JP6392157B2 - ポリスチレン系樹脂発泡シート、積層シート及び容器 - Google Patents
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Description
一般に、積層シートは、ポリスチレン系樹脂の発泡樹脂層からなる発泡樹脂シート(ポリスチレン系樹脂発泡シート)と、ポリスチレンやポリオレフィンの非発泡シートとが熱融着されて製造される。特に、加飾シートの場合は、非発泡シートの片面に印刷層が形成され、印刷層の面がポリスチレン系樹脂発泡シートに熱融着される。即ち、加飾シートは、発泡樹脂層と非発泡樹脂層との間に印刷層を備える。
このようなバブルが生じた積層シートを熱成形して容器等を得ると、バブルがさらに肥大したり、バブルの生じた領域に皺を生じたりして、印刷層の美麗さが損なわれやすい。
加えて、バブルが生じた容器の非発泡樹脂層に過度な力が加わると、発泡樹脂層と非発泡樹脂層とが剥離しやすくなる。
また、例えば、ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも一方の面を特定の加熱条件で加熱処理を施し、次いで非発泡シートを加熱溶着して得られた積層シートが提案されている(特許文献2)。特許文献2の発明によれば、バブルの発生の防止が図られている。
そこで、本発明は、バブルの発生をより良好に抑制できるポリスチレン系樹脂発泡シートを目的とする。
前記発泡樹脂層は、発泡剤を含有し、前記発泡樹脂層中の前記発泡剤の含有量は、2.2〜3.6質量%が好ましく、前記発泡樹脂層は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有することが好ましい。
前記発泡樹脂層は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有することが好ましく、前記発泡樹脂層と前記非発泡樹脂層との間に印刷層が形成され、前記印刷層は、(メタ)アクリル系樹脂を含有することが好ましい。
前記発泡樹脂層は、中間点ガラス転移温度が92℃以上102℃未満であり、
前記非発泡樹脂層は、表面に位置し、かつその表面の表面粗さ(Ra)が0.6〜2.0μmであることを特徴とする。
前記発泡樹脂層は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有することが好ましく、前記発泡樹脂層と前記非発泡樹脂層との間に印刷層が形成され、前記印刷層は、(メタ)アクリル系樹脂を含有することが好ましい。
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートは、ポリスチレン系樹脂組成物が発泡されてなる発泡樹脂層からなる。ポリスチレン系樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含有する。
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体に基づく構成単位が、前記ポリスチレン系樹脂の全構成単位に対して50質量%以上含まれるものが好ましく、70質量%以上含まれるものがより好ましく、80質量%以上含まれるものがさらに好ましい。
また、ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量は、20万〜40万が好ましく、24万〜40万がより好ましい。前記質量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した値を、標準ポリスチレンによる較正曲線に基づき換算した値である。
また、ポリスチレン系樹脂として、ゴム成分を含むハイインパクトポリスチレンが用いられてもよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、共重合体中の(メタ)アクリル酸エステルに基づく構成単位の含有質量が1〜14質量%のものが好ましく、1質量%以上14質量%未満のものがより好ましく、4〜10質量%のものがさらに好ましい。
ポリスチレン系樹脂中の(メタ)アクリル酸エステルに基づく構成単位の含有量は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステルの仕込み量から計算により算出できる。また、例えば、ポリスチレン系樹脂発泡シートをATR法による赤外分光分析で分析して得られる(D1728/D1600)の吸光度比から求められる。ここで前記D1728は、1728cm−1での(メタ)アクリル酸エステルに基づく構成単位に含まれるエステル基のC=O伸縮振動に由来するピークであり、前記D1600は、1600cm−1でのポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面内振動に由来するピークである。
本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートにおけるD1728/D1600(以下、吸光度比ということがある)は、0.2〜1.3が好ましく、0.3〜1.0がより好ましく、0.35〜0.65がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、非発泡シートと熱融着する際のエネルギーの省力化を図れ、上記上限値以下であれば、高温条件下で保管しても変形しにくい。
