JP6382684B2 - 運転支援装置及び運転支援方法 - Google Patents

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Description

本発明は、運転支援装置及び運転支援方法に関し、特に、蓄電装置を動力源として走行する車両の運転を支援する運転支援装置に適用して好適なるものである。
近年、車両が軌道上や路面の設定された経路を走行する交通システムにおいて、架線からの電力の供給を受けずに走行する、架線レス交通システムが提案されている。このような架線レス交通システムには、蓄電装置が搭載されており、駅停車時や架線区間走行時などに、地上に設置された充電設備から次の走行に必要な電力量を充電している。
蓄電装置に充電された電力量は、充電率(SOC:State Of Charge)として乗務員に表示されることが一般的である。しかし、架線レス交通システムでは、電力量不足によって駅間で立ち往生しないことが重要であるため、充電率だけでなく、残りの電力量で走行可能な距離を乗務員に提示する必要がある。
特許文献1及び特許文献2には、所定の区間の走行で必要な消費電力量を、所定の区間を過去に走行した際の消費電力量から推定し、走行可能な距離を推定する技術が示されている。
一般に、架線レス交通システムは自動車と違い、乗客数の変動が大きいため、車両質量などの車両条件が大きく変化するという特徴がある。乗客数の変動は、例えば、通勤時と昼間など時間による影響、土曜日、日曜日、祝日など日付による影響、コンサート開催などの沿線イベント開催有無による影響、特定の区間のみ乗客が多いなどの区間による影響を受ける。
特開2012−63357号公報 特開2012−63358号公報
特許文献1及び特許文献2では、所定区間の走行で必要な消費電力量を、前記所定区間を過去に走行した際の消費電力量から推定しているため、現在の走行時の車両条件と過去に走行した際の車両条件とに差異があった場合には、消費電力量の推定精度が低下するという問題があった。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、車両条件が変化する架線レス交通システムにおいても、走行可能な距離を精度よく算出する運転支援装置及び運転支援方法を提案しようとするものである。
かかる課題を解決するために本発明においては、蓄電装置の電力により走行する車両の運転を支援する運転支援装置であって、前記車両の過去または現在の周辺環境情報をもとに、所定区間の車両質量の推移を予測する車両質量推移推定部と、前記予測された車両質量から走行に必要な消費電力量を算出する際に、走行予定に含まれる走行パタンごとの消費電力量をあらかじめ算出し、駅ごとに区切って単位時間当りの消費電力量を現在条件の空調設定温度及び予測車両質量推移の車両質量で補正しつつ、前記蓄電装置の残量に応じた走行可能距離を算出する走行可能距離算出部と、を備えることを特徴とする、運転支援装置が提供される。
かかる課題を解決するために本発明においては、蓄電装置の電力により走行する車両の運転を支援する運転支援装置における運転支援方法であって、車両質量推移推定部が、前記車両の過去または現在の周辺環境情報を取得するステップと、車両質量推移推定部が、前記取得した車両の過去または現在の周辺環境情報もとに、所定区間の車両質量の推移を予測するステップと、走行可能距離算出部が、前記予測された車両質量から走行に必要な消費電力量を算出する際に、走行予定に含まれる走行パタンごとの消費電力量をあらかじめ算出し、駅ごとに区切って単位時間当りの消費電力量を現在条件の空調設定温度及び予測車両質量推移の車両質量で補正しつつ、前記蓄電装置の残量に応じた走行可能距離を算出するステップと、を含むことを特徴とする、運転支援方法が提供される。
本発明によれば、車両条件が変化する架線レス交通システムにおいても、走行可能な距離を精度よく算出して、架線レス交通システムの安全な運転を支援することができる。
本発明の第1の実施形態に係る運転支援装置の機能構成を示すブロック図である。 同実施形態にかかる車両質量推移推定処理の詳細を示すフローチャートである。 同実施形態にかかる車両質量推移の補正方法の一例を示す概念図である。 同実施形態にかかる走行可能距離算出処理の詳細を示すフローチャートである。
