JP6390197B2 - 絶縁性基材への導電性dlc層のコーティング装置および方法 - Google Patents

絶縁性基材への導電性dlc層のコーティング装置および方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6390197B2
JP6390197B2 JP2014127487A JP2014127487A JP6390197B2 JP 6390197 B2 JP6390197 B2 JP 6390197B2 JP 2014127487 A JP2014127487 A JP 2014127487A JP 2014127487 A JP2014127487 A JP 2014127487A JP 6390197 B2 JP6390197 B2 JP 6390197B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
chamber
conductive
intermediate layer
insulating substrate
base material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2014127487A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016008307A (ja
Inventor
山本 啓介
啓介 山本
淳一 濱▲崎▼
淳一 濱▲崎▼
恒吉 鎌田
恒吉 鎌田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nissan Motor Co Ltd filed Critical Nissan Motor Co Ltd
Priority to JP2014127487A priority Critical patent/JP6390197B2/ja
Publication of JP2016008307A publication Critical patent/JP2016008307A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6390197B2 publication Critical patent/JP6390197B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)

Description

本発明は、絶縁性基材への導電性DLC層のコーティング装置および方法に関する。
基材に導電性DLC(Diamond−Like−Carbon)層をコーティングして形成される部材として、たとえば金属基材に導電性DLC層をコーティングして形成される燃料電池用の金属セパレータを例示することができる。金属セパレータは、プレスマシンおよび金型を用いて、プレス成型によって形成する。金属セパレータによって、燃料ガス、酸化ガスおよび冷却水(冷媒)がそれぞれ流通する各流路を形成する。
金属基材への導電性DLC層のコーティングは、特許文献1に示すように、たとえば高周波(RF)スパッタリング物理蒸着法(PVD)によって行われる。金属基材は、真空チャンバ内に、高周波電力源に接続されたターゲットに面して配置される。ターゲットに高周波電力が印加されると、プラズマが形成される。正ガスイオンが、ターゲット表面に引きよせられてターゲットに衝突し、運動量移動によりターゲット原子を弾き飛ばす。弾き飛ばされたターゲット原子は、金属基材上に堆積して薄膜層の導電性DLC層を形成する。なお、薄膜層形成時に金属基材にバイアス電圧が印加されることにより、金属基材上には、ダイヤモンド結合とグラファイト結合とが混在するアモルファス構造の導電性炭素層である導電性DLC層がコーティングされる。導電性DLC層を金属基材の表面にコーティングすることにより、導電性を十分に確保しつつ、耐食性が高い金属セパレータを形成することができる。
特開2011−179120号公報
しかしながら、燃料電池は、低コスト化の要求があるため、セパレータの基材を耐熱性の高いステンレスなどの金属から樹脂などに変更し、セパレータの導電性および耐久性を十分確保する技術が要請されている。
そこで、基材に低コスト化のため樹脂(PET(ポリエチレンテレフタラート)、PP(ポリプロピレン)など)の絶縁体を用いることが考えられるが、特許文献1のような装置とクランプ方法では、絶縁性基材にバイアス電圧を印加することができないため、導電性DLC層を絶縁体基材上に直接コーティングすることは困難である。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、絶縁性基材に導電性DLC層をコーティングすることができ、これにより絶縁性基材の上に導電性の高い導電性DLC層がコーティングされた耐食性および導電性に優れた部材を形成することが可能な、絶縁性基材への導電性DLC層のコーティング装置および方法の提供を目的とする。
上記目的を達成する本発明に係る絶縁性基材への導電性DLC層のコーティング装置は、絶縁性基材を保持する保持部と、前記保持部によって保持される前記絶縁性基材の一の面に、導電性の中間層をコーティングする第1チャンバと、前記導電性の中間層の上に接触して電圧を印加する電圧印加部材と、前記電圧印加部材が前記導電性の中間層に前記電圧を印加している状態において、前記導電性の中間層上に導電性DLC層をスパッタリングによってコーティングする第2チャンバとを有する。絶縁性基材への導電性DLC層のコーティング装置はさらに、前記第1チャンバに向けて処理前の前記絶縁性基材を搬入し、前記導電性DLC層を形成後の前記絶縁性基材を前記第1チャンバを経て搬出する搬出入チャンバと、前記搬出入チャンバ、前記第1チャンバおよび前記第2チャンバの吸排気をそれぞれ独立して行う吸排気部とを有する。前記吸排気部は、1台のポンプと、前記ポンプと前記各々のチャンバとを接続する配管と、前記各々のチャンバに至るそれぞれの配管に接続された切替弁とを有する。
また、本発明に係る絶縁体基材への導電性DLC層のコーティング方法は、保持部によって保持される処理前の絶縁性基材を搬出入チャンバから第1チャンバに向けて搬入する。次に、前記第1チャンバにおいて、前記保持部によって保持される前記絶縁性基材の一の面に、導電性の中間層をコーティングする。次に、前記保持部によって保持される前記中間層がコーティングされた前記絶縁性基材を前記第1チャンバから第2チャンバに向けて搬入する。次に、前記第2チャンバにおいて、電圧印加部材を前記導電性の中間層の上に接触させ電圧を印加している状態において、前記導電性の中間層上に導電性DLC層をスパッタリングによってコーティングする。次に、前記導電性DLC層を形成後の前記絶縁性基材を前記第2チャンバから前記第1チャンバを経て搬出入チャンバに搬出する。1台のポンプと、前記ポンプと前記各々のチャンバとを接続する配管と、前記各々のチャンバに至るそれぞれの配管に接続された切替弁とを有する吸排気部によって、前記搬出入チャンバ、前記第1チャンバおよび前記第2チャンバの吸排気をそれぞれ独立して行う。
本発明に係る絶縁体基材への導電性DLC層のコーティング装置によれば、まず、絶縁性基材の上に導電性の中間層をコーティングする。この後、導電性の中間層に電圧印加部材を接触させ電圧を印加しながらスパッタリングを行うので、導電性の中間層上に導電性DLC層をコーティングすることができる。このように、導電性の中間層に対し確実に電圧を印加することができるので、絶縁性基材に導電性DLC層をコーティングすることができる。したがって、絶縁性基材の上に導電性の高い導電性DLC層がコーティングされた耐食性および導電性に優れた部材を形成することができる。
