本発明の実施の形態による光電変換素子は、シリコン基板と、シリコン基板の裏面側に形成されたパッシベーション層又は非晶質半導体層と、パッシベーション層又は非晶質半導体層に接して形成され、銀からなる電極とを備える。電極は、少なくとも1つの角部を含む。光電変換素子は、密着部をさらに備える。密着部は、電極の角部をパッシベーション層又は非晶質半導体層に密着させる。
銀からなる電極において、最も剥離しやすいのは、角部である。その理由としては、例えば、電極に応力がかかるためであると考えられる。当該応力は、スパッタリングや蒸着等で銀を堆積して電極を形成することで発生する。
例えば、スパッタリングの場合には、成膜時に、アルゴン等の雰囲気ガスが膜中に取り込まれる。膜中に取り込まれたガスは、成膜後に放出される。これにより、膜が収縮し、引張応力が発生する。
例えば、蒸着の場合には、蒸着時、つまり、成膜時に、基板の温度が上昇している。ここで、銀は、シリコンよりも、熱膨張係数が大きい。そのため、成膜後に温度が低下すると、シリコン基板よりも膜(電極)のほうが縮んだ状態になる。そのため、膜に引張応力が発生する。
上記光電変換素子においては、密着部により、電極の角部がパッシベーション層又は非晶質半導体層に密着している。そのため、電極がパッシベーション層又は非晶質半導体層から剥離し難くなる。
上記光電変換素子において、角部は、例えば、電極の面内方向で内側から外側に向かって幅が狭くなる部分である。
上記光電変換素子において、銀からなる電極は、塗布した銀ペーストを焼成することで形成されるものを含まない。つまり、銀からなる電極は、電極をパッシベーション層又は非晶質半導体層に密着させ易くする成分(例えば、銀ペーストに含まれるガラス成分等)を含んでいないものをいう。なお、銀からなる電極は、電極を形成するときに不可避的に含まれる不純物は含んでいてもよいものとする。
上記光電変換素子において、パッシベーション層は、例えば、シリコン基板中であって、且つ、シリコン基板の裏面側に形成された拡散領域を覆う。拡散領域には、n型の不純物が拡散されていてもよいし、p型の不純物が拡散されていてもよい。
上記光電変換素子において、非晶質半導体層は、n型の不純物を含んでいてもよいし、p型の不純物を含んでいてもよい。
密着部は、例えば、密着層である。密着層は、パッシベーション層又は非晶質半導体層と、角部との間に配置される。このような光電変換素子であっても、電極がパッシベーション層又は非晶質半導体層から剥離し難くなる。
密着部は、例えば、被覆層である。被覆層は、パッシベーション層又は非晶質半導体層の一部と、角部とを覆う。このような光電変換素子であっても、電極がパッシベーション層又は非晶質半導体層から剥離し難くなる。
密着部は、例えば、パッシベーション層又は非晶質半導体層のうち、角部が接する部分に形成された凹凸である。このような光電変換素子であっても、電極がパッシベーション層又は非晶質半導体層から剥離し難くなる。
光電変換素子は、少なくとも1つの密着層をさらに備えてもよい。密着層は、電極のうち角部を除いた部分と、パッシベーション層又は非晶質半導体層との間に配置される。
このような光電変換素子においては、電極のうち角部を除いた部分と、パッシベーション層又は非晶質半導体層とを密着させることができる。そのため、電極がパッシベーション層又は非晶質半導体層からさらに剥離し難くなる。
本発明の実施の形態による太陽光発電システムは、本発明の実施の形態による光電変換素子を用いた光電変換素子モジュールを含む。この場合、光電変換素子において、電極がパッシベーション層又は非晶質半導体層から剥離し難くなる。その結果、光電変換素子モジュール、延いては、太陽光発電システムにおいて、不良品が発生し難くなる。
以下、本発明のより具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[第1の実施の形態]
図1を参照しながら、本発明の第1の実施の形態による光電変換素子10について説明する。光電変換素子10は、シリコン基板12と、真性非晶質半導体層14,16と、n型非晶質半導体層18と、p型非晶質半導体層20と、電極22、24と、真性非晶質半導体層26と、n型非晶質半導体層28と、反射防止膜30と、密着層42、46とを備える。
シリコン基板12は、n型単結晶シリコン基板である。シリコン基板12の厚さは、例えば、100〜300μmである。シリコン基板12の比抵抗は、例えば、0.1〜10.0Ω・cmである。
シリコン基板12の受光面には、テクスチャ構造32が形成されている。これにより、シリコン基板12に入射した光を閉じ込めて、光の利用効率を高めることができる。
シリコン基板12の面方位は(100)が望ましい。これにより、テクスチャ構造32の形成が容易になる。
シリコン基板12の受光面は、真性非晶質半導体層26で覆われている。真性非晶質半導体層26は、例えば、i型アモルファスシリコン(a‐Si)からなる。真性非晶質半導体層26の厚みは、例えば、2〜25nmである。
真性非晶質半導体層26は、n型非晶質半導体層28で覆われている。n型非晶質半導体層28は、例えば、n型不純物(例えば、リン)を含むa‐Siからなる。n型非晶質半導体層28の厚みは、例えば、2〜50nmである。
n型非晶質半導体層28は、反射防止膜30で覆われている。反射防止膜30は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン及び酸窒化シリコンの何れかからなる。反射防止膜30は、n型非晶質半導体層28の表面のパッシベーションを考慮すると、好ましくは、窒化シリコン又は酸窒化シリコンからなる。反射防止膜30の厚みは、例えば、80〜300nmである。
シリコン基板12の裏面は、真性非晶質半導体層14、16で覆われている。
真性非晶質半導体層14,16は、例えば、i型a‐Siからなる。真性非晶質半導体層14は、シリコン基板12の裏面の一部に形成されている。真性非晶質半導体層16は、シリコン基板12の面内方向において、真性非晶質半導体層14が形成された領域に隣接して形成されている。つまり、真性非晶質半導体層14、16は、シリコン基板12の裏面の全体に形成されている。真性非晶質半導体層14、16の厚みは、例えば、2〜10nmである。
n型非晶質半導体層18は、n型不純物(例えば、リン)を含むa‐Siからなる。n型非晶質半導体層18は、真性非晶質半導体層14に接して形成されている。n型非晶質半導体層18の厚さは、例えば、2〜50nmである。
p型非晶質半導体層20は、p型不純物(例えば、ボロン)を含むa‐Siからなる。p型非晶質半導体層20は、真性非晶質半導体層16に接して形成されている。p型非晶質半導体層20の厚さは、例えば、2〜50nmである。
電極22は、n型非晶質半導体層18及び密着層42に接して形成されている。これにより、電極22がn型非晶質半導体層18に対して電気的に接続されている。電極22は、銀(Ag)からなる。電極22の厚みは、例えば、100〜1000nmである。
