JP6386884B2 - パウダー状マスターバッチ、マスターバッチ、及びこれらの製造方法 - Google Patents

パウダー状マスターバッチ、マスターバッチ、及びこれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、オレフィン系重合体を含むパウダー状マスターバッチ、及び該パウダー状マスターバッチを含むマスターバッチ、並びにこれらの製造方法に関する。
ポリオレフィン系樹脂は、剛性や衝撃強度に優れ、広く使用されている。特に、自動車用材料にポリオレフィン系樹脂からなる組成物を射出成形等によって成形して得られた成形品が用いられるようになってきている。これらの成形品には、剛性、耐衝撃強度等の機械的特性に加えて、自動車のボディとの一体感、高級感及び高意匠性など、優れた外観が要求されている。
剛性、耐衝撃強度等の機械的特性を向上させる方法として、無機フィラーを含有させることが広く一般に行われており、良外観が要求される分野においてはタルクなどの小粒子径の無機フィラーを含有させることが多数提案されている(例えば、特許文献1)。
また、着色のために用いられる顔料や、軟化剤、充填剤、離型剤などの添加剤を比較的高濃度に含む、あらかじめ製造したマスターバッチ組成物を、成形用材料のポリオレフィン系樹脂に配合し成形することにより、得られる成形体の物性の向上や操業性の向上が図られている(例えば、特許文献2)。この手法において、成形用材料のポリプロピレン系樹脂と同一のポリプロピレン系樹脂をマスターバッチ組成物の担体用樹脂として用いるという手法がある。
しかしながら、特許文献1においては、ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂に小粒子径無機フィラーを含有させた場合、無機フィラーの分散不良による耐衝撃性の低下などの問題がある。
また、特許文献2の手法では、同一のポリオレフィン系樹脂であれば、相容性が良いためにマスターバッチ組成物がポリオレフィン系樹脂中に高分散し、外観が向上することが考えられるが、射出成形に用いられるポリオレフィン系樹脂は、分子量が高いため溶融粘度が高く、顔料の含有量を約30質量%以上にすると、混練性や賦型性が困難になってくるという問題がある。また、高結晶性で結晶化速度が速いために添加剤と担体であるポリオレフィン系樹脂との相分離が進行するため添加剤の添加量を高くすることができず、操業性が向上しないという問題もある。
特許文献3には特定の物性値を有するオレフィン系重合体を用いることで、ポリプロピレン系樹脂の射出成形体の製造に有用なマスターバッチ組成物が得られることが記載されているが、各種添加剤の充填率について更なる向上を目指している。
特開2007−284502号公報 特開2006−176550号公報 特開2006−176750号公報
本発明が解決しようとする課題は、ポリオレフィンに対する充填剤の分散性を向上させることができるとともに、優れた剛性及び耐衝撃性を備えた成形体を形成可能なパウダー状マスターバッチ及びマスターバッチ、並びにこれらの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、成形体を構成するポリオレフィン系組成物を製造する際、特定の物性値を有するオレフィン系重合体(I)(以下、単に「オレフィン系重合体(I)」ともいう。)と充填剤とを混合して得られるパウダー状マスターバッチ又は該パウダー状マスターバッチを含むマスターバッチを用いることにより、ポリオレフィンに対する該充填剤の分散性を向上させることができるとともに、該成形体を構成するポリオレフィン系組成物において優れた剛性及び耐衝撃性を発現させることができることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[18]を提供する。
[1]下記(a)〜(b)を満たすオレフィン系重合体(I)と充填剤とを含み、該オレフィン系重合体(I)及び該充填剤の合計量100質量%に対して、該充填剤が70〜98質量%であるパウダー状マスターバッチ。
(a)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから計測される融解吸熱量ΔH−Dが90J/g未満
(b)GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜500,000
[2]レーザー回折法で測定される前記充填剤の平均粒子径D50が0.01〜30μmである、上記[1]に記載のパウダー状マスターバッチ。
[3]前記オレフィン系重合体(I)の50モル%以上がプロピレンモノマーで構成されるプロピレン系重合体(I−i)である、上記[1]又は[2]に記載のパウダー状マスターバッチ。
[4]前記オレフィン系重合体(I)が下記(i)、(ii)の少なくともどちらか一つを満たす、上記[3]に記載のパウダー状マスターバッチ。
(i)エチレンの構成単位が0モル%を超えて、20モル%以下で含まれる。
(ii)1−ブテンの構成単位が0モル%を超えて、30モル%以下で含まれる。
[5]前記オレフィン系重合体(I)が、下記(c)を満たす、上記[3]に記載のパウダー状マスターバッチ。
(c)メソペンタッド分率[mmmm]が20〜60モル%である。
[6]前記オレフィン系重合体(I)が、下記(d)を満たす、上記[3]〜[5]のいずれかに記載のパウダー状マスターバッチ。
(d)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
[7]前記オレフィン系重合体(I)が、下記(d)及び(e)を満たす、上記[5]に記載のパウダー状マスターバッチ。
(d)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
(e)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
[8]前記オレフィン系重合体(I)が、下記(f)及び(g)を満たす、上記[5]又は[7]に記載のパウダー状マスターバッチ。
(f)[rmrm]>2.5モル%
(g)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
[9]上記[1]〜[8]のいずれかに記載のパウダー状マスターバッチと、オレフィン系重合体(II)とを含むマスターバッチ。
[10]前記パウダー状マスターバッチ及び前記オレフィン系重合体(II)の合計量100質量%に対して、該オレフィン系重合体(II)が20〜95.5質量%である、上記[9]に記載のマスターバッチ。
[11]下記(1)及び(2)の工程を有するパウダー状マスターバッチの製造方法。
(1)下記(a)〜(b)を満たすオレフィン系重合体(I)と充填剤を温度60℃以上、攪拌速度120rpm以上、3分以上で攪拌し混合物を得る工程
(a)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから計測される融解吸熱量ΔH−Dが90J/g未満
(b)GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜500,000
(2)前記工程(1)で得られた混合物を冷却する工程
[12]前記工程(1)が、前記充填剤を温度60℃以上、攪拌速度120rpm以上で攪拌した後、該充填剤に前記オレフィン系重合体(I)を添加し、攪拌速度120rpm以上、3分以上で攪拌し混合物を得る工程である、上記[11]に記載のパウダー状マスターバッチの製造方法。
[13]前記オレフィン系重合体(I)及び前記充填剤の合計量100質量%に対して、該充填剤が70〜98質量%である、上記[11]又は[12]に記載のパウダー状マスターバッチの製造方法。
[14]レーザー回折法で測定される前記充填剤の平均粒子径D50が0.01〜30μmである、上記[11]〜[13]のいずれかに記載のパウダー状マスターバッチの製造方法。
[15]前記オレフィン系重合体(I)の50mol%以上がプロピレンモノマーで構成されるプロピレン系重合体(I−i)である、上記[11]〜[14]のいずれかに記載のパウダー状マスターバッチの製造方法。
[16]前記オレフィン系重合体(I)が、下記(c)又は(d)の少なくとも一方を満たす、上記[11]〜[15]のいずれかに記載のパウダー状マスターバッチの製造方法。
(c)メソペンタッド分率[mmmm]が20〜60モル%である。
