JP6391721B2 - 水性インクの製造方法、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

水性インクの製造方法、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Description

本発明は、水性インクの製造方法、及びインクジェット記録方法に関する。
近年、インクジェット記録装置は、商業印刷分野やオフィス印刷分野で使用する機会が増えている。商業印刷分野やオフィス印刷分野では、得られる画像の耐擦過性に優れる水性インクが求められている。得られる画像の耐擦過性を向上させるために、水性インクに樹脂を添加する方法が検討されている。水性インクに樹脂を添加し、その水性インクを用いて画像を記録すると、顔料を記録媒体に強く定着させることができ、画像の耐擦過性が向上する。しかし、水性インクに樹脂を添加することで、水性インクが増粘するため、良好な吐出安定性が得られない場合がある。
水性インクの吐出安定性を向上させるために、水性媒体で安定に存在する樹脂の製造方法が検討されている。水溶性のラジカル吸収剤であるメルカプトエタンスルホン酸塩を溶存させた水系の液媒体中で、単量体を重合することにより、2次粒子の生成を抑制し、水性媒体で安定に分散できる樹脂粒子の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。油溶性の重合開始剤の存在下で単量体を重合した後、得られた樹脂と有機系の液媒体を混合し、その混合物を水系の液媒体に転相して樹脂粒子を製造し、これを用いて調製したインクが提案されている(特許文献2参照)。
特開2002−3511号公報 特開2011−57791号公報
特許文献1の実施例に記載されている製造方法では、水溶性のラジカル吸収剤であるメルカプトエタンスルホン酸塩を溶存させた水系の液媒体中に、水に不溶な単量体、及び油溶性の重合開始剤を分散させるために、界面活性剤を使用する。製造された樹脂粒子を水性インクに用いた場合、界面活性剤により、水性インクの表面張力が低下し、水性インクの吐出安定性が不十分になるという課題があることが判明した。
また、特許文献2の実施例に記載されている樹脂粒子は、樹脂と有機系の液媒体の混合物を水系の液媒体に転相して製造するため、樹脂粒子の粒径を制御しにくく、水性インクの吐出安定性が不十分になるという課題があることが判明した。
したがって、本発明の目的は、吐出安定性、及び得られる画像の耐擦過性に優れる水性インクの製造方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記製造方法によって製造された水性インクを使用するインクジェット記録方法を提供することにある。
発明は、インクジェット用の水性インクの製造方法であって、水系の液媒体に、下記式(1)で表される化合物、アルキル(メタ)アクリレートを含むα,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体、及び水溶性の重合開始剤を添加する工程と、前記単量体を重合する工程とを有する樹脂の製造方法により、樹脂を製造する工程、並びに前記工程で得られた樹脂、及び色材を混合して、水性インクを製造する工程を有することを特徴とする水性インクの製造方法に関する。
HS−R−SO M (1)
(式(1)中、Rは、アルキレン基であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。)
また、本発明は、インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記インクが、前記水性インクの製造方法により製造される水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法に関する。
本発明によれば、吐出安定性、及び得られる画像の耐擦過性に優れる水性インクの製造方法を提供することができる。さらに、前記水性インクの製造方法により製造された水性インクを使用するインクジェット記録方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に述べる。本発明においては、以下、インクジェット用の水性インクは、「インク」と記載することがある。各種の物性値は、特に断りのない限り、温度25℃における値である。以下、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と記載した場合は、それぞれ「アクリル酸、メタクリル酸」、「アクリレート、メタクリレート」を表すものとする。また、メルカプトアルキルスルホン酸、及びその塩を、「メルカプトアルキルスルホン酸類」と記載する。
本発明者らは、インクの吐出安定性を向上するために、水性媒体で、安定に存在する樹脂の構成についての検討を行った。水性媒体中で、樹脂の凝集を抑制し、安定に存在させるためには、樹脂の末端に、スルホン酸基を有する必要がある。スルホン酸基を有することで、スルホン酸基がイオン解離し、2種の斥力が生じる。ここで、斥力とは、複数の樹脂が離れようとする力のことを意味する。斥力には、静電的な斥力と、立体的な斥力がある。
まず、静電的な斥力について説明する。水性媒体中において、イオン解離しているスルホン酸基は、負電荷を有する。つまり、樹脂の近傍は、負に帯電しており、その樹脂の周りには、正の電荷を有するイオンが集まる。複数の樹脂が接近すると、その接近している領域において、正の電荷を有するイオンの濃度が高くなる。そのため、正の電荷を有するイオンの濃度を低くしようと、接近している領域に水分子が入り込む。その結果、複数の樹脂は凝集しにくくなる。
