以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの断面図であり、図2は、ワークに貼付された状態の保護膜形成用複合シートの平面図である。図1に示すように、本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1は、基材21の一方の面に粘着剤層22が積層されてなる粘着シート2と、粘着シート2の粘着剤層22側に積層された保護膜形成フィルム3と、保護膜形成フィルム3の粘着シート2側とは反対側の周縁部に積層された治具用粘着剤層4とを備えて構成される。なお、本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1は、保護膜形成フィルム3が未だワークに貼付されていないものをいう。
本実施形態では、図1および図2に示すように、粘着シート2の基材21および粘着剤層22、ならびに保護膜形成フィルム3は、同じ大きさおよび形状に形成されており、平面視円形であるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、粘着シート2と保護膜形成フィルム3とは、異なる大きさまたは形状であってもよいし、いずれも平面視多角形や円弧と直線との組み合わせからなる形状等であってもよい。
また、本実施形態では、図1および図2に示すように、治具用粘着剤層4は、環状に形成されており、その外周縁は、粘着シート2および保護膜形成フィルム3の外周縁と、平面視で同じ位置となっているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、治具用粘着剤層4は環状でなく、途中で切れていてもよいし、外周縁が、粘着シート2または保護膜形成フィルム3の外周縁と、平面視で異なる位置となっていてもよい。
実施形態に係る保護膜形成用複合シート1は、ワークを加工するときに、当該ワークに貼付されて当該ワークを保持するとともに、当該ワークまたは当該ワークから得られるチップに保護膜を形成するために用いられる。本実施形態において、この保護膜は、保護膜形成フィルム3を熱硬化することにより形成される。実施形態に係る保護膜形成用複合シート1は、一例として、ワークとしての半導体ウエハのダイシング加工時に半導体ウエハを保持するとともに、ダイシングによって得られる半導体チップに保護膜を形成するために用いられるが、これに限定されるものではない。
1.粘着シート
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1の粘着シート2は、基材21と、基材21の一方の面に積層された粘着剤層22とを備えて構成される。
1−1.基材
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1の基材21は、基材21に0.1g/mmの荷重をかけて130℃で2時間加熱し23℃まで冷却した場合における、加熱前に対する加熱後のMD(Machine Direction)方向およびCD(Cross Direction)方向の伸縮率(以下「荷重あり伸縮率」という場合がある。)が、ともに95〜103%である。この荷重あり伸縮率の測定方法は、後述する試験例に示すとおりである。ここで、MD方向とは、基材21の製造のライン方向を意味し、CD方向とは、MD方向と直交する方向、すなわち基材21の製造の幅方向を意味する。
基材21が上記の物性を有することにより、加熱工程および冷却工程を経た保護膜形成用複合シート1の弛みを効果的に抑制することができる。したがって、本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1は、加熱・冷却工程後の工程に支障をきたす可能性が低いものとなっている。
上記荷重あり伸縮率が95%未満であると、保護膜形成用複合シート1の収縮量が大きく、ワークに大きな内部応力が発生してワークが破損するおそれがあり、また、保護膜形成用複合シート1がリングフレーム等の治具から外れるおそれもある。一方、上記荷重あり伸縮率が103%を超えると、保護膜形成用複合シート1の弛みが大きく、各工程で弛みに起因する支障が生じるおそれが大きい。かかる観点から、上記荷重あり伸縮率は、96〜101%であることが好ましく、特に97〜100%であることが好ましい。
ここで、基材21に荷重をかけずに130℃で2時間加熱し23℃まで冷却した場合における、加熱前に対する加熱後のMD方向およびCD方向の伸縮率(以下「荷重なし伸縮率」という場合がある。)は、ともに93〜100%であることが好ましく、特に95〜100%であることが好ましく、さらには97〜100%であることが好ましい。この荷重なし伸縮率の測定方法は、後述する試験例に示すとおりである。
実プロセスにおいてワーク(半導体ウエハ)がごく薄く軽くなった場合、荷重なし伸縮率が93%以上であると、保護膜形成用複合シート1の収縮量が小さく、ワークに大きな内部応力が発生してワークが破損することを抑制することができる。また、保護膜形成用複合シート1がリングフレーム等の治具から外れることを抑制することもできる。一方、荷重なし伸縮率が100%以下であると、保護膜形成用複合シート1の弛みが小さくなり、各工程で弛みに起因する支障が生じる可能性を低減することができる。
また、本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1の基材21は、23℃におけるMD方向およびCD方向の引張弾性率(ヤング率)が、ともに100〜700MPaである。この引張弾性率の測定方法は、後述する試験例に示すとおりである。
基材21が上記の物性を有することにより、粘着シート2は適度な柔軟性を有することとなり、ダイシング後のエキスパンド(必要な場合)およびピックアップを良好に行うことができる。なお、一般的なピックアップ工程では、ダイシングで得られたチップを保持している粘着シート2に対して突上げピンを突き当てるが、粘着シート2が柔軟性を有することで、突上げピンによって突き当てられた粘着シート2がチップを押し上げ、もってチップが粘着シート2から剥離し易くなり、ピックアップ性が良好になる。ピックアップ力(測定方法は後述する試験例に示す)としては、5N以下であることが好ましく、特に4N以下であることが好ましく、さらには3N以下であることが好ましい。
上記引張弾性率が700MPaを超えると、粘着シート2の柔軟性が低下し、上記の優れた効果が得られない。一方、上記引張弾性率が100MPa未満であると、粘着シート2が柔らかくなり過ぎて、ダイシングを良好に行うことができなくなる。かかる観点から、上記引張弾性率は、120〜600MPaであることが好ましく、特に150〜500MPaであることが好ましい。
基材21の融点は、130℃以上であることが好ましく、特に130〜170℃であることが好ましく、さらには130〜160℃であることが好ましい。基材21の融点が上記範囲内にあることで、前述した荷重あり伸縮率および引張弾性率を満たし易いものとなる。
基材21の厚さは、50〜200μmであることが好ましく、特に50〜120μmであることが好ましく、さらに60〜100μmであることが好ましい。上記厚さが50μm未満であると、基材21の荷重あり伸縮率が大きくなる傾向にある。一方、厚さが200μmを超えると、ピックアップ性が低下するおそれがある。
基材21を構成する材料は、前述した物性を有するものであればよく、例えば以下に示す樹脂フィルムから適宜選択することができる。