本発明に係る絶縁体基材への導電性DLC層のコーティング方法によれば、まず、絶縁性基材の上に導電性の中間層をコーティングする。この後、導電性の中間層に電圧印加部材を接触させ電圧を印加しながらスパッタリングを行うので、導電性の中間層上に導電性DLC層をコーティングすることができる。このように、導電性の中間層に対し確実に電圧を印加することができるので、絶縁性基材に導電性DLC層をコーティングすることができる。したがって、絶縁性基材の上に導電性の高い導電性DLC層がコーティングされた耐食性および導電性に優れた部材を形成することができる。
第1の実施形態に係るコーティング装置を模式的に示す上面図である。 第1の実施形態に係るコーティング装置を模式的に示す正面図である。 第1の実施形態に係るコーティング装置の電圧印加部材の構成を示す模式図であり、図3(A)は、突出前の電圧印加部材の構成を模式的に示す側面図であり、図3(B)は、突出後の電圧印加部材の構成を模式的に示す側面図である。 第1の実施形態に係るコーティング装置の動作を模式的に示す図であり、図4(A−1)、(A−2)は、押出部材がクランプの蓋に接近している状態を示す斜視図および側面図であり、図4(B−1)、(B−2)は、押出部材がクランプの蓋の押し出しを開始した状態を示す斜視図および側面図であり、図4(C−1)、(C−2)は、押出部材がクランプの蓋を押し出して電圧印加部材が突出し導電性の中間層の上に接触している状態を示す斜視図および側面図である。 第2の実施形態に係るコーティング装置の電圧印加部材の構成を示す模式図であり、図5(A)は、回転前の電圧印加部材の構成を模式的に示す側面図であり、図5(B)は、回転後の電圧印加部材の構成を模式的に示す側面図である。 第2の実施形態に係るコーティング装置の動作を模式的に示す図であり、図6(A−1)、(A−2)は、押出部材が電圧印加部材に接近している状態を示す斜視図および側面図であり、図6(B−1)、(B−2)は、押出部材が電圧印加部材の押し出しを開始した状態を示す斜視図および側面図であり、図6(C−1)、(C−2)は、押出部材が電圧印加部材を押し出して電圧印加部材が回転して導電性の中間層の上に接触している状態を示す斜視図および側面図である。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明に係る第1および第2実施形態について説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図1〜図6の全ての図において、X、Y、およびZからなる矢印を図示している。Xで表す矢印は、絶縁性基材1の搬送方向Xを示している。Yで表す矢印は、搬送方向Xと交差した交差方向Yを示している。Zで表す矢印は、絶縁性基材1の起立方向Zを示している。図面における部材の大きさや比率は、説明の都合上誇張され実際の大きさや比率とは異なる場合がある。また、各図は、各構成部材を大幅に簡略化して図示している。
<第1実施形態>
第1実施形態に係る絶縁性基材1への導電性DLC層3のコーティング方法、およびその方法を具現化したコーティング装置100について、図1〜3を参照しながら説明を行う。
図1は、コーティング装置100を模式的に示す上面図である。図2は、コーティング装置100を模式的に示す正面図である。図3は、コーティング装置100の電圧印加部材160の構成を示す模式図であり、図3(A)は、突出前の電圧印加部材160の構成を模式的に示す側面図であり、図3(B)は、突出後の電圧印加部材160の構成を模式的に示す側面図である。
第1の実施形態に係る絶縁性基材1への導電性DLC層3のコーティング装置100は、例えば燃料電池のセパレータを成形する際に使用される。
本実施形態のコーティング装置100は、図1に示すように、絶縁性基材1を保持する保持部110と、保持部110によって保持される絶縁性基材1の一の面1aに、導電性の中間層2をコーティングする第1チャンバ140と、導電性の中間層2の上に接触して電圧を印加する電圧印加部材160と、電圧印加部材160が導電性の中間層2に電圧を印加している状態において、導電性の中間層2上に導電性DLC層3をスパッタリングによってコーティングする第2チャンバ150とを有する。
コーティング装置100は、図1および図2に示すように、第1チャンバ140と第2チャンバ150とを通して設定された搬送ラインに沿って保持部110を搬送する搬送部120をさらに有する。保持部110の移動に連動して、電圧印加部材160が導電性の中間層2の上に接触する状態に移行する。
コーティング装置100は、図1および図2に示すように、第1チャンバ140に向けて処理前の絶縁性基材1を搬入し、導電性DLC層3を形成後の絶縁性基材1を第1チャンバ140を経て搬出するインターバック型である。
コーティング装置100は、第1チャンバ140および第2チャンバ150以外に、絶縁性基材1などを搬出入するための搬出入チャンバ130を有する。コーティング装置100は、搬出入チャンバ130、第1チャンバ140および第2チャンバ150内の吸排気を行うための吸排気部170をさらに有する。コーティング装置100は、電圧印加部材160に電圧を供給する電源180を有する。コーティング装置100は、電圧印加部材160を導電性の中間層2に接触させるための押出部材190を有する。さらに、コーティング装置100は、上記各部および各部材を制御する制御部90を有する。以下、コーティング装置100の各構成について詳細に説明する。
保持部110は、絶縁性基材1を保持する。保持部110は、図1に示すように、搬送部120によって搬送される絶縁性基材1を一の面1a側から把持するクランプ111を有する。ここで、一の面1aとは、コーティングによる表面処理を行う面である。
クランプ111は、絶縁性基材1の周囲を把持する。図2に示すように絶縁性基材1が矩形の場合には、クランプ111は、少なくとも絶縁性基材1の四隅にそれぞれ設けられる。
クランプ111は、図3(A)、(B)に示すように、内部に電圧印加部材160を収容する収容部111aと、収容部111aの開口を覆う蓋111bとを含む。蓋111bは、収容部111aの開口に対して開閉可能に設けられる。蓋111bは、ネジ111cによってクランプ111の筐体111dと連結される。電圧印加部材160については後で詳細に説明する。
搬送部120は、搬出入チャンバ130、第1チャンバ140および第2チャンバ150を通して設定された搬送ラインに沿って保持部110を搬送する。なお、保持部110と搬送部120とは一体化され、これらによって搬出入チャンバ130、第1チャンバ140および第2チャンバ150を通して絶縁性基材1は、搬送される。搬送部120は、絶縁性基材1を、搬出入チャンバ130から第1チャンバ140を介して第2チャンバ150まで搬送した後、第2チャンバ150から第1チャンバ140を介して搬出入チャンバ130まで搬送する。このように、搬送部120は、インターバック形式により絶縁性基材1を搬送する。
搬送部120は、搬送機構121を含んでいる。搬送機構121は、キャリアおよび直進ステージを備えている。キャリアは、絶縁性基材1を例えば起立させた状態で保持する。直進ステージは、キャリアを移動させる。直進ステージは、例えば、搬出入チャンバ130、第1チャンバ140、および第2チャンバ150に対してそれぞれ独立して設ける。このような構成の場合、絶縁性基材1を保持したキャリアを、搬出入チャンバ130、第1チャンバ140、および第2チャンバ150に設けた直進ステージ間で受け渡す。また、直進ステージは、例えば、搬出入チャンバ130、第1チャンバ140、および第2チャンバ150を横断するように設ける構成としてもよい。直進ステージは、直進駆動に伴う部材間での発塵を抑制し、かつ、真空状態においてアウトガスが発生し難いグリスを用いた仕様のものを選択する。
搬出入チャンバ130は、真空状態を維持した第1チャンバ140および第2チャンバ150と隔離した状態で、外部から絶縁性基材1を搬入し、かつ外部に対して絶縁性基材1を搬出する。
