JP6378512B2 - 発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物 - Google Patents

発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物及びその製造方法に関する。
日本ではフレッシュバターが一般的であるが、欧州ではクリームを発酵させてからチャーンする発酵バターが一般的であり、フレッシュバターと比較して独特の風味を有している。従来、日本市場においてはこの独特の風味が生食には向かないとされてきたが、食習慣の変化に伴い欧米の発酵乳製品(チーズ、ヨーグルト)を食する機会が増え、日本人の食の嗜好も変化してきている。最近では発酵バターを訴求した製品も数多く登場するようになったが、日本に輸入する際に高額な関税が課せられることもあるために非常に高価になってしまうといった問題がある。そこで、例えば乳酸菌による発酵を利用して製造したpH4〜5の発酵バターを10〜90重量%含有し、水相のpHを3〜6に調整した油中水型乳化油脂組成物(特許文献1)が開示されているが、発酵バターの風味を付与するためには非常に高価な発酵バターを大量に使用する必要があり、高コストになったり、水相部のpHが低くなるために安定的に生産することが困難になるといった問題がある。
特開平11−276069号公報
本発明の目的は、自然な発酵バター風味を有する安価なスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中、発酵バターを全く含まなくても、ラクトン類、遊離脂肪酸類及びケトン類をそれぞれ特定量含有させることで、自然な発酵バター風味を有する安価なスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第一は、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中、油脂の含有量が50〜95重量%且つ発酵バターの含有量が9重量%以下であって、且つラクトン類100〜350ppm、遊離脂肪酸類200〜500ppm、ケトン類6〜50ppmを含有する発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物に関する。好ましい実施態様は、ラクトン類全体中、δ−ヘキサラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン及びδ−テトラデカラクトンの合計含有量が80〜100重量%であり、且つγ−ラクトン類が20重量%以下である上記記載のスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物に関する。より好ましくは、遊離脂肪酸類全体中、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、パルミチン酸及びオレイン酸の合計含有量が70〜80重量%であり、且つ炭素数10以下の遊離脂肪酸/炭素数16以上の遊離脂肪酸が重量比で1〜3である上記記載のスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物、更に好ましくは、ケトン類全体中、ジアセチル及びアセトインの合計含有量が40〜70重量%であり、ジアセチル/アセトインが重量比で0.03〜0.07である上記記載のスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物、特に好ましくは、更に可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中、乳脂肪を0.1〜8重量%含有することを特徴とする上記記載のスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物、極めて好ましくは、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中、発酵バターを除くタンパク質1gあたりのタンパク還元価が6以下の乳原料を0.1〜3重量%(無水換算)含有することを特徴とする上記記載のスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物、最も好ましくは、ホエー限外濾過物の乳酸発酵物を0.05〜0.8重量%含有することを特徴とする上記記載のスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物に関する。
本発明の第二は、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中、上記記載のラクトン類100〜350ppmを添加して調製した油相部に、上記記載の遊離脂肪酸類200〜500ppm、上記記載のケトン類6〜50ppm及びタンパク質1gあたりのタンパク還元価が6以下の乳原料0.1〜3重量%(無水換算、発酵バターを除く)、ホエー限外濾過物の乳酸発酵物0.05〜0.8重量%を含有する水相部を混合して乳化後、混捏・冷却して得られる発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造方法に関する。
本発明に従えば、自然な発酵バター風味を有する安価なスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明につき、更に詳細に説明する。本発明の発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物は、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中、発酵バターを特定量以下しか含まず、ラクトン類、遊離脂肪酸類、及びケトン類をそれぞれ特定量含有することを特徴とする。好ましくは更に乳脂肪や乳原料、ホエー限外濾過物の乳酸発酵物を特定量含有することを特徴とする。そして、該可塑性油中水型乳化油脂組成物は、発酵バター独特のトップに感じられる風味、ミドルに感じられる発酵バター独特の乳風味及びラストに感じられる発酵バター独特の乳風味を各々バランス良く発現し、自然な発酵バター風味を有することを特徴とする。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物に用いられる発酵バターは、特に制限はなく、生クリームを乳酸菌発酵させて製造される発酵バターやあらかじめ調整した乳酸菌代謝物をバターに練り込んで製造される発酵バター等が挙げられるが、コストと供給量の面から後者の方法により製造される発酵バターを使用することが好ましい。
