JP2004284453A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】スチールコード及び該コードのコーティングゴムで構成した少なくとも2枚のベルト層からなるベルト6を備えたタイヤにおいて、該ベルト6のタイヤ半径方向外側に配置するゴム部材に、ゴム成分に偏平クレーを配合してなるゴム組成物を用いたことを特徴とする空気入りタイヤである。前記ゴム部材としては、トレッドアンダークッションゴム9及び/又はキャップ・ベース構造のトレッドにおけるベースゴム8が好ましい。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチールコードで補強したベルトを備える空気入りタイヤに関し、特に高温・高湿度環境下での放置によるベルトの湿熱劣化を抑制し、ベルトの耐久性を向上させた空気入りタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1940年代後半、ミシュラン社によってスチールラジアルタイヤが開発されて以来、スチールコード補強空気入りタイヤは順調にシェアを伸ばしている。特に近年、ベルテッドバイアスタイヤ、ラジアルタイヤへの移行に伴い、該スチールコード補強空気入りタイヤは著しくシェアを伸ばしており、トラック用にも急激にシェアを伸ばしている。このスチールコード補強空気入りタイヤは、トレッドの下側に位置するベルト層に、スチールコード−ゴム複合体を使用したものであり、該スチールコードには、コーティングゴムとの接着力を高め、その補強効果を高めるために、通常黄銅メッキが施されている。ここで、加硫中に上記スチールコード表面の黄銅メッキとコーティングゴムとの間に接着層(初期接着層)を形成するには水分が必要であるが、該接着層は、使用中に外部から侵入した水分によって、破壊されることが知られている。したがって、スチールコード−ゴム複合体からなるベルト層の劣化を抑制するには、外部からベルト層への水分の侵入を防止するのが、有力な手段の一つである。
【0003】
これに対し、トレッドのタイヤ径方向内側に配置したトレッドアンダークッションゴムや、キャップ・ベース構造のトレッドにおけるベースゴムに、多孔質無機充填剤を配合してなるゴム組成物を適用し、該多孔質無機充填剤が水分を吸着することにより、ベルト層への水分の浸入を防ぐ技術が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、多孔質無機充填剤の吸湿能力には限界があり、限界まで吸湿した場合、更にベルト層への水分の浸入を防ぐことはできない。
【0004】
また、トレッドには制動性、操縦安定性、騒音性、乗り心地性、燃費性等を考慮したゴム組成物を用いる必要があるため、トレッドの組成を変更するには一定の制限がある。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−79807号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、外部からベルト層への水分の侵入を抑制し、ベルト層の湿熱耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ベルトのタイヤ半径方向外側に配置するゴム部材に、水蒸気透過度の低いゴム組成物を用いることで、ベルト層の湿熱耐久性を向上させ得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の空気入りタイヤは、スチールコード及び該コードのコーティングゴムで構成した少なくとも2枚のベルト層からなるベルトを備えたタイヤにおいて、該ベルトのタイヤ半径方向外側に配置するゴム部材に、ゴム成分に偏平クレーを配合してなるゴム組成物を用いたことを特徴とする。ここで、本発明のタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の若しくは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性なガスが挙げられる。
【0009】
本発明の空気入りタイヤの好適例においては、前記ゴム部材がトレッドアンダークッションゴム及びキャップ・ベース構造のトレッドにおけるベースゴムの少なくとも一方である。
【0010】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記偏平クレーは、アスペクト比が5〜30である。
【0011】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記偏平クレーの配合量が前記ゴム成分100質量部に対し30〜100質量部である。
【0012】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記ゴム成分がブチル系ゴムを10質量%以上含む。ここで、該ゴム成分は、ブチル系ゴムを10〜50質量%含むのが更に好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の空気入りタイヤは、スチールコード及び該コードのコーティングゴムで構成した少なくとも2枚のベルト層からなるベルトを備え、該ベルトのタイヤ半径方向外側に配置するゴム部材に、ゴム成分に偏平クレーを配合してなるゴム組成物を用いたことを特徴とする。ここで、ベルトのタイヤ半径方向外側に配置するゴム部材としては、トレッドアンダークッションゴム及びキャップ・ベース構造のトレッドにおけるベースゴム等が挙げられる。
【0014】
上記ゴム成分に偏平クレーを配合してなるゴム組成物は、偏平クレーが水分の透過を阻害するため、水蒸気透過度が低い。従来、長期間放置、特に高温高湿度環境下での長期放置の間に、トレッド表面から透過してくる水分によって、ベルト層を構成するコーティングゴム中の水分率が増加し、スチールコードとコーティングゴムとの接着力が低下する問題があり、特にトレッドの溝底部では該溝底部からベルトまでの距離が短いため問題であった。これに対し、本発明のタイヤにおいては、ゴム成分に偏平クレーを配合してなる水蒸気透過度の低いゴム組成物を用いたゴム部材が、ベルトのタイヤ半径方向外側に配置されているため、トレッド表面からの水分の透過を抑制して、スチールコードとコーティングゴムとの接着力が低下するのを防止し、ベルトの耐久性を向上させることができる。
【0015】