電極24は、p型非晶質半導体層20及び密着層46に接して形成されている。これにより、電極24がp型非晶質半導体層20に対して電気的に接続されている。電極24は、銀(Ag)からなる。電極24の厚みは、例えば、100〜1000nmである。
図2を参照しながら、電極22及び電極24について説明する。
電極22は、電極部34と、複数の電極部36とを含む。電極部34は、第1方向(図2の横方向)に一定の幅で延びており、平面視で横長の長方形状を有する。電極部36は、第1方向に直交する第2方向(図2の縦方向)に一定の幅で延びており、平面視で縦長の長方形状を有する。電極部36は、第2方向における電極部34の端縁から第2方向に延びている。複数の電極部36は、第1方向に等間隔に配置されている。
電極24は、電極部38と、複数の電極部40とを含む。電極部38は、第1方向(図2の横方向)に一定の幅で延びており、平面視で横長の長方形状を有する。電極部38は、電極部34と平行である。電極部40は、第1方向に直交する第2方向(図2の縦方向)に一定の幅で延びており、平面視で縦長の長方形状を有する。電極部40は、電極部36と平行である。電極部40は、第1方向において、電極部36と交互に配置されている。電極部40は、電極部38において第1方向に延びる端縁のうち、電極部34に近いほうの端縁から電極部34に向かって延びている。複数の電極部40は、第1方向に等間隔に配置されている。
電極22は、複数(本実施形態では、10個)の角部22Aを含む。具体的には、電極部34は、2つの角部22Aを含む。各電極部36は、2つの角部22Aを含む。
角部22Aは、第1方向に延びる端縁の一部と、第2方向に延びる端縁の一部と、第1方向に延びる端縁の一部と第2方向に延びる端縁の一部とによって形成される頂点とを含む。角部22Aの頂点は、平面視で尖っている。電極部34が有する角部22Aは、電極部34の面内方向で内側から外側に向かって幅が狭くなっている部分である。電極部36が有する角部22Aは、電極部36の面内方向で内側から外側に向かって幅が狭くなっている部分である。
角部22Aとn型非晶質半導体層18との間には、密着層42が配置されている。密着層42は、角部22Aをn型非晶質半導体層18から剥がれ難くする。密着層42の厚みは、例えば、10〜500nmである。
密着層42が薄すぎると、密着層42の厚みが不均一であった場合に、局所的に密着層42が形成されないことがある。そのため、密着層42の厚みは、10nm以上であることが好ましい。
密着層42が厚すぎると、密着層42を形成するための時間が多くなる。そのため、密着層42の厚みは、500nm以下であることが好ましい。
なお、密着層42が所望の効果を発揮するのであれば、密着層42の厚みは、上記の範囲に限定されない。
密着層42は、銀よりもn型非晶質半導体層18との接着性に優れ、且つ、n型非晶質半導体層18よりも銀との接着性に優れるものであれば、特に限定されない。密着層42は、例えば、絶縁膜であってもよいし、導電膜であってもよい。絶縁膜は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜である。導電膜は、例えば、インジウム酸化錫(ITO)等からなる透明導電膜であってもよいし、チタン(Ti)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)等の金属膜であってもよい。密着層42が導電膜である場合には、密着層42が実質的に電極としても機能する。
電極24は、複数(本実施形態では、10個)の角部24Aを含む。具体的には、電極部38は、4つの角部24Aを含む。各電極部40は、2つの角部24Aを含む。
角部24Aは、第1方向に延びる端縁の一部と、第2方向に延びる端縁の一部と、第1方向に延びる端縁の一部と第2方向に延びる端縁の一部とによって形成される頂点とを含む。角部24Aの頂点は、平面視で尖っている。電極部38が有する角部24Aは、電極部38の面内方向で内側から外側に向かって幅が狭くなっている部分である。電極部40が有する角部24Aは、電極部40の面内方向で内側から外側に向かって幅が狭くなっている部分である。
角部24Aとp型非晶質半導体層20との間には、密着層46が配置されている。密着層46は、角部24Aをp型非晶質半導体層20から剥がれ難くする。密着層46の厚みは、例えば、10〜500nmである。
密着層46の厚み及び材料は、密着層42の厚み及び材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。密着層46の厚み及び材料が密着層42の厚み及び材料と同じである場合には、密着層46及び密着層42を同じ工程で形成することができる。
密着層46は、銀よりもp型非晶質半導体層20との接着性に優れ、且つ、p型非晶質半導体層20よりも銀との接着性に優れるものであれば、特に限定されない。密着層46は、例えば、絶縁膜であってもよいし、導電膜であってもよい。絶縁膜は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜である。導電膜は、例えば、インジウム酸化錫(ITO)等からなる透明導電膜であってもよいし、チタン(Ti)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)等の金属膜であってもよい。密着層46が導電膜である場合には、密着層46が実質的に電極としても機能する。
[光電変換素子の製造方法]
図3A〜図3Fを参照しながら、光電変換素子10の製造方法について説明する。
先ず、図3Aに示すように、受光面の全体にテクスチャ構造32を有するシリコン基板12を準備する。具体的には、以下のとおりである。
先ず、シリコンのインゴットをスライスして、シリコン基板を切り出す。続いて、切り出したシリコン基板をアルカリ溶液でエッチングし、所定の厚みを有するシリコン基板を得る。
続いて、スパッタリング等により、シリコン基板の裏面にシリコン酸化膜を形成する。この状態で、シリコン基板をウェットエッチングする。これにより、受光面の全体にテクスチャ構造32が形成される。
受光面の全体にテクスチャ構造32が形成された状態で、シリコン基板12の裏面に形成されているシリコン酸化膜をウェットエッチングにより除去する。これにより、目的とするシリコン基板12が得られる。
続いて、図3Bに示すように、シリコン基板12の受光面に真性非晶質半導体層26及びn型非晶質半導体層28を順次形成する。真性非晶質半導体層26及びn型非晶質半導体層28は、例えば、プラズマCVD法により形成することができる。
続いて、図3Cに示すように、シリコン基板12の裏面の一部に真性非晶質半導体層16及びp型非晶質半導体層20を形成し、且つ、シリコン基板12の裏面のうち、真性非晶質半導体層16及びp型非晶質半導体層20で覆われていない領域に、真性非晶質半導体層14及びn型非晶質半導体層18を形成する。具体的には、以下のとおりである。