前記発酵バターの含有量に関しては、風味の面からは該含有量が多いほど好ましいが、コストの面からは該含有量が少ない程好ましい。従って、風味の質及びコスト、更に、健康面のバランスを考慮すると、該含有量は可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中に0重量%〜9重量%が好ましく、0.5重量%〜7重量%がより好ましく、0.5重量%〜3重量%が更に好ましい。9重量%より多いと高コストになり過ぎたり、安定供給することが困難になる場合がある。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物には、乳脂肪を含有することが好ましい。前記乳脂肪は、牛乳由来の脂質を言い、バター、バターオイル、生乳、牛乳、特別牛乳、濃縮乳、クリーム、発酵クリーム、加糖練乳、無糖練乳、チーズ、バターミルク、及びこれらを酸、酵素、加熱処理したものや分別したもの、及び粉末化させたもの等が例示でき、これらの群より選ばれる少なくとも1種が供給源として用いられるが、バター、バターオイル、または、乳原料の乳酸発酵物または酵素処理物を供給源とすることがより好ましい。
前記乳脂肪の含有量は、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中0.1〜8重量%含有することが好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。0.1重量%より少ないと十分な発酵バター独特の乳風味が得られない場合があり、8重量%より多いと高コストになり過ぎたり、安定供給することが困難になる場合がある。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中には、油脂を50〜95重量%含有することが好ましく、60〜95重量%がより好ましい。50重量%よりも少ないと安定的に製造することが困難となる場合があり、95重量%より多いと水相に十分な風味成分を含有させることが難しくなるため風味が不足する場合がある。ここで油脂としては、前記乳脂肪以外に、亜麻仁油、桐油、サフラワー油、かや油、胡桃油、芥子油、向日葵油、綿実油、菜種油、大豆油、辛子油、カポック油、米糠油、胡麻油、落花生油、オリーブ油、椿油、茶油、ひまし油、椰子油、パーム油、パーム核油、葡萄油、カカオ脂、シア脂、コクム脂、ボルネオ脂等の植物油脂や魚油、鯨油、牛脂、豚脂、鶏油、卵黄油、羊油等の動物油脂等が挙げられ、また、これらの油脂をエステル交換したものや、硬化、分別したもの等を挙げることができ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
本発明におけるラクトン類は、炭素原子が2個以上、酸素原子が1個からなる複素環式化合物で、環を形成する酸素原子に隣接した炭素原子にカルボニル基が置換した構造を持つ物質を言い、具体的には、γ−ラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、γ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、γ−ドデカラクトン、δ−テトラデカラクトン及びδ−ヘキサデカラクトン等が例示でき、少なくとも1種含有する。
前記ラクトン類は、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中100〜350ppm含有されることが好ましく、200〜320ppmがより好ましく、250〜300ppmが更に好ましい。100ppmより少ないと風味が弱く、十分な発酵バター独特の乳風味が得られない場合があり、350ppmより多いと風味が強過ぎて、生食即ちスプレッド用には向かない場合がある。
またラクトン類全体中、δ−ヘキサラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン及びδ−テトラデカラクトンの合計量が80〜100重量%であることが好ましく、90〜100重量%がより好ましい。80重量%より少ないと風味のバランスが悪く、発酵バター独特の乳風味が得られない場合がある。また、γ−ラクトン類の合計量は、20重量%以下であることが好ましい。20重量%を超えると、発酵バター独特の乳風味が得られない場合がある。
本発明における遊離脂肪酸類は、脂質を構成していた成分でグリセリン骨格から遊離した脂肪酸あり、長鎖炭化水素の1価のカルボン酸を言い、具体的には、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸及びリノレン酸等が例示でき、少なくとも1種含有する。
前記遊離脂肪酸類は、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中200〜500ppm含有されることが好ましく、200〜400ppmがより好ましい。200ppmより少ないと十分な発酵バター独特の風味が得られない場合があり、500ppmより多いと風味が強過ぎて、生食即ちスプレッド用には向かない場合がある。
