[光学フィルム積層体]
本発明に係る光学フィルム積層体は、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルムと、(メタ)アクリル系樹脂の表面に接着剤層を介して接着された熱可塑性樹脂フィルムとからなる光学フィルム積層体であって、その接着剤層は活性エネルギー線硬化型接着剤から形成されたものである。ここで、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルムとは、(メタ)アクリル系樹脂層の単独フィルムであってもよいし、(メタ)アクリル系樹脂層と他の樹脂からなる位相差発現層とを含む多層フィルムであってもよい。なかでも、(メタ)アクリル系樹脂とは異なる位相差発現層の片面又は両面に(メタ)アクリル系樹脂層が形成された位相差を有する多層フィルムであることが好ましい。
また、上記の「(メタ)アクリル系樹脂」とは、(メタ)アクリル酸エステルを主な構成単位とする樹脂である。この「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸のいずれでもよいことを意味し、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのいずれでもよいことを意味する。その他、本明細書において、「(メタ)アクリルアミド」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」などと記載したときの「(メタ)」も、同様の趣旨である。
図1は、本発明に係る光学フィルム積層体の好ましい層構成の例を示した概略断面図である。図1を参照しながら本発明の光学フィルム積層体について説明すると、本発明の光学フィルム積層体20は、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10に接着剤層31及び熱可塑性樹脂フィルム18をこの順に積層して構成される。そして接着剤層31は、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物で形成される。同図に示す例では、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10は、位相差機能の発現に主に寄与する位相差発現層12の両面に、(メタ)アクリル系樹脂層14,15が形成された状態となっている。
この場合、位相差発現層12の片面に(メタ)アクリル系樹脂層14を形成した状態、換言すれば、図1において熱可塑性樹脂フィルム18から離れて位置する(メタ)アクリル系樹脂層15を省略した状態で、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10とすることもできる。ただ、図1に示すように、位相差発現層12の両面に(メタ)アクリル系樹脂層14,15を形成した状態とすれば、それぞれの(メタ)アクリル系樹脂層14,15が、位相差発現層12の保護層の役割も果たすことから好ましい。以下、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10、熱可塑性樹脂フィルム18及び両者を貼着する接着剤層31を形成するために用いる接着剤について、順を追って説明する。
[(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム]
光学フィルム積層体20を構成する(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10は、(メタ)アクリル系樹脂層の単独フィルムであることもできるが、図1に示すように、好ましくは位相差発現層12とその片面(熱可塑性樹脂フィルムが貼合される側)に積層された(メタ)アクリル系樹脂層14とを備え、より好ましくは位相差発現層12とその両面に積層された(メタ)アクリル系樹脂層14,15とを備える。
上記のように位相差発現層12の片面又は両面に(メタ)アクリル系樹脂層を設ける場合、位相差発現層12は、例えばスチレン系樹脂で構成することができる。スチレン系樹脂は、側鎖に嵩高いフェニル基を有するので、一軸延伸したときに延伸軸と直交する方向(面内で延伸軸と直交する方向及び厚さ方向)の屈折率が大きくなり、負の屈折率異方性を示す。また、位相差の発現性も大きい。そこで、スチレン系樹脂からなるフィルムは位相差発現層12として好適である。
本発明における(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10は、その面内の最大屈折率方向(遅相軸方向)の波長590nmにおける屈折率を nx、面内でそれと直交する方向(進相軸方向)の波長590nmにおける屈折率を ny、遅相軸方向及び進相軸方向とそれぞれ直交する厚さ方向の波長590nmにおける屈折率をnzとするとき、nz>nx>nyの関係を有し、Nz係数が−2から−0.5 の範囲にある。ここで、Nz係数は次式(1)で定義される。
Nz係数=(nx−nz)/(nx−ny) (1)
スチレン系樹脂は、単独重合体であることができるほか、スチレンと他の共重合性モノマーとの二元又はそれ以上の共重合体であることもできる。他の共重合性モノマーとしては、耐熱性の観点から無水マレイン酸、ブタジエン、メチルメタクリレート及びアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合体であるのが好ましく、スチレンに非環状オレフィンモノマー及び環状オレフィンモノマーを共重合させた三元共重合体も用いることができる。耐熱性の観点から、スチレン系樹脂(位相差発現層12)は、120℃以上のガラス転移温度を有することが好ましい。
位相差発現層12、特にスチレン系樹脂からなる位相差発現層12は、その厚さが10〜100μmであることが好ましい。厚さが10μm未満では、延伸によって十分な位相差値が発現しにくい。一方、厚さが100μm を超えると、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10の衝撃強度が弱くなりやすいとともに、外部応力による位相差変化が大きくなる傾向にある。
(メタ)アクリル系樹脂層14,15を構成する(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステル又はアクリル酸アルキルエステルの単独重合体や、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体などが挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルとしては、具体的に、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートなどが、またアクリル酸アルキルエステルとしては、具体的に、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレートなどがそれぞれ挙げられる。かかる(メタ)アクリル系樹脂には、汎用の(メタ)アクリル系樹脂として市販されているものが使用できる。(メタ)アクリル系樹脂として、耐衝撃(メタ)アクリル樹脂と呼ばれるものを使用してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂層14,15を位相差発現層12に積層することにより、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10の耐薬品性及び機械的強度を向上させることができる。さらなる機械的強度向上のために、(メタ)アクリル系樹脂層14,15にゴム粒子を含有させることも好ましい。ゴム粒子はアクリル系のものが好ましい。ここで、アクリル系ゴム粒子とは、ブチルアクリレートや2−エチルヘキシルアクリレートのようなアクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系モノマーを、多官能モノマーの存在下に重合させて得られるゴム弾性を有する粒子である。アクリル系ゴム粒子は、このようなゴム弾性を有する粒子が単層で形成されたものであってもよいし、ゴム弾性層を少なくとも一層有する多層構造体であってもよい。多層構造のアクリル系ゴム粒子としては、上記のようなゴム弾性を有する粒子を核とし、その周りを硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体で覆ったもの、硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体を核とし、その周りを上記のようなゴム弾性を有するアクリル系重合体で覆ったもの、また硬質の核の周りをゴム弾性のアクリル系重合体で覆い、さらにその周りを硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体で覆ったものなどが挙げられる。弾性層で形成されるゴム粒子は、その平均直径が通常50〜400nm程度の範囲にある。
(メタ)アクリル系樹脂層14,15におけるゴム粒子の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100重量部あたり、通常5〜50重量部程度である。(メタ)アクリル系樹脂及びアクリル系ゴム粒子は、それらを混合した状態で市販されているので、その市販品を用いることができる。アクリル系ゴム粒子が配合された(メタ)アクリル系樹脂の市販品の例として、住友化学(株)から販売されている“HT55X”や“テクノロイ S001”(以上、いずれも商品名)などが挙げられる。“テクノロイ S001” は、フィルムの形で販売されている。
上記のようなゴム粒子を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物は、一般に120℃以下のガラス転移温度を有するが、本発明では、ガラス転移温度が110℃以下の(メタ)アクリル系樹脂組成物が好ましく用いられる。
前記したように、位相差発現層12のガラス転移温度は120℃以上であることが好ましく、一方、(メタ)アクリル系樹脂層14,15のガラス転移温度は120℃以下、とりわけ110℃以下であることが好ましい。また、両者のガラス転移温度が重ならず、位相差発現層12のほうが、(メタ)アクリル系樹脂層14,15よりも高いガラス転移温度を有することが好ましい。これは、後述する共押出による(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10の製造がより容易になるためである。
また、(メタ)アクリル系樹脂層14,15の厚さは、5〜100μm であることが好ましい。
光学フィルム積層体20を構成する(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10は、例えば、位相差発現層12を形成する樹脂と、(メタ)アクリル系樹脂層14,15を形成する樹脂とをそれぞれ共押出した後、位相差発現層となる層に面内位相差を付与するための延伸処理を行うことにより作製することができる。また、位相差発現層12を形成する樹脂、及び(メタ)アクリル系樹脂層14,15を形成する樹脂からそれぞれ別々に単層フィルムを作製した後、ヒートラミネーションによる熱融着により積層フィルムを得た後、延伸処理を行う方法によっても作製することが可能である。延伸は、所望される面内位相差値が得られる限り特に制限されず、例えば、縦一軸延伸、テンター横一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸などであることができる。
光学フィルム積層体20を構成する(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10は、前記のように好ましくは位相差発現層12の両面に(メタ)アクリル系樹脂層14,15が積層された3層構造とされる。この場合、これらの(メタ)アクリル系樹脂層は、ほぼ同じ厚さとすることができる。3層構造とすることにより、その機械強度及び耐薬品性をより向上させることができる。3層構造とした場合の総膜厚は、20μm 以上であり、また200μm以下、好ましくは150μm、より好ましくは100μm 以下である。