(d)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
[17]下記(1)〜(4)の工程を有するマスターバッチの製造方法。
(1)下記(a)〜(b)を満たすオレフィン系重合体(I)と充填剤を温度60℃以上、攪拌速度120rpm以上、3分以上で攪拌し混合物を得る工程
(a)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから計測される融解吸熱量ΔH−Dが90J/g未満
(b)GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜500,000
(2)前記工程(1)で得られた混合物を冷却し、パウダー状マスターバッチを得る工程
(3)前記工程(2)で得られたパウダー状マスターバッチとオレフィン系重合体(II)とを混合し、混合物を得る工程
(4)前記工程(3)で得られた混合物を温度160℃以上で溶融混錬する工程
[18]前記工程(1)が、前記充填剤を温度60℃以上、攪拌速度120rpm以上で攪拌した後、該充填剤に前記オレフィン系重合体(I)を添加し、攪拌速度120rpm以上、3分以上で攪拌し混合物を得る工程である、上記[17]に記載のマスターバッチの製造方法。
本発明によれば、ポリオレフィンに対する充填剤の分散性を向上させることができるとともに、優れた剛性及び耐衝撃性を備えた成形体を形成可能なパウダー状マスターバッチ及びパウダー状マスターバッチを含むマスターバッチ、並びにこれらの製造方法を提供することができる。
以下に、本発明を説明する。なお、本明細書において、数値の記載に関する「〜」という用語は、その下限値以上、上限値以下を示す用語である。
<パウダー状マスターバッチ>
本発明において、「パウダー状マスターバッチ」とは各種充填剤の表面を特定の物性値を有するオレフィン系重合体(I)で被膜した分散性粉末充填剤を示す。
本発明のパウダー状マスターバッチは、特定の物性値を有するオレフィン系重合体(I)と充填剤とを含み、該オレフィン系重合体(I)及び該充填剤の合計量100質量%に対して、該充填剤が70〜98質量%の割合で配合され、好ましくは75〜98質量%の割合で配合され、より好ましくは75〜95質量%の割合で配合され、更に好ましくは80〜95質量%の割合で配合される。
充填剤の平均粒子径が小さい程、取扱いにくくなり、通常ならば成形体の大部分を構成するニートポリマー等への分散混合は困難であるが、本発明のパウダー状マスターバッチは特定の物性値を有するオレフィン系重合体(I)を用いることで成形体の大部分を構成するニートポリマー等への分散混合が容易になる。
本発明のパウダー状マスターバッチは、充填剤を高濃度で配合することができ、分散性に優れる。また、該パウダー状マスターバッチは、べたつきを生じず凝集し難いので、オレフィンに対して該パウダー状マスターバッチを均一に分散させることができる。従って、該パウダー状マスターバッチを含むマスターバッチを用いて得られる樹脂組成物は、剛性及び耐衝撃性に優れた成形体を形成することができる。
また、本発明のパウダー状マスターバッチは、オレフィン系重合体(I)の配合量を少量に抑えることができるため、本発明のパウダー状マスターバッチを成形体の大部分を構成するニートポリマーに添加しても、ニートポリマーの物性に対する影響を抑えることができる。
[オレフィン系重合体(I)]
本発明に用いられるオレフィン系重合体(I)は、下記(a)及び(b)を満たす。
(a)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから計測される融解吸熱量ΔH−Dが90J/g未満である。
(b)GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜500,000である。
本発明のオレフィン系重合体(I)は、エチレン及び炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーを重合してなるオレフィン系重合体(I)が好ましい。
炭素数3〜28のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン及び1−イコセン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素数3〜24のα−オレフィン、より好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィン、更に好ましくは炭素数3〜6のα−オレフィン、特に好ましくは炭素数3〜4のα−オレフィン、最も好ましくはプロピレンである。
これらのうちの1種を単独で重合したオレフィン系重合体(I)を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて共重合して得られるオレフィン系共重合体を使用してもよい。オレフィン系共重合体としては、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がエチレンモノマーであるエチレン系重合体、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がプロピレンモノマーであるプロピレン系重合体(I−i)、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がブテンモノマーであるブテン系重合体などが挙げられ、プロピレン系重合体(I−i)がより好ましい。
プロピレン系重合体(I−i)としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンブロック共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、又はプロピレン−α−オレフィングラフト共重合体等から選択されるプロピレン系重合体(I−i)であることが好ましく、特にプロピレン単独重合体が好ましい。
また、成形体の大部分を構成するニートポリマーがプロピレン系重合体である場合、主成分のプロピレン系重合体との相溶性の観点から、プロピレン系重合体(I−i)が、炭素数が2のオレフィンを含有する共重合体の場合には、炭素数が2のオレフィン(すなわち、エチレンモノマー)の構成単位が、好ましくは0モル%を超え、20モル%以下、より好ましくは0モル%を超え、18モル%以下、さらに好ましくは0モル%を超え、15モル%以下、より更に好ましくは0モル%を超え、13モル%以下で含まれる。また、炭素数が3のオレフィンを含有する共重合体の場合には、炭素数が3のオレフィン(すなわち、プロピレンモノマー)の構成単位が、好ましくは50モル%以上、より好ましくは65モル%以上、更に好ましくは75モル%以上、より更に好ましくは80モル%以上で含まれる。また、炭素数が4以上のαオレフィンを含有する共重合体の場合には、炭素数が4以上のαオレフィンの含有量が、好ましくは0モル%を超え、30モル%以下、より好ましくは0モル%を超え、27モル%以下、更に好ましくは0モル%を超え、20モル%以下である。
前記オレフィン系重合体(I)は、プロピレンの構成単位が50モル%以上、さらに下記(i)、(ii)の少なくともどちらか一つを満たすものも使用できる。
(i)エチレンの構成単位が0モル%を超えて、20モル%以下で含まれる。
(ii)1−ブテンの構成単位が0モル%を超えて、30モル%以下で含まれる。
また、成形体の大部分を構成するニートポリマーがプロピレン系重合体である場合、主成分のプロピレン系重合体との相溶性の観点などから、本発明のオレフィン系重合体(I)は、最も好ましくはプロピレン単独重合体である。なお、上記の重合体は、石油・石炭由来のモノマーを用いた重合体でもよいし、バイオマス由来のモノマーを用いた重合体でもよい。
各種充填剤の表面を被膜し、成形体の大部分を構成するニートポリマーに対する充填剤の分散性を向上させる観点から、オレフィン系重合体(I)が、下記融解吸熱量(ΔH−D)と重量平均分子量(Mw)を有しかつ後述する特性を有する場合(特に、プロピレン系重合体(I−i)である場合)であることが好ましい。
オレフィン系重合体(I)は、示差走査型熱量計(DSC)により計測される融解吸熱量ΔH−Dが90J/g未満であり、好ましくは5〜80J/gであり、より好ましくは10〜70J/gであり、更に好ましくは20〜60J/gである。本発明のパウダー状マスターバッチは毛細管現象と同じ原理で充填剤の細孔にオレフィン系重合体(I)が入り込み、充填剤の表面を被膜することで分散性に優れるパウダー状マスターバッチを得ることができる。そのため、融解吸熱量ΔH−Dが90J/g以上であると、充填剤の表面を被膜することが困難であると推測される。また、オレフィン系重合体(I)の融解吸熱量ΔH−Dが5J/g以上であるとパウダー状マスターバッチがべたつきを生じず凝集し難くすることができる。