また遊離脂肪酸全体中、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、パルミチン酸及びオレイン酸の合計量が70〜80重量%であることが好ましく、71〜78重量%がより好ましい。70重量%より少ないと風味が弱く、発酵バター独特の風味が得られない場合があり、80重量%より多いと風味のバランスが崩れ、不自然な風味となる場合がある。
前記遊離脂肪酸において、炭素数10以下の遊離脂肪酸/炭素数16以上の遊離脂肪酸(重量比)が1〜3であることが好ましく、1.2〜2.8であることがより好ましい。重量比が1〜3を外れると風味のバランスが崩れ、不自然な風味となる場合がある。
本発明におけるケトン類は、R−C(=O)−R'(R,R'はアルキル基等)の構造式で表される有機化合物群であり、具体的には、ジアセチル、2−ブタノン、2−ペンタノン、アセトイン、2−ヘプタノン、2−ノナノン、2−ウンデカノン、2−トリデカノン及び2−ペンタデカノン等が例示でき、少なくとも1種含有する。
前記ケトン類は、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中6〜50ppm含有されることが好ましく、10〜45ppmがより好ましい。6ppmより少ないと風味が弱く、発酵バター独特の風味が十分に得られない場合があり、50ppmより多いと風味が強過ぎて、生食即ちスプレッド用には向かない場合がある。
またケトン類全体中、ジアセチル及びアセトインの合計量が40〜70重量%であることが好ましく、45〜55重量%であることがより好ましい。合計量が40重量%より少ないと、目的とする風味が得られない場合がある。70重量%より多いと、風味のバランスが崩れ不自然な風味となる場合がある。
前記ケトン類の内、ジアセチル/アセトイン(重量比)が0.03〜0.07であることが好ましく、0.03〜0.05であることがより好ましい。重量比が0.03〜0.07を外れると目的とする風味が得られない場合がある。
本発明におけるラクトン類、遊離脂肪酸類及びケトン類の各含有量はガスクロマトグラフ質量分析法によって測定できる。具体的な測定条件及び手順は以下の通りである。
<使用装置>
ガスクロマトグラフ装置:Agilent 5973 Network GC
分析手法:昇温分析法
カラム:Rtx−5
カラムサイズ:60m×0.32mm×1μM(LTM)
キャリアーガス:ヘリウム
検出器(MS):MSD、FID、PFPD
<ガスクロマトグラフ条件>
イニシャル温度:40℃
イニシャル温度保持時間:5分間
昇温スピード:300℃まで毎分4℃、
最終温度:300℃
最終温度保持時間:160分
キャリアーガス流量:2.8ml/min
<インジェクション条件>
マイクロシリンジを用いて、サンプルをインジェクト
<測定試料>
試料量:2μl
<ラクトン類、遊離脂肪酸類及びケトン類の測定手順>
まず、測定サンプル40gを脱脂処理した後、ジクロロメタンを溶剤として香気成分の抽出を行い、抽出液を得る。前記抽出液を常圧で100μlまで濃縮し、試料とする。そして、前記試料をガスクロマトグラフ装置に注入する前に、内部標準物質としてクロロシクロヘキサンを10ppm添加する。得られた試料2μlを用いてガスクロマトグラフ質量分析法にて分析を実施する。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物において、ラクトン類、遊離脂肪酸類及びケトン類の各含有量を容易に特定量にするためには、特定の風味剤を使用すればよい。そのような風味剤は、ラクトン類、遊離脂肪酸類及びケトン類を含み、且つ風味剤全体中の割合は、ラクトン類が25〜68重量%、遊離脂肪酸類が30〜70重量%、ケトン類が1〜10重量%であることが好ましい。割合が前記範囲を外れると、目的とする風味のバランスが崩れ、不自然な風味となる場合がある。
前記風味剤の添加量は、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中0.05〜0.5重量%が好ましく、0.05〜0.3重量%がより好ましい。0.05重量%より少ないと分散しにくく、可塑性油中水型乳化油脂組成物中の風味成分が不均一となる場合があり、0.5重量%より多いと風味が強過ぎて生食即ちスプレッド用に向かない場合がある。前記風味剤としては、ラクトン類、遊離脂肪酸類及びケトン類の群らから選ばれる2種以上を混合した物を使用しても良いし、それぞれを単独で含む物を併用しても良い。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物に含まれる乳原料としては、特に限定はないが、風味の観点からは熱変性度の低い物の方が好ましく、具体的には発酵バターを除くタンパク質1gあたりのタンパク還元価が6以下の乳原料が好ましく、そのような乳原料としては生乳、牛乳、濃縮乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、ローヒート全脂粉乳及びローヒート脱脂粉乳等が例示でき、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いればよく、特に生乳、牛乳、脱脂乳及び脱脂濃縮乳を用いることがより好ましい。
前記乳原料の含有量は、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中0.1〜3重量%(無水換算)であることが好ましく、0.1〜2.5重量%であることがより好ましい。0.1重量%より少ないと発酵バター独特の乳風味が得られない場合があり、3重量%より多いと製造時に離水し安定的に生産することが困難となる場合がある。
前記タンパク還元価とは、タンパク質1gが、フェリシアン化カリウム(KFe(CN);赤血塩)を還元して生ずるフェロシアン化カリウム(KFe(CN);黄血塩)のmg数のことで、フェリシアナイド還元法によって測定できる。具体的には、タンパク質1gがフェリシアン化カリウム(KFe(CN))を還元して生じるフェロシアン化カリウム(KFe(CN))のmg数を求めるには、タンパク還元価を試料のタンパク質重量%で除すればよく、文献(衛生試験法・注解,金原出版(株),262頁,1980)に準拠して、以下のようにして求めることができる。