(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10は、面内位相差Reが20〜180nmの範囲にあることが好ましい。面内位相差Reは、面内の複屈折率にフィルムの厚さを乗じた値であり、先の式(1)に関連して定義した面内2軸方向の屈折率nx 及びny と、フィルムの厚さdとを用いて、下式(2)で定義される。また、厚さ方向の位相差Rthは、厚さ方向の複屈折率にフィルムの厚さを乗じた値であり、面内2軸方向の屈折率nx 及びny、厚さ方向の屈折率nz、及びフィルムの厚さdを用いて、下式(3)で定義される。
面内位相差値Re=(nx−ny)×d (2)
厚さ方向の位相差値Rth=〔(nx+ny)/2−nz〕×d (3)
面内位相差Reや厚さ方向位相差Rth、またNz係数は、市販の各種位相差計により求めることができる。位相差やNz係数は、可視光の中心付近、例えば、500〜600nmの間の任意の波長における値であればよいが、本明細書で特に測定波長を記載しないときは、波長590nmにおける値とする。
[熱可塑性樹脂フィルム]
本発明の光学フィルム積層体20を構成する熱可塑性樹脂フィルム18は、図1に示すように、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10の最表面に形成された(メタ)アクリル系樹脂層14に、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物から形成される接着剤層31を介して積層される。ここで、熱可塑性樹脂フィルムは、シクロオレフィン系樹脂フィルム、セルロースアセテート系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂フィルムなどから選ばれるものである。このうち、特にシクロオレフィン系樹脂フィルム及びセルロース系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
シクロオレフィン系樹脂とは、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのような環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する熱可塑性の樹脂であり、熱可塑性シクロオレフィン系樹脂とも呼ばれる。このシクロオレフィン系樹脂は、上記シクロオレフィンの開環重合体や、2種以上のシクロオレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物であってもよく、シクロオレフィンと、鎖状オレフィンや、ビニル基の如き重合性二重結合を有する芳香族化合物などとの付加重合体であってもよい。シクロオレフィン系樹脂には、極性基が導入されていてもよい。
シクロオレフィンと、鎖状オレフィン及び/又はビニル基を有する芳香族化合物との共重合体とする場合、鎖状オレフィンとして、エチレンやプロピレンなどを、またビニル基を有する芳香族化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、核アルキル置換スチレンなどを、それぞれ使用することができる。このような共重合体において、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットは、50モル%以下であってもよく、その場合好ましくは15〜50モル%程度とされる。特に、シクロオレフィン、鎖状オレフィン及びビニル基を有する芳香族化合物からなる三元共重合体を用いて熱可塑性樹脂フィルムを構成する場合、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットの含有量は、上記したように比較的少ない量とすることができる。このとき、鎖状オレフィンからなるモノマーのユニットの含有量は通常5〜80モル%であり、ビニル基を有する芳香族化合物からなるモノマーのユニットの含有量は通常5〜80モル%である。
シクロオレフィン系樹脂として、適宜の市販品を用いることができる。例えば、ドイツの TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH にて生産され、日本ではポリプラスチック(株)から販売されている“TOPAS ”、JSR(株)から販売されている“アートン”、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノア”(ZEONOR)及び“ゼオネックス”(ZEONEX)、三井化学(株)から販売されている“アペル”(以上、いずれも商品名)などを挙げることができる。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとするためには、溶剤キャスト法や溶融押出法など、公知の方法が適宜用いられる。
シクロオレフィン系樹脂フィルムに一軸延伸又は二軸延伸を施して位相差を付与することができる。このときの延伸倍率は、通常1.1〜5倍、好ましくは1.1〜3倍である。延伸によって得られるフィルムは、薄いほうが好ましいものの、薄すぎると強度が低下して加工性に劣る傾向にあり、一方で厚すぎると、透明性が低下したり、光学フィルム積層体ないし複合偏光板の重量が大きくなったりする傾向にある。このような観点からするとシクロオレフィン系樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、通常5〜150μm 、さらには10〜100μm 、とりわけ15〜80μm とするのが好ましい。
あらかじめ製膜され、場合によってはさらに位相差が付与された状態で市販されているシクロオレフィン系樹脂フィルムもある。これらのうち、位相差が付与される前のフィルムであれば、本発明における熱可塑性樹脂フィルムの原反フィルムとして、また位相差が付与されたものであれば、本発明における熱可塑性樹脂フィルムそれ自体として、用いることもできる。このようなシクロオレフィン系樹脂フィルムの市販品の例を挙げると、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノアフィルム”、JSR(株)から販売されている“アートンフィルム”、積水化学工業(株)から販売されている“エスシーナ”及び“SCA40 ”(以上、いずれも商品名)などがある。
シクロオレフィン系樹脂フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、残存溶媒、安定剤、可塑剤、老化防止剤、帯電防止剤、及び紫外線吸収剤のような添加剤を必要に応じて含有していてもよい。また、表面粗さを小さくするため、レベリング剤を含有することもできる。
本発明において、シクロオレフィン系樹脂フィルムからなる熱可塑性樹脂フィルム18は、面内位相差Reが30〜150nmの範囲にあること、また先の式(1)で定義されるNz係数が1を超え2未満の範囲にあることが好ましい。
また、セルロースアセテート系樹脂フィルムとは、例えば、トリアセチルセルロース樹脂、ジアセチルセルロース樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂フィルム、セルロースアセテートブチレート樹脂フィルムなどであり、セルロースの部分又は完全酢酸エステル化物からなるフィルムであって、一般的にはトリアセチルセルロース樹脂が好ましく用いられる。セルロースアセテート系樹脂フィルムは市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、適宜の市販品、例えば、富士フイルム(株)から販売されている“フジタック TD80 ”、“フジタック TD80UF”及び“フジタック TD80UZ”、コニカミノルタオプト(株)から販売されている“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UEW”(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
本発明において、上記の熱可塑性樹脂フィルム18は、以下に詳述される接着剤を用いて(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10に貼着される。両者の貼着にあたって、接着性を向上させるために、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム及び/又はそれに貼合される熱可塑性樹脂フィルムの接着表面に、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理、プライマー処理などの表面処理を適宜施してもよい。以下、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルムと熱可塑性樹脂フィルムとの貼着に用いられる接着剤について説明する。
[接着剤層]
本発明において、上記した(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10の最表面となる(メタ)アクリル系樹脂層14と熱可塑性樹脂フィルム18との貼合には、活性エネルギー線硬化型接着剤が用いられる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線の照射を受けて硬化する化合物、すなわち活性エネルギー線硬化性化合物を含有する。本発明では、重合性モノマー及び重合性他官能アクリレート化合物が用いられる。活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化に用いられる活性エネルギー線は、紫外線、電子線、X線などを挙げられるが、生産上の効率等の面から、好ましくは紫外線が用いられる。
〈重合性モノマー〉
活性エネルギー線硬化型接着剤に用いられる重合性モノマーは、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を1個有する単官能(メタ)アクリレートモノマーであり、なかでもアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。アルキル(メタ)アクリレートにおいて、そのアルキル基は炭素数3以上であれば直鎖でも分岐していてもよい。アルキル(メタ)アクリレートの具体例を挙げると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレートなどがある。また、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートのようなアルキル基の炭素数がもっと多いアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのようなアラルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートのようなテルペンアルコールの(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートのようなテトラヒドロフルフリル構造を有する(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート及び1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートのようなアルキル基部位にシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなアミノアルキル(メタ)アクリレート、並びに、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート及びフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのようなアルコール部位にエーテル結合を有する(メタ)アクリレートも、単重合性モノマーとして用いることができる。
さらに、アルコール部位に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートや、アルコール部位にカルボキシル基を有する単官能(メタ)アクリレートも用いることができる。アルコール部位に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートの具体例を挙げると、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートなどがある。アルコール部位にカルボキシル基を有する単官能(メタ)アクリレートの具体例を挙げると、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、1−[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]フタル酸、1−[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ヘキサヒドロフタル酸、1−[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]コハク酸、4−[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリメリット酸などがある。