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)第1の実施の形態
まず、図1を参照して、架線レス交通システムに含まれる運転支援装置の構成について説明する。架線レス交通システムは、車両が軌道上や路面の設定された経路を走行する交通システムのうち、車両に蓄電装置を搭載し、地上に設置した充電設備から電力の供給を受け、蓄電装置を動力源として上記経路を走行する交通システムである。運転支援装置101は、乗務員に現在の蓄電池残量で走行可能な距離を通知する情報処理装置であって、図1は本実施の形態にかかる運転支援装置101の機能構成を示すブロック図である。
なお、以下では、モノレールを含め、列車が駅間を走行する場合を例に説明するが、本実施の形態はこれに限定されず、例えば、予め定められた路線を走行するバスなどにも適用可能である。
図1に示すように、運転支援装置101は、現在条件取得部102、走行予定取得部103、他車情報取得部104、地上情報取得部105、記録部106、車両質量推移推定部107、蓄電池情報取得部108、走行可能距離算出部109からなる。列車には乗務員とのインターフェイスとして、表示器110が搭載されている。運転支援装置101は、走行可能距離を表示器110に表示するなどして、乗務員の運転を支援する。
現在条件取得部102は、列車の現在の条件を取得する。列車の現在の条件(現在条件)とは、日付、現在時刻、現在位置、天候、ダイヤ乱れの有無、沿線イベント情報、乗り換え接続情報、空調設定温度または車両質量などの車両の現在の周辺環境の情報である。日付、現在時刻、現在位置は列車の制御を司る車両制御装置(図示せず)から取得する。車両制御装置は、車両を駆動する電動機の回転軸端あるいは車軸端に取り付けられた、例えばパルスジェネレータ(PG)などの速度センサから車両速度を取得し、車両速度を積算することにより車両の現在位置を算出する。なお、車両制御装置が車両速度を取得できればよく、その取得先は問わない。
また、現在位置の算出は、車両速度の積算以外に、例えば運行管理装置から直接現在位置を取得してもよく、GPSによる現在位置の取得を含め、車両制御装置が現在位置を把握できればその方法は問わない。天候は、列車と地上の通信を行なう地上−車上間の通信を利用して、地上から入手してもよいし、ワイパーの動作状況から晴れ・雨を判定してもよいし、乗務員の入力により取得してもよい。ダイヤ乱れの有無や沿線イベント情報、乗り換え接続情報は、上記した地上−車上間の通信を用いて、地上の運行管理システムから入手してもよいし、乗務員の入力により取得してもよい。空調設定温度は、上記した車両制御装置から入手する。
車両質量は、空気ばね圧力とあらかじめ規定されているばね下質量から算出する。空気ばねは、列車の床面高さが乗客数によらず一定となるように、乗客が多い場合は圧力を高め、乗客が少ないときは圧力を低くするように調整される。そのため、空気ばねの圧力の大小により列車の乗客数および車両質量を算出できる。なお、車両質量が算出できればよく、上記方法に限られない。つまり、現在条件取得部102は、日付、現在時刻、現在位置、天候、ダイヤ乱れの有無、沿線イベント情報、乗り換え接続情報、空調設定温度、車両質量などの現在の周辺環境情報を入手できればよく、その入手手段や入手元は問わない。
走行予定取得部103は、当該列車の走行予定を取得する。走行予定とは、今後走行する予定の行路、ダイヤ、編成構成、走行パタン、走行経路の地形条件である。行路とは、当該列車がどこの駅からどこの駅まで走行するかの走行経路を規定したものである。ダイヤは、当該列車がどこの駅を何時に出発し、どこの駅に何時に到着するか、どこの駅に何分停車するかが規定されている。編成構成は、当該列車が、今後走行する予定の行路において、どこの駅からどこの駅まで何両で走行し、どこの駅で分割・併合が行なわれるかが規定されている。この編成構成によって、当該列車が、今後何両編成で走行するかが規定される。
走行パタンは、加速終了地点と速度、ブレーキ開始地点と速度など列車の走り方を規定したものである。地形条件は、走行経路の勾配、曲線半径である。走行予定取得部103は、走行予定を列車の制御を司る車両制御装置から取得する。車両制御装置は行路、ダイヤ、編成構成を乗務員が所持するICカードから取得する。なお、行路、ダイヤ、編成構成の保存媒体はICカード以外でもよく、車両制御装置が読み取り可能な媒体であれば、媒体形式は問わない。また、乗務員が所持する媒体以外から入手してもよく、運行管理装置から入手しても良いし、乗務員に表示器110を介して入力させてもよい。つまり、走行予定取得部103が、行路、ダイヤ、編成構成、走行パタン、走行経路の地形条件を入手できればよく、入手手段、入手元は問わない。