その際の測定方法は以下の通りである。
<タンパク質1gあたりのタンパク還元価の測定手順>
牛乳等の油分の低い試料はそのまま、粉乳等は水に溶解させ試料とする。そしてまず、50ml容のキャップ付き遠沈管に水15mlと試料15mlを入れた後、5%酢酸3mlを加え、密栓して振り混ぜる。その後、2500rpmで5分間遠心分離を行い、上層液を捨て、15mlの水で洗浄し、再び遠心分離したのち洗液を捨てる。更に水15mlを加えて洗浄操作を繰り返す。
洗浄後に残った沈殿に飽和尿素溶液3mlを加えて溶解し、水を加えて全容を15mlとする。フタル酸緩衝液(pH5.6)5mlと1%KFe(CN)溶液5mlを添加した後、70℃で20分間加熱する。加熱後ただちに25℃以下に氷冷し、10%トリクロロ酢酸5mlを加え、しばらく放置した後、ろ紙(5種C)を用いてろ過する。水5mlを予め入れた試験管に、ろ液30mlの内5mlを加え、0.1%FeCl溶液1mlを加える。
10分間放置後、波長610nmで吸光度を測定する。検量線を用いて得られたKFe(CN)(無水塩)の濃度と波長610nmにおける吸光度の関係から試料中のKFe(CN)量(mg)を求め、それを40倍して試料100ml相当中のKFe(CN)量(mg)、即ちタンパク還元価を算出する(下記式1)。得られたタンパク還元価を試料のタンパク質含量(重量%)で除することでタンパク質1gあたりのタンパク還元価を得る。
タンパク還元価=吸光度×f×40 (式1)
(f:標準曲線(検量線)を用いて、吸光度×f=無水黄血カリ(mg)から求める値)
<検量線の作成>
まず、0.05735mg/mlのKFe(CN)・3HO水溶液(0.05mg/mlの無水KFe(CN)を含む)を調製する。直ちに調製したKFe(CN)標準水溶液を0〜5.0mlまで0.5ml刻みで試験管に取り、水を加えて全容を5mlとする。各試験管に試薬混液5mlを混和し、0.1%FeCl溶液1mlを加え、20分間放置後、610nmの吸光度を測定し、検量線を得ることができる。ここで前記試薬混液とは、飽和尿素溶液3ml、水12ml、フタル酸緩衝液5ml、1%KFe(CN)水溶液5ml、10%トリクロロ酢酸5mlを混和して得たものである。
本発明に用いるホエー限外濾過物の乳酸発酵物とは、ホエー限外濾過物を常法に従って乳酸菌により発酵して得られる発酵代謝物、該発酵代謝物を再度限外濾過したもの及びこれらの限外濾過物を更に濃縮或いは蒸留したものなどが挙げられる。前記ホエー限外濾過物の乳酸発酵物の含有量は、可塑性油脂組成物全体中0.05〜0.8重量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜0.6重量%である。0.05重量%より少ないと発酵バターの風味が弱過ぎる場合があり、0.8重量%より多いと風味が強過ぎてスプレッド用に向かない場合がある。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物には、前記記載の発酵バター、乳脂肪、油脂、ラクトン類、遊離脂肪酸類、ケトン類、乳原料及びホエー限外濾過物の乳酸発酵物以外の成分として、通常、スプレッド用可塑性油脂組成物に配合される成分を含有することができる。例えば乳化剤、糖類、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、β‐カロテン、カラメルや紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物(カテキン等)やルチン等の酸化防止剤、香料、調味料、有機酸やその塩、食品保存料等が挙げられる。
前記記載の乳化剤としては、例えばポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、縮合リシノレイン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の合成乳化剤や、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の合成乳化剤でない乳化剤が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用できる。
前記乳化剤の配合量は、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中、1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、目的とする発酵バターの風味を際立たすために、添加しないことが最も好ましい。1重量%より多いと乳化剤の苦味が感じられる場合がある。
前記糖類としては、乳原料に含まれる乳糖を除く全ての糖類を意味し、例えば、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖や大豆オリゴ糖等のオリゴ糖、トレハロース、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトールやラクチトール等の糖アルコール、砂糖結合水飴等を挙げることができ、粉糖でも液糖でも構わない。また更に糖類の代わりに、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア粉末等の甘味成分等を用いることもできる。
前記糖類の配合量は、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中、1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、添加しないことが更に好ましい。1重量%より多いと糖の甘味が感じられ、自然な発酵バターの風味が損なわれる場合がある。