先ず、シリコン基板12の裏面の全体に、真性非晶質半導体層及びp型非晶質半導体層を順次形成する。真性非晶質半導体層及びp型非晶質半導体層は、例えば、プラズマCVD法により形成することができる。続いて、フォトリソグラフィ法により、真性非晶質半導体層及びp型非晶質半導体層をパターニングする。これにより、シリコン基板12の裏面の一部が真性非晶質半導体層16及びp型非晶質半導体層20で覆われる。
続いて、シリコン基板12の裏面と、p型非晶質半導体層20上に形成された上記パターニングのマスクとを覆う真性非晶質半導体層及びn型非晶質半導体層を順次形成する。真性非晶質半導体層及びn型非晶質半導体層は、例えば、プラズマCVD法により形成することができる。続いて、上記マスクを除去する。これにより、シリコン基板12の裏面のうち、真性非晶質半導体層16及びp型非晶質半導体層20で覆われていない領域に、真性非晶質半導体層14及びn型非晶質半導体層18が形成される。
続いて、図3Dに示すように、n型非晶質半導体層28上に反射防止膜30を形成する。反射防止膜30は、例えば、プラズマCVD法により形成できる。
続いて、図3Eに示すように、n型非晶質半導体層18上に密着層42を形成し、p型非晶質半導体層20上に密着層46を形成する。具体的には、以下のとおりである。なお、以下の説明では、密着層42、46が透明導電膜(例えば、インジウム酸化錫膜)である場合について説明する。
先ず、n型非晶質半導体層18及びp型非晶質半導体層20を覆う透明導電膜を形成する。透明導電膜は、例えば、スパッタリング等によって形成できる。
続いて、フォトリソグラフィ法により、透明導電膜をパターニングする。これにより、密着層42、46が形成される。
続いて、図3Fに示すように、電極22、24を形成する。具体的には、以下のとおりである。
先ず、n型非晶質半導体層18、p型非晶質半導体層20及び密着層42、46を覆う金属膜を形成する。金属膜は、銀からなる。金属膜は、スパッタリングや蒸着等によって形成される。
続いて、フォトリソグラフィ法により、金属膜をパターニングする。これにより、電極22、24が形成され、目的とする光電変換素子10が得られる。
光電変換素子10において、銀からなる電極22、24は、塗布した銀ペーストを焼成することで形成されていない。この場合、電極22、24は、銀ペーストに含まれるガラス成分等を含んでいない。そのため、電極22、24の接触抵抗を低くすることができる。その結果、FFが向上する。
ここで、光電変換素子10においては、電極22の角部22Aとn型非晶質半導体層18との間に密着層42が形成されており、電極24の角部24Aとp型非晶質半導体層20との間に密着層46が形成されている。そのため、電極22、24が剥がれ難くなる。
光電変換素子10においては、密着層42と密着層46とが形成されているが、例えば、密着層46だけが形成されていてもよい。その理由は、以下のとおりである。
本発明者等の研究によれば、p型非晶質半導体層に接して形成された電極は、n型非晶質半導体層に接して形成された電極よりも剥がれ易い。光電変換素子10においては、p型非晶質半導体層20に接して形成された電極24の角部24Aとp型非晶質半導体層20との間に密着層46が形成されている。そのため、p型非晶質半導体層20に接して形成された電極24が剥がれ難くなる。つまり、光電変換素子10においては、少数キャリアを収集する電極が剥がれ難くなる。そのため、変換効率の低下を抑制できる。
[第1の実施の形態の応用例]
図4を参照しながら、第1の実施の形態の応用例に係る光電変換素子10Aについて説明する。光電変換素子10Aでは、第1の実施の形態と比べて、電極が異なる。具体的には、電極22の代わりに、電極23が配置されている。電極24の代わりに、電極25が配置されている。電極23は、電極22と比べて、電極部34を備えていない。つまり、電極23は、複数の電極部36からなる。電極25は、電極24と比べて、電極部38を備えていない。つまり、電極25は、複数の電極部40からなる。
各電極部36は、4つの角部22Aを含む。各角部22Aとn型非晶質半導体層18との間には、密着層42が配置されている。
各電極部40は、4つの角部24Aを含む。各角部24Aとp型非晶質半導体層20との間には、密着層46が配置されている。
このような光電変換素子10Aにおいても、第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
[第2の実施の形態]
図5を参照しながら、本発明の第2の実施の形態による光電変換素子50について説明する。光電変換素子50は、シリコン基板52と、反射防止膜54と、パッシベーション膜56と、パッシベーション膜58と、電極60と、電極62と、密着層70とを備える。
シリコン基板52は、n型の単結晶シリコン基板である。シリコン基板52の厚さや比抵抗等は、シリコン基板12と同じである。シリコン基板52の受光面には、テクスチャ構造68が形成されている。
シリコン基板52は、n型拡散領域64と、p型拡散領域66とを含む。
n型拡散領域64は、シリコン基板52の裏面側に形成されている。n型拡散領域64の不純物濃度は、例えば、1×1019cm−3〜1×1020cm−3である。n型拡散領域64の深さ寸法(図5の上下方向の寸法)は、例えば、0.3〜1.0μmである。
p型拡散領域66は、シリコン基板52の裏面側に形成されている。p型拡散領域66の不純物濃度は、例えば、1×1019cm−3〜1×1020cm−3である。p型拡散領域66の深さ寸法(図5の上下方向の寸法)は、例えば、0.3〜1.0μmである。
シリコン基板52の受光面は、反射防止膜54で覆われている。反射防止膜54は、例えば、シリコン窒化膜である。シリコン窒化膜の厚さは、例えば、80〜300nmである。
パッシベーション膜56は、p型拡散領域66に接して形成される。本実施形態では、シリコン基板52の裏面のうち、p型拡散領域66がパッシベーション56で覆われている。パッシベーション膜56は、例えば、シリコン窒化膜やシリコン酸窒化膜である。パッシベーション膜56の厚さは、例えば、5〜100nmである。
パッシベーション膜58は、シリコン基板52及びパッシベーション膜56に接して形成される。パッシベーション膜58は、例えば、シリコン窒化膜やシリコン酸窒化膜である。パッシベーション膜58の厚さは、例えば、10〜200nmである。
電極60は、コンタクトホール72を介して、n型拡散領域64に接している。コンタクトホール72は、パッシベーション膜58を貫通して形成されている。電極60は、銀からなる。電極60は、例えば、図4に示す電極部40のように、平面視で長方形状を有する。