他車情報取得部104は、先行列車など付近の列車の他車車両質量推移情報を地上−車上間の通信などを用いて取得する。他車車両質量推移情報には、日付、現在時刻、現在位置、天候、ダイヤ乱れの有無、沿線イベント情報、乗り換え接続情報、空調設定温度、車両質量、ドア開時間などが含まれる。なお、先行列車など付近の列車の他車車両質量推移情報を他車情報取得部104が取得できればよく、手段は問わない。
地上情報取得部105は、現在列車が走行している線区および走行予定の線区の地上情報を取得する。地上情報は、IC乗車券のデータから推定した駅ごとの乗降客数や、ホームに設置したカメラの画像により推定されるホーム上の人数、人流シミュレータが予測する駅ごとの乗降客数が含まれる。また、運行管理装置からのリアルタイム運行情報(ダイヤ乱れの有無)や、リアルタイム乗り換え接続情報などが含まれる。
記録部106は、現在列車が走行している線区および走行予定の線区の過去車両質量推移情報を記録している。過去車両質量推移情報には、日付、現在時刻、現在位置、天候、ダイヤ乱れの有無、沿線イベント情報、乗り換え接続情報、空調設定温度、車両質量などの過去の車両の周辺環境情報が含まれる。過去車両質量推移情報は、現在から所定の期間前までに現在列車が走行している線区、及び、走行予定の線区を過去に走行した列車の車両質量推移情報から構成される。
車両質量推移推定部107は、現在条件取得部102から現在条件を、走行予定取得部103から走行予定を、他車情報取得部104から他車車両質量推移情報を、地上情報取得部105から地上情報を、記録部106から過去車両質量推移情報を入手する。車両質量推移推定部107は、現在条件と走行予定の情報に基づいて、他車車両質量推移情報、地上情報及び過去車両質量推移情報から、今後の当該列車の車両質量推移として最適な情報を予測車両質量推移として選択する。車両質量推移推定部は、予測車両質量推移を走行可能距離算出部109に送信する。
蓄電池情報取得部108は、蓄電池情報を蓄電池から取得する。蓄電池情報とは、蓄電池残容量、充電率、蓄電池電圧である。蓄電池情報取得部108が、蓄電池残量に相当する情報を入手できればよく、その形態は問わない。蓄電池情報取得部108は、蓄電池情報を走行可能距離算出部109に送信する。
走行可能距離算出部109は、走行予定取得部103から走行予定を、車両質量推移推定部107から予測車両質量推移を、蓄電池情報取得部108から蓄電池情報を取得する。走行可能距離算出部109は、走行予定と予測車両質量推移から算出した当該列車が今後の走行で消費する予測消費電力量と蓄電池情報を用いて予測走行可能距離を算出する。走行可能距離算出部109は、予測走行可能距離を表示器110に送信する。
表示器110は、予測走行可能距離を用いて、当該列車が走行可能な距離または駅を表示器に表示する。
乗務員は、表示器110に表示された走行可能距離または駅に基づいて、以下の行動をとることが出来る。例えば、充電中であって、走行可能駅が電化区間となった場合、無駄な充電を防止し、蓄電池寿命を延ばすために乗務員は充電を停止するという行動を取ることができる。例えば、輸送障害で抑止がとられている場合に、走行可能駅が電化/非電化切替駅となった場合、電化区間まで走行が出来なくなり、非電化区間で立ち往生する可能性が考えられる。この場合、乗務員は空調装置の出力を減らしたり、停止させたり、または、運転指令に抑止解除を要求したりするなどの行動を取ることができる。
(1−2)車両質量推移推定処理の詳細
図2は、図1における車両質量推移推定部107での処理の流れを示している。以下に説明するステップ201〜209の処理を実行することにより、当該列車の今後の車両質量の推移を推定する。
図2に示すように、まず、車両質量推移推定部107は、現在条件取得部102から当該列車の現在条件を取得する(S201)。そして、車両質量推移推定部107は、当該列車の走行予定を走行予定取得部103から取得する(S202)。
