以下、本発明に係る電動機(モータ)の制御装置、制御方法の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。各図において同一の符号は実質的に同じ構成を示す。
まず、一般的なモータのPWM制御方式について説明する。図1は、モータのPWM制御に用いられるインバータを示す回路図である。図2は、PWM制御におけるスイッチング素子の動作波形を示すタイミングチャートである。図1に示すように、インバータ20は、モータ11に接続されている。モータ11はU相、V相、W相を備えた三相モータである。
インバータ20は、スイッチング素子Q1〜Q6を備えている。スイッチング素子Q1〜Q6は、例えば、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワートランジスタである。ここでは、スイッチング素子Q1〜Q6がパワーMOSFETであり、ゲート(制御端子)にゲート電圧(PWM制御信号)が供給されることによって、スイッチング素子Q1〜Q6がオンオフする。例えば、マイコン(不図示)などのコントローラが、スイッチング素子Q1〜Q6をオンオフ制御するためのPWM制御信号を出力する。
スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とが電源電圧とグランドとの間に直列接続されている。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との間の接続点が、モータ11のU相に接続されている。スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4とが電源電圧とグランドとの間に直列接続されている。スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との間の接続点が、モータ11のV相に接続されている。スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6とが電源電圧とグランドとの間に直列接続されている。スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6との間の接続点が、モータ11のW相に接続されている。また、スイッチング素子Q2、Q4、Q6とグランドとの間には抵抗が接続されている。なお、抵抗によって、各相に流れる電流を検出してもよい。
図2の波形において、期間Aでは、スイッチング素子Q1、Q4、Q6がオンしており、スイッチング素子Q2、Q3、Q5がオフしている。したがって、電源電圧からの電流が、スイッチング素子Q1を介して、モータ11のU相に供給される。また、モータ11のV相の電流が、スイッチング素子Q4を介して、グランドに引き込まれる。同様に、モータ11のW相の電流が、スイッチング素子Q6を介して、グランドに引き込まれる。このように、モータ11のU相、V相、W相には、それぞれ電流Iu、電流Iv、及びIwがスイッチング素子を介して流れる。そして、PWM制御信号の電圧レベルに応じて、スイッチング素子Q1〜Q6がオンオフ制御される。
スイッチング素子Q1〜Q6には、MOSFETが用いられる。図3は、スイッチング素子Q1〜Q6として用いられるMOSFETの特性を示すグラフである。図3では、横軸がMOSFETのゲート−ソース間電圧VGS(以下、ゲート電圧)を示し、縦軸がソース−ドレイン間抵抗(以下、抵抗RON)を示している。なお、図3に示す数値は、MOSFET特性の一例であり、MOSFET特性は図3に示す数値に限られるものではない。
ゲート電圧VGsが5Vになると、スイッチング素子がONし、ゲート電圧VGSが0Vとなるとスイッチング素子がOFFする。図3に示す例では、ゲート電圧VGsが5Vのとき、抵抗RONが10mΩとなっている。図3に示す例では、5Vがスイッチング素子のオン電圧VONとなり、0Vがオフ電圧VOFFとなる。オン電圧は、トランジスタの閾値電圧以上の電圧であり、ゲート電圧VGsに対して抵抗がほとんど変動しない。すなわち、オン電圧付近では、ゲート電圧VGsが増加しても、流れる電流がほぼ一定の飽和領域となる。
