することができる。
また、図5に示す処理では、図3に示した処理とは異なり、車線逸脱防止制御中、且つ、手放し操作有の状態が続く限り、車線逸脱防止制御の抑制と、車線逸脱防止制御の抑制の少なくとも部分的な解除とを交互に繰り返すことができる。よって、車線逸脱防止制御中、且つ、手放し操作有の状態が続く限り、ドライバがステアリングを再び保持するように繰り返し促すことができる。
図7は、抑制部70により実施される処理の他の一例を示すフローチャートである。図8は、図7の処理を説明するタイムチャートの一例である。
まず、図7に示すフローチャートについて説明する。図7のフローチャートは、車線逸脱防止制御部80が車線逸脱防止制御を実行可能な状態で、繰り返し、抑制部70により実施されてよい処理である。尚、車線逸脱防止制御を実行可能な状態とは、例えば、図示しない車線逸脱制御SWがON状態である場合等である。
ステップS301は、上述した図3のステップS102と同様である。ステップS301の処理が終了すると、ステップS202、又は、ステップS308に進む。
ステップS302は、上述した図3のステップS103と同様である。尚、同様に、「抑制部70が動作する」とは、後述するステップS303〜S307の処理が、抑制部70により実行されることである。ステップS302の処理が終了すると、ステップS303に進む。
ステップS303では、所定期間内又は所定走行距離内において、手放し操作検出部60がドライバの手放し操作を検出した回数(以下、手放し操作回数)が所定回数N(N≧2)以上であるか否かを判定する。手放し操作回数は、手放し操作検出部60により、カウントしてもよい。尚、「所定期間」とは、現在から所定時間tc前までの期間であってもよいし、IG-ONから現在までの期間であってもよい。手放し操作回数は、例えば、手放し操作検出部60によりドライバの手放し操作が初めて検出されてから、当該手放し操作が検出されなくなるまでを、「1回」とする。但し、手放し操作回数は、等価的に、手放し操作検出部60によりドライバの手放し操作が検出されている時間の累積値であってもよい。また、手放し操作回数は、車線逸脱防止制御中の回数(即ち抑制部動作フラグがOFFからONになった回数)であってもよいし、車線逸脱防止制御中以外の状態における手放し操作もカウントしてもよい。手放し操作回数が所定回数N以上である場合には、ステップS304に進み、そうでない場合には、ステップS305に進む。
ステップS304では、抑制度合を示す値であるKを1に設定する(Kについては、上述した図3のステップS105の説明を参照)。Kは1以下の値であるため、Kを1に設定することは、車線逸脱防止抑制御の抑制度合を最大レベルまで増加することである。また、Kを1に設定すると、抑制部70による抑制に起因して車線逸脱防止制御の制御量(補助操舵力)は0になる。
ステップS305は、図5のステップS203と同様である。ステップS305の処理が終了すると、ステップS306、又は、ステップS307に進む。
ステップS306は、図3のステップS105と同様であるが、ステップS304の処理が実行され、Kが1に設定されている場合には、Kを1として、抑制部70が、車線逸脱防止制御部80がステアリング装置30に送信する指示信号に含まれる補助操舵力を抑制する要求をする。ステップ304の処理が実行されておらず、Kが1に設定されていない場合には、上述した図3のステップS105の説明のように、Kを設定する、又は予め設定されたKを用いる。ステップS306の処理が終了するとステップS301に戻る。
ステップS307は、図3のステップS106と同様である。ステップS307の処理が終了するとステップS301に戻る。
ステップS308は、上述した図3のステップS108と同様である。ステップS308の処理が終了すると、ステップS309に進む、又は、本フローチャートの処理を終了する。
ステップS309は、上述した図3のステップS109と同様である。ステップS309の処理が終了すると、本フローチャートの処理を終了する。
次に、図8を参照して図7の処理について説明する。図8は、図7の処理により実現されるシステム1の動作の他の一例を示すタイムチャートである。
