JP6382366B2 - 電磁ブレーキ装置およびその制御方法 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、例えばエレベータの巻上機を制動する電磁ブレーキ装置およびその制御方法に関する。
乗客や荷物を搬送する例えばエレベータは、モータの動力で吊り篭を上下動させる巻上機を備えるとともに、この巻上機を必要に応じて制動する電磁ブレーキ装置を備える。
電磁ブレーキ装置は、制動対象である巻上機の回転軸に固定されたブレーキディスク、その回転軸上を摺動自在なアマーチュア、このアマーチュアをブレーキディスクに押し当てるスプリング、上記アマーチュアをスプリングの偏倚力に抗してブレーキディスクから引き離す電磁コイルを含み、制動をかける場合に電磁コイルを消勢し、制動を解除する場合に電磁コイルを付勢する。
電磁コイルが消勢されると、電磁コイルからアマーチュアへの磁気的な吸引作用がなくなり、スプリングの偏倚力を受けているアマーチュアがブレーキディスクに当たって摺接する。これにより、巻上機の回転が制止される。
電磁コイルが付勢されると、電磁コイルからアマーチュアへの磁気的な吸引作用が働き、アマーチュアがスプリングの偏倚力に抗してブレーキディスクから離れる。これにより、制止が解除されて巻上機の回転が許容される。
特開2008−168981号公報
上記電磁ブレーキ装置では、アマーチュアとブレーキディスクとの接触に伴い、アマーチュアが摩耗し、その摩耗により生じる金属の微粉がアマーチュアの周辺に飛散する。飛散した金属粉はアマーチュアと回転軸との摺動部分に入り込んで抵抗となり、アマーチュアの動きが徐々に悪くなる。このまま電磁ブレーキ装置の使用が続くと、制動力が低下したり、アマーチュアが動かなくなる故障に至る可能性がある。
アマーチュアが動かなくなる故障が生じた場合、修理の要請を受けた保守・点検の作業員がエレベータの設置現場にかけつけ、作業員による修理が実施される。作業員は、先ずエレベータの運転を停止し、エレベータの全体にわたって点検を行い、故障を見つけた段階で修理に着手する。このため、修理に多くの手間と時間がかかる。長い時間にわたってエレベータの運転が停止するので、利用者に多大な迷惑がかかってしまう。
本発明の目的は、アマーチュアの動きの異常を故障に至る前に知らせることができる電磁ブレーキ装置およびその制御方法を提供することである。
実施形態の電磁ブレーキ装置は、制動対象であるエレベータの巻上機の回転軸に固定されたブレーキディスクと、前記回転軸上をその軸方向に沿って摺動自在なアマーチュアと、このアマーチュアを前記ブレーキディスク側に摺動させて同ブレーキディスクに押し当てるスプリングと、前記アマーチュアを前記スプリングの偏倚力に抗して前記ブレーキディスクから引き離す電磁コイルと、制動をかける場合に前記電磁コイルを消勢し、制動を解除する場合に前記電磁コイルを付勢する制御部と、を備える。制御部は、前記電磁コイルの付勢に際し同電磁コイルに流れる電流の値と予め定めた理論値との差を積算し、この積算値が予め定めた設定値以上の場合に前記アマーチュアの動きが段階的な引っかかりをもつ異常と判定する。
一実施形態のアマーチュアおよびその周辺の構成を断面して示しかつ電気系統の構成を機能ブロックとして示す図。 同実施形態のアマーチュアが1段引きでスムーズに動く状態を示す図。 図2のようにアマーチュアが動く場合の励磁電流の波形を示す図。 同実施形態のアマーチュアが2段引きで段階的に動く状態を示す図。 図4に続くアマーチュアの動きを示す図。 図4・図5のようにアマーチュアが動く場合の励磁電流の波形を示す図。 同実施形態のアマーチュアが3段引きで段階的に動く状態を示す図。 図7に続くアマーチュアの動きを示す図。 図8に続くアマーチュアの動きを示す図。 図7〜図9のようにアマーチュアが動く場合の励磁電流の波形を示す図。 同実施形態における制御部の制御を説明するためのフローチャート。
一実施形態について図面を参照して説明する。
図1および図2に示すように、制御対象である例えばエレベータの巻上機の回転軸(駆動軸ともいう)1に、その軸方向に沿ってブレーキディスク2およびアマーチュア3が順次に配置されている。巻上機は、モータを動力源とし、乗客や荷物が載る吊り篭を回転軸1の回転により上下動させる。
ブレーキディスク2は、中心部が回転軸1に固定され、回転軸1が回転するとそれに伴い回転する。アマーチュア3は、ブレーキディスク2より径の大きい円板状の磁性体で形成され、回転軸1が通る挿通孔3aを中心部に有し、後述する固定用ボルト5が通る挿通孔3bを周縁部の複数個所に有する。