なお、本発明において融解吸熱量ΔH−Dは、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから計測されるものであり、熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線をベースラインとして、DSC測定により得られた融解吸熱カーブのピークを含むライン部分と当該ベースラインとで囲まれる面積を求めることで算出される。
また、オレフィン系重合体(I)は、GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜500,000であり、好ましくは10,000〜400,000であり、より好ましくは15,000〜350,000であり、更に好ましくは30,000〜200,000である。重量平均分子量(Mw)が10,000以上であると、パウダー状マスターバッチのべたつきが低減される。またMwが500,000以下であると、流動性が向上し、成形性が良好となる。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、下記の装置及び条件で測定したポリスチレン換算のものである。
<GPC測定装置>
カラム :TOSO GMHHR−H(S)HT
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
<測定条件>
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ミリリットル/分
試料濃度 :2.2mg/ミリリットル
注入量 :160マイクロリットル
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
本発明のオレフィン系重合体(I)及びプロピレン系重合体(I−i)は、好ましくは下記(c)若しくは(d)のいずれか1つ、又はその両方を満たすプロピレン系重合体であり、より好ましくは下記(e)を満たし、更に好ましくは下記(f)及び(g)を満たす。
(c)[mmmm]が20〜60モル%である。
(d)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
(e)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(f)[rmrm]>2.5モル%
(g)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
(c)メソペンタッド分率[mmmm]
メソペンタッド分率[mmmm]は、オレフィン系重合体(I)及びプロピレン系重合体の立体規則性を表す指標であり、メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。
オレフィン系重合体(I)がプロピレン単独重合体である場合、そのメソペンタッド分率[mmmm]は、好ましくは20〜60モル%であり、より好ましくは30〜55モル%であり、さらに好ましくは40〜55モル%である。該オレフィン系重合体(I)のメソペンタッド分率[mmmm]が20モル%以上であると、パウダー状マスターバッチのべたつきが低減され、60モル%以下であると、充填剤の表面が十分に被膜され、好ましい。
(d)融点(Tm−D)
オレフィン系重合体(I)及びプロピレン系重合体(I−i)の融点(Tm−D)は、強度や成形性の観点から高い方が好ましい。好ましくは0〜120℃、より好ましくは50〜100℃、更に好ましくは55〜90℃、より更に好ましくは60〜80℃である。
なお、本発明では、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップを融点(Tm−D)とする。融点は、モノマー濃度や反応圧力を適宜調整することで制御可能である。
(e)[rrrr]/(1−[mmmm])
オレフィン系重合体(I)及びプロピレン系重合体(I−i)の[rrrr]/(1−[mmmm])の値は、メソペンタッド分率[mmmm]及びラセミペンタッド分率[rrrr]から求められ、ポリプロピレンの規則性分布の均一さを示す指標である。[rrrr]/(1−[mmmm])のこの値が大きくなると既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高立体規則性ポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物となり、べたつきの原因となる。なお、上記における[rrrr]及び[mmmm]の単位は、モル%である。
オレフィン系重合体(I)及びプロピレン系重合体(I−i)における[rrrr]/(1−[mmmm])の値は、べたつきの観点から、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.001〜0.05、更に好ましくは0.001〜0.04、特に好ましくは0.01〜0.04である。
(f)ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]
ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、ポリプロピレンの立体規則性のランダム性を表す指標であり、値が大きいほどポリプロピレンのランダム性が増加する。
オレフィン系重合体(I)及びプロピレン系重合体(I−i)のラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、好ましくは2.5モル%を超える。オレフィン系重合体(I)及びプロピレン系重合体(I−i)の[rmrm]が2.5モル%を超えることにより、ランダム性が増し、効率的に結晶化速度を低下させ、適切な分散状態を得ることができる。このような観点から、オレフィン系重合体(I)及びプロピレン系重合体(I−i)のラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、好ましくは2.6モル%以上、より好ましくは2.7モル%以上である。その上限は、通常、好ましくは10モル%程度であり、より好ましくは7モル%、更に好ましくは5モル%、特に好ましくは4モル%である。
(g)[mm]×[rr]/[mr]
トリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]から算出される[mm]×[rr]/[mr]の値は、重合体のランダム性の指標を表し、1に近いほどランダム性が高くなり、効率的に結晶化速度を低下させ、適切な分散状態を得ることができる。
本発明のオレフィン系重合体(I)及びプロピレン系重合体(I−i)は、上式の値が通常2以下、好ましくは1.8〜0.5、さらに好ましくは1.6〜0.5の範囲である。なお、上記における[mm]及び[rr]の単位は、モル%である。
メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]、ラセミメソラセミメソペンダッド分率[rmrm]の立体規則性はNMRにより求められる。
本発明において、メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]、ラセミメソラセミメソペンダッド分率[rmrm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリオレフィン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率、及びラセミメソラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。また、トリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]も上記方法により算出される。
なお、本明細書における13C−NMRスペクトルの測定は、実施例に記載の方法にて行った。