ポリスチレン系樹脂中のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量は、特に限定されず、100質量%でもよい。
発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素が挙げられる。中でも、ブタンが好ましく、ノルマルブタンとイソブタンとの混合物が好ましい。これらの発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
イソブタンとノルマルブタンとの混合物を発泡剤として用いる場合、イソブタン:ノルマルブタンで表される質量比は、80:20〜55:45が好ましく、70:30〜60:40がより好ましい。イソブタンの割合が上記下限値以上であれば、ポリスチレン系樹脂発泡シートにおける二次発泡性の経時的低下が抑制され、上記上限値以下であれば、容器等を成形するまでのポリスチレン系樹脂発泡シートの熟成期間を短くできる。
ポリスチレン系樹脂発泡シート(即ち、発泡樹脂層)中の発泡剤の含有量(いわゆる残存ガス量)は、2.2〜3.6質量%が好ましく、2.5〜3.3質量%がより好ましい。上記下限値未満では、容器を熱成形した際に、ひび割れや皺を生じやすくなったり、容器強度が低下するおそれがある。上記上限値超では、バブルを生じやすくなるおそれがある。
気泡調整剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
気泡調整剤の添加量は、樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
本稿における厚さは、測定対象物の幅方向(TD方向)等間隔の20箇所をマクロゲージによって測定し、その算術平均値により求められた値である。
なお、見掛け密度は、JIS K7222:19999「発泡プラスチック及びゴム−見かけ密度の測定」に準じて測定される。
なお、表層密度は、表面から200μmの深さまでの見かけ密度である。
中間点ガラス転移温度(Tmg)は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」の「9.3 ガラス転移温度の求め方」に従って求められる。具体的には、DSC曲線の低温側ベースラインを延長した直線及び高温側ベースラインを延長した直線から、縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度として求められる。
中間点ガラス転移温度(Tmg)は、スチレン系樹脂の組成等により調節される。
DSC測定には、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の型名「DSC6220型」をDSC測定装置として用いる。測定装置のサンプル側に約6.5mgの試料が充填されたアルミニウム製測定容器を置き、リファレンス側にアルミナが充填されたアルミニウム製測定容器を置く。次いで、窒素ガス(流量20ml/min)を供給しつつ、20℃/minの昇温速度で30℃から200℃まで昇温し、10分間保持する。その後、速やかに試料を取出し、25±10℃の環境下にて試料を放冷した後、20℃/minの昇温速度で200℃まで昇温して、DSC曲線を求める。
ポリスチレン系樹脂発泡シートにおける第一の面の反対面(第二の面)の表面粗さ(Ra)は、特に限定されず、第一の面の表面粗さ(Ra)と同じでもよいし、異なってもよい。
表面粗さは、JIS B0601−2001に準拠して測定される値である。
ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面粗さ(Ra)は、発泡倍率や後述する製造方法における巻取速度、冷却速度等の組み合わせにより調節される。
ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法としては、ポリスチレン系樹脂組成物を調製し、ポリスチレン系樹脂組成物をシート状に押し出し、発泡する方法が挙げられる(押出発泡法)。
ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法の一例について、図1を用いて説明する。
図1のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造装置200は、インフレーション成形によりポリスチレン系樹脂発泡シートを得る装置であり、押出機202と、発泡剤供給源208と、サーキュラーダイ210と、マンドレル220と、2つの巻取機240とを備える。
押出機202は、いわゆるタンデム型押出機であり、第一の押出部202aと第二の押出部202bとが配管206で接続された構成とされている。第一の押出部202aはホッパー204を備え、第一の押出部202aには、発泡剤供給源208が接続されている。