オン電圧とオフ電圧との間には、ゲート電圧VGsに対して抵抗RONがほぼ線形に変化する線形領域が存在する。例えば、ゲート電圧VGsが1V付近では、ゲート電圧と抵抗RONとの関係が線形になる。
スイッチング素子Q1〜Q6における損失は、RON×ID 2となる。したがって、スイッチング素子の抵抗が低い飽和領域では、スイッチング素子の通電電流による損失が小さくなる。一方、スイッチング素子の抵抗が大きい線形領域では、スイッチング素子の通電電流による損失が大きくなる。このように、飽和領域では電力の損失が小さくなり、線形領域では電力の損失が大きくなる。線形領域では、スイッチング素子Q1〜Q6が抵抗として機能する。したがって、線形領域で動作するスイッチング素子Q1〜Q6に電流が流れることで、スイッチング素子Q1〜Q6が発熱する。これにより、回生電力を消費することができる。
本実施の形態では、一部のスイッチング素子のゲート電圧をオフ電圧とオン電圧との間の中間電圧とすることで、通電電流による損失を大きくしている。なお、中間電圧は、オフ電圧とオン電圧との間の電圧であればよく、オン電圧とオフ電圧との真ん中の電圧でなくてもよい。中間電圧は、線形領域の電圧であることが好ましい。
具体的には、電源電圧がしきい値を越えた場合、スイッチング素子のゲートに中間電圧が供給される。こうすることで、モータ11で発生した回生電力を熱として消費することができる。すなわち、スイッチング素子の通電電流が、熱に変換される。こうすることで、回生電力を消費することができ、回生領域を拡大することができる(図18参照)。
図4は、モータ11の電気角と相電圧を示すグラフである。図4では、横軸はモータ11の電気角を示し、縦軸は相電圧を示している。モータ11の相電圧は、モータ11の電気角によって変化する。各相の相電圧はサイン波となっており、位相が120°ずれている。ここでは、3相モータを用いているため、区間1〜3に分けている。各区間は、120°の電気角に対応している。
区間1では、U相の相電圧VuがV相の相電圧VvとW相の相電圧Vwよりも高くなる。区間2では、V相の相電圧VvがU相の相電圧VuとW相の相電圧Vwよりも高くなる。区間3では、W相の相電圧VWがU相の相電圧VuとV相の相電圧Vvよりも高くなる。区間に応じて、通電状態を切り替えることで、ECUで回生電力を消費することができる。
以下、本実施の形態にかかるモータの制御装置、及び制御方法について、図面を参照して説明する。図5、図8、図10は、モータ制御装置100の構成を示す回路図である。図6、図9、図11は、制御方法を示すフローチャートである。図7は、電流波形、ゲート電圧、発熱量の波形を示す図である。区間1については、図5〜7を用いて説明を行う。区間2については、図7〜図9を用いて説明を行う。区間3については、図7、図10、図11を用いて説明を行う。
まず、モータ制御装置100の構成について、図5を用いて説明する。モータ制御装置100は、電源13とインバータ20と電源コンデンサ21とを備えている。モータ11は、上記の通り、三相モータであり、U相、V相、及びW相を備えている。モータ11としては、例えば、ACブラシレスモータを用いることができる。電源13は、充放電可能なバッテリであり、例えば、リチウムイオン電池等である。電源13は、インバータ20に電源電圧を供給する。なお、電源13とインバータ20との間には、ダイオードなどの整流素子が設けられていてもよい。
電源コンデンサ21は、電源13と並列に接続されている。すなわち、電源コンデンサ21の一端は、電源13の電源電位(第1の電位)となり、他端はグランド電位(第2の電位)となる。電源コンデンサ21は、モータ11の回生電力により充電される。インバータ20は電源13と、モータ11との間に接続されている。そして、インバータ20は、電源13からのモータ11に供給される駆動電流を制御する。電源13の電源電圧はモニタされている。そして、比較器(不図示)が、電源電圧がしきい値を越えたか否かを判定している。モータ11の各相に流れるモータ電流(相電流ともいう)はモニタされている。モータ11の回転角度(電気角)はモニタされている。