続いて、車両質量推移推定部107は、他車情報取得部104から他車車両質量推移情報を取得し(S203)、地上情報取得部105から地上情報を取得し(S204)、記録部106から過去車両質量推移情報を取得する(S205)。
そして、車両質量推移推定部107は、当該列車の今後の車両質量推移データ(他車車両質量推移または過去車両質量推移または地上情報)と現在条件とを比較する(S206)。具体的には、車両質量推移推定部107は、日付および時刻、天候、ダイヤ乱れの有無、沿線イベント情報、乗り換え接続情報、空調設定温度などが、現在条件と一致しているか、またはあらかじめ設定された範囲の中に存在するかを判定する。
ステップS206において、車両質量推移推定部107は、列車の今後の車両質量推移データと現在条件のデータの一致性を検証し、一致していると判断された場合には、ステップ207の処理を実行する。一方、一致するデータが存在しないと判断された場合には、ステップ208の処理を実行する。
なお、データが走行予定の行路すべてで一致する車両質量推移データが存在しない場合は、行路を短い区間に分けて、区間ごとに一致するデータがあるかを判定してもよい。例えば、A駅からD駅までは他車車両質量推移を採用し、D駅から終着駅までを過去車両質量推移を採用してもよい。一致性の範囲は、任意に変更可能であり、あらかじめ規定しておくか、表示器110を通じて乗務員に設定させてもよい。
また、現在条件と一致する車両質量推移データが複数存在する場合には、採用する車両質量推移データに優先順位を設定してもよい。例えば、他車車両質量推移を優先的に採用し、他車車両質量推移に一致するデータが存在しない場合は、過去車両質量推移を検証するようにする。優先順位は、任意に変更可能であり、あらかじめ設定しておいてもよいし、表示器110を介して乗務員に設定させるようにしてもよい。
ステップS207において、車両質量推移推定部107は、当該列車の今後の車両質量推移データ(他車車両質量推移または過去車両質量推移または地上情報)を現在条件で補正し、予測車両質量推移を算出する。
ステップS206において、当該列車の今後の車両質量推移の推定に用いるデータが存在しないと判定された場合には、車両質量推移推定部107は、走行可能距離算出部109に送信する予測車両質量推移を算出できないため、表示器110に走行可能距離が算出できないことを表示して(S208)、処理を終了する。
そして、車両質量推移推定部107は、ステップ207で算出した予測車両質量推移を走行可能距離算出部に送信する。
次に、ステップ207で実施する現在条件での補正方法の具体例について、図3を用いて説明する。図3では、採用した車両質量推移と現在条件が、車両質量、イベントの有無、乗り換え接続列車の有無及びダイヤ乱れの有無という点で差異があった場合を例示して説明する。なお、他の差異要因についても補正が可能であり、図3は本発明における車両質量推移の補正要因を限定するものではない。
例えば、現在、当該列車はA駅に停車しており、H駅まで走行予定とする。現在条件に近い車両質量推移データ(以下、初期車両質量推移と呼ぶ)として破線301を採用したとする。まず、破線301のデータを取得したときの車両質量と、現在条件の車両質量を比較する。
図3では、初期車両質量推移の車両質量がA、現在条件の車両質量がBの例を示している。この場合、車両質量比(B/A)302に応じて破線301を補正し、補正車両質量推移として一点鎖線303を定義する。
次に、初期車両質量推移の沿線イベント情報と現在条件の沿線イベント情報を比較する。図3では、初期車両質量推移ではC駅でイベントが実施されていないが、現在条件ではC駅でイベントが実施された例を示している。イベント実施時には突発的に乗客の流れが変化するため、補正が必要となる。イベント実施時に想定される乗降客数をあらかじめ設定しておき、設定した乗降客数に応じた車両質量変化量を定義する。イベント実施時に想定される乗降客数は人流シミュレーションを活用して求めるほかに、イベントが実施されたときの実際の乗降客数を用いてもよい。イベント実施時は、定義した車両質量変化量304で一点鎖線303を補正し、新たな補正車両質量推移として二点鎖線305を定義する。