オレフィン系重合体(I)の製造方法としては、(i)2個の架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物と(ii)助触媒を組み合わせて得られるメタロセン触媒を用いてオレフィンを重合する方法が好ましい。例えば、WO2003/087172号に記載されているようなメタロセン系触媒を使用して製造することができる。
具体的には、下記一般式(I)で表される遷移金属化合物(i)、及び該(i)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物(ii−1)及びアルミノキサン(ii−2)から選ばれる助触媒成分(ii)を含有する重合用触媒の存在下、オレフィンを重合する方法が挙げられる。
Figure 0006386884
上記(i)遷移金属化合物の具体例としては、上記一般式(I)で表される二架橋メタロセン化合物が好ましく用いられる。
上記一般式(I)中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、E及びEはそれぞれ置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、ヘテロシクロペンタジエニル基、置換ヘテロシクロペンタジエニル基、アミド基、ホスフィド基、炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A及びAを介して架橋構造を形成しており、またそれらはたがいに同一でも異なっていてもよい。Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX、E、E又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY、E、E又はXと架橋していてもよく、A及びAは二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−Se−、−NR1−、−PR−、−P(O)R−、−BR−又は−AlR−を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。
前記一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体例としては、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(5,6−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4,7−ジ−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(5,6−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド等、及びこれらの化合物におけるジルコニウムをチタン又はハフニウムに置換したものが挙げられる。
次に、(ii)成分のうちの(ii−1)成分としては、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸メチル(トリ−n−ブチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム等が挙げられる。
(ii−1)成分は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。一方、(ii−2)成分のアルミノキサンとしては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が挙げられる。これらのアルミノキサンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記(ii−1)成分1種以上と(ii−2)成分1種以上とを併用してもよい。
上記重合用触媒としては、上記(i)成分及び(ii)成分に加えて(iii)成分として有機アルミニウム化合物を用いることができる。ここで、(iii)成分の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。これらの有機アルミニウム化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。ここで、オレフィンの重合に際しては、触媒成分の少なくとも1種を適当な担体に担持して用いることができる。
重合方法は特に制限されず、スラリー重合法、気相重合法、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法などのいずれの方法を用いてもよいが、塊状重合法、溶液重合法が特に好ましい。重合温度は通常−100〜250℃、反応原料に対する触媒の使用割合は、「原料モノマー/上記(i)成分」(モル比)が好ましくは1〜10、より好ましくは10〜10、更に好ましくは10〜10である。さらに、重合時間は、通常、好ましくは5分〜10時間、反応圧力は、通常、好ましくは常圧〜20MPa(ゲージ圧)である。
パウダー状マスターバッチ中におけるオレフィン系重合体(I)の含有量は、充填剤の表面を被膜する観点から2〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましく、3〜20質量%が更に好ましく、4〜15質量%であることが特に好ましい。
[充填剤]
本発明に用いられる充填剤は、特に制限はなく、無機充填剤、有機充填剤の中から用いることができる。また、充填剤の形状としては、球状、板状、棒状、繊維状、扁平状等が挙げられるが、高分散性の観点から、球状、及び板状が好ましい。また、本発明は成形体の大部分を構成するニートポリマーに対して分散し難い微粒子、板状、扁平状であっても効果がある。
無機充填剤としては、例えばシリカ、ケイ藻土、バリウムフェライト、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ベリリウム、軽石、軽石バルーンなどの酸化物、水酸化アルミニルム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩又は亜硫酸塩、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、カオリナイトなどの粘土鉱物・ケイ酸塩およびその有機化物(有機化クレー)、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、グラフェン、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素中空球などの炭素類や、硫化モリブデン、ボロン繊維、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、マグネシウムオキシサルフェイト、各種金属繊維などを挙げることができる。一方、有機充填剤としては、例えばモミ殻などの殻繊維、木粉、木綿、ジュート、紙細片、セロハン片、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、N−ビニルアセトアミド重合体、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、熱硬化性樹脂粉末などを挙げることができる。
これらの無機充填剤や有機充填剤は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、剛性及び耐衝撃性を向上させる観点からは、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維が好ましく、特にタルクが好ましい。剛性及び耐衝撃性に加えて、着色又は導電性も更に付与する場合には、カーボンフィラーが好ましく、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、グラフェン、カーボンブラック、グラファイトがより好ましい。
本発明に用いられる充填剤の平均粒子径D50は、好ましくは0.01〜30μmであり、より好ましくは0.1〜30μm、さらに好ましくは0.5〜20μmであり、特に好ましくは0.5〜10μmである。ここで、平均粒子径D50とは、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において、微粒側からの累積で50重量%となる平均粒子径をいう。
従来のフィラー含有樹脂組成物では、フィラーが微粉になる程、樹脂に対するフィラーの分散性が悪くなるという問題がある。これに対し、本発明では充填剤として、該充填剤の平均粒子径D50が上記範囲の微粒子を用いた場合でも、オレフィン系重合体(I)を用いることによって、分散性が向上したパウダー状マスターバッチを得ることができる。