樹脂フィルムの具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合体フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。またこれらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムのような変性フィルムも用いられる。上記の基材21はこれらの1種からなるフィルムでもよいし、さらにこれらを2種類以上組み合わせた積層フィルムであってもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
上記の中でも、ポリプロピレンフィルムが好ましい。ポリプロピレンフィルムは、その種類によっては、適度な耐熱性および柔軟性を有し、前述した荷重あり伸縮率および引張弾性率を満たし易い。
上記樹脂フィルムは、その表面に積層される粘着剤層22との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。
基材21は、上記樹脂フィルム中に、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤を含有してもよい。
1−2.粘着剤層
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1の粘着シート2は、基材21の一方の面に粘着剤層22を備えている。この粘着剤層22が存在することで、粘着剤層22の粘着力を制御することにより、保護膜形成用フィルム3をダイシングの際には強固に固定することができ、かつ、ダイシングで得られたチップのピックアップが容易にできる程度の適度な剥離性を発揮することができる。粘着剤層22がないと、基材21と保護膜形成用フィルム3との接着力が過剰となり、チップのピックアップが不可能となったり、逆に基材21と保護膜形成用フィルム3との接着力が弱過ぎて、ダイシング中にチップが脱落したりする問題が生じることがある。
粘着剤層22は、単層からなってもよいし、2層以上の多層からなってもよく、多層の場合、同一の材料(粘着剤)からなってもよいし、異なる材料(粘着剤)からなってもよい。
粘着剤層22を構成する粘着剤は、非硬化性の粘着剤であってもよいし、硬化性の粘着剤であってもよい。また、硬化性の粘着剤は、硬化前の状態であってもよいし、硬化後の状態であってもよい。粘着剤層22が多層からなる場合には、非硬化性の粘着剤と硬化性の粘着剤とを組み合わせたものであってもよい。非硬化性の粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられ、中でもアクリル系粘着剤が好ましい。硬化性の粘着剤としては、例えば、エネルギー線硬化性粘着剤、熱硬化性粘着剤等が挙げられ、中でもエネルギー線硬化性粘着剤が好ましく、特にアクリル系のエネルギー線硬化性粘着剤が好ましい。
粘着剤層22がエネルギー線硬化性粘着剤から構成される場合、保護膜形成用複合シート1を被着体に貼付する段階で、当該エネルギー線硬化性粘着剤は硬化していなくてもよいし、硬化していてもよい。
粘着剤層22を構成するエネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、エネルギー線硬化性を有しないポリマーとエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。
エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合について、以下説明する。
エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖にエネルギー線硬化性を有する官能基(エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)(以下「エネルギー線硬化型重合体(A)」という場合がある。)であることが好ましい。このエネルギー線硬化型重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有する(メタ)アクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。
アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とからなる。
アクリル系共重合体(a1)の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基等の官能基とを分子内に有するモノマーであることが好ましい。
上記官能基含有モノマーのさらに具体的な例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリル酸等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが用いられる。これらの中でも、特に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を通常3〜100質量%、好ましくは5〜40質量%の割合で含有し、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を通常0〜97質量%、好ましくは60〜95質量%の割合で含有してなる。
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にもジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
不飽和基含有化合物(a2)が有する置換基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、官能基がヒドロキシ基、アミノ基または置換アミノ基の場合、置換基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、官能基がエポキシ基の場合、置換基としてはアミノ基、カルボキシル基またはアジリジニル基が好ましく、官能基がカルボキシル基の場合、置換基としてはエポキシ基が好ましい。
また不飽和基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合が、1分子毎に1〜5個、好ましくは1〜2個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマー100当量当たり、通常10〜100当量、好ましくは20〜95当量の割合で用いられる。
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、官能基と置換基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の置換基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
このようにして得られるエネルギー線硬化型重合体(A)の重量平均分子量は、1万以上であるのが好ましく、特に15万〜150万であるのが好ましく、さらに20万〜100万であるのが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定したポリスチレン換算の値である。
エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合であっても、エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)をさらに含有してもよい。
エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
かかるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合、エネルギー線硬化性粘着剤中におけるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の含有量は、5〜80質量%であることが好ましく、特に20〜60質量%であることが好ましい。