次に、立体的な斥力について説明する。樹脂の末端に、水和力が大きいスルホン酸基を有することで、樹脂の間に存在する隙間に、接近してくる樹脂が入り込む。その結果、樹脂が重なり合う領域が形成される。この重なり合いを解消しようとするため、複数の樹脂は凝集しにくくなる。このように、静電的な斥力と、立体的な斥力により、水性媒体に樹脂を安定に存在させることが可能となる。
さらに、樹脂の末端の部分は、−S−R−SOMで表される構造であることが必要である。Rは、アルキレン基であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。アルキレン基は、直鎖、及び分岐鎖のいずれであってもよい。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属であることがさらに好ましい。
水性インクは、通常アルカリ性である。アルカリ性環境下で、かつ、インクの吐出時に温度が上がるような厳しい条件であっても、RとSの間の結合、つまり炭素原子と硫黄原子の間の結合は、切断されにくい。よって、樹脂の末端にあるスルホン酸基が脱離しないため、樹脂は安定に存在できる。
しかし、炭素原子と酸素原子の間の結合は、アルカリ性環境下で、かつ、インクの吐出時に温度が上がるような厳しい条件であると、切断されやすい。よって、−R−SOMで表される構造が、−R−O−SOM(Rは、アルキレン基である。アルキレン基は、直鎖、及び分岐鎖のいずれであってもよい。)であると、RとOの間の結合が切断され、スルホン酸基が脱離し、樹脂は安定に存在しにくくなる。
このように、樹脂の末端の部分がスルホン酸基を有する特定の構造を有することで、水性媒体で、樹脂を安定に存在させることができる。
<樹脂の製造方法>
本発明の樹脂の製造方法は、式(1)で表される化合物を利用することで、水系の液媒体に、単量体を安定に存在させる。一般的な乳化重合では、水系の液媒体に単量体を安定に存在させるために、乳化剤を用いる。本発明においては、重合が進行する過程で、式(1)で表される化合物が乳化剤としての作用を発揮することで、ソープフリー、又は乳化剤の使用量を抑えた条件で樹脂を合成することができる。ここで、ソープフリー重合とは、乳化剤を使用しない重合法のことである。ソープフリー重合は、界面活性剤を使用する乳化重合と異なり、界面活性剤を使用しないため、界面活性剤により、インクの表面張力が低下し、インクの吐出安定性が不十分になるという課題が生じないという利点がある。
特許文献2には、有機系の液媒体に溶解している樹脂を、水系の液媒体に転相することで、樹脂を析出させ、樹脂粒子を製造することが記載されている。通常スルホン酸基は、水系の液媒体中でイオン解離しやすいため、スルホン酸基は水側に配向する。有機系の液媒体に溶解している樹脂を、水系の液媒体に転相すると、連鎖移動剤由来のスルホン酸基の多くは、水側に配向する。しかし、転相によりすばやく樹脂粒子が形成されるので、連鎖移動剤由来のスルホン酸基の一部は、水側に配向しないまま、樹脂粒子の内側に取り込まれてしまう。これにより、樹脂が凝集しやすくなり、インクの吐出安定性が得られない。一方、本発明の樹脂の製造方法では、特許文献2に記載されているように有機系の液媒体から水系の液媒体に転相して、樹脂粒子を製造するのではなく、初めから水系の液媒体で樹脂を製造する。したがって、特許文献2に記載されるように製造される樹脂粒子と比べて、本発明の製造方法により得られる樹脂は、水側に配向しているスルホン酸基が相対的に多いため、水系の液媒体で、樹脂を安定に存在させることができる。
本発明の樹脂の製造方法は、分散工程、及び重合工程を有する。以下、各工程について詳しく説明する。
(分散工程)
本発明の樹脂の製造方法では、まず水系の液媒体に、連鎖移動剤である下記式(1)で表される化合物、α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体、及び水溶性の重合開始剤を添加する。この工程を便宜的に分散工程と呼ぶ。
HS−R−SOM (1)
(式(1)中、Rは、アルキレン基であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。)
この工程では、水和力の大きいスルホン酸基と、Rに対応する炭化水素鎖とを有する連鎖移動剤が、α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体の分散、又は溶解を補助する。
[連鎖移動剤]
連鎖移動剤は、水溶性の重合開始剤由来のラジカルを受け取ると、・S−R−SOMとなる。ラジカルを受け取った連鎖移動剤は、水系の液媒体に分散、又は溶解している単量体と反応する。その結果、得られた樹脂は、その主鎖の末端にスルホン酸基を有することになる。
連鎖移動剤は、スルホン酸基を有しており、下記式(1)で表される化合物である。
HS−R−SOM (1)
ただし、Rは、アルキレン基であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。アルキレン基は、直鎖、及び分岐鎖のいずれであってもよい。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属であることがさらに好ましい。