時刻t33までは、上述した図4の説明と同様である(図7のt31、t32、及び、t33がそれぞれ、図4のt11、t12、及び、t13に対応)。時刻t33の後、ドライバがステアリングを再び保持する(時刻t34)。ただし、時刻t33からの経過時間が時刻t34では、所定時間t2より短いとする。手放し操作回数が所定回数N以上となった時点(時刻t35)から、抑制部70により、車線逸脱防止制御の制御量が0に抑制される。その後、抑制部70により、車線逸脱防止制御の制御量の制御量が0に抑制された時点(時刻t35)からの経過時間(車線逸脱防止制御の抑制を継続している継続時間T1)が、所定閾値t1以上になった時点(時刻t36)に、抑制部70は、車線逸脱防止制御部80に、車線逸脱防止制御の少なくとも部分的な解除を要求し、車線逸脱防止制御の制御量が増加する(抑制前の制御量に戻る)。尚、図8においては、一例として、「車線逸脱防止制御の少なくとも部分的な解除」は、Kを0とし、車線逸脱防止制御の制御量の抑制量を0にした場合の動作タイムチャートを示している。
これにより、時刻t33から時刻t34の間、及び、時刻t35から時刻t36の間で、ドライバが手放し操作を継続しているにも関わらず、車線逸脱防止制御の抑制の少なくとも部分的な解除をすることができる。よって、時刻t32から時刻t33の間、及び、時刻t35から時刻t36の間、ドライバに再びステアリングを保持するように促すことができ、且つ、ドライバが手放し操作を継続した場合に、車線逸脱防止制御の抑制が継続されることで車両が車線を逸脱してしまう虞を抑制できる。すなわち、ドライバがステアリングを再び保持するように促しながらも、車両が車線を逸脱するのを抑制することができる。
また、図7に示す処理では、手放し操作回数が所定回数N以上検出された場合に、車線逸脱防止制御の抑制度合を最大レベルまで増加させ、制御量(補助操舵力)を0にすることから、手放し操作回数が所定回数N以上である場合に、手放し操作回数が所定回数N未満である場合と比較して、強く、ドライバにステアリングを再び保持するように促すことができる。よって、手放し操作回数が多いドライバに対してはより積極的に、ドライバにステアリングを再び保持するように促すことができる。
〔第2の実施形態〕
以下、図9、図10、図11及び図12を用いて、第2の実施形態について詳細に説明する。図9は、第2の実施形態における、システム2の一例を概略的に示すシステム構成図である。図10は、第2の実施形態における、第1抑制部70aにより実施される処理の一例を示すフローチャートである。図11は、第2の実施形態における、第2抑制部70bにより実施される処理の一例を示すフローチャートである。図12は、第2の実施形態における、システム2の動作を説明するタイムチャートの一例である。
図9において、図2に示した上述した第1の実施形態と同一であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
システム2は、上述の第1の実施形態におけるシステム1に対して、ECU10がECU10aに置換された点が異なる。
ECU10aは、車線逸脱防止制御部80と、第1抑制部70aと、第2抑制部70bと、手放し操作検出部60とを含む。
第1抑制部70aは、車線逸脱防止制御部80に、車線逸脱防止制御部80が実行する車線逸脱防止制御の抑制、及び、抑制の少なくとも部分的な解除を要求する。第1抑制部70aが、車線逸脱防止制御の抑制をするとは、第1抑制部70aが、車線逸脱防止制御部80がステアリング装置30に出力する指示信号に含まれる補助操舵力を抑制する要求を、車線逸脱防止制御部80に出力するということである。また、第1抑制部70aは、手放し操作検出部からドライバがステアリングに関する手放し操作をしていると判断された旨の入力がある間、且つ、自車両が走行する車線がカーブである場合(例えば、曲率半径R≦所定閾値)に動作する(詳細は後述)。
第2抑制部70bは、車線逸脱防止制御部80に、車線逸脱防止制御部80が実行する車線逸脱防止制御の抑制、及び、抑制の少なくとも部分的な解除を要求する。第2抑制部70bが、車線逸脱防止制御の抑制をするとは、第2抑制部70bが、車線逸脱防止制御部80がステアリング装置30に出力する指示信号に含まれる補助操舵力を抑制する要求を、車線逸脱防止制御部80に出力するということである。また、第2抑制部70bは、手放し操作検出部からドライバがステアリングに関する手放し操作をしていると判断された旨の入力がある間、且つ、自車両が走行する車線がカーブでない場合(例えば、曲率半径R>所定閾値)に動作する(詳細は後述)。