搬出入チャンバ130は、第1ゲートバルブ131を備える。搬出入チャンバ130は、いわゆる圧力チャンバに相当し、例えばステンレス鋼からなり、内部に空間を有した長方体形状に形成している。搬出入チャンバ130は、搬送部120によって搬送される絶縁性基材1を収容する。第1ゲートバルブ131は、搬出入チャンバ130と外部とを隔てる。搬出入チャンバ130は、大気状態の外部から絶縁性基材1を搬入し、または大気状態の外部に対して絶縁性基材1を搬出する際に、第1チャンバ140および第2チャンバ150の真空状態を維持させる。すなわち、搬出入チャンバ130は、絶縁性基材1の搬出入に伴い、コーティング装置100の内部のうち大気状態に戻ってしまう領域を減らす。
第1チャンバ140は、絶縁性基材1の一の面1aに例えば真空蒸着によって導電性の中間層2をコーティングする。第1チャンバ140は、搬出入チャンバ130および第2チャンバ150に隣接している。第1チャンバ140は、第2ゲートバルブ141と、導電性ターゲット142を含んでいる。第1チャンバ140は、いわゆる圧力チャンバに相当し、例えば、ステンレス鋼からなり、内部に空間を有した長方体形状に形成している。第1チャンバ140は、保持部110に保持されながら搬送される絶縁性基材1を収容する。第2ゲートバルブ141は、搬出入チャンバ130と第1チャンバ140とを隔てる。導電性ターゲット142は、絶縁性基材1の一の面1a上にコーティングする導電体を板状に形成したものである。導電性ターゲット142は、カソードに保持されている。カソードに保持された導電性ターゲット142は、第1チャンバ140において、絶縁性基材1に対向する位置に配置されている。第1チャンバ140は、例えば真空状態において、高電圧を印加してイオン化させた不活性の希ガス元素を導電性ターゲット142に衝突させる。希ガス元素に衝突された部分の導電性ターゲット142は、その表面から原子が弾き飛ばされ、絶縁性基材1の一の面1aにコーティングされる。
ここで、導電性ターゲット142および中間層2を構成する材料について説明を行う。
導電性ターゲット142および中間層2を構成する材料としては、導電性を有するものであれば特に制限はない。例えば、周期律表の第4族の金属(Ti、Zr、Nf)、第5族の金属(V、Nb、Ta)、第6族の金属(Cr、Mo、W)、並びにこれらの炭化物、窒化物および炭窒化物などが挙げられる。なかでも好ましくは、クロム(Cr)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)もしくはハフニウム(Hf)といったイオン溶出の少ない金属、またはこれらの窒化物、炭化物もしくは炭窒化物が用いられる。より好ましくは、CrもしくはTi、またはこれらの炭化物もしくは窒化物が用いられる。特に、CrもしくはTi、またはこれらの炭化物もしくは窒化物が用いる場合、中間層2の役割として、導電性DLC層3との密着性確保と、絶縁性基材1の防食効果がある。なかでも、上述したイオン溶出の少ない金属(特にCrもしくはTi)、またはその炭化物もしくは窒化物を用いた場合、絶縁性基材1の耐食性を有意に向上させることができる点でも優れている。これにより、絶縁性基材1の耐食性を維持できる。以上の各導電性材料の特徴を十分考慮し、必要があれば中間層2を2以上に多層化し、上側には導電性DLC層3との密着性に優れた導電性材料を用い、下地側には絶縁性基材1の防食効果がある導電性材料を組み合わせるなどして最適化を図るのが望ましい。
電圧印加部材160は、導電性の中間層2の上に接触して電圧を印加する。電圧印加部材160は、クランプ111に設けられる。電圧印加部材160は、突出して導電性の中間層2の上に接触する状態に移行する。なお、電圧印加部材160は、第2チャンバ150において導電性DLC層3のコーティングが行われる直前に、電源180からの電圧が供給されることにより、電圧を印加することができる。
電圧印加部材160は、電源180からの電圧が供給可能に設けられ、図3(A)に示すように、クランプ111の内部に設けられた収容部111aに突出可能に収容される。電圧印加部材160は、図3(B)に示すように、中間層2の上に接触する本体部161と、本体部161を収容部111aから突出させるために本体部161を付勢する付勢部162とを備える。本体部161は、例えば中間層2に接触する側の先端が半球形状の棒状部材である。このように本体部161の上記先端が半球形状であるため、電圧印加部材160は、中間層2に接触しても該層を傷つけない。付勢部162は、例えば圧縮バネであり、一端が本体部161の上記先端と逆側の後端に連結して設けられる。また、付勢部162は、上記一端と逆側の他端が収容部111aの側壁に連結して設けられる。電圧印加部材160は、このような構成のため、クランプ111の蓋111bが開くことによって、収容部111a内から突出して中間層2の上に接触することができる。なお、本体部161および付勢部162は、中間層2の上に接触するように、収容部111a内に所定の角度をつけて収容される。また、クランプ111の収容部111aから突出した電圧印加部材160は、導電性DLC層3がコーティングされた絶縁性基材1が搬出入チャンバ130から搬出された後、作業員または図示しない装置によって、再び収容部111aに収容される。これにより、電圧印加部材160は、繰り返しクランプ111の収容部111aに収容され、かつ収容部111aから突出することができる。
本実施形態では、上述したように絶縁性基材1をクランプ111が把持し、該基材の上に導電性の中間層2をコーティングしてからクランプ111に設けた電圧印加部材160を突出させて中間層2に接触させて電圧を印加する構成にしている。一方、比較例として絶縁性基材1を導電性のクランプが把持し、該基材の上に中間層2をコーティングしてから該クランプに電圧を印加した場合、該クランプと中間層2とが点接触している部分に大電流が流れて異常放電(アーキング)が起きてしまう。本実施形態では、電圧印加部材160によって中間層2に確実に電圧を印加することができるので、上記比較例のようなアーキングが生じることなく、中間層2全体に電流を流すことができる。これにより、導電性の中間層2の上にアモルファス構造の導電性DLC層3をコーティングすることができる。
押出部材190は、図3(A)、(B)に示すように、クランプ111の蓋111bを押して回転させ、収容部111aに収容された電圧印加部材160を突出させる。押出部材190は、第1チャンバ140内のうち、第2チャンバ150側の後述する第3ゲートバルブ151の近傍に設けられる。押出部材190は、図1に示すように、蓋111bを押すための押出部191と、押出部191を蓋111bに接触または接触後、蓋111bから離反する方向(図中ではY軸方向)に移動するための駆動部192と、駆動部192を搬出入チャンバ130または第2チャンバ150方向(図中ではX軸方向)に移動するためのスライド部193とを備える。駆動部192は、たとえばエアシリンダーから構成され、作動ロッド192aの先端に押出部191を取り付けられる。駆動部192は、スライド部193にスライド可能に係合して取り付けられる。
押出部材190は、図2に示すように、Z軸方向において、クランプ111の蓋111bと接触可能な位置に配置される。本実施形態では、押出部材190は、2つ配置され、搬送されるクランプ111のうち絶縁性基材1を図2中において右上および右下それぞれで把持するクランプ111の蓋111bを同時に押し出して回転することが可能である。また、押出部材190は、搬送されるクランプ111のうち絶縁性基材1を図2中において左上および左下それぞれで把持するクランプ111の蓋111bを同時に回転することができる。
