JP6394010B2 - テンターオーブン、及びそれを用いた熱可塑性樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents

テンターオーブン、及びそれを用いた熱可塑性樹脂フィルムの製造方法 Download PDF

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本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの製造に適したテンターオーブン、及びそれを用いた熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に関するものである。
一般的に、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法として、未延伸の熱可塑性樹脂フィルムを搬送方向に延伸した後、その一軸延伸フィルムをテンターオーブンの中で、幅方向に延伸する逐次二軸延伸法や、未延伸の熱可塑性樹脂フィルムをテンターオーブンの中で、搬送方向と幅方向とに同時に延伸する同時二軸延伸法が知られている。
上記方法で作られた熱可塑性樹脂フィルムは、包装用途をはじめとして、各種工業材料用途などに広く用いられている。中でも、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドの逐次二軸延伸フィルムは、その優れた機械的特性、熱的特性、電気的特性等により、未延伸フィルムでは使用に耐えない用途に広く使用され、需要量も増加している。
しかし、熱可塑性樹脂フィルムを製造する際に用いるテンターオーブンの問題点として、フィルムが走行する際の随伴気流や、テンターオーブン内の給気量と排気量のアンバランスなどに起因して、テンターオーブンを構成する個々の室やゾーンでエアの循環が完結せず、設定温度の異なるエアが、隣接室やゾーンへ流れ込んだり、テンターオーブン外の外気がオーブン内へ流れ込んだりする現象がある。どちらも室やゾーンの境界を横切ってフィルムの搬送方向やその逆方向にエアが流れる現象であり、このようなエア流れをMD(Machine Directionの略)流と呼ぶ。MD流が発生すると、室やゾーン外から流れ込んだ異なる温度のエアがフィルムの近傍を流れながら、フィルムに向かって高温のエアを吹き付けてフィルムを加熱または冷却する吹き付けノズル(以後ノズルと呼ぶ)からの加熱エアと混ざるため、フィルムに大きな温度ムラを生じる。そして、フィルム幅方向の温度ムラは、厚みムラ及び特性ムラの原因にもなり、製品の品質を低下させるのみならず、テンターオーブン内でフィルム破れを起こし、生産性を低下させることもある。
また、MD流により、室の循環エアの設定温度より低い温度のエアが室内に流入し循環エアに混入すると、循環エアをその室の設定温度まで再加熱するのに必要なエネルギーが増加する。
また、MD流が発生している状態は、ノズルからフィルムに吹き付ける噴流が、MD流の方向に曲がっている状態であるため、ノズルの加熱性能は、ノズルから吹き付けるエア(噴流)が真っ直ぐフィルムに当たるノズル本来の加熱性能に比べて低下する。また、ノズルは通常、複数がフィルム搬送方向に並んで配置されているため、隣り合うノズルの噴流は相互に干渉して噴流を曲げ、さらに加熱性能が低下する。また、この様に、様々な要因でノズルの加熱性能が低下するため、実際の加熱性能がどの程度であるか把握することが困難であった。
上記問題に対して、フィルムとノズルの距離を近づけることにより、MD流を抑制することが出来る。ここで、テンターオーブン内の装置の位置関係をみると、フィルムを把持し、搬送させるためのクリップの走行レール(以後レールと呼ぶ)が、フィルム品種によって様々なフィルムの延伸倍率に対応するためフィルムの幅方向に可動できるよう、上下のノズル間にレールが配置されている。そのため、フィルムとノズルの距離を近づけると、レールとノズル間の隙間が小さくなる。よって、レールの外側から観察した場合、テンターオーブン内に残った破断フィルム屑の除去や、フィルムの観察が困難になるという問題を生じた。
よりMD流を抑制したい場合、フィルムとノズルの距離をより近づければ良いが、この場合は、ノズルとレールが接触して近づけることは出来ない。そこで、レールを小さくすることにより、近づけることは可能となる。しかし、上下のノズル間隔が小さくなると、上下ノズル間での作業が困難になり、また、人が入って作業をするスペースも確保出来なくなるため、テンターオーブン内に残った破断フィルム屑の除去や、フィルムの観察が困難になるだけでなく、ノズルのメンテナンス及び清掃も困難となる。