次に、初期車両質量推移の乗り換え接続情報と現在条件または地上情報の乗り換え接続情報を比較する。図3では、初期車両質量推移ではE駅で乗り換え接続列車が存在しないが、現在条件または地上情報ではE駅で乗り換え接続列車が存在する例を示している。乗り換え接続列車が存在する場合は、乗客の流れが変化するため、補正が必要となる。乗り換え接続列車が存在する場合の乗客の流れを、人流シミュレーションを用いて解析し、当該列車の乗降客数を設定しておき、設定した乗降客数に応じた車両質量変化量を定義する。
なお、乗り換え接続列車が存在する場合の乗客の流れは、時間帯によって大きく異なることから、前記車両質量変化量は時間帯に応じて設定することが望ましい。また、乗り換え接続列車が存在する場合の乗客の流れは人流シミュレーション以外の情報をもとに設定してもよく、例えばICカードなどのリアルタイムデータを活用したり、ホームに設置したカメラなどのセンサを用いて乗客の流れを把握したりしてもよい。乗り換え接続列車が存在する場合は、規定した車両質量変化量306で二点鎖線305を補正し、新たな補正車両質量推移として点線307を定義する。
次に、初期車両質量推移のダイヤ乱れの有無と現在条件または地上情報のダイヤ乱れの有無を比較する。図3では、初期車両質量推移ではG駅でダイヤ乱れは存在しないが、現在条件または地上情報ではG駅でダイヤ乱れが存在する例を示している。以下では、ダイヤ乱れの一例として、当該列車の先行列車に抑止指示が出た場合を説明する。ここで、抑止とは、ダイヤ乱れなどで先行列車との間隔が詰まった場合に駅間で機外停止しないように、所定のダイヤに基づく発車時刻を過ぎても駅を出発しないことで、先行列車との間隔を適切に維持するものである。このようなダイヤ乱れに伴う抑止指示などにより駅停車時分がダイヤから変化した場合、乗降客数が変化するため、車両条件の補正が必要となる。
ダイヤ乱れ発生時の乗降客数の変化は、人流シミュレーションなどを用いて解析し、予め、当該列車の乗降客数の変化を設定し、規定した乗降客数の変化に応じた車両質量変化量を定義しておく。なお、ダイヤ乱れ発生時の乗降客数の変化は、駅停車時分によって大きく異なることから、車両質量変化量は駅停車時分に応じて設定することが望ましい。また、ダイヤ乱れ発生時の乗降客数の変化は人流シミュレーション以外の情報をもとに設定してもよく、例えばICカードなどのリアルタイムデータを活用したり、ホームに設置したカメラなどのセンサを用いて乗降客数の変化を把握したりしてもよい。
一般的に先行列車が抑止指示を受けている場合、本来後続列車に乗車する乗客が先行列車に乗車するため、後続列車の乗客は減少する。ダイヤ乱れ発生時は、規定した車両質量変化量308で点線307を補正し、新たな補正車両質量推移として実線309を定義する。
上記したように、初期車両質量推移と現在条件および地上情報の差異を検証し、差異が存在するすべての項目で補正した補正車両質量推移309を予測車両質量推移として採用する。なお、図3ではすべての補正を始発駅であるA駅で実施する例を説明したが、補正のタイミングは始発駅に限定されることはない。むしろ、走行可能距離算出精度向上のために現在条件および地上情報が更新された場合に、速やかに実施することが望ましい。
(1−3)走行可能距離算出処理の詳細。
図4は、図1における走行可能距離算出部109内での処理の流れを示している。以下に説明するステップ401〜406の処理を実行することにより、当該列車の走行可能距離を算出する。
図4に示すように、まず、走行可能距離算出部109は、当該列車の走行予定を走行予定取得部103から取得する(S401)。
そして、走行可能距離算出部109は、蓄電池情報を蓄電池情報取得部108から取得する(S402)。
そして、走行可能距離算出部109は、当該列車の予測車両質量推移を車両質量推移推定部107から取得する(S403)。
そして、走行可能距離算出部109は、当該列車の走行予定で必要な消費電力量を算出する(S404)。具体的に、走行可能距離算出部109は、走行予定に含まれる走行パタン、地形条件及び予測車両質量推移を用いて運動方程式を解くことにより消費電力量を算出する。また、運動方程式を用いる方法以外に、走行パタンごとの消費電力量をあらかじめ算出し、予測車両質量推移の車両質量で補正する方法を用いてもよい。この方法は、データの読出しと掛け算のみで消費電力量が算出可能であり、運動方程式を用いる方法と比較して計算量が少ないというメリットがある。