挿通孔3aの径は回転軸1の径よりもわずかに大きく、各挿通孔3bの径も固定用ボルト5の径よりもわずかに大きい。よって、アマーチュア3は、回転軸1の回転の影響を受けることなく回転軸1上をその軸方向に沿って摺動することができ、その摺動によりブレーキディスク2への摺接および離間が自在である。
回転軸1上において、ブレーキディスク2を挟んでアマーチュア3と対向する位置に、ディスク受け板(サイドプレートともいう)4が配置される。ディスク受け板4は、アマーチュア3とほぼ同じ径の円板状に形成され、回転軸1が通る挿通孔4aを中心部に有し、固定用ボルト5が通る挿通孔4bを周縁部の複数個所に有する。挿通孔4aの径は回転軸1の径よりもわずかに大きく、各挿通孔4bの径は固定用ボルト5の径とほぼ同じである。挿通孔4aの径が回転軸1の径よりもわずかに大きいので、回転軸1とディスク受け板4との接触は生じない。
ディスク受け板4の各挿通孔4aおよびアマーチュア3の各挿通孔3aに固定用ボルト5がそれぞれ挿通され、これら固定用ボルト5の先端部がコア(コイルケースともいう)10およびそのコア10の取付け基板6にねじ込み固定される。このねじ込み固定により、ディスク受け板4およびアマーチュア3がコア10および取付け基板6に固定される。ブレーキディスク2とコア10との間にはアマーチュア3の摺動を許容するための所定の間隙が確保される。
コア10は、アマーチュア3とほぼ同じ径の円板状の磁性体で形成され、回転軸1の先端部を回転自在に受け入れる凹部10aを中心部に有する。また、コア10は、アマーチュア3と対向する側の面において、凹部10aを囲む位置に円環状のコイル収容穴10bを有し、そのコイル収容穴10bを囲む位置に複数のスプリング収容穴10cを有する。
コイル収容穴10bには、円環状に巻回された電磁コイル11が埋設されている。各スプリング収容穴10cにはそれぞれスプリング12が収容され、これらスプリング12の先端部がスプリング収容穴10cから突出してアマーチュア3の一方面に固定されている。各スプリング12は、アマーチュア3をブレーキディスク2側に摺動させて同ブレーキディスク2に押し当てる方向の偏倚力を発する。
電磁コイル11は、アマーチュア3を各スプリング12の偏倚力に抗してブレーキディスク2から引き離すための磁界を発するもので、通電用の電線21を介して駆動部20に電気的に接続されている。駆動部20は、電磁コイル11を付勢するための励磁電流(直流電流)を出力する。励磁電流が出力されると、電磁コイル11から磁界が発せられてコア10が電磁石となり、その磁気的な吸引作用がアマーチュア3に働く。これにより、アマーチュア3が各スプリング12の偏倚力に抗してブレーキディスク2から離れる。
励磁電流検知用の電流検知器22が電線21に配置され、その電流検知器22の検知結果が制御部30に供給される。そして、制御部30に、上記駆動部20、記憶部31、報知器32が接続されている。
制御部30は、駆動部20および報知器32を制御するもので、主要な機能として次の(1)〜(6)の手段を有する。
(1)回転軸1に制動をかける場合に駆動部20の駆動を停止して電磁コイル11を消勢し、回転軸1への制動を解除する場合に駆動部20を駆動して電磁コイル11を付勢する制御手段。
(2)上記制御手段による電磁コイル11の付勢に際し、電磁コイル11に流れる励磁電流を電流検知器22を介して計測する計測手段。
(3)上記計測手段で計測した励磁電流の値と予め定めた理論値との差(残差という)を検出する検出手段。理論値は、当該電磁ブレーキ装置が搭載されるエレベータの出荷時の試験や同エレベータの定期点検時に電磁コイル11の付勢を繰返し、その付勢ごとに電磁コイル11に流れる励磁電流を計測し、これら計測値を平均化した値であり、図3に破線で示すように時間の経過に伴い変化する。この理論値が記憶部31に記憶されている。
(4)上記検出手段で検出した残差を積算する積算手段。
(5)上記積算手段の積算値が予め定めた設定値以上の場合に、アマーチュア3の動きが異常であると判定する判定手段。設定値は、記憶部31に予め記憶されている。
(6)上記判定手段が異常を判定した場合に、その異常の旨を報知器32の動作により報知する報知手段。報知器32は、保守・点検の管理センタに通信線やネットワークを介してつながる通信ユニット、音を発する電子ブザー、光を発するランプや発光ダイオード、報知情報を文字や画像で表示するディスプレイなどである。