また、N−位に置換基を有する(メタ)アクリルアミドも用いられる。そのN−位の置換基の典型的な例はアルキル基であるが、(メタ)アクリルアミドの窒素原子とともに環を形成していてもよく、この環は、炭素原子及び(メタ)アクリルアミドの窒素原子に加え、酸素原子を環構成員として有してもよい。さらに、その環を構成する炭素原子には、アルキルやオキソ(=O)のような置換基が結合していてもよい。N−置換(メタ)アクリルアミドは一般に、(メタ)アクリル酸又はその塩化物と1級又は2級アミンとの反応によって製造できる。
N−置換(メタ)アクリルアミドの具体的な例として、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド及びN−ヘキシル(メタ)アクリルアミドのようなN−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドのようなN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドなどがある。また、その置換基が水酸基を有するアルキル基であってもよく、その例として、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミドなどがある。さらに、上記した5員環又は6員環を形成するN−置換(メタ)アクリルアミドの具体的な例としては、N−アクリロイルピロリジン、3−アクリロイル−2−オキサゾリジノン、4−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジンなどがある。
これらのなかでも、N−ヒドロキシメチルアクリルアミドやN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドのような、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。その他、N−ドデシル(メタ)アクリルアミドのような長鎖アルキルを有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドや、N−(メトキシメチル)アクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−(プロポキシメチル)アクリルアミド及びN−(ブトキシメチル)アクリルアミドのようなN−(アルコキシアルキル)(メタ)アクリルアミドも、活性エネルギー線硬化型接着剤の活性エネルギー線硬化性化合物を構成するN−置換(メタ)アクリルアミドとして用いることができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤は、(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマーをその必須成分として含む。重合性モノマーが(メタ)アクリル系樹脂層を溶解するかどうかは、接着する(メタ)アクリル系樹脂の重合性モノマーに対する溶解度で確認される。具体的には、接着する(メタ)アクリル系樹脂の幅10mm×長さ40mm×厚さ 0.08mmの試料を、23℃で重合性モノマーへ48時間浸漬した際の、浸漬前後における(メタ)アクリル系樹脂層の重量減少した量で確認される。本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤は、この方法で測定された溶解度が1重量%以上である重合性モノマーが用いられる。
〈重合性多官能アクリレート化合物〉
活性エネルギー線硬化型接着剤のもう一つの活性エネルギー線硬化性化合物となる重合性多官能アクリレート化合物は、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能の化合物である。その具体例として、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個有する2官能(メタ)アクリレートモノマー及び分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を3個以上有する3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーのようなモノマーや、これら各化合物の2量体や3量体のようなオリゴマー及び官能基を有する化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する(メタ)アクリレートオリゴマーのようなオリゴマーが挙げられる。これらの化合物はそれぞれ単独又は2種以上を混合して用いられる。以下に、これらのモノマーやオリゴマーを具体的に説明する。
2官能(メタ)アクリレートモノマーの代表的なものとして、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ハロゲン置換アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート類、水添ジシクロペンタジエン又はトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート類、ジオキサングリコール又はジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA又はビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
2官能(メタ)アクリレートモノマーのより具体的な例を挙げると、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−{2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ}フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−{2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ}シクロヘキシル]プロパン、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート]、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化物〔化学名:2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレートなどがある。
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーの代表的なものは、3価以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレートである。その具体的な例を挙げると、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどがある。
その他、3価以上のハロゲン置換ポリオールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス[2−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ}エトキシ]プロパン、1,3,5−トリス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレートなども、多官能(メタ)アクリレートモノマーとなり得る。
一方、(メタ)アクリレートオリゴマーには、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーなどがある。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとは、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有するとともに、ウレタン結合(−NHCOO−)を有する化合物をいう。具体的には、分子内に1個の水酸基及び少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基をそれぞれ有する水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物や、ポリオール類をポリイソシアネートと反応させて得られる末端イソシアナト基含有ウレタン化合物と、分子内に1個の水酸基及び少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基をそれぞれ有する水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応生成物などであり得る。
上記のウレタン化反応に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとして、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
かかる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応に供されるポリイソシアネートとして、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート類を水素添加して得られる化合物、例えば、水素添加トリレンジイソシアネートや水素添加キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジベンジルベンゼントリイソシアネート、これらのうちのジイソシアネート類を多量化させて得られるポリイソシアネートなどが挙げられる。
また、ポリイソシアネートとの反応により末端イソシアナト基含有ウレタン化合物を製造するためのポリオール類としては、脂肪族又は脂環式のポリオールのほか、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどを用いることができる。脂肪族又は脂環式のポリオールとして、具体的には、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、グリセリン、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、上記したポリオール類に多塩基性カルボン酸又はその無水物を脱水縮合反応させることにより得られる化合物である。多塩基性カルボン酸及びその無水物の具体例を、無水物であり得るものに「(無水)」という表示を付して掲げると、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸などがある。
ポリエーテルポリオールは、ポリアルキレングリコールのほか、上記したポリオール類又はビスフェノール類に、アルキレンオキサイドを反応させることにより得られるポリオキシアルキレン変性ポリオールなどもあり得る。
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとは、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有するとともに、エステル結合を有する化合物をいう。具体的には、(メタ)アクリル酸、多塩基性カルボン酸又はその無水物、及びポリオールの脱水縮合反応により得ることができる。脱水縮合反応に用いられる多塩基性カルボン酸又はその無水物の具体例を、無水物であり得るものに「(無水)」という表示を付して掲げると、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などがある。また脱水縮合反応に用いられるポリオールの具体例を挙げると、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、グリセリン、水添ビスフェノールAなどがある。