[添加剤]
本発明のパウダー状マスターバッチは目的を損なわない範囲で、必要に応じてさらに、従来公知の滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、造核剤、顔料などの添加剤を含有していてもよい。
<マスターバッチ>
本発明のマスターバッチは、上述のパウダー状マスターバッチとオレフィン系重合体(II)とを含む。
[オレフィン系重合体(II)]
本発明に用いられるオレフィン系重合体(II)としては、示差走査型熱量計(DSC)により計測される融解吸熱量ΔH−Dが90J/gを超えるものであれば特に制限はなく、α‐オレフィン単独重合体、α‐オレフィン共重合体、α‐オレフィンとビニルモノマーとの共重合体、エチレン‐不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・カルボン酸不飽和エステル共重合体などを挙げることができる。中でも、充填剤の高分散性の観点から、結晶性樹脂が好ましく、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン若しくは炭素数4〜20のα‐オレフィンとの共重合体等のポリプロピレン系樹脂が好ましい。
なお、これらオレフィン系重合体(II)は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
該オレフィン系重合体(II)は、上述したパウダー状マスターバッチと、該オレフィン系重合体(II)との合計量100質量%に対して、20〜95.5質量%の割合で配合することが好ましく、30〜95質量%の割合で配合することがより好ましく、40〜90質量%の割合で配合することが更に好ましい。この範囲とすることで、成形体の大部分を構成するニートポリマーに対して本発明のマスターバッチを添加した際に充填剤を分散しやすくなる。
また、マスターバッチに含まれる充填剤の量は、好ましくは2〜75質量%であり、より好ましくは3〜70質量%であり、更に好ましくは4〜65質量%である。
本発明のマスターバッチには、目的を損なわない範囲で、必要に応じてさらに、従来公知の滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤などを含有していてもよい。
<ポリオレフィン系樹脂組成物>
ポリオレフィン系樹脂組成物は、本発明のパウダー状マスターバッチ又はパウダー状マスターバッチを含むマスターバッチと、オレフィン系重合体(III)(ニートポリマー)とを含む。
オレフィン系重合体(III)としては、特に制限はないが、上記オレフィン系重合体(II)と同じものが好ましい。オレフィン系重合体(III)としては、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン若しくは炭素数4〜20のα‐オレフィンとの共重合体等のポリプロピレン系樹脂が好ましい。また、オレフィン系重合体(III)はペレット状でもパウダー状でも良い。オレフィン系重合体(III)がパウダー状である場合、パウダー状マスターパウダーとの分散性がより向上し、充填剤の含有量をオレフィン系重合体(III)に、より多く含有させられると考えられる。
本発明のパウダー状マスターバッチを配合したポリオレフィン系樹脂組成物は、充填剤が高濃度で分散しているため、優れた剛性及び耐衝撃性を備えた成形体を形成することができる。
従って、該樹脂組成物は、優れた剛性及び耐衝撃性が求められる自動車部品分野及び類似工業部品分野で有用である。
また、本発明のパウダー状マスターバッチは微細な充填剤でもポリオレフィンに対する分散性が高いため、本発明のパウダー状マスターバッチをオレフィン系重合体(III)(ニートポリマー)に添加することで本発明のパウダー状マスターバッチが結晶化剤として機能することが予想でき有用であるといえる。本発明のパウダー状マスターバッチをオレフィン系重合体(III)(ニートポリマー)の結晶核剤として用いる場合、本発明のパウダー状マスターバッチの添加量はオレフィン系重合体(III)(ニートポリマー)100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部である。
本発明のパウダー状マスターバッチの溶融温度がオレフィン系重合体(III)(ニートポリマー)よりも低いため、一軸押出機や二軸押出機での溶融混練の際、巻込んだ空気の排出、オレフィン系重合体(III)(ニートポリマー)への分散混合が容易である。
また、本発明のパウダー状マスターバッチ中の樹脂の重量比率が小さいためオレフィン系重合体(III)(ニートポリマー)の物性へ与える影響が少ない。これは微細な充填剤を使用する分野、例えば、カーボンフィラーを用いる分野や微細な結晶核剤を用いる分野で有用である。
以下、本発明のパウダー状マスターバッチ及びマスターバッチの製造方法について説明する。
<パウダー状マスターバッチの製造方法>
本発明のパウダー状マスターバッチの製造方法は、下記(1)及び(2)の工程を有する。以下、順に説明する。
(1)特定の物性値を有するオレフィン系重合体(I)と充填剤を温度60℃以上、攪拌速度120rpm以上、3分以上で攪拌し混合物を得る工程
特定の物性値を有するオレフィン系重合体(I)、及び充填剤は、上記<パウダー状マスターバッチ>の項で説明したものを用いることができる。
該充填剤と該オレフィン系重合体(I)を混合機に投入し、温度60℃以上、攪拌速度
120rpm以上、3分以上で攪拌し、混合する。このように、該オレフィン系重合体(I)と該充填剤を所定温度、及び所定時間で、120rpm以上の高速度で攪拌することにより、該オレフィン系重合体(I)に対する該充填剤の分散性を向上させることができ、該充填剤を高濃度で配合することができる。
また、攪拌温度は70〜160℃、攪拌速度は300〜3000rpmであることが、好ましい。
攪拌混合するための混合機は、ディゾルバー、バタフライミキサー、パドル羽根ミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなど、従来よく知られた高速攪拌の混合機を使用することができる。
また、混合方法として、ワンショットで全成分を混合してもよいが、充填剤とオレフィン系重合体(I)の一部を混合したのち、残部のオレフィン系重合体(I)をさらに添加、混合する方法や、充填剤の一部とオレフィン系重合体(I)を混合したのち、残部の充填剤などの多段階で混合してもよい。
本工程は、前記充填剤を温度60℃以上、攪拌速度120rpm以上で攪拌した後、該充填剤に前記オレフィン系重合体(I)を添加し、攪拌速度120rpm以上、3分以上で攪拌することが好ましい。該充填剤を所定の条件で攪拌し十分に分散させた中に、該オレフィン系重合体(I)を添加し、所定の条件で攪拌することで、該オレフィン系重合体(I)に対する該充填剤の分散性を向上させることができ、該充填剤を高濃度で配合することができる
該充填剤の攪拌温度は60〜160℃、攪拌速度は120〜3000rpmであることが、更に好ましい。また、該充填剤に該オレフィン系重合体(I)を添加した後の攪拌温度は70〜160℃、攪拌速度は、300〜3000rpmであることが、更に好ましい。
(2)前記工程(1)で得られた混合物を冷却する工程
上記オレフィン系重合体(I)と上記充填剤の混合物を冷却することで、パウダー状マスターバッチを得る。
冷却方法としては、加熱源をカットして自然冷却する方法、冷媒等を通じて冷却する方法等を用いることができる。また、冷却温度(冷媒温度)は20〜60℃の範囲で選ばれ、好ましくは40〜60℃である。
従来、充填剤をマスターバッチ化する際に、攪拌混合するための混合機が充填剤によって摩耗されるのを防ぐために、ステアリン酸カルシウム等の滑剤や低分子量ワックスを添加する必要があったが、上記オレフィン系重合体(I)を用いることで、混合機が充填剤によって摩耗されることを防ぐ役割も果たすため、滑剤や低分子量ワックスを用いる必要がなくなる。また、上記オレフィン系重合体(I)を用いることで混合機のトルクの低下を抑制することが期待でき、量産性が向上すると予想される。
<マスターバッチの製造方法>
本発明のマスターバッチの製造方法は、上記パウダー状マスターバッチの製造方法で得られたパウダー状マスターバッチとオレフィン系重合体(II)とを混合し、混合物を得る工程(3)と、前記工程(3)で得られた混合物を温度160℃以上で溶融混錬する工程(4)とを有する。