ここで、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤(C)を添加することが好ましく、この光重合開始剤(C)の使用により、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
光重合開始剤(C)としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤(C)は、エネルギー線硬化型共重合体(A)(エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、エネルギー線硬化型共重合体(A)およびエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)100質量部に対して0.1〜10質量部、特には0.5〜6質量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
エネルギー線硬化性粘着剤においては、上記成分以外にも、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分またはオリゴマー成分(D)等が挙げられる。
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分またはオリゴマー成分(D)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量(Mw)が3000〜250万のポリマーまたはオリゴマーが好ましい。
また、エネルギー線硬化性粘着剤は、架橋剤(E)によって架橋構造を形成していてもよい。架橋剤(E)としては、エネルギー線硬化型共重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
これら他の成分(D),(E)を使用することにより、硬化前における粘着性および剥離性、硬化後の強度、他の層との接着性、保存安定性などを改善し得る。これら他の成分の使用量は特に限定されず、エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して0〜40質量部の範囲で適宜決定される。
次に、エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とする場合について、以下説明する。
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分や、官能基含有モノマーを構成単位とせず、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体を構成単位とするアクリル系共重合体などが使用できる。エネルギー線硬化性樹脂組成物中におけるエネルギー線硬化性を有しないポリマー成分の含有量は、20〜99.9質量%であることが好ましく、特に30〜80質量%であることが好ましい。
エネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとしては、前述の成分(B)と同じものが選択される。エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの配合比は、ポリマー成分100質量部に対して、多官能モノマーおよび/またはオリゴマー10〜150質量部であるのが好ましく、特に25〜100質量部であるのが好ましい。
この場合においても、上記と同様に、光重合開始剤(C)や架橋剤(E)を適宜使用することができる。
一方、粘着剤層22を構成する粘着剤としてアクリル系粘着剤を使用する場合、当該アクリル系粘着剤としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分や、官能基含有モノマーを構成単位とせず、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体を構成単位とするアクリル系共重合体などを使用することができる。また、その場合、アクリル系粘着剤は、前述した架橋剤(E)と同様の架橋剤によって架橋構造を形成していてもよい。
粘着剤層22を構成する粘着剤としてアクリル系粘着剤を使用する場合、当該粘着剤層22は、さらにエポキシ樹脂を含有してもよい。アクリル系粘着剤によって粘着剤層22を構成する場合、当該粘着剤層22に隣接している保護膜形成フィルム3を構成する硬化性接着剤が粘着剤層22に移行し、粘着剤層22の物性が変化する場合がある。しかしながら、粘着剤層22がエポキシ樹脂を含有することにより、かかる硬化性接着剤の移行による物性変化を防止することが可能となる。
上記の場合、粘着剤層22中におけるエポキシ樹脂の含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して0質量部を超え、20質量部以下であることが好ましく、特に1〜17質量部であることが好ましい。
本実施形態における粘着剤層22の厚さは、2〜50μmが好ましく、特に2〜40μmが好ましく、さらには3〜30μmが好ましい。粘着剤層22の厚さが2μm以上であることにより、優れた粘着力が十分に発揮され、粘着剤層22の厚さが50μm以下であることにより、加工性が良好になる。
2.保護膜形成フィルム
保護膜形成フィルム3は、半導体ウエハ等のワークと同一の大きさ・形状であってもよいし、ワークよりも一回り小さい大きさ・形状であってもよいし、ワークよりも一回り大きい大きさ・形状であってもよい。
保護膜形成フィルム3は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。この場合、保護膜形成フィルム3に半導体ウエハ等のワークを重ね合わせた後、保護膜形成フィルム3を硬化させることにより、保護膜をワークに強固に接着することができ、耐久性を有する保護膜をチップ等に形成することができる。この保護膜形成フィルム3に対しては、硬化性接着剤が未硬化の段階でも、硬化後の段階でも、レーザー光照射によって良好に印字することができる。
保護膜形成フィルム3は、常温で粘着性を有するか、加熱により粘着性を発揮することが好ましい。これにより、上記のように保護膜形成フィルム3に半導体ウエハ等のワークを重ね合わせるときに両者を貼合させることができる。したがって、保護膜形成フィルム3を硬化させる前に位置決めを確実に行うことができ、保護膜形成用複合シート1の取り扱い性が容易になる。
上記のような特性を有する保護膜形成フィルム3を構成する硬化性接着剤は、硬化性成分とバインダーポリマー成分とを含有することが好ましい。硬化性成分としては、熱硬化性成分、エネルギー線硬化性成分、またはこれらの混合物を用いることができるが、保護膜形成フィルム3の硬化方法や硬化後の耐熱性を考慮すると、熱硬化性成分を用いることが特に好ましい。
熱硬化性成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂(低分子量のもの)、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびこれらの混合物が好ましく用いられる。熱硬化性成分としては、通常分子量300〜1万程度のものが用いられる。
エポキシ樹脂は、加熱を受けると三次元網状化し、強固な被膜を形成する性質を有する。このようなエポキシ樹脂としては、従来より公知の種々のエポキシ樹脂が用いられるが、通常は、分子量300〜2500程度のものが好ましい。さらには、分子量300〜500の常態で液状のエポキシ樹脂と、分子量400〜2500、特に500〜2000の常温で固体のエポキシ樹脂とをブレンドした形で用いることが好ましい。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、50〜5000g/eqであることが好ましい。
このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェニルノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸のグリシジルエーテル;アニリンイソシアヌレート等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したグリシジル型もしくはアルキルグリシジル型のエポキシ樹脂;ビニルシクロヘキサンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−ジシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等のように、分子内の炭素−炭素二重結合を例えば酸化することによりエポキシが導入された、いわゆる脂環型エポキシドを挙げることができる。その他、ビフェニル骨格、ジシクロヘキサジエン骨格、ナフタレン骨格等を有するエポキシ樹脂を用いることもできる。
これらの中でも、ビスフェノール系グリシジル型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。これらエポキシ樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ樹脂を用いる場合には、助剤として、熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤を併用することが好ましい。熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤とは、室温ではエポキシ樹脂と反応せず、ある温度以上の加熱により活性化し、エポキシ樹脂と反応するタイプの硬化剤である。熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の活性化方法には、加熱による化学反応で活性種(アニオン、カチオン)を生成する方法;室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法;モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤で高温で溶出して硬化反応を開始する方法;マイクロカプセルによる方法等が存在する。
熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、各種オニウム塩や、二塩基酸ジヒドラジド化合物、ジシアンジアミド、アミンアダクト硬化剤、イミダゾール化合物等の高融点活性水素化合物等を挙げることができる。これら熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のような熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、特に好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜5重量部の割合で用いられる。
フェノール系樹脂としては、アルキルフェノール、多価フェノール、ナフトール等のフェノール類とアルデヒド類との縮合物などのフェノール系水酸基を有する重合体が特に制限されることなく用いられる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、o−クレゾールノボラック樹脂、p−クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール樹脂、ポリパラビニルフェノール樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、あるいはこれらの変性物等が用いられる。
これらのフェノール系樹脂に含まれるフェノール性水酸基は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基と加熱により容易に付加反応して、耐衝撃性の高い硬化物を形成することができる。このため、エポキシ樹脂とフェノール系樹脂とを併用してもよい。
バインダーポリマー成分は、保護膜形成フィルム3に適度なタックを与えたり、保護膜形成用複合シート1の操作性を向上したりすること等を目的として配合される。バインダーポリマーの重量平均分子量は、通常は3万〜200万、好ましくは5万〜150万、特に好ましくは10万〜100万の範囲にある。分子量が3万以上であることにより、保護膜形成フィルム3のフィルム形成が十分なものとなり、分子量が200万以下であることにより、他の成分との相溶性が良好に維持され、保護膜形成フィルム3のフィルム形成を均一に行うことができる。このようなバインダーポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系ポリマー等が用いられ、特にアクリル系ポリマーが好ましく用いられる。
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと(メタ)アクリル酸誘導体から導かれる構成単位とからなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が用いられる。また、(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等を挙げることができる。
上記の中でもメタクリル酸グリシジル等を構成単位として用いてアクリル系ポリマーにグリシジル基を導入すると、前述した熱硬化性成分としてのエポキシ樹脂との相溶性が向上し、保護膜形成フィルム3の硬化後のガラス転移温度(Tg)が高くなり、耐熱性が向上する。また、上記の中でもアクリル酸ヒドロキシエチル等を構成単位として用いてアクリル系ポリマーに水酸基を導入すると、ワークへの密着性や粘着物性をコントロールすることができる。なお、メタクリル酸グリシジル等を構成単位として用いてアクリル系ポリマーにグリシジル基を導入した場合における、そのアクリル系ポリマーや、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂は、熱硬化性を有する。しかしながら、このような熱硬化性を有するポリマーも、本実施形態においては熱硬化性成分ではなく、バインダーポリマー成分に該当するものとする。
バインダーポリマーとしてアクリル系ポリマーを使用した場合における当該ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10万以上であり、特に好ましくは15万〜100万である。アクリル系ポリマーのガラス転移温度は通常20℃以下、好ましくは−70〜0℃程度であり、常温(23℃)においては粘着性を有する。
熱硬化性成分とバインダーポリマー成分との配合比率は、バインダーポリマー成分100重量部に対して、熱硬化性成分を、好ましくは50〜1500重量部、特に好ましくは70〜1000重量部、さらに好ましくは80〜800重量部配合することが好ましい。このような割合で熱硬化性成分とバインダーポリマー成分とを配合すると、硬化前には適度なタックを示し、貼付作業を安定して行うことができ、また硬化後には、被膜強度に優れた保護膜が得られる。