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーとは、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により得られるものをいい、やはり分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有している。この付加反応に用いられるポリグリシジルエーテルの具体例を挙げると、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどがある。
これらの重合性多官能アクリレート化合物として、特に好ましくは前記式(I)で表されるグリセリンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート又は末端に2つ以上の重合性アクリロイル基を有するウレタンオリゴマーから少なくとも1つが用いられることが好ましい。
前記式(I)中、R1 は水素原子又はメチル基を表し、pは1〜6の整数を表し、h、i及びjはそれぞれ1以上の整数であり、かつ、h+i+jの合計が6以上21以下となる整数を表す。
本発明では、以上説明した重合性モノマー及び重合性多官能アクリレート化合物を活性エネルギー線硬化型接着剤の活性エネルギー線硬化性化合物として含む。これらの量的関係は、活性エネルギー線硬化性化合物の全量100重量部に対し、(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマーを2〜35重量部、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは20〜30重量部含み、重合性多官能アクリレート化合物を30〜60重量部、好ましくは35〜45重量部、より好ましくは40〜45重量部含むものである。(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマーの配合量が2重量部を下回ると、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10及び熱可塑性樹脂フィルム18間の密着力が低下する傾向にあり、一方でその配合量が35重量部を上回ると、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム表面が過剰に侵食されてフィルム面内にムラが観察される等の不具合が生じる傾向にある。
また、重合性多官能アクリレート化合物の配合量が30重量部を下回ると、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10及び熱可塑性樹脂フィルム18間の密着力が低下する傾向にあり、一方でその配合量が60重量部を上回ると、活性エネルギー線硬化型接着剤の粘度が高くなるため、接着剤を塗布して上記のフィルムを貼り合わせた際、気泡の噛みこみ等の外観不良が発生しやすくなる傾向にある。
上記の活性エネルギー線硬化性化合物において、(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマー及び重合性多官能アクリレート化合物以外の化合物としては、(メタ)アクリル系樹脂層を溶解することのない重合性モノマーが含まれている。その配合量は、活性エネルギー線硬化性化合物の全量100重量部に対し、(メタ)アクリル系樹脂層を溶解することのない重合性モノマーを5〜68重量部、好ましくは25〜60重量部、より好ましくは25〜40重量部である。(メタ)アクリル系樹脂層を溶解することのない重合性モノマーの配合量が68重量部を上回ると、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10及び熱可塑性樹脂フィルム18間の密着力が低下する傾向にある。一方でその配合量が5重量部を下回り、(メタ)アクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマーの配合量が多くなる場合は、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム表面が過剰に侵食されてフィルム面内にムラが観察される等の不具合が生じる傾向にあり、また重合性多官能アクリレート化合物の配合量が多くなる場合は、活性エネルギー線硬化型接着剤の粘度が高くなるため、接着剤を塗布して上記のフィルムを貼り合わせた際、気泡の噛みこみ等の外観不良が発生しやすくなる傾向にある。
〈光ラジカル重合開始剤〉
活性エネルギーが紫外線の場合、接着剤は組成物として光ラジカル重合開始剤を含有する。光ラジカル重合開始剤は、紫外線線の照射により重合性モノマー及び重合性多官能アクリレートの重合を開始できるものであればよく、従来公知のものを使用することができる。光ラジカル重合開始剤の具体例を挙げると、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル−2−モルホリノプロパン−1−オン及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンのようなアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン及び4,4′−ジアミノベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル及びベンゾインエチルエーテルのようなベンゾインエーテル系開始剤;4−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン系開始剤;その他、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンなどがある。
光ラジカル重合開始剤の配合量は、活性エネルギー線硬化性化合物の全量100重量部に対し、通常 0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜6重量部である。光ラジカル重合開始剤の量が少ないと、硬化が不十分になり、機械的強度や接着性が低下する傾向にある。一方、光ラジカル重合開始剤の量が多すぎると、活性エネルギー線硬化型接着剤中の活性エネルギー線硬化性化合物の量が相対的に少なくなり、得られる光学フィルム積層体の耐久性能が低下する可能性がある。
〈活性エネルギー線硬化型接着剤に配合し得るその他の任意成分〉
活性エネルギー線硬化型接着剤は、必要に応じてさらに光増感剤を含有することができる。光増感剤を配合することでラジカル重合の反応性が向上し、接着剤層の機械的強度や接着性を向上させることができる。光増感剤は、380nmより長い波長に極大吸収を有する化合物であればよく、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、ハロゲン化合物、アントラセン系化合物、光還元性色素などが挙げられる。
光増感剤となり得るカルボニル化合物の例を挙げると、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及び4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系化合物;2−クロロチオキサントン及び2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン及び2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン及びN−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体などがある。
アントラセン系化合物は、アントラセンの9位と10位にアルコキシ基を有するものが好ましく、光増感剤となり得るアントラセン系化合物の例を挙げると、9,10−ジプロポキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジブトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジブトキシアントラセンなどがある。これらの光増感剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。光増感剤を配合する場合、その量は、活性エネルギー線硬化性化合物全体を100重量部として、通常 0.1〜20重量部程度である。
また、活性エネルギー線硬化型接着剤は、帯電防止性能を付与するための帯電防止剤を含有してもよい。帯電防止剤としては、公知の各種のものを使用することができる。例えば、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、上記カチオン界面活性剤以外の有機カチオンを有するイオン性化合物、上記アニオン界面活性剤以外の有機アニオンを有するイオン性化合物、導電性無機粒子、導電性高分子などを用いることができる。これら帯電防止剤の配合割合は、所望とする特性に合わせて適宜決められるが、活性エネルギー線硬化性化合物全体を100重量部として、通常 0.1〜10重量部程度である。
また、活性エネルギー線硬化型接着剤は、高分子に通常使用されている公知の高分子添加剤を含有することもできる。例えば、フェノール系やアミン系等の一次酸化防止剤、硫黄系の二次酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤などが挙げられる。
また、活性エネルギー線硬化型接着剤には、レベリング剤を配合することもできる。この接着剤を(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム又は熱可塑性樹脂フィルムへ塗布するに際し、塗れ性が乏しい場合には、レベリング剤を配合することで濡れ性を改善することができる。レベリング剤には、シリコーン系、フッ素系、ポリエーテル系、アクリル共重合物系、チタネート系など、レベリング効果を有する各種の化合物を用いることができる。レベリング剤の配合割合は、接着剤に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物100重量部に対して0.01〜1重量部程度である。
さらに活性エネルギー線硬化型接着剤は、必要に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤は、その接着剤を構成する成分の溶解性を考慮して、適宜選択される。一般に用いられる溶剤としては、n−ヘキサン及びシクロヘキサンのような脂肪族炭化水素類;トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールのようなアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチルのようなエステル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ及びブチルセロソルブのようなセロソルブ類;塩化メチレン及びクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。溶剤の配合割合は、成膜性などの加工上の目的による粘度調整や採用する塗工方式における最適な粘度範囲などの観点から、適宜決定される。
接着剤層31を形成する活性エネルギー線硬化型接着剤は、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10及び熱可塑性樹脂フィルム18の貼合面のいずれかに塗工され、これにもう一方のフィルムを積層する。活性エネルギー線硬化型接着剤の塗工には、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化に用いる紫外線照射光源は特に限定されず、波長400nm以下に発光分布を有する。このような光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤への光照射強度は組成物によって異なるが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が10〜2,500mW/cm2であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型接着剤への光照射強度が小さすぎると、反応が十分に進行するまでに要する時間が長くなり、逆にそれが大きすぎると、ランプから輻射される熱及び活性エネルギー線硬化型接着剤の重合時の発熱によって、接着剤の黄変や貼着されるフィルムの劣化を生じる可能性がある。活性エネルギー線硬化型接着剤への光照射時間は、やはり組成物ごとに制御されるものであって特に限定されないが、照射強度と照射時間の積として表される積算光量が10〜2,500mJ/cm2となるように設定することが好ましい。活性エネルギー線硬化型接着剤への積算光量が小さすぎると、重合開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる接着剤層の硬化が不十分になる可能性がある。また、積算光量が大きすぎると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。