インバータ20は、スイッチング素子Q1〜Q6を備えている。上記の通り、スイッチング素子Q1〜Q6は、パワーMOSトランジスタなどのパワー素子である。ここでは、スイッチング素子Q1〜Q6は、NMOSトランジスタとして説明するが、NMOSトランジスタの代わりにPMOSトランジスタを用いてもよい。もちろん、MOSトランジスタ以外のトランジスタをスイッチング素子Q1〜Q6として用いてもよい。
インバータ20は、電源13と並列に接続されている。インバータ20は、電源13とモータ11との間に設けられている。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とが電源電圧とグランドとの間に直列接続されている。スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4とが電源電圧とグランドとの間に直列接続されている。スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6とが電源電圧とグランドとの間に直列接続されている。
スイッチング素子Q1、Q3、Q5のドレインが電源13の電源電位となっている。スイッチング素子Q2、Q4、Q6のソースが電源13のグランド電位となっている。スイッチング素子Q1のソースは、スイッチング素子Q2のドレインと接続されている。スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインとの間の接続点が、モータ11のU相に接続されている。スイッチング素子Q3のソースとスイッチング素子Q4のドレインとの間の接続点が、モータ11のV相に接続されている。スイッチング素子Q5のソースとスイッチング素子Q6のドレインとの間の接続点が、モータ11のW相に接続されている。
電源電位側に設けられたスイッチング素子Q1、Q3、Q5がインバータ20の上アーム22を構成する。グランド電位側に設けられたスイッチング素子Q2、Q4、Q6がインバータ20の下アーム23を構成する。スイッチング素子Q1〜Q6のゲート(制御端子)には、マイコン(不図示)などからのPWM制御信号(ゲート電圧)が入力される。PWM制御信号によって、各トランジスタのゲートにオン電圧又はオフ電圧が供給される。ゲートにHレベルのPWM制御信号(オン電圧)が供給されると、スイッチング素子Q1〜Q6はオンし、ゲートにLレベルのPWM制御信号(オフ電圧)が供給されると、スイッチング素子Q1〜Q6はオフする。スイッチング素子Q1〜Q6は独立にオンオフ制御される。
PWM制御においては、スイッチング素子Q1、及びスイッチング素子Q2のオンオフ状態によって、モータ11のU相に流れる電流の方向が決まる。スイッチング素子Q1がオンし、スイッチング素子Q2がオフすると、電源13からの電流がモータ11のU相に供給される。スイッチング素子Q1がオフし、スイッチング素子Q2がオンすると、モータ11のU相の電流がグランドに引き込まれる。V相についても同様に、スイッチングQ3、Q4のオンオフ状態によって、電流の方向が決まる。W相についても同様に、スイッチングQ5、Q6のオンオフ状態によって、電流の方向が決まる。このように、上アーム22と下アーム23のうち、一方のスイッチング素子がオンし、他方がオフすることで、各相の電流の方向が決まる。なお、各相の電流の向きが変わる場合、上アーム22のスイッチング素子と下アーム23のスイッチング素子が同時にオフするデッドタイム期間が存在する。これにより、電源電位側からグランド電位側に直接電流が流れるのを防ぐことができる。
以下、モータ制御装置100の動作について説明する。まず、期間1における動作について図5〜図7を用いて説明する。期間1では、U相のモータ電圧がV相、及びW相のモータ電圧よりも高くなっている(図4参照)。まず、回生電力によって電源電圧が上昇する(図6のS11)。そして、電源電圧がしきい値を越えると、下アーム23のスイッチング素子Q2、Q4、Q6がオフとなる(S12)。
スイッチング素子Q3、Q5の線形領域にて、モータ電流(Iu、Iv、Iw)を制御する(S13)。線形領域では、スイッチング素子のゲート電圧に対して、抵抗RONが線形に変化する。スイッチング素子Q3、Q5のゲートにオン電圧とオフ電圧との間に中間電圧が供給される。このように、電源電圧をモニタして、電源電圧としきい値とを比較する。電源電圧がしきい値以上となった場合に、下アーム23のスイッチング素子Q2、Q4、Q6をオフするとともに、上アーム22のスイッチング素子Q3、Q5に中間電圧を供給する。これにより、モータ電流が上アーム22のスイッチング素子Q1、Q3、Q5に流れる。すなわち、スイッチング素子Q3、Q5に中間電圧を供給することで、Iv、Iwを制御することができる。2つの相に流れる電流を制御することで、3相電流を制御することができる。