さらにMD流を抑制したい場合は、レールの内側にノズルを設置することにより、レールを避けて、よりフィルムとノズルの距離を近づけることが出来る(例えば、特許文献1)。この場合は、レールの内側にノズルがあるため、レールの外側から観察した場合、ノズル先端やフィルムがレールの裏側に隠れた状態になるため、破断フィルム屑の除去や、フィルムの観察、ノズルのメンテナンス及び清掃がさらに困難となってしまう。
破断フィルム屑の除去方法としては、破断フィルム屑をエアノズルによるエア吹き付けで除去する方法(例えば、特許文献2)が知られている。しかしながら、特許文献2に記載の方法を特許文献1のテンターオーブンに適用しても、フィルムの観察や、ノズルのメンテナンス及び清掃が困難であるという問題を解決するものではない。
また、破断フィルム屑の除去や、ノズルのメンテナンス及び掃除が可能となるテンターオーブンとしては、例えば、上方ノズルユニットは上方ノズルの根元側を支点として上方に移動させ、下方ノズルユニットは下方ノズルの根元側を支点として下方に移動可能としたもの(特許文献3)が知られている。しかしながら、この手段を特許文献1のテンターオーブンに適用しても、ノズルユニットを移動させると通常の生産状態ではなくなるため、通常生産時のフィルムの観察が困難であることには変わりない。また、破断フィルム屑を除去するためにノズルユニットを移動させる必要があり、生産復旧に時間を要するため生産性が低下する。
WO2012−133152号パンフレット 特開平7−252022号公報 特開平4−348929号公報
そこで本発明が解決しようとする課題は、MD流の抑制が可能であり、熱可塑性樹脂フィルムの製造に用いて好適な特許文献1に記載のテンターオーブンにおいて新たに生じた、破断フィルム屑の除去や、フィルムの観察、ノズルのメンテナンス及び清掃が困難になるという操業面の問題を解決することである。
したがって本発明の目的は、破断フィルム屑の除去や、フィルムの観察、ノズルのメンテナンス及び清掃が可能であり、かつ、MD流の発生が抑制されることで、温度の均一性が良好で、消費エネルギーの低減が可能なテンターオーブンを提供することにある。
また、本発明の目的は、上記のテンターオーブンを用いることで、フィルム幅方向の特性や厚みの均一性が良好な熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するため、発明者は、ノズル同士のフィルム搬送方向の距離に着目し、MD流を抑制するため上下のノズルの吹き付け面同士の距離を小さくした場合での作業性を確保するテンターオーブンの構成を見出した。
すなわち本発明は以下である。
1) 一端にフィルムの入口を、他端にフィルムの出口を有し、入口から出口に向かって一方向に搬送されるフィルムにエアを吹き付ける吹き付け部を有するノズルを複数有するテンターオーブンであり、
ノズルの吹き付け部を有する面(以下、吹き付け面と呼ぶ)からフィルム通過面までの距離Lが150mm以下であるノズルを近接ノズルとすると、条件1及び条件2を満たす近接ノズルを有し、近接ノズルがいずれもホールノズルであることを特徴とする、テンターオーブン。
条件1:対向する上下1本ずつ合計2本のノズルが、共にレールの内側に位置し、かつLが25mm以上75mm以下の近接ノズルである。
条件2:条件1を満たす任意の近接ノズルについて、該近接ノズルとフィルム搬送方向の入口側に隣り合って配置されたノズルとをフィルム通過面に投影した場合の搬送方向に平行な方向のノズル間の中央線を中央線Aとして、該近接ノズルとフィルム搬送方向の出口側に隣り合って配置されたノズルとをフィルム通過面に投影した場合の搬送方向に平行な方向のノズル間の中央線を中央線Bとしたときに、中央線Aと中央線Bとの距離Pが、以下の式を満たす。
460≦P[mm]≦300×(150/L)0.62
2) 熱可塑性樹脂を口金から冷却ドラム上に押し出して得られる未延伸フィルム又は一軸延伸フィルムを、1)に記載のテンターオーブンに導入して処理することを特徴とする、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