保護膜形成フィルム3は、フィラーおよび/または着色剤を含有することが好ましい。保護膜形成フィルム3がフィラーを含有すると、硬化後の保護膜の硬度を高く維持することができるとともに、耐湿性を向上させることができる。また、形成される保護膜の表面のグロスを所望の値に調整することもできる。さらにまた、硬化後の保護膜の熱膨張係数を半導体ウエハの熱膨張係数に近づけることができ、これによって加工途中の半導体ウエハの反りを低減することができる。一方、保護膜形成フィルム3がフィラーおよび/または着色剤を含有すると、視認性に優れたレーザー印字を可能にすることもできる。
フィラーとしては、結晶シリカ、溶融シリカ、合成シリカ等のシリカや、アルミナ、ガラスバルーン等の無機フィラーが挙げられる。中でも合成シリカが好ましく、特に半導体装置の誤作動の要因となるα線の線源を極力除去したタイプの合成シリカが最適である。フィラーの形状としては、球形、針状、不定形のいずれであってもよい。
また、保護膜形成フィルム3に添加するフィラーとしては、上記無機フィラーの他にも、機能性のフィラーが配合されていてもよい。機能性のフィラーとしては、例えば、帯電防止性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、セラミック、またはニッケル、アルミニウム等を銀で被覆した導電性フィラーや、熱伝導性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、シリコン、ゲルマニウム等の金属材料やそれらの合金等の熱伝導性フィラーなどが挙げられる。
着色剤としては、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料など公知のものを使用することができる。
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色等が挙げられる。これらの顔料又は染料は、目的とする光線透過率に調整するため適宜混合して使用することができる。
レーザー光照射による印字性の観点からは、上記の中でも、顔料、特に無機系顔料を使用することが好ましい。無機系顔料の中でも、特にカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックは、通常は黒色であるが、レーザー光照射によって削り取られた部分は白色を呈し、コントラスト差が大きくなるため、レーザー印字された部分の視認性に非常に優れる。
保護膜形成フィルム3中におけるフィラーおよび着色剤の配合量は、所望の作用が奏されるよう適宜調整すればよい。具体的に、フィラーの配合量は、通常は40〜80質量%であることが好ましく、特に50〜70質量%であることが好ましい。また、着色剤の配合量は、通常は0.001〜5質量%であることが好ましく、特に0.01〜3質量%であることが好ましく、さらには0.1〜2.5質量%であることが好ましい。
保護膜形成フィルム3は、カップリング剤を含有してもよい。カップリング剤を含有することにより、保護膜形成フィルム3の硬化後において、保護膜の耐熱性を損なわずに、保護膜とワークとの接着性・密着性を向上させることができるとともに、耐水性(耐湿熱性)向上させることができる。カップリング剤としては、その汎用性とコストメリットなどからシランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上混合して使用することができる。
保護膜形成フィルム3は、硬化前の凝集力を調節するために、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、有機金属キレート化合物等の架橋剤を含有してもよい。また、保護膜形成フィルム3は、静電気を抑制し、チップの信頼性を向上させるために、帯電防止剤を含有してもよい。さらに、保護膜形成フィルム3は、保護膜の難燃性能を高め、パッケージとしての信頼性を向上させるために、リン酸化合物、ブロム化合物、リン系化合物等の難燃剤を含有してもよい。
保護膜形成フィルム3の厚さは、保護膜としての機能を効果的に発揮させるために、3〜300μmであることが好ましく、特に5〜250μmであることが好ましく、さらには7〜200μmであることが好ましい。
ここで、粘着シート2における粘着剤層22と接触させた状態で保護膜形成フィルム3を硬化させて保護膜を形成した場合、当該保護膜における粘着シート2側の表面のグロス値は、25以上であることが好ましく、特に30以上であることが好ましい。なお、本明細書におけるグロス値は、JIS Z8741に準じ、測定角60°にて光沢計を使用して測定した値とする。チップに形成された保護膜表面のグロス値が上記の範囲にあることで、美観が優れるとともに、レーザー印字によって形成される印字の視認性に優れる。
3.治具用粘着剤層
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1は、保護膜形成フィルム3の粘着シート2側とは反対側の周縁部に治具用粘着剤層4を有する。このように治具用粘着剤層4を有することにより、保護膜形成フィルム3の粘着力とは関係なく、保護膜形成用複合シート1をリングフレーム等の治具に貼付して確実に固定することができる。
本実施形態における治具用粘着剤層4は、環状に形成されており、単層からなってもよいし、2層以上の多層からなってもよく、多層の場合、芯材が間に入った構成であることが好ましい。
治具用粘着剤層4を構成する粘着剤は、リングフレーム等の治具に対する粘着力の観点から、非エネルギー線硬化性の粘着剤から構成されることが好ましい。非エネルギー線硬化性の粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができ、中でも粘着力および再剥離性の制御が容易なアクリル系粘着剤が好ましい。
芯材としては、通常樹脂フィルムが用いられ、中でもポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルムが好ましく、特にポリ塩化ビニルフィルムが好ましい。ポリ塩化ビニルフィルムは、加熱して軟化したとしても、冷却した際に復元し易い性質を有する。芯材の厚さは、2〜200μmであることが好ましく、特に5〜100μmであることが好ましい。
治具用粘着剤層4の厚さは、リングフレーム等の治具に対する接着性の観点から、5〜200μmであることが好ましく、特に10〜100μmであることが好ましい。
4.剥離シート
保護膜形成用複合シート1は、その保護膜形成フィルム3および治具用粘着剤層4側(図1中、上側)に、剥離シートを有していてもよい。かかる剥離シートによれば、保護膜形成用複合シート1が使用されるまでの間、保護膜形成フィルム3および治具用粘着剤層4を保護することができる。
剥離シートの構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等を用いることができるが、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜250μm程度である。
5.保護膜形成用複合シートの製造方法
保護膜形成用複合シート1は、好ましくは、保護膜形成フィルム3を含む第1の積層体と、粘着シート2を含む第2の積層体と、治具用粘着剤層4を含む第3の積層体とをそれぞれ作製した後、第1の積層体および第2の積層体を使用して、保護膜形成フィルム3と粘着シート2とを積層し、さらに第3の積層体を使用して治具用粘着剤層4を積層することにより製造することができるが、これに限定されるものではない。
第1の積層体を製造するには、第1の剥離シートの剥離面(剥離性を有する面;通常は剥離処理が施された面であるが、これに限定されない)に、保護膜形成フィルム3を形成する。具体的には、保護膜形成フィルム3を構成する硬化性接着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する保護膜形成フィルム用の塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって第1の剥離シートの剥離面に塗布して乾燥させて、保護膜形成フィルム3を形成する。次に、保護膜形成フィルム3の露出面に第2の剥離シートの剥離面を重ねて圧着し、2枚の剥離シートに保護膜形成フィルム3が挟持されてなる積層体(第1の積層体)を得る。
第2の積層体を製造するには、剥離シートの剥離面に、粘着剤層22を構成する粘着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する粘着剤層用の塗布剤を塗布し乾燥させて粘着剤層22を形成する。その後、粘着剤層22の露出面に基材21を圧着し、基材21および粘着剤層22からなる粘着シート2と、剥離シートとからなる積層体(第2の積層体)を得る。
ここで、粘着剤層22がエネルギー線硬化性粘着剤からなる場合には、粘着剤層22に対してエネルギー線を照射して、エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させてもよい。また、粘着剤層22が多層からなり、保護膜形成フィルム3と接触する層がエネルギー線硬化性粘着剤からなる場合には、当該接触層に対してエネルギー線を照射して、エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させてもよい。
エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で50〜1000mJ/cm2が好ましく、特に100〜500mJ/cm2が好ましい。また、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
治具用粘着剤層4が単層の場合に第3の積層体を製造するには、第1の剥離シートの剥離面に、治具用粘着剤層4を形成する。具体的には、治具用粘着剤層4を構成する粘着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する治具用粘着剤層の塗布剤を調製し、第1の剥離シートの剥離面に塗布して乾燥させて、治具用粘着剤層4を形成する。次に、治具用粘着剤層4の露出面に第2の剥離シートの剥離面を重ねて圧着し、2枚の剥離シートに治具用粘着剤層4が挟持されてなる積層体(第3の積層体)を得る。
治具用粘着剤層4が芯材を有する場合に第3の積層体を製造するには、例えば、第1の剥離シートの剥離面に、第1の治具用粘着剤層を形成し、その第1の治具用粘着剤層上に芯材を積層する。また、第2の剥離シートの剥離面に、第2の治具用粘着剤層を形成する。そして、第2の治具用粘着剤層と、第1の治具用粘着剤層上の芯材とを重ね合わせて、両積層体を圧着する。これにより、芯材を有する治具用粘着剤層4が2枚の剥離シートに挟持されてなる積層体(第3の積層体)が得られる。
以上のようにして第1の積層体、第2の積層体および第3の積層体が得られたら、第1の積層体における第2の剥離シートを剥離するとともに、第2の積層体における剥離シートを剥離し、第1の積層体にて露出した保護膜形成フィルム3と、第2の積層体にて露出した粘着シート2の粘着剤層22とを重ね合わせて圧着する(第4の積層体)。
一方、第3の積層体については、第1の剥離シートを残して、第2の剥離シートおよび治具用粘着剤層4の内周縁をハーフカットする。第2の剥離シートおよびハーフカットにより生じた余分な部分(円形部分)の治具用粘着剤層4は、適宜除去すればよい。そして、第4の積層体から第1の剥離シートを剥離し、露出した保護膜形成フィルム3と、第3の積層体において露出している治具用粘着剤層4とを重ね合わせて圧着する。その後、第3の積層体における第1の剥離シートを残して、保護膜形成用複合シート1の外周縁をハーフカットする。
このようにして、基材21の上に粘着剤層22が積層されてなる粘着シート2と、粘着シート2の粘着剤層22側に積層された保護膜形成フィルム3と、保護膜形成フィルム3における粘着シート2とは反対側の周縁部に積層された治具用粘着剤層4とからなる保護膜形成用複合シート1に、剥離シートが積層されたものが得られる。この場合、剥離シートは、治具用粘着剤層4における保護膜形成フィルム3とは反対側に積層されている。
上記のような構成を有する保護膜形成用複合シート1は、保護膜形成フィルム3と粘着シート2との大きさおよび形状を同じにすることができるため、それらの大きさ又は形状が異なるものと比較して、ハーフカットの工程が少なくて済み、簡単に製造することができる。
また、上記のような構成を有する保護膜形成用複合シート1では、凸になっている治具用粘着剤層4の外周縁を、保護膜形成用複合シート1全体の外周縁と同じ位置とすることができるため、本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1を複数担持した長尺の剥離シート(工程フィルム)を巻き取った際に、いわゆる巻き痕が形成されることが発生し難いという利点がある。
6.保護膜形成用複合シートの使用方法
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1を用いて、一例としてワークとしての半導体ウエハから保護膜付きチップを製造する方法を以下に説明する。最初に、図3に示すように、保護膜形成フィルム3を半導体ウエハ5に貼付するとともに、治具用粘着剤層4をリングフレーム6に貼付する。保護膜形成フィルム3を半導体ウエハ5に貼付するにあたり、所望により保護膜形成フィルム3を加熱して、粘着性を発揮させてもよい。
次いで、保護膜形成フィルム3を硬化させて、保護膜を形成する。保護膜形成フィルム3が熱硬化性接着剤の場合には、保護膜形成フィルム3を所定温度で適切な時間加熱し、その後冷却する。このとき、本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1は、弛みが効果的に抑制されるため、その後の工程に支障をきたすことはない。
硬化前の保護膜形成フィルム3または硬化後の保護膜形成フィルム3(保護膜)には、所望によりレーザー印字を行ってもよい。その後、常法に従って半導体ウエハ5をダイシングし、保護膜を有するチップ(保護膜付きチップ)を得る。そして、所望により粘着シート2を平面方向にエキスパンドし、粘着シート2から保護膜付きチップをピックアップする。本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1は、粘着剤層22を有するため、上記のダイシング時にチップ飛びが発生することが抑制される。また、本実施形態に係る保護膜形成用複合シート1の粘着シート2は適度な柔軟性を有するため、エキスパンドやピックアップを良好に行うことができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、治具用粘着剤層4は、基材と粘着剤層とからなる2層構成であってもよい。この場合、粘着性を発揮させた保護膜形成フィルム3に上記基材を接着するように、かつリングフレーム等の治具に上記粘着剤層を貼付するように構成することが好ましい。また、保護膜形成用複合シート1から治具用粘着剤層4は省略されてもよい。この場合、保護膜形成フィルム3は、粘着シート2の粘着剤層22が露出するように、粘着シート2よりも小径に形成され、その露出した粘着剤層22がリングフレーム等の治具に貼付されることが好ましい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
実施例1では、以下のようにして、図1に示すような保護膜形成用複合シート1を製造した。
(1)保護膜形成フィルムを含む第1の積層体の作製