そして、モータ電流Iv、Iwが目標値に対して少ない場合は、スイッチング素子Q3、Q5のゲート電圧VGSを上げる。一方、モータ電流Iv、Iwが目標値に対して多い場合は、スイッチング素子Q3、Q5のゲート電圧VGSを下げる(S14)。ただし、ゲート電圧VGSはオン電圧VON未満となっている。こうすることで、モータ電流Iv、Iwを目標値に近づけることができる。このように、モータ電流をモニタして、期間1では、V相とW相のモータ電流が目標値になるようにゲート電圧VGSを調整する。
図5に示すように、スイッチング素子Q3にてR×Iv2が熱として消費され、スイッチング素子Q5にてR×Iw2が熱として消費される(S15)。回生電力が熱によって消費され、電源電圧が低下する(S16)。
例えば、モータ電流の目標値は、図7に示すように変化している。そして、モータ電流の測定値と目標値とを比較して、ゲート電圧VGSを図7のように増減させる。すなわち、モータ電流の測定値が目標値となるようにゲート電圧VGSが制御される。なお、ゲート電圧VGSは、オン電圧VONよりも低くなっている。図5に示すように電源電位側からモータ11に向かって流れるモータ電流Iv、Iwによって、スイッチング素子Q3、Q5が発熱する。スイッチング素子Q3、Q5での発熱量は、図7に示すように電流が高く、ゲート電圧VGSが低い場合に高くなる。回生電力を消費することができ、モータ電流IUによって上昇した電源電圧を低下することができる。
次に、期間2の動作について図7〜図9説明する。期間2では、V相のモータ電圧がU相、及びW相のモータ電圧よりも高くなっている(図4参照)。まず、回生電力によって電源電圧が上昇する(図9のSS17)。そして、電源電圧がしきい値を越えると、下アーム23のスイッチング素子Q2、Q4、Q6がオフとなる(S18)。
スイッチング素子Q1、Q5の線形領域にて、モータ電流(Iu、Iv、Iw)を制御する(S19)。線形領域では、スイッチング素子のゲート電圧に対して、抵抗RONが線形に変化する。スイッチング素子Q1、Q5のゲートにオン電圧とオフ電圧との間に中間電圧が供給される。なお、スイッチング素子Q3は、オン電圧が供給されている。このように、電源電圧をモニタして、電源電圧としきい値とを比較する。電源電圧がしきい値以上となった場合に、下アーム23のスイッチング素子Q2、Q4、Q6をオフするとともに、上アーム22のスイッチング素子Q1、Q5に中間電圧を供給する。これにより、モータ電流が上アーム22のスイッチング素子Q1、Q3、Q5に流れる。
そして、モータ電流Iu、Iwが目標値に対して少ない場合は、スイッチング素子Q1、Q5のゲート電圧VGSを上げる。一方、モータ電流Iu、Iwが目標値に対して多い場合は、スイッチング素子Q1、Q5のゲート電圧VGSを下げる(S20)。ただし、ゲート電圧VGSはオン電圧VON未満となっている。こうすることで、モータ電流Iu、Iwを目標値に近づけることができる。このように、モータ電流をモニタして、期間2では、U相とW相のモータ電流が目標値になるようにゲート電圧VGSを調整する。
図8に示すように、スイッチング素子Q1にてR×Iu2が熱として消費され、スイッチング素子Q5にてR×Iw2が熱として消費される(S21)。従って、回生電力が熱によって消費され、電源電圧が低下する(S22)。
例えば、モータ電流の目標値は、図7に示すように変化している。そして、モータ電流の測定値と目標値とを比較して、ゲート電圧VGSを図7のように増減させる。すなわち、モータ電流の測定値が目標値となるようにゲート電圧VGSが制御される。なお、ゲート電圧VGSは、オン電圧VONよりも低くなっている。図8に示すように電源電位側からモータ11に向かって流れるモータ電流Iu、Iwによって、スイッチング素子Q1、Q5が発熱する。スイッチング素子Q1、Q5での発熱量は、図7に示すように電流が高く、ゲート電圧VGSが低い場合に高くなる。回生電力を消費することができ、モータ電流Ivによって上昇した電源電圧を低下することができる。