なお、消費電力量は駅ごとに区切って算出しておくのが望ましい。空調装置などの補機の消費電力量は、あらかじめ規定した単位時間当たりの消費電力量と、走行予定の走行時間から算出する。なお、一般的に空調の消費電力量は空調設定温度と乗客数によって変動することから、単位時間当たりの消費電力量を現在条件の空調設定温度と予測車両質量推移で補正するのが望ましい。
そして、走行可能距離算出部109は、ステップS404で算出した駅ごとの消費電力量と蓄電池情報の蓄電池残容量から走行可能距離または走行可能駅を算出する(S405)。具体的には、走行可能距離算出部109は、蓄電池残容量から駅間ごとの消費電力量を減算し、蓄電池残容量が規定の値を下回ったひとつ手前の駅までを走行可能とする。なお、一般的に蓄電池残容量は、寿命の観点からすべて使い切ることはなく、一定の残容量までしか使用しない。
そして、走行可能距離算出部109は、ステップS405で算出した走行可能距離または走行可能駅を表示器110に送信する。
(1−4)本実施の形態の効果
このように、本実施の形態によれば、走行が予定されている区間における架線レス交通システムの車両条件を、現在の条件に近い過去の情報や他の車両の情報などから推定する。このため、車両条件が大きく変化する架線レス交通システムにおいて、現在の蓄電池残容量で走行可能な距離を精度よく算出することができる。また、走行可能距離を、表示器110を介して乗務員に提示することで、乗務員の列車運転を支援することが可能となる。
(2)第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。上記第1の実施の形態では、車両質量推移推定部107において、予測車両質量推移を算出する基準となる車両質量推移を自動で選択していたが、本実施の形態では、車両質量推移を手動で選択させることができる。具体的には、他車車両質量推移と過去車両質量推移と地上情報を表示器110に表示して、乗務員により採用する車両質量推移を選択させる。また、車両質量推移に対する補正項目を表示器110に表示して、乗務員が任意の補正項目を任意の区間に実施できるようにしてもよい。
本実施の形態2によれば、乗務員の判断で任意の車両質量推移に対して任意の補正ができるため、他車車両質量推移と過去車両質量推移と地上情報のいずれにも属さない外乱条件が発生した場合においても、走行可能距離を精度よく算出することが可能となる。
(3)第3の実施の形態
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。上記第1の実施の形態では、車両質量推移推定部107において、予測車両質量推移を算出する基準となる車両質量推移を自動で選択していたが、本実施の形態では、車両質量推移の選択結果の使用判断を乗務員に行わせることができる。具体的には、自動で選択した車両質量推移の選択結果を表示器に表示し、選択結果が不満であれば選択された車両質量推移を使用しないようにしてもよい。また、部分的に不満がある場合は、乗務員が補正項目と補正区間を入力することで車両質量推移を自由に補正できるようにしてもよい。
本実施の形態によれば、車両質量推移推定部107が、車両質量推移の選択に失敗しても、乗務員の再チェックで走行可能距離の算出ミスを防ぐことが可能となる。また、乗務員の経験と勘を予測車両質量推移に反映させることが可能となる。
(4)他の実施の形態
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成を追加、削除、または置換することが可能である。
101 運転支援装置
102 現在条件取得部
103 走行予定取得部
104 他車情報取得部
105 地上情報取得部
106 記録部
107 車両質量推移推定部
108 蓄電池情報取得部
109 走行可能距離算出部
110 表示器

Claims (13)

  1. 蓄電装置の電力により走行する車両の運転を支援する運転支援装置であって、
    前記車両の過去または現在の周辺環境情報をもとに、所定区間の車両質量の推移を予測する車両質量推移推定部と、
    前記予測された車両質量から走行に必要な消費電力量を算出する際に、走行予定に含まれる走行パタンごとの消費電力量をあらかじめ算出し、駅ごとに区切って単位時間当りの消費電力量を現在条件の空調設定温度及び予測車両質量推移データで補正しつつ、前記蓄電装置の残量に応じた走行可能距離を算出する走行可能距離算出部と、