本発明のテンターオーブンによれば、テンターオーブン内のMD流を抑制することで、ノズルから吹き付けられるエアの温度均一性が確保できるため、テンターオーブン内で発生するフィルム幅方向の温度ムラを低減し、フィルムの特性及び厚みの均一性が良好な熱可塑性樹脂フィルムを製造することが可能となる。また、フィルム破れ低減による生産性向上が実現可能となる。さらには、循環エアの温度を室の設定温度に近い温度に保持できるため、エアを再加熱する際に必要なエネルギーが削減できる。また、上記の性能を得るため、上下ノズルの吹き付け面同士の距離を小さくすることで生じた、破断フィルム屑の除去や、フィルムの観察、ノズルのメンテナンスや清掃が困難になるという問題についても、フィルムを加熱または冷却する性能を低下させることなく解決できる。また、ノズルの本数を減らすことができるので、ノズルから吹き出すエアの流量が減り、ファンが使用するエネルギーを削減できる。つまり、MD流の抑制と作業性を両立できるテンターオーブンを提供することができる。
本発明のテンターオーブンを構成するゾーンの一例を示す概略構成図である。 図1のA−A矢視の概略構成図である。 ノズルがスリットノズルである場合の図2の拡大図である。 ノズルがホールノズルである場合の図2の拡大図である。 レールの内側に設置したノズルを有する場合の図1のA−A矢視の概略構成図である。
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの製造に用いられるテンターオーブンに関するものであり、本発明のテンターオーブンは、一端にフィルムの入口を、他端にフィルムの出口を有し、入口から出口に向かって一方向に搬送されるフィルムにエアを吹き付ける吹き付け部を有するノズルを複数有する。なお、本発明のテンターオーブンは、フィルム搬送方向にフィルムを搬送するために設けられた開口部以外が壁で仕切られた一つまたは複数のゾーンを有し、前記ゾーンが一つまたは複数の室により構成されている。
ここで、テンターオーブンにおけるゾーンとは、テンターオーブン中を搬送されるフィルムに対して行う、予熱、延伸、熱処理、冷却等の各処理工程に対応した区間のことである。そして各処理工程におけるゾーンは、一般に、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーン、冷却ゾーン等と呼ばれる。
また、各ゾーンは、1つの室で構成されることもあるが、一般には、フィルムの入口からフィルムの出口に亘って、フィルム搬送方向に複数の室に区画され、室毎に温度の設定を変更できるように構成されていても良い。
図1は本発明のテンターオーブンを構成するゾーンの一例を示す概略構成図である。
図1に示す様に、ノズル1は、ゾーンにおけるフィルムの入口6からゾーンにおけるフィルムの出口7の方向に向かって、フィルム搬送方向に複数個設置されている。ここで、ノズルとは、フィルムに対してエアを吹き付けることで、フィルムを加熱または冷却する機能を有する。よって、フィルムは、ゾーン内を入口6から出口7に向かって走行しながら、ノズルから吹き付けられるエアによって加熱または冷却される。
またノズルには、フィルムに対向した面に吹き付け部が存在し、この吹き付け部からエアがフィルムに対して吹き付けられる。なお、ノズル中の吹き付け部を有する面を、以後、吹き付け面という。
また、ノズルの周囲には、エア吸い込み部2を有し、エア吸い込み部周辺の温度の低いエアはエア吸い込み部で吸引され、熱交換器3で設定温度まで再加熱され、循環ファン4によって、ノズルから出される。

MD流の発生を抑制する有効な対策として、本発明のテンターオーブンは、ノズルの吹き付け部を有する面(以下、吹き付け面と呼ぶ)からフィルム通過面までの距離Lが150mm以下であるノズルを近接ノズルとすると、条件1及び条件2を満たす近接ノズルを有することを特徴とする。このように、条件1及び条件2を満たす近接ノズルを有するゾーンの模式図を図1に示す。図1のA−A矢視の模式図を図2に示す。
条件1:対向する上下1本ずつ合計2本のノズルが、共に近接ノズルである。
条件2:条件1を満たす任意の近接ノズルについて、該近接ノズルとフィルム搬送方向の入口側に隣り合って配置されたノズルとをフィルム通過面に投影した場合の搬送方向に平行な方向のノズル間の中央線を中央線Aとして、該近接ノズルとフィルム搬送方向の出口側に隣り合って配置されたノズルとをフィルム通過面に投影した場合の搬送方向に平行な方向のノズル間の中央線を中央線Bとしたときに、中央線Aと中央線Bとの距離Pが、以下の式を満たす。
460≦P[mm]≦300×(150/L)0.62
本発明のテンターオーブンは、そのノズルの少なくとも一部に近接ノズルを有することにより、ノズルから吹き付けられるエアのポテンシャルコアを、フィルムの通過面に近づけ、噴流がMD流に対して、強力なエアカーテンとして機能し、温度ムラの発生を低減させるとともに、循環エアを各室の設定温度まで加熱するのに必要な消費蒸気量が削減できる。また、噴流が真っ直ぐ安定するため、ノズルは本来の加熱性能に近づく。ここで、ポテンシャルコアとは、ノズルから出たエアが初期風速を維持する領域のことである。「噴流工学」(社河内 敏彦著、日本、森北出版株式会社、2004年3月24日発行、4p)によれば、ポテンシャルコアの長さは、吹き付け部がスリットノズルの場合はスリット幅の約6倍、ホールノズルの場合はホール直径の約10倍である。