次に、期間3の動作について図7、図10、図11説明する。期間3では、W相のモータ電圧がU相、及びV相のモータ電圧よりも高くなっている(図4参照)。まず、回生電力によって電源電圧が上昇する(図11のS23)。そして、電源電圧がしきい値を越えるとスイッチング素子Q2、Q4、Q6がオフとなる(S24)。すなわち、下アーム23のスイッチング素子スイッチング素子Q2、Q4、Q6がオフとなる。
スイッチング素子Q1、Q3の線形領域にて、モータ電流(Iu、Iv、Iw)を制御する(S25)。線形領域では、スイッチング素子のゲート電圧に対して、抵抗RONが線形に変化する。スイッチング素子Q1、Q3のゲートにオン電圧とオフ電圧との間に中間電圧が供給される。なお、スイッチング素子Q5は、オン電圧が供給されている。このように、電源電圧をモニタして、電源電圧としきい値とを比較する。電源電圧がしきい値以上となった場合に、下アーム23のスイッチング素子Q2、Q4、Q6をオフするとともに、上アーム22のスイッチング素子Q1、Q5に中間電圧を供給する。これにより、モータ電流が上アーム22のスイッチング素子Q1、Q3、Q5に流れる。
そして、モータ電流Iu、Ivが目標値に対して少ない場合は、スイッチング素子Q1、Q3のゲート電圧VGSを上げる。一方、モータ電流Iu、Ivが目標値に対して多い場合は、スイッチング素子Q1、Q3のゲート電圧VGSを下げる(S26)。ただし、ゲート電圧VGSはオン電圧VON未満となっている。こうすることで、モータ電流Iu、Ivを目標値に近づけることができる。このように、モータ電流をモニタして、期間3では、U相とV相のモータ電流が目標値になるようにゲート電圧VGSを調整する。
図10に示すように、スイッチング素子Q1にてR×Iu2が熱として消費され、スイッチング素子Q3にてR×Iv2が熱として消費される(S27)。従って、回生電力が熱によって消費され、電源電圧が低下する(S28)。
例えば、モータ電流の目標値は、図7に示すように変化している。そして、モータ電流の測定値と目標値とを比較して、ゲート電圧VGSを図7のように増減させる。すなわち、モータ電流の測定値が目標値となるようにゲート電圧VGSが制御される。なお、ゲート電圧VGSは、オン電圧VONよりも低くなっている。図10に示すように電源電位側からモータ11に向かって流れるモータ電流Iu、Ivによって、スイッチング素子Q1、Q3が発熱する。スイッチング素子Q1、Q5での発熱量は、図7に示すように電流が高く、ゲート電圧VGSが低い場合に高くなる。回生電力を消費することができ、モータ電流Ivによって上昇した電源電圧を低下することができる。
このように、本実施の形態では、PWM制御によりモータ11を駆動する場合において、回生電力が電源コンデンサ21に蓄積して、電源電圧がしきい値電圧以上となると、上アームのスイッチング素子に中間電圧をゲート電圧として供給している。そして、モータ電流の目標値に応じてゲート電圧を調整している。例えば、目標値は矩形制御やベクトル制御に基づいて求めることができる。これにより、モータ11を所望の回転速度、例えば、一定速度で回転させることができる。回生電力によって電源電圧がしきい値を越えると、スイッチング素子にオン電圧とオフ電圧の間の中間電圧が供給される。
さらに、モータ制御装置100が、スイッチング素子の線形領域を利用した電流制御を行っている。すなわち、目標値となるようにゲート電圧が線形領域内で増減している。このようにすることで、モータ11の各相に目標電流を供給することができる。スイッチング素子にアーム電流を通電することができるため、効率よく回生電力を消費することができる。上アーム22のスイッチング素子で、熱として消費されるため、電源電圧の上昇を防ぐことができる。
さらに、モータ11の電気角に応じて、ゲート電圧を制御するスイッチング素子を切替えている。すなわち、上アーム22において、相電圧が最も高くなる相ではスイッチング素子をオンし、残りの2つの相において、スイッチング素子のゲート電圧を調整している。オン電圧よりも低いゲート電圧を供給した場合、オン電圧を供給した場合よりも抵抗が高くなる。これにより、回生電力の消費を大きくすることができ、電源電圧を速やかに下降させることができる。