式(1)で表される化合物としては、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メルカプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブタンスルホン酸、5−メルカプトペンタンスルホン酸、6−メルカプトヘキサンスルホン酸、7−メルカプトヘプタンスルホン酸、8−メルカプトオクタンスルホン酸、9−メルカプトノナンスルホン酸、及びそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩などのメルカプトアルキルスルホン酸類が挙げられる。なかでもRの炭素数が、2又は3である化合物が好ましい。さらに、3−メルカプトプロパンスルホン酸、及びその塩、並びに3−メルカプトエタンスルホン酸、及びその塩であることがさらに好ましい。これらは、樹脂の末端に、−S−R−SOM基を効率良く導入することができる。さらに、水系の液媒体への溶解性が高い連鎖移動剤を用いることで、水系の液媒体に存在する水溶性の重合開始剤由来のラジカルを効率的に受け取ることができる。
式(1)のRの炭素数が1である化合物は、安定に存在しづらい。また、式(1)で表される化合物のRの炭素数が4以上である場合、化合物が水系の液媒体に溶解しにくいため、水系の液媒体に存在する水溶性の重合開始剤由来のラジカルを効率的に受け取りにくくなる場合がある。そのため、樹脂の末端にスルホン酸基を効率良く導入しづらくなり、樹脂が安定に存在しにくくなる。これにより、インクの良好な吐出安定性が得られにくい場合がある。
式(1)で表される化合物の使用量(質量%)は、α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体の使用量(質量%)に占める割合で、0.1質量%以上14.0質量%以下であることが好ましい。前記割合は、0.3質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
[α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体]
α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体としては、アニオン性基を有する単量体、アニオン性基を有さない単量体などが挙げられる。アニオン性基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。アニオン性基を有さない単量体としては、芳香族基を有する単量体、アルキル(メタ)アクリレート類などが挙げられる。芳香族基を有する単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基部分の炭素数が1〜8程度のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基部分の炭素数が3〜10程度のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基含有単量体類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレンオキサイド基含有単量体類;などが挙げられる。なかでもアルキル(メタ)アクリレート類は、メチルメタクリレート、ブチル(メタ)アクリレートであることが好ましい。これらは、必要に応じて1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート類を少なくとも用いることが好ましい。さらに、必要に応じて、アルキル(メタ)アクリレート類と、(メタ)アクリル酸とを併用することができる。
アルキル(メタ)アクリレート類の使用量(質量%)は、α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体の使用量(質量%)に占める割合で、90.0質量%以上であることが好ましい。前記割合は、95.0質量%以上であることがより好ましく、100.0質量%であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸の使用量(質量%)は、α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体の使用量(質量%)に占める割合で、0.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。前記割合は、0.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましく、0.0質量%であることがさらに好ましい。
α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体の使用量(質量%)は、水系の液媒体の使用量(質量%)に占める割合で、5.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上20.0質量%以下であることがさらに好ましい。
[水溶性の重合開始剤]