本発明のテンターオーブンは、近接ノズルを有することが重要であるが、その近接ノズルの少なくとも一部について、条件1(対向する上下1本ずつ合計2本のノズルが、共に近接ノズルである)を満たすことが重要である。フィルム通過面の上側または下側のみが近接ノズルの場合、強い近接ノズルの風圧によりフィルムが吹き上がり(下がり)、フィルムのバタツキが大きくなるため、フィルム破れなどの原因になったり、フィルムの両面を均一に加熱、冷却または乾燥することができず、物性ムラが発生しやすくなったりするためである。
なお、本発明のテンターオーブンは、条件1及び条件2を満たす近接ノズルを有することが重要であり、テンターオーブン中の全てのノズルが近接ノズルである必要はなく、実際にテンターオーブン中の全てのノズルが近接ノズルである態様よりも、一部のノズルが近接ノズルである態様の方が好ましい。
条件2を満たす図1のゾーンは、条件1を満たす任意の近接ノズルについて、該近接ノズルとフィルム搬送方向の入口側に隣り合って配置されたノズルとをフィルム通過面に投影した場合の搬送方向に平行な方向のノズル間の中央線を中央線Aとして、該近接ノズルとフィルム搬送方向の出口側に隣り合って配置されたノズルとをフィルム通過面に投影した場合の搬送方向に平行な方向のノズル間の中央線を中央線Bとしたときに、中央線Aと中央線Bとの距離Pが、460≦P[mm]≦300×(150/L)0.62である構成である。
ここでノズル間の中央線とは、一方のノズルの吹き付け部の中心線と他方のノズルの吹き付け部の中心線との中央に存在する線を言う。
そして、図3に示す通り、吹き付け部がフィルム幅方向に均一なスリットノズルの場合における、ノズルの吹き付け部の中心線14とは、スリット間隙のフィルム搬送方向における中心の点を、フィルム幅方向に結んで得られる直線を意味する。
そして、図4に示す通り、ホールノズルの場合における、ノズルの吹き付け部の中心線とは、最も入口側に配置されたホールの中心点を含むフィルム幅方向に平行な直線と、最も出口側に配置されたホールの中心点を含むフィルム幅方向に平行な直線とから等距離に存在する、フィルム幅方向に平行な直線を意味する。
中央線Aと中央線Bとの距離Pを460mm以上とすることで、隣り合う噴流が相互に干渉して噴流が曲がることを防ぎ、ノズルの加熱性能は本来の性能に近づくだけでなく、ノズル同士の間隔が広くなることで、ノズルの本数を減らすことができるので、ノズルから吹き出すエアの流量が減り、ファンが使用するエネルギーを削減できる。さらに、テンターオーブン内に残ったフィルム屑の除去や、フィルムの観察、ノズルのメンテナンス及び清掃などの作業が可能となり、近接ノズルを有することで生じた、破断フィルム屑の除去やフィルムの観察、メンテナンスや清掃が困難になるという問題を解決することができる。
近接ノズルについて、吹き付け面からフィルム通過面までの距離Lとは、吹き付け面の一番先端の部分とフィルム通過面とを最短距離で結んだ場合の、高さ方向の距離のことである。そして、吹き付け面からフィルム通過面までの距離Lが150mm以下であるノズルを近接ノズルとするが、近接ノズルの中でも、吹き付け面からフィルム通過面までの距離Lは75mm以下であることが重要である。これにより、ノズルから吹き付けられるエアのポテンシャルコアが直進性を維持したままフィルムの通過面に当たることで、MD流の抑制効果や加熱効率が向上する。また、吹き付け面からフィルム通過面までの距離Lを近づけすぎると、上下のノズル間の作業スペースが確保できなくなるので、吹き付け面からフィルム通過面までの距離Lは25mm以上とすることが重要である
条件2について、「該近接ノズルとフィルム搬送方向の入口側に隣り合って配置されたノズル」における後者のノズルは、近接ノズル、及び、近接ノズル以外のノズルのいずれもが含まれうる。同様に条件2について、「該近接ノズルとフィルム搬送方向の出口側に隣り合って配置されたノズル」における後者のノズルにも、近接ノズル、及び、近接ノズル以外のノズルのいずれもが含まれうる。
条件2について、「条件1を満たす任意の近接ノズル」とは、条件1を満たす1組中の1本のみの近接ノズルでも良く、条件1を満たす1組中の2本両方の近接ノズルでも良い。なお、上下のノズルの風圧を合わせてフィルムを安定させるため、条件1を満たす1組中の2本の近接ノズルが、共に条件2を満たすことが好ましい。