上記ベルトのタイヤ半径方向外側に配置するゴム部材用ゴム組成物のゴム成分としては、特に制限はないが、天然ゴム(NR)やジエン系合成ゴムが挙げられる。ここで、該ジエン系合成ゴムとしては、ポリイソプレンゴム(IR),ポリブタジエンゴム(BR),スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR),アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR),クロロプレンゴム(CR),ブチル系ゴム等が挙げられる。なお、ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム(IIR)の他、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム等のハロゲン化ブチルゴムがある。これらゴム成分は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
上記ゴム成分は、ブチル系ゴムを10質量%以上含むのが好ましく、10〜50質量%含むのが更に好ましい。ゴム成分中のブチル系ゴムの含有量が10質量%未満では、上記ゴム部材が水分の透過を抑制する効果が小さく、50質量%を超えると、隣接するゴム、例えば、ベルトのコーティングゴムやキャップ・ベース構造のトレッドにおけるキャップゴム等との接着力が不足し、剥離等が起こり得る。
【0017】
上記ゴム部材用ゴム組成物に用いられる偏平クレーは、層状又は板状の粘土鉱物であって、形状が層状又は板状で偏平である限り特に制限はなく、天然品であっても、合成品であってもよい。該粘土鉱物としては、カオリンクレー,マイカ,長石,シリカ及びアルミナの含水複合体、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト等が挙げられる。これらの中でも、カオリンクレー及びマイカが好ましく、特にカオリンクレーが好ましい。これら粘土鉱物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、市販品を好適に使用することができる。上記偏平クレーは、粒径が通常0.2〜2μmであり、アスペクト比が5〜30であるのが好ましく、8〜20であるのが更に好ましい。上記偏平クレーのアスペクト比が5未満では、上記ゴム部材が水分の透過を抑制する効果が小さく、30を超えると、ゴム組成物の加工性が悪化する。ここで、上記アスペクト比は、上記偏平クレーの厚みに対する長径の比をさす。
【0018】
上記偏平クレーの配合量は、前記ゴム成分100質量に対して30〜100質量部であるのが好ましい。上記偏平クレーの配合量が30質量部未満では、上記ゴム部材が水分の透過を抑制する効果が小さく、100質量部を超えると、ゴム組成物の加工性が悪化し、製造が困難になる。
【0019】
上記ゴム部材用ゴム組成物には、上述のゴム成分及び偏平クレーの他、カーボンブラック等の充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、シランカップリング剤等のゴム業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択し配合することができる。これら配合剤は、市販品を好適に使用することができる。なお、上記ゴム部材用ゴム組成物は、ゴム成分と、偏平クレーと、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0020】
一方、ベルト層は、スチールコードとコーティングゴムとからなり、特に制限はなく、従来スチールコード補強タイヤのベルト層に慣用されているものを用いることができる。上記コーティングゴム用ゴム組成物のゴム成分としては、天然ゴムや合成ゴムが挙げられ、該合成ゴムとしては、例えばポリブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、好ましくは臭素化ブチルゴム,パラメチルスチレン基を有するブチルゴム(具体的にはイソブチレンとp−ハロゲン化メチルスチレンとの共重合体等)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。該ゴム成分は、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、スチールコードとの接着性及びコーティングゴムの破壊特性の観点から、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを50質量%以上含有するのが好ましい。
【0021】
上記コーティングゴム用ゴム組成物には、従来スチールコードのコーティングゴム用ゴム組成物において慣用されている各種接着促進剤を適宜配合することができる。該接着促進剤としては、有機酸の金属塩、RHS系(レゾルシノール−ヘキサメトキシメチルメラミン/シリカ)等が挙げられ、この中でも、有機酸金属塩が好ましく、その中でも有機酸のコバルト塩が特に好ましい。ここで、有機酸としては、飽和,不飽和、あるいは直鎖状,分岐状の何れでもよく、具体的には、ネオデカン酸、ステアリン酸、ナフテン酸、ロジン、トール油酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0022】
上記コーティングゴム用ゴム組成物には、上述のゴム成分及び接着促進剤の他、カーボンブラック等の充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、シランカップリング剤等のゴム業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択し配合することができる。これら配合剤は、市販品を好適に使用することができる。
【0023】
また、ベルト層を構成するスチールコードとしては、上記コーティングゴムとの接着性を良好にするために、黄銅,亜鉛、あるいはこれにニッケルやコバルトを含有する合金でメッキ処理されているものが好ましく、黄銅メッキ処理が施されているものが特に好ましい。該黄銅メッキ中のCu含有率は、良好で安定な接着性を実現する観点から、75質量%以下が好ましく、55〜70質量%が更に好ましい。なお、スチールコードの撚り構造については特に制限はない。
【0024】