上記ブレーキディスク2、アマーチュア3、ディスク受け板4、固定用ボルト5、取付け基板6、コア10、電磁コイル11、各スプリング12、駆動部20、電線21、電流検知器22、制御部30、記憶部31、報知器32などにより、巻上機の回転軸1を制動する電磁ブレーキ装置が構成されている。この電磁ブレーキ装置が巻上機と共にエレベータに搭載されている。
つぎに、電磁ブレーキ装置の動作について説明する。
制御部30は、回転軸1に制動をかける場合、電磁コイル11への通電を遮断して電磁コイル11を消勢する。
電磁コイル11が消勢されると、コア10からアマーチュア3への磁気的な吸引作用がなくなる。これに伴い、複数のスプリング12の偏倚力により、図1に示すようにアマーチュア3がブレーキディスク2の一方面の外縁部に当たって摺接する。これにより、回転軸1の回転が制止される。
この制動に際し、アマーチュア3とディスク受け板4との間にブレーキディスク2が挟み込まれた状態となる。この両面からの挟み込みにより、制動力が増加する。
制動を解除する場合、制御部30は、電磁コイル11に励磁電流を供給して電磁コイル11を付勢する。
電磁コイル11が付勢されると、コア10からアマーチュア3へ磁気的な吸引作用が働く。これに伴い、図2に示すように、アマーチュア3が各スプリング12の偏倚力に抗してブレーキディスク2から引き離され、アマーチュア3の一方面がコア10に面接触する。これにより、上記制止が解除されて回転軸1の回転が許容される。
アマーチュア3がブレーキディスク2に摺接すると、アマーチュア3が徐々に摩耗し、その摩耗により生じる金属の微粉がアマーチュア3の周辺に飛散する。飛散した金属粉は、アマーチュア3と回転軸1との摺動部分である挿通孔3aおよび回転軸1の周面との間に入り込んで摺動抵抗となり、アマーチュア3の動きを徐々に悪くしてしまう。このまま電磁ブレーキ装置の使用が続くと、制動力が低下したり、アマーチュア3が動かなくなる故障に至る可能性がある。
[アマーチュア3の1段引き]
電磁ブレーキ装置の使用初期や定期点検により電磁ブレーキ装置が清掃された直後は、金属粉が少ないので、アマーチュア3と回転軸1との摺動抵抗は小さい。摺動抵抗が小さい場合、電磁コイル11の付勢に際し、アマーチュア3は図1から図2の状態へと引っかかりなくスムーズに動くいわゆる1段引きの状態でコア10にスムーズに吸引されてコア10に面接触する。
電磁コイル11に流れる励磁電流は、図3に示すように、付勢の開始に合わせて零から立ち上がり、磁気的な吸引作用が生じてアマーチュア3が動き始めたところでコア10およびアマーチュア3の磁気的なインピーダンスが変化することにより下降方向に変化し、アマーチュア3の一方面がコア10に面接触したところで磁気的なインピーダンスが回復することにより下降から上昇に転じ、そこから上昇量が徐々に減少して平坦となる。
アマーチュア3と回転軸1との摺動抵抗が増えると、励磁電流の上昇に遅れが生じるようになる。この励磁電流の遅れは、図3に示すように、理論値とのずれ量となって現われる。アマーチュア3が引っかかりなく1段引きでスムーズに動く場合には、励磁電流の実測値と理論値とのずれ量は小さい。
[アマーチュア3の2段引き]
アマーチュア3と回転軸1との摺動抵抗が増えてくると、電磁コイル11の付勢に際し、アマーチュア3が図4に示すように回転軸1に対し傾斜した状態でブレーキディスク2から離れ、アマーチュア3の一方面の上部のみが先にコア10に当接する。この当接に続き、図5に示すように、アマーチュア3の一方面の全体がコア10に面接触する。すなわち、アマーチュア3は、段階的な引っかかりを伴ういわゆる2段引きの状態でコア10に吸引される。
電磁コイル11に流れる励磁電流は、図6に示すように、付勢の開始に合わせて零から立ち上がり、磁気的な吸引作用が生じてアマーチュア3が動き始めたところでコア10およびアマーチュア3の磁気的なインピーダンスが変化することにより下降方向に変化し、アマーチュア3の一方面の上部がコア10に当接したところで磁気的なインピーダンスが回復することにより下降から上昇に転じる。この後、励磁電流は、アマーチュア3のさらなる動きに伴う磁気的なインピーダンスの変化により再び下降方向に変化し、アマーチュア3の一方面の全体がコア10に面接触したところで磁気的なインピーダンスが回復することにより下降から上昇に転じ、そこから上昇量が徐々に減少して平坦となる。