水溶性の重合開始剤とは、ラジカルを発生させる化合物のことである。ここで、水溶性とは、温度25℃での100gの水に対する溶解度が、1g以上であることをいう。具体的には、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸類;t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどの過酸化物類;2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダソリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダソリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダソリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン)]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン)]ジヒドロクロリド、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などのアゾ化合物類が挙げられる。
なかでも水溶性の重合開始剤は、水系の液媒体において、ラジカルを容易に生成し得るという点から、過硫酸塩類であることが好ましい。過硫酸塩類は、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過硫酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。
水溶性の重合開始剤として、過酸化物類、及びアゾ化合物類を使用すると、ラジカル重合が進行しにくくなる場合がある。そのため、樹脂の末端にスルホン酸基を効率良く導入しづらくなり、樹脂は安定に存在しにくくなる。これにより、インクの良好な吐出安定性が得られにくい場合がある。
水溶性の重合開始剤の使用量(質量%)は、α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体の使用量(質量%)に占める割合で、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
[水系の液媒体]
連鎖移動剤、α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体、及び水溶性の重合開始剤を添加する水系の液媒体としては、水のみ、又は、水を主溶媒としてプロトン性や非プロトン性の有機溶剤を併用した水性媒体を使用することができる。水性媒体は、水、及び有機溶剤の混合溶媒である。有機溶剤としては、水と任意の割合で混和、又は溶解するものを用いることが好ましい。なかでも、水、又は水を50.0質量%以上含有する水性媒体を用いることが好ましい。
プロトン性の有機溶剤は、酸素や窒素に結合した水素原子(酸性水素原子)を有する有機溶剤である。また、非プロトン性の有機溶剤は、酸性水素原子を有しない有機溶剤である。有機溶剤としては、例えば、アルコール類;アルキレングリコール類;ポリアルキレングリコール類;グリコールエーテル類;グリコールエーテルエステル類;カルボン酸アミド類;ケトン類;ケトアルコール類;環状エーテル類;含窒素化合物類;含硫黄化合物類などを挙げることができる。
本発明の樹脂の製造方法では、式(1)で表される化合物が、乳化剤としての作用を発揮する。したがって、乳化剤の使用量はごく少量でも、又は使用しなくてもよい。水系の液媒体に、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤などの非反応性界面活性剤、又は反応性界面活性剤などの乳化剤を添加してもよい。この場合、水系の液媒体中の乳化剤の使用量(質量%)は、水系の液媒体の使用量(質量%)に占める割合で、0.01質量%以上2.00質量%以下であることが好ましい。
(重合工程)
本発明の樹脂の製造方法では、分散工程の後に、α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体を重合する重合工程を行う。これにより、樹脂を含む液体を得る。本発明の製造方法で使用する各成分は、化学的に安定であり、pHや温度による影響を受けにくいため、反応系のpHや温度を任意に設定することができる。本発明の樹脂の製造方法では、特にpH調整を行わなくてよい。具体的には、反応系のpHは、1〜13であることが好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。なかでも、1.5〜9であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましい。
反応速度は、温度により制御することができる。具体的には、重合開始剤の種類に応じて適宜設定すればよい。例えば、温度50℃〜温度100℃であることが好ましく、温度60℃〜温度95℃であることがさらに好ましい。温度を高くすると反応速度は上がるが、反応熱により、水系の液媒体の沸点を超え、沸騰に伴う凝集物が生じる場合がある。一方、温度を低くすると、反応速度が下がり、反応時間が長くなる場合がある。
[樹脂の末端が有するスルホン酸基]
樹脂の末端が有する炭素原子と結合しているスルホン酸基の数(mmol/g)は、樹脂が有するすべての硫黄原子の数に対する比率で、0.50倍以上0.75倍以下であることが好ましい。前記比率が、0.50倍より小さい、又は0.75倍より大きいと、樹脂の末端のスルホン酸基に由来する静電的な斥力と立体的な斥力が生じにくくなる。その結果、樹脂が凝集し、インクの吐出安定性が低下する場合がある。
《測定方法》