第2チャンバ150は、導電性の中間層2の上に導電性DLC層3をスパッタリングによってコーティングする。第2チャンバ150は、第2チャンバ150に隣接している。第2チャンバ150は、第3ゲートバルブ151と、カーボン(C)ターゲット152を含んでいる。第2チャンバ150は、いわゆる圧力チャンバに相当し、例えば、ステンレス鋼からなり、内部に空間を有した長方体形状に形成している。第2チャンバ150は、保持部110に保持されながら搬送される絶縁性基材1を収容する。第3ゲートバルブ151は、第1チャンバ140と第2チャンバ150とを隔てる。カーボンターゲット152は、中間層2の上にコーティングするカーボンを板状に形成したものである。カーボンターゲット152は、カソードに保持されている。カソードに保持されたカーボンターゲット152は、第2チャンバ150において、絶縁性基材1に対向する位置に配置されている。第2チャンバ150は、例えば真空状態において、高電圧を印加してイオン化させた不活性の希ガス元素をカーボンターゲット152に衝突させる。希ガス元素に衝突された部分のカーボンターゲット152は、その表面から原子が弾き飛ばされ、導電性の中間層2の上にコーティングされる。このとき、中間層2の上には電圧印加部材160から電圧が印加されるので、中間層2の上には、ダイヤモンド結合とグラファイト結合とが混在するアモルファス構造の導電性炭素層である導電性DLC層がコーティングされる。導電性DLC層を導電性の中間層2の上にコーティングすることにより、これらコーティングによって形成される部材の導電性を十分に確保しつつ、耐食性を向上させることができる。
吸排気部170は、搬出入チャンバ130、第1チャンバ140および第2チャンバ150を、それぞれ独立して、高真空の状態である真空状態、低真空の状態である減圧状態、不活性ガスに置き換えた状態である置換状態とする。
吸排気部170は、配管171、切替弁172、およびポンプ173を含んでいる。配管171は、搬出入チャンバ130、第1チャンバ140、第2チャンバ150に対して、それぞれ挿通している。切替弁172は、配管171に接続し、配管171を介した媒体の流通を規制する。切替弁172は、配管171を介して、搬出入チャンバ130と第1チャンバ140との間、第1チャンバ140と第2チャンバ150との間、第2チャンバ150とポンプ173との間に、それぞれ個別に配設されている。ポンプ173は、ドライポンプとターボ分子ポンプを組み合わせて構成している。ポンプ173は、搬出入チャンバ130、第1チャンバ140、および第2チャンバ150を真空引きする際に、先ずドライポンプを用いてある程度減圧した後、ターボ分子ポンプを用いて高真空まで減圧する。吸排気部170は、絶縁性基材1に対するコーティング条件によって、搬出入チャンバ130、第1チャンバ140、および第2チャンバ150を、それぞれ、真空状態にしたり、減圧状態にしたり、または置換状態にする。置換状態にする場合にも、その前に減圧して置換効率を上げる。
制御部90は、搬送部120、搬出入チャンバ130、第1チャンバ140、第2チャンバ150、電圧印加部材160、吸排気部170、および押出部材190をそれぞれ制御する。
制御部90は、ROM、CPU、およびRAMを含んでいる。ROM(Read Only Memory)は、コーティング装置100に係る制御プログラムを格納している。制御プログラムは、搬送部120の搬送機構121、搬出入チャンバ130の第1ゲートバルブ131、第1チャンバ140の第2ゲートバルブ141および導電性ターゲット142に希ガス元素を衝突させて弾き飛ばす機構、第2チャンバ150の第3ゲートバルブ151およびカーボンターゲット152に希ガス元素を衝突させて弾き飛ばす機構、電圧印加部材160を突出させて絶縁性基材1上にコーティングされた導電性の中間層2の上に接触する状態に移行させる機構、および電圧印加部材160へ電源180からの電圧を印加する機構、吸排気部170の切替弁172およびポンプ173の制御に関するものを含んでいる。制御部90のCPU(Central Processing Unit)は、制御プログラムに基づいてコーティング装置100の各構成部材の作動を制御する。RAM(Random Access Memory)は、制御中のコーティング装置100の各構成部材に係る様々なデータを一時的に記憶する。
次に、上記コーティング装置100のコーティング方法(絶縁性基材1への導電性DLC層3のコーティング方法)について概説する。
本実施形態の絶縁性基材1への導電性DLC層3のコーティング方法は、保持部110によって保持される絶縁性基材1の一の面1aに、導電性の中間層2をコーティングする。次に、電圧印加部材160を導電性の中間層2の上に接触させ電圧を印加している状態において、導電性の中間層2上に導電性DLC層3をスパッタリングによってコーティングする。上述したコーティング装置100は、絶縁性基材1への導電性DLC層3のコーティング方法を具現化したコーティング装置である。以下に方法手順を詳細説明する。
次に、コーティング装置100の動作について、図4を参照しながら具体的に説明する。
図4は、コーティング装置100の動作を模式的に示す図であり、図4(A−1)、(A−2)は、押出部材190がクランプ111の蓋111bに接近している状態を示す斜視図および側面図であり、図4(B−1)、(B−2)は、押出部材190がクランプ111の蓋111bの押し出しを開始した状態を示す斜視図および側面図であり、図4(C−1)、(C−2)は、押出部材190がクランプ111の蓋111bを押し出して電圧印加部材160が突出し導電性の中間層2の上に接触している状態を示す斜視図および側面図である。
押出部材190は、図2に示すように、4つのクランプ111のそれぞれの蓋111bが導電性DLC層3のコーティング時の邪魔にならないように、それぞれの蓋111bを絶縁性基材1の外周方向に押し倒す。押出部材190は、まず、図2中の右上および右下に位置するクランプ111の蓋111bを図中の右方向に押し倒す。押出部材190は、次に、図2中の左上および左下に位置するクランプ111の蓋111bを図中の左方向に押し倒す。押出部材190が上記右上、右下、左上、左下それぞれのクランプ111の蓋111bを上記した方向に押し倒すための動作について説明を行う。
絶縁性基材1の一の面1aの上に導電性の中間層2がコーティングされると、押出部材190は、上記右上に位置するクランプ111の蓋(右上の蓋)111bに対し、図4(A−1)、(A−2)に示すように接近する方向に移動する。その後、押出部材190は、上記右上の蓋111bが押出部材190の真横を通過した直後に右上の蓋111bの図中の左側面に当接し、当接したまま今度は第2チャンバ150方向(搬送方向)に移動する。このとき、押出部材190は、搬送部120が絶縁性基材1を搬送する速度よりも速い速度で第2チャンバ150方向に向かって移動する。
押出部材190は、上記移動によって、図4(C−1)、(C−2)に示すように蓋111bを第2チャンバ150方向に回転させて押し倒す。蓋111bを押し倒すと、収容部111aに収容された電圧印加部材160は、突出して絶縁性基材1の上にコーティングされた導電体の中間層2の上に接触する。なお、押出部材190は、上記右下に位置するクランプ111の蓋111bに対しても上記押し出し処理を同様に行う。このとき、押出部材190は、スライド部193に規制される範囲内で最も第2チャンバ150寄りの位置まで移動し、停止している。
一方、押出部材190は、上記左上および左下に位置するクランプ111の蓋(左上および左下の蓋)111bに対しては、上記停止位置に位置することによってそれぞれの蓋111bの右側面に当接する。押出部材190は、上記当接によって左上および左下の蓋111bを搬出入チャンバ130方向に回転させて押し倒す。蓋111bを押し倒すと、収容部111aに収容された電圧印加部材160は、突出して絶縁性基材1の上にコーティングされた導電体の中間層2の上に接触する。
このように、絶縁性基材1が第1チャンバ140を通過して第2チャンバ150に搬送されると、図2中に示す上下左右4つの電圧印加部材160は、それぞれクランプ111から突出して導電性の中間層2の上に接触している。絶縁性基材1が第2チャンバ150に搬送されると共に、上記4つの電圧印加部材160には、電源180からの電圧が印加される。この状態において、第2チャンバ150は、中間層2の上にカーボンターゲット152を用いたスパッタリングを行う。このため、中間層2の上には、ダイヤモンド結合とグラファイト結合とが混在するアモルファス構造の導電性炭素層である導電性DLC層がコーティングされる。