次に、図10のフローチャートについて説明する。図10のフローチャートは、第2の実施形態における、第1抑制部70aにより実施される処理の一例であるが、上述の図7のフローチャートのステップS301の内容をステップS401の内容に変えた処理であるため、ステップS401以外の説明を省略する。尚、第1抑制部70aにより実施される処理は、上述の図3のフローチャートのステップS102の内容をステップS401の内容に変えた処理であってもよいし、上述の図5のフローチャートのステップS201の内容をステップS401の内容に変えた処理であってもよい。
また、図10のフローチャートは、車線逸脱防止制御部80が車線逸脱防止制御を実行可能な状態で、繰り返し、第1抑制部70aにより実施されてよい処理である。
ステップS401では、車線逸脱防止制御中であり、且つ、手放し操作検出部60がドライバによるステアリングに関する手放し操作をしており、且つ、自車両が走行する車線がカーブであるか否かを判定する。自車両が走行する車線がカーブであるか否かは、任意の方法で判定されてもよい。例えば、自車両が走行する車線がカーブであるか否かは、自車の横加速度や、ナビゲーション装置の地図情報や、白線認識結果等に基づいて判定されてもよい。車線逸脱防止制御中であり、且つ、手放し操作検出部60がドライバによるステアリングに関する手放し操作をしており、且つ、自車両が走行する車線がカーブであると判定された場合には、ステップS402に進み、そうでない場合には、ステップS408に進む。
次に、図11のフローチャートについて説明する。図11のフローチャートは、第2の実施形態における、第2抑制部70bにより実施される処理の一例である。図11のフローチャートは、車線逸脱防止制御部80が車線逸脱防止制御を実行可能な状態で、繰り返し、第2抑制部70bにより実施されてよい処理である。図11の処理は、図10の処理と並列して実行される。
ステップS501では、車線逸脱防止制御中であり、且つ、手放し操作検出部60がドライバによるステアリングに関する手放し操作をしており、且つ、自車両が走行する車線がカーブでないか否かを判定する。車線逸脱防止制御中であり、且つ、手放し操作検出部60がドライバによるステアリングに関する手放し操作をしており、且つ、自車両が走行する車線がカーブでないと判定された場合には、ステップS502に進み、そうでない場合には、ステップS504に進む。
ステップS502では、第2抑制部動作フラグをONにする。第2抑制部動作フラグが、ステップS502の処理が実行される前に、ONになっている場合は、第2抑制部動作フラグのONを継続する。第2抑制部動作フラグは、第2抑制部70bが動作しているか否かを示すフラグであり、ONのときは第2抑制部70bが動作していることを示し、OFFのときは第2抑制部70bが動作していないことを示す。ここで、「第2抑制部70bが動作する」とは、後述するステップS503の処理が、第2抑制部70bにより実行されることである。ステップS502の処理が終了すると、ステップS503に進む。
ステップS503は、第2抑制部70bが、車線逸脱防止制御部80がステアリング装置30bに送信する指示信号に含まれる補助操舵力を抑制する要求をする。例えば、抑制をしない場合の補助操舵力をN0と、抑制した場合の補助操舵力Nとの間には以下の関係が成立する。
N = N0×(1−K1)
上記の式のK1(0<K1≦1)は、抑制度合を示す値である。尚、K1は、ドライバが車線逸脱防止制御の抑制を気づきやすいように、予め設定される適合値であってもよいが、1に設定されるのが好適である。なぜならば、S503の処理が実行されるのは、自車両が走行する車線がカーブでない場合であり、カーブである場合と比べて、車線を逸脱する虞が小さいからである。すなわち、車線を逸脱する虞が小さい場合に、K1を1に設定し、補助操舵力を0にすることで、より積極的にドライバにステアリングを再び保持するように促すことができる。尚、K1は、上述した図3のステップS105の説明にあるKのように、自車両の走行状態により変化する変化値であってもよい。ステップS503の処理が終了すると、ステップS501に戻る。
ステップS504では、第2抑制動作フラグがONであるか否かを判定する。第2抑制部動作フラグがONである場合には、S505に進む。そうでない場合には、本フローチャートの処理を終了する。
ステップS505では、第2抑制部動作フラグをOFFにする。また、第2抑制部70bの動作を終了する。具体的には、第2抑制部70bが、車線逸脱防止制御部80に、車線逸脱防止制御の抑制を要求することを終了する。ステップS505の処理が終了すると、本フローチャートの処理を終了する。
