[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の自動運転車1の電子制御回路部10のハードウエア構成例を示すブロック図である。なお、この実施形態の自動運転車1は、電気自動車の場合の例である。ただし、バッテリーは、図1では図示を省略した。
また、この実施形態の自動運転車1は、手動運転モードと、通常自動運転モードと、強制自動運転モードとを備えている。手動運転モードは、自動運転車ではない通常の自動車と同様に、運転者のアクセルペダル操作やブレーキペダル操作、シフトレバー操作及びステアリング操作(ハンドル操作)に応じた走行ができるモードである。
また、通常自動運転モードは、運転者がアクセルペダル操作やブレーキペダル操作、シフトレバー操作及びステアリング操作をしなくても、自動運転車1自身が自動的(自律的)に障害物を回避しながら進路変更をする走行モードであり、運転者による所定の所作により、手動運転モードに自動的に切り替えられるモードである。ここで、運転者による所定の所作とは、運転者の運転操作などの所定の操作と、運転者の後述するタッチパネルなどを通じた操作入力と、運転者による音声入力の所作を含むものである。
そして、強制自動運転モードは、自律的な自動運転を行うことは通常自動運転モードと同一であるが、運転者による所定の所作があっても、手動運転モードに切り替わらないモードである。この強制自動運転モードは、自動運転車による制御により、手動運転モードあるいは通常自動運転モードから切り替えられるものであると共に、後述するように、定められた解除条件に合致する状況になった後に、手動運転モードあるいは通常自動運転モードに切り替えられる。この強制自動運転モードにおいては、運転者の運転操作は無効とされる。また、他のモードから強制自動運転モードへの切替、及び強制自動運転モードの解除についても、運転者の所作は無効とされ、自動運転車自身の制御によるものである。
通常時は、自動運転車1の運転者は、例えば後述するタッチパネル112を通じた所定の操作により、手動運転モードで走行中の自動運転車1を通常自動運転モードに切り替えることができると共に、通常自動運転モードで走行中に、運転者がアクセルペダル操作やブレーキペダル操作、シフトレバー操作又はステアリング操作などの操作をすると、自動的に手動運転モードに戻るように構成されている。
図1に示すように、電子制御回路部10は、コンピュータを搭載して構成されている制御部101に対して、システムバス100を通じて、モータ駆動制御部102、ステアリング駆動制御部103、手動/自動運転モード切替制御部104、手動運転操作検知部105、レーダー群106、カメラ群107、センサ群108、周囲移動体把握部109、現在位置検出部110、表示部111、タッチパネル112、カーナビゲーション(以下、カーナビと略称する)機能部113、画像認識部114、強制自動運転モード切替処理部115、速度検出部116、自車動き解析検出部117、音声入出力部118、時計部119、音声認識部120、のそれぞれが接続されている。
モータ駆動制御部102には、モータ駆動部121が接続されている。ステアリング駆動制御部103には、ステアリング駆動部122が接続されている。また、カーナビ機能部113には、カーナビ用データベース123が接続されている。また、画像認識部114には、道路標識等データベース124が接続されている。さらに、強制自動運転モード切替処理部115には、強制自動運転切替条件記憶部125が接続されている。そして、音声入出力部118には、スピーカ126及びマイクロホン127が接続されている。そして、音声認識部120には、音声情報記憶部128が接続されている。
モータ駆動制御部102は、制御部101の制御の下に、この実施形態の電気自動車で構成される自動運転車1のモータ駆動部121への駆動信号の供給を制御して、自動運転車1の走行開始、走行速度制御(ブレーキ制御及びアクセル制御を含む)、走行停止などを制御するようにする。
ステアリング駆動制御部103は、制御部101の制御の下に、この実施形態の自動運転車1のステアリング駆動部122への駆動制御信号の供給を制御して、自動運転車1の進路変更の制御をするようにする。
手動/自動運転モード切替制御部104は、タッチパネル112を通じた選択操作入力に応じて、自動運転車1の運転モードを、手動運転モードと、通常自動運転モードとのいずれかに切り替える制御を行う。また、手動/自動運転モード切替制御部104は、通常自動運転モードにおいて、運転者による所定の所作、この例では後述する手動運転操作が検知された場合には、手動運転モードに切り替える制御を行う。さらに、手動/自動運転モード切替制御部104は、強制自動運転モード切替処理部115での後述する切替条件の合致判別結果に基づく制御指示を受けて、手動運転モードあるいは通常自動運転モードから強制自動運転モードへの切り替え制御を行う。
なお、手動/自動運転モード切替制御部104が、自動運転車1の運転モードを、手動運転モードと、通常自動運転モードとのいずれかに切り替える制御を行う契機となる入力としては、タッチパネル112を通じた選択操作入力に限らず、キーボード(図示せず)を通じた操作入力であってもよいし、マイクロホン127を通じた切り替え指示の音声入力であってもよい。音声入力の場合には、マイクロホン127を通じた切り替え指示の音声入力が音声認識部120で認識され、その認識結果が手動/自動運転モード切替制御部104に供給される。手動/自動運転モード切替制御部104は、受け取った音声認識結果に基づいて運転モードの切替を行うようにする。
手動運転操作検知部105は、運転者によるアクセルペダル操作やブレーキペダル操作、シフトレバー操作さらにはステアリング操作の操作情報を受けて、その手動運転操作情報を手動/自動運転モード切替制御部104に供給する。
手動/自動運転モード切替制御部104は、自動運転車1が手動運転モードのときには、手動運転操作検知部105からの手動運転操作情報を、モータ駆動制御部102、ステアリング駆動制御部103に供給して、モータ駆動部121、ステアリング駆動部122を、運転者のペダル操作やシフトレバー操作、ステアリング操作(ハンドル操作)に応じて制御する。
また、手動/自動運転モード切替制御部104は、自動運転車1が通常自動運転モード及び強制自動運転モードのときには、後述するようにして、レーダー群106、カメラ群107、センサ群108、周囲移動体把握部109の出力に基づいて制御部101で生成される自動運転操作情報を、モータ駆動制御部102、ステアリング駆動制御部103に供給して、モータ駆動部121、ステアリング駆動部122を、自動運転操作情報により駆動制御し、自律走行を行うようにする。なお、通常自動運転モード及び強制自動運転モードにおいては、カーナビ機能部113において、運転者などにより設定された行先(目的地)に対する現在位置からの経路が探索され、その探索された経路に沿って走行するように制御される。
そして、手動/自動運転モード切替制御部104は、通常自動運転モードにおいては、運転者がアクセルペダル操作やブレーキペダル操作、シフトレバー操作又はステアリング操作(ハンドル操作)等の所定の操作をすると、手動運転操作検知部105での手動運転操作の検知情報に基づいて、自動運転車1の運転モードを自動的に手動運転モードに戻すようにモード切替制御を行う。
しかし、手動/自動運転モード切替制御部104は、自動運転車1の運転モードが強制自動運転モードであるときには、後述する特別の場合を除き、原則的に、運転者がアクセルペダル操作やブレーキペダル操作、シフトレバー操作又はステアリング操作等の所定の操作をしても、手動/自動運転モード切替制御部104は、その操作情報を無効として、強制自動運転モードを維持するようにする。
レーダー群106は、自動運転車1の車両の周囲に存在する人や物との距離を測るためのもので、1〜複数個のレーザー・レーダー(正式にはLIDAR(Light Detection and Ranging又はLaser Imaging Detection and Ranging;ライダー))やミリ波レーダーなどからなる。レーザー・レーダーは、例えば天井やバンパー付近に埋め込まれ、ミリ波レーダーは、例えば車両の前部及び後部に設けられている。レーザー・レーダーとミリ波レーダーの両方を備えてもよいし、一方のみであってもよい。また、マイクロ波レーダーなど、その他のレーダーを用いてもよい。さらに、レーダーと同様の目的でソナー(図示せず)を用いることができる。
カメラ群107は、自動運転車1の車内を撮影する1〜複数個のカメラと、自動運転車1の前方、側方、後方など、車外の周囲を撮影する1〜複数個のカメラとを含む。車内を撮影するカメラは、例えば運転席と助手席の間に設置されたバックミラー(後写鏡、ルームミラー)やフロントウインドウの上部などに取り付けられ、運転席に座った人物(運転者)の所作を撮影するカメラの他、助手席や、後部座席に座った乗車者(同乗者)の所作を撮影するためのカメラを含む。また、自動運転車1の周囲を撮影するカメラは、例えばバックミラーの左側方及び右側方に取り付けられ、自動運転車1の左前方及び右前方を主として撮影する2台のカメラ(ステレオカメラ)や、自動運転車1の例えばドアミラー又はフェンダーミラーに取り付けられて左右の側方を撮影するカメラ、自動運転車1の後方を撮影するカメラなどを含む。
センサ群108は、ドアの開閉や窓の開閉を検知する開閉検知センサ、シートベルト着用を検出するためのセンサ、運転席や助手席などの座席に乗車者が着座したことを検知する着座センサ(例えば重量センサ)、運転席のハンドルを人がタッチしたことを検知するタッチセンサ(例えば静電容量センサ)などの他、車外の近傍の人物を検知する人感センサ(例えば赤外線センサ)や自動運転のための補助となる情報を取得するための各種センサからなる。自動運転のための補助となる情報を取得するための各種センサとしては、例えば車両やタイヤの振動を検出するための振動センサ、タイヤの回転数を検出する回転数センサ、方位を検出するための地磁気センサ、加速度を検出するための加速度センサ、角度や角速度を検出するためのジャイロセンサ(ジャイロスコープ)、などが含まれる。また、この実施形態では、センサ群108には、右ウインカーや左ウインカー(方向指示器)やハザードランプ(非常点滅灯)の点灯を検知するセンサも含まれている。
周囲移動体把握部109は、レーダー群106やセンサ群108、また、カメラ群107の撮像画像を用いて、自車の周囲の移動体(人物を含む)を把握するようにする。周囲移動体把握部109は、例えばベイズ理論やディープラーニングなどの機械学習に基づいた処理を行うことで、周囲の障害物や移動体を把握するようにする。
現在位置検出部110は、GPS衛星からの電波を受信して、自車の現在位置を検出する。現在位置検出部110は、GPS衛星からの電波により検出された位置の精度は悪いので、GPS衛星からの電波の受信で検出された現在位置の情報のみではなく、センサ群108に含まれる1〜複数個のセンサ及びレーダー群106、カメラ群107の撮像画像(ナビ機能を併用)などをも用いると共に、例えばベイズ理論やディープラーニングなどの機械学習に基づいた処理を行うことで、より精度の高い現在位置を検出確認するようにしている。
自動運転車1は、通常自動運転モード及び強制自動運転モードにおいては、現在位置検出部110や周囲移動体把握部109において、レーダー群106、カメラ群107、センサ群108、GPS衛星からの電波の受信で取得した位置情報などの各種情報、つまり、人間の目や耳から得る情報に対応する情報をベイズ理論やディープラーニングなどの機械学習により処理し、これに基づき、制御部101は、自車の進路変更や障害物の回避など知的な情報処理(人工知能)及び制御(人工知能)を行って、自動運転操作情報を生成する。
表示部111は、例えばLCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)からなる。タッチパネル112は、LCDからなる表示部111の表示画面の上に、指やタッチペン等によるタッチ入力が可能なタッチセンサが重畳されて配設されたものである。表示部111の表示画面には、制御部101の制御に基づき、ソフトウエアボタン(キーボードの文字入力用ボタンを含む)を含む表示画像が表示される。そして、タッチパネル112は、表示画面に表示されているソフトウエアボタン上の指やタッチペン等によるタッチを検出すると、そのタッチを制御部101に伝達する。これを受けた制御部101は、ソフトウエアボタンに対応する制御処理を実行するように構成されている。
カーナビ機能部113に接続されているカーナビ用データベース123には、国内の地図及び経路案内データが、予め格納されている。カーナビ機能部113は、カーナビ用データベース123に記憶されている地図や、経路案内データに基づいて、自動運転車1が指定された目的地まで移動するのを補助するように案内するための機能部である。この実施形態では、カーナビ機能部113は、手動運転モードと、通常自動運転モード及び強制自動運転モードとで、若干異なる処理をするように構成されている。
すなわち、手動運転モードにおいては、カーナビ機能部113は、表示部111の表示画面上において、目的地までの経路(ルート)を明示的に表示する地図上に、現在位置検出部110で検出確認されている自車位置を重畳表示した画像を表示すると共に、自車の移動に伴い、地図上の自車位置(現在位置)を移動させ、かつ、ルート上の交差点や分岐点など、経路案内が必要な箇所で音声案内をするようにする。これは、通常のカーナビ機能と同様である。
一方、通常自動運転モード及び強制自動運転モードにおいては、カーナビ機能部113は、自車の現在位置が目的地までのルート上から離れているときには、その離間方向及び距離の情報を制御部101に通知すると共に、自車の現在位置が目的地までのルート上に在るときには、自車の移動に伴い、ルート上の交差点や分岐点などの手前で、ルートに沿った進路方向の変更指示情報を制御部101に通知するようにする。制御部101は、このカーナビ機能部113からの通知された情報と、現在位置検出部110の現在位置確認結果及び周囲移動体把握部109の把握結果とに基づいて、自車がルート上を指示された通りの進路をとって移動するように、モータ駆動制御部102を通じてモータ駆動部121を制御すると共に、ステアリング駆動制御部103を通じてステアリング駆動部122を制御するための自動運転操作情報を生成する。したがって、通常自動運転モード及び強制自動運転モードにおけるカーナビ機能部113及び制御部101による目的地までの経路案内により、乗車者が無人の状態においても、自動運転車1は、目的地まで移動することができる。