上述した第1実施形態に係る絶縁性基材1への導電性DLC層3のコーティング方法、およびコーティング方法を具現化したコーティング装置100により以下の作用効果を奏する。
本コーティング装置100では、絶縁性基材1を保持する保持部110と、保持部110によって保持される絶縁性基材1の一の面1aに、導電性の中間層2をコーティングする第1チャンバ140と、導電性の中間層2の上に接触して電圧を印加する電圧印加部材160と、電圧印加部材160が導電性の中間層2に電圧を印加している状態において、導電性の中間層2上に導電性DLC層3をスパッタリングによってコーティングする第2チャンバ150とを有する。
かかる構成によれば、まず、絶縁性基材1の上に導電性の中間層2をコーティングする。この後、導電性の中間層2に電圧印加部材160を接触させ電圧を印加しながらスパッタリングを行うので、導電性の中間層2上に導電性DLC層3をコーティングすることができる。このように、導電性の中間層2に対し確実に電圧を印加することができるので、絶縁性基材1に導電性DLC層3をコーティングすることができる。したがって、絶縁性基材1の上に導電性の高い導電性DLC層3がコーティングされた耐食性および導電性に優れた部材を形成することができる。
さらに、本コーティング装置100では、第1チャンバ140と第2チャンバ150とを通して設定された搬送ラインに沿って保持部110を搬送する搬送部120を有する。保持部110の移動に連動して、電圧印加部材160が導電性の中間層2の上に接触する状態に移行する。
かかる構成によれば、絶縁性基材1が第1チャンバ140から第2チャンバ150へ搬送されている間に電圧印加部材160を導電性の中間層2の上に接触させることができる。そして、絶縁性基材1が第2チャンバ150内のスパッタリングを行う所定位置に搬送されると共に、導電性の中間層2の上への導電性DLC層3のコーティング処理を開始することができる。したがって、絶縁性基材1の上に中間層2がコーティングされてから中間層2の上に導電性DLC層3をコーティングするまでの間、搬送部120の動作を停止させることなく、短時間での絶縁性基材1への導電性DLC層3のコーティング処理を実現することができる。
さらに、本コーティング装置100では、第1チャンバ140に向けて処理前の絶縁性基材1を搬入し、導電性DLC層3を形成後の絶縁性基材1を第1チャンバ140を経て搬出するインターバック型である。
インターバック式は、搬出入チャンバ130から搬入した絶縁性基材1に導電性のDLC層3をコーティングした後、搬出入チャンバ130まで戻して搬出するため、絶縁性基材1を搬入してから搬出するまでの搬送経路が長くなる。このため、絶縁性基材1の上に導電性の中間層2をコーティングした後、電圧印加部材160によって自動的に中間層2に電圧を印加する構成を有していない装置では、絶縁性基材1を搬出入チャンバ130に一旦戻す必要がある。この場合、搬出入チャンバ130において中間層2の上に電圧印加部材を接触させて電圧を印加させた状態で中間層2の上に導電性DLC層3をコーティングする。この後、絶縁性基材1を搬出入チャンバ130に搬送する。このため、絶縁性基材1に導電性DLC層3をコーティングして搬出するまでに2往復するので搬送経路が長くなる。そこで、本コーティング装置100の構成によれば、1往復で絶縁性基材1に導電性DLC層3をコーティングすることができるため、絶縁性基材1への導電性DLC層3のコーティングに係る生産効率を効果的に向上させることができる。
さらに、本コーティング装置100では、電圧印加部材160は、突出して導電性の中間層2の上に接触する状態に移行する。
かかる構成によれば、電圧印加部材160は、絶縁性基材1の上に中間層2をコーティングする際には突出せず、中間層2がコーティングされた後に突出して中間層2の上に接触することができる。これにより、電圧印加部材160は、絶縁性基材1の上に中間層2をコーティングする際の妨げにならないので、絶縁性基材1の上に広範囲に渡って中間層2をコーティングすることができる。このため、広範囲に渡って形成された中間層2の上に広範囲に渡って導電性DLC層をコーティングすることができる。したがって、絶縁性基材の上に導電性の高い導電性DLC層が広範囲に渡ってコーティングされた耐食性および導電性に優れた部材を形成することができる。
さらに、本コーティング装置100では、保持部110は、絶縁性基材1を把持するクランプ111を有する。電圧印加部材160は、クランプ111に設けられる。
かかる構成によれば、電圧印加部材160は、クランプ111の内部に設けられた収容部111aに突出可能に設けられる。これにより、新たに電圧印加部材160突出させるための機構を設けることなく、既存のクランプ111を改良して電圧印加部材160を突出させることができる。したがって、電圧印加部材160を突出させるための構成を安価な機構により実現することができる。
本絶縁性基材1への導電性DLC層3のコーティング方法では、保持部110によって保持される絶縁性基材1の一の面1aに、導電性の中間層2をコーティングする。次に、電圧印加部材160を導電性の中間層2の上に接触させ電圧を印加している状態において、導電性の中間層2上に導電性DLC層3をスパッタリングによってコーティングする。
かかる方法によれば、まず、絶縁性基材1の上に導電性の中間層2をコーティングする。この後、導電性の中間層2に電圧印加部材160を接触させ電圧を印加しながらスパッタリングを行うので、導電性の中間層2上に導電性DLC層3をコーティングすることができる。このように、導電性の中間層2に対し確実に電圧を印加することができるので、絶縁性基材1に導電性DLC層3をコーティングすることができる。したがって、絶縁性基材1の上に導電性の高い導電性DLC層3がコーティングされた耐食性および導電性に優れた部材を形成することができる。
<第2実施形態>
第2実施形態に係る絶縁性基材1への導電性DLC層3のコーティング方法、およびその方法を具現化したコーティング装置200について、図5を参照しながら説明を行う。
図5は、コーティング装置200の電圧印加部材260の構成を示す模式図であり、図5(A)は、回転前の電圧印加部材260の構成を模式的に示す側面図であり、図5(B)は、回転後の電圧印加部材260の構成を模式的に示す側面図である。
第2実施形態は、電圧印加部材260が、回転して導電性の中間層2の上に接触する状態に移行する構成が、前述した第1実施形態に係る構成と異なる。第2実施形態においては、前述した第1実施形態と同様の構成からなるものについて、同一の符号を使用し、前述した説明を省略する。
コーティング装置200は、前述した第1実施形態と同様の搬送部120、搬出入チャンバ130、第1チャンバ140、第2チャンバ150、吸排気部170、電源180、押出部材190に加えて、第2実施形態に特有の保持部210および電圧印加部材260と、各部を制御する制御部290とを有している。第2実施形態では、保持部210および電圧印加部材260を中心に説明する。
先ず、コーティング装置200の構成について、図5を参照しながら具体的に説明する。
図5は、コーティング装置200の電圧印加部材260の構成を示す模式図であり、図5(A)は、回転前の電圧印加部材260の構成を模式的に示す側面図であり、図5(B)は、回転後の電圧印加部材260の構成を模式的に示す側面図である。
保持部210は、図5に示すように、搬送部120によって搬送される絶縁性基材1を一の面1a側から把持するクランプ211を有する。クランプ211は、搬送部120によって搬送される絶縁性基材1の周囲を把持する。絶縁性基材1が矩形の場合には、クランプ211は、少なくとも絶縁性基材1の四隅にそれぞれ設けられる。
クランプ211は、図5(A)、(B)に示すように、絶縁性基材を把持する筐体からなる。クランプ211は、絶縁性基材1の一の面1aと垂直方向で、かつ他のクランプ211と向き合う側の一の面211eに、電圧印加部材260が回転可能に取り付けられる。