電極62は、コンタクトホール74を介して、p型拡散領域66に接している。コンタクトホール74は、パッシベーション58及びパッシベーション膜56を貫通して形成されている。電極62は、銀からなる。電極62は、例えば、図4に示す電極部36のように、平面視で長方形状を有する。
密着層70は、電極60の角部60Aとパッシベーション膜58との間、及び、電極62の角部62Aとパッシベーション膜58との間に配置されている。密着層70は、角部60A、62Aをパッシベーション膜58から剥がれ難くする。密着層70の厚みは、例えば、10〜500nmである。角部60Aは、電極60の面内方向で内側から外側に向かって幅が狭くなっている部分である。角部62Aは、電極62の面内方向で内側から外側に向かって幅が狭くなっている部分である。
密着層70は、銀よりもパッシベーション膜58との接着性に優れ、且つ、パッシベーション膜58よりも銀との接着性に優れるものであれば、特に限定されない。密着層70は、例えば、絶縁膜であってもよいし、導電膜であってもよい。絶縁膜は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜である。導電膜である。導電膜は、例えば、インジウム酸化錫(ITO)等からなる透明導電膜であってもよいし、チタン(Ti)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)等の金属膜であってもよい。密着層70が導電膜である場合には、密着層70が実質的に電極としても機能する。
[光電変換素子の製造方法]
続いて、図6A〜図6Fを参照しながら、光電変換素子50の製造方法について説明する。
先ず、図6Aに示すように、受光面の全体にテクスチャ構造68を有するシリコン基板52を準備する。具体的には、以下のとおりである。
最初に、所定の厚みを有するシリコン基板を、第1の実施の形態で説明した方法により準備する。続いて、スパッタリング等により、シリコン基板の裏面にシリコン酸化膜を形成する。この状態で、シリコン基板をウェットエッチングする。これにより、受光面の全体にテクスチャ構造68が形成される。
続いて、図6Bに示すように、シリコン基板52の裏面側にn型拡散領域64とp型拡散領域66とを形成する。具体的には、以下のとおりである。
先ず、シリコン基板52の受光面及び裏面に、例えば、スパッタリングやCVDにより、シリコン酸化膜を形成する。続いて、シリコン基板52の裏面に形成されたシリコン酸化膜にエッチングペーストを印刷する。エッチングペーストを印刷する方法としては、例えば、スクリーン印刷法等がある。続いて、エッチングペーストが印刷されたシリコン基板52を加熱する。これにより、シリコン基板52の裏面に形成されたシリコン酸化膜のうち、エッチングペーストの印刷された部分のみが除去される。その後、シリコン基板52を水中に浸し、超音波洗浄等を施す。これにより、エッチングペーストが除去される。
続いて、p型不純物としてのボロンを気相拡散させる。これにより、シリコン基板52のうち、シリコン酸化膜で覆われていない部分にp型拡散領域66が形成される。その後、シリコン基板52の受光面及び裏面に形成されたシリコン酸化膜、及び、ボロンを気相拡散することで形成されたBSG(Boron Silicate Glass)膜等をフッ化水素水溶液等を用いて除去する。このときのフッ化水素水溶液としては、例えば、5.2重量%のフッ化水素酸水溶液を用いることができる。
続いて、シリコン基板52の受光面及び裏面にシリコン酸化膜を形成する。続いて、シリコン基板52の裏面に形成されたシリコン酸化膜をエッチングする。エッチングの方法としては、例えば、エッチングペーストを用いる方法がある。
続いて、n型不純物としてのリンを気相拡散させる。これにより、シリコン基板52のうち、シリコン酸化膜で覆われていない部分にn型拡散領域64が形成される。その後、シリコン基板52の受光面及び裏面に形成されたシリコン酸化膜、及び、リンを気相拡散することで形成されたPSG(Phosphorus Silicate Glass)膜等を、フッ化水素水溶液等を用いて除去する。このときのフッ化水素水溶液としては、例えば、5.2重量%のフッ化水素酸水溶液を用いることができる。
続いて、図6Cに示すように、シリコン基板52の裏面のうち、p型拡散領域66が形成された領域をパッシベーション膜56で覆い、それ以外の領域をパッシベーション膜58で覆う。具体的には、以下のとおりである。
先ず、シリコン基板52に対して、熱酸化処理を行う。これにより、シリコン基板52の受光面及び裏面にシリコン酸化膜が形成される。続いて、シリコン基板52の裏面に形成されたシリコン酸化膜をエッチングする。エッチングの方法としては、例えば、エッチングペーストを用いる方法がある。シリコン酸化膜をエッチングすることにより、シリコン酸化膜のうち、p型拡散領域66に接する部分のみが残る。
続いて、シリコン基板52の裏面、及び、パッシベーション膜56を覆うパッシベーション膜58を形成する。パッシベーション膜58は、例えば、プラズマCVD法により形成できる。
続いて、シリコン基板52の受光面に形成されたシリコン酸化膜を、フッ化水素水溶液等を用いて除去する。これにより、図6Cに示すように、シリコン基板52の受光面が露出され、且つ、シリコン基板52の裏面がパッシベーション膜56、58で覆われる。
続いて、図6Dに示すように、シリコン基板52の受光面に反射防止膜54を形成する。反射防止膜54は、例えば、プラズマCVD法等で形成できる。
続いて、図6Eに示すように、パッシベーション膜58上に密着層70を形成する。具体的には、以下のとおりである。なお、以下の説明では、密着層70が透明導電膜(例えば、インジウム酸化錫膜)である場合について説明する。
先ず、パッシベーション膜58を覆う透明導電膜を形成する。透明導電膜は、例えば、スパッタリング等によって形成できる。
続いて、フォトリソグラフィ法により、透明導電膜をパターニングする。これにより、密着層70が形成される。
続いて、図6Fに示すように、電極60、62を形成する。具体的には、以下のとおりである。
先ず、パッシベーション膜56、58の一部をエッチングにより除去して、コンタクトホール72、74を形成する。エッチングの方法としては、例えば、エッチングペーストを用いる方法等がある。
続いて、パッシベーション膜58及び密着層70上に金属膜を形成する。金属膜は、コンタクトホール72、74内にも形成される。金属膜は、密着層70を覆う。金属膜は、銀からなる。金属膜は、スパッタリングや蒸着等によって形成される。
続いて、フォトリソグラフィ法により、金属膜をパターニングする。これにより、電極60、62が形成され、目的とする光電変換素子50が得られる。
このような光電変換素子50においても、第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
[第3の実施の形態]
