JP6369277B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
空気入りタイヤは、通常、タイヤの骨格をなすカーカスと、タイヤ内部に配置される第1のインナーライナーと、カーカスと第1のインナーライナーとを接着させるための第2のインナーライナーとを有する。
第1のインナーライナーは、カーカスを保護するためにタイヤの最内面に配置される。第1のインナーライナーは耐通気度に優れた素材を用いるほど空気入りタイヤの内部パーツの酸化劣化を抑制できるため、空気透過係数(通気度)は第1のインナーライナーの性能を特徴づける重要なパラメーターである。さらに、タイヤは走行中にたわむため、耐亀裂性や耐低ひずみ性能も第1のインナーライナーの重要な要求性能である。
通気度を改善する一手法として、板状タルクなどの板状無機充填剤を用いる技術が知られている(例えば特許文献1)。
また、本出願人は以前、第2インナーライナー用ゴム組成物(タイゴム用ジエン系ゴム組成物)として例えば特許文献2を提案した。
一方、第1インナーライナー用ゴム組成物にタルクを配合すると、タルクの補強性はカーボンブラックよりも小さいため、第1のインナーライナーのモジュラスが低下することが認められ、加工性向上のためプロセルオイル等を添加することなどが必要となってくる。
そして、第1のインナーライナーに含有されるプロセスオイルが増加すると、プロセスオイルが第2のインナーライナーへマイグレーションするなど、経時の物性変化が問題となってくる。
そこで、本発明は、インナーライナーでの亀裂発生を抑制し、経時的安定性に優れる空気入りタイヤの提供を目的とする。
第1のインナーライナーと第2のインナーライナーとを有し、
前記第2のインナーライナーと前記第1のインナーライナーとの100%モジュラスの比率が、下記式(1)を満たし、
2.3≦M100(2IL)/M100(1IL)≦3.2 (1)
前記第1のインナーライナーのアセトン抽出量が、前記第1のインナーライナーに含有されるゴム成分100質量部に対して、13質量部以下であり。
前記第1のインナーライナーの60℃における空気透過係数が4.2×10-5mm3・mm/mm2・sec・MPa以下である、空気入りタイヤが、インナーライナーでの亀裂発生を抑制し、経時的安定性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
前記第2のインナーライナーと前記第1のインナーライナーとの100%モジュラスの比率が、下記式(1)を満たし、
2.3≦M100(2IL)/M100(1IL)≦3.2 (1)
前記第1のインナーライナーのアセトン抽出量が、前記第1のインナーライナーに含有されるゴム成分100質量部に対して、13質量部以下であり、
前記第1のインナーライナーの60℃における空気透過係数が4.2×10-5mm3・mm/mm2・sec・MPa以下である、空気入りタイヤ。
2. 前記第1のインナーライナーに用いられるゴム組成物が、ハロゲン化ブチルゴムを50質量%以上含むゴム成分100質量部に対して、層状又は板状粘土鉱物を5質量部以上含有する、上記1に記載の空気入りタイヤ。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
第1のインナーライナーと第2のインナーライナーとを有し、
前記第2のインナーライナーと前記第1のインナーライナーとの100%モジュラスの比率が、下記式(1)を満たし、
2.3≦M100(2IL)/M100(1IL)≦3.2 (1)
前記第1のインナーライナーのアセトン抽出量が、前記第1のインナーライナーに含有されるゴム成分100質量部に対して、13質量部以下であり、
前記第1のインナーライナーの60℃における空気透過係数が4.2×10-5mm3・mm/mm2・sec・MPa以下である、空気入りタイヤである。
この理由は明らかではないが概ね次のように考えられる。
即ち、M100(2IL)/M100(1IL)が特定の範囲であることによって亀裂の発生を抑制できる。
第1のインナーライナーのアセトン抽出量が特定の範囲であることによって第1のインナーライナーから第2のインナーライナーへのマイグレーションを抑制できる。
また、第1のインナーライナーの空気透過係数が特定の範囲であることによって耐久性(例えば酸素に対する耐久性)に優れる。
そして、これらによって経時的安定性に優れる。