画像認識部114は、カメラ群107の内の車内を撮影するカメラからの撮像画像から、運転者や同乗者を認識する。また、画像認識部114は、カメラ群107の内の車外を撮影するカメラからの撮像画像から、横断歩道に立っている人物などを認識したり、踏切の遮断機などを認識することで、踏切を認識したりする機能なども備えている。
そして、画像認識部114に接続されている道路標識等データベース124には、道路標識及び道路標示のイメージデータが予め登録されて格納されている。画像認識部114は、カメラ群107の内の、自動運転車1の車外の前方、側方、後方などを撮影する1〜複数個のカメラからの撮影画像と、道路標識等データベース124に道路標識及び道路標示のイメージデータとのマッチング処理を行うことにより、前記1〜複数個のカメラの撮影画像から道路標識や道路標示を抽出するようにする。
音声認識部120は、音声情報記憶部128に記憶されている音源の音声情報についての音声認識を行う。この例では、音声情報記憶部128には、例えば、パトカー、白バイなどの警察車両、消防車、救急車、ガス事故対策のガス会社の緊急車などが発するサイレンの音声情報や踏切音の音声情報が、音声認識部120での音声認識のための比較用として記憶されている。
速度検出部116は、自車の走行速度を検出する。この速度検出部116は、センサ群108のセンサの一部として構成することもできる。
自車動き解析検出部117は、カメラ群107のカメラの撮像画像から、自車(自動運転車1)の発進、停止、直進走行、徐行、右回転、左回転、後退などの動きを検出すると共に、道路の左側に寄せる、走行車線の中央線を跨ぐ、などの動きを検出する処理部である。
音声入出力部118には、スピーカ126が接続されると共に、マイクロホン127が接続されている。スピーカ126は、第1の実施形態では、通常自動運転モードや手動運転モードから強制自動運転モードへの切り替え時の運転者や乗車者への通知、強制自動運転モードから通常自動運転モードへの切り替え時や通常自動運転モードから手動運転モードへの切り替え時の通知などのために用いられる。
また、マイクロホン127は、パトカーなどの緊急車両のサイレンの収音や踏切音の収音をするために用いられる。もちろん、運転者や乗車者の音声操作入力や会話の収音をするために用いてもよい。なお、マイクロホン127は、この例では、自動運転車1の車内に設けられるものと、パトカーなどの緊急車両のサイレンの収音用として、自動運転車1の天井部やドアミラーなどの外側に設けたものとの複数個からなるものとされている。
音声入出力部118は、図示は省略するが、外部に放音する音声メッセージデータを記憶するメモリを内蔵すると共に、そのメモリから読み出された音声メッセージデータを、アナログ音声信号に変換する音声合成器やD−A変換器を内蔵している。そして、音声入出力部118は、制御部101の制御により選択された音声メッセージを、スピーカ126に供給して、音声として外部に放音するようにする。なお、記憶する音声メッセージとしては、後述するように、例えば「強制自動運転モードに切り替えました。」、「通常自動運転モードに切り替えました。」などの運転モードの切り替え通知メッセージや、通常自動運転モードや強制自動運転モードに切り替えた際の目的地設定を促す通知メッセージなどが用意されている。
時計部119は、カレンダー機能を備え、現在日時を提供すると共に、制御部101の制御に基づいて、所定のタイミングからの時間計測を行うタイマー機能も備える。
強制自動運転モード切替処理部115は、これに接続されている強制自動運転切替条件記憶部125に予め記憶されている切替条件に合致する状況になったか否かを、カメラ群107の撮像画像に基づく画像認識部114の認識出力、センサ群108のセンサ出力、自車動き解析検出部117の出力等に基づいて監視して、合致する状況になったことを検出したときには、手動/自動運転モード切替制御部104に、強制自動運転モードに切り替えるようにする制御指示を供給するようにする。
強制自動運転切替条件記憶部125には、この実施形態では、自動運転車1が通常自動運転モードでの走行中あるいは停止中において、自動運転車1の走行モードを通常自動運転モードから強制自動運転モードに強制的に切り替えるための切替条件と、切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容と、強制自動運転モードの解除条件とからなる第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1が記憶されていると共に、自動運転車1が手動運転モードである走行中あるいは停止中において、自動運転車1の走行モードを手動運転モードから強制自動運転モードに強制的に切り替えるための切替条件と、切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容と、強制自動運転モードの解除条件とからなる第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2が記憶されている。
切替条件は、交通法規を遵守するようにするために予め定められた条件、及び/又は、安全運転を維持するようにするために予め定められた条件である。そして、第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1に記憶される1又は複数個の切替条件は、自動運転車の周囲の状況がこの1又は複数個の切替条件に合致する状態になったときには、通常自動運転モードから強制自動運転モードに切り替えて、自動運転車に、交通法規を遵守した自律走行を行なわせるようにするための条件である。
また、第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2に記憶される1又は複数個の切替条件は、自動運転車1がこの1又は複数個の切替条件に合致する走行状態となった時(運転者が切替条件に合致するような運転をしたとき)には、危険性があったり、安全性が担保されていなかったりするので、手動運転モードから、強制自動運転モードに切り替えて、交通法規を遵守する、また、安全運転を維持するような走行状態となるようにすべき条件である。
切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容とは、切替条件に応じて、自動運転車1が走行状態として行うべき自動運転内容を意味している。また、解除条件は、強制自動運転モードを解除して、手動運転モードに復帰させてもよい条件、又は手動運転モードへの切り替えのための操作を有効とする通常自動運転モードに復帰させてもよい条件である。
この強制自動運転切替条件記憶部125に記憶される第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1及び第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2の切替条件、切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容及び解除条件は、予め、自動運転車1の製造会社や販売会社により書き込まれて記憶される。また、この切替条件は、自動運転車1のユーザ、すなわち、運転者や同乗者によるタッチパネル112を通じた所定の操作により、事後的に追加して書き込まれることで、強制自動運転切替条件記憶部125に記憶されている第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1及び第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2に追加記憶することもできるものとされている。そして、自動運転車1のユーザ、すなわち、運転者や乗車者は、いくつかの切替条件については、それを運転モードの切替条件として用いるかどうかを選択することもできるように構成されている。
図2は、この第1の実施形態における強制自動運転切替条件記憶部125の記憶内容である第1の強制自動運転切替条件テーブルの例である。また、図3及び図3の続きである図4は、第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL1の例である。
図2の第1の強制自動運転切替条件テーブルの例においては、切替条件は、通常自動運転モードにおいて、手動運転モードに切り替えられることにより「追い越し禁止」、「右折(左折)禁止」、「横断歩道での一時停止」、「踏切での一時停止」などの交通法規を遵守しない運転が可能になる状態を阻止するための条件である。
図2に示すように、例えば「追い越し禁止」に違反しないようにするために、当該「追い越し禁止」についての切替条件としては、
(条件A1)追い越し禁止の道路標識(規制標識。図5(A)参照)により示される追越し禁止区間又は追い越し禁止を示す道路標示である黄色ラインの区間を検知したこと
が定められている。
上記の(条件A1)の追い越し禁止区間は、画像認識部114において、カメラ群107の内の自車の前方や側方の1〜複数個のカメラの撮像画像から、図5(A)に示す道路標識を認識すること、また、カメラ群107の内の道路面を撮影するカメラの画像から、黄色ラインを認識することで、検出することができる。
そして、この「追い越し禁止」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、「走行車線を維持して走行」とされる。ただし、カーナビ機能により、追い越し禁止の車線であっても設定されている目的地に向かうための右左折の進路変更は可能である。また、強制自動運転モードの解除条件は、「追い越し禁止区間終了の道路標識の検出」あるいは「道路標示としての黄色ラインの消滅」の検出とされる。
また、例えば「右折禁止」についての切替条件としては、
(条件A2)図5(B),(C),(D)に示すような指定方向外進行禁止の道路標識(規制標識)や道路標示(図示せず)を検知したこと
が定められている。
この(条件A2)の右折禁止は、画像認識部114において、カメラ群107の内の自車の前方や側方の1〜複数個のカメラの撮像画像から、図5(B),(C),(D)に示す道路標識を認識することで、検出することができる。
そして、この「右折禁止」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、「指定進行方向を選択して走行」とされる。また、強制自動運転モードの解除条件は、「右折禁止地点を通過」の検出とされる。
なお、左折禁止の場合も、同様にして、禁止標識検出又は禁止標示検出を、切替条件とすることができる。
また、例えば「横断歩道」についての切替条件としては、
(条件A3)カメラ群107のカメラ画像から、画像認識部114で、横断歩道の道路標識(指示標識)あるいは道路標示を検出した場合において、
(条件A4)カメラ群107のカメラ画像から、画像認識部114で、横断歩道を渡ろうとしている人物や横断中の人物を検出したとき、
が定められている。
そして、この「横断歩道」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、「一時停止後、横断者無しを確認し、発進」とされる。また、強制自動運転モードの解除条件は、「横断歩道を通過」の検出とされる。なお、人物の検出には、センサ群108に含まれる人感センサを併せて用いるようにしてもよい。さらに、人物でも、高齢者、乳幼児や学童、身体の不自由な方、ペット連れの方などの横断時は、特に安全な運転が望まれるため、より高度な画像認識で検出し、選択的に対応してもよい。なお、ここで、「横断歩道」と同様「自転車横断帯」も含まれるものであり、その横断者には、自転車の乗車者や、バイク(自動二輪車)を手で押している者も含まれるものである。
この場合の条件要素検出手段としては、カメラ群107、センサ群108、画像認識部114、音声認識部120を用いるものである。
次に、例えば「踏切」についての切替条件としては、
(条件A5)カメラ群107のカメラ画像から、画像認識部114で、踏切ありの道路標識(警戒標識)を検出した場合、あるいは、画像認識部114で、カメラの撮像画像から、実際の踏切を認識した場合、音声認識部120で、踏切音を認識した場合、
が定められている。
そして、この「踏切」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、「一時停止後、安全確認して、発進」とされる。この場合の安全確認とは、遮断機が下りていないことや踏切音が鳴っていないことの検出である。また、強制自動運転モードの解除条件は、「踏切を通過」の検出とされる。
この場合の条件要素検出手段としては、カメラ群107、画像認識部114を用いるものである。
以上は、通常自動運転モードにおける走行状態あるいは停止状態において、強制自動運転モードに切り替えるべき切替条件の一例であり、これらに限られるわけではないことは言うまでもない。
次に、第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2の例について説明する。図3及び図4の例では、第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2の切替条件は、「追い越し禁止」、「右折(左折)禁止」、「制限速度」、「信号遵守」、「踏切での一時停止」などの交通法規を遵守しない運転を防止するための条件や、「横断歩道での一時停止無視」、「妨害運転」、「危険運転、無謀運転」、「急アクセル、急ブレーキ、急ハンドル」などの事故を招きやすい状態を回避して、安全運転を担保するための条件が例示されている。そして、それぞれの切替条件に対応して、切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容と、強制自動運転モードの解除条件が定められている。