前記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用すればよい。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物の水分量は、可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中5〜50重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましく、10〜20重量%であることが更に好ましい。5重量%より少ないと、乳原料等の水溶性の風味成分の溶解が困難となり、十分な風味が得られない場合がある。50重量%より多いと製造時に離水するなどして安定的に製造することが困難となる場合がある。
本発明の発酵バター風味スプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造例を以下に例示する。具体的には、先ず、油脂に油溶性成分を溶解して調整した油相に、水溶性成分を溶解して調整した水相を混合し乳化した後、冷却し、結晶化させることで製造することができる。冷却、結晶化は、冷却可塑化させることが好ましい。
冷却速度条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、より好ましくは−5℃/分以上である。この際、徐冷却より急冷却の方が好ましい。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等の可塑性油中水型乳化油脂組成物製造機やプレート型熱交換機等が挙げられる。また、冷却する機器としては、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組合せも挙げられる。
また、油相の溶解後又は混合乳化後は、殺菌処理することが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
特に本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物においては、ラクトン類を油相部に、遊離脂肪酸類、ケトン類、乳原料及びホエー限外濾過物の乳酸発酵物を水相部に混合・溶解して乳化した後、混捏・冷却することが、自然で豊かな発酵バター風味を付与する上で好ましい。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、広く食品に用いることができ、特にパンや菓子のフィリングやサンド用途に適している。前記パンとしては、具体的にフランスパン、サンドイッチ、テーブルロール等が、前記菓子としてはホットケーキ等が挙げられる。また、パンや菓子への使用量は、パンや菓子の種類によって異なるが、本発明の効果を損なわない限り、特に制限されるものではない。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物を用いてパンや菓子を作製すると、喫口に含んだ瞬間に感じられる発酵バター独特のトップの風味、口中で咀嚼している時に感じられる発酵バター独特のミドルの乳風味及び飲み込んだ直後に感じられるラストの乳風味を呈するため、自然で豊かな発酵バター風味が感じられ、消費者に満足感を与えるものとなる。
以下に原料の製造例及び実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例及び実施例に何ら限定されるものではない。なお、製造例、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
<官能評価方法>
実施例・比較例で得られたスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物15gをサンドしたフランスパンを、訓練された10名(男性5人、女性5人)のパネラーに試食してもらい、以下の基準により評価を実施し、それらの平均点を評価値とした。
(口に含んだ瞬間に感じられる発酵バター独特のトップの風味)
5点:発酵バター独特のトップの風味のバランス及びその広がりが非常に良く、大変好ましい。
4点:発酵バター独特のトップの風味のバランス及びその広がりが良く、好ましい。
3点:発酵バター独特のトップの風味のバランス及びその広がりが悪く、やや劣る。
2点:発酵バター独特のトップの風味のバランス及びその広がりが悪く、劣る。
1点:発酵バター独特のトップの風味と広がりが全く感じられない。
(口中で咀嚼している時に感じられる発酵バター独特のミドルの乳風味)
5点:発酵バター独特のミドルの乳風味のバランス及びその強度が非常に良く、大変好ましい。
4点:発酵バター独特のミドルの乳風味のバランス及びその強度が良く、好ましい。
3点:発酵バター独特のミドルの乳風味のバランス及びその強度が悪く、やや劣る。
2点:発酵バター独特のミドルの乳風味のバランス及びその強度が悪く、劣る。
1点:発酵バター独特のミドルの乳風味が全く感じられない。
(飲み込んだ直後に感じられる発酵バター独特のラストの乳風味)
5点:発酵バター独特のラストの乳風味のバランス及びその強度が非常に良く、大変好ましい。
4点:発酵バター独特のラストの乳風味のバランス及びその強度が良く、好ましい。
3点:発酵バター独特のラストの乳風味のバランス及びその強度が悪く、やや劣る。
2点:発酵バター独特のラストの乳風味のバランス及びその強度が悪く、劣る。
1点:発酵バター独特のラストの乳風味が全く感じられない。
(製造例1) エステル交換油Aの製造方法
パーム分別硬質油(ヨウ素価32.5、株式会社カネカ製):50重量%、パーム核分別軟質油(ヨウ素価24.5、株式会社カネカ製):30重量%、パーム硬化油(ヨウ素価10、株式会社カネカ製):20重量%を混合し、90℃、真空下で脱水を行った。ナトリウムメチラート:0.30重量%を加え、90℃で30分間、窒素気流下でランダムエステル交換反応を行い、水を加えて反応停止後、水洗した。次に、活性白土:3.0重量%を加え、減圧下で攪拌して20分後に全量濾過してエステル交換油Aを得た。