樹脂が有するすべての硫黄原子の数は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)を用いて測定できる。−C−S−C、−C−SO 、及び−O−SO の総量は、核磁気共鳴(NMR)分光法により求めることができる。また、酸基の種類は、フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)を用いて、確認することができる。例えば、スルホン酸基は、S=O伸縮振動の吸収波長から確認することができる。スルホン酸基であれば、1230cm−1〜1120cm−1の吸収から、また、スルホン酸基が塩となっている場合には、1175cm−1付近、又は1055cm−1付近の吸収から確認することができる。また、樹脂の末端のスルホン酸基と樹脂の非末端のスルホン酸基とは、核磁気共鳴(NMR)分光法におけるピークの半値幅の大小から判断できる。例えば、プロトンNMRにおいて、スルホン酸基に隣接するメチレン基のプロトンの化学シフトは3.0ppm付近に見られる。スルホン酸基が末端に存在する場合は、シャープなピークとなり、非末端に存在する場合は、ブロードなピークとなる。
[樹脂の重量平均分子量]
樹脂の重量平均分子量(M)は、10,000以上500,000以下であることが好ましい。重量平均分子量(M)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られるポリスチレン換算の重量平均分子量である。重量平均分子量(M)が10,000より小さいと、樹脂と樹脂の間の絡み合いが弱くなり、顔料層の強度が低下し、得られる画像の耐擦過性が得られにくい場合がある。重量平均分子量(M)が500,000より大きいと、樹脂と樹脂の間の絡み合いが強くなり、樹脂と樹脂がほぐれにくくなる。硬くなった樹脂のかたまりは、画像中に偏って存在しやすいため、得られる画像の耐擦過性が得られにくい場合がある。
[樹脂粒子の体積基準の累積50%粒径]
本発明の製造方法によって得られる樹脂は、水溶性の樹脂であっても、水不溶性の樹脂(樹脂粒子)であってもよいが、樹脂粒子であることが好ましい。ここで、樹脂粒子とは、酸価と等モル量のアルカリで中和し、動的光散乱法で測定した際に、粒径を有しているものである。樹脂粒子と樹脂粒子の接触する確率は、等モル量の水溶性樹脂を用いた場合の水溶性樹脂と水溶性樹脂が接触する確率と比較して、低くなる。よって、樹脂粒子を用いることで、インクが増粘しにくく、インクの吐出安定性がより良好となる。
樹脂粒子は、以下のメカニズムで生成する。まず、重合開始剤から連鎖移動剤にラジカルが移動する。連鎖移動剤の有するラジカルは、水系の液媒体に存在する単量体に次々と受け渡され、少数の単量体が重合した分子が形成される。単量体の間を移動したラジカルは、再び連鎖移動剤に受け渡される。ラジカルの移動により生じた分子の末端は、水和力の大きいスルホン酸基を有するが、分子の末端ではない部分、すなわち、HS−Rの部分は、疎水性である。そのため、水系の液媒体では、分子の疎水性の部分が集合し、ミセルを形成する。形成されたミセルの内側は、疎水性となるため、水に溶解しにくい単量体が次々と入り込む。連鎖移動剤の有するラジカルにより、ミセルの内側で複数の単量体が重合されることで、表面にスルホン酸基を有する樹脂粒子が形成される。樹脂粒子の粒径は、撹拌速度によって、容易に制御できる。
水溶性樹脂の重合反応の機構は、樹脂粒子の重合反応の機構と同じである。しかし、ヒドロキシ基含有単量体類や酸基含有単量体類を多く用いると、水溶性樹脂となる傾向にある。
樹脂粒子の体積基準の累積50%粒径(D50)は、60nm以上600nm以下であることが好ましい。樹脂粒子のD50は、動的光散乱法で測定する。D50が60nmより小さいと、単位質量あたりの樹脂粒子の数が増加するため、樹脂粒子と樹脂粒子が接触する確率が高まる。その結果、インクの粘度が増加し、インクの吐出安定性が得られにくい場合がある。D50が600nmより大きいと、記録ヘッドの吐出口に樹脂粒子が付着しやすくなるため、インクの吐出安定性が得られにくい場合がある。
[樹脂粒子の粒度分布]
上記で求めた樹脂粒子のD50と、樹脂粒子の体積基準の累積10%粒径(D10)との関係は、D10/D50≧0.65であることが好ましい。D10/D50が0.65未満であると、樹脂粒子の粒径が不均一となりやすいため、インクの吐出安定性が得られにくい場合がある。樹脂粒子のD10も、動的光散乱法で測定する。
特許文献2に記載されているように、有機系の液媒体から水系の液媒体に転相して樹脂粒子を製造するのではなく、初めから水系の液媒体で樹脂を製造することは、重要である。有機系の液媒体から水系の液媒体に転相して樹脂粒子を製造すると、D10/D50が0.65未満となり、インク中で樹脂の粒径が不均一となりやすい。インク中で、大きな樹脂粒子がそのまわりに存在する小さな樹脂粒子を巻き込んで凝集する「ヘテロ凝集」が起こりやすく、インク流路で目詰まりしやすいため、インクの吐出安定性が得られない。
<水性インクの製造方法>
本発明の水性インクの製造方法は、前記樹脂の製造方法により、樹脂を製造する工程、並びに前記工程で得られた樹脂、及び色材を混合して、水性インクを製造する工程を有する。以下、本発明の製造方法により製造される水性インクに用いることのできる各成分について説明する。
(色材)
本発明の製造方法により製造される水性インクは、色材として、染料、顔料のいずれも含有することが可能であるが、顔料を含有することが好ましい。水性インク中の色材の含有量(質量%)は、0.1質量%以上15.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下がさらに好ましい。