まず、上記工程で得られたパウダー状マスターバッチとオレフィン系重合体(II)とを混合する。該オレフィン系重合体(II)は上記<マスターバッチ>の項で説明したものを用いることができる。また、混合のための混合機は、上記<パウダー状マスターバッチの製造方法>の項で説明したものを用いることができる。
混合方法として、ワンショットで全成分を混合してもよいが、該パウダー状マスターバッチと該オレフィン系重合体(II)の一部とを混合したのち、残部のオレフィン系重合体(II)をさらに添加、混合するなどの多段階の混合も可能である。
次に、前記工程で得られた混合物を温度160℃以上で溶融混錬し、ペレット状のマスターバッチを得る。
混錬は、通常用いられている方法、例えば、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いる方法により行うことができる。溶融混錬に際しての加熱温度は、160℃以上であり、好ましくは170〜250℃であり、より好ましくは180〜240℃であり、更に好ましくは190〜230℃である。160℃未満では、該パウダー状マスターバッチと該オレフィン系重合体(II)との混練が不十分となる恐れがある。
上記で得られたパウダー状マスターバッチまたはパウダー状マスターバッチを含むマスターバッチと、上述のオレフィン系重合体(III)とを、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー、ナウターミキサー等の各種混合機を用いて混合した後、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等で溶融混練し、ポリオレフィン系樹脂組成物を得ることができる。
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
以下に、実施例で使用するプロピレン系重合体(I−1)、(I−2)の製造例について説明する。
製造例1、2[プロピレン系重合体(I−1)、プロピレン系重合体(I−2)の作製]
攪拌機付きの内容積20Lのステンレス製反応器に、n−ヘプタンを20L/hr、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr、さらに、(A)成分として、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート及び(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(B)成分としてトリイソブチルアルミニウム、(C)成分としてプロピレンを質量比(A)成分:(B)成分:(C)成分=1:2:20で、事前に接触させて得られた触媒成分を、ジルコニウム換算で6μmol/hrで連続供給した。
反応器内の全圧を1.0MPa・Gに保つようプロピレンと水素とを連続供給し、重合温度を適宜調整し所望の分子量を有する重合溶液を得た。
得られた重合溶液に、酸化防止剤を1000質量ppmになるように添加し、溶媒を除去することによりプロピレン系重合体(I−1)及びプロピレン系重合体(I−2)を得た。
製造例1及び製造例2で得られた、プロピレン系重合体(I−1)、(I−2)について、以下の測定を行った。測定結果を表1に示す。
〔DSC測定〕
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから融解吸熱量ΔH−Dを求めた。
なお、融解吸熱量ΔH−Dは、熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線をベースラインとして、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用いた、DSC測定により得られた融解吸熱カーブのピークを含むライン部分と当該ベースラインとで囲まれる面積を求めることで算出される。
〔NMR測定〕
以下に示す装置および条件で、13C−NMRスペクトルの測定を行った。なお、ピークの帰属は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案された方法に従った。
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/ml
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
<計算式>
M=m/S×100
R=γ/S×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8〜22.5ppm
Pαβ:18.0〜17.5ppm
Pαγ:17.5〜17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7〜20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖:21.7〜22.5ppm
メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]およびラセミメソラセミメソペンダッド分率[rmrm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠して求めたものであり、13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率、およびラセミメソラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。また、トリアッド分率[mm]、[rr]および[mr]も上記方法により算出した。
〔重量平均分子量(Mw)測定、分子量分布(Mw/Mn)測定〕
ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。測定には、下記の装置および条件を使用し、ポリスチレン換算の重量平均分子量および数平均分子量を得た。分子量分布(Mw/Mn)は、これらの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)より算出した値である。
<GPC測定装置>
カラム :東ソー(株)製「TOSO GMHHR−H(S)HT」
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出器 ウォーターズ・コーポレーション製「WATERS 150C」
<測定条件>
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ml/分
試料濃度 :2.2mg/ml
注入量 :160μl
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
〔メルトフローレイト(MFR)測定〕
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
Figure 0006386884
下記の曲げ弾性率、アイゾット衝撃試験における試験片は、シリンダー温度190℃、金型温度25℃に設定した射出成形機(東芝機械(株)製、IS80EPN−2A)により射出成形し作成した。
〔曲げ試験〕
JIS K7203に準拠し、精密万能試験機((株)島津製作所製、AGS−500A型)により曲げ弾性率、降伏点応力、及び降伏点歪を測定した。
〔アイゾット衝撃試験〕
JIS K7111−1に準拠し、万能振子式衝撃試験機(CEAST社製、6545/000型)により測定した。
〔メルトフローレイト測定〕
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件でメルトインデクサ(東洋精機製作所製、P−01型)により測定した。
(実施例1)
[パウダー状マスターバッチ1の製造]
充填剤としてタルクa(松村産業(株)製、ハイフィラー#5000PJ〔平均粒子径D50(光透過遠心沈降法):1.8±0.5μm(カタログ値)、嵩密度(JIS K5101):0.12±0.01g/ml(カタログ値)、比表面積(空気透過法):3.5m/g(カタログ値)〕)2500gと、前記製造例1で得られたペレット状のプロピレン系重合体(I−1)280gとを準備した(タルクa:プロピレン系重合体(I−1)=90:10)。