    を備える
    ことを特徴とする、運転支援装置。
  2. 前記車両質量推移推定部は、前記車両の過去の周辺環境情報として、過去の乗降客数データを用いる、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の運転支援装置。
  3. 前記車両質量推移推定部は、前記車両の過去または現在の周辺環境情報として、利用者のICカードの入出力記録データを用いる
    ことを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の運転支援装置。
  4. 前記車両質量推移推定部は、前記車両の現在の周辺環境情報として、該車両が走行する沿線でのイベント開催予定データを用いる
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の運転支援装置。
  5. 前記車両質量推移推定部は、前記車両の現在の周辺環境情報として、現在の車両質量データ用いる
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の運転支援装置。
  6. 前記車両質量推移推定部は、前記車両の現在または過去の周辺環境情報として、該車両が走行する駅に設置されたカメラの画像データを用いる
    ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の運転支援装置。
  7. 前記車両質量推移推定部は、前記車両の現在または過去の周辺環境情報として、複数の列車の車両質量推移データを用いる
    ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の運転支援装置。
  8. 前記車両質量推移推定部は、前記車両の現在または過去の周辺環境情報として、時間帯に応じた車両質量推移データを用いる
    ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の運転支援装置。
  9. 前記車両質量推移推定部は、前記車両の現在または過去の周辺環境情報として、列車の分割併合予定データを用いる
    ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の運転支援装置。
  10. 前記車両質量推移推定部は、現在の車両条件と最も近い車両条件の車両質量推移データを選択して、所定区間の車両質量の推移を予測する
    ことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の運転支援装置。
  11. 前記車両質量推移推定部は、
    走行に必要な前記消費電力量を算出するための車両質量推移データを乗務員に選択させる
    ことを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の運転支援装置。
  12. 前記車両質量推移推定部は、
    該車両質量推移推定部が予測した車両質量推移データを、前記蓄電装置の残量に応じた走行可能距離の算出に使用可能かを乗務員に選択させる
    ことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の運転支援装置。
  13. 蓄電装置の電力により走行する車両の運転を支援する運転支援装置における運転支援方法であって、
    車両質量推移推定部が、前記車両の過去または現在の周辺環境情報を取得するステップと、
    車両質量推移推定部が、前記取得した車両の過去または現在の周辺環境情報もとに、所定区間の車両質量の推移を予測するステップと、
    走行可能距離算出部が、前記予測された車両質量から走行に必要な消費電力量を算出する際に、走行予定に含まれる走行パタンごとの消費電力量をあらかじめ算出し、駅ごとに区切って単位時間当りの消費電力量を現在条件の空調設定温度及び予測車両質量推移の車両質量で補正しつつ、前記蓄電装置の残量に応じた走行可能距離を算出するステップと、
    を含むことを特徴とする、運転支援方法。
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