なお、図3及び図4に示した切替条件は、強制自動運転切替条件記憶部125の第2の強制自動運転切替条件テーブルの記憶内容の一部であり、その他、交通法規を遵守するようにするために予め定められた種々の切替条件、及び/又は、安全運転を維持するようにするために予め定められた種々の切替条件が登録されていることは言うまでもない。
図3に示すように、例えば「追い越し禁止」に違反しないようにするために、当該「追い越し禁止」についての切替条件としては、
(条件B1(=条件A1))追い越し禁止の道路標識(規制標識。図4(A)参照)により示される追越し禁止区間又は追い越し禁止を示す道路標示である黄色ラインの区間において、
(条件B2)右折路等が無いのに、右ウインカーを起動したことを検知、又は、黄色ラインを跨ぐようにハンドル操作をして進路変更したことを検知したこと
が定められている。
(条件B3)ただし、この場合に、自車の前方に走行中の車両がある場合であり、停止中の車両が左側に駐車や停車していたり、障害物が車線の左側に存在していたりしている場合は切替条件としない。
上記の(条件B1)の追い越し禁止区間は、条件A1と同様に、画像認識部114において、カメラ群107の内の自車の前方や側方の1〜複数個のカメラの撮像画像から、図4(A)に示す道路標識を認識すること、また、カメラ群107の内の道路面を撮影するカメラの画像から、黄色ラインを認識することで、検出することができる。
また、(条件B2)の右ウインカーの起動は、前述したように、センサ群108に含まれるセンサの出力から検出することができる。また、黄色ラインを跨ぐようにハンドル操作をして進路変更したことは、手動運転操作検知部105において右ハンドル操作を検知したこと及び、自車動き解析検出部117で、カメラ群107のカメラの画像を解析することにより黄色ラインを自車が跨ぐように走行していることを検知することにより、判断することができる。そして、前方に右折路や右方向にコンビニなどの駐車可能なスペースを有する店舗等が無いことは、カメラ群107のカメラの撮像画像から、検知することができる。
さらに、(条件B3)については、カメラ群107のカメラの撮像画像と、レーダー群106を用いて前方の車両が走行中か停止中かを検出することができる。すなわち、(条件B3)については、周囲移動体把握部109の周囲移動体把握結果を参照することで検出することができる。
そして、この「追い越し禁止」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、「走行車線を維持して走行」とされる。ただし、カーナビ機能により、追い越し禁止の車線であっても設定されている目的地に向かうための右左折の進路変更は可能である。また、強制自動運転モードの解除条件は、「追い越し禁止区間終了の道路標識の検出」あるいは「道路標示としての黄色ラインの消滅」の検出とされる。
以上の説明から判るように、第2の強制自動運転切替条件テーブルにおける追い越し禁止についての切替条件に合致するかどうかを監視するための条件要素の検知のために用いる条件要素検出手段としては、カメラ群107、センサ群108、手動運転操作検知部105、周囲移動体把握部109、画像認識部114、自車動き解析検出部117を用いるものである。
また、例えば「右折禁止」についての切替条件としては、
(条件B4(=条件A2))図5(B),(C),(D)に示すような指定方向外進行禁止の道路標識(規制標識)や道路標示(図示せず)により右折が禁止されている場合において、
(条件B5)右ウインカーの点灯を起動したことを検知、又は、右折するようにハンドル操作をして進路変更しようとしたことを検知したこと
が定められている。
そして、この「右折禁止」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、「指定進行方向を選択して走行」とされる。また、強制自動運転モードの解除条件は、「右折禁止地点を通過」の検出とされる。
(条件B4)の右折禁止は、画像認識部114において、カメラ群107の内の自車の前方や側方の1〜複数個のカメラの撮像画像から、図5(B),(C),(D)に示す道路標識を認識することで、検出することができる。
また、(条件B5)の右ウインカーの起動は、前述したように、センサ群108に含まれるセンサの出力から検出することができる。また、右折するようにハンドル操作をして進路変更したことは、手動運転操作検知部105において右ハンドル操作を検知したことにより、判断することができる。
したがって、この場合の条件要素検出手段としては、カメラ群107、センサ群108、手動運転操作検知部105、画像認識部114を用いるものである。
また、例えば「横断歩道」についての切替条件としては、
(条件B6(=条件A3))カメラ群107のカメラ画像から、画像認識部114で、横断歩道の道路標識(指示標識)あるいは道路標示を検出した場合において、
(条件B7(=条件A4))カメラ群107のカメラ画像から、画像認識部114で、横断歩道を渡ろうとしている人物や横断中の人物を検出したとき、
が定められている。
そして、この「横断歩道」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、「一時停止後、横断者無しを確認し、発進」とされる。また、強制自動運転モードの解除条件は、「横断歩道を通過」の検出とされる。なお、人物の検出には、センサ群108に含まれる人感センサを併せて用いるようにしてもよい。さらに、人物でも、高齢者、乳幼児や学童、身体の不自由な方、ペット連れの方などの横断時は、特に安全な運転が望まれるため、より高度な画像認識で検出し、選択的に対応してもよい。
この場合の条件要素検出手段としては、カメラ群107、センサ群108、画像認識部114を用いるものである。
次に、例えば「踏切」についての切替条件としては、
(条件B8(=条件A5))カメラ群107のカメラ画像から、画像認識部114で、踏切ありの道路標識(警戒標識)を検出した場合、あるいは、画像認識部114で、カメラの撮像画像から、実際の踏切を認識した場合、音声認識部120で、踏切音を認識した場合、
が定められている。
そして、この「踏切」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、「一時停止後、安全確認して、発進」とされる。この場合の安全確認とは、遮断機が下りていないことの検出である。また、強制自動運転モードの解除条件は、「踏切を通過」の検出とされる。
この場合の条件要素検出手段としては、カメラ群107、画像認識部114を用いるものである。
次に、例えば「制限速度」についての切替条件としては、
(条件B9)速度検出部116で検出された自車の走行速度が、重大な危険を感じさせるような速度、例えば一般道路であれば、制限速度よりも30km/h以上オーバー、高速道路であれば、制限速度よりも40km/hオーバーとなっていることを検出した場合
が定められている。
そして、この「制限速度」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、「制限速度以下で走行」とされる。また、強制自動運転モードの解除条件は、懲罰的な意味を含めて、所定の時間、例えば30分経過後とされる。この所定の時間は、切替条件からの速度オーバーの程度によって長くするようにしてもよい。例えば、切替条件ちょうどの所定の時間が30分として、1km/hオーバーする毎に、30分ずつ加算する。この場合、5km/hオーバーすると、解除条件は3時間経過後となる。
この場合の条件要素検出手段としては、速度検出部116を用いるものである。ただし、解除条件の検知のために、時計部119を用い、強制自動運転モードへの切替後の経過時間を計測する。
次に、第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2の内容の続きである図4に示す例について説明する。すなわち、例えば「信号遵守」についての切替条件としては、
(条件B10)カメラ群107のカメラの撮像画像から、自車動き解析検出部117において、信号機が赤信号を示しているのに、それを無視して停止せずに走行したことを所定の回数以上、例えば3回以上検出した場合
が定められている。
ここで、1回でも赤信号を無視して走行したときを、切替条件としてもよいが、この実施形態では、運転者によるうっかりの信号の見落としがあることを考慮して、3回以上の赤信号無視を切替条件とした。
この「信号遵守」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、故意的な信号無視に対する懲罰的な意味を込めて、当日は強制自動運転モードでのみ走行可能とした。したがって、強制自動運転モードの解除条件は、翌日とされる。
この場合の条件要素検出手段としては、カメラ群107及び自車動き解析検出部117を用いるものである。ただし、解除条件の検知のために、時計部119を用い、当日の終了(翌日の始まり)を検出する。
次に、例えば「妨害運転」についての切替条件としては、
カメラ群107のカメラの撮像画像の自車動き解析検出部117での解析結果や、周囲移動体把握部109の把握結果から、
(条件B11)走行中の他車の直前に進入、あるいは
(条件B12)通行中の人又は車に著しく接近、あるいは
(条件B13)幅寄せ、煽り、強引な割り込み、
を、所定の回数以上、例えば3回以上検出した場合
が定められている。この場合、条件B11〜条件B13の内、同じものを3回以上検出した場合に限らず、条件B11〜条件B13のいずれかを合計で3回以上検出した場合であってもよい。
この「妨害運転」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、妨害運転に対する懲罰的な意味を込めて、当日は強制自動運転モードでのみ走行可能とした。したがって、強制自動運転モードの解除条件は、翌日とされる。
この場合の条件要素検出手段としては、レーダー群106、カメラ群107、センサ群108及び自車動き解析検出部117を用いるものである。ただし、解除条件の検知のために、時計部119を用い、当日の終了を検出する。
次に、例えば「危険運転、無謀運転」についての切替条件としては、
カメラ群107のカメラの撮像画像の自車動き解析検出部117での解析結果や、手動運転操作検知部105での手動運転操作の検知結果から、
(条件B14)ドリフト走行やスピンターンを、所定の回数以上、例えば2回以上検出した場合
が定められている。
この「危険運転、無謀運転」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、危険運転、無謀運転に対する懲罰的な意味を込めて、当日は強制自動運転モードでのみ走行可能とした。したがって、強制自動運転モードの解除条件は、翌日とされる。
この場合の条件要素検出手段としては、手動運転操作検知部105、カメラ群107及び自車動き解析検出部117を用いるものである。ただし、解除条件の検知のために、時計部119を用い、当日の終了を検出する。
次に、例えば「急アクセル、急ブレーキ、急ハンドル」についての切替条件としては、
カメラ群107のカメラの撮像画像の自車動き解析検出部117での解析結果や、手動運転操作検知部105での手動運転操作の検知結果から、
(条件B15)急アクセルあるいは急ブレーキあるいは急ハンドルを、所定の回数以上、例えば5回以上検出した場合
が定められている。この場合、急アクセル、急ブレーキ、急ハンドルの内、同じものを3回以上検出した場合に限らず、急アクセル、急ブレーキ、急ハンドルのいずれかを合計で3回以上検出した場合であってもよい。
この「急アクセル、急ブレーキ、急ハンドル」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、危険な運転に対する懲罰的な意味を込めて、当日は強制自動運転モードでのみ走行可能とした。したがって、強制自動運転モードの解除条件は、翌日とされる。
この場合の条件要素検出手段としては、手動運転操作検知部105、カメラ群107及び自車動き解析検出部117を用いるものである。ただし、解除条件の検知のために、時計部119を用い、当日の終了を検出する。
なお、以上説明した強制自動運転切替条件記憶部125の記憶内容は、切替条件、切替後の強制自動運転内容、解除条件のそれぞれを、対応する処理プログラムとして記憶するようにするものである。そして、それぞれの切替条件に対応する処理プログラムを、順次に実行することで、全ての切替条件をチェックするようにする。
なお、ユーザが後で設定する切替条件、切替後の強制自動運転内容、解除条件のそれぞれについては、上記のような切替条件、解除条件及び強制自動運転モードでの制御内容を、ユーザが記述することで、対応する処理プログラムを自動的に生成して強制自動運転切替条件記憶部125に記憶するようにする処理機能を自動運転車1の電子制御回路部10は備えるものである。
なお、第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1の切替条件は、過去の手動運転モードにおける運転者による運転履歴を監視して、「追い越し禁止」、「右折禁止」、「横断歩道での一時停止」、「踏切での一次停止」に違反する行為を、当該運転者が行っている回数などに基づいて、強制的に切替条件として常に設定するようにして、運転者は、その切替条件を非選択(オフ)とすることができないようにしてもよい。また、そのような違反行為に基づく切替条件を、運転者の過去の履歴から自動的に作成して第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1に追加登録するようにしてもよい。
なお、運転者の過去の運転履歴は、当該運転者の顔情報などの生体情報に対応付けられている識別情報に対応させて、自動運転車1が記憶保持していてもよいし、クラウド上に格納するようにしてもよい。クラウド上に運転者の過去の履歴を格納しておく場合には、自動運転車1は、クラウドにアクセスする通信手段を備え、運転者の運転履歴をアップロードすると共に、運転者の識別情報をクラウドに送って、対応する運転者の過去の履歴情報をダウンロードして取得するようにする。