第二の押出部202bには、サーキュラーダイ210が接続され、サーキュラーダイ210の下流には、マンドレル220が設けられている。マンドレル220は、カッター222を備える。
加熱温度は、樹脂の種類等を勘案して、樹脂が溶融しかつ添加剤が変性しない範囲で適宜決定される。
ポリスチレン系樹脂組成物は、サーキュラーダイ210から押し出され、発泡剤が発泡して円筒状の発泡シート101aとなる。サーキュラーダイ210から押し出された発泡シート101aは、冷却空気211を吹き付けられた後、マンドレル220に供給される。この冷却空気211の温度、量、吹き付け位置との組み合わせにより、発泡シート101aの冷却速度を調節できる。
円筒状の発泡シート101aは、マンドレル220で任意の温度にされ、サイジングされ、カッター222によって2枚に切り裂かれてポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、単に発泡シートということがある)101となる。発泡シート101は、各々ガイドロール242とガイドロール244とに掛け回され、巻取機240に巻き取られて発泡シートロール102となる。
発泡シートの発泡倍数は、例えば、2〜20倍とされる。
本発明の積層シートについて、図2を参照して説明する。
図2の積層シート1は、発泡樹脂層10と、発泡樹脂層10の一方の面に設けられた非発泡樹脂層20と、発泡樹脂層10と非発泡樹脂層20との間に設けられた印刷層30とを備える。積層シート1は、三層構造であり、発泡樹脂層10及び非発泡樹脂層20が表面に位置している。
なお、図2は、厚さ方向が拡大され、図示されている。
発泡樹脂層10の中間点ガラス転移温度(Tmg)は、前述のポリスチレン系樹脂発泡シートの中間点ガラス転移温度(Tmg)と同様である。
非発泡樹脂層20の材質は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン系樹脂;等が挙げられ、中でもポリスチレン系樹脂の非発泡樹脂層が好ましい。非発泡樹脂層20がポリスチレン系樹脂であれば、発泡樹脂層10との密着性を高めやすい。
非発泡樹脂層20を構成するポリスチレン系樹脂は、発泡樹脂層10におけるポリスチレン系樹脂と同様である。非発泡樹脂層20のポリスチレン系樹脂は、発泡樹脂層10のポリスチレン系樹脂と同じでもよいし異なってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂としては、従来、インクに用いられるものが挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルへキシル基、ラウリル基等のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体;脂環、芳香環、複素環又はビニル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体;ヒドロキシル基又はアミノ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体等が挙げられる。
積層シート1の製造方法は、例えば、ポリスチレン系樹脂発泡シートを得る発泡層形成工程と、印刷が施された非発泡シートを得る非発泡層形成工程と、ポリスチレン系樹脂発泡シートと非発泡シートとを熱融着する積層工程とを備える。
以下、熱圧着法における積層工程の一例について、図3を用いて説明する。
図3の積層シートの製造装置100は、熱ラミネート機110を備える。
熱ラミネート機110は、一対の加熱ロールを備え、加熱ロールの表面を任意の温度に加熱できるものである。
発泡シートロール102から発泡シート101を繰り出し、熱ラミネート機110に供給する。非発泡シートロール104から非発泡シート103を繰り出し、非発泡シート103をガイドロール112に掛け回した後、熱ラミネート機110に供給する。この際、ポリスチレン系樹脂発泡シートの第一の面(表面粗さ(Ra)が3.0〜15.0μmである面)と、非発泡シート103における印刷層とが接するようにする。第一の面と印刷層30(即ち、非発泡シート)とが接することで、発泡樹脂層10と非発泡樹脂層20との密着性を高められる。
熱ラミネート機110では、発泡シート101と非発泡シート103とをこの順で重ね、これを一対の加熱ロールで挟みつつ任意の温度で加熱して、発泡シート101と非発泡シート103とを圧着する。発泡シート101と非発泡シート103とを圧着する温度(圧着温度)は、例えば、140〜200℃が好ましく、160〜180℃がより好ましい。本実施形態の発泡シート101は、比較的低い圧着温度でも、非発泡シート103と圧着され、かつバブルを生じにくい。こうして、発泡樹脂層10と、非発泡樹脂層20と、発泡樹脂層10と非発泡樹脂層20との間に設けられた印刷層とを備える積層シート1となる。積層工程における加熱温度は、各層の材質等に応じて、適宜決定される。
また、例えば、発泡樹脂層における非発泡樹脂層とは反対側の面に、非発泡樹脂層が設けられていてもよい。
本発明の容器は、ポリスチレン系樹脂の発泡樹脂層と、発泡樹脂層の少なくとも一方の面に設けられた非発泡樹脂層とを備える。