(製造例2) エステル交換油Bの製造方法
パーム油(ヨウ素価:52、株式会社カネカ製):70重量%、パーム分別硬質油(ヨウ素価:33、株式会社カネカ製):5重量%及びパーム核分別軟質油(ヨウ素価:24.5、株式会社カネカ製):25重量%を混合し、90℃、真空下で脱水を行った。ナトリウムメチラート:0.30重量%を加え、90℃で30分間、窒素気流下でランダムエステル交換反応を行い、水を加えて反応停止後、水洗した。次に、活性白土:3.0重量%を加え、減圧下で攪拌して20分後に全量濾過してエステル交換油脂Bを得た。
(製造例3) エステル交換油Cの製造方法
菜種油(ヨウ素価:120.1、株式会社カネカ製):30重量%、パーム油(ヨウ素価:52、株式会社カネカ製):27重量%、パーム核分別軟質油(ヨウ素価24.5、株式会社カネカ製):28重量%、硬化魚油(ヨウ素価10.5、株式会社カネカ製):15重量%を混合し、90℃、真空下で脱水を行った。ナトリウムメチラート:0.30重量%を加え、90℃で30分間、窒素気流下でランダムエステル交換反応を行い、水を加えて反応停止後、水洗した。次に、活性白土:3.0重量%を加え、減圧下で攪拌して20分後に全量濾過してエステル交換油脂Cを得た。
(製造例4) 風味剤L1の製造方法
表1に従って、δ−ヘキサラクトン(和光純薬工業株式会社製):1.87重量%、δ− オクタラクトン(和光純薬工業株式会社製):2.38重量%、γ−ノナラクトン(Sigma Aldrich社製):0.03重量%、δ−デカラクトン(和光純薬工業株式会社製):19.00重量%、δ−ウンデカラクトン(Sigma Aldrich社製):0.76重量%、δ−ドデカラクトン(和光純薬工業株式会社製):32.41重量%、δ−テトラデカラクトン(Sigma Aldrich社製):27.62重量%、δ−ヘキサデカラクトン(Sigma Aldrich社製):15.93重量%を混合し、風味剤L1を得た。
Figure 0006378512
(製造例5) 風味剤L2の製造方法
表1に従って、δ−ヘキサラクトン(和光純薬工業株式会社製):1.87重量%、δ− オクタラクトン(和光純薬工業株式会社製):2.38重量%、γ−ノナラクトン(Sigma Aldrich社製):2.73重量%、δ−デカラクトン(和光純薬工業株式会社製):9.00重量%、δ−ウンデカラクトン(Sigma Aldrich社製):0.76重量%、γ−ウンデカラクトン(関東化学株式会社製):22.30重量%、δ−ドデカラクトン(和光純薬工業株式会社製):22.41重量%、δ−テトラデカラクトン(Sigma Aldrich社製):22.62重量%、δ−ヘキサデカラクトン(Sigma Aldrich社製):15.93重量%を混合し、風味剤L2を得た。
(製造例6) 風味剤A1の製造方法
表2に従って、酪酸(和光純薬工業株式会社製):0.26重量%、カプロン酸(和光純薬工業株式会社製):2.95重量%、安息香酸(和光純薬工業株式会社製):1.30重量%、カプリル酸(和光純薬工業株式会社製):11.80重量%、9−デセン酸(和光純薬工業株式会社製):0.26重量%、カプリン酸(和光純薬工業株式会社製):40.42重量%、ミリスチン酸(和光純薬工業株式会社製):25.30重量%、パルミチン酸(和光純薬工業株式会社製):11.62重量%、オレイン酸(和光純薬工業株式会社製):6.09重量%を混合し、風味剤A1を得た。
Figure 0006378512
(製造例7) 風味剤A2の製造方法
表2に従って、酪酸(和光純薬工業株式会社製):0.26重量%、カプロン酸(和光純薬工業株式会社製):2.25重量%、安息香酸(和光純薬工業株式会社製):1.10重量%、カプリル酸(和光純薬工業株式会社製):5.80重量%、9−デセン酸(和光純薬工業株式会社製):0.20重量%、カプリン酸(和光純薬工業株式会社製):25.42重量%、ミリスチン酸(和光純薬工業株式会社製):25.30重量%、パルミチン酸(和光純薬工業株式会社製):27.88重量%、オレイン酸(和光純薬工業株式会社製):11.79重量%を混合し、風味剤A2を得た。
(製造例8) 風味剤K1の製造方法
表3に従って、ジアセチル(Sigma Aldrich社製):2.47重量%、2−ブタノン(和光純薬工業株式会社製):12.34重量%、2−ペンタノン(和光純薬工業株式会社製):4.45重量%、アセトイン(Sigma Aldrich社製):68.55重量%、2−ヘプタノン(Sigma Aldrich社製):0.44重量%、2−ノナノン(Sigma Aldrich社製):1.60重量%、2−ウンデカノン(Sigma Aldrich社製):1.60重量%、2−トリデカノン(Sigma Aldrich社製):2.55重量%、2−ペンタデカノン(Sigma Aldrich社製):6.00重量%を混合し、風味剤K1を得た。
Figure 0006378512
(製造例9) 風味剤K2の製造方法
表3に従って、ジアセチル(Sigma Aldrich社製):25.23重量%、2−ブタノン(和光純薬工業株式会社製):12.34重量%、2−ペンタノン(和光純薬工業株式会社製):4.45重量%、アセトイン(Sigma Aldrich社製):45.79重量%、2−ヘプタノン(Sigma Aldrich社製):0.44重量%、2−ノナノン(Sigma Aldrich社製):1.60重量%、2−ウンデカノン(Sigma Aldrich社製):1.60重量%、2−トリデカノン(Sigma Aldrich社製):2.55重量%、2−ペンタデカノン(Sigma Aldrich社製):6.00重量%を混合し、風味剤K2を得た。
(参考例1) 発酵バター入りマーガリンの成分測定及び官能評価