第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1は、この実施形態では、例えばカメラ群107のカメラで顔画像を撮影して認識された運転者のそれぞれの識別情報に対応して強制自動運転切替条件記憶部125に記憶するようにするものである。そして、強制自動運転モード切替処理部115は、運転者が自動運転車1に乗車したときに、顔画像を認識し、その認識結果の運転者に対応する第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1を読み出して、運転モードの切替制御を行うものである。
以上のように、自動運転車1の電子制御回路部10は構成されるが、図1に示した各ブロックのうち、モータ駆動制御部102、ステアリング駆動制御部103、手動/自動運転モード切替制御部104、周囲移動体把握部109、現在位置検出部110、カーナビ機能部113、画像認識部114、強制自動運転モード切替処理部115、自車動き解析検出部117、音声出力部118、の各処理機能は、制御部101が、ソフトウエア処理として実現することができる。
[第1の実施形態の自動運転車1での運転モードの切り替え処理動作の例]
図6及びその続きである図7は、第1の実施形態の自動運転車1において、手動運転モード及び通常自動運転モードのそれぞれでの走行中に切替条件を監視して、強制自動運転モードへ切り替えを行う場合の処理動作の流れを説明するためのフローチャートを示す図である。
この図6及び図7の説明においては、制御部101が、図1に示した各ブロックのうち、モータ駆動制御部102、ステアリング駆動制御部103、手動/自動運転モード切替制御部104、周囲移動体把握部109、現在位置検出部110、カーナビ機能部113、画像認識部114、強制自動運転モード切替処理部115、自車動き解析検出部117、音声出力部118、の各処理機能を、ソフトウエア処理として実現した場合として説明する。以下に説明する他のフローチャートの説明においても同様である。
なお、この実施形態の自動運転車1では、手動運転モードにおいて運転者の意思に反して強制自動運転モードに切り替えられることを考慮して、自動運転車の発進に際しては、運転者により、カーナビ機能において目的地の設定入力をさせるようにしている。したがって、自動運転車1は、手動運転モードから強制自動運転モードに切り替えられた後には、カーナビ機能部113による経路案内機能により、目的地へ向かうように走行制御を行う。
まず、制御部101は、運転モードが手動運転モードであるか否か判別する(ステップS1)。このステップS1で、運転モードは手動運転モードであると判別したときには、制御部101は、強制自動運転切替条件記憶部125に記憶されている第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2を用いて、手動運転モードから強制自動運転モードへの切替条件を監視する(ステップS2)。そして、制御部101は、上述したような第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2の切替条件に合致したか否か判別する(ステップS3)。
ステップS3で、切替条件に合致したと判別したときには、制御部101は、手動運転モードから強制自動運転モードへ切り替え、その旨をスピーカ126を通じて音声メッセージとして運転者に通知する(ステップS4)。そして、制御部101は、第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2に定められている、合致した切替条件に応じた強制自動運転モードへの切替後の強制自動運転処理内容を実行する(ステップS5)。
次に、制御部101は、第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2に定められている、強制自動運転モードの解除条件の監視を開始する(ステップS6)。そして、制御部101は、強制自動運転モードの解除条件に合致したか否か判別し(ステップS7)、合致していないと判別したときには、処理をステップS6に戻して、解除条件の監視を継続する。ステップS7で、強制自動運転モードの解除条件に合致したと判別したときには、制御部101は、運転モードを通常自動運転モードに切り替える(ステップS8)。
そして、制御部101は、ステップS8の次には、図7の通常自動運転モードにおける処理動作に移行する。また、ステップS1で運転モードは、手動運転モードではなく、通常自動運転モードであると判別したときにも、制御部101は、図7の通常自動運転モードにおける処理動作に移行する。さらに、ステップS3で、第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2の切替条件に合致してはないと判別したときには、制御部101は、運転者又は乗車者により、通常自動運転モードに切り替える操作がなされたか否か判別し(ステップS9)、通常自動運転モードに切り替える操作がなされていないと判別したときには処理をステップS2に戻し、通常自動運転モードに切り替える操作がなされたと判別したときには、図7の通常自動運転モードにおける処理動作に移行する。
図7の通常自動運転モードにおける処理動作においては、制御部101は、強制自動運転切替条件記憶部125に記憶されている第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1を用いて、通常自動運転モードから強制自動運転モードへの切替条件を監視する(ステップS11)。そして、制御部101は、上述したような第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1の切替条件に合致したか否か判別する(ステップS12)。
ステップS12で、切替条件に合致したと判別したときには、制御部101は、手動運転モードから強制自動運転モードへ切り替え、その旨をスピーカ126を通じて音声メッセージとして運転者や乗車者に通知する(ステップS13)。そして、制御部101は、第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1に定められている、合致した切替条件に応じた強制自動運転モードへの切替後の強制自動運転処理内容を実行する(ステップS14)。
ステップS12で、切替条件に合致してはいないと判別したときには、制御部101は、手動運転モードへ切り替えるべき所定の所作、この例では手動運転操作を検知したか否か判別する(ステップS18)。そして、ステップS18で、手動運転操作を検知したと判別したときには、制御部101は、通常自動運転モードから手動運転モードに切り替え、その旨をスピーカ126を通じて音声メッセージとして運転者や乗車者に通知する(ステップS19)。そして、制御部101は、処理を図6のステップS2に戻し、このステップS2以降の処理を繰り返す。
次に、制御部101は、第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1に定められている、強制自動運転モードの解除条件の監視を開始する(ステップS15)。そして、制御部101は、強制自動運転モードの解除条件に合致したか否か判別し(ステップS16)、合致していないと判別したときには、処理をステップS15に戻して、解除条件の監視を継続する。ステップS16で、強制自動運転モードの解除条件に合致したと判別したときには、制御部101は、運転モードを通常自動運転モードに切り替える(ステップS17)。
そして、制御部101は、ステップS17の次には、手動運転モードへ切り替えるべき所定の所作、この例では手動運転操作を検知したか否か判別し(ステップS18)、手動運転操作を検知してはいないと判別したときには、このステップS11に戻って、強制自動運転切替条件テーブルTBL1を用いた強制自動運転モードへの切替条件の監視を継続する。
そして、ステップS18で、手動運転操作を検知したと判別したときには、制御部101は、通常自動運転モードから手動運転モードに切り替え、その旨をスピーカ126を通じて音声メッセージとして運転者や乗車者に通知する(ステップS19)。そして、制御部101は、処理を図6のステップS2に戻し、このステップS2以降の処理を繰り返す。
なお、上述の処理においては、通常自動運転モードから強制自動運転モードへの切り替え時のみではなく、手動運転モードから強制自動運転モードへの切り替え時においても、強制自動運転モードの解除条件に合致すると、強制自動運転モードから通常自動運転モードを経て、手動運転モードに切り替えるようにした。しかし、手動運転モードから強制自動運転モードへの切り替え時においては、強制自動運転モードから通常自動運転モードを経ずに、直接に手動運転モードに切り替えるようにしてもよい。
また、ステップS8及びステップS17では、運転モードを強制自動運転モードから通常自動運転モードに切り替える際に、音声メッセージを出さなかったが、その旨をスピーカ126を通じて音声メッセージとして運転者に通知するようにしてもよい。
以上は、この実施形態の自動運転車1における運転モードの切り替え処理の要部の大まかな動作の流れの説明である。次に、図6のステップS2,S3及び図7のステップS11,S12での切替条件の監視、図6のステップS5及び図7のステップS14の強制自動運転処理内容及び図6のステップS6及び図7のステップS15の解除条件の監視の部分を処理動作の例を、より詳細に説明する。
図8は、通常自動運転モードから強制自動運転モードへの切替条件が「追い越し禁止」に関する場合のソフトウェアプログラムにおける詳細な処理例を説明するためのフローチャートの例を示す図である。
制御部101は、まず、第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1の追い越し禁止の切替条件に基づいて、カメラ群107のカメラの撮像画像から、追い越し禁止標識を認識して検出したか否か判別し(ステップS21)、追い越し禁止標識を検出してはいないと判別したときには、カメラ群107のカメラの撮像画像から、追い越し禁止を意味する道路標示である中央線の黄色ラインを検出したか否か判別する(ステップS22)。このステップS22で、黄色ラインを検出してはいないと判別したときには、制御部101は、処理をステップS21に戻す。
そして、ステップS21で、追い越し禁止標識を検出したと判別したとき、また、ステップS22で、黄色ラインを検出したと判別したときには、制御部101は、運転モードを通常手動運転モードから強制自動運転モードに切り替える(ステップS23)。ステップS23の次には、制御部101は、第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1の強制自動運転内容に基づいて、自動運転により、この実施形態の自動運転車1を走行中の車線での安全な走行を維持させるようにする(ステップS24)。
次に、制御部101は、第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1の追い越し禁止の切替条件に基づく強制自動運転モードの解除条件に基づいて、カメラ群107のカメラの撮像画像から、追い越し禁止区間の終了標識を検出したか否か判別し(ステップS25)、追い越し禁止区間の終了標識を検出してはいないと判別したときには、黄色ライン22の終了を検出したか否か判別する(ステップS26)。そして、ステップS26で、黄色ライン22の終了を検出してはいないと判別したときには、制御部101は、処理をステップS25に戻す。
そして、ステップS25で、追い越し禁止区間の終了標識を検出したと判別したとき、また、ステップS26で、黄色ラインの終了を検出したと判別したときには、制御部101は、運転モードを強制自動運転モードから通常自動運転モードに切り替える(ステップS27)。
なお、この例では、強制自動運転モードでは、カーナビ機能により、追い越し禁止の車線であっても右左折の進路変更は可能であり、その進路変更により、黄色ラインがなくなれば、それがステップS26で判別され、ステップS27において、強制自動運転モードから通常自動運転モードに切り替えられるものである。
そして、制御部101は、手動運転操作を検知したか否か判別し(ステップS28)、手動運転操作を検知してはいないと判別したときには、処理をステップS21に戻し、通常自動運転モードにおける切替条件の監視処理ルーチンを継続する。
そして、ステップS28で、手動運転操作を検知したと判別したときには、制御部101は、通常自動運転モードから手動運転モードに切り替え、その旨をスピーカ126を通じて音声メッセージとして運転者に通知する(ステップS29)。そして、制御部101は、手動運転モードの切替条件の監視処理ルーチンを実行するようにする。
次に、図9の例は、第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1及び第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2の「横断歩道」の切替条件の場合の動作を説明するための図である。この図9に示すように、自動運転車1は、通常自動運転モード又は手動運転モードにおいて走行車線21を走行中に、カメラ群107のカメラの撮像画像から、前方の横断歩道の道路標示25を検出し、かつ、その横断歩道を渡ろうとしている人物26や横断中の人物(図示せず)を検出したときには、例えば横断歩道の道路標示25の手前の、横断歩道位置から所定の距離D(例えば20m)の地点から、強制自動運転モードに切り替わり、横断歩道の手前の停止線27の位置で一時停止するように自動運転する。なお、信号機がない横断歩道の場合には、図9に示すようなダイヤマーク25Dが道路に標示されるので、自動運転車1が認識する道路表示25には、このダイヤマーク25Dも含まれる。
そして、人物26が横断を完了し、他の横断者がいないことを確認すると、自動運転車1は発進し、横断歩道を通過すると、通常自動運転モードに切り替え、運転者の手動運転操作があると、手動運転モードに切り替える。この場合の自動運転車1の処理動作の流れのフローチャートは省略する。