内容量9Lのヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製、FM10C/I)に、上記タルクa1200gと、上記プロピレン系重合体(I−1)全量とを投入し、ジャケット温度144℃、攪拌回転数920rpmで攪拌した。10分後に、温度90℃で体積減少が始まり、次いで、上記タルクa1300gを徐々に添加した。25分後に上記タルクaの添加を終了した。35分後に130℃となりジャケット加熱を停止した。45分後に攪拌回転数500rpmとし、55分後に温度60℃となったところで、攪拌を停止し、得られたパウダー状マスターバッチ1を取り出した。
なお、JIS K5101に準拠し、タルクa及び得られたパウダー状マスターバッチ1の嵩密度を測定したところ、タルクaは0.12g/ml、パウダー状マスターバッチ1は0.58g/mlであった。
(実施例2)
[パウダー状マスターバッチ2の製造]
充填剤としてタルクb(日本タルク(株)製、MICRO ACEシリーズP−8〔平均粒子径D50(レーザー解析法):3.3μm(カタログ値)、嵩密度(JIS K5101):0.12g/ml(カタログ値)、比表面積(BET法):12m/g(カタログ値))2000gと、前記製造例1で得られたペレット状のプロピレン系重合体(I−1)220gとを準備した(タルクb:プロピレン系重合体(I−1)=90:10)。
内容量9Lのヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製、FM10C/I)に、上記タルクb1200gと、上記プロピレン系重合体(I−1)全量とを投入し、ジャケット温度144℃、攪拌回転数920rpmで攪拌した。5分後に体積減少がみられ、10分後に、上記タルクb800gを徐々に添加した。15分後に温度120℃で、上記タルクbの添加を終了した。25分後に温度130℃となり、ジャケット加熱を停止した。35分後に攪拌回転数を500rpmとした。45分後に温度60℃となったところで、攪拌を停止し、得られたパウダー状マスターバッチ2を取り出した。
なお、JIS K5101に準拠しタルクb及び得られたパウダー状マスターバッチ2の嵩密度を測定したところ、タルクbは0.12g/ml、パウダー状マスターバッチ2は0.79g/mlであった。
タルクa、タルクb、パウダー状マスターバッチ1及びパウダー状マスターバッチ2の嵩密度を表2に示す。
Figure 0006386884
*1:松村産業(株)製、ハイフィラー#5000PJ
*2:日本タルク(株)製、MICRO ACEシリーズP−8
表2に示した通り、本発明のパウダー状マスターバッチは充填剤の嵩密度を大きくすることができる。これはニートポリマーにパウダー状マスターバッチを添加し、溶融混練して押出機でペレット化する工程において、押出機へフィードする際にフィード途中でのニートポリマーとパウダー状マスターバッチとの分級を抑制できる効果が予想され、フィード口のパウダーブリッジを抑制できる効果が予想され、造粒工程での空気の巻き込みを抑制できる効果が予想される。
また、本発明のパウダー状マスターバッチは充填剤の表面が表面処理されることにより、タルク紛体としての滑り性が抑えられ、溶融混練して押出機でペレット化する工程において、溶融混練時におけるパウダー状マスターバッチとニートポリマーとの分級を抑制できる効果が予想され、溶融混練時において、ニートポリマーへの充填剤の取り込みが容易となる効果が予想される。
また、ニートポリマーがパウダー状であっても同様またはそれ以上の効果を発現できることが予想される。
(実施例3)
[ニートポリマーとパウダー状マスターバッチを含んだペレットの製造]
実施例1で得られたパウダー状マスターバッチ1とニートポリマー((株)プライムポリマー製、J707G(ブロックコポリマー))を22:78の割合で、合計4.5kgをポリ袋に投入、混合した。その後、フィードホッパーに投入した。次いで、単軸混練造粒機(株式会社陸亜製作所製、R−T−30、スクリュー径:30mm、L/D:32、混練部2段ダルメージミキシング、ベント式、水冷ストランドカット)にて、温度200℃、攪拌回転数130〜170rpmの条件で溶融混練し、得られた組成物を押し出してペレットを得た。得られたペレットの物性評価を表3に示す。
(実施例4)
単軸混練造粒機の代わりに二軸混練造粒機(東芝機械(株)製、TEM−35B、スクリュー径:35mm、L/D:32、ベント式、水冷ストランドカット)を用いて、温度210℃、攪拌回転数100rpmの条件で混合した以外は、上記実施例3と同様にしてペレットを得た。得られたペレットの物性評価を表3に示す。
(実施例5)
実施例1で得られたパウダー状マスターバッチ1とニートポリマーの割合を44:56に変更した以外は上記実施例3と同様にしてペレットを得た。得られたペレットの物性評価を表3に示す。
(実施例6)
実施例1で得られたパウダー状マスターバッチ1とニートポリマーの割合を44:56に変更した以外は上記実施例4と同様にしてペレットを得た。得られたペレットの物性評価を表3に示す。
(実施例7)
[ニートポリマーとパウダー状マスターバッチを含んだペレットの製造]
実施例1で得られたパウダー状マスターバッチ1に代えて、実施例2で得られたパウダー状マスターバッチ2を使用した以外は上記実施例3と同様にしてペレットを得た。得られたペレットの物性評価を表3に示す。
(実施例8)
実施例1で得られたパウダー状マスターバッチ1に代えて、実施例2で得られたパウダー状マスターバッチ2を使用した以外は上記実施例4と同様にしてペレットを得た。得られたペレットの物性評価を表3に示す。
(実施例9)
実施例1で得られたパウダー状マスターバッチ1に代えて、実施例2で得られたパウダー状マスターバッチ2を使用した以外は上記実施例5と同様にしてペレットを得た。得られたペレットの物性評価を表3に示す。
(実施例10)
実施例1で得られたパウダー状マスターバッチ1に代えて、実施例2で得られたパウダー状マスターバッチ2を使用した以外は上記実施例6と同様にしてペレットを得た。得られたペレットの物性評価を表3に示す。
(比較例1)
タルクa(松村産業(株)製、ハイフィラー#5000PJ〔平均粒子径D50(光透過遠心沈降法):1.8±0.5μm(カタログ値)、嵩密度(JIS K5101):0.12±0.01g/ml(カタログ値)、比表面積(空気透過法):3.5m/g(カタログ値)〕)とニートポリマー((株)プライムポリマー製、J707G(ブロックコポリマー))とを20:80の割合で、合計4.5kgをポリ袋に投入、混合した。その後、フィードホッパーに投入した。次いで、単軸混練造粒機(株式会社陸亜製作所製、R−T−30、スクリュー径:30mm、L/D:32、混練部2段ダルメージミキシング、ベント式、水冷ストランドカット)にて、温度200℃、攪拌回転数130〜170rpmの条件で溶融混練したが、スクリューモーターがサージングを起こし造粒ができなかった。
(比較例2)
タルクa(松村産業(株)製、ハイフィラー#5000PJ〔平均粒子径D50(光透過遠心沈降法):1.8±0.5μm(カタログ値)、嵩密度(JIS K5101):0.12±0.01g/ml(カタログ値)、比表面積(空気透過法):3.5m/g(カタログ値)〕)と、製造例1で得られたペレット状のプロピレン系重合体(I−1)と、ニートポリマー((株)プライムポリマー製、J707G(ブロックコポリマー))とを20:2:78の割合で合計4.5kgをポリ袋に投入、混合した。次いで、単軸混練造粒機(株式会社陸亜製作所製、R−T−30、スクリュー径:30mm、L/D:32、混練部2段ダルメージミキシング、ベント式、水冷ストランドカット)にて、温度200℃、攪拌回転数130〜170rpmの条件で溶融混練したが、スクリューモーターがサージングを起こし造粒ができなかった。
(比較例3)
タルクaとニートポリマーの割合を40:60に変更した以外は上記比較例1と同様の操作を行ったが、スクリューモーターがサージングを起こし造粒できなかった。
(比較例4)
プロピレン系重合体(I−1)を製造例2で得られたペレット状のプロピレン系重合体(I−2)に変更し、タルクaと、ペレット状のプロピレン系重合体(I−2)と、ニートポリマー((株)プライムポリマー製、J707G(ブロックコポリマー))とを40:4:56の割合で配合し、上記比較例2と同様の操作を行ったが、スクリューモーターサージングのため、造粒できなかった。
(比較例5)