また、本実施の形態にかかるモータ制御装置100は、回生電力を電源13に蓄積する構成(図19参照)とはなっていないため、電池充電状態に依存しない回生が可能となる。さらに、充電制御用のシステムが不要となり、低コスト化を図ることができる。
本実施の形態にかかるモータ制御装置100は、回生抵抗12で回生電力を消費する構成(図20参照)となっていないため、回生抵抗12を設ける必要がなくなる。よって、追加ハードにより、ECU42のスペースを圧迫するのを防ぐことができる。さらに、発熱するスイッチング素子Q1〜Q6を有するインバータ20は、通常、ECU42(図16参照)の筐体と強固に熱結合している。よって、放熱のために、新たな部材を設ける必要がなくなる。これにより、コスト上昇を防ぐことができる。
また、本実施の形態にかかるモータ制御装置100は、モータ11で回生電力を消費する構成(図21参照)とはなっていない。したがって、モータ11を熱管理するための温度センサなどが不要となる。これにより、コスト上昇を防ぐことができる。
(構成例1)
上記したモータ制御装置の構成の一例を図12に示す。図12は、モータ制御装置101の構成を示す回路図である。図12のモータ制御装置101は、電源13、インバータ20、及び電源コンデンサ21を備えている。電源13、インバータ20、及び電源コンデンサ21の構成、及び動作は、上記と同様であるため、説明を省略する。モータ制御装置101は、マイコン30、切替え制御器31、比較器32、アンプ34、切替えスイッチ35、電流センサ38、及び角度センサ39を備えている。
マイコン30は、マイコン30は、スイッチング素子Q1〜Q6に供給されるPWM制御信号(図12中の矩形パルス)をそれぞれ生成する。マイコンは、モータ指令値に基づいて、PWM制御信号を生成する。例えば、マイコン30からのPWM制御信号は、切替えスイッチ35を介して、アンプ34に入力される。アンプ34はスイッチング素子Q1〜Q6毎に設けられている。アンプ34で増幅されたPWM制御信号は、スイッチング素子Q1〜Q6に入力される。これにより、スイッチング素子Q1〜Q6がPWM制御信号によって、独立にオンオフ制御される。すなわち、モータ11がPWM動作によって駆動する。
さらに、マイコン30は、上記のように、線形領域内においてゲート電圧を調整するためのゲート信号をスイッチング素子Q1、Q3、Q5に出力する。スイッチング素子Q1、Q3、Q5とマイコン30との間には、切替えスイッチ35が設けられている。切替えスイッチ35は、スイッチング素子Q1、Q3、Q5に出力信号を切替えている。すなわち、切替えスイッチ35は、PWM制御信号又はゲート信号をスイッチング素子Q1、Q3、Q5に出力する。
電源13の電源電圧は比較器32に入力されている。さらに、比較器32には、しきい値が入力されている。比較器32はしきい値と電源電圧を比較して、その比較結果を切替え制御器31に出力する。すなわち、比較器32は電源電圧がしきい値を越えたことを検出する。そして、比較器32は、電源電圧がしきい値を越えたこと示す比較信号を切替え制御器31、及びマイコン30に出力する。
切替え制御器31は、比較器32からの比較信号に基づいて、切替えスイッチ35に切替え信号を出力する。したがって、電源電圧がしきい値を越えた場合に、切替えスイッチ35は、スイッチング素子Q1、Q3、Q5のうちの1つにオン電圧を供給し、残りの2つの中間電圧を供給する。電源電圧がしきい値を越えた場合に、マイコン30は、スイッチング素子Q2、Q4、Q6がオフするようなPWM制御信号を出力する。
モータ11の各相には、モータ電流を検出する電流センサ38が設けられている。電流センサ38は検出したモータ電流をマイコン30に出力する。また、モータ11にはエンコーダなどの角度センサ39が設けられている。角度センサ39は検出したモータ角度(電気角)をマイコン30に出力する。
マイコン30は、電流センサ38で検出したモータ電流が目標値になるようにゲート信号を出力する。こうすることで、スイッチング素子のゲート電圧を調整することが可能になる。なお、マイコン30は、PWM制御信号に基づいて目標値を算出する。目標値と電流センサ38との測定値とに基づいて、ゲート電圧を調整する。すなわち、スイッチング素子Q1、Q3、Q5に対して、目標値と電流値との差分に基づくゲート信号を出力して、ゲート電圧を調整する。