電圧印加部材260は、図5(A)、(B)に示すように、回転して導電性の中間層2の上に接触する状態に移行する。電圧印加部材260は、電源180からの電圧が供給可能に設けられ、導電性の中間層2の上に接触する本体部261と、本体部261をクランプ211の筐体から回転させるための蝶番部263とを備える。本体部261は、例えば中間層2に接触する側の先端の角部が丸くなっている板状部材である。このように本体部261の上記先端の角部が丸くなっているため、電圧印加部材260は、中間層2に接触しても該層を傷つけない。蝶番部263は、クランプ211の上記一の面211eに固定して保持される支持側部材263aと、本体部261の一の面に固定して保持される可動側部材263bとを備える。支持側部材263aと可動側部材263bとは互いに回転可能に係合されている。本体部261は、上記後端に凸部261aが形成されており、凸部261aは、蝶番部263に形成された複数の凹部263cと係合可能に設けられる。電圧印加部材260は、このような構成のため、図5(A)に示すように、絶縁性基材1と離間した状態のまま位置することができる。また、電圧印加部材260は、このような構成のため、回転することによって、図5(B)に示すように、絶縁性基材1の上のコーティングされた導電性の中間層2と接触した状態のまま位置することができる。なお、本体部261は、絶縁性基材1の上に導電性の中間層2をコーティングする際に、該コーティングの妨げを防止するために、メッシュ構造になっていることが好ましい。これにより、絶縁性基材1の上に導電性の中間層2をコーティングする際に、図5(A)に示すように、本体部261の下側の絶縁性基材1の部分も円滑にコーティングすることができる。なお、回転して先端部が中間層2に接触している電圧印加部材160は、導電性DLC層3がコーティングされた絶縁性基材1が搬出入チャンバ130から搬出された後、作業員または図示しない装置によって、再び回転前の初期位置に戻される。これにより、電圧印加部材260は、繰り返し初期位置に戻され、かつ回転して先端部を中間層2に接触することができる。
押出部材190は、図5(A)に示すように、絶縁性基材1の上にコーティングされた導電性の中間層2と離間して位置する電圧印加部材260の本体部261を押して回転させ、本体部261の先端を導電性の中間層2に接触させる。押出部材190は、電圧印加部材260を導電性の中間層2の方向に向けて回転させるために、中間層2に向かう方向または離間する方向(図中では上下動)に移動する。
次に、コーティング装置200の動作について、図6を参照しながら具体的に説明する。
図6は、コーティング装置200の動作を模式的に示す図であり、図6(A−1)、(A−2)は、押出部材190が電圧印加部材260に接近している状態を示す斜視図および側面図であり、図6(B−1)、(B−2)は、押出部材190が電圧印加部材260の押し出しを開始した状態を示す斜視図および側面図であり、図6(C−1)、(C−2)は、押出部材190が電圧印加部材260を押し出して電圧印加部材260が回転して導電性の中間層2の上に接触している状態を示す斜視図および側面図である。
絶縁性基材1の一の面1aの上に導電性の中間層2がコーティングされると、押出部材290は、クランプ211に取り付けられている電圧印加部材260対し、図6(A−1)、(A−2)に示すように接近する方向に移動する。その後、押出部材290は、電圧印加部材260が押出部材190の真横を通過するとともに、本体部261の上面に当接して本体部261を絶縁性基材1の方向に押し出しながら絶縁性基材1の方向に移動する。このとき、押出部材190は、搬送部120の絶縁性基材1を搬送する速度よりも速い速度で絶縁性基材1方向に向かって移動する。この後、押出部材190は、絶縁性基材1から離れる方向に移動して、予め設定された初期位置まで移動する。
押出部材190の移動に伴い、クランプ211に取り付けられた電圧印加部材260は、図6(C−1)、(C−2)に示すように、絶縁性基材1の方向に回転して押し倒される。電圧印加部材260は、押し倒されることによって先端部が絶縁性基材1の上にコーティングされた導電体の中間層2の上に接触する。
このように、絶縁性基材1が第1チャンバ140を通過して第2チャンバ150に搬送されると、クランプ111に取り付けられた電圧印加部材260が押し倒されて導電性の中間層2の上に接触している。絶縁性基材1が第2チャンバ150に搬送されると共に、電圧印加部材160には、電源180からの電圧が印加される。この状態において、第2チャンバ150は、中間層2の上にカーボンターゲット152を用いたスパッタリングを行う。このため、中間層2の上には、ダイヤモンド結合とグラファイト結合とが混在するアモルファス構造の導電性炭素層である導電性DLC層がコーティングされる。
上述した第2実施形態に係る絶縁性基材1への導電性DLC層3のコーティング方法、およびコーティング方法を具現化したコーティング装置200により以下の作用効果を奏する。
本コーティング装置200では、電圧印加部材160は、回転して導電性の中間層2の上に接触する状態に移行する。
かかる構成によれば、電圧印加部材260は、クランプ211に回転可能に取り付けられ、絶縁性基材1の上に導電性の中間層2がコーティングされた後に回転して導電性の中間層2の上に接触することができる。このように、電圧印加部材260をクランプ211の表面に回転可能に設ける簡易な構成によって、導電性の中間層2の上に電圧を印加して導電性DLC層3をコーティングすることができる。したがって、簡易な構成によって、絶縁性基材の上に導電性の高い導電性DLC層がコーティングされた耐食性および導電性に優れた部材を形成することができる。
以上、本発明における好適な実施形態を説明したが、これらは本発明を説明するための例示であり、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。すなわち、本発明は、特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
本実施形態では、コーティング装置100および200は、絶縁性基材1の一の面1aのみに中間層をコーティングする構成として説明したが、これに限ることなく、一の面1aおよび他の面を同時にコーティングする構成としてもよい。また、コーティング装置100および200に絶縁性基材1を回転させる回転機構を設け、回転させることにより他の面もコーティングする構成にしてもよい。
また、第1および第2実施形態では、第1チャンバ140は、真空蒸着によって絶縁性基材1に導電性の中間層2をコーティングする構成で説明したが、このような構成に限定されることはない。第1チャンバ140は、例えばスパッタリングによって絶縁性基材1に導電性の中間層2をコーティングしてもよい。このとき、絶縁性基材1には、電圧を印加できないので、絶縁性基材1上には、結晶構造の導電性の中間層がコーティングされる。
1 絶縁性基材、
1a 一の面、
2 導電性の中間層、
3 導電性DLC層、
90、290 制御部、
100 コーティング装置、
110、210 保持部、
111 クランプ、
111a 収容部、
111b 蓋、
111c ネジ、
111d 筐体、
120 搬送部、
130 搬出入チャンバ、
131 第1ゲートバルブ、
140 第1チャンバ、
141 第2ゲートバルブ、
142 導電性ターゲット、
150 第2チャンバ、
151 第3ゲートバルブ、
152 カーボンターゲット、
160、260 電圧印加部材、
161、261 本体部、
162 付勢部、
170 吸排気部、
171 配管、
172 切替弁、
173 ポンプ、
180 電源、
190 押出部材、
191 押出部、
192 駆動部、
192a 作動ロッド、
193 スライド部、
211e 一の面、
261a 凸部、
263 蝶番部、
263a 支持側部材、
263b 可動側部材、
263c 凹部。