次に、本発明のタイヤの実施態様を図面に基づき説明する。図1は、本発明の空気入りタイヤの一実施態様を示す断面図である。図1に示すタイヤは、左右一対の一対のビード部1及び一対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2に連なるトレッド部3とを有し、前記一対のビード部1内に埋設したビードコア4間にトロイド状に延在して、これら各部1,2,3を補強するラジアルカーカス5と、該カーカス5のタイヤ半径方向外側に配置された少なくとも2枚のベルト層からなるベルト6とを具える。図示例のトレッド部3は、タイヤ半径方向最外側に位置するキャップゴム7と、その半径方向内側のベースゴム8と、該ベースゴム8の半径方向内側のトレッドアンダークッションゴム9とを有する。本発明のタイヤは、キャップゴム7とベースゴム8とが単一層を形成していてもよく、トレッドアンダークッションゴム9が省略されていてもよい。
【0025】
本発明のタイヤにおいては、上記ベースゴム8及びトレッドアンダークッションゴム9の少なくとも一方に、上述したゴム成分に偏平クレーを配合してなる水蒸気透過度の低いゴム組成物を用いるのが好ましく、これにより、トレッド表面からの水分の透過を抑制して、ベルトを構成するスチールコードとコーティングゴムとの接着力が低下するのを防止する。
【0026】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0027】
スチールコードとコーティングゴムとからなるベルト層とトレッドとの間に、トレッドアンダークッションゴムとして、幅158mm、厚さ0.5mmの表1に示す配合処方のゴム組成物からなるゴムシートを貼り、タイヤを加硫成形した。該タイヤのサイズは185/60R14である。次に、加硫成形されたタイヤを、温度100℃、湿度95%に保持した恒温恒湿槽中に5週間放置して劣化させ、ベルト層を構成するコーティングゴムの水分率をカールフィッシャー法にて測定し、未劣化品をベースとして吸水量を定量した。また、劣化後のスチールコードとコーティングゴムとの接着性を以下のようにして求めた。即ち、ASTM D4776−1996に準拠して、スチールコードを引抜いた際の引抜き力を測定し、比較例1を100として指数表示した。指数値が大きくなる程、スチールコードとコーティングゴムとの接着力が強いことをさす。これらの結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1の実施例から、アスペクト比が5以上の偏平クレーを配合したゴム組成物をトレッドアンダークッションゴムに用いることにより、該トレッドアンダークッションゴムの水蒸気透過性が低いため、比較例1に比べ、ベルト層のコーティングゴムの吸水量を減少させることができ、その結果、高温・高湿度環境下放置後のスチールコードとコーティングゴムとの接着力を向上させることができるのが分かる。
【0030】
一方、比較例2のタイヤは、トレッドアンダークッションゴム用ゴム組成物がブチル系ゴムを含むものの、高温・高湿度環境下放置後のスチールコードとコーティングゴムとの接着力を向上させる効果が不充分であった。更にアスペクト比が低いクレーを配合したゴム組成物をトレッドアンダークッションゴムに用いた比較例3のタイヤもスチールコードとコーティングゴムとの接着力を向上させる効果が不充分であった。また、実施例7の結果から、トレッドアンダークッションゴム用ゴム組成物のゴム成分はブチル系ゴムを10質量%以上含有するのが好ましいことが分かる。
【0031】
次に、比較例1のゴム組成物よりなるゴムシートAと、表2に示す配合処方の実施例1〜3及び実施例9のゴム組成物よりなるゴムシートBとをはりあわせて160℃で15分間加硫し、幅10mmの短冊状のサンプルを作製した。該サンプルのゴムシートAとゴムシートBとの界面で剥離試験を実施し、剥離強力を測定した。測定結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2の結果から、天然ゴム等を主とする隣接ゴム部材との接着性の観点から、ゴム成分中のブチル系ゴムの含有量は50質量%以下であるのが好ましいことが分かる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、ベルトのタイヤ半径方向外側に配置するゴム部材に、ゴム成分に偏平クレーを配合してなる水蒸気透過度の低いゴム組成物を用いることにより、トレッド表面からの水分の透過を抑制し、ベルト層の湿熱耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供することができる。
【0035】
上記タイヤは、輸送・保管時に高温・高湿度の劣悪な環境下に長期間置かれても、ベルト層の耐久性が充分高いため、輸送・保管時の温度・湿度を調整する特別な設備を要しない。また、近年、車外にスペアタイヤを取り付けることが増加しているが、本発明のタイヤをスペアタイヤとすることにより、屋外で長期間保管した後のスペアタイヤの耐久性を新品に近い状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一実施態様を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 ビードコア
5 ラジアルカーカス
6 ベルト
7 キャップゴム
8 ベースゴム
9 トレッドアンダークッションゴム
Claims (7)
- スチールコード及び該コードのコーティングゴムで構成した少なくとも2枚のベルト層からなるベルトを備えたタイヤにおいて、該ベルトのタイヤ半径方向外側に配置するゴム部材に、ゴム成分に偏平クレーを配合してなるゴム組成物を用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
- 前記ゴム部材がトレッドアンダークッションゴムであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記ゴム部材がキャップ・ベース構造のトレッドにおけるベースゴムであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記偏平クレーは、アスペクト比が5〜30であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記偏平クレーの配合量が前記ゴム成分100質量部に対し30〜100質量部であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記ゴム成分がブチル系ゴムを10質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記ゴム成分がブチル系ゴムを10〜50質量%含むことを特徴とする請求項6に記載の空気入りタイヤ。
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