[複合偏光板]
図1に層構成の例を示した本発明の光学フィルム積層体20は、偏光板と組み合わせて複合偏光板とすることができる。本発明に係る複合偏光板の好ましい層構成の例を、図2に概略断面図で示した。この図に示すように、偏光フィルム42の一方の面に、第二の接着剤層32を介して保護フィルム44が積層され、偏光フィルム42の他方の面に、第三の接着剤層33を介して、図1を参照して先に説明した光学フィルム積層体20が、その熱可塑性樹脂フィルム18側で積層され、複合偏光板50が構成される。光学フィルム積層体20の偏光フィルム42に貼り合わされた面と反対側の面には、通常、液晶セル等の他部材に貼り合わせるための粘着剤層46が設けられ、その外側には、他部材への貼合まで粘着剤層46の表面を仮着保護するセパレーター48が設けられる。なお、図2では、各層の関係をわかりやすくするため、一部の層を離間して示しているが、実際には隣り合う各層が接触し、密着貼合されている。以下、複合偏光板50を構成する各部材について詳細に説明するが、光学フィルム積層体20及びそれを構成する各部材は、図1を参照して上で説明したとおりなので、これらの説明は省略する。
[偏光フィルム]
偏光フィルム42は、具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向しているものである。二色性色素の吸着前、吸着中、又は吸着後のいずれかで一軸延伸を施すことにより、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム中の二色性色素を延伸方向に配向させることができる。ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、上記のエチレンをはじめとするオレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなども使用し得る。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常 1,000〜10,000の範囲内、好ましくは1,500〜5,000の範囲内である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、従来公知の適宜の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、例えば10〜150μm 程度である。
偏光フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程(染色処理工程)、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程(ホウ酸処理工程)、及びこのホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程(水洗処理工程)を経て製造される。
また一軸延伸も施されるが、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、染色処理工程の前に行ってもよいし、染色処理工程中に行ってもよいし、染色処理工程の後で行ってもよい。一軸延伸を染色処理工程の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理工程の前に行ってもよいし、ホウ酸処理工程中に行ってもよい。もちろん、これら複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸は、周速の異なる離間したロール間にフィルムを通す方法で行ってもよいし、熱ロールでフィルムを挟む方法で行ってもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤にて膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
染色処理工程は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬することによって行われる。二色性色素として、具体的にはヨウ素又は二色性有機染料が用いられる。二色性有機染料には、C.I. DIRECT RED 39等のジスアゾ化合物からなる二色性直接染料、トリスアゾやテトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料が包含される。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常 0.01〜1重量部であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.5〜20重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、染色に供される水溶液の温度は、通常20〜40℃であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常 20〜1,800秒間である。
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部、好ましくは1×10-3〜1重量部、さらに好ましくは1×10-3〜1×10-2重量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含有していてもよい。二色性色素として二色性有機染料を用いる場合、染色に供される染料水溶液の温度は、通常20〜80℃であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒間である。
ホウ酸処理工程は、二色性色素で染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。上記した染色処理工程における二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、この工程で用いるホウ酸水溶液は、ヨウ化カリウムを含有することが好ましい。この場合、ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒間、好ましくは150〜600秒間、さらに好ましくは200〜400秒間である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
続く水洗処理工程では、上記したホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、例えば、水に浸漬することによって水洗処理する。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃であり、浸漬時間は、通常1〜120秒間である。水洗処理後は通常、乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒータなどを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒間、好ましくは120〜600秒間である。
以上のようにして、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向している偏光フィルムを作製することができる。この偏光フィルムの厚さは、5〜40μm 程度とすることができる。
[偏光フィルムの保護フィルム]
先述のとおり、偏光フィルム42の一方の面に、光学フィルム積層体20を構成する熱可塑性樹脂フィルム18を貼合し、偏光フィルム42の反対側の面には、熱可塑性樹脂からなる別の保護フィルム44を貼合することができる。保護フィルム44も、接着剤を介して偏光フィルム42に貼合される。保護フィルム44は、例えば、酢酸セルロース系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂など、当分野において従来から保護フィルムの形成材料として広く用いられている適宜の材料で構成することができる。量産性や接着性の観点から、これらのなかでもセルロースアセテート系樹脂フィルムを保護フィルム44として用いることが好ましい。表面処理層を設けることの容易性及び光学特性の観点からも、トリアセチルセルロースのフィルムが保護フィルム44として好ましく用いられる。
セルロースアセテート系樹脂フィルムは、前記した熱可塑性樹脂フィルム18の説明においても述べたとおり、セルロースの部分又は完全酢酸エステル化物からなるフィルムであって、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルムなどが挙げられる。偏光フィルムの保護フィルム44にセルロースアセテート系樹脂フィルムを用いる場合、熱可塑性樹脂フィルム18にセルロースアセテート系樹脂フィルムを用いる場合と同様に適宜の市販品を用いることができる。
偏光フィルム42と保護フィルム44とは、後述する適宜の第二の接着剤を用いて貼合される。両者の接着性を向上させるため、両者の接着面のいずれか一方又は双方に、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理、プライマー処理など、接着性を向上させるための表面処理を適宜施してもよい。保護フィルム44をセルロースアセテート系樹脂フィルムで構成し、後述する水系接着剤を用いて偏光フィルム42に貼着する場合には、そのセルロースアセテート系樹脂フィルムに施す好ましい表面処理の一つとして、ケン化処理を挙げることができる。ケン化処理は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液にフィルムを浸漬することによって行われる。
保護フィルム44は、薄いほうが好ましいものの、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向にあり、一方で厚すぎると、透明性が低下したり、複合偏光板50の重量が大きくなったりする傾向にある。このような観点からすると、保護フィルム44の厚さは、通常10μm以上、好ましくは15μm以上であり、また200μm 以下、好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。保護フィルム44は、偏光フィルム42に貼着される面と反対側の面に、防眩処理、ハードコート処理、帯電防止処理、反射防止処理等の表面処理が施されていてもよい。
[第二及び第三の接着剤]
偏光フィルム42と保護フィルム44との貼合、及び偏光フィルム42と光学フィルム積層体20を構成する熱可塑性樹脂フィルム18との貼合には接着剤が用いられる。図2に示すように、偏光フィルム42と保護フィルム44との間には第二の接着剤層32が、また偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルム18との間には第三の接着剤層33がそれぞれ形成される。これらの接着剤は、両者に対して接着力を発現するものであればよく、例えば、接着剤成分を水に溶解又は分散させた水系接着剤や活性エネルギー線硬化性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。偏光フィルム42の表面が親水性であることを考慮すると、接着剤成分を水に溶解又は分散させた水系接着剤が好ましい。水系接着剤は、硬化後の接着剤層を薄くできる観点からも好ましい。水系接着剤の主成分には、ポリビニルアルコール系樹脂やウレタン樹脂などを用いることができる。第二の接着剤層32と第三の接着剤層33を構成する接着剤は、同じであっても異なっていてもよいが、適度の接着性が得られれば同じものを用いるほうが、作業効率の観点からは有利である。
水系接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、そのポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。酢酸ビニルに共重合される他の単量体として、例えば、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。接着剤に用いるポリビニルアルコール系樹脂は、適度の重合度を有していることが好ましく、例えば、4重量%濃度の水溶液としたときに、粘度が4〜50mPa・secの範囲内、さらには6〜30mPa・secの範囲内にあることがより好ましい。