図7を参照しながら、本発明の第3の実施の形態による光電変換素子80について説明する。光電変換素子80は、シリコン基板12と、真性非晶質半導体層82と、n型非晶質半導体層84と、電極86と、密着層88と、真性非晶質半導体層90と、p型非晶質半導体層92と、透明導電膜94と、電極96とを備える。
真性非晶質半導体層90は、シリコン基板12の受光面を覆う。真性非晶質半導体層90は、例えば、i型a‐Siからなる。真性非晶質半導体層90の厚みは、例えば、2〜10nmである。
p型非晶質半導体層92は、例えば、p型不純物(例えば、ボロン)を含むa‐Siからなる。p型非晶質半導体層92は、真性非晶質半導体層90を覆う。p型非晶質半導体層92の厚さは、例えば、2〜50nmである。
透明導電膜94は、例えば、インジウム酸化錫(ITO)からなる。透明導電膜94は、p型非晶質半導体層92を覆う。透明導電膜94の厚みは、例えば、10〜100nmである。
電極96は、例えば、銀を含む。電極96は、透明導電膜94に接して形成されている。電極96の厚みは、例えば、1〜50μmである。
真性非晶質半導体層82は、シリコン基板12の裏面を覆う。真性非晶質半導体層82は、例えば、i型a‐Siからなる。真性非晶質半導体層82の厚みは、例えば、2〜10nmである。
n型非晶質半導体層84は、n型不純物(例えば、リン)を含むa‐Siからなる。n型非晶質半導体層84は、真性非晶質半導体層82を覆う。n型非晶質半導体層84の厚さは、例えば、2〜50nmである。
電極86は、n型非晶質半導体層84及び密着層88に接して形成されている。これにより、電極86がn型非晶質半導体層84に対して電気的に接続されている。電極86は、銀(Ag)からなる。電極86の厚みは、例えば、100〜1000nmである。
ここで、電極86は、図8に示すように、4つの角部86Aを含む。各角部86Aは、第1方向(図8中の上下方向)に延びる端縁の一部と、第1方向に垂直な第2方向(図8中の左右方向)に延びる端縁の一部と、第1方向に延びる端縁の一部と第2方向に延びる端縁の一部とによって形成される頂点とを含む。角部86Aの頂点は、平面視で尖っている。各角部86Aは、電極86の面内方向で内側から外側に向かって幅が狭くなっている部分である。
各角部86Aとn型非晶質半導体層84との間には、図7及び図8に示すように、密着層88が配置されている。密着層88は、角部86Aをn型非晶質半導体層84から剥がれ難くする。密着層88の厚みは、例えば、10〜500nmである。
密着層88は、銀よりもn型非晶質半導体層84との接着性に優れ、且つ、n型非晶質半導体層84よりも銀との接着性に優れるものであれば、特に限定されない。密着層88は、例えば、絶縁膜であってもよいし、導電膜であってもよい。絶縁膜は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜である。導電膜は、例えば、インジウム酸化錫(ITO)等からなる透明導電膜であってもよいし、チタン(Ti)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)等の金属膜であってもよい。密着層88が導電膜である場合には、密着層88が実質的に電極としても機能する。
[光電変換素子の製造方法]
図9A〜図9Eを参照しながら、光電変換素子80の製造方法について説明する。
先ず、図9Aに示すように、シリコン基板12を準備する。シリコン基板12は、第1の実施の形態で説明した方法によって得られる。
続いて、図9Bに示すように、シリコン基板12の受光面に真性非晶質半導体層90及びp型非晶質半導体層92を順次形成し、且つ、シリコン基板12の裏面に真性非晶質半導体層82及びn型非晶質半導体層84を順次形成する。具体的には、以下のとおりである。
先ず、シリコン基板12の受光面に、真性非晶質半導体層90及びp型非晶質半導体層92を順次形成する。真性非晶質半導体層90及びp型非晶質半導体層92は、例えば、プラズマCVD法により形成することができる。
続いて、シリコン基板12の裏面に、真性非晶質半導体層82及びn型非晶質半導体層84を順次形成する。真性非晶質半導体層82及びn型非晶質半導体層84は、例えば、プラズマCVD法により形成することができる。
続いて、図9Cに示すように、p型非晶質半導体層92上に透明導電膜94を形成する。透明導電膜94は、例えば、スパッタリング等で形成できる。
続いて、図9Dに示すように、n型非晶質半導体層84上に密着層88を形成する。具体的には、以下のとおりである。なお、以下では、密着層88が透明導電膜(例えば、インジウム酸化錫膜)である場合について説明する。
先ず、n型非晶質半導体層84を覆う透明導電膜を形成する。透明導電膜は、例えば、スパッタリング等によって形成できる。
続いて、フォトリソグラフィ法により、透明導電膜をパターニングする。これにより、密着層88が形成される。
続いて、図9Eに示すように、電極86及び電極96を形成する。具体的には、以下のとおりである。
電極86は、スパッタリングや蒸着等により、n型非晶質半導体層84及び密着層88上に銀を堆積することで形成される。電極96は、例えば、銀ペーストを印刷し、焼成することで形成される。これにより、目的とする光電変換素子80が得られる。
このような光電変換素子80においても、第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
[第3の実施の形態の応用例1]
図10を参照しながら、第3の実施の形態の応用例1に係る光電変換素子について説明する。応用例1に係る光電変換素子においては、電極86とn型非晶質半導体層84との間には、4つの密着層88だけでなく、複数の密着層98が配置されている。複数の密着層98は、電極86とn型非晶質半導体層84との間において、4つの密着層88が配置された部分とは異なる部分に格子状に配置されている。密着層98は、電極86をn型非晶質半導体層84から剥がれ難くする。密着層98は、銀よりもn型非晶質半導体層84との接着性に優れ、且つ、n型非晶質半導体層84よりも銀との接着性に優れるものであれば、特に限定されない。密着層98の厚みや材料は、例えば、密着層88の厚みや材料と同じであってもよいし、異なっていても良い。密着層98は、例えば、密着層88と同じ工程で形成することができる。
第3の実施の形態の応用例1に係る光電変換素子においては、電極86とn型非晶質半導体層84との間に、複数の密着層98が配置されているので、電極86がn型非晶質半導体層84からさらに剥がれ難くなる。
[第3の実施の形態の応用例2]
第3の実施の形態では、受光面側にp型非晶質半導体層92が形成され、裏面側にn型非晶質半導体層84が形成されていたが、例えば、受光面側にn型非晶質半導体層が形成され、裏面側にp型非晶質半導体層が形成されていてもよい。
[第4の実施の形態]
図11を参照しながら、本発明の第4の実施の形態による光電変換素子100について説明する。光電変換素子100は、シリコン基板102と、電極104と、パッシベーション膜106と、電極108と、パッシベーション膜110と、密着層116とを備える。