このように、アマーチュア3が2段引きの状態でコア10に吸引される場合の励磁電流は、アマーチュア3が1段引きの状態でコア10にスムーズに吸引される場合の励磁電流よりも、理論値とのずれ量が大きくなる。
[アマーチュア3の3段引き]
アマーチュア3と回転軸1との摺動抵抗がさらに増えると、電磁コイル11の付勢に際し、アマーチュア3が図7〜図9に示すようないわゆる3段引きの状態でコア10に吸引されるようになる。
まず、アマーチュア3は、図7に示すように、回転軸1に対して傾斜した状態でブレーキディスク2から離れる。このときの傾斜が大きいと、アマーチュア3がコア10に到達する前に、アマーチュア3の各挿通孔3bの一部たとえば上部の挿通孔3bの開口縁が固定用ボルト5の周面に当たって引っかかる。次に、この引っかかり部分を支点とする動きがアマーチュア3に生じ、アマーチュア3の一方面の下部のみが先にコア10に当接するようになり。続いて図9に示すようにアマーチュア3の一方面の全体がコア10に面接触する。
電磁コイル11に流れる励磁電流は、図10に示すように、付勢の開始に合わせて零から立ち上がり、磁気的な吸引作用が生じてアマーチュア3が動き始めたところでコア10およびアマーチュア3の磁気的なインピーダンスが変化することにより下降方向に変化し、挿通孔3bの開口縁が固定用ボルト5の周面に当たって引っかかったところで磁気的なインピーダンスが回復することにより下降から上昇に転じる。この後、励磁電流は、アマーチュア3のさらなる動きに伴う磁気的なインピーダンスの変化により再び下降方向に変化し、アマーチュア3の一方面の下部がコア10に当接したところで磁気的なインピーダンスが回復することにより下降から上昇に転じる。そして、励磁電流は、アマーチュア3の動きが続くことによる磁気的なインピーダンスの変化により再び下降方向に変化し、アマーチュア3の一方面の全体がコア10に面接触したところで磁気的なインピーダンスが回復することにより下降から上昇に転じ、そこから上昇量が徐々に減少して平坦となる。
このように、アマーチュア3が3段引きで状態でコア10に吸引される場合の励磁電流は、アマーチュア3が2段引きの状態でコア10にスムーズに吸引される場合の励磁電流よりも、理論値とのずれ量が大きくなる。
[制御部30の制御]
制御部30の制御を図11のフローチャートを参照しながら説明する。
電磁コイル11の付勢時(ステップS1のYES)、制御部30は、電磁コイル11に流れる励磁電流を電流検知器22を介して計測し(ステップS2)、計測した励磁電流の値と理論値との差である残差を図3・図6・図10に縦細線で示す細かい周期で逐次に検出する(ステップS3)。そして、制御部30は、検出した残差を積算し(ステップS4)、電磁コイル11の付勢を続ける間(ステップS5のNO)、上記ステップS1からの同様の処理を繰り返す。
電磁コイル11を消勢したとき(ステップS5のYES)、制御部30は、残差の積算値と設定値とを比較する(ステップS6)。
アマーチュア3が図2のように1段引きの状態でスムーズに動いた場合、励磁電流の実測値と理論値とのずれ量は図3のように小さいので、残差の積算値は設定値に達しない。
残差の積算値が設定値未満の場合(ステップS6のNO)、制御部30は、異常なしとの判断の下に、ステップS1に戻って次の付勢に備える。そして、次の付勢に際し(ステップS1のYES)、制御部30は、ステップS3の残差検出およびステップS4の積算をそれぞれ零に初期化した状態で初めから行う。
アマーチュア3が図4および図5のように2段引きの状態で段階的に動いた場合、励磁電流の実測値と理論値とのずれ量が図6のように増えるので、残差の積算値が設定値以上となる。アマーチュア3が図7〜図9のように3段引きの状態で段階的に動いた場合も、励磁電流の実測値と理論値とのずれ量が図10のように大きくなるので、残差の積算値が設定値以上となる。
残差の積算値が設定値以上の場合(ステップS6のYES)、制御部30は、アマーチュア3の動きが異常であると判定する(ステップS7)。そして、制御部30は、アマーチュア3の動きが異常である旨を報知器32により報知する(ステップS8)。この報知は、保守・点検の作業員に伝わる。
以上のように、励磁電流の実測値と理論値との残差を逐次に検出して積算し、その積算値と設定値との比較によってアマーチュア3の動きの異常を判定することにより、電磁ブレーキ装置の制動力が低減する前に、かつアマーチュア3が動かなくなる故障に至る前に、アマーチュア3の動きが段階的な引っかかりをもつ異常であることを電磁ブレーキ装置の外部に知らせることができる。