次に、図10及び図11に示す処理により、システム2において実現される動作の一例である図12について説明する。尚、図12においては、一例として、「車線逸脱防止制御の少なくとも部分的な解除」はKを0とし、車線逸脱防止制御の制御量の抑制量を0にした場合であり、且つ、K1を1に設定している場合であり、且つ、手放し操作回数が所定回数N未満である場合の動作を示すタイムチャートを示している。
車線逸脱防止制御中でない状態から、車線逸脱防止制御中に遷移した時点(時刻t41)、すなわち補助操舵力が必要になった時点から、車線逸脱防止制御の制御量が立ち上がる。その後、手放し操作検出部60により、手放し操作をしていると判定された時点(時刻t42)から、自車両が走行する車線がカーブであることから、第1抑制部70aにより、車線逸脱防止制御が抑制される。その後、第1抑制部70aにより、車線逸脱防止制御の抑制を開始した時点(時刻t42)からの経過時間(車線逸脱防止制御の抑制を継続している継続時間T1)が、所定閾値t1以上になった時点(時刻t43)に、第1抑制部70aは、車線逸脱防止制御部80に、車線逸脱防止制御の少なくとも部分的な解除を要求し、車線逸脱防止制御の制御量が増加する(抑制前の制御量に戻る)。その後、手放し操作検出部60により、手放し操作をしていないと判定される(時刻t44)。ただし、時刻t43からの経過時間が時刻t44では、所定時間t2より短いとする。
その後、自車両が走行する車線がカーブでなくなる(時刻t45)。その後、手放し操作検出部60により、手放し操作をしていると判定された時点(時刻t46)から、自車両が走行する車線がカーブでないことから、第2抑制部70bにより、車線逸脱防止制御が抑制される。その後、手放し操作検出部60により、手放し操作をしていないと判定される時点(時刻t47)まで、第2抑制部70bにより、車線逸脱防止制御の抑制が継続され、時刻t47で第2抑制部70bによる、車線逸脱防止制御の抑制が終了する。その後、車線逸脱防止制御中でなくなる時点(時刻t48)まで、車線逸脱防止制御が実行される。
これにより、自車両が走行する車線がカーブであり、カーブでない場合と比較して、自車両が車線を逸脱する虞が大きい場合には、時刻t43から時刻t44の間で、ドライバが手放し操作を継続しているにも関わらず、車線逸脱防止制御の抑制の少なくとも部分的な解除をすることができる。よって、自車両が走行する車線がカーブであり、カーブでない場合と比較して、自車両が車線を逸脱する虞が大きい場合には、時刻t42から時刻t43の間、ドライバに再びステアリングを保持するように促すことができ、且つ、ドライバが手放し操作を継続した場合に、車線逸脱防止制御の抑制を解除することで、車線を逸脱してしまう虞を抑制できる。すなわち、自車両が走行する車線がカーブであり、カーブでない場合と比較して、自車両が車線を逸脱する虞が大きい場合には、ドライバがステアリングを再び保持するように促しながらも、車両が車線を逸脱するのを抑制することができる。
一方、自車両が走行する車線がカーブでなく、カーブである場合と比較して、自車両が車線を逸脱する虞が小さい場合には、ドライバが手放し操作を継続している間(時刻t46から時刻t47の間)は、継続的に車線逸脱防止制御を抑制することができる。よって、自車両が走行する車線がカーブでなく、カーブである場合と比較して、自車両が車線を逸脱する虞が小さい場合には、ドライバにより積極的にステアリングを保持するように促すことができる。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
例えば、上述した実施例において、アシストモータ36の制御に代えて又は加えて、ブレーキアクチュエータにより左右輪のホイールシリンダ圧の差を制御して横加速度を発生させる方法で、逸脱を防止してもよい。
また、上述した実施例において、抑制部70は、車線逸脱防止制御部80に抑制等を要求するではなく、ステアリング装置30に対して抑制等を要求してもよい。この場合、ステアリング装置30のコントローラ38は、車線逸脱防止制御部80からの指示信号に含まれる補助操舵力を、抑制部70からの要求に応じて抑制等した上で、アシストモータ36を制御する。また、抑制部70の機能の一部又は全部は、ステアリング装置30のコントローラ38により実現されてもよい。