発明者は、上記の通り、ノズルをフィルムに近づけ、かつ、中央線Aと中央線Bとの距離Pを大きくすることで、噴流が真っ直ぐとなり、ノズルが本来の加熱性能を発揮させることができるということを見出した。これにより、以下に説明する通り、噴流が持つ熱伝達率の特性を使って熱伝達率を計算し、ノズルの加熱能力が低下しない範囲で距離Pを大きくする設計が可能となった。ここで、従来のテンターオーブンでは、噴流は不安定で曲がってしまうため熱伝達率の特性から外れており、特性を使った設計は困難であった。噴流の特性として、フィルム面熱伝達率は、Lの−0.62乗に比例するので(「噴流工学」(社河内 敏彦著、日本、森北出版株式会社、2004年3月24日発行、100p))、460≦P[mm]≦300×(150/L)0.62の条件で距離Pを選択することで、噴流が真っ直ぐで熱伝達率の特性が適用できる状態で、ノズルの加熱能力が低下しない範囲で距離Pを大きくすることが可能となる。ここで、Lが近接ノズルの範囲外の150mmより大きいノズルの場合は、噴流は不安定で曲がってしまうため、熱伝達率は特性式よりも低い値となり、十分な加熱能力が得られない。また、距離Pが条件2の範囲外の460mm未満であった場合は、隣り合う噴流が相互に干渉し熱伝達率の低下を引き起こし、距離Pが300×(150/L)0.62よりも大きい場合は、ノズルの本数が少なすぎるので十分な加熱能力が得られない。
ここで、本発明の条件1と2を満たす近接ノズルにおいて、例えばL=75mmとすると距離P460mm広げることができる。この場合、ノズルのフィルム搬送方向の幅を200mmとすると、隣り合うノズルとの側面同士の距離は260mmとなる。また、ノズルをフィルム搬送方向に等間隔に配置せず、あるノズルを例えば入口側に寄った配置にすると、その出口側では隣り合うノズルとの側面同士の距離を400mm程度広げることができる(この場合、入口側の隣り合うノズルとの側面同士の距離は120mmとなる)。この様に、L=75mm以下とすることにより、隣り合うノズルとの側面同士の距離の入口側か出口側のどちらかを400mm程度まで広げることができ、人が入って作業をする程度のスペースを確保できるので、作業性が向上し好ましい。また、本発明の条件1と2を満たす近接ノズルにおいて、L=50mとすることにより距離Pを最大590mmまで広げることができ、ノズルのフィルム搬送方向の幅を190mm程度と設計すれば、ノズルをフィルム搬送方向に等間隔で配置しても、隣り合うノズルとの側面同士の距離の入口側と出口側の両方を400mm程度にまで広げることができ、さらに作業性が向上するため、より好ましい。
本発明における近接ノズルの本数について、テンターオーブンにおける各ゾーンはフィルムを搬送するために設けた開口部を通じてすべてつながっているため、あるノズルでMD流が抑制できれば、全体のMD流に対して抑制効果を有するため、本発明のテンターオーブンは、近接ノズルを少なくとも1組有することを要件とする。そこで、全てのノズルが近接ノズルである態様も、いくつかのノズルが近接ノズルである態様も、いずれも本発明である。また、テンターオーブン内に設置される近接ノズルの本数が多いほどMD流抑制効果が大きいことは自明である。同様の理由で、本発明のテンターオーブン中の全てのノズルが近接ノズルであり、かつ条件1及び条件2を満たす態様、一部のノズルのみが近接ノズルで、その近接ノズルの全てが条件1及び条件2を満たす態様、一部のノズルのみが近接ノズルで、その近接ノズルの一部のみが条件1及び条件2を満たす態様のいずれでも構わない。
また、本発明はテンターオーブンの中のいずれのゾーンにも適用可能である。つまり条件1及び条件2を満たす近接ノズルは、テンターオーブン中のいずれのゾーンに存在しても問題がない。しかしながら冷却ゾーンでフィルムの幅を狭くすることでフィルムをリラックスさせた場合は、フィルムがたるんで近接ノズルとフィルムが接触する可能性があるため、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーンのいずれかに配置されるノズルが、条件1及び条件2を満たす近接ノズルであることが好ましい。
また、ノズルの風圧により、フィルム面が上側に凸または下側に凸になることを抑制するため、ノズルの吹き付け面とフィルム通過面との距離が、対向する上下で同じであることが好ましい。