顔料としては、従来公知のものをいずれも使用することができる。なかでも顔料は、カーボンブラックや有機顔料を用いることが好ましい。さらに、樹脂分散剤により分散される樹脂分散顔料を用いることが好ましい。樹脂分散剤としては、上記で説明した樹脂とは異なる、一般的な(メタ)アクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、顔料は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(樹脂)
本発明の製造方法で得られる樹脂は、色材の分散剤として用いるのではなく、インクの添加剤として用いることが好ましい。インク中の本発明の製造方法により製造される樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
(水性媒体)
本発明の製造方法により製造されるインクは、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有する。水としては脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤としては特に限定されるものではなく、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、及び含窒素化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。また、これらの水溶性有機溶剤の1種又は2種以上をインクに含有させることができる。
インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が3.0質量%未満であると、インクをインクジェット記録装置に用いる場合に耐固着性などの信頼性が十分に得られない場合がある。また、水溶性有機溶剤の含有量が50.0質量%超であると、インクの粘度が上昇して、インクの供給不良が起きる場合がある。
(その他の成分)
本発明の製造方法により製造されるインクには、上記成分の他に、尿素やその誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタンなどの常温(25℃)で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。また、本発明の製造方法により製造されるインクには、必要に応じて、界面活性剤、樹脂、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及びキレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
(インクの物性)
本発明においては、インクの温度25℃における粘度は、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上3.5mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、インクの温度25℃における静的表面張力は、28mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。また、インクの温度25℃におけるpHは、5以上10以下であることが好ましい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明の製造方法により製造されるインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明の製造方法により製造されるインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
以下、実施例、及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」、及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロキシペルオキシド、2,2’−アゾビス[1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリドは、水溶性の重合開始剤である。また、過酸化ベンゾイル、及び2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)は、油溶性の重合開始剤である。
<樹脂1〜39の製造>
撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置、及び温度計を備えたフラスコに、水700.0部を加えた。撹拌機を用いて撹拌しながら、窒素雰囲気下で温度85℃まで昇温した。表1〜3の中段に、使用した撹拌機と、撹拌速度を記載した。その後、表1〜3の上段に記載の単量体を混合した液体、表1〜3の上段に記載の連鎖移動剤、及び重合開始剤の混合物を2時間かけて加え、温度85℃を維持しながら、4時間撹拌した。これにより、樹脂の含有量が12.5%の樹脂1〜39を含む液体を得た。
<樹脂40〜42の製造>
撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置、及び温度計を備えたフラスコに、メタノール200部を加えた。撹拌しながら、窒素雰囲気下で温度65℃まで昇温した。表1〜3の中段に、使用した撹拌機と、撹拌速度を記載した。その後、表1〜3の上段に記載の単量体を混合した液体、連鎖移動剤、及びメタノール50.0部を混合した液体と、重合開始剤1.6部、及びメタノール20.0部を混合した液体を、それぞれ2時間かけて温度65℃を維持しながら、滴下した。使用した重合開始剤は、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65、和光純薬製)である。滴下後、さらに温度65℃を維持して、4時間撹拌し、樹脂40〜42のメタノールの溶液を得た。次いで、樹脂の酸価に対して0.9当量の水酸化カリウム、及び適量のイオン交換水を加えた後、撹拌しながら、メタノールを減圧下で除去した。これにより、樹脂の含有量が12.5%の樹脂40〜42を含む液体を得た。