図1は、本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例について、そのタイヤ子午線方向の部分断面を模式的に表す断面図である。
空気入りタイヤの内面には、タイヤ内部に充填された空気がタイヤ外部に漏れるのを防止するために、第1のインナーライナー9が設けられている。
左右一対のビード部1間にカーカス4が装架されている。カーカスは、カーカスコートゴムに例えばスチールコードのような金属が埋設されている(図示せず。)。
第1のインナーライナー9とカーカス4との間に、第1のインナーライナー9とカーカス4とを接着させるために、第2のインナーライナー10(タイゴム)が設けられている。
カーカス4の端部がビードコア5およびビードフィラー6の廻りに内側から外側に折り返されて巻き上げられている。ビードフィラー6は2つの部材から構成され、その上部は上ビードフィラー6aであり、下部は下ビードフィラー6bである。
タイヤトレッド部3においては、カーカス4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。ベルト層7の両端部には、ベルトクッション8が配置されている。
ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション11が配置されている。
2.3≦M100(2IL)/M100(1IL)≦3.2 (1)
M100(2IL)/M100(1IL)は、亀裂発生の抑制、経時的安定性により優れるという観点から、2.3<M100(2IL)/M100(1IL)<3.2が好ましく、2.5<M100(2IL)/M100(1IL)<3.0であるのがより好ましい。
M100(2IL)は、亀裂発生の抑制、経時的安定性により優れ、耐疲労性に優れるという観点から、1.3〜4.8であるのが好ましく、1.7〜4.2であるのがより好ましい。
第1インナーライナーにおいて、アセトンで抽出されるものとしては、例えば、プロセスオイル、ステアリン酸、粘着付与樹脂、老化防止剤等が挙げられる。
本発明において、「第1のインナーライナーに含有されるゴム成分100質量部」とは、第1のインナーライナーを製造するためのゴム組成物に使用された原料ゴムを意味する。
第1のインナーライナーの空気透過係数は、耐久性に優れ、経時安定性により優れるという観点から、4.2mm3・mm/mm2・sec・MPa以下であるのが好ましく、4.0mm3・mm/mm2・sec・MPa以下であるのがより好ましい。
第1インナーライナー用ゴム組成物に含有されるゴムは、ジエン系ゴムを少なくとも含む又は全てジエン系ゴムであるのが好ましい。
ジエン系ゴムは特に制限されない。例えば、ブチルゴム(ハロゲン化ブチルゴムを含む。)、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。なかでも、亀裂発生の抑制により優れ、耐久性に優れるという観点から、ブチルゴム(ハロゲン化ブチルゴムを含む。)、天然ゴムが好ましい。
層状又は板状粘土鉱物は、天然品、合成品のいずれも使用することができる。層状又は板状粘土鉱物としては、例えば、タルク(例えば、HARtalc)、クレイ,マイカ,長石,シリカ、アルミナ、これらの含水複合体;モンモリロナイト,サポナイト,ヘクトライト,バイデライト,スティブンサイト,ノントロナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物,バーミキュライト,ハロイサイト,膨潤性マイカなどが挙げられる。
タルクとしては、例えば、HARtalc等の板状のタルクが挙げられる。
層状又は板状粘土鉱物の平均粒径(平均ストークス相当径)は、7.5μm以下が好ましく、4.9〜7.1μmがより好ましい。
層状又は板状粘土鉱物の平均アスペクト比(最大径aに対する厚みbの比:a/b)は、3.0〜7.0が好ましく、3.4〜5.4がより好ましい。
また、層状又は板状粘土鉱物の量は、空気透過係数を適正な範囲とし、耐久性、耐疲労特性に優れるという観点から、ハロゲン化ブチルゴムを50質量%以上含むゴム成分(又はジエン系ゴム)100質量部に対して、5質量部以上であるのが好ましく、5.0〜50.0質量部であるのがより好ましい。