シリコン基板102は、単結晶シリコン基板であってもよいし、多結晶シリコン基板であってもよい。シリコン基板102が単結晶シリコン基板である場合には、変換効率を向上させやすい。シリコン基板102が多結晶シリコン基板である場合には、製造コストを抑えることができる。シリコン基板102の導電型は、n型であってもよいし、p型であってもよい。本実施形態では、n型単結晶シリコン基板が採用されている。シリコン基板102の厚さは、例えば、100〜300μmである。シリコン基板12の比抵抗は、例えば、0.1〜10.0Ω・cmである。
シリコン基板102は、p型拡散領域112を含む。p型拡散領域112は、シリコン基板102の受光面側に形成されている。p型拡散領域112の表面不純物濃度は、例えば、1×1019cm−3以上である。p型拡散領域112のシート抵抗は、例えば、20〜50Ω/□である。p型拡散領域112の深さ寸法(図11の上下方向の寸法)は、例えば、0.3〜0.7μmである。
シリコン基板102は、高濃度領域114を含む。高濃度領域114は、シリコン基板102の裏面側に形成されている。高濃度領域114には、シリコン基板102と同じ導電型を有する不純物が高濃度にドーピングされている。高濃度領域114は、BSF(Back Surface Field)として機能する。高濃度領域114の深さ寸法は、例えば、0.3〜5.0μmである。高濃度領域114の不純物濃度は、例えば、1×1020cm−3である。
シリコン基板102の受光面には、テクスチャ構造122が形成されている。
パッシベーション膜106は、シリコン基板102の受光面を覆う。パッシベーション膜106は、例えば、熱酸化膜である。パッシベーション膜106の厚みは、例えば、50〜100nmである。パッシベーション膜106は、反射防止膜としても機能する。
パッシベーション膜110は、シリコン基板102の裏面を覆う。パッシベーション膜110は、例えば、熱酸化膜である。パッシベーション膜110の膜厚は、例えば、50〜100nmである。
電極104は、例えば、銀を含む導電性材料からなる。電極104は、パッシベーション膜106に形成されたコンタクトホール118を通じて、p型拡散領域112に接続されている。
電極108は、パッシベーション膜110及び密着層116を覆う。電極108は、銀からなる。電極108は、例えば、図8に示す電極86のように、平面視で正方形状を有する。電極108は、パッシベーション膜110に形成されたコンタクトホール120を通じて、高濃度領域114に接続されている。このことから明らかなように、本実施形態では、BSR(Back Surface Reflector)構造が採用されている。
密着層116は、電極108の角部108Aとパッシベーション膜110との間に配置されている。密着層116は、角部108Aをパッシベーション膜110から剥がれ難くする。密着層116の厚みは、例えば、10〜500nmである。角部108Aは、電極108の面内方向で内側から外側に向かって幅が狭くなっている部分である。
密着層116は、銀よりもパッシベーション膜110との接着性に優れ、且つ、パッシベーション膜110よりも銀との接着性に優れるものであれば、特に限定されない。密着層116は、例えば、絶縁膜であってもよいし、導電膜であってもよい。絶縁膜は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜である。導電膜は、例えば、インジウム酸化錫(ITO)等からなる透明導電膜であってもよいし、チタン(Ti)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)等の金属膜であってもよい。密着層116が導電膜である場合には、密着層116が実質的に電極としても機能する。
[光電変換素子の製造方法]
図12A〜図12Eを参照しながら、光電変換素子100の製造方法について説明する。
先ず、図12Aに示すように、受光面にテクスチャ構造122が形成されたシリコン基板102を準備する。テクスチャ構造122は、第1の実施の形態で説明した方法によって形成される。
続いて、図12Bに示すように、シリコン基板102の受光面側にp型拡散領域112を形成し、且つ、シリコン基板102の裏面側に高濃度領域114を形成する。p型拡散領域112は、例えば、シリコン基板102の受光面からp型不純物を熱拡散させることによって形成される。p型不純物の拡散源は、例えば、BSG(Boron Silicate Glass)である。高濃度領域114は、例えば、シリコン基板102の裏面からn型不純物を熱拡散させることによって形成される。n型不純物の拡散源は、例えば、PSG(Phosphorus Silicate Glass)である。
続いて、図12Cに示すように、シリコン基板102の受光面にパッシベーション膜106を形成し、且つ、シリコン基板102の裏面にパッシベーション膜110を形成する。パッシベーション膜106、110は、熱酸化によって形成される。熱酸化は、酸素雰囲気中で酸化を行うドライ酸化であってもよいし、水蒸気雰囲気中で酸化を行うウェット酸化であってもよい。
続いて、図12Dに示すように、パッシベーション膜110上に密着層116を形成する。具体的には、以下のとおりである。なお、以下では、密着層116が透明導電膜(例えば、インジウム酸化錫膜)である場合について説明する。
先ず、パッシベーション膜110を覆う透明導電膜を形成する。透明導電膜は、例えば、スパッタリング等によって形成できる。
続いて、フォトリソグラフィ法により、透明導電膜をパターニングする。これにより、密着層116が形成される。
続いて、図12Eに示すように、電極104及び電極108を形成する。具体的には、以下のとおりである。
パッシベーション膜106にコンタクトホール118を形成する。コンタクトホール118は、例えば、フォトリソグラフィ法によって形成される。続いて、コンタクトホール118が形成された位置に銀ペーストを印刷し、焼成する。これにより、電極104が形成される。
パッシベーション膜110にコンタクトホール120を形成する。コンタクトホール120は、例えば、フォトリソグラフィ法によって形成される。続いて、スパッタリングや蒸着等により、パッシベーション膜110上に銀を堆積する。これにより、電極108が形成される。
このようにして、電極104及び電極108が形成されることにより、目的とする光電変換素子100が得られる。
このような光電変換素子100においても、第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
[密着部の応用例]