また、ノズルを、フィルム通過面までの距離が150mm以下である近接ノズルにする方法として、ノズルがレールに接触しない範囲でフィルム通過面に可能な限り近づけることで実現することができる。ノズルをフィルム通過面により近づける方法として、レールを小さく設計することで実現しても良い。ノズルをフィルム通過面にさらに近づける方法として、図5に示す通りレールの内側にノズルを設置することにより、レールを避けることで実現する。ただし、この場合は、ノズルのフィルム幅方向の長さが一定であると、レールがフィルム幅方向に移動した場合、ノズルとレール間に隙間ができ、フィルム端部の加熱不足や、隙間の部分をMD流が集中して通り抜けることによる温度ムラなどの問題が発生する可能性がある。そのため、レールの幅方向の移動に合わせて、ノズルのフィルム幅方向の長さが変わるようにすることが好ましい。長さの調節としては、ノズルを固定部と可動部の2重構造とし、可動部はレールと連結させ、レールの移動に合わせてフィルム幅方向へスライドさせる方法などで実現できるが、特に限定するものではない。
一般に熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂を口金から冷却ドラム上に押し出すことで未延伸フィルムを得て、必要に応じて該フィルムを搬送方向に延伸して一軸延伸フィルムとする。そして、前記未延伸フィルムをテンターオーブン中で搬送方向と幅方向とに同時に延伸する方法(同時二軸延伸法)や、前記一軸延伸フィルムをテンターオーブン中で幅方向に延伸する方法(逐次二軸延伸法)により、二軸延伸した熱可塑性樹脂フィルムを得ることが広く行われている。そしてこのような製造過程で用いられるテンターオーブンとして、本発明のテンターオーブンを用いることができる。つまり本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂を口金から冷却ドラム上に押し出して得られる未延伸フィルム又は一軸延伸フィルムを、前述の本発明のテンターオーブンに導入して処理することを特徴とする。このような本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法により得られる熱可塑性樹脂フィルムは、その幅方向の特性及び厚みの均一性が良好であり、また熱可塑性樹脂フィルムの昇温に必要な消費エネルギーを削減することもでき、さらに作業性も確保されるため、好ましい製造方法となる。
なお、本発明の製造方法が適用可能な熱可塑性樹脂フィルムとしては、特に限定されず、例えばポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルムなどに適用することができる。
1:(通常)ノズル
2:エア吸い込み部
3:熱交換器
4:循環ファン
5:フィルム
6:入口
7:出口
8:吹き付け面
9:吹き付け面とフィルム通過面までの距離
10:ノズルの側面同士の距離
11:吹き付け部
12:近接ノズル
13:中央線Aと中央線Bとの距離P
14:吹き付け部の中心線
15:クリップの走行レール

Claims (2)

  1. 一端にフィルムの入口を、他端にフィルムの出口を有し、入口から出口に向かって一方向に搬送されるフィルムにエアを吹き付ける吹き付け部を有するノズルを複数有するテンターオーブンであり、
    ノズルの吹き付け部を有する面(以下、吹き付け面と呼ぶ)からフィルム通過面までの距離Lが150mm以下であるノズルを近接ノズルとすると、条件1及び条件2を満たす近接ノズルを有し、近接ノズルがいずれもホールノズルであることを特徴とする、テンターオーブン。
    条件1:対向する上下1本ずつ合計2本のノズルが、共にレールの内側に位置し、かつLが25mm以上75mm以下の近接ノズルである。
    条件2:条件1を満たす任意の近接ノズルについて、該近接ノズルとフィルム搬送方向の入口側に隣り合って配置されたノズルとをフィルム通過面に投影した場合の搬送方向に平行な方向のノズル間の中央線を中央線Aとして、該近接ノズルとフィルム搬送方向の出口側に隣り合って配置されたノズルとをフィルム通過面に投影した場合の搬送方向に平行な方向のノズル間の中央線を中央線Bとしたときに、中央線Aと中央線Bとの距離Pが、以下の式を満たす。
    460≦P[mm]≦300×(150/L)0.62
  2. 熱可塑性樹脂を口金から冷却ドラム上に押し出して得られる未延伸フィルム又は一軸延伸フィルムを、請求項1に記載のテンターオーブンに導入して処理することを特徴とする、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
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