本発明の容器は、上述の積層シート1が任意の形状に成形されたものである。
容器の非発泡樹脂層は、積層シート1の非発泡樹脂層20と同様である。
容器が印刷層を備える場合、その印刷層は、積層シート1の印刷層30と同様である。
例えば、積層シートを熱成形する方法、積層シートを任意の形状の折り箱とする方法等が挙げられる。
積層シートを熱成形する方法としては、例えば、積層シートを任意の温度に加熱し、次いで、積層シートを任意の形状の雄型と雌型とで挟み込んで成形する方法が挙げられる。
この際、本発明の積層シートを用いることで、加熱温度を低くし、加熱時間を短くしても、良好に熱成形できる。加えて、本発明の積層シートは、発泡樹脂層と非発泡樹脂層との密着性が高く、バブルが生じていないため、熱成形で容器を成形した際に、バブルが肥大することなく、皺を生じにくい。
<ポリスチレン系樹脂>
・樹脂A:下記合成方法で得られたもの。
≪樹脂Aの合成方法≫
内容積500リットルの攪拌機付オートクレーブ(以下、反応器ともいう)で、スチレンモノマー128.2kg、アクリル酸ブチルモノマー6.8kgの混合液を調製した。この混合液に、重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、純度75質量%、日油社製、商品名:ナイパーBW)295g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(日油社製、商品名パーブチルE)268gを溶解した。次いで、反応器にピロリン酸マグネシウム802g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム21g、蒸留水268kgを投入した後、47rpmで撹拌して懸濁液を調製した。
反応器内の温度を90℃にした後、90℃で9時間保持した。
その後、反応機内の懸濁液を85rpmで攪拌し、反応器内の温度を125℃とした後、125℃で3時間保持した。その後、反応器内の温度を40℃とし、反応器から重合スラリーを取り出し、脱水、洗浄、乾燥して、アクリル酸ブチルを5質量%含有するスチレン−アクリル酸ブチル共重合体樹脂(樹脂A)を得た。
≪樹脂Bの合成方法≫
スチレンモノマー132.3kg、アクリル酸ブチルモノマー2.7kgとした以外は、合成例1と同様に行い、アクリル酸ブチルを2質量%含有するスチレン−アクリル酸ブチル共重合体樹脂(樹脂B)を得た。
・樹脂D:トーヨースチロールHRM26(東洋スチレン社製、ポリスチレン樹脂、アクリル酸ブチルの含有量0質量%)。
≪樹脂Eの合成方法≫
スチレンモノマー134.6kg、アクリル酸ブチルモノマー0.4kgとした以外は、合成例1と同様に行い、アクリル酸ブチルを0.3質量%含有するスチレン−アクリル酸ブチル共重合体樹脂(樹脂E)を得た。
≪樹脂Fの合成方法≫
スチレンモノマー125.5kg、アクリル酸ブチルモノマー9.5kgとした以外は、合成例1と同様に行い、アクリル酸ブチルを7質量%含有するスチレン−アクリル酸ブチル共重合体樹脂(樹脂F)を得た。
ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造には、図1の製造装置200と同様の製造装置を用いた。この製造装置は、タンデム押出機(上流側の第一の押出部がφ115mmの単軸押出機、下流側の第二の押出部がφ150mmの単軸押出機)を備える。
表1〜2に記載のポリスチレン系樹脂100質量部と、気泡調整剤(タルク)を練り込んだポリスチレン(ポリスチレン樹脂:60質量%、タルク含有量:40質量%、東洋スチレン社製、商品名:「DSM1401A」)0.6質量部とをドライブレンドして混合ペレットとした。
前記混合ペレットを第一の押出部のホッパーに供給し、最高温度設定が230℃になるように第一の押出部内で混合ペレットを加熱し溶融混練した。
混合ペレットを溶融混練しつつ、発泡剤(イソブタン:ノルマルブタン=69:31の混合ブタンガス)を第一の押出部内に供給して溶融混練物を得た。発泡剤の供給量をポリスチレン系樹脂100質量部に対して4.9質量部とした。
溶融混練物を第二の押出部に移送し、溶融混練物を150℃以下に冷却した。第二の押出部の先端に装着されたサーキュラーダイ(口径:φ160mm、スリットクリアランス:0.4mm)から溶融混練物を押出発泡して、円筒状の発泡体を形成した。この際、溶融混練物の吐出量を200kg/hとした。円筒状の発泡体の内方側及び外方側に、冷却空気を吹き付けた。次いで、マンドレル(φ675mm、長さ800mm)の外周面に、円筒状の発泡体の内面を摺接させて、円筒状の発泡体を内側から冷却した。マンドレルの後段寄りで、この円筒状の発泡体の左右2箇所を押出方向に沿って切断し、円筒状の発泡体を上下に分割して、2枚の長尺帯状のポリスチレン系樹脂発泡シートを得、これらをそれぞれロール状に巻き取った。
各例において、発泡剤の供給量、溶融混練物の温度、冷却空気の吹き付け量、巻取機の巻取速度を適宜調整することで、表1〜2に記載したポリスチレン系樹脂発泡シートを得た。発泡剤の供給量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、4.2〜5.1質量部であった。