上記第1〜第4の実施の形態では、密着部としての密着層を備える場合について説明したが、密着部は密着層に限定されない。以下、図13及び図14を参照しながら、密着部の応用例について説明する。なお、図13及び図14には、第3の実施の形態の光電変換素子80の変形例を示しているが、図13及び図14に示す密着部の応用例は、第1、第2及び第4の実施の形態に係る光電変換素子10、50、100に対しても、同様に、適用することができる。
[第5の実施の形態]
図13を参照しながら、本発明の第5の実施の形態による光電変換素子130について説明する。光電変換素子130では、光電変換素子80と比べて、電極が異なっている。また、密着層88の代わりに、被覆層132が形成されている。
光電変換素子130は、電極86の代わりに、電極87を備える。電極87は、電極86と比べて、一回り小さい。電極87は、例えば、n型非晶質半導体層84の全面を覆う金属膜を形成し、当該金属膜をパターニングすることで形成される。電極87は、例えば、図8に示す電極86のように、平面視で正方形状を有する。
被覆層132は、電極87の角部87A及びn型非晶質半導体層84の一部を覆う。被覆層132は、角部87Aをn型非晶質半導体層84から剥がれ難くする。被覆層132の厚みは、例えば、10〜500nmである。角部87Aは、電極87の面内方向で内側から外側に向かって幅が狭くなっている部分である。
被覆層132は、銀よりもn型非晶質半導体層84との接着性に優れるものであれば、特に限定されない。被覆層132は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びシリコン酸窒化膜等の絶縁膜である。なお、被覆層132は、導電膜であってもよい。導電膜は、例えば、インジウム酸化錫(ITO)等からなる透明導電膜であってもよいし、チタン(Ti)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)等の金属膜であってもよい。被覆層132が導電膜である場合には、被覆層132が実質的に電極としても機能する。
被覆層132は、例えば、電極87及びn型非晶質半導体層84の一部を覆う絶縁膜を形成し、当該絶縁膜をパターニングすることで形成できる。
このような光電変換素子130であっても、第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
[第6の実施の形態]
図14を参照しながら、本発明の第6の実施の形態による光電変換素子140について説明する。光電変換素子140では、光電変換素子80と比べて、密着層88が形成されていない。その代わりに、凹凸142がシリコン基板12に形成されている。
凹凸142は、シリコン基板12の角部に形成されている。凹凸142は、例えば、テクスチャ構造32と同時に形成することができる。凹凸142の高さは、例えば、0.5〜10μmである。凹凸142の高さは、テクスチャ構造132が有する凹凸の高さと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
凹凸142がシリコン基板12に形成されていることにより、凹凸142に対応した凹凸が、真性非晶質半導体層82の角部と、n型非晶質半導体層84の角部と、電極86の角部86Aに形成される。これにより、接触面積が大きくなり、角部86Aがn型非晶質半導体層84から剥がれ難くなる。
[電極の角部の応用例]
電極の角部150Aの頂点は、例えば、図15Aに示すように、円弧状に湾曲する部分を有していてもよい。電極の角部150Bの頂点を形成する2つの端縁が為す角度は、例えば、図15Bに示すように、鋭角であってもよい。電極の角部150Cの頂点は、例えば、図15Cに示すように、平面視で放物線状であってもよい。
以下、本発明の実施の形態による光電変換素子を備える光電変換モジュール及び太陽光発電システムについて説明する。
本発明の実施の形態による光電変換素子は、高い変換効率を有する。そのため、本発明の実施の形態による光電変換素子を備える光電変換モジュール及び太陽光発電システムも高い変換効率を有することができる。
[光電変換モジュール]
図16は、本実施形態に係る光電変換モジュールの構成の一例を示す概略図である。図16を参照して光電変換モジュール1000は、複数の光電変換素子1001と、カバー1002と、出力端子1013,1014とを備える。
複数の光電変換素子1001はアレイ状に配列され直列に接続されている。図16では、光電変換素子1001を直列に接続する配列を図示しているが、配列および接続方式はこれに限定されず、並列に接続して配列してもよいし、直列と並列とを組み合わせた配列としてもよい。複数の光電変換素子1001の各々には、本発明の実施の形態による光電変換素子が用いられる。なお、光電変換モジュール1000に含まれる光電変換素子1001の数は、2以上の任意の整数とすることができる。
カバー1002は、耐候性のカバーから構成されており、複数の光電変換素子1001を覆う。
出力端子1013は、直列に接続された複数の光電変換素子1001の一方端に配置される光電変換素子1001に接続される。
出力端子1014は、直列に接続された複数の光電変換素子1001の他方端に配置される光電変換素子1001に接続される。
[太陽光発電システム]
図17は、本実施形態に係る太陽光発電システムの構成の一例を示す概略図である。図17を参照して、太陽光発電システム2000は、光電変換モジュールアレイ2001と、接続箱2002と、パワーコンディショナ2003と、分電盤2004と、電力メータ2005とを備える。後述するように光電変換モジュールアレイ2001は複数の光電変換モジュール1000から構成される。
太陽光発電システム2000には、一般に「ホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS:Home Energy Management System)」と呼ばれる機能を付加することが
できる。これにより部屋ごとの電力使用状況を監視しつつ個別の家単位で節電に貢献することもできる。
接続箱2002は、光電変換モジュールアレイ2001に接続される。パワーコンディショナ2003は、接続箱2002に接続される。分電盤2004は、パワーコンディショナ2003及び電気機器類2011に接続される。電力メータ2005は、分電盤2004及び系統連系に接続される。
続いて、太陽光発電システム2000の動作を説明する。
光電変換モジュールアレイ2001は、太陽光を電気に変換して直流電力を発電し、直流電力を接続箱2002へ供給する。
接続箱2002は、光電変換モジュールアレイ2001が発電した直流電力を受け、直流電力をパワーコンディショナ2003へ供給する。
パワーコンディショナ2003は、接続箱2002から受けた直流電力を交流電力に変換して分電盤2004へ供給する。あるいは、接続箱2002から受けた直流電力の一部を交流電力に変換せずに、直流電力のままで分電盤2004へ供給してもよい。
分電盤2004は、パワーコンディショナ2003から受けた交流電力及び電力メータ2005を介して受けた商用電力の少なくともいずれかを電気機器類2011へ供給する。分電盤2004は、パワーコンディショナ2003から受けた交流電力が電気機器類2011の消費電力よりも多いとき、パワーコンディショナ2003から受けた交流電力を電気機器類2011へ供給する。分電盤2004は、余った交流電力を、電力メータ2005を介して、系統連系へ供給する。
分電盤2004は、パワーコンディショナ2003から受けた交流電力が電気機器類2011の消費電力よりも少ないとき、系統連系から受けた交流電力及びパワーコンディショナ2003から受けた交流電力を電気機器類2011へ供給する。
電力メータ2005は、系統連系から分電盤2004へ向かう方向の電力を計測するとともに、分電盤2004から系統連系へ向かう方向の電力を計測する。
なお、図17Aに示すように、パワーコンディショナ2003には、蓄電池2100が接続されていても良い。この場合、日照量の変動による出力変動を抑制することができるとともに、日照のない時間帯であっても、蓄電池2100に蓄電された電力を供給することができる。蓄電池2100は、パワーコンディショナ2003に内蔵されていてもよい。
なお、図17Aに示すように、パワーコンディショナ2003に蓄電池2100が接続されている場合(または、蓄電池2100がパワーコンディショナ2003に内蔵されている場合)、パワーコンディショナ2003は、接続箱2002から受けた直流電力の一部または全部を適切に電力変換して、蓄電池2100に蓄電することができる。蓄電池2100に蓄電された電力は、光電変換モジュールの発電量や電気機器類2011の電力消費量の状況に応じて、適宜、パワーコンディショナ2003側に供給され、適切に電力変換されて、分電盤2004へ供給される。
続いて、光電変換モジュールアレイ2001について説明する。
図18は、図17に示す光電変換モジュールアレイ2001の構成の一例を示す概略図である。図18を参照して、光電変換モジュールアレイ2001は、複数の光電変換モジュール1000と出力端子2013,2014とを含む。
複数の光電変換モジュール1000は、アレイ状に配列され直列に接続されている。図18では、光電変換モジュール1000を直列に接続する配列を図示しているが、配列および接続方式はこれに限定されず、並列に接続して配列してもよいし、直列と並列とを組み合わせた配列としてもよい。なお、光電変換モジュールアレイ2001に含まれる光電変換モジュール1000の数は、2以上の任意の整数とすることができる。
出力端子2013は、直列に接続された複数の光電変換モジュール1000の一方端に位置する光電変換モジュール1000に接続される。
出力端子2014は、直列に接続された複数の光電変換モジュール1000の他方端に位置する光電変換モジュール1000に接続される。
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、本実施形態の太陽光発電システムは、本発明の実施の形態による光電変換素子を備える限り、上記の説明に限定されず如何なる構成もとり得るものとする。
[大規模太陽光発電システム]
図19は、太陽光発電システムの構成の他の一例を示す概略図である。図19に示す太陽光発電システムは、図17に示す太陽光発電システムよりも大規模な太陽光発電システムである。図19に示す太陽光発電システムも、本発明の実施の形態による光電変換素子を備える。
図19を参照して、太陽光発電システム4000は、複数のサブシステム4001と、複数のパワーコンディショナ4003と、変圧器4004とを備える。
複数のパワーコンディショナ4003は、それぞれサブシステム4001に接続される。太陽光発電システム4000において、パワーコンディショナ4003及びそれに接続されるサブシステム4001の数は、2以上の任意の整数とすることができる。
変圧器4004は、複数のパワーコンディショナ4003および系統連系に接続される。
複数のサブシステム4001の各々は、複数のモジュールシステム3000から構成される。サブシステム4001内のモジュールシステム3000の数は、2以上の任意の整数とすることができる。
複数のモジュールシステム3000の各々は、複数の光電変換モジュールアレイ2001と、複数の接続箱3002と、集電箱3004とを含む。モジュールシステム3000内の接続箱3002及びそれに接続される光電変換モジュールアレイ2001の数は、2以上の任意の整数とすることができる。
集電箱3004は、複数の接続箱3002に接続される。パワーコンディショナ4003は、サブシステム4001内の複数の集電箱3004に接続される。
なお、図19Aに示すように、パワーコンディショナ4003には、蓄電池4100が接続されていても良い。この場合、日照量の変動による出力変動を抑制することができるとともに、日照のない時間帯であっても、蓄電池4100に蓄積された電力を供給することができる。また、前記蓄電池4100は、パワーコンディショナ4003に内蔵されていても良い。
続いて、太陽光発電システム4000の動作を説明する。
モジュールシステム3000の複数の光電変換モジュールアレイ2001は、太陽光を電気に変換して直流電力を発電し、直流電力を、接続箱3002を介して、集電箱3004へ供給する。サブシステム4001内の複数の集電箱3004は、直流電力をパワーコンディショナ4003へ供給する。複数のパワーコンディショナ4003は、直流電力を交流電力に変換して、交流電力を変圧器4004へ供給する。
なお、図19Aに示すように、パワーコンディショナ4003に蓄電池4100が接続されている場合(または、蓄電池4100がパワーコンディショナ4003に内蔵されている場合)、パワーコンディショナ4003は、集電箱3004から受けた直流電力の一部または全部を適切に電力変換して、蓄電池4100に蓄電することができる。蓄電池4100に蓄電された電力は、サブシステム4001の発電量に応じて、適宜、パワーコンディショナ4003側に供給され、適切に電力変換されて変圧器4004へ供給される。
変圧器4004は、複数のパワーコンディショナ4003から受けた交流電力の電圧レベルを変換して系統連系へ供給する。
なお太陽光発電システム4000は、本発明の実施の形態による光電変換素子を備えるものであればよく、太陽光発電システム4000に含まれる全ての光電変換素子が本発明の実施の形態による光電変換素子でなくてもよい。例えば、あるサブシステム4001に含まれる光電変換素子の全てが本発明の実施の形態による光電変換素子であり、別のサブシステム4001に含まれる光電変換素子の一部もしくは全部が、本発明の実施の形態による光電変換素子でない場合もあり得るものとする。
以上、本発明の実施形態について、詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、上述の実施形態によって、何等、限定されない。