次に、第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2の手動運転モードから強制自動運転モードへの切替条件が「追い越し禁止」に関する場合の例における詳細な処理例を説明する。
図10は、運転者が、自動運転車1に乗車して、2車線の道路の片側車線(走行車線)21を手動運転モードで運転走行中に、車道中央線の黄色ライン22が道路標示として道路に付されている区間において、追い越しをかけようとした場合の自動運転車1の動作例を示しており、自動運転車1が行うソフトウェアプログラムにおける処理例を説明するためのフローチャートの例を示す図である。
すなわち、図10に示すように、走行車線21を走行中に、前方を走行中の車両(図示は省略)に対して追い越しをかけようとして、自動運転車1の運転者が右ウインカー24を点灯して、右にハンドルを切って、黄色ライン22を跨いで対向車線23にはみ出そうとすると、この実施形態の自動運転車1は、自動的に手動運転モードから強制自動運転モードに切り替わり、元の走行車線21に戻って、前方車両に追従して走行するようにして、追い越し禁止違反を未然に防止する。
図11及びその続きである図12は、第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2の切替条件が「追い越し禁止」に関する場合の詳細処理の流れの例を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、図6のステップS3〜ステップS8の部分の処理動作例である。
制御部101は、カメラ群107のカメラの撮像画像から、追い越し禁止標識を認識して検出したか否か判別し(ステップS31)、追い越し禁止標識を検出してはいないと判別したときには、カメラ群107のカメラの撮像画像から、追い越し禁止を意味する道路標示である中央線の黄色ライン22を検出したか否か判別する(ステップS32)。このステップS32で、黄色ライン22を検出してはいないと判別したときには、制御部101は、処理をステップS31に戻す。
そして、ステップS31で、追い越し禁止標識を検出したと判別したとき、また、ステップS32で、黄色ライン22を検出したと判別したときには、制御部101は、センサ群108のセンサの検出出力から、右ウインカーの起動を検出したか否か判別する(ステップS33)。ステップS33で、右ウインカーの起動を検出してはいないと判別したときには、制御部101は、自車動き解析検出部117の検出結果から、運転者が黄色ライン22を跨ぐように自動運転車1を進路変更させる運転操作をしたか否か判別する(ステップS34)。
ステップS34で、運転者が黄色ライン22を跨ぐように自動運転車1を進路変更させる運転操作をしてはいないと判別したときには、制御部101は、処理をステップS33に戻し、このステップS33以降の処理を繰り返す。
そして、ステップS33で、右ウインカーの起動を検出したと判別したとき、また、ステップS34で、運転者が黄色ライン22を跨ぐように自動運転車1を進路変更させる運転操作をしたと判別したときには、制御部101は、カメラ群107のカメラの撮像画像から、前方に右折することができる道路や、右方向に駐車可能な店舗等が存在しないか否か判別する(ステップS35)。
ステップS35で、前方に右折する道や右方向に駐車可能な店舗等が存在すると判別したときには、制御部101は、手動運転モードを維持して、運転者による手動運転操作のまま右折等を行う(ステップS36)。そして、制御部101は、処理をステップS31に戻し、このステップS31以降の処理を繰り返す。
ステップS35で、前方に右折する道や右方向に駐車可能な店舗等が存在しないと判別したときには、制御部101は、前方を走行中の車両があるか否か判別する(ステップS37)。そして、このステップS37で、前方を走行中の車両が無いと判別したときには、前方左側に停止している障害物(駐車中や停車中の車両を含む)があるか否か判別する(ステップS38)。
このステップS38で、前方左側に停止している障害物があると判別したときには、制御部101は、手動運転モードを維持して(ステップS39)、運転者による障害物を避ける運転操作を可能にする。そして、制御部101は、処理をステップS31に戻し、このステップS31以降の処理を繰り返す。
ステップS37で、前方を走行中の車両があると判別したとき、また、ステップS38で前方には障害物がないと判別したときには、制御部101は、運転モードを手動運転モードから強制自動運転モードに切り替える(ステップS40)。ここで、前方を走行中の車両がなく、かつ、障害物もないと判別したときに、強制自動運転モードに切り替えるのは、無用に対向車線にはみ出して走行すると危険であるため、安全な走行状態を維持することを企図したものである。
ステップS40の次には、制御部101は、自動運転により、この実施形態の自動運転車1を走行中の車線での安全な走行を維持させるようにする(ステップS41)。
次に、制御部101は、カメラ群107のカメラの撮像画像から、追い越し禁止区間の終了標識を検出したか否か判別し(図12のステップS51)、追い越し禁止区間の終了標識を検出してはいないと判別したときには、黄色ライン22の終了を検出したか否か判別する(ステップS52)。そして、このステップS52で、黄色ライン22の終了を検出してはいないと判別したときには、制御部101は、処理をステップS51に戻し、このステップS51以降の処理を繰り返す。
そして、ステップS51で、追い越し禁止区間の終了標識を検出したと判別したとき、また、ステップS52で、黄色ラインの終了を検出したと判別したときには、制御部101は、運転モードを強制自動運転モードから通常自動運転モードに切り替える(ステップS53)。
なお、この例では、強制自動運転モードでは、カーナビ機能により、追い越し禁止の車線であっても右左折の進路変更は可能であり、その進路変更により、黄色ラインがなくなれば、それがステップS52で判別され、ステップS53において、強制自動運転モードから通常自動運転モードに切り替えられるものである。
そして、制御部101は、手動運転操作を検知したか否か判別し(ステップS54)、手動運転操作を検知してはいないと判別したときには、通常自動運転モードの切替条件の監視処理ルーチンを実行するようにする。
そして、ステップS54で、手動運転操作を検知したと判別したときには、制御部101は、通常自動運転モードから手動運転モードに切り替え、その旨をスピーカ126を通じて音声メッセージとして運転者に通知する(ステップS55)。そして、制御部101は、処理をステップS31に戻し、手動運転モードの切替条件の監視処理ルーチンを実行するようにする。
第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1及び第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2のその他の切替条件についても、同様にして、自動運転車1の制御部101は、切替条件の監視を行い、切替条件に合致する状態になると、強制自動運転切替条件記憶部125に記憶されている第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1あるいは第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2に基づいて、強制自動運転内容を実行し、解除条件に合致すると、強制自動運転モードから通常自動運転モードに切り替える。
なお、以上の例においては、手動運転モードから強制自動運転モードに切り替える切替条件の際にも、強制自動運転モードから通常自動運転モードに一旦切り替えて、その後、運転者の手動運転操作を待って、手動運転モードに切り替えるようにしたが、強制自動運転モードから通常自動運転モードを経ずに、直接手動運転モードに切り替えるようにしてもよい。
以上のようにして、上述の第1の実施形態の自動運転車1によれば、通常自動運転モードでの運転中であっても、予め定められた切替条件に合致するような状況になったら、強制自動運転モードに切り替えられる。したがって、予め定められた切替条件に合致するような状況においては、通常自動運転モードから手動運転モードに切り替えられることはなく、自動運転による交通法規を遵守した安全運転が確保されるという効果がある。このため、運転者が、通常自動運転モードから手動運転モードでの運転に切り替えて交通法規違反や安全運転でない運転をしようとしても、予め定められた切替条件に合致するような状況においては、自動的に通常自動運転モードから強制自動運転モードに切り替えられて、手動運転モードへの切り替えることが不可とされるので、交通法規違反が未然に防止され、また、安全運転も維持される。
また、上述の第1の実施形態の自動運転車1によれば、手動運転モードでの運転者による運転中において、運転者が故意又は過失で交通法規違反や安全運転でない運転をしようとしても、自動的に強制自動運転モードに切り替えられ、その交通法規違反が未然に防止され、また、安全運転も維持される。また、運転者による交通法規の忘れや道路標識や道路標示の見落としなどの過失があったとしても、上述の第1の実施形態の自動運転車によれば、強制自動運転モードによる自動運転により、交通安全上、遵守すべき法規が遵守され、安全運転が維持されるように自動運転がなされる。
さらに、運転者が信号無視を繰り返したり、危険運転や無謀運転を繰り返したりしたときには、懲罰的に、強制自動運転モードに切り替えて、終日、手動運転ができないようにするので、事故の発生等を未然に防止することができるという効果もある。
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態では、通常自動運転モードや手動運転モードから強制自動運転モードへの切替条件は、主として、運転者が乗車して運転をしているときを対象としている。第2の実施形態は、第1の実施形態の場合の切替条件に加えて、駐車して運転者が自動運転車から降りた場合においても、交通法規違反とならないようにする切替条件をも対象とする。また、第1の実施形態では、主としてカメラの撮像画像を、切替条件に合致するかどうかを監視するための条件要素の検知のための手段としたが、第2の実施形態では、パトカー(パトロールカー、ポリスカー)や消防車、救急車などの緊急車両(緊急自動車)のサイレンなどの音声を、切替条件に合致するかどうかを監視するための条件要素とすることができるようにする。なお、白バイ(交通取締用自動二輪車)も緊急車両に含めるものとする。さらに、第2の実施形態では、無線通信手段により、緊急地震通報などを受信して、地震に対する備えができるようにする機能も備えるようにしている。
図13は、第2の実施形態の自動運転車1Aの電子制御回路部10Aの構成例を示すブロック図である。この図13において、第1の実施形態の自動運転車1の電子制御回路部10と同一部分には、同一参照符号を付す。この第2の実施形態においては、図13に示すように、電子制御回路部10Aは、第1の実施形態の構成に加えて、システムバス100に対して、携帯電話機能部131が、さらに接続されている。
音声情報記憶部128には、パトカー、白バイや消防車、救急車、ガス事故対策のガス会社の緊急車などが発するサイレンの音声情報が、音声認識部120での音声認識のための比較用として記憶されている。さらに、音声情報記憶部128には、この第2の実施形態では、子供の泣き声や、子供のシートからの落下音、ペットの吠え声なども、予め登録されて記憶されている。
携帯電話機能部131は、この例においては、自動運転車1Aに予め内蔵されているものであり、加入者登録されて、所定の加入者番号が割り当てられている。自動運転車1Aの運転者や同乗者は、いわゆるハンズフリーにより、携帯電話の通話ができる。そして、自動運転車1Aの制御部101は、予め登録されている運転者の携帯電話加入者番号からの当該携帯電話機能部131への着信や、緊急地震通報に対して自動応答して、後述するような所定の通信処理及び運転モードの切り替えや自動運転による走行制御についての制御処理を行うことができる機能を備えている。
音声入出力部118に接続されているスピーカ126及びマイクロホン127は、この第2の実施形態では、携帯電話機能部131を用いたハンズフリーの通話用に用いられる。また、音声入出力部118は、第1の実施形態と同様の機能を備えており、スピーカ126は、通常自動運転モードや手動運転モードから強制自動運転モードへの切り替え時の運転者や乗車者への通知、強制自動運転モードから通常自動運転モードへの切り替え時の通知や通常自動運転モードから手動運転モードへの切り替え時の通知などのためにも用いられる。
また、この実施形態では、マイクロホン127は、パトカーなどの緊急車両のサイレンの収音、子供やペットが発する音声の収音用としても用いられる。なお、マイクロホン127は、自動運転車1Aの車内に設けられる他、パトカーなどの緊急車両のサイレンの収音用として、自動運転車1Aの天井部やドアミラーなどの外側に設けるようにしてもよい。すなわち、マイクロホン127は、複数個からなるものである。
図14及びその続きである図15に、この第2の実施形態の場合における強制自動運転切替条件記憶部125に記憶される第3の強制自動運転切替条件テーブルTBL3の内容の例についての例を示す。この図14及び図15の第3の強制自動運転切替条件テーブルTBL3は、自動運転車1が通常自動運転モードのときにも、また、手動運転モードのときにも共通に用いられる場合を想定した例であるが、通常自動運転モード用と、手動運転モード用とで、異なるものを用意してもよいことは言うまでもない。
なお、この図14及び図15に示す第3の強制自動運転切替条件テーブルTBL3の内容は、この第2の実施形態では、前述の図2に示した第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1の内容に加えて記憶されていると共に、図3及び図4に示した第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2の内容に加えて記憶されるものである。
図14に示すように、例えば「駐車禁止」についての切替条件としては、