保管後のポリスチレン系樹脂発泡シートと、印刷層を有する厚み20μmのポリスチレン系樹脂シート(非発泡シート)とを加熱ロール(φ250)で圧着して、各例の積層シートを得た。圧着条件は、加熱ロールの温度が170℃、ラインスピードが9m/分、圧力が0.5MPaであった。なお、印刷層は、(メタ)アクリル系樹脂を含有するインクで形成されたものである。
非発泡樹脂層が容器内側になるように、各例の積層シートを熱成形して、長さ150mm×幅100mm×深さ20mmのトレー容器を作製した。
<ポリスチレン系樹脂発泡シート中の発泡剤の含有量(残ガス量)>
保管後のポリスチレン系樹脂発泡シートを10cm×10cmの大きさに切り出して試料とした。試料10枚を重ね、この質量Aを測定した。試料10枚をアルミホイルに包み、アルミホイルで包まれた10枚の試料の質量B(アルミホイルの質量を含む)を測定し、次いで、アルミホイルで包まれた10枚の試料を150℃の乾燥機中に60分間放置した。その後、アルミホイルで包まれた試料を取り出し、これをデシケーター中で1時間放置した後に質量C(アルミホイルの質量を含む)を測定し、下記式よりポリスチレン系樹脂発泡シート中の発泡剤の含有量を算出した。
発泡剤の含有量(質量%)=(質量B(g)−質量C(g))÷質量A(g)×100
表面粗さ(算術平均粗さRa:平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、基準長さで割って平均した値)は、JIS B0601−2001に準じて、以下の手法で測定した。測定装置として(株)キーエンス製の「ダブルスキャン高精度レーザー測定器LT−9500、LT−9010M」を用い、データ処理ソフトとしてコムス(株)製の「非接触輪郭形状 粗さ測定システムMAP−2DS」を用いた。測定条件は、以下の通りであった。
≪測定条件≫
・測定範囲:10000μm
・測定ピッチ:5μm
・測定速度:500μm/秒
・評価長さ(ln):4.0mm
・基準長さ(l):0.8mm
・光量:40
・平均フィルター:4
・ノイズフィルター:1
なお、ポリスチレン系樹脂発泡シート及び積層シートから幅20mm×長さ20mmの試験片を各5個採取した。試験片5個について、押出方向及び押出方向の直交方向に表面粗さを測定した。また、容器の底面から幅20mm×長さ20mmの試験片5個を採取した。試験片5個について、押出方向及び押出方向の直交方向に表面粗さを測定した。試験片5個の測定結果の平均値を表中に示す。表中、「積層シートの第一の面の表面粗さ(Ra)」は、積層シートにおける非発泡樹脂層の表面の表面粗さ(Ra)である。表中、「容器の表面粗さ(Ra)」は、容器における非発泡樹脂層の表面の表面粗さ(Ra)である。
ASTM D−2856−87に準拠し、1−1/2−1気圧法にて、連続気泡率を測定した。
吸光度比(D1728/D1600)を以下の方法で求めた。
ポリスチレン系樹脂発泡シートから3cm×3cmの試料片を切り出した。試料片の表面を下記測定条件に従い、一回反射型ATR法にて赤外吸収スペクトルを得た。
<測定条件>
・測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計 Nicolet iS10(Thermo SSCIENTIFIC社製)及び一回反射型水平状ATR Smart−iTR(Thermo SSCIENTIFIC社製)。
・ATRクリスタル:ダイヤモンド貼付KRS−5(角度=45°)。
・測定法:一回ATR法。
・測定波数領域:4000〜400cm−1。
・測定深度の波数依存性:補正せず。
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器及びKBrビームスプリッター。
・分解能:4cm−1。
・積算回数:16回(バックグランド測定時も同様)。
得られた赤外吸収スペクトルにより、スチレンとアクリル酸エステルの吸光度比=D1728/D1600を求めた。
D1728とは、赤外吸収スペクトル曲線における波数1770cm−1±5cm−1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数1515cm−1±5cm−1での最低吸収位置とを結ぶ直線をベースラインとした波数1728cm−1±5cm−1の領域の赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースラインの吸光度)の最大値のことであり、これを波数1728cm−1での吸光度D1728とした。
また、D1600とは、赤外吸収スペクトル曲線における波数1770cm−1±5cm−1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数1515cm−1±5cm−1での最低吸収位置とを結ぶ直線をベースラインとした波数1600cm−1±5cm−1の領域の赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースラインの吸光度)の最大値のことであり、これを波数1600cm−1での吸光度D1600とした。