接着剤に用いるポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、一般に80モル%以上であることが好ましく、さらには90モル%以上であることがより好ましい。接着剤に用いるポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が低いと、得られる接着剤層の耐水性が不十分になりやすい傾向にある。
接着剤には、変性されたポリビニルアルコール系樹脂が好ましく用いられる。好適な変性ポリビニルアルコール系樹脂として、アセトアセチル基変性されたポリビニルアルコール系樹脂、アニオン変性されたポリビニルアルコール系樹脂、カチオン変性されたポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。このような変性されたポリビニルアルコール系樹脂を用いれば、接着剤層の耐水性を向上させる効果が得られやすい。
アセトアセチル基変性されたポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール骨格を構成する水酸基のほかに、アセトアセチル基(CH3COCH2CO−)を有するものであり、その他のアシル基、例えばアセチル基などを有していてもよい。このアセトアセチル基は、典型的にはポリビニルアルコールを構成する水酸基の水素原子が置換された状態で存在する。
アニオン変性されたポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール骨格を構成する水酸基のほかに、アニオン性基、典型的にはカルボキシル基(−COOH)又はその塩を有するものであり、その他のアシル基、例えばアセチル基などを有していてもよい。このアニオン変性されたポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、アニオン性基(典型的にはカルボキシル基)を有する不飽和単量体を酢酸ビニルに共重合させ、次いでケン化する方法により製造することができる。一方、カチオン変性されたポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール骨格を構成する水酸基のほかに、カチオン性基、典型的には三級アミノ基又は四級アンモニウム基を含有するものであり、その他のアシル基、例えばアセチル基などを有していてもよい。このカチオン変性されたポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、カチオン性基(典型的には三級アミノ基又は四級アンモニウム基)を有する不飽和単量体を酢酸ビニルに共重合させ、次いでケン化する方法により製造することができる。
接着剤を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、市販品の中から適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、高いケン化度を有するポリビニルアルコールであって、(株)クラレから販売されている“PVA-117H”や、日本合成化学工業(株)から販売されている“ゴーセノール NH-20”、アセトアセチル基変性されたポリビニルアルコールであって、日本合成化学工業(株)から販売されている“ゴーセファイマーZ”シリーズ、アニオン変性されたポリビニルアルコールであって、(株)クラレから販売されている“KL-318”及び“KM-118”や、日本合成化学工業(株)から販売されている“ゴーセナール T-330”、カチオン変性されたポリビニルアルコールであって、(株)クラレから販売されている“CM-318”や、日本合成化学工業(株)から販売されている“ゴーセファイマー K-210”(以上、いずれも商品名)などを挙げることができる。
また、本発明に用いられる接着剤は、上記した変性ポリビニルアルコール系樹脂を2種以上含むものであってもよいし、またポリ酢酸ビニルの完全又は部分ケン化物のような未変性のポリビニルアルコール系樹脂及び変性ポリビニルアルコール系樹脂の両方を含むものであってもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする接着剤は、水溶液の形で用いられる。その濃度は、水100重量部に対し、ポリビニルアルコール系樹脂が1〜20重量部の範囲内となるようにするのが好ましく、1〜15重量部、さらには1〜10重量部、とりわけ2〜10重量部の範囲内となるようにするのがより好ましい。水溶液中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度が小さすぎると、接着性が低下しやすい傾向にあり、一方でその濃度が大きすぎると、得られる偏光板の光学特性が低下しやすい傾向にある。この接着剤に用いられる水は、純水、超純水、水道水などであることができ、特に制限されないが、形成される接着剤層の均一性及び透明性を保持する観点からは、純水又は超純水が好ましい。また、メタノールやエタノール等のアルコールを接着剤水溶液に加えることもできる。
ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水系接着剤には、架橋剤を含有させることができる。架橋剤は、ポリビニルアルコール系樹脂に対して反応性を有する官能基を含む化合物であればよく、従来からポリビニルアルコール系接着剤において用いられているものを特に制限なく使用できる。架橋剤となりうる化合物を官能基別に掲げると、イソシアナト基(−NCO)を分子内に少なくとも2個有するイソシアネート化合物;エポキシ基を分子内に少なくとも2個有するエポキシ化合物;モノ−又はジ−アルデヒド類;有機チタン化合物;マグネシウム、カルシウム、鉄、ニッケル、亜鉛、及びアルミニウム等の二価又は三価金属の無機塩;グリオキシル酸の金属塩;メチロールメラミンなどがある。
架橋剤となるイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとのアダクト体、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、これらのケトオキシムブロック物又はフェノールブロック物などが挙げられる。
架橋剤となるエポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンのジ−又はトリ−グリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、ポリアルキレンポリアミンとジカルボン酸との反応物であるポリアミドポリアミンにエピクロロヒドリンを反応させて得られる水溶性のポリアミドエポキシ樹脂などが挙げられる。
架橋剤となるモノアルデヒド類の具体例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドなどが挙げられ、ジアルデヒド類の具体例としては、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒドなどが挙げられる。
また、グリオキシル酸の金属塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であるのが好ましく、例えば、グリオキシル酸ナトリウム、グリオキシル酸カリウム、グリオキシル酸マグネシウム、グリオキシル酸カルシウムなどが挙げられる。
これらの架橋剤のなかでも、上記した水溶性のポリアミドエポキシ樹脂をはじめとするエポキシ化合物、アルデヒド類、メチロールメラミン、グリオキシル酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩などが好適に用いられる。
架橋剤は、ポリビニルアルコール系樹脂とともに水に溶解して接着剤を形成していることが好ましい。ただ、以下に述べるとおり、水溶液中での架橋剤量はわずかでよいので、水に対し、例えば少なくとも 0.1重量%程度の溶解度を有するものであれば、架橋剤として使用できる。もちろん、一般に水溶性と呼ばれる程度の水に対する溶解度を有する化合物のほうが、本発明に用いる架橋剤としては好適である。
架橋剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂の種類などに応じて適宜設計されるものであるが、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常5〜60重量部程度、好ましくは10〜50重量部である。この範囲で架橋剤を配合すると、良好な接着性が得られる。先述のとおり、接着剤層の耐久性を向上させるためには、アセトアセチル基変性されたポリビニルアルコール系樹脂が好ましく用いられるが、この場合にも、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、架橋剤を5〜60重量部、さらには10〜50重量部の割合で配合することが好ましい。架橋剤の配合量が多くなりすぎると、接着剤の架橋反応が短時間で進行し、接着剤が早期にゲル化する傾向にあるため、ポットライフが極端に短くなって工業的な使用が困難になる。
接着剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、シランカップリング剤、可塑剤、帯電防止剤、微粒子など、従来公知の適宜の添加剤を配合することもできる。
水系接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合、適当な接着剤の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系接着剤に好適に用いられる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を偏光フィルムと保護フィルムの接着剤に用いることは、例えば、特開 2005-070140号公報、特許第 4432487号公報(=特開 2005-181817号)及び特開 2005-208456号公報に記載されて公知である。
偏光フィルム42と保護フィルム44及び/又は熱可塑性樹脂フィルム18との貼合には、接着剤層31を形成する活性エネルギー線硬化型接着剤とは異なる活性エネルギー線硬化性化合物を含有する接着剤を用いることもできる。この活性エネルギー線硬化性化合物は、カチオン重合性のものであってもよいし、ラジカル重合性のものであってもよい。カチオン重合性化合物の例として、分子内にエポキシ基を有するエポキシ化合物、分子内にオキセタン環を有するオキセタン化合物などを挙げることができる。また、ラジカル重合性化合物の例として、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系化合物などを挙げることができる。
この貼着に用いる活性エネルギー線硬化性化合物は、少なくともエポキシ化合物を含むことが好ましく、これにより特に、偏光フィルム42とシクロオレフィン系樹脂フィルムからなる熱可塑性樹脂フィルム18との間で良好な密着性を示すようになる。また、エポキシ化合物を硬化性成分とする活性エネルギー線硬化型接着剤は、保護フィルム44をセルロースアセテート系樹脂フィルムで構成する場合に、それと偏光フィルム42との間でも良好な密着性を示す。
エポキシ化合物は、耐候性や屈折率、カチオン重合性などの観点から、分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物を主成分とすることが好ましい。分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物としては、脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物などが例示できる。このような活性エネルギー線硬化型接着剤に好適に用いられるエポキシ化合物は、例えば、特許第 4306270号公報(=特開2004-245925 号)で詳細に説明されているが、ここでも概略を説明することとする。
脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルは、芳香族ポリオールを触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物を、グリシジルエーテル化したものであることができる。芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェールF、及びビスフェノールSのようなビスフェノール型化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、及びヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂のようなノボラック型樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、及びポリビニルフェノールのような多官能型の化合物などが挙げられる。これら芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテルとすることができる。このような脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルのなかでも好ましいものとして、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルであることができる。より具体的には、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;プロピレングリコールのジグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール若しくはグリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
脂環式エポキシ化合物は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する化合物である。ここで、「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、下式(II)で示される構造における橋かけの酸素原子−O−を意味し、式中、nは2〜5の整数である。
この式(II)における(CH2)n中の1個又は複数個の水素原子を取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物が、脂環式エポキシ化合物となり得る。また、脂環式環を形成する(CH2)n中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。
以上のようなエポキシ化合物のなかでも、脂環式エポキシ化合物、すなわちエポキシ基の少なくとも1個が脂環式環に結合している化合物が好ましく、とりわけオキサビシクロヘキサン環〔上記式(II)においてn=3のもの〕や、オキサビシクロヘプタン環〔上記式(II)においてn=4のもの〕を有するエポキシ化合物は、硬化物の弾性率が高く、偏光フィルムと保護フィルムの間で良好な接着性を与えることから、より好ましく用いられる。以下に、脂環式エポキシ化合物の具体的な例を掲げる。ここでは、まず化合物名を挙げ、その後、それぞれに対応する化学式を示すこととし、化合物名とそれに対応する化学式には同じ符号を付す。
A:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
B:3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
C:エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
D:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
E:ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
F:ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
G:エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
H:2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、
I:3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−8,9−エポキシ−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
J:4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
K:リモネンジオキサイド、
L:ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、
M:ジシクロペンタジエンジオキサイドなど。
活性エネルギー線硬化型接着剤において、エポキシ化合物は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、活性エネルギー線硬化型接着剤は、上記エポキシ化合物に加え、オキセタン化合物を含有してもよい。オキセタン化合物を添加することにより、上記接着剤の粘度を低くし、硬化速度を速めることができる。
オキセタン化合物は、分子内に少なくとも1個のオキセタン環(4員環エーテル)を有する化合物であって、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。オキセタン化合物の配合量は、活性エネルギー線硬化性化合物全体を基準に、通常50重量%以下、好ましくは10〜40重量%である。オキセタン化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、いずれも東亞合成(株)から販売されている商品名で、“アロンオキセタン OXT-101”、“アロンオキセタン OXT-121”、“アロンオキセタン OXT-211”、“アロンオキセタン OXT-221”、“アロンオキセタン OXT-212”などを挙げることができる。
活性エネルギー線硬化型接着剤が、エポキシ化合物やオキセタン化合物等のカチオン重合性化合物を含む場合、その接着剤には通常、光カチオン重合開始剤が配合される。光カチオン重合開始剤を使用すると、常温での接着剤層の形成が可能となるため、偏光フィルムの耐熱性や膨張による歪を考慮する必要が減少し、密着性良く偏光フィルムと保護フィルムを貼合できる。また、光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、これを混合した上記の接着剤は、保存安定性や作業性が優れたものとなる。
光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線のような活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物の重合反応を開始させるものである。光カチオン重合開始剤は、いずれのタイプのものであってもよいが、具体例を挙げれば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレーン錯体などがある。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなど。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
芳香族スルホニウム塩としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4′−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4′−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4′−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7−[ジ(p−トルイル)スルホニオ]−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7−[ジ(p−トルイル)スルホニオ]−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。
また、鉄−アレーン錯体としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなど。
これらの光カチオン重合開始剤は市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、日本化薬(株)から販売されている“カヤラッド PCI-220”及び“カヤラッド PCI-620”、ダウ・ケミカル社から販売されている“UVI-6990”、ダイセル・サイテック(株)から販売されている“UVACURE 1590”、(株)ADEKAから販売されている“アデカオプトマー SP-150”及び“アデカオプトマー SP-170”、日本曹達(株)から販売されている“CI-5102”、“CIT-1370”、“CIT-1682”、“CIP-1866S”、“CIP-2048S”及び“CIP-2064S”、みどり化学(株)から販売されている“DPI-101”、“DPI-102”、“DPI-103”、“DPI-105”、“MPI-103”、“MPI-105”、“BBI-101”、“BBI-102”、“BBI-103”、“BBI-105”、“TPS-101”、“TPS-102”、“TPS-103”、“TPS-105”、“MDS-103”、“MDS-105”、“DTS-102”及び“DTS-103”、ローディア社から販売されている“PI-2074”などを挙げることができる。
これらの光カチオン重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。これらのなかでも、特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械的強度を与え、また偏光フィルムと保護フィルムの間の良好な密着性を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
光カチオン重合開始剤の配合量は、エポキシ化合物やオキセタン化合物を包含するカチオン重合性化合物の合計100重量部に対して、通常 0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜6重量部である。光カチオン重合開始剤の配合量が少ないと、硬化が不十分になり、機械的強度や偏光フィルムと保護フィルムの間の接着性を低下させる傾向にある。一方、光カチオン重合開始剤の配合量が多すぎると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、得られる接着剤層の耐久性能が低下する可能性がある。
また、活性エネルギー線硬化型接着剤は、上記したエポキシ化合物とともに、あるいはエポキシ化合物及びオキセタン化合物とともに、ラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物を含有してもよい。(メタ)アクリル系化合物を併用することにより、接着剤層の硬度や機械的強度を高める効果が期待でき、さらには接着剤の粘度や硬化速度などの調整がより一層容易に行えるようになる。このような(メタ)アクリル系化合物としては、前述した接着剤層を形成する活性エネルギー線硬化型接着剤と同様のものが挙げられる。
第二の接着剤層32及び/又は第三の接着剤層33を構成する接着剤は、必要に応じて任意成分を含有してもよい。このような任意成分としては、先に、(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10と熱可塑性樹脂フィルム18を貼着するための接着剤層31を構成する接着剤に配合しうる成分として説明したのと同様のものを挙げることができる。
[液晶表示パネル及び液晶表示装置]
以上のように構成される本発明の複合偏光板50は、光学フィルム積層体20の偏光フィルム42に貼着された面と反対側の表面、すなわち(メタ)アクリル系樹脂層を含むフィルム10の露出面に形成された粘着剤層46を介して、液晶セルに貼り合わされ、液晶表示パネルとすることができる。この液晶表示パネルは、バックライトなどと組み合わせて液晶表示装置とされる。図2に示される構成において、粘着剤層46の表面に設けられたセパレーター48は、液晶セルへの貼合に先立って剥離除去される。液晶セルの片面に本発明の複合偏光板50を配置し、液晶セルの他の面に別の偏光板を配置して液晶表示パネルを構成することもできる。このような構成の液晶表示パネル及び液晶表示装置は、液晶セルが横電界(IPS)モードである場合に特に有効である。