添加剤としては、例えば、加硫剤又は架橋剤、加硫促進剤、加工助剤、老化防止剤、可塑剤、カップリング剤、プロセスオイル、ステアリン酸、粘着付着剤などの第1インナーライナー用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができる。これらの配合剤の量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
第1インナーライナー用ゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
第2インナーライナー用ゴム組成物に含有されるゴムは、ジエン系ゴムを少なくとも含む又は全てジエン系ゴムであるのが好ましい。
ジエン系ゴムは特に制限されない。例えば、第1インナーライナー用ゴム組成物に含有されるジエン系ゴムと同様のものが挙げられる。なかでも、亀裂発生の抑制、経時的安定性により優れ、耐疲労特性に優れるという観点から、天然ゴム、ブタジエンゴムが好ましい。
第2インナーライナー用ゴム組成物に更に含有することができるカーボンブラックは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。なかでも、第2インナーライナーのM100、M100の比率を適正な範囲とし、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、HAF級以上の粒子径を有するカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの量は、第2インナーライナーのM100、M100の比率を適正な範囲とし、亀裂発生の抑制により優れるという観点から、ゴム成分100質量部に対して、10〜70質量部であるのが好ましい。
第2インナーライナー用ゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
本発明において、カーカスは特に制限されない。
また、タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
<第1インナーライナー用ゴム組成物の製造>
下記第1表の各成分(加硫促進剤、硫黄以外)を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを1.7L密閉式バンバリーミキサーを用いて5分間混合し、混合物を混合機外に放出させて室温冷却させた。その後、同バンバリーミキサーにて、上記の混合物に第1表の加硫促進剤、硫黄を同表に示す組成(質量部)で配合し混合して、第1インナーライナー用ゴム組成物を製造した。
<第1インナーライナーシートの製造>
上記のとおり製造された第1インナーライナー用ゴム組成物を150℃の条件下で30分加硫し、厚さ2mmの第1インナーライナーシートを製造した。
・NR:天然ゴム、RSS♯1
・IIR:臭素化ブチルゴム、エクソンブチル268、エクソン化学社製
・カーボンブラック1:GPF、シーストV、東海カーボン社製
・カーボンブラック2:ショウブラック N330T、昭和キャボット社製
・タルク:Imerys社製HARtalc、粒子径=5.7μm、アスペクト比(Ar)=4.7
・老化防止剤:Solutia Europe社製、「Santoflex 6PPD」
・プロセスオイル:昭和シェル石油社製、「エキストラクト4号S」
・ZnO:酸化亜鉛、正同化学工業社製、「酸化亜鉛3種」
・加硫促進剤:大内新興化学工業製、「ノクセラーNS」
・硫黄:軽井沢精錬所製、「油処理イオウ」
下記第2表の各成分(加硫促進剤、硫黄以外)を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを1.7L密閉式バンバリーミキサーを用いて5分間混合し、混合物を混合機外に放出させて室温冷却させた。その後、同バンバリーミキサーにて、上記の混合物に第2表の加硫促進剤、硫黄を同表に示す組成(質量部)で配合し混合して、第2インナーライナー用ゴム組成物を製造した。
<第2インナーライナーシートの製造>
上記のとおり製造された第2インナーライナー用ゴム組成物を150℃の条件下で30分加硫し、厚さ2mmの第2インナーライナーシートを製造した。
・NR:天然ゴム、RSS♯1
・カーボンブラック2:ショウブラック N330T、昭和キャボット社製
・老化防止剤:Solutia Europe社製、「Santoflex 6PPD」
・プロセスオイル:昭和シェル石油社製、「エキストラクト4号S」
・ZnO:酸化亜鉛、正同化学工業社製、「酸化亜鉛3種」