イオン株式会社が販売している「トップバリューセレクト 発酵バター入りマーガリン」中のラクトン類、遊離脂肪酸類及びケトン類の各含有量を、前記記載のガスクロマトグラフ質量分析法により測定し、表4に結果をまとめた。また前記記載の方法で官能評価を行い、表4に結果をまとめた。該発酵バター入りマーガリンは、全体的に風味は強いものの該風味は不自然で人工的な印象をもたせるものであり、更に、ミドルに感じられる乳風味、ラストに感じられる乳風味はやや弱かった。よって、該発酵バター入りマーガリンの風味は全体として満足のいくものではなかった。
(参考例2) 発酵バターの成分測定及び官能評価
ラヴィエット社(フランス)が製造販売する発酵バター(食塩不使用)中のラクトン類、遊離脂肪酸類及びケトン類の各含有量を参考例1と同様の方法で測定し、表4に結果をまとめた。また参考例1と同様の方法で官能評価を行い、表4に結果をまとめた。該発酵バターは、トップにヨーグルト様の芳醇な発酵バター独特の風味を有し、ミドルに感じられる乳風味、ラストに感じられる乳風味は非常に強く好ましいものであった。また全体的に風味のバランスが良く、非常に好ましい自然な発酵バター風味を有していた。
(実施例1) スプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の作製
表4の配合に従って、発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物を作製した。即ち、エステル交換油A、エステル交換油B、エステル交換油C、精製菜種油を混合し、油脂混合物を得た。該油脂混合物を65〜70℃で融解し、風味剤A1、風味剤L1、風味剤K1を添加して油相とした。また、水に、牛乳、食塩を加えて溶解し、70℃で20分間殺菌して水相とした。油相と水相をそれぞれ70℃に保持したまま、該水相を該油相に加えて20分間以上乳化させ、−30〜−50℃/分の冷却速度で捏和しながら急冷し、発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物を得た。得られた発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の評価結果を、表4にまとめた。得られたスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物は、そのトップに感じられる風味、ミドルに感じられる乳風味及びラストに感じられる乳風味が好ましいものであり、自然な発酵バター風味を有するものであった。
Figure 0006378512
(実施例2〜4) スプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の作製
表4の配合に従って、実施例1と同様の方法で油相を調製した。また、水に、牛乳、食塩を加え、溶解し、発酵バターを加え、70℃で20分間殺菌して水相とした。あとは実施例1と同様の方法で発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物を得た。得られた発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の評価結果を、表4にまとめた。
発酵バターを含んでいない実施例1においても比較的良好な評価が得られたが、発酵バターの量が可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中9.0重量%までの範囲であれば、該量は多い程、更に良い評価となる傾向であった。
(実施例5) スプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の作製
表4の配合に従って、グリセリン脂肪酸エステルとレシチンを加え、水量を変えた以外は、実施例2と同様にして発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物を得た。得られた発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の評価結果を、表4にまとめた。
実施例2で作製したスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物と比較したところ、乳化剤を含んだ実施例5で作製したスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の方が、風味が感じにくく、評価が下がる傾向であった。
(実施例6〜8、比較例1〜6) スプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の作製
表5の配合に従って配合量を変えた以外は、実施例2に記載した方法と同様にして発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物を得た。得られた発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の評価結果を、表5にまとめた。
ラクトン類、遊離脂肪酸類及びケトン類の含有量を変えたスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物を評価した結果、配合毎に風味の評価が異なり、実施例の範囲であれば、良好な発酵バター風味が得られたが、比較例の範囲になると風味のバランスが崩れ、良好な発酵バター風味が得られなかった。
Figure 0006378512
(実施例9〜11) スプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の作製
表6の配合に従って、実施例2に記載した方法と同様にして発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物を得た。得られた発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の評価結果を表6にまとめた。