吸光度比(D1728/D1600)は、(メタ)アクリル酸エステル由来の吸光度(D1728)をスチレン由来の吸光度(D1600)で除した値である。
各例の積層シートから縦700mm×横1040mmの平面視長方形状の試験片を切り出した。
単発成形機(東成産業社製、商品名「ユニック自動成形機 FM−3A」)の上側ヒーターの平均温度を280℃、下側ヒーターの平均温度を230℃、上側雰囲気温度を185℃、下側雰囲気温度を175℃にした。
次に、上記試験片を単発成形機に導入し、積層シートを発泡させ、厚さ4.0mmとなるように加熱時間を調整し、二次発泡板を得た。得られた二次発泡板の非発泡樹脂層の表面状態を観察し、下記評価基準に従って評価した。
○:バブルの発生が認められなかった。
△:5mm以下の微小なバブルが認められた。
×:5mm以下の微小なバブルが多数認められた、又は5mm超のバブルが1個以上認められた。
各例の容器を目視し、下記基準で成形性を評価した。
○:容器に皺や反りが見られなかった。
△:反りは見られないが、容器の一部に皺が見られた。
×:容器の反りが大きく、所望の形状に成形できなかった。
小型卓上荷重測定機(アイコーエンジニアリング社製、FTN1−13A/500、解析ソフト:FTN−3000)を測定装置として用いた。各例の容器について、対向する長辺同士を近づけるように、両長辺の中央部を400mm/minの速度で圧縮し、10mm圧縮したときの最大荷重を測定した。30個の容器について最大荷重を測定し、30個の算術平均値を求め、これを容器腰強度とした。
一方、中間点ガラス転移温度が本願発明の上限値超である比較例1、3、4には、バブル発生の防止効果が認められなかった。
中間点ガラス転移温度が本願発明の下限値未満である比較例5は、容器の反りが大きく、所望する形状に成形できなかったため、容器腰強度を評価しなかった。
ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面粗さRaが本願発明の下限値未満である比較例2は、バブル発生の防止効果が認められなかった。
ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面粗さRaが本発明の上限値超である比較例6は容器腰強度が低く、表面の平滑性が乏しいため、容器の美麗性が損なわれていた。
Claims (9)
- 中間点ガラス転移温度(Tmg)が92℃以上102℃未満である発泡樹脂層からなり、前記発泡樹脂層の少なくとも一方の面の表面粗さ(Ra)が3.0〜15.0μmであり、
前記一方の面の表面から200μmの深さまでの見かけ密度が0.1〜0.13g/cm 3 であるポリスチレン系樹脂発泡シート。 - 前記発泡樹脂層は、発泡剤を含有し、前記発泡樹脂層中の前記発泡剤の含有量は、2.2〜3.6質量%である、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
- 前記発泡樹脂層は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有する、請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
- ポリスチレン系樹脂の発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層の少なくとも一方の面に設けられた非発泡樹脂層とを備え、
前記発泡樹脂層は、中間点ガラス転移温度が92℃以上102℃未満であり、
前記発泡樹脂層は、前記一方の面の表面から200μmの深さまでの見かけ密度が0.1〜0.13g/cm 3 であり、
前記非発泡樹脂層は、表面に位置し、かつその表面の表面粗さ(Ra)が1.0〜3.0μmである、積層シート。 - 前記発泡樹脂層は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有する、請求項4に記載の積層シート。
- 前記発泡樹脂層と前記非発泡樹脂層との間に印刷層が形成され、
前記印刷層は、(メタ)アクリル系樹脂を含有する、請求項5に記載の積層シート。 - ポリスチレン系樹脂の発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層の少なくとも一方の面に設けられた非発泡樹脂層とを備え、
前記発泡樹脂層は、中間点ガラス転移温度が92℃以上102℃未満であり、
前記発泡樹脂層は、前記一方の面の表面から200μmの深さまでの見かけ密度が0.1〜0.13g/cm 3 であり、
前記非発泡樹脂層は、表面に位置し、かつその表面の表面粗さ(Ra)が0.6〜2.0μmである、容器。 - 前記発泡樹脂層は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有する、請求項7に記載の容器。
- 前記発泡樹脂層と前記非発泡樹脂層との間に印刷層が形成され、
前記印刷層は、(メタ)アクリル系樹脂を含有する、請求項7又は8に記載の容器。
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