<樹脂の重量平均分子量Mの測定>
樹脂の重量平均分子量Mは、GPCにより、以下のようにして測定した。温度25℃で24時間かけて、樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。得られた溶液を、メンブレンフィルターで濾過して、サンプル溶液を得た。サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.3質量%となるように調整した。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で樹脂の重量平均分子量Mを測定した。
装置:Waters2695 Separations Module、Waters製
RI検出器:2414detector、Waters製
カラム:KF−806Mの4連、昭和電工製
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:100μl
樹脂の重量平均分子量Mの算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500、東ソー製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用した。
<樹脂粒子のD10、及びD50の測定>
本発明において、樹脂のD10、及びD50(nm)は、純水で希釈した樹脂を含有する液体を測定サンプルとし、動的光散乱法による粒度分布計(ナノトラックUPA−EX150、日機装製)を使用して、測定した。測定条件は、Setzero:30s、測定回数:3回、測定時間:180秒、形状:真球形、屈性率:1.59である。
表1〜3の下段に、それぞれの樹脂の特性を記載した。
樹脂30、及び35は、水溶性の樹脂であり、D10、及びD50は測定されず、0としている。樹脂36、及び37は、連鎖移動剤がスルホン酸基を有さず、樹脂の合成の際に乳化剤としての作用を発揮しないため、樹脂を合成することができなかった。そのため、D10、及びD50は測定できず、0と表記している。
<インク1〜45の調製>
下記の各成分を混合した。分散・乳化機(クレアミックス、エム・テクニック製)を使用して、10,000rpmの条件で60分間プレミキシングを行った。その後、湿式微粒化装置(ナノヴェイタL−AS、吉田機械興業製)を使用して分散処理(処理圧200MPa、20パス処理)を行った。これにより、顔料が樹脂Aによって分散された状態の顔料分散液(顔料の含有量が20%、樹脂Aの含有量が4%)を得た。樹脂Aを含む液体は、酸価が150mgKOH/g、重量平均分子量が8,000のスチレン−アクリル酸共重合体を10%水酸化カリウム水溶液で中和して得られた、樹脂Aの含有量が25%の液体である。インク1、及び5〜45で使用した顔料は、Printex80(Orion Engineered Carbons製)である。インク2で使用した顔料は、5GX01(Hansa Yellow 5GX 01 LV 3344、クラリアント製)である。インク3で使用した顔料は、D7110F(Heliogen Blue D 7110 F、BASF製)である。インク4で使用した顔料は、D4450(Cinquasia Pink D 4450、BASF製)である。
・顔料:20.0部
・樹脂Aを含む液体:32.0部
・イオン交換水:48.0部
その後、得られた顔料分散液を、下記の各成分と混合した。表4に、樹脂を含む液体1〜42に対応するインクの番号1〜45を示している。ポリエチレングリコールは、数平均分子量が1,000である。アセチレノールE100は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤である。これを十分撹拌して分散した後、この分散液を、孔径1.2μmのメンブレンフィルター(HDCIIフィルター、ポール製)にて加圧ろ過し、各インクを調製した。
・顔料分散液:20.0部
・グリセリン:5.0部
・樹脂を含む液体:62.5部
・ポリエチレングリコール:5.0部
・ジエチレングリコール:4.0部
・アセチレノールE100:1.0部
・イオン交換水:2.5部
<評価>
本発明においては、下記の各評価の評価基準で、A又はBを許容できるレベルとし、Cを許容できないレベルとした。評価結果を表4に示す。
[吐出安定性]
前記で得られた各インクを充填したインクカートリッジを、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置(PIXUS iP3100、キヤノン製)に搭載した。この装置では、解像度が1200dpi×1200dpiであり、1/1200インチ×1/1200インチの単位領域に5ピコリットルのインク滴を1滴付与する条件で記録した画像が、記録デューティが100%であるベタ画像と定義される。A4サイズのPPC用紙(GF−500、キヤノン製)に、記録デューティを100%として、19cm×26cmのベタ画像を50枚記録した。このときの10枚目及び50枚目のベタ画像の記録物を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがってインクの吐出安定性を評価した。