上記した液晶表示パネル及び液晶表示装置において、液晶セルの一方の面に本発明の複合偏光板50を配置する場合、他方の面に配置される別の偏光板の液晶セル側となる透明保護フィルムは、面内位相差Reが10nm以下であり、厚さ方向の位相差Rthの絶対値が15nm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、面内位相差Reが5nm以下であり、厚さ方向の位相差Rthの絶対値が10nm以下である。面内位相差Reが10nm以下であり、厚さ方向の位相差Rthの絶対値が15nm以下である透明保護フィルムに用いる材料の例を挙げると、セルロース系樹脂、環状オレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などがある。これらの樹脂で構成されるフィルムから、面内及び厚さ方向の位相差がともに小さいものを、適宜選択して用いればよい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特に断りのない限り重量基準である。また、フィルムの位相差及びNz係数は、波長590nmで測定した値である。まず、少なくともメタクリル系樹脂層を含むフィルムの製造例を示す。
[製造例1]メタクリル系樹脂層を含むフィルムの作製
図1でいう位相差発現層12を形成する樹脂には、ノヴァケミカル社から“ダイラーク D332 ”という商品名で販売されており、ガラス転移温度が131℃のスチレン−無水マレイン酸系共重合樹脂を用いた。また、同図でいう(メタ)アクリル系樹脂層14,15となる樹脂には、住友化学(株)から販売されている“テクノロイ S001 ”に使用され、平均粒径が200μm のアクリル系ゴム粒子を約20%含むガラス転移温度が105℃のメタクリル系樹脂を用いた。そして、スチレン−無水マレイン酸系共重合樹脂からなる層の両面にメタクリル系樹脂からなる層が形成されるように3層共押出を行って、総膜厚が46.0μmとなる3層構造の樹脂フィルムAを作製した。この樹脂フィルムAの面内レタデーション値Re及びNz係数は、それぞれ60.0nm及び−1.0であった。
この樹脂フィルムAを用い、次のようにして溶解度を求めた。まず、アクリル系樹脂フィルムAを10mm×40mmに切り出し、その重量を小数点以下4桁まで測定できる天秤を用いて秤量した。次に、このアクリル系樹脂フィルムAの試料を、23℃で重合性モノマーに48時間浸漬して取り出し、空気中で1時間乾燥させた後、その重量を同様に秤量した。浸漬の前後における重量の変化量(浸漬後のフィルムの重量/浸漬前のフィルムの重量)を算出し、それを百分率で表した値を溶解度として求めた。
次に、メタクリル系樹脂層を溶解する重合性モノマー及び重合性多官能アクリレート化合物を含む活性エネルギー線硬化型接着剤を製造し、それを上で作製した3層構造の樹脂フィルムAと熱可塑性樹脂フィルムの接着に適用した例を示す。以下の活性エネルギー線硬化型接着剤に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物には、次のものを用いた。
〈メタクリル樹脂層を溶解する重合性モノマー〉
“ビスコート #150 ”:テトラヒドロフルフリルアクリレート、大阪有機工業(株)から入手、メタクリル樹脂層の溶解度100%、
“HEA ”:2−ヒドロキシエチルアクリレート、大阪有機工業(株)から入手、メタクリル樹脂層の溶解度60%、
“4HBA”:4−ヒドロキシブチルアクリレート、大阪有機工業(株)から入手、メタクリル樹脂層の溶解度27%、
“NMMA”:N−メトキシメチルアクリルアミド、MRCユニテック(株)から入手、メタクリル樹脂層の溶解度1%、
〈メタクリル樹脂層を溶解しない重合性モノマー〉
“CHDMMA”:1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、日本化成(株)から入手、メタクリル樹脂層の溶解度0%、
“FA-513AS”:ジシクロペンタニルアクリレート、日立化成工業(株)から入手、メタクリル樹脂層の溶解度0%。
〈重合性多官能アクリレート化合物〉
“A-GLY-20E ”:エトキシ化グリセリントリアクリレート、新中村化学工業(株)から入手、
“UV-3000B”:紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、日本合成化学工業(株)から入手。
なお、上記のエトキシ化グリセリントリアクリレート〔新中村化学工業(株)から販売されている“A-GLY-20E ”〕は、メーカーカタログに以下の構造式が示されている。
また、上記の紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂“UV-3000B”〔日本合成化学工業(株)から販売されている“UV-3000B”〕は、ウレタンアクリレートをメインの構成とする紫外線硬化型樹脂であることは開示されているが、具体的な構造は開示されていない。メーカーカタログには、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂“UV-3000B”につき、粘度:45,000〜65,000mPa・s/60℃、分子量(Mw):18,000、オリゴマー官能基数:2、ガラス転移温度Tg:−39℃という物性が示されている。
上記の活性エネルギー線硬化型接着剤に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物は、表1及び表2においてそれぞれ商品名で略記する。
[実施例1]
厚さ25μm のシクロオレフィン系樹脂の延伸フィルム〔日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノアフィルム”、面内位相差=90nm、厚さ方向位相差=79nm〕を熱可塑性樹脂フィルムとして用い、その片面に以下に記載する活性エネルギー線硬化型接着剤Aを塗工機〔第一理化(株)製のバーコーター〕で塗工した。活性エネルギー線硬化型接着剤Aを塗工したときの膜厚は、粘度によって変化するため、バーコーターの番線の番号を変え、硬化後の膜厚が1μm となるように調節した。次に、製造例1で作製した3層構造の樹脂フィルムAの一方の面に、上記の活性エネルギー線硬化型接着剤Aの塗膜が形成されたシクロオレフィン系樹脂フィルムを、その塗膜側が3層構造の樹脂フィルムAへの貼着面となるように、貼付装置〔フジプラ(株)製の“LPA3301 ”〕を用いて貼合した。この貼合品に、シクロオレフィン系樹脂フィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置〔ランプは、フュージョンUVシステムズ社製の“Dバルブ”使用〕により、積算光量が250mJ/cm2 となるように紫外線を照射して、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させて、光学フィルム積層体を作製した。
上記の活性エネルギー線硬化型接着剤Aは、メタクリル樹脂層を溶解する重合性モノマーとしてテトラヒドロフルフリルアクリレート“ビスコート #150 ”を5重量部、メタクリル樹脂層を溶解しない重合性モノマーとしてジシクロペンタニルアクリレート“FA-513AS”を50部、重合性多官能アクリレート化合物としてエトキシ化グリセリントリアクリレート“A-GLY-20E ”を45部、及びBASF社から“イルガキュア 184”という商品名で販売されており、化学名が1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンである光ラジカル重合開始剤3部を充分に混合して製造した。
[実施例2〜9]
活性エネルギー線硬化型接着剤に含まれるメタクリル樹脂層を溶解する重合性モノマーを表1に示すように変更し、活性エネルギー線硬化性化合物を表1に示す配合割合にし、活性エネルギー線硬化型接着剤B〜Iを製造した。なお、実施例2、5及び9は、重合性多官能アクリレート化合物としてエトキシ化グリセリントリアクリレート“A-GLY-20E ”及び紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂“UV-3000B”を併用した例である。活性エネルギー線硬化型接着剤B〜Iを用いて実施例1と同様に光学フィルム積層体をそれぞれ製造した。
[比較例1〜4]
メタクリル樹脂層を溶解する重合性モノマーを配合せず、代わりにメタクリル樹脂層を溶解しない重合性モノマーである1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート“CHDMMA”及びジシクロペンタニルアクリレート“FA-513AS”をそれぞれ表1に示す割合で用い、それに重合性多官能アクリレート化合物としてエトキシ化グリセリントリアクリレート“A-GLY-20E ”を45部、及び光ラジカル重合開始剤として“イルガキュア 184”を3部、それぞれ配合した後、充分に混合して活性エネルギー線硬化型接着剤J〜Mを製造した。それぞれの接着剤を用いて実施例1と同様に光学フィルム積層体を製造した。
[実施例10〜18及び比較例5〜8]
3層構造の樹脂フィルムAの一方の面に貼合する熱可塑性樹脂フィルムとして厚さ40μm のトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)から販売されている“KC4CZ”〕を使用した以外は、実施例1〜9及び比較例1〜4と同様にして光学フィルム積層体を得た。
[接着力の評価試験]
実施例1〜9及び比較例1〜4で作製した光学フィルム積層体のシクロオレフィン系樹脂フィルム表面にコロナ処理を施し、続いてその処理面にアクリル系粘着剤シートを貼合して粘着剤付き光学フィルムとした。得られた粘着剤付き光学フィルムから、幅25mm、長さ約200mmの試験片を裁断し、その粘着剤面をソーダガラスに貼合した後、オートクレーブ中、圧力5kgf/cm2、温度50℃で20分間の加圧処理を行い、さらに、温度23℃、相対湿度60%の雰囲気下で1日放置して養生した。
この状態で、万能引張試験機〔(株)島津製作所製の“AG-1”〕を用いて、試験片の長さ方向一端(幅25mmの一辺)のうち3層構造の樹脂フィルムAをつかみ、温度23℃、相対湿度60%の雰囲気下、クロスヘッドスピード(つかみ移動速度)200mm/分で、JIS K 6854-1:1999 「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第1部:90度はく離」に準拠する90°剥離試験を行い、3層構造の樹脂フィルムAと、熱可塑性樹脂フィルムとしてのシクロオレフィン系樹脂フィルムとの間の接着力を評価した。結果を表1に示した。
同様に、実施例10〜18及び比較例5〜8で作製した光学フィルム積層体についても3層構造の樹脂フィルムAと、熱可塑性樹脂フィルムとしてのトリアセチルセルロースフィルムとの間の接着力を評価した。結果を表2に示した。
(表1及び表2の脚注)
〈メタクリル樹脂を溶解する重合性モノマー〉
ビスコート #150:テトラヒドロフルフリルアクリレート、溶解度100%
HEA :2−ヒドロキシエチルアクリレート、溶解度60%
4HBA :4−ヒドロキシブチルアクリレート、溶解度27%
NMMA :N−メトキシメチルアクリルアミド、溶解度1%
〈メタクリル樹脂を溶解しない重合性モノマー〉
CHDMMA :1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、
溶解度0%
FA−513AS :ジシクロペンタニルアクリレート、溶解度0%
〈重合性多官能アクリレート化合物〉
A−GLY−20E :エトキシ化グリセリントリアクリレート
UV−3000B :紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂
表1及び表2の結果から、本願の規定を満たし、熱可塑性樹脂フィルムとしてシクロオレフィン系樹脂フィルムを用いた実施例1〜9では、メタクリル樹脂を溶解する重合性モノマーを配合しない接着剤を用いた比較例1〜4に比べて接着力がいずれも高い値を示していることがわかる。また、熱可塑性樹脂フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを用いた実施例10〜18とその比較例5〜8の結果も同様に、メタクリル樹脂を溶解する重合性モノマーを配合した実施例のほうが、それを配合しない比較例に比べて接着力がいずれも高い値を示していることがわかる。