(条件C1)駐車禁止の道路標識(図5(E)参照))や時間制限駐車区間の道路標識(図5(G)参照)、あるいは、駐車禁止の道路標示(歩道に黄色の破線で表示される)などにより示される駐車禁止場所や、時間制限駐車可能場所において、
(条件C2)自車の駐車を検知したこと
(条件C3)駐車禁止の恐れを検出したこと
が定められている。
上記の(条件C1)の駐車禁止の道路標識や時間制限駐車区間の道路標識、あるいは、駐車禁止の道路標示は、画像認識部114において、カメラ群107の内の自車の前方や側方の1〜複数個のカメラの撮像画像から、図5(E)に示す道路標識や図5(G)に示す道路標識、あるいは、歩道の黄色い破線で示される道路標示を認識することで、検出することができる。
なお、駐車禁止の場所は、道路標識や道路標示以外にも、道路交通法第45条に種々規定されており、それらにも対応可能である。例えば、消火栓から5m以内や火災報知器から1m以内は、駐車禁止であり、この場合、画像認識部114において、カメラ群107の内の自車の前方や側方の1〜複数個のカメラの撮像画像から、消火栓や火災報知機を認識し、さらに、レーダー群106又はセンサ群108(測距センサ)を用いて消火栓や火災報知機との距離を計測し、所定の距離(5m、1m)以内か認識することで、検出する。
また、(条件C2)の自車の駐車は、図13では図示を省略した、自車動き解析検出部117で検出することができる。なお、手動運転モードでは、運転者により駐車動作が実行される。そして、通常自動運転モードでは、予め設定されたナビゲーションの設定項目として指定された場所での駐車命令指示があったり、通常自動運転モードにおいて、マイクロホン127を通じた音声指示や、タッチパネル112を通じた操作指示による駐車命令指示を受けたりすることに基づいて、自動運転により駐車を実行する場合が想定される。
また、(条件C3)の駐車禁止の恐れは、駐車禁止の場所に5分以上停車することであり、強制自動運転モードへの切替タイミングは、駐車禁止の場所での停車が、駐車違反と見なされない5分を経過する前、例えば駐車禁止場所での停車状態が4分経過したときである。
そして、この「駐車禁止」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、認識した道路標識が、駐車禁止の道路標識か、時間制限駐車区間の道路標識かの種類の違いや、禁止時間帯の有無、駐車時間制限の有無によって異なる。
図14に示すように、認識した道路標識が、図5(E)に示すような駐車禁止の道路標識であって、駐車時間制限及び禁止時間帯の標示や補助標識がない場合(終日駐車禁止の場合)には、次のような自動運転内容となる。
すなわち、自動運転車1Aは、駐車違反と見なされないように停車から5分経過前、例えば4分経過後に、強制自動運転モードに切り替えて、自車を発進して場所を移動する。このとき、自動運転車1Aは、駐車時の運転モードが手動運転モードの場合であって、運転者が降車しているときには、予め登録されている運転者の携帯電話端末に、また、駐車時の運転モードが通常自動運転モードの場合であって、予め登録されている乗車していた乗車者が降車しているときには、乗車者の携帯電話端末に、移動したことを通知する。そして、自動運転車1Aは、運転者や乗車者の携帯電話端末からの着信により、呼び出しがあると、元の駐車した場所に戻るようにする。
また、認識した道路標識が、図5(G)に示すような時間制限駐車区間の道路標識であって、駐車制限時間(図5(G)の例では60分)の表示があり、パーキングメータ(料金メータ)が設置されている場合には、次のような自動運転内容となる。なお、パーキングメータ(料金メータ)に、駐車制限時間を表示する機能が設けられている場合もある。
この場合には、パーキングメータに料金を投入することで、駐車制限時間分の駐車が可能となるので、自動運転車1Aは、駐車開始時あるいはパーキングメータに料金を投入したことをカメラで検知した後に、時計部119により、タイマーを起動し、制限時間を超過する直前に強制自動運転モードに切り替えて自車を移動する。この場合に、自動運転車1Aは、駐車時の運転モードが手動運転モードの場合であって、運転者が降車しているときには、予め登録されている運転者の携帯電話端末に、また、駐車時の運転モードが通常自動運転モードの場合であって、乗車していた乗車者が降車しているときには、予め登録されている乗車者の携帯電話端末に、移動したことを通知する。そして、自動運転車1Aは、運転者や乗車者の携帯電話端末からの着信により、呼び出しがあると、元の駐車した場所の近傍に戻るようにする。なお、パーキングメータに駐車経過時間表示や駐車可能残り時間表示がなされる場合は、その時間表示をカメラで検知することで、タイマーを起動しなくても、駐車制限時間を知ることができる。
また、認識した道路標識が、図5(E)及び図5(G)に示すような道路標識であって、禁止時間帯の標示や補助標識がある場合には、次のような自動運転内容となる。
すなわち、この場合には、自動運転車1Aは、禁止時間帯外での駐車開始後に、時計部119により時刻を監視し、禁止時間帯に突入する直前に強制自動運転モードに切り替えて移動する。この場合に、自動運転車1Aは、駐車時の運転モードが手動運転モードの場合であって、運転者が降車しているときには、予め登録されている運転者の携帯電話端末に、また、駐車時の運転モードが通常自動運転モードの場合であって、乗車していた乗車者が降車しているときには、予め登録されている乗車者の携帯電話端末に、移動したことを通知する。そして、自動運転車1Aは、運転者や乗車者の携帯電話端末からの着信により、呼び出しがあると、元の駐車した場所の近傍に戻るようにする。
また、この「駐車禁止」の切替条件についての強制自動運転モードの解除条件は、運転者や乗車者が降車しているときには、「運転者や乗車者の呼び出しに応じて所定の場所に戻り、運転者や乗車者の乗車を確認したこと」である。
また、運転者や乗車者が乗車中であれば、駐車禁止ではない場所まで移動したこととされる。
次に、例えば「駐停車禁止」についての切替条件としては、
(条件C4)駐停車禁止の道路標識(図5(F)参照))や駐停車禁止の道路標示(歩道に黄色の実線で表示される)などにより示される駐停車禁止場所において、
(条件C5)自車の駐停車の恐れを検知したこと
が定められている。
上記の(条件C4)の駐停車禁止の道路標識や駐停車禁止の道路標示は、画像認識部114において、カメラ群107の内の自車の前方や側方の1〜複数個のカメラの撮像画像から、図5(F)に示す道路標識や歩道の黄色い実線で示される道路標示を認識することで、検出することができる。
なお、駐停車禁止の場所は、道路標識や道路標示以外にも、道路交通法第44条に種々規定されており、それらにも対応可能である。例えば、交差点・横断歩道・自転車横断帯・踏切・軌道敷内・坂の頂上付近・勾配の急な坂・トンネルは駐停車禁止であり、交差点の側端から5m以内の部分、横断歩道の前後の側端からそれぞれ前後に5m以内の部分、踏切の前後の側端からそれぞれ前後に10m以内の部分も、駐停車禁止である。この場合、画像認識部114において、カメラ群107の内の自車の前方や側方の1〜複数個のカメラの撮像画像から、交差点、横断歩道、踏切を認識し、さらに、レーダー群106又はセンサ群108(測距センサ)を用いて、それらの側端ないし前後の側端との距離を計測し、所定の距離(5m、5m、10m)以内か認識することで、検出する。
また、(条件C5)の自車の駐停車の恐れは、手動運転モードでは、運転者により駐停車動作が実行されるので、図13では図示を省略した、自車動き解析検出部117で検出することができる。そして、通常自動運転モードでは、マイクロホン127を通じた音声指示や、タッチパネル112を通じた操作指示による駐停車命令指示を受けたりすることに基づいて検出することができる。
この「駐停車禁止」についての切替条件に付いての切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容は、認識した道路標識が、禁止時間帯の標示や補助標識があるか否かよって異なる。
認識した道路標識に禁止時間帯の標示や補助標識が無い場合には、自動運転車1Aは、切替条件を検出したら即座に強制自動運転モードに切り替えて、駐停車禁止違反をしないようにする。そして、スピーカ126を通じて、「駐停車禁止区域であるので、駐停車できない」ことを放音する。
また、認識した道路標識に禁止時間帯の標示や補助標識が有る場合には、自動運転車1Aは、時計部119により時刻を監視し、禁止時間帯に突入する直前に強制自動運転モードに切り替えて自車を移動する。そして、自動運転車1Aは、駐車時の運転モードが手動運転モードの場合であって、運転者が降車しているときには、予め登録されている運転者の携帯電話端末に、また、駐車時の運転モードが通常自動運転モードの場合であって、乗車していた乗車者が降車しているときには、予め登録されている乗車者の携帯電話端末に、移動したことを通知する。さらに、自動運転車1Aは、運転者や乗車者の携帯電話端末からの着信により、呼び出しがあると、元の駐車した場所の近傍に戻るようにする。
そして、この「駐停車禁止」の切替条件についての強制自動運転モードの解除条件は、認識した道路標識に禁止時間帯の標示や補助標識が無い場合には、駐停車禁止ではない場所まで移動したこととされる。
また、認識した道路標識に禁止時間帯の標示や補助標識が有る場合には、「駐車禁止」の切替条件についての強制自動運転モードの解除条件と同様とされる。
次に、この第2の実施形態では、
(条件C6)自動運転車1Aの携帯電話機能部131で、緊急地震通報を受信したとき
も切替条件としている。
すなわち、自動運転車1Aの制御部101は、緊急地震通報の受信を確認すると、通常自動運転モードあるいは手動運転モードから強制自動運転モードに切り替える。
そして、この時の強制自動運転モードにおける自動運転内容は、「ハザードランプを点灯し、緩やかに速度を落とし、地震による大きな揺れを感じたら、路肩に停車する」である。
そして、この時の強制自動運転モードの解除条件は、「緊急地震通報の受信から所定時間(例えば5分)経過後」である。もちろん、余震の危険があるなどの余震情報を受信している場合は、「所定時間経過後」であっても強制自動運転を解除せず、余震の危険が去ったとの情報を受信した時点を強制自動運転モードの解除条件にしてもよい。
次に、第2の実施形態では、音声情報に基づいて通常自動運転モードあるいは手動運転モードから強制自動運転モードに切り替える切替条件として、図15に示すように、「パトカー等緊急車両の接近」が定義されている。
「パトカー等緊急車両の接近」についての切替条件としては、
(条件C7)パトカー等緊急車両が発するサイレン音を検出し、あるいは、
(条件C8)パトカー、白バイからの「前方の車、左側に寄ってください」や「前方の車、止まりなさい」などの呼びかけ、かつ、
(条件C9)後方カメラで、パトカー等緊急車両の接近を検出したこと
が定められている。
そして、この場合の強制自動運転モードにおける自動運転内容は、交通法規に則って、「交差点又はその付近であるときには、交差点を避け、道路の左側に寄って一時停止」すると共に、「交差点又はその付近以外では、道路の左側に寄って、徐行又は一時停止して進路を譲る」ことと定められている。
また、この場合の強制自動運転モードの解除条件は、「運転の停止」や「パトカー等緊急車両が通過したこと」とされる。
また、第2の実施形態においては、交通法規の遵守ではないが、危険な運転状態を回避するようにするため、通常自動運転モードあるいは手動運転モードから強制自動運転モードに切り替えるようにすることも行う。例えば、図15に示すように、気象の悪条件を切替条件とすることもできる。
すなわち、この「気象の悪条件」についての切替条件としては、
(条件C10)自動運転車1Aの設定メニューの設定項目として設けられている切替条件とするか否かの設定が、オンとされていること、
(条件C11)運転に対する気象の悪条件として定められる「悪天候(例えば大雨、暴風、暴風雨、暴風雪など)」を検出したこと
が定められている。
この切替条件は、運転者が手動運転モードでの運転ミスを生じ易いので、運転ミスを回避して事故の発生を未然に防ぐことを目的とする。また、通常自動運転モードでは、カメラ群107における撮像画像が不鮮明になり、画像認識部114での画像認識が不完全になったり、レーダー群106による測定結果やセンサ群108のセンサ出力の精度が落ちたりするので、安全な走行が困難になるので、それを未然に防ぐことを目的とする。
この場合の強制自動運転モードにおける自動運転内容は、「強制自動運転モードによる安全な場所への避難」と定められている。ここで、安全な場所とは、悪天候をやり過ごすことが可能な、近隣の駐車施設のある場所などである。近隣の駐車施設のある場所は、携帯電話機能部131によりインターネットに接続して、周辺検索を行って検出することができる。
また、この場合の強制自動運転モードの解除条件は、気象の悪条件の消失とされる。なお、気象の悪条件は、カメラ群107のカメラによる車外の撮像画像から、検出することができる。また、携帯電話機能部131によりクラウドに接続し、気象の悪条件を入手することもできる。
なお、以上は、通常自動運転モードと手動運転モードとで共通の切替条件とすることができる例について説明したが、上述したように、通常自動運転モードと手動運転モードとのそれぞれで異なる切替条件を設定するようにすることも勿論できる。
例えば、音声情報に基づいて手動運転モードのみから強制自動運転モードに切り替える切替条件として、「同乗する子供、ペットの発する音」についての切替条件を設定するようにすることができる。
この場合の「同乗する子供、ペットの発する音」についての切替条件としては、
(条件C12)子供の泣き声を検出、又は、子供のシートからの落下音を検出、あるいは
(条件C13)ペットの吠え声を検出したこと
を定めることができる。
この切替条件は、運転者がこれらの音に注意を奪われ、余所見をすることによる事故の発生の恐れを回避することを目的とする。
この場合の強制自動運転モードにおける自動運転内容は、「強制自動運転モードによる通常走行」と定められ、例えば直進走行を維持することで、安全な走行状態を保つようにする。