A:50枚目においても白スジやカスレが生じていなかった
B:10枚目においては白スジやカスレは生じていなかったが、50枚目において白スジやカスレが生じていた
C:10枚目において白スジやカスレが生じていた
[耐擦過性]
前記で得られた各インクをインクカートリッジに充填し、上記インクジェット記録装置に装着した。そして、オーロラコート(坪量127.9g/m、日本製紙製)に記録デューティが100%のベタ画像(200mm×200mm)を記録した。この画像に対し、JIS L 0849に準じた学振型試験機である耐摩耗試験機(井元製作所製)を用いて、荷重500gで10往復の条件で摩擦試験を行った。摩擦試験後の画像を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって、得られる画像の耐擦過性を評価した。
A:画像に擦過痕がついていなかったが、記録媒体の白地は見えなかった
B:画像に擦過痕がついていたが、記録媒体の白地は見えなかった
C:画像に擦過痕がついており、わずかに記録媒体の白地が見えていた

Claims (16)

  1. インクジェット用の水性インクの製造方法であって、
    水系の液媒体に、下記式(1)で表される化合物、アルキル(メタ)アクリレートを含むα,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体、及び水溶性の重合開始剤を添加する工程と、前記単量体を重合する工程とを有する樹脂の製造方法により、樹脂を製造する工程、並びに前記工程で得られた樹脂、及び色材を混合して、水性インクを製造する工程を有することを特徴とする水性インクの製造方法。
    HS−R−SO M (1)
    (式(1)中、Rは、アルキレン基であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。)
  2. 前記アルキレン基の炭素数が、2又は3である請求項1に記載の水性インクの製造方法。
  3. 前記水溶性の重合開始剤が、過硫酸塩類である請求項1又は2に記載の水性インクの製造方法。
  4. 前記過硫酸塩類が、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過硫酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項に記載の水性インクの製造方法。
  5. 前記樹脂が有する炭素原子と結合しているスルホン酸基の数(mmol/g)が、前記樹脂が有するすべての硫黄原子の数(mmol/g)に対する比率で、0.50倍以上0.75倍以下である請求項1乃至のいずれか1項に記載の水性インクの製造方法。
  6. 前記樹脂を構成する樹脂の重量平均分子量が、10,000以上500,000以下である請求項1乃至のいずれか1項に記載の水性インクの製造方法。
  7. 前記樹脂が、樹脂粒子である請求項1乃至のいずれか1項に記載の水性インクの製造方法。
  8. 前記樹脂粒子の体積基準の累積50%粒径(nm)が、60nm以上600nm以下である請求項に記載の水性インクの製造方法。
  9. 前記水溶性の重合開始剤の使用量(質量%)が、前記α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体の使用量(質量%)に占める割合で、0.1質量%以上5.0質量%以下である請求項1乃至のいずれか1項に記載の水性インクの製造方法。
  10. 前記式(1)で表される化合物の使用量(質量%)が、前記α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体の使用量(質量%)に占める割合で、0.1質量%以上5.0質量%以下である請求項1乃至のいずれか1項に記載の水性インクの製造方法。
  11. 前記α,β−エチレン性不飽和結合を有する単量体の使用量(質量%)が、前記水系の液媒体の使用量(質量%)に占める割合で、5.0質量%以上20.0質量%以下である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の水性インクの製造方法。
  12. 前記アルキル(メタ)アクリレートが、アルキル基部分の炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル基部分の炭素数が3〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1乃至11のいずれか1項に記載の水性インクの製造方法。
  13. 前記アルキル(メタ)アクリレートが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1乃至11のいずれか1項に記載の水性インクの製造方法。
  14. 前記色材が、顔料を含む請求項1乃至13のいずれか1項に記載の水性インクの製造方法。
  15. インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の水性インクの製造方法により製造される水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
  16. 前記記録ヘッドが、熱エネルギーの作用により前記インクを吐出する方式の記録ヘッドである請求項15に記載のインクジェット記録方法。
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