ラクトン類、遊離脂肪酸類及びケトン類の各々の組成を変えたスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物を評価した結果、配合毎に風味の評価が異なり、実施例の範囲であれば、良好な発酵バター風味が得られたが、比較例の範囲になると風味のバランスが崩れ、良好な発酵バター風味が得られなかった。
Figure 0006378512
(実施例12)
表7の配合に従って、実施例2の方法と同様にして、発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物を得た。得られた発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の評価結果を、表7にまとめた。タンパク還元価の低い乳原料を加えている実施例2と比較した結果、実施例2の方が特にバター独特のラストに感じられる乳風味が良い評価となった。
Figure 0006378512
(実施例13)
表7の配合に従って、実施例2と同様にして、発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物を得た。得られた発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の評価結果を、表7にまとめた。酵素処理チーズを加えていない実施例2と比較した結果、実施例13の方が全体的に良い評価となった。
(実施例14)
表7の配合に従って、風味剤A1及び風味剤K1を油相ではなく水相に添加し、水量を変えた以外は、実施例2と同様にして、発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物を得た。得られた発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の評価結果を、表7にまとめた。油相に風味剤A1及び風味剤K1を添加した実施例2と比較した結果、実施例14の方が全体的に良い評価となった。
(実施例15)
表7の配合に従って、実施例2と同様にして、発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物を得た。得られた発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の評価結果を、表7にまとめた。ホエー限外濾過物の乳酸発酵物を加えていない実施例2と比較すると、実施例15の方が特に発酵バター独特のトップの風味の評価が良く、より好ましい発酵バター風味が得られた。

Claims (8)

  1. 可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中、油脂の含有量が50〜95重量%且つ発酵バターの含有量が9重量%以下であって、且つラクトン類100〜350ppm、遊離脂肪酸類200〜500ppm、ケトン類6〜50ppmを含有する発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物。
  2. ラクトン類全体中、δ−ヘキサラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン及びδ−テトラデカラクトンの合計含有量が80〜100重量%であり、且つγ−ラクトン類が20重量%以下である請求項1に記載のスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物。
  3. 遊離脂肪酸類全体中、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、パルミチン酸及びオレイン酸の合計含有量が70〜80重量%であり、且つ炭素数10以下の遊離脂肪酸/炭素数16以上の遊離脂肪酸が重量比で1〜3である請求項1に記載のスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物。
  4. ケトン類全体中、ジアセチル及びアセトインの合計含有量が40〜70重量%であり、ジアセチル/アセトインが重量比で0.03〜0.07である請求項1に記載のスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物。
  5. 更に可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中、乳脂肪を0.1〜8重量%含有することを特徴とする請求項1〜4何れかに記載のスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物。
  6. 可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中、発酵バターを除くタンパク質1gあたりのタンパ
    ク還元価が6以下の乳原料を0.1〜3重量%(無水換算)含有することを特徴とする請求項1〜5何れかに記載のスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物。
  7. ホエー限外濾過物の乳酸発酵物を0.05〜0.8重量%含有することを特徴とする請求項1〜6何れかに記載のスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物。
  8. 可塑性油中水型乳化油脂組成物全体中、ラクトン類100〜350ppmを添加して調製した油相部に、遊離脂肪酸類200〜500ppm、ケトン類6〜50ppm及びタンパク質1gあたりのタンパク還元価が6以下の乳原料0.1〜3重量%(無水換算、発酵バターを除く)、ホエー限外濾過物の乳酸発酵物0.05〜0.8重量%を含有する水相部を混合して乳化後、混捏・冷却して得られる発酵バター風味を有するスプレッド用可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造方法。
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