また、この場合の強制自動運転モードの解除条件は、強制自動運転モードへの切り替えから所定時間(例えば5分)経過後の手動運転操作とされる。
さらに、手動運転モードのみから強制自動運転モードに切り替える切替条件として、運転に対する気象の悪条件として定められる「逆光」あるいは「薄暮(日没)」を定めるようにしてもよい。この切替条件は、運転者が運転ミスを生じ易いので、運転ミスを回避して事故の発生を未然に防ぐことを目的とする。
この場合の強制自動運転モードにおける自動運転内容は、「強制自動運転モードによる通常走行」と定めることができる。そして、この場合の強制自動運転モードの解除条件は、気象の悪条件の消失とされる。例えば、カメラ群107のカメラによる運転者の顔の撮像画像から、逆光時などに、運転者が目を細めたり、見にくそうにしたりするというような運転者の表情を認識して、気象の悪条件を判断し、そのような状況が無くなった時に、強制自動運転モードを解除するようにすることもできる。逆光については、運転席の日除けであるサンバイザーの利用の有無で判断してもよい。
なお、交通法規の遵守ではないが、危険な運転状態を回避するようにするため、強制自動運転モードに切り替えるようにする切替条件としては、上述の気象の悪条件に限られるものではない。例えば、フロントガラスの著しい汚れのために前方が見にくい場合を切替条件とするようにしてもよい。この切替条件は、手動運転モードから強制自動運転モードへの切替条件とするだけでなく、通常自動運転モードから強制自動運転モードへの切替条件とすることもできる。
なお、上述の図13の第2の実施形態の自動運転車1Aの構成において、携帯電話機能部131を設ける代わりに、携帯電話機能を有しないその他の無線通信手段で、上述の携帯電話機能部131の機能を構成することもできる。さらに、携帯電話機能部とその他の無線通信手段の両者を設けるようにして、通信機能を充実させてもよい。
この第2の実施形態においても、自動運転車1Aにおける運転モードの切り替え処理の要部の大まかな動作の流れは、図6〜図8に示したものと同様である。次に、図6のステップS2,S3及び図7のステップS11,S12での切替条件の監視、図6のステップS5及び図7のステップS14の強制自動運転処理内容及び図6のステップS6及び図7のステップS14の解除条件の監視の部分を処理動作の例として、上述した駐車禁止の切替条件の場合を例に、図を参照してさらに説明する。
例えば図16に示すように、駐車禁止の道路標識31が存在する場所に、自動運転車1Aが停車した場合、自動運転車1Aは、当該道路標識31を把握すると共に、その禁止時間帯を把握し、通常自動運転モードから、あるいは手動運転モードから、強制自動運転モードに切り替える。そして、自動運転車1Aは、禁止時間帯が設定されている場合には、現在時刻を参照して、今現在が駐車禁止か否かを判断する。今現在が駐車禁止であれば、自動運転車1Aは、駐車と見なされない5分を経過する前に自車を移動させて、駐車違反になるのを防止する。
現在時刻が禁止時間帯でなければ、自動運転車1Aは、そのまま駐車を継続するが、現在時刻の監視は継続する。そして、現在時刻が禁止時間帯になったら、禁止時間帯に突入してから5分を超えない時間、例えば4分経過後(図16の例では、8:04になったら)、自車を移動させて、駐車違反になるのを防止する。
また、図17に示すように、道路標識32が駐停車禁止であるときには、自動運転車1Aは、禁止時間帯に突入する時刻前である、例えば7:58に、自車の移動をして、駐停車禁止違反になるのを防止するようにする。
また、図18に示すように、パーキングメータ33が設置されている場所であって、時間制限駐車区間の道路標示34が設置されている場所に、自動運転車1Aが停車した場合には、通常自動運転モードから、あるいは手動運転モードから、強制自動運転モードに切り替える。そして、運転者がパーキングメータ33に制限時間分(図18の例では60分)の料金を投入することで、パーキングメータ33のタイマーがスタートするのと合わせて、自動運転車1Aは、時計部119を用いるタイマーをスタートさせる。この場合、前述したように、自動運転車1Aが停車した時点から、時計部119を用いるタイマーをスタートさせてもよいし、カメラ画像からパーキングメータ33への料金の投入を確認した後、時計部119を用いるタイマーをスタートさせてもよい。
そして、自動運転車1Aは、タイマーを監視して、制限時間を超えない時間の経過時点で、自車を移動させて、駐車違反となるのを防止するようにする。
なお、制限時間がない場合や、制限時間があっても、それより料金区分の時間が短い場合は、投入した料金分の時間によって、タイマーを監視するようにする。
図19及びその続きである図20〜図22は、切替条件が「駐車禁止」に関する場合の詳細処理の流れの例を説明するためのフローチャートである。ただし、この図19〜図22の例は、自動運転車1Aが通常自動運転モードであるときの処理動作例である。
まず、図19に示すように、制御部101は、カメラ群107のカメラの撮像画像から、駐車禁止の道路標識を認識したか否か判別し(ステップS61)、駐車禁止の道路標識を認識してはいないときには、ステップS61を継続する。
ステップS61で、駐車禁止の道路標識を認識したと判別したときには、制御部101は、自車が停車したか否か判別し(ステップS62)、停車しなければ、処理をステップS61に戻す。
ステップS62で、自車が停車したと判別したときには、制御部101は、カメラ群107のカメラの撮像画像から、パーキングメータが設置されているか否か判別する(ステップS63)。ステップS63で、パーキングメータが設置されていないと判別したときには、駐車禁止の道路標識には、禁止時間帯の標示や補助標識があるか否か判別する(ステップS64)。
ステップS64で禁止時間帯の標示や補助標識があると判別したときには、現時点は、禁止時間帯内か否か判別する(ステップS65)。このステップS65で、禁止時間帯内ではないと判別したときには、制御部101は、停車中の時間経過を監視し(ステップS66)、処理をステップS65に戻す。
ステップS64で、禁止時間帯はなく、終日駐車禁止であると判別したとき、また、ステップS65で、現時点が禁止時間帯になったと判別したときには、駐車禁止開始となったときから、自車の停止状態が5分以下の所定時間、例えば4分経過したか否か判別する(ステップS67)。
ステップS67で、駐車禁止の停止状態から4分経過してはいないと判別したときには、制御部101は、このステップS67を繰り返す。このステップS67で、駐車禁止の停止状態から4分経過したと判別したときには、制御部101は、通常自動運転モードから強制自動運転モードに切り替えて、自車を発進させ、移動させて駐車違反を防止する(ステップS68)。
次に、制御部101は、カメラ群107のカメラの撮像画像から、乗車者は乗車中か否か判別する(図20のステップS71)。このステップS71で、乗車者が乗車中であると判別したときには、制御部101は、駐車禁止位置であったことにより強制自動運転モードに切り替えて移動したことを、スピーカ126により乗車者に音声で通知する(ステップS72)。
そして、制御部101は、カメラ群107のカメラの撮像画像から、駐車禁止区域外に移動したか否か判別し(ステップS73)、駐車禁止区域外に移動したと判別したときには、強制自動運転モードから通常自動運転モードに切り替えて、その旨をスピーカ126により乗車者に音声で通知する(ステップS74)。そして、制御部101は、処理を図19のステップS61に戻し、このステップS61以降の処理を繰り返す。
また、ステップS71で、乗車者は乗車中ではないと判別したときには、制御部101は、携帯電話機能部131に予め記憶されている乗車者の携帯電話端末の電話番号に電話をかけ、携帯電話機能部131に備えられている音声合成機能により、携帯電話機能部131に予め記憶されている音声メッセージ、例えば「駐車違反を防止するために移動しました」との音声メッセージを音声に変換して乗車者に送る(図21のステップS81)。
そして、制御部101は、カーナビ機能部113によるカーナビ機能を利用しながら、元の駐車場所の周囲を継続して移動、あるいは駐車可能な場所があれば、その駐車可能な場所に駐車する(ステップS82)。
そして、制御部101は、乗車者の携帯電話端末からの呼び出しの受信を待つ(ステップS83)。乗車者の携帯電話端末における呼び出しの操作は、所定のキー操作入力、例えば「#55」とされる。制御部101は、携帯電話機能部131に記憶されている乗車者の携帯電話端末の電話番号により、乗車者の携帯電話端末からの電話着信に自動応答し、例えば、続いて送られてくる「#55」を検出することで、乗車者の呼び出しを検知する。
ステップS83で、乗車者からの呼び出しを受信したことを検知すると、制御部101は、自動運転により自車を元の停車位置に戻す(ステップS84)。
なお、この例では、自車を元の停車位置に戻すようにしたが、乗車者の携帯電話端末からの呼び出しの情報に、運転者の現在位置の情報を加えて送るようにし、この乗車者の現在位置を携帯電話機能部131を通じて判別し、カーナビ機能部113により、自車を、当該乗車者の現在位置に移動させるようにしてもよい。
ステップS84の次には、制御部101は、乗車者の乗車をカメラ群107のカメラの撮像画像についての画像認識部114での画像認識により確認できたかどうか判別し(ステップS85)、確認できた時には、自車を発車させる(ステップS86)。そして、制御部101は、通常自動運転モードに切り替える(ステップS87)。
その後、制御部101は、スピーカ126から、強制自動運転モードから通常自動運転モードに切り替えた旨の音声メッセージを放音して、乗車者に通知する(ステップS88)。そして、制御部101は、処理を図19のステップS61に戻し、このステップS61以降の処理を繰り返す。
そして、図19のステップS63で、パーキングメータが設置されていると判別したときには、図22に示すように、制御部101は、ステップS61で認識した道路標識には禁止時間帯の標示や補助標識があるか否か判別する(ステップS91)。このステップS91で、道路標識には禁止時間帯の標示や補助標識があると判別したときには、制御部101は、現時点は禁止時間帯内であるか否か判別する(ステップS92)。このステップS92で、現時点は禁止時間帯内であると判別したときには、制御部101は、処理を図19のステップS67に移行し、このステップS67以降の処理を行う。
ステップS91で、道路標識には禁止時間帯の標示や補助標識がないと判別したとき、また、ステップS92で、現時点は禁止時間帯内ではないと判別したときには、制御部101は、パーキングメータへの乗車者による料金投入をカメラ群107のカメラの撮像画像から、確認できたか否か判別する(ステップS93)。
ステップS93で、パーキングメータへの乗車者による料金投入を確認できなかったときには、制御部101は、パーキングメータへの乗車者による料金不投入を確認できたか否か判別する(ステップS94)。このステップS94での料金不投入の確認は、例えば停車から3分以内に乗車者が料金を投入する行為をしたか否かにより判別する。
ステップS94で、料金不投入を確認できたときには、制御部101は、処理を図19のステップS67に移行し、このステップS67以降の処理を実行する。また、ステップS94で、料金不投入を確認できていないときには、制御部101は、処理をステップS93に戻す。
そして、ステップS93で、パーキングメータへの乗車者による料金投入を確認できた時には、制御部101は、道路標識に表示されている駐車可能時間のタイマーによる計測を開始する(ステップS95)。次に、制御部101は、駐車可能時間を超過する恐れを検知したか否か判別する(ステップS96)。このステップS96では、駐車可能時間の満了直前の時間、例えば3分前を、駐車可能時間を超過する恐れがあるとして検知する。
このステップS96で、駐車可能時間を超過する恐れを検知してはいないと判別したときには、制御部101は、処理をステップS96に戻し、駐車可能時間のタイマーによる計測を継続する。
そして、ステップS96で、駐車可能時間を超過する恐れがあると判別したときには、制御部101は、処理を図19のステップS68に移行させて、通常自動運転モードから強制自動運転モードに切り替え、このステップS68以降の処理を実行する。
以上のようにして、第2の実施形態の場合にも、第1の実施形態と同様にして、自動運転車1Aを、安全な走行を維持することができるように制御することができる。
また、第2の実施形態の自動運転車1Aによれば、緊急地震通報を受けたときには、手動運転モードあるいは通常自動運転モードのいずれの運転モードでの走行中であっても、自動的に強制自動運転モードに切り替えて、確実に路肩に停車させることができる。また、パトカー等の緊急車両の接近や、パトカーや白バイからの呼びかけがあった時にも、手動運転モードあるいは通常自動運転モードから自動的に強制自動運転モードへ切り替えて、緊急車両に道を譲ったり、呼びかけに応じて路肩に停車することが確実に行うようになる。
さらに、気象の悪条件の状態では、強制自動運転モードにより安全な場所に避難するようにすることができ、運転者や乗車者の安全を確保することができる。
なお、上述の例では、緊急地震通報を受けたときを切替条件の例として挙げたが、津波注意報や津波警報を受信したとき、川の氾濫注意報や警報を受信したとき、土砂崩れの注意報や警報を受信したとき、さらには、火山の噴火注意報や警報を受信したとき、を切替条件とすることもできる。そして、強制自動運転モードのおいては、津波注意報や警報を受信したとき、海方面に向かわないように走行制御する、川の氾濫注意報や警報を受信したときには、当該川に近づかないように走行制御する、土砂崩れの注意報や警報を受信したときには、その土砂崩れの場所に近づかないように走行制御する、さらに、火山の噴火注意報や警報を受信したとき、当該火山の方面には向かわないように走行制御する。
[その他の実施形態又は変形例]
なお、前述したように、図2、図3、図4、図14、図15のテーブルに示した切替条件などは例示であって、この発明の自動運転車が対象とする切替条件などは、これに限られるものではない。