Claims (6)

  1. 絶縁性基材を保持する保持部と、
    前記保持部によって保持される前記絶縁性基材の一の面に、導電性の中間層をコーティングする第1チャンバと、
    前記導電性の中間層の上に接触して電圧を印加する電圧印加部材と、
    前記電圧印加部材が前記導電性の中間層に前記電圧を印加している状態において、前記導電性の中間層上に導電性DLC層をスパッタリングによってコーティングする第2チャンバと、
    前記第1チャンバに向けて処理前の前記絶縁性基材を搬入し、前記導電性DLC層を形成後の前記絶縁性基材を前記第1チャンバを経て搬出する搬出入チャンバと、
    前記搬出入チャンバ、前記第1チャンバおよび前記第2チャンバの吸排気をそれぞれ独立して行う吸排気部と、を有し、
    前記吸排気部は、1台のポンプと、前記ポンプと前記各々のチャンバとを接続する配管と、前記各々のチャンバに至るそれぞれの配管に接続された切替弁と、を有する絶縁性基材への導電性DLC層のコーティング装置。
  2. 前記搬出入チャンバと前記第1チャンバと前記第2チャンバとを通して設定された搬送ラインに沿って前記保持部を搬送する搬送部をさらに有し、
    前記保持部の移動に連動して、前記電圧印加部材が前記導電性の中間層の上に接触する状態に移行する、請求項1に記載の絶縁性基材への導電性DLC層のコーティング装置。
  3. 前記絶縁性基材は、燃料電池のセパレータを形成するPET(ポリエチレンテレフタラート)またはPP(ポリプロピレン)の樹脂であり、
    前記導電性の中間層は、クロム(Cr)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)もしくはハフニウム(Hf)の金属、またはこれらの窒化物、炭化物もしくは炭窒化物である、請求項1または請求項2に記載の絶縁性基材への導電性DLC層のコーティング装置。
  4. 前記電圧印加部材は、突出または回転して前記導電性の中間層の上に接触する状態に移行する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁性基材への導電性DLC層のコーティング装置。
  5. 前記保持部は、前記絶縁性基材の周囲を把持する複数のクランプを有し、
    前記電圧印加部材は、前記クランプのそれぞれに設けられ、前記クランプによる前記絶縁性基材の把持を維持したまま前記導電性の中間層の上に接触する状態に移行する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁性基材への導電性DLC層のコーティング装置。
  6. 保持部によって保持される処理前の絶縁性基材を搬出入チャンバから第1チャンバに向けて搬入し、
    前記第1チャンバにおいて、前記保持部によって保持される前記絶縁性基材の一の面に、導電性の中間層をコーティングし、
    前記保持部によって保持される前記導電性の中間層がコーティングされた前記絶縁性基材を前記第1チャンバから第2チャンバに向けて搬入し、
    前記第2チャンバにおいて、電圧印加部材を前記導電性の中間層の上に接触させ電圧を印加している状態において、前記導電性の中間層上に導電性DLC層をスパッタリングによってコーティングし、
    前記導電性DLC層を形成後の前記絶縁性基材を前記第2チャンバから前記第1チャンバを経て前記搬出入チャンバに搬出してなり、
    1台のポンプと、前記ポンプと前記各々のチャンバとを接続する配管と、前記各々のチャンバに至るそれぞれの配管に接続された切替弁とを有する吸排気部によって、前記搬出入チャンバ、前記第1チャンバおよび前記第2チャンバの吸排気をそれぞれ独立して行う、絶縁性基材への導電性DLC層のコーティング方法。
JP2014127487A 2014-06-20 2014-06-20 絶縁性基材への導電性dlc層のコーティング装置および方法 Expired - Fee Related JP6390197B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014127487A JP6390197B2 (ja) 2014-06-20 2014-06-20 絶縁性基材への導電性dlc層のコーティング装置および方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014127487A JP6390197B2 (ja) 2014-06-20 2014-06-20 絶縁性基材への導電性dlc層のコーティング装置および方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016008307A JP2016008307A (ja) 2016-01-18
JP6390197B2 true JP6390197B2 (ja) 2018-09-19

