JP6379972B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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空気入りタイヤは、通常、タイヤの骨格をなすカーカスと、タイヤ内部(最内面層)に配置されるインナーライナーとを有する。
カーカスは、空気入りタイヤが受ける荷重、衝撃に耐える役割を持っているため、補強性の高い仕様となっている。
一方、インナーライナーは空気入りタイヤの内圧を保持し、内部パーツを保護するために、耐疲労性や耐亀裂性が要求されるので、比較的柔らかいゴムが用いられている。
本出願人は以前、インナーライナー用ゴム組成物として例えば特許文献1を、カーカス用ゴム組成物として例えば特許文献2を提案した。
また、インナーライナーに対しては、耐空気透過性を有することによって、酸素が空気入りタイヤ内からゴム層に侵入するのを防ぐことが求められる。
そこで、本発明は、耐久性(例えば酸素に対する耐久性。以下同様。)と亀裂発生の抑制とを高度に両立した空気入りタイヤの提供を目的とする。
前記カーカスを形成するカーカスコートゴムと前記インナーライナーとの300%モジュラスの比率が、下記式(1)を満たし、
4.0≦M300(Carcass)/M300(IL)≦7.0 (1)
60℃における前記インナーライナーの空気透過係数が4.2×10-5mm3・mm/mm2・sec・MPa以下である場合、耐久性と亀裂発生の抑制とを高度に両立できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
前記カーカスを形成するカーカスコートゴムと前記インナーライナーとの300%モジュラスの比率が、下記式(1)を満たし、
4.0≦M300(Carcass)/M300(IL)≦7.0 (1)
60℃における前記インナーライナーの空気透過係数が4.2×10-5mm3・mm/mm2・sec・MPa以下である、空気入りタイヤ。
2. 前記インナーライナーが、ハロゲン化ブチルゴムを50質量%以上含むゴム成分100質量部に対して、層状又は板状粘土鉱物を5質量部以上含有する、インナーライナー用ゴム組成物で形成される、上記1に記載の空気入りタイヤ。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
インナーライナーとカーカスとを有し、
前記カーカスを形成するカーカスコートゴムと前記インナーライナーとの300%モジュラスの比率が、下記式(1)を満たし、
4.0≦M300(Carcass)/M300(IL)≦7.0 (1)
60℃における前記インナーライナーの空気透過係数が4.2×10-5mm3・mm/mm2・sec・MPa以下である、空気入りタイヤである。
この理由は明らかではないが概ね次のように考えられる。
即ち、M300(Carcass)/M300(IL)が特定の範囲であることによって亀裂の発生を抑制し、インナーライナーの空気透過係数が特定の範囲であることによって耐久性(例えば酸素に対する耐久性)に優れる。
図1は、本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例について、そのタイヤ子午線方向の部分断面を模式的に表す断面図である。
左右一対のビード部1間にカーカス4が装架されている。カーカスは、カーカスコートゴムに例えばスチールコードのような金属や繊維が埋設されている(図示せず。)。
空気入りタイヤの内面には、タイヤ内部に充填された空気がタイヤ外部に漏れるのを防止するために、インナーライナー9が設けられている。
カーカス4の端部がビードコア5およびビードフィラー6の廻りに内側から外側に折り返されて巻き上げられている。ビードフィラー6は2つの部材から構成される場合もあり、その場合上部は上ビードフィラー6aであり、下部は下ビードフィラー6bである。
タイヤトレッド部3においては、カーカス4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。ベルト層7の両端部には、ベルトクッション8が配置されている。
本発明のタイヤは、インナーライナーを接着させるために、カーカスとインナーライナーとの間にタイゴムを有してもよい。
4.0≦M300(Carcass)/M300(IL)≦7.0 (1)
M300(Carcass)/M300(IL)は、亀裂発生の抑制により優れ、耐疲労特性に優れるという観点から、4.0<M300(Carcass)/M300(IL)<7.0が好ましく、
4.5〜6.5であるのがより好ましく、4.5より大きく5.9未満が更に好ましい。
M300(IL)は、亀裂発生の抑制により優れ、耐疲労性に優れるという観点から、
1.5〜6.0であるのが好ましく、2.0〜5.0であるのがより好ましい。
インナーライナーの空気透過係数は、耐久性により優れるという観点から、4.0×10-5mm3・mm/mm2・sec・MPa以下であるのが好ましく、3.9×10-5mm3・mm/mm2・sec・MPa以下であるのがより好ましく、3.8×10-5mm3・mm/mm2・sec・MPa以下であるのが更に好ましい。
インナーライナー用ゴム組成物に含有されるゴムは、ジエン系ゴムを少なくとも含む又は全てジエン系ゴムであるのが好ましい。
ジエン系ゴムは特に制限されない。例えば、ブチルゴム(ハロゲン化ブチルゴムを含む。)、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。なかでも、耐久性、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、ブチルゴム(ハロゲン化ブチルゴムを含む。)、天然ゴムが好ましい。
インナーライナー用ゴム組成物が更に含有することができる層状又は板状粘土鉱物は、タイヤのインナーライナーとした際の耐屈曲性や低温耐久性を維持しつつ、空気透過性をより低減するために使用することができる。
層状又は板状粘土鉱物は、天然品、合成品のいずれも使用することができる。層状又は板状粘土鉱物としては、例えば、タルク(例えば、HARタルク),マイカ,長石,シリカ、アルミナ、これらの含水複合体;モンモリロナイト,サポナイト,ヘクトライト,バイデライト,スティブンサイト,ノントロナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物,バーミキュライト,ハロイサイト,膨潤性マイカなどが挙げられる。
タルクとしては、例えば、HARタルクのような板状のタルクが挙げられる。
層状又は板状粘土鉱物の平均粒径(平均ストークス相当径)は、7.9μm以下が好ましく、4.9〜7.1μmがより好ましい。
層状又は板状粘土鉱物の平均アスペクト比は、3.0〜7.0が好ましく、3.4〜5.4がより好ましい。
粘土鉱物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、層状又は板状粘土鉱物の量は、空気透過係数を適正な範囲とし、耐久性、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、ハロゲン化ブチルゴムを50質量%以上含むゴム成分(又はジエン系ゴム)100質量部に対して、層状又は板状粘土鉱物を5質量部以上含有するのが好ましく、5.0〜50.0質量部であるのがより好ましい。
インナーライナー用ゴム組成物に更に含有することができるカーボンブラックは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。なかでも、インナーライナーのM300、M300の比率を適正な範囲とし、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、GPF、T−NSが好ましい。
カーボンブラックの量は、インナーライナーのM300、M300の比率を適正な範囲とし、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、
20〜50質量部であるのが好ましい。
インナーライナー用ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することにより製造することができる。
インナーライナー用ゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
カーカス用ゴム組成物に含有されるゴムは、ジエン系ゴムを少なくとも含む又は全てジエン系ゴムであるのが好ましい。
ジエン系ゴムは特に制限されない。例えば、インナーライナー用ゴム組成物に含有されるジエン系ゴムと同様のものが挙げられる。なかでも、耐久性、亀裂発生の抑制により優れ、耐空気透過性に優れるという観点から、天然ゴム、ブチルゴムが好ましい。
カーカス用ゴム組成物に更に含有することができるカーボンブラックは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。なかでも、カーカスコートゴムのM300、M300の比率を適正な範囲とし、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、HAFやFEFが好ましい。
カーボンブラックの量は、カーカスコートゴムのM300、M300の比率を適正な範囲とし、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、35〜75質量部であるのが好ましく、45〜75質量部であるのが好ましい。
添加剤は上記と同様である。
カーカス用ゴム組成物に含有される硫黄の量は、カーカスコートゴムのM300、M300の比率を適正な範囲とし、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、3.0〜10.0質量部であるのが好ましい。
カーカス用ゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
また、タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
<カーカス用ゴム組成物の製造>
下記第1表の各成分(加硫促進剤、硫黄以外)を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを1.7L密閉式バンバリーミキサーを用いて5分間混合し、混合物を混合機外に放出させて室温冷却させた。その後、同バンバリーミキサーにて、上記の混合物に第1表の加硫促進剤、硫黄を同表に示す組成(質量部)で配合し混合して、カーカス用ゴム組成物を製造した。
<カーカスシートの製造>
上記のとおり製造されたカーカス用ゴム組成物を150℃の条件下で30分加硫し、厚さ2mmのカーカスシートを製造した。
・NR:天然ゴム、RSS♯1
・カーボンブラック1:ショウブラック N330T、昭和キャボット社製
・ステアリン酸:NOFコーポレーション社製、「ステアリン酸YR」
・老化防止剤:Solutia Europe社製、「Santoflex 6PPD」
・コバルト:ステアリン酸コバルト、商品名cost−F、大日本インキ化学工業社製
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製「ノクセラーDZ−G」
・硫黄:軽井沢精錬所製、「油処理イオウ」
下記第2表の各成分(加硫促進剤、硫黄以外)を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを1.7L密閉式バンバリーミキサーを用いて5分間混合し、混合物を混合機外に放出させて室温冷却させた。その後、同バンバリーミキサーにて、上記の混合物に第2表の加硫促進剤、硫黄を同表に示す組成(質量部)で配合し混合して、インナーライナー用ゴム組成物を製造した。
<インナーライナーシートの製造>
上記のとおり製造されたインナーライナー用ゴム組成物を150℃の条件下で30分加硫し、厚さ2mmのインナーライナーシートを製造した。
・NR:天然ゴム、RSS♯1
・IIR:臭素化ブチルゴム、エクソンブチル268、エクソン化学社製
・カーボンブラック2:ショウブラック N330T、昭和キャボット社製
・カーボンブラック3:GPF、シーストV、東海カーボン社製
・タルク:Imerys社製HARtalc、粒子径=5.7μm、アスペクト比Ar=4.7
・老化防止剤:Solutia Europe社製、「Santoflex 6PPD」
・プロセスオイル:昭和シェル石油社製、「エキストラクト4号S」
・ZnO:酸化亜鉛、正同化学工業社製、「酸化亜鉛3種」
・加硫促進剤:大内新興化学工業製、「ノクセラー NS」
・硫黄:軽井沢精錬所製、「油処理イオウ」
上記のとおり製造されたカーカス用ゴム組成物から製造されたカーカスと、上記のとおり製造されたインナーライナー用ゴム組成物から製造されたインナーライナーとを、第3表の組合せで有する、タイヤサイズ11R22.5のトラックバススチールラジアルタイヤを製造した。
以下の評価を行った。
・M300:上記のとおり製造されたカーカスシート、インナーライナーシートについて、JIS K 6251に準じて、300%伸長時のモジュラスを25℃の条件下で測定した。結果を第1表、第2表に示す。
・通気度:上記のとおり製造されたインナーライナーシートについて、JIS K 7126に準じて、60℃における通気度(空気透過係数)を測定した。値が小さいほど空気透過性が低く良好である。結果を第2表、第3表に示す。
完走した場合を亀裂発生の抑制に非常に優れるとして「A」と評価した。
完走しても、インナーライナーに微小なクラックが認められた場合は、亀裂発生の抑制に優れるとして「B」と評価した。
インナーライナーが界面で亀裂した場合、及び/又は、インナーライナー自体に亀裂が入った場合、亀裂発生の抑制が低いとして「C」と評価した。
結果を第3表に示す。
この評価によって、酸素に対する耐久性を評価することができる。
なお、実施例1〜7、比較例2、3においてN2充填でのタイヤ耐久試験の評価結果はAであったので、実施例1〜7、比較例2、3はインナーライナー等に亀裂はなく空気入りタイヤに破壊はなかった。実施例1、4〜6においては、O2充填でのタイヤ耐久試験でもインナーライナー等に亀裂はなく空気入りタイヤに破壊はなかった。
比較例2、3は、窒素充填でのタイヤ耐久性試験において亀裂の発生がなく空気入りタイヤに破壊はなかった。しかし、比較例2、3においてインナーライナーの空気透過係数は4.2×10-5mm3・mm/mm2・sec・MPaを超えるので、酸素に対する耐久性が悪かった。これは、酸素充填でのタイヤ耐久性試験において、熱と酸素によりインナーライナーが容易に酸化劣化し、その結果、硬度やモジュラス等が上昇することによって、インナーライナーにクラックが発生したと推測される。インナーライナーでのクラック発生によって空気透過性が更に悪くなる場合、酸素がよりタイヤ内部に透過するので、酸化劣化が顕著に現れると考えられる。
同じインナーライナーを有する比較例5、実施例1、実施例3、比較例6を比較すると、窒素充填でのタイヤ耐久性試験において、比較例5、6では亀裂の発生があったが、実施例1、3では亀裂の発生等はなかった。また、酸素充填でのタイヤ耐久性試験において、実施例1は実施例3より酸素に対する耐久性により優れた。よって、M300(Carcass)/M300(IL)は5.9未満がより好ましいと言える。
同じインナーライナーを有する実施例2、4、5を比較すると、酸素充填でのタイヤ耐久性試験において、実施例4、5は実施例2より酸素に対する耐久性により優れた。よって、M300(Carcass)/M300(IL)は4.5より大きいことがより好ましいといえる。
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス
5 ビードコア
6 ビードフィラー
6a 上ビードフィラー
6b 下ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトクッション
9 インナーライナー
Claims (2)
- インナーライナーとカーカスとを有し、
前記カーカスを形成するカーカスコートゴムと前記インナーライナーとの300%モジュラスの比率が、下記式(1)を満たし、
4.0≦M300(Carcass)/M300(IL)≦7.0 (1)
60℃における前記インナーライナーの空気透過係数が4.2×10-5mm3・mm/mm2・sec・MPa以下である、空気入りタイヤ。 - 前記インナーライナーが、ハロゲン化ブチルゴムを50質量%以上含むゴム成分100質量部に対して、層状又は板状粘土鉱物を5質量部以上含有する、インナーライナー用ゴム組成物で形成される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
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