・加硫促進剤:大内新興化学工業製、「ノクセラー DZ−G」
・硫黄:軽井沢精錬所製、「油処理イオウ」
上記のとおり製造された、第1インナーライナーシートと第2インナーライナーシートとを、第3表の組合せで有する、タイヤサイズ11R22.5のトラックバススチールラジアルタイヤを製造した。製造された空気入りタイヤは、第1のインナーライナーとカーカスとの間に第2のインナーライナーを有する。
以下の評価を行った。
・M100:上記のとおり製造された第1インナーライナーシート、第2インナーライナーシートについて、JIS K 6251に準じて、100%伸長時のモジュラスを25℃の条件下で測定した。結果を第1表、第2表に示す。
上記のとおり製造された第1インナーライナーシートについて、JIS K 7126に準じて、60℃における通気度(空気透過係数)を測定した。値が小さいほど空気透過性が低く良好である。結果を第1表、第3表に示す。
上記のとおり製造された空気入りタイヤに空気を充填させた状態(内圧900kPa)で、速度50km/h、30℃、荷重4500kgで押し付け、30,000km走行させた。
完走した場合を亀裂発生の抑制に非常に優れるとして「A」と評価した。
完走しても、第1のインナーライナーにクラックが認められた場合は、亀裂発生の抑制にやや劣るとして「B」と評価した。
第1のインナーライナーが界面で亀裂した場合、及び/又は、第1のインナーライナー自体に亀裂が生じた場合、亀裂発生の抑制が悪いとして「C」と評価した。
結果を第3表に示す。
上記のとおり製造された空気入りタイヤを、まず、80℃のオーブンで2週間劣化させたのちに、上記のタイヤ耐久試験を行った。
完走した場合を経時的安定性に非常に優れるとして「A」と評価した。
完走しても、空気入りタイヤに故障が認められた場合は、経時的安定性に優れるとして「B」と評価した。
空気入りタイヤが故障(例えば、第1のインナーライナーの亀裂、吹き抜け、ベルトセパレーション、タイヤの破壊等)して完走できなかった場合を経時的安定性が悪いとして「C」と評価した。
結果を第3表に示す。
第1のインナーライナーの空気透過係数が所定の値を超える比較例3、4は、経時的安定性が低かった。オーブン劣化後のタイヤ耐久性試験において、比較例4は、ベルトが界面で剥離して、空気入りタイヤが故障して完走できなかった。これは、酸素が第1のインナーライナーを透過し、この酸素によってベルトが劣化し、このため、ベルトが、トレッド又は第1のインナーライナーと剥離したと考えられる。
アセトン抽出量が所定の値を超える比較例6は、経時的安定性が低かった。比較例6は、第1のインナーライナー自体に亀裂が生じ空気入りタイヤが破壊した。比較例6においてオーブン劣化後において、マイグレーションが進行したため、マイグレーション後のM100(2IL)/M100(1IL)は比較例5のM100(2IL)/M100(1IL)に近づいていると考えられる。
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス
5 ビードコア
6 ビードフィラー
6a 上ビードフィラー
6b 下ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトクッション
9 第1のインナーライナー
10 第2のインナーライナー
11 リムクッション
Claims (2)
- 第1のインナーライナーと第2のインナーライナーとを有し、
前記第2のインナーライナーと前記第1のインナーライナーとの100%モジュラスの比率が、下記式(1)を満たし、
2.3≦M100(2IL)/M100(1IL)≦3.2 (1)
前記第1のインナーライナーのアセトン抽出量が、前記第1のインナーライナーに含有されるゴム成分100質量部に対して、13質量部以下であり、
前記第1のインナーライナーの60℃における空気透過係数が4.2×10-5mm3・mm/mm2・sec・MPa以下である、空気入りタイヤ。 - 前記第1のインナーライナーに用いられるゴム組成物が、ハロゲン化ブチルゴムを50質量%以上含むゴム成分100質量部に対して、層状又は板状粘土鉱物を5質量部以上含有する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
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