Family

ID=55226100

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014127487A Expired - Fee Related JP6390197B2 (ja) 2014-06-20 2014-06-20 絶縁性基材への導電性dlc層のコーティング装置および方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6390197B2 (ja)

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3177716B2 (ja) * 1992-06-26 2001-06-18 日本真空技術株式会社 面内記録型磁気記録体の製造方法
JP3783106B2 (ja) * 1994-03-07 2006-06-07 キヤノンアネルバ株式会社 薄膜形成方法および装置
JP3002632B2 (ja) * 1995-06-22 2000-01-24 ホーヤ株式会社 磁気記録媒体の製造方法及び基板ホルダ
JP2006286457A (ja) * 2005-04-01 2006-10-19 Toyota Motor Corp 燃料電池セパレータの製造方法
JP4552861B2 (ja) * 2006-01-06 2010-09-29 富士電機デバイステクノロジー株式会社 磁気記録媒体の製造方法および製造装置
JP2008266737A (ja) * 2007-04-20 2008-11-06 Canon Anelva Corp トレイ搬送式インライン成膜装置
JP5391855B2 (ja) * 2009-06-15 2014-01-15 日産自動車株式会社 導電部材、その製造方法、並びにこれを用いた燃料電池用セパレータおよび固体高分子形燃料電池
JP5292502B1 (ja) * 2012-09-06 2013-09-18 成康 町田 電気デバイス

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016008307A (ja) 2016-01-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN106206286B (zh) 蚀刻方法
JP2022180585A (ja) デザイナー原子層エッチング
JP4593601B2 (ja) 汚染物質除去方法、半導体製造方法、及び薄膜形成加工装置
CN111937122A (zh) 难熔金属和其他高表面结合能材料的原子层蚀刻和平滑化
CN105463386A (zh) 成膜装置及成膜基板制造方法
JP4187323B2 (ja) 真空成膜処理装置および方法
JP6390197B2 (ja) 絶縁性基材への導電性dlc層のコーティング装置および方法
JP6455481B2 (ja) 成膜方法及び成膜装置
JP5731085B2 (ja) 成膜装置
JP2006348318A (ja) ハース機構、ハンドリング機構、及び成膜装置
KR101744759B1 (ko) 자석부재 이송장치, 이를 포함한 스퍼터링 장치 및 스퍼터링 방법
US10738380B2 (en) Deposition apparatus
WO2019130471A1 (ja) 成膜方法および成膜装置
JP2004068092A (ja) 硬質炭素膜被覆部材及び成膜方法
KR20020005449A (ko) 진공 아크증발원 및 그 것을 이용한 막형성장치
JP2020515723A (ja) 表面をコーティングするシステム及び方法
CN115386848A (zh) 一种多靶直流磁控溅射镀膜装置及其在沉积陶瓷基底多层金属膜中的应用
US20170117460A1 (en) Method of manufacturing magnetoresistive element and system for manufacturing magnetoresistive element
US20150129421A1 (en) Hybrid deposition system
KR101926881B1 (ko) 나노멀티레이어 코팅층, 그 형성방법 및 형성장치
JP5509041B2 (ja) 成膜方法および成膜装置
JP4772398B2 (ja) 成膜方法及び成膜装置
WO2013136576A1 (ja) 成膜装置
JP6600505B2 (ja) 真空成膜装置
CN109841510A (zh) 蚀刻方法和蚀刻装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170330

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20171206

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20171219

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180216

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180724

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180806

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6390197

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees