JP6391012B2 - 砒素汚染土壌の洗浄方法 - Google Patents
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(a)自然由来の砒素を含む地盤においてシールド工事を行った場合、工事で発生した土壌の砒素濃度(溶出量)が環境基準及び溶出量基準(土壌汚染対策法)を超過すると建設発生土や産業廃棄物としては処分できず、汚染土壌として処分しなければならない。その結果、処分コストが著しく上昇する。
(b)処分場の許容量が逼迫しているため、大量に発生した汚染土壌を処分することがそもそも困難である。
今後、さらに、リニア新幹線や外環道の建設工事といった大規模なシールド工事が実施されるが、それらの工事においても自然由来の重金属による汚染土壌が大量に発生することが確実視されている。
一方で、自然由来の重金属による汚染の場合は、人為的な汚染とは異なり、汚染物質が細粒子分に偏在しておらず、土粒子径による溶出量の違いはないものと考えられていた。従って、自然由来の重金属による汚染土壌の対策としては、掘削除去、不溶化、遮水壁による封じ込め等が主要なものであった。
なお、本発明において説明するデカンタとは、従来から、固液分離や脱水を行うために用いられている、強力な遠心分離装置である。これは、装置本体の高速回転によって発生する遠心力により、装置内に投入された処理対象物を粒子(固形分)と液体とに分離する装置である。本発明者等が、本装置に、スラリー状とされた汚染土壌、又は、汚染土壌の一部を投入し、投入量(滞留時間)や回転数(遠心力)等を変化させて運転したところ、固液分離のみならず、適切な投入量や回転数を設定することで、任意の分級点での分級が可能であることが明らかとなった。さらに、分級点を、一般に用いられているハイドロサイクロンの分級点である60〜125μmよりも小さく設定できることも確認された。
さらに、デカンタ分級工程において、スラリー状の汚染土壌、又は、汚染土壌の一部を、デカンタを用いて分級することで、スラリー状の汚染土壌、又は、汚染土壌を、上澄液を含むスラリー状とされた溶出量基準値等を超過する微細粒子分と、溶出量基準値等に適合する固形分とに分離することにより、砒素を確実に微細粒子側に分離しながら、固形分を浄化土とすることで、再利用可能な浄化土の割合を高めることができるとともに、溶出量基準値等を超過する微細粒子分からなる濃縮汚染土を効果的に減量することが可能となる。
従来、自然由来の重金属によって汚染された土壌は、人為的に汚染された土壌とは異なり、汚染物質が細粒子分に偏在しておらず、土粒子径による溶出量(土壌汚染対策法)の違いはないものと考えられていた。しかしながら、本発明者等が以前に細粒子分を主体とした複数サイトの自然由来砒素汚染土壌を用いて実験を行った結果、図2中に示すように、自然由来の砒素による汚染土壌においては、土壌を構成する土粒子の粒径が小さいもの程、砒素の溶出量(土壌汚染対策法)がより高くなることを明らかにしている。即ち、粗粒子分よりも細粒子分、特に微細粒子分を分別・処理することで、効率的な浄化処理が可能であることがわかる。
図3に示すように、スラリー状の汚染土壌に、まず、アルカリ抽出工程において、土粒子表面に吸着している砒素を強制的に脱着し、砒素を溶存態としてスラリー中に抽出することで、土壌の溶出量が全体的に低減し、所定の分級点をより小さな値とすることが可能となる。従って、アルカリ抽出工程により、上記の所定の分級点をより小さな値とすることで、濃縮汚染土を減量する効果をさらに高めることが可能となることがわかる。
本発明に係る砒素汚染土壌の洗浄方法は、上記のような砒素汚染土壌の特性、及び、それに基づく知見によってなされたものである。
即ち、本実施形態で説明する砒素汚染土壌の洗浄方法は、自然由来の砒素による汚染土壌を洗浄して浄化土とする砒素汚染土壌の洗浄方法であり、少なくとも、スラリー状とされた汚染土壌、又は、汚染土壌の一部にアルカリ系処理剤を添加し、汚染土壌の土粒子に吸着されている砒素をアルカリ抽出して溶存態としてスラリー内の液分中に抽出するアルカリ抽出工程と、このアルカリ抽出工程を経たスラリー状の汚染土壌または汚染土壌の一部を、所定の分級点でデカンタ分級することにより、分級点以下で且つ上澄液を含むスラリー状とされた微細粒子分と、分級点超の固形分とに固液分離するデカンタ分級工程とを備え、概略構成される。
(A)泥水式シールド工法によって生じたスラリー状の汚染土壌にアルカリ系処理剤を添加し、汚染土壌の土粒子に吸着されている砒素をアルカリ抽出して溶存態としてスラリー内の液分中に抽出するアルカリ抽出工程。
(B)アルカリ抽出工程に次いで設けられ、汚染土壌を、粗粒子分と、該粗粒子分以外の、溶存態としての砒素を含むスラリー分とに分級する湿式分級工程。
(C)湿式分級工程で得られたスラリー分をサイクロンで分級することにより、スラリー分を、平均粒径が75μm未満であって溶存態としての砒素を含むスラリー状の細粒子分と、平均粒径が75μm以上の粗粒子分とに分級し、スラリー状の細粒子分の一部を、泥水式シールド工法におけるシールド掘削用泥水として返送するサイクロン分級工程。
(D)サイクロン分級工程において分級された粗粒子分を脱水し、該脱水後の粗粒子分を、前記湿式分級工程で分級された粗粒子分と混合させる脱水工程。
(E)脱水工程で混合して得られた粗粒子分に中和剤を添加してpH値を中性領域とすることで浄化土を得るpH調整工程。
(F)サイクロン分級工程で得られた溶存態としての砒素を含むスラリー状の細粒子分のうち、シールド掘削用泥水として返送されない余剰分を、所定の分級点に設定してデカンタ分級することにより、スラリー状の細粒子分を、上記分級点以下で且つ上澄液を含むスラリー状とされた微細粒子分と、上記分級点超の固形分とに固液分離し、この固形分をpH調整工程に搬送するデカンタ分級工程。
(G)デカンタ分級工程において分級された、上澄液を含むスラリー状とされた微細粒子分に凝集薬剤を添加することで、砒素と共に微細粒子分を凝集沈殿処理した後、その凝集スラッジをフィルタープレスすることで脱水ケーキ状に形成することにより、溶存態としての砒素を含む濃縮汚染土を得る凝集工程。
以下、上記の(A)〜(G)の各工程について順次詳述する。
本発明の洗浄方法に備えられるアルカリ抽出工程は、本実施形態で説明する洗浄方法において砒素汚染土壌を処理する最初の工程である。即ち、アルカリ抽出工程では、まず、泥水式シールド工法によって生じたスラリー状の汚染土壌にアルカリ系処理剤を添加し、汚染土壌の土粒子に吸着されている砒素をアルカリ抽出して溶存態としてスラリー内の液分中に抽出する。
次に、湿式分級工程は、図1のフロー図に示すように、上記のアルカリ抽出工程に次いで設けられる工程であり、スラリー中に砒素が溶存態として抽出された汚染土壌を、粒径の大きな粗粒子分と、この粗粒子分以外の、溶存態としての砒素を含むスラリー分とに分級する。
そして、本実施形態では、これら粗粒子分を、後述の脱水工程で分離された粗粒子分等と混合したうえで、pH調整工程においてpHを中性領域に調整して浄化土として分離し、埋め立て土等に再利用することが可能な建設発生土として処理することができる。
次に、サイクロン分級工程では、上記の湿式分級工程で得られたスラリー分をサイクロンで分級することにより、このスラリー分を、平均粒径が75μm未満であって溶存態としての砒素を含むスラリー状の細粒子分と、平均粒径が75μm以上の粗粒子分とに分級する。そして、本実施形態に係る技術を泥水式シールド工法に採用した場合には、図1のフロー図中に示すように、分級されたスラリー状の細粒子分の少なくとも一部を、シールド掘削用泥水として返送する。
次に、脱水工程では、上記のサイクロン分級工程で分離された粗粒子分を脱水し、この脱水後の粗粒子分を、湿式分級工程で分級された粗粒子分と混合させる。
本実施形態の脱水工程では、従来から汚染土壌の処理に用いられる脱水篩等を何ら制限無く用いることができる。
次に、本発明の洗浄方法に備えられるpH調整工程では、上記の脱水工程で混合して得られた粗粒子分に中和剤を添加してpH値を中性領域とすることで浄化土を得る。
次に、本発明の洗浄方法に備えられるデカンタ分級工程では、図1のフロー図に示すように、サイクロン分級工程で得られた溶存態としての砒素を含むスラリー状の細粒子分のうち、シールド掘削用泥水として返送されない余剰分を、所定の分級点に設定してデカンタ分級することにより、スラリー状の細粒子分を、分級点以下で且つ上澄液を含むスラリー状とされた微細粒子分と、分級点超の固形分とに固液分離し、固形分をpH調整工程に搬送する。
また、本実施形態で用いるデカンタ設備としては、従来から各種の固液分離処理に用いられているデカンタを、何ら制限無く用いることができる。
拡散部51は、内部に導入される汚染土壌Fを、スクリュー3の回転に伴って撹拌しながらシェル2側に向けて排出するように構成されおり、側面に、汚染土壌Fを排出するための複数の孔部51Aが形成されている。
小径部52の内部には、上述した出口42を含む導入管4の大部分が収容されている。また、拡散管5の小径部52と導入管4との間は、互いに回転自在とされている。
図5(a)、(b)に示すように、供給量Sでシェル2内に導入された汚染土壌Fは、シェル2の回動(図5(b)中の矢印R方向)に伴う遠心力Gで内壁2Aに押しつけられるように圧接される。この際、図5(c)の拡大図にも詳細に示すように、粒径の大きな細粒子分からなる固形回収分UFが、遠心力Gが作用する向きで内壁2A側に沈降する一方、その表面には微細粒子分を含むスラリー状の分離泥水OFが滞留する。即ち、汚染土壌Fが、固形回収分UFと分離泥水OFとに固液分離された状態となる。本実施形態では、上記のシェル2の遠心力G、汚染土壌Fの供給量S及び汚染土壌Fの液深Dの各条件を総合的に調整することで、図5(c)中に示すような、シェル2の内壁2A上に沈降する細粒子分からなる固形回収分UFと、その表面に滞留する微細粒子分を含む分離泥水OFとの間の分級点を、所望の分級径で制御・設定することが可能となる。
まず、図4に示すような構造を有する小型のデカンタ1を準備するとともに、被洗浄物として、土丹を含む土壌を2種類(Clay−A、及び、Clay−B)準備した。
そして、以下の条件の範囲内で分級条件を変化させ、上記の土壌の分級を行い、50%分級点における分級径D50を調べた。
(1)遠心力G:500〜1500(G)
(2)供給量S:0.6〜3.0(m3/h)
(3)液深D:一定(但し、固形回収分UFの粘性を考慮し、固形回収分UFの固形分率が70%程度となるように調整)
まず、遠心力Gが大きくなるほど、50%分級点における分級径D50が小さくなることがわかった。これは、遠心力Gが大きくなると、微細粒子までもが、デカンタ1に備えられるシェル2の内壁2A側に固形回収分として分離されるためと考えられる。
また、被洗浄物である土壌(汚染土壌F)の供給量が大きくなるほど、50%分級点における分級径D50が大きくなることがわかった。これは、汚染土壌Fの供給量Sが大きくなると、シェル2内における汚染物質F(固液分離後の固形回収分UF及び分離泥水OFを含む)の滞留時間が短くなることから、細粒子分が沈降しきれず、分離泥水OF側に移行する土壌粒子が多くなるためと考えられる。
次に、凝集工程においては、デカンタ分級工程において分級された、上澄液を含むスラリー状とされた微細粒子分に凝集薬剤を添加することで、砒素と共に微細粒子分を凝集沈殿処理した後、その凝集スラッジを脱水処理した後にフィルタープレスすることで脱水ケーキ状に形成することにより、砒素を含む濃縮汚染土を得る。
これにより、砒素を含む濃縮汚染土を得る。この濃縮汚染土は、埋め戻し土等への再利用はできないため汚染土壌として処理するが、本発明の洗浄方法では、濃縮汚染土を顕著に減量できることから、環境への負荷を軽減できるとともに処理費用を低減することが可能となる。
本発明の砒素汚染土壌の洗浄方法においては、上述したようなアルカリ抽出工程を前段工程として備え、さらに、濃縮汚染土の処理工程としてデカンタ分級工程を備えている。このように、まず、アルカリ抽出工程において、汚染土壌の土粒子に吸着されている砒素等の重金属を強制脱着させてスラリー中に溶出させたうえで、湿式分級工程及びサイクロン分級工程において、砒素溶出量の低い粗粒子分を浄化土側に分離することで、循環使用可能な浄化土の比率を高めることが可能となり、減容化率が顕著に向上する。
図2に示すように、砒素の溶出量は、土粒子の平均粒径が小さいほど高いことから、本発明のように、微細粒子分を選択的に処理することで、従来の方法に比べてより効率的な処理が可能である。
以上説明したように、本実施形態の汚染土壌の洗浄方法によれば、デカンタ分級工程において、スラリー状の細粒子分の余剰分を、デカンタを用いて分級することで、スラリー状の細粒子分を、上澄液を含むスラリー状とされた溶出量基準値等を超過する微細粒子分と、溶出量基準値等に適合する固形分とに分離する方法を採用している。これにより、汚染土壌に含まれる砒素等の汚染物質を微細粒子側に分離しながら、固形分を浄化土とすることで、再利用可能な建設発生土の割合を高めることができるとともに、砒素等を含む微細粒子分からなる汚染土壌を減量することが可能となる。
このように、まず、アルカリ抽出工程において砒素を溶存態としてスラリー内の液分中に抽出することで、後工程のサイクロン分級工程におけるスラリー状の細粒子分と粗粒子分とへの分級により、汚染土壌から効果的に砒素を除去できる。また、デカンタ分級工程において、サイクロン分級工程で得られたスラリー状の細粒子分の余剰分を、上澄液を含むスラリー状とされた微細粒子分と固形分とに分離することで、砒素を確実に上澄液を含むスラリー状とされた微細粒子分側に分離することができ、再利用可能な浄化土の割合が高められるとともに、砒素を含む微細粒子分からなる濃縮汚染土を効果的に減量できる。
この場合、アルカリ抽出工程及びデカンタ分級工程を備える場合に比べ、土壌中における砒素の溶出量が高めとなることから、デカンタ分級工程における分級点の設定値を大きめにする必要がある。しかしながら、本発明では、このような場合においても、従来のようなサイクロン分級のみで砒素を微細粒子分側に分離する方法に比べて分級点を小さくすることができ、濃縮汚染土の発生量を減量することが可能となる。
Claims (4)
- 自然由来の砒素による汚染土壌を洗浄して浄化土とする砒素汚染土壌の洗浄方法であって、
少なくとも、スラリー状とされた前記汚染土壌、又は、前記汚染土壌の一部にアルカリ系処理剤を添加し、前記汚染土壌の土粒子に吸着されている砒素をアルカリ抽出して溶存態として前記スラリー内の液分中に抽出するアルカリ抽出工程と、
前記アルカリ抽出工程を経たスラリー状の前記汚染土壌、又は、前記汚染土壌の一部を、所定の分級点でデカンタ分級することにより、前記分級点以下で且つ上澄液を含むスラリー状とされた微細粒子分と、前記分級点超の固形分とに固液分離するデカンタ分級工程と、を備えることを特徴とする砒素汚染土壌の洗浄方法。 - 自然由来の砒素による汚染土壌を洗浄して浄化土とする砒素汚染土壌の洗浄方法であって、
スラリー状とされた前記汚染土壌、又は、前記汚染土壌の一部にアルカリ系処理剤を添加し、前記汚染土壌の土粒子に吸着されている砒素をアルカリ抽出して溶存態として前記スラリー内の液分中に抽出するアルカリ抽出工程と、
次いで、前記汚染土壌を、粗粒子分と、該粗粒子分以外の、溶存態としての砒素を含むスラリー分とに分級する湿式分級工程と、
次いで、前記湿式分級工程で得られた前記スラリー分をサイクロンで分級することにより、前記スラリー分を、平均粒径が75μm未満であって溶存態としての砒素を含むスラリー状の細粒子分と、平均粒径が75μm以上の粗粒子分とに分級するサイクロン分級工程と、
次いで、前記サイクロン分級工程において分級された粗粒子分を脱水し、該脱水後の粗粒子分を、前記湿式分級工程で分級された粗粒子分と混合させる脱水工程と、
次いで、前記脱水工程で混合された前記粗粒子分に中和剤を添加してpH値を中性領域とすることで浄化土を得るpH調整工程と、を備え、
さらに、前記サイクロン分級工程で得られた溶存態としての砒素を含むスラリー状の前記細粒子分、又は、前記細粒子分の一部を、所定の分級点でデカンタ分級することにより、前記分級点以下で且つ上澄液を含むスラリー状とされた微細粒子分と、前記分級点超の固形分とに固液分離し、前記固形分を前記pH調整工程に搬送するデカンタ分級工程と、
前記デカンタ分級工程において分級された、上澄液を含むスラリー状とされた前記微細粒子分に凝集薬剤を添加することで砒素と共に前記微細粒子分を凝集沈殿処理した後、その凝集スラッジをフィルタープレスすることで脱水ケーキ状に形成することにより、砒素を含む濃縮汚染土を得る凝集工程と、を備えることを特徴とする砒素汚染土壌の洗浄方法。 - 前記デカンタ分級工程は、デカンタに備えられるシェルの回動に伴う遠心力G、前記シェル内へのスラリー状とされた前記汚染土壌、又は、前記汚染土壌の一部の供給量S、及び、前記遠心力Gによって前記シェルの内壁に圧接された前記汚染土壌の液深Dを、それぞれ所定の範囲内で調整することにより、分級点を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の砒素汚染土壌の洗浄方法。
- 前記デカンタ分級工程は、前記遠心力Gを500〜1500(G)、前記供給量Sを0.6〜300(m3/h)の範囲で調整し、且つ、前記液深Dを分級処理中において一定に保持することを特徴とする請求項3に記載の砒素汚染土壌の洗浄方法。
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