タルクaの代わりにタルクb(日本タルク(株)製、MICRO ACEシリーズP−8〔平均粒子径D50(レーザー解析法):3.3μm(カタログ値)、嵩密度(JIS K5101):0.12g/ml(カタログ値)、比表面積(BET法):12m/g(カタログ値))を用いた以外は、上記比較例1と同様の操作を行ったが、スクリューモーターがサージングを起こし、造粒できなかった。
(比較例6)
タルクaの代わりにタルクb(日本タルク(株)製、MICRO ACEシリーズP−8〔平均粒子径D50(レーザー解析法):3.3μm(カタログ値)、嵩密度(JIS K5101):0.12g/ml(カタログ値)、比表面積(BET法):12m/g(カタログ値))を用い、プロピレン系重合体(I−1)の代わりに製造例2で得られたプロピレン系重合体(I−2)を用いた以外は、上記比較例2と同様の操作を行ったが、スクリューモーターがサージングを起こし造粒できなかった。
(比較例7)
タルクaの代わりにタルクb(日本タルク(株)製、MICRO ACEシリーズP−8〔平均粒子径D50(レーザー解析法):3.3μm(カタログ値)、嵩密度(JIS K5101):0.12g/ml(カタログ値)、比表面積(BET法):12m/g(カタログ値))を用いた以外は、上記比較例3と同様の操作を行ったが、スクリューモーターがサージングを起こし、造粒できなかった。
(比較例8)
タルクaの代わりにタルクb(日本タルク(株)製、MICRO ACEシリーズP−8〔平均粒子径D50(レーザー解析法):3.3μm(カタログ値)、嵩密度(JIS K5101):0.12g/ml(カタログ値)、比表面積(BET法):12m/g(カタログ値))を用いた以外は、上記比較例4と同様の操作を行ったが、スクリューモーターがサージングを起こし、造粒できなかった。
(比較例9)
ニートポリマー((株)プライムポリマー製、J707G(ブロックコポリマー))の物性評価を表3に示す。
Figure 0006386884
*3:(株)プライムポリマー製、J707G(ブロックコポリマー)
なお、比較例1〜8では、スクリューモーターがサージングを起こし、造粒できなかった。
本発明のパウダー状マスターバッチ及びパウダー状マスターバッチを含むマスターバッチは、優れた剛性及び耐衝撃性を備えた成形体を形成できるため、特に自動車用内外装材に用いる射出成形体の製造に有用である。

Claims (18)

  1. 下記(a)〜(b)を満たすオレフィン系重合体(I)と充填剤とを含み、該オレフィン系重合体(I)及び該充填剤の合計量100質量%に対して、該充填剤が70〜98質量%であるパウダー状マスターバッチ。
    (a)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから計測される融解吸熱量ΔH−Dが90J/g未満
    (b)GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜500,000
  2. レーザー回折法で測定される前記充填剤の平均粒子径D50が0.01〜30μmである、請求項1に記載のパウダー状マスターバッチ。
  3. 前記オレフィン系重合体(I)の50モル%以上がプロピレンモノマーで構成されるプロピレン系重合体(I−i)である、請求項1又は2に記載のパウダー状マスターバッチ。
  4. 前記オレフィン系重合体(I)が下記(i)、(ii)の少なくともどちらか一つを満たす、請求項3に記載のパウダー状マスターバッチ。
    (i)エチレンの構成単位が0モル%を超えて、20モル%以下で含まれる。
    (ii)1−ブテンの構成単位が0モル%を超えて、30モル%以下で含まれる。
  5. 前記オレフィン系重合体(I)が、下記(c)を満たす、請求項3に記載のパウダー状マスターバッチ。
    (c)メソペンタッド分率[mmmm]が20〜60モル%である。
  6. 前記オレフィン系重合体(I)が、下記(d)を満たす、請求項3〜5のいずれか一項に記載のパウダー状マスターバッチ。
    (d)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
  7. 前記オレフィン系重合体(I)が、下記(d)及び(e)を満たす、請求項5に記載のパウダー状マスターバッチ。
    (d)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
    (e)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
  8. 前記オレフィン系重合体(I)が、下記(f)及び(g)を満たす、請求項5又は7に記載のパウダー状マスターバッチ。
    (f)[rmrm]>2.5モル%
    (g)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のパウダー状マスターバッチと、オレフィン系重合体(II)とを含むマスターバッチ。
  10. 前記パウダー状マスターバッチ及び前記オレフィン系重合体(II)の合計量100質量%に対して、該オレフィン系重合体(II)が20〜95.5質量%である、請求項9に記載のマスターバッチ。
  11. 下記(1)及び(2)の工程を有するパウダー状マスターバッチの製造方法。
    (1)下記(a)〜(b)を満たすオレフィン系重合体(I)と充填剤を温度60℃以上、攪拌速度120rpm以上、3分以上で攪拌し混合物を得る工程
    (a)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから計測される融解吸熱量ΔH−Dが90J/g未満
    (b)GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜500,000
    (2)前記工程(1)で得られた混合物を冷却する工程
  12. 前記工程(1)が、前記充填剤を温度60℃以上、攪拌速度120rpm以上で攪拌した後、該充填剤に前記オレフィン系重合体(I)を添加し、攪拌速度120rpm以上、3分以上で攪拌し混合物を得る工程である、請求項11に記載のパウダー状マスターバッチの製造方法。
  13. 前記オレフィン系重合体(I)及び前記充填剤の合計量100質量%に対して、該充填剤が70〜98質量%である、請求項11又は12に記載のパウダー状マスターバッチの製造方法。
  14. レーザー回折法で測定される前記充填剤の平均粒子径D50が0.01〜30μmである、請求項11〜13のいずれか一項に記載のパウダー状マスターバッチの製造方法。
  15. 前記オレフィン系重合体(I)の50mol%以上がプロピレンモノマーで構成されるプロピレン系重合体(I−i)である、請求項11〜14のいずれか一項に記載のパウダー状マスターバッチの製造方法。
  16. 前記オレフィン系重合体(I)が、下記(c)又は(d)の少なくとも一方を満たす、請求項11〜15のいずれか一項に記載のパウダー状マスターバッチの製造方法。
    (c)メソペンタッド分率[mmmm]が20〜60モル%である。
    (d)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
  17. 下記(1)〜(4)の工程を有するマスターバッチの製造方法。
    (1)下記(a)〜(b)を満たすオレフィン系重合体(I)と充填剤を温度60℃以上、攪拌速度120rpm以上、3分以上で攪拌し混合物を得る工程
    (a)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから計測される融解吸熱量ΔH−Dが90J/g未満
    (b)GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が10,000〜500,000
    (2)前記工程(1)で得られた混合物を冷却し、パウダー状マスターバッチを得る工程
    (3)前記工程(2)で得られたパウダー状マスターバッチとオレフィン系重合体(II)とを混合し、混合物を得る工程
    (4)前記工程(3)で得られた混合物を温度160℃以上で溶融混錬する工程
  18. 前記工程(1)が、前記充填剤を温度60℃以上、攪拌速度120rpm以上で攪拌した後、該充填剤に前記オレフィン系重合体(I)を添加し、攪拌速度120rpm以上、3分以上で攪拌し混合物を得る工程である、請求項17に記載のマスターバッチの製造方法。
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