例えば、トンネル、狭い山道、狭い路地、事故多発地帯などの手動運転では危険が生じる恐れがある場所の直前の位置になったことを切替条件に設定する。これらのトンネル、狭い山道、狭い路地、事故多発地帯などの場所では、運転者の運転技量(例えば、運転の初心者や高齢者のドライバーの場合、ベテランドライバーに比べ、運転ミスの確率が高い)や資質(例えば、乱暴な運転をするドライバーの場合、慎重な運転をするドライバーに比べ、運転ミスの確率が高い。また、急アクセル、急ブレーキ、急ハンドルの多いドライバーは危険運転をすることが多い)によっては手動運転では危険なので、通常自動運転モードから手動運転モードに切り替えられないように、通常自動運転モードから強制自動運転モードに切り替えるようにする。同様に、合流地点、高速道路の入口、駐車場出口、駅のロータリーなどの場所の直前の位置になったことを切替条件に設定するようにしてもよい。これらの場所に関する切替条件により切り替えられた強制自動運転モードは、それらの場所を通過したことが強制自動運転モードの解除条件となる。
また、走行中の時間帯が、例えば通勤・通学時間帯(ラッシュアワー)のときには、上述と同様に、運転者の運転技量や資質に基づく理由から、通常自動運転モードから手動運転モードに切り替えられてしまうと危険な状態になる恐れがあるので、通常自動運転モードから強制自動運転モードにする。この場合の切替条件は、現在時刻が通勤・通学時間帯(ラッシュアワー)であるか否かのみでもよいが、走行場所が当該通勤・通学時間帯では人の往来や他の自動車の走行数が多い駅前や、学校の近く、あるいは走行路が学校への通学路である場合を切替条件に加えるようにしてもよい。この時間に関する切替条件により切り替えられた強制自動運転モードは、その時間を経過したことが強制自動運転モードの解除条件となる。場所の要件が切替条件に加えられる場合には、通勤・通学時間帯であっても、その影響のない場所を走行する状態になったら、強制自動運転モードを解除するようにしてもよい。
また、危険なシチュエーションの発生の恐れを切替条件としてもよい。例えば、通常自動運転モードでの走行中に、子供やペットが運転席のそばにいる(又は運転席のそばに来た)場合は、子供やペットによりハンドルがいじられるなどして、手動運転モードへの切替操作が、子供やペットにより誤ってなされる可能性がある。そこで、通常自動運転モードでの走行中において、子供やペットが運転席のそばにいる(又は運転席のそばに来た)状態を切替条件とし、その切替条件を検出したときには、危険だと判断し、通常自動運転モードから強制自動運転モードに切り替えるようにする。この場合の切替条件の検出は、例えばカメラ群107による車内の撮像画像に基づいて、行うことができる。そして、この場合には、子供やペットが運転席から離れたことが強制自動運転モードの解除条件となる。
また、運転者の病気の発現などの特殊なシチュエーションの状況を切替条件としてもよい。例えば、手動運転モードあるいは通常自動運転モードでの走行中に、運転者が発作を起こしたり、人事不省の状態に陥ったりした運転者の身体的異変を切替条件とし、この切替条件を検出したときには、手動運転モードあるいは通常自動運転モードから強制自動運転モードに切り替え、強制自動運転内容として、例えば近隣の病院を検索して、その病院に向かう、あるいは、予め定められている病院に向かうようにする。この場合の切替条件の検出は、例えばカメラ群107による運転者の撮像画像の画像認識結果や、マイクロホン127で収音した音声信号の音声認識結果などから行うようにする。そして、この場合には、病院への到着が強制自動運転モードの解除条件となる。もちろん、運転者以外の乗車者の身体的異変を切替条件にしてもよい。行先は、運転者又は乗車者の自宅に向かうようにしてもよい。なお、この場合、病院又は自宅に、運転者又は乗車者の身体的異変の旨を、事前に電話やメールなどで伝えるようにしておくとよい。
また、例えば、運転者(あるいは乗車者)が犯罪者であると検出や判別された状況を切替条件としてもよい。この場合には、運転者の顔画像と、自車に登録された犯罪者の顔画像あるいはクラウドにアクセスして取得した犯罪者の顔画像とを比較する画像認識を行うことで、運転者が犯罪者であるかどうかの切替条件に合致しているかどうかを検出する。この場合の強制自動運転内容は、例えば所轄又は最寄りの警察署(交番、駐在所を含む)を検索し、その警察署に向かうとされ、その警察署に到着して、犯罪者が警察官に逮捕されたら、強制自動運転モードが解除される。なお、この場合、警察署に、犯罪者護送の旨を、事前に電話やメールなどで伝えるようしておくとよい。また、併せて、犯罪者の顔画像をメール添付で送るようにしてもよい。
ところで、上記の切替条件の他の例の中には、上述したように、運転者の運転技量や資質によっては手動運転では危険なので、通常自動運転モードから手動運転モードに切り替えられないように定めた切替条件が含まれる。したがって、切替条件として、運転者の運転技量や資質に応じて切替条件とするべきもの、あるいは、切替条件としなくてもよいものが存在する。運転者の運転技量や資質は、それぞれの運転者の過去の手動運転モードでの運転履歴から判断することが可能である。運転者の過去の手動運転モードでの運転履歴は、それぞれの運転者の顔画像などの生体情報やその他の運転者に固有の識別情報に対応して自動運転車自身に格納しておくか、あるいはクラウドに格納すると共に、適宜、読み出すことができるようにしておくことができる。
以上のことを踏まえて、第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1を、運転者の運転技量や資質に応じて、複数個、予め用意しておき、それらの複数個のテーブルTBL1の中から、自動運転車が、実際の運転者の運転技量や資質に応じて自動的に選択するように構成することもできる。
図23は、この場合の例の自動運転車の制御部が、予め用意されている複数個の第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1の中から、運転者の運転技量や資質に応じた第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1を、自動的に選択する処理の流れを説明するためのフローチャートの一例である。この場合の例の自動運転車の電子制御回路部は、図13に示した第2の実施形態の自動運転車1Aの電子制御回路部1Aと同様の構成とすることができる。
この場合の例の自動運転車の制御部(以下制御部101Bという。図示は省略)は、先ず、運転者の識別情報を取得する(ステップS101)。このステップS101では、制御部101Bは、運転者の識別情報が、例えば運転者の顔画像であれば、カメラ群107のカメラで運転者の顔画像を撮像して取得する。また、運転者の識別情報が、例えばパスワードであれば、制御部101Bは、運転者に対してその入力を促して、例えばタッチパネル112を通じて入力されたパスワード、あるいはマイクロホン127を通じて音声入力されたパスワードを、識別情報として取得する。
次に、制御部101Bは、取得した運転者の識別情報を用いて、運転者の過去の手動運転モードでの運転履歴を参照する(ステップS102)。このステップS102では、制御部101Bは、運転者の過去の手動運転モードでの運転履歴情報が自車に記憶部に蓄積されている場合には、取得した運転者の識別情報を用いて、その記憶部から当該運転者の過去の運転履歴情報を読み出して参照する。また、運転者の過去の手動運転モードでの運転履歴情報がクラウドに格納されている場合には、制御部101Bは、クラウドにアクセスし、取得した運転者の識別情報を用いて、クラウドから当該運転者の過去の手動運転モードでの運転履歴情報を取得して参照する。
次に、制御部101Bは、参照した運転者の過去の手動運転モードでの運転履歴情報から、当該運転者の運転技量や資質を判定する(ステップS103)。
次に、制御部101Bは、ステップS103で判定した運転者の運転技量や資質に応じた第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1を選定する(ステップS104)。そして、制御部101Bは、選定した第1の強制自動運転切替条件テーブルに基づいた運転モードの切替処理を実行する(ステップS105)。
なお、第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2についても、運転者の運転技量や資質に応じて、複数個、予め用意しておき、上述と同様にして、実際の運転者の運転技量や資質に応じて自動的に選択、あるいは、運転者により選択することができるようにしても、勿論よい。
また、第1の強制自動運転切替条件テーブルTBL1や第2の強制自動運転切替条件テーブルTBL2を、自動運転車が自動的に選択するのではなく、運転者自身が自分の運転技量を判断し、タッチパネルを通じて、あるいは音声入力を通じて、複数個の切替条件テーブルの中から選択することができるようにしてもよい。
なお、例えば、道路標識、道路標示、道路の黄色ラインや白線が見えにくくなっているために、画像認識部114での画像認識能力等の理由で、強制自動運転モードに切替えて自動運転で走行するには支障がある状況であるか否かを判断する判断手段を設け、当該判断手段で自動運転で走行するには支障がある状況であると判断される場合は、切替条件に合致すると判別しても、強制自動運転モードへの切替を禁止するようにしてもよい。
なお、交通法規や道路標識、道路標示は国によって異なる場合がある。したがって、道路標識等データベース124には、自動運転車が走行する国毎の交通法規や道路標識、道路標示のデータが格納される。また、強制自動運転切替条件記憶部125には、自動運転車が走行する国毎の交通法規を遵守するようにするために予め定められた強制自動運転切替条件テーブル(強制自動運転モードへの切替条件、切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容、強制自動運転モードの解除条件)、あるいは、安全運転を維持するようにするために予め定められた強制自動運転切替条件テーブルが記憶されるものである。
自動運転車の走行範囲が、所定の1か国のみとされるように走行範囲が限定されている場合は、自動運転車は、その国の交通法規や道路標識等のデータや、強制自動運転切替条件のみを記憶していればよい。
しかし、EU(European Union;欧州連合)などのように、複数国での走行が日常的に行われる場合は、自動運転車は、走行が予定される全ての国の交通法規や道路標識、道路標示のデータを、国の識別情報と対応付けて道路標識等データベース124に格納すると共に、強制自動運転切替条件テーブルも、走行が予定される全ての国のそれぞれについて、国の識別情報と対応付けて、強制自動運転切替条件記憶部125に格納しておく。そして、自動運転車は、GPS衛星からの電波や携帯電話機能部131などで、走行中の現在位置を検出し、その現在位置から国境を識別して、走行する国が変わるときに、変更後の国の識別情報に対応するデータを、道路標識等データベース124や強制自動運転切替条件記憶部125から読み出すように切り替えるようにする。
なお、このように自動運転車が自動的に道路標識等データベース124や強制自動運転切替条件記憶部125から読み出すデータを、走行中の国に対応して自動的に切り替えるのではなく、運転者や乗車者が、走行中の国を特定して、その走行中の国に応じたデータや切替条件テーブルを、道路標識等データベース124や強制自動運転切替条件記憶部125から読み出すように切り替えて利用するようにしてもよい。なお、各国毎のデータや切替条件テーブルは自動運転車に予め格納しておいてもよいし、クラウドから入手してもよい。もちろん、これらのデータや切替条件テーブルを記憶部から読み出すのではなく、あらかじめ全て処理プログラムに内蔵させ、走行中の国毎に切り替えて利用するようにしてもよい。
なお、交通法規や道路標識等は、国ごとではなく、同じ国内でも州(米国)や省(中国)、都道府県によって異なる場合があるが、その場合にも、上述と同様に、GPS衛星からの電波や携帯電話機能部131などで走行中の現在位置を検出し、その現在位置に基づいて、道路標識等のデータや切替条件テーブルを切り替えるようにすることもできる。
また、上述の実施形態の自動運転車では、各種データベースや各種記憶部は自車搭載で構成したが、これに限られるものではなく、クラウド上にあってもよいことはもちろんである。カメラ群107についても、自車搭載に限らず、自動運転車が、信号機や街灯などに設置される監視カメラからの画像を通信で入手したり、他車のカメラからの画像を車車間通信で入手したりしてもよい。レーダー群106、センサ群108についても同様に、自車搭載に限らず、ITSスポットなど外部システムや他車から通信で、レーダー情報や各種センサ情報などの入手が可能である。
また、第2の実施形態では、自動運転車が無線通信手段を有することで、緊急地震通報などを受信して、地震に対する備えができるようにする例を述べたが、それ以外にも、無線通信手段により上記のような外部カメラからの画像や外部システムからの各種情報を受信することもできるし、インターネットより最新の危険回避情報や安全運転情報をダウンロードしたり、また強制自動運転モードへの切替条件、切替後の強制自動運転モードでの走行制御内容、強制自動運転モードの解除条件などをアップデートしたりすることができる。
また、上述の実施形態の自動運転車は、電気自動車の場合としたが、ガソリン車、ハイブリッド車、燃料電池車、その他の駆動方式の自動車であっても、この発明は適用可能である。
さらに、上述の実施形態の自動運転車は、普通自動車、軽自動車のみならず、トラック、バス、タクシー、パトカー、救急車、消防車、教習車、トラクター、ダンプカー、ショベルカー、フォークリフト、また、一人用自動車、自動二輪車、自動三輪車などであっても、この発明は適用可能である。もちろん、上述の実施形態の自動運転車は、水陸両用車や空陸両用車(空飛ぶ車)であってもよい。
なお、上述の実施形態の自動運転車は、自車が強制自動運転モード中であることを外部に表示や音声あるいは電波で報知するようにしてもよい。この報知により、外部からすれば、当該自動車は安全性が高いことが判別できるという効果がある。