報知を受けた保守・点検の作業員は、アマーチュア3の動きが段階的な引っかかりをもつ異常であることを認識し、電磁ブレーキ装置が搭載されているエレベータの設置現場にかけつけ、エレベータの運転を停止してアマーチュア3の動きを改善する保守や修理を実施する。この場合、作業員は、アマーチュア3の動きに段階的な引っかかりがあることを認識しているので、アマーチュア3と回転軸1との摺動部に付着した金属粉を除去するなどの適切な保守および修理をすぐに開始することができる。したがって、保守および修理に要する手間と時間を軽減することができる。長い時間にわたってエレベータの運転を停止しなくて済むので、利用者に多大な迷惑がかからない。
[変形例]
上記実施形態では、エレベータの巻上機を制動する電磁ブレーキ装置を例に説明したが、制動対象について限定はなく、エレベータ以外の機器を制動する電磁ブレーキ装置についても同様に実施が可能である。
上記実施形態では、アマーチュア3の動きの異常を残差の積算値と1つの設定値との比較により判定する構成としたが、残差の積算値に対して互いに値が異なる複数の設定値を用意しておき、残差の積算値とこれら複数の設定値との比較により、アマーチュア3の動きの異常を2段引きの異常と3段引き以上の異常とに分けて判定する構成としてもよい。
その他、上記各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…回転軸、2…ブレーキディスク、3…アマーチュア、4…ディスク受け板、5…固定用ボルト、6…取付け基板、10…コア、10a…挿通孔、10b…コイル収容穴、10c…スプリング収容穴、11…電磁コイル、12…スプリング、20…駆動部、21…電線、22…電流検知器、30…制御部、31…記憶部、32…報知器

Claims (4)

  1. 制動対象であるエレベータの巻上機の回転軸に固定されたブレーキディスクと、
    前記回転軸上をその軸方向に沿って摺動自在なアマーチュアと、
    前記アマーチュアを前記ブレーキディスク側に摺動させて同ブレーキディスクに押し当てるスプリングと、
    前記アマーチュアを前記スプリングの偏倚力に抗して前記ブレーキディスクから引き離す電磁コイルと、
    制動をかける場合に前記電磁コイルを消勢し、制動を解除する場合に前記電磁コイルを付勢する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、前記電磁コイルの付勢に際し同電磁コイルに流れる電流の値と予め定めた理論値との差を積算し、この積算値が予め定めた設定値以上の場合に前記アマーチュアの動きが段階的な引っかかりをもつ異常と判定する、
    ことを特徴とする電磁ブレーキ装置。
  2. 前記制御部は、前記異常を判定した場合にその異常の旨を報知する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の電磁ブレーキ装置。
  3. 前記ブレーキディスクを挟んで前記アマーチュアと対向する位置に設けられ、前記スプリングの偏倚力で前記アマーチュアが前記ブレーキディスクに押し当てられた際に、そのアマーチュアとの間に前記ブレーキディスクを挟み込むプレート、
    をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁ブレーキ装置。
  4. 制動対象であるエレベータの巻上機の回転軸に固定されたブレーキディスクと、
    前記回転軸上をその軸方向に沿って摺動自在なアマーチュアと、
    前記アマーチュアを前記ブレーキディスク側に摺動させて同ブレーキディスクに押し当てるスプリングと、
    前記アマーチュアを前記スプリングの偏倚力に抗して前記ブレーキディスクから引き離す電磁コイルと、
    を備え、制動をかける場合に前記電磁コイルを消勢し、制動を解除する場合に前記電磁コイルを付勢する電磁ブレーキ装置の制御方法であって、
    前記電磁コイルの付勢に際し同電磁コイルに流れる電流の値と予め定めた理論値との差を積算し、
    前記積算した値が予め定めた設定値以上の場合に前記アマーチュアの動きが段階的な引っかかりをもつ異常と判定する、
    ことを特徴とする電磁ブレーキ装置の制御方法。
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