次の(a)〜(g)の成分を混合し、固形分濃度が50質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、保護膜形成フィルム用塗布剤を調製した。
(a)バインダーポリマー:(メタ)アクリル酸エステル共重合体(n−ブチルアクリレート10質量部、メチルアクリレート70質量部、グリシジルメタクリレート5質量部、および2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合して得た共重合体,重量平均分子量:80万,ガラス転移温度:−1℃)150質量部(固形分換算,以下同じ)
(b−1)熱硬化性成分:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製,製品名「jER828」,エポキシ当量184〜194g/eq)60質量部
(b−2)熱硬化性成分:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製,製品名「jER1055」,エポキシ当量800〜900g/eq)10質量部
(b−3)熱硬化性成分:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製,製品名「エピクロンHP−7200HH」,エポキシ当量255〜260g/eq)30質量部
(c)熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤:ジシアンジアミド(株式会社ADEKA製:アデカハ−ドナーEH3636AS,活性水素量21g/eq)2質量部
(d)硬化促進剤:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製,製品名「キュアゾール2PHZ」)2質量部
(e)フィラー:シリカフィラー(株式会社アドマテックス製,製品名「SC2050MA」平均粒径:0.5μm)320質量部
(f)着色剤:カーボンブラック(三菱化学株式会社製,製品名「#MA650」,平均粒径:28nm)1.2質量部
(g)シランカップリング剤:(信越化学工業株式会社製,製品名「KBM−403」)2質量部
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第1の剥離シート(リンテック株式会社製,製品名「SP−PET381031」)と、厚さ38μmのPETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第2の剥離シート(リンテック株式会社製,製品名「SP−PET381130」)とを用意した。
最初に、第1の剥離シートの剥離面上に、前述の保護膜形成フィルム用塗布剤を、最終的に得られる保護膜形成フィルムの厚さが25μmとなるように、ナイフコーターにて塗布し、乾燥させて、保護膜形成フィルムを形成した。その後、保護膜形成フィルムに第2の剥離シートの剥離面を重ねて両者を貼り合わせ、第1の剥離シートと、保護膜形成フィルム(厚さ:25μm)と、第2の剥離シートとからなる積層体を得た。この積層体は長尺であり、巻き取って巻収体とした。
(2)粘着シートを含む第2の積層体の作製
次の(h)および(i)の成分を混合し、固形分濃度が25質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、粘着剤層用塗布剤を調製した。
(h)粘着主剤:(メタ)アクリル酸エステル共重合体(2−エチルヘキシルアクリレート60質量部、メタクリル酸メチル30質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル10質量部を共重合して得た共重合体,重量平均分子量:60万)100質量部
(i)架橋剤:トリメチロールプロパンのキシレンジイソシアネート付加物(三井武田ケミカル株式会社製,製品名「タケネートD110N」)20質量部
剥離シートとして、厚さ38μmのPETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック株式会社製,製品名「SP−PET381031」)を用意した。
また、基材として、荷重あり伸縮率がMD方向98.6%/CD方向99.1%、荷重なし伸縮率がMD方向99.0%/CD方向98.8%、引張弾性率がMD方向320MPa/CD方向290MPa、融点156℃のポリプロピレンフィルム(厚さ:80μm)を用意した。なお、荷重あり伸縮率、荷重なし伸縮率、引張弾性率および融点の測定方法は、後述の試験例に示すとおりである(以下同じ)。
最初に、剥離シートの剥離面上に、前述の粘着剤層用塗布剤を、最終的に得られる粘着剤層の厚さが5μmとなるように、ナイフコーターにて塗布し、乾燥させて、粘着剤層を形成した。その後、粘着剤層に上記基材を貼合し、基材および粘着剤層からなる粘着シートと、剥離シートとからなる第2の積層体を得た。この積層体は長尺であった。その後、積層体を巻き取って巻収体とした。
(3)治具用粘着剤層4を含む第3の積層体の作製
次の(j)および(k)の成分を混合し、固形分濃度が15質量%となるようにトルエンで希釈して、粘着剤層用塗布剤を調製した。
(j)粘着主剤:(メタ)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート69.5質量部、メチルアクリレート30質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5質量部を共重合して得られた共重合体,重量平均分子量:50万)100質量部
(k)架橋剤:トリレンジイソシアネート系架橋剤(トーヨーケム株式会社製,製品名「BHS8515」)5質量部
厚さ38μmのPETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第1および第2の剥離シート(リンテック株式会社製,製品名「SP−PET381031」)と、芯材としてポリ塩化ビニルフィルム(オカモト株式会社製,厚さ:50μm)とを用意した。
最初に、第1の剥離シートの剥離面上に、前述の粘着剤層用塗布剤を、最終的に得られる粘着剤層の厚さが5μmとなるように、ナイフコーターにて塗布し、乾燥させて、第1の粘着剤層を形成した。その後、第1の粘着剤層に上記芯材を貼合し、芯材と、第1の粘着剤層と、第1の剥離シートとからなる積層体Aを得た。この積層体Aは長尺であり、巻き取って巻収体とした。
次に、第2の剥離シートの剥離面上に、前述の粘着剤層用塗布剤を、最終的に得られる粘着剤層の厚さが5μmとなるように、ナイフコーターにて塗布し、乾燥させて、第2の粘着剤層を形成した。その後、第2の粘着剤層に上記積層体Aにおける芯材の露出した面を貼合し、第1の剥離シート/第1の粘着剤層/芯材/第2の粘着剤層/第2の剥離シートからなる第3の積層体を得た。この積層体は長尺であり、巻き取って巻収体とした。
(4)第4の積層体の作製
上記(1)で得られた第1の積層体から第2の剥離シートを剥離し、保護膜形成フィルムを露出させた。一方、上記(2)で得られた第2の積層体から剥離シートを剥離して、粘着剤層を露出させた。その粘着剤層に、上記保護膜形成フィルムが接触するように、第1の積層体と第2の積層体とを貼り合わせ、基材および粘着剤層からなる粘着シートと、保護膜形成フィルムと、第1の剥離シートとが積層されてなる第4の積層体を得た。
(5)保護膜形成用複合シートの作製
上記(3)で得られた第3の積層体から第2の剥離シートを剥離し、第1の剥離シートを残して、治具用粘着剤層の内周縁をハーフカットし、内側の円形部分を除去した。このとき、治具用粘着剤層の内周縁の直径は170mmとした。
上記(4)で得られた第4の積層体から第1の剥離シートを剥離し、露出した保護膜形成フィルムと、第3の積層体において露出している治具用粘着剤層とを重ね合わせて圧着した。その後、第3の積層体における第1の剥離シートを残して、保護膜形成用複合シートの外周縁をハーフカットし、外側の部分を除去した。このとき、保護膜形成用複合シートの外周縁の直径は205mmとした。
このようにして、基材の上に粘着剤層(厚さ:5μm)が積層されてなる粘着シートと、粘着シートの粘着剤層側に積層された保護膜形成フィルムと、保護膜形成フィルムにおける粘着シートとは反対側の周縁部に積層された環状の治具用粘着剤層と、治具用粘着剤層における保護膜形成フィルムとは反対側に積層された剥離シートとからなる保護膜形成用複合シートを得た。
〔実施例2〕
基材として、荷重あり伸縮率がMD方向96.3%/CD方向99.6%、荷重なし伸縮率がMD方向98.8%/CD方向99.0%、引張弾性率がMD方向190MPa/CD方向170MPa、融点154℃のポリプロピレンフィルム(厚さ:80μm)を使用する以外、実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを製造した。
〔実施例3〕
基材として、荷重あり伸縮率がMD方向99.7%/CD方向102.8%、荷重なし伸縮率がMD方向99.3%/CD方向99.4%、引張弾性率がMD方向490MPa/CD方向450MPa、融点131℃のポリプロピレンフィルム(厚さ:80μm)を使用する以外、実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを製造した。
〔実施例4〕
基材として、荷重あり伸縮率がMD方向101.4%/CD方向100.4%、荷重なし伸縮率がMD方向99.6%/CD方向99.6%、引張弾性率がMD方向630MPa/CD方向620MPa、融点163℃のポリプロピレンフィルム(厚さ:80μm)を使用する以外、実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを製造した。
〔比較例1〕
基材として、荷重あり伸縮率がMD方向155.0%/CD方向195.0%、荷重なし伸縮率がMD方向97.0%/CD方向97.8%、引張弾性率がMD方向220MPa/CD方向210MPa、融点118℃のポリプロピレンフィルム(厚さ:80μm)を使用する以外、実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを製造した。
〔比較例2〕
基材として、荷重あり伸縮率がMD方向93.9%/CD方向129.8%、荷重なし伸縮率がMD方向94.0%/CD方向97.3%、引張弾性率がMD方向130MPa/CD方向120MPa、融点124℃のポリプロピレンフィルム(厚さ:80μm)を使用する以外、実施例1と同様にして保護膜形成用複合シートを製造した。
〔試験例1〕<荷重あり伸縮率の測定>
実施例および比較例で用いた基材を、短辺がCD方向、長辺がMD方向となるよう短辺22mm、長辺110mmのサイズに裁断して、これをMD方向の試験片とした。長さ110mmのうち、長さ方向中央部の100mmを測定間距離として試験片にマーキングし、当該試験片の長さ方向の両端部(端部の5mm部分)のそれぞれに、質量2.2gのクリップを取り付けた。
一方のクリップを使用して、上記試験片をオーブン内に吊り下げた。このときの試験片に対する荷重は、下側のクリップの質量分、すなわち0.1g/mmであった。上記オーブン内で、130℃、30%RHにて2時間加熱を行った後、オーブンから試験片を取り出し、23℃まで冷却した。その後、試験片のマーキングした測定間距離を再度測定し、下記の式に基づいて基材の荷重あり伸縮率(%)を算出した。結果を表1に示す。
荷重あり伸縮率(%)=(加熱後の測定間距離/加熱前の測定間距離)×100
また、実施例および比較例で用いた基材を、短辺がMD方向、長辺がCD方向となるよう短辺22mm、長辺110mmのサイズに裁断して、これをCD方向の試験片とした。このCD方向の試験片についても、上記と同様にして、荷重あり伸縮率(%)を算出した。結果を表1に示す。
〔試験例2〕<荷重なし伸縮率の測定>
上記荷重あり伸縮率の測定(試験例1)において、試験片に下側のクリップを取り付けない以外、試験例1と同様にして伸縮率(%)を算出し、これを荷重なし伸縮率とした。結果を表1に示す。
〔試験例3〕<引張弾性率測定>
実施例および比較例で用いた基材を15mm×140mmの試験片に裁断し、JIS K7127:1999に準拠して、23℃における引張弾性率(ヤング率)を測定した。具体的には、上記試験片を、引張試験機(株式会社島津製作所製,製品名「オートグラフAG−IS 500N」)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行い、引張弾性率(MPa)を測定した。なお、引張弾性率の測定は、基材のMD方向およびCD方向の双方について行った。結果を表1に示す。
〔試験例4〕<融点の測定>
実施例および比較例で用いた基材の融点を、熱重量測定装置(パーキンエルマー社製,製品名「Pyris1」)を用いて測定した。具体的には、基材を50℃から250℃まで毎分10℃で加熱し、DSC(示差走査熱量分析)測定を行い、吸熱ピークが観測される温度を融点とした。結果を表1に示す。
〔試験例5〕<弛み評価>
実施例および比較例で製造した保護膜形成用複合シートから剥離シートを剥離し、得られた保護膜形成用複合シートを、図3に示すように、シリコーンウエハ(#2000研削,外周縁の直径:6インチ,厚さ:350μm,質量:14g)およびリングフレーム(ステンレス製,内径195mm)に貼付した。その状態で、130℃の環境下で2時間加熱して保護膜形成フィルムを硬化させた後、室温まで冷却した。
そして、リングフレームの下側に位置している保護膜形成用複合シートの下端面の高さと、半導体ウエハの下側に位置している保護膜形成用複合シートの下端面の高さとの差(沈み込み量;mm)を測定し、これを弛みとして評価した。評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
A:0.5mm未満
B:0.5mm以上、2.0mm未満
C:2.0mm以上
上記の結果、比較例1および2の保護膜形成用複合シートについては、評価がBまたはCであり、弛みが大きかったため、ピックアップ力の評価は行わなかった。
〔試験例6〕<ダイシング装置適性評価>
上記試験例5で作製したシリコーンウエハおよびリングフレーム付き保護膜形成用複合シート(硬化工程後)を、ダイシング装置(株式会社ディスコ製,製品名「DFD651」)の吸着テーブルに吸着させた。このとき、保護膜形成用複合シートの弛みが原因の吸着不良が発生するか否かを判断し、以下の基準によりダイシング装置適性を評価した。結果を表1に示す。
A:問題なく吸着され、ダイシングするのに十分に固定された
B:吸着不良が発生し、ダイシングすることができなかった
〔試験例7〕<ピックアップ力評価>
上記試験例5で評価がAであった、シリコーンウエハおよびリングフレーム付き保護膜形成用複合シートのシリコーンウエハを、5mm×5mmのチップサイズにダイシングし、保護膜付きチップを得た。次いで、保護膜形成用複合シートの基材側から、ニードルによる突き上げを行い、保護膜付きチップをピックアップした。このとき、ピックアップに要した力(N)をプッシュプルゲージ(アイコーエンジニアリング株式会社製,製品名「RX−1」)により測定した。チップ20個についての測定値の平均値をピックアップ力(N)とし、以下の基準によりピックアップ力を評価した。結果を表1に示す。
A:4.0N以下
B:4.0N超、5.0N以下
C:5.0N超
表1から分かるように、実施例で製造した保護膜形成用複合シートは、加熱・冷却工程を経た後に弛みが殆どなく、また、ダイシングおよびピックアップを良好に行うことができた。