マイコン30は、角度センサ39で検出した角度に応じて、ゲート電圧を調整するスイッチング素子を決定する。すなわち、区間1の場合、マイコン30及び切替え制御器31は、スイッチング素子Q1にオン電圧を供給して、スイッチング素子Q3、Q5のゲート電圧を調整する。区間2の場合、マイコン30及び切替え制御器31は、スイッチング素子Q3にオン電圧を供給して、スイッチング素子Q1、Q5のゲート電圧を調整する。区間3の場合、マイコン30及び切替え制御器31は、スイッチング素子Q5にオン電圧を供給して、スイッチング素子Q1、Q3のゲート電圧を調整する。
角度センサ39で検出されたモータの角度に応じて、オン電圧とオフ電圧との間の電圧を供給するスイッチング素子を切替える。これにより、スイッチング素子Q1、Q3、Q5のうち、2つのスイッチング素子のゲート電圧が中間電圧となる。よって、2つのスイッチング素子が発熱し、効率よく回生電力を消費することができる。
マイコン30、比較器32からの比較信号及び角度センサ39からの角度に応じて切替え制御器31を制御する。具体的には、電源電圧がしきい値を越えた場合に、上アーム22の一部のスイッチング素子については、切替えスイッチ35が中間電圧を出力する。具体的には、電源電圧がしきい値を越えた場合に、上アーム22の2つのスイッチング素子のゲート電圧を調整する。また、電源電圧がしきい値を越えた場合に、マイコン30は、下アーム23のスイッチング素子Q2、Q4、Q6には、オフ電圧を供給する。電源電圧がしきい値を越えていない場合に、切替えスイッチ35がPWM制御信号を出力する。
こうすることで、中間電圧が供給された2つのスイッチング素子に電源コンデンサ21からの電流が流れるため、回生電力をスイッチング素子で消費することができる。また、よって、図19に示したように回生領域を適切に拡大することができる。目標値に応じた電流をスイッチング素子に流すことができるため、モータ11の回転速度を制御することができる。すなわち、モータ11を所望の回転角度で回転するように、マイコン30が目標値を設定している。
(構成例2)
次に、モータ制御装置の第2の構成例について、図13を参照して説明する。図13は、モータ制御装置102の構成を示す回路図である。構成例1では、デジタル処理によって切替えスイッチ35を切替えていたが、構成例2ではアナログ回路によって切替えスイッチ35を切替えている。なお、モータ制御装置102の基本的構成は、構成例1のモータ制御装置101と同様であるため、適宜説明を省略する。
構成例2では、切替え制御器として、AND回路37が設けられている。AND回路37は、スイッチング素子Q1、Q3、Q5に対して設けられている。AND回路37には、PWM制御信号が入力されている。比較器32には、電源電圧が入力されている。また、比較器32には、抵抗分割によってしきい値が入力されている。比較器32は、電源電圧としきい値との比較結果を示す比較信号をAND回路37に出力する。そして、AND回路37は比較器からの比較信号とPWM制御信号の反転信号のANDを取って、切替えスイッチ35に切替え信号として出力する。こうすることで、構成例1と同様のタイミングで、切替えスイッチ35が切り替わる。
例えば、電源電圧がしきい値を越えた場合に、マイコン30は、スイッチング素子Q2、Q4、Q6がオフ電圧となるPWM制御信号を出力する。電源電圧がしきい値を越えた場合に、マイコン30は、区間に応じてHレベルとLレベルが切り替わるPWM制御信号をスイッチング素子Q1、Q3、Q5に出力する。区間1において、スイッチング素子Q1に対するPWM制御信号がHレベルとなり、スイッチング素子Q3、Q5に対するPWM制御信号がLレベルとなる。よって、スイッチング素子Q1にオン電圧となり、スイッチング素子Q3、Q5にゲート信号が供給される。区間2において、スイッチング素子Q3に対するPWM制御信号がHレベルとなり、スイッチング素子Q1、Q5に対するPWM制御信号がLレベルとなる。よって、スイッチング素子Q3にオン電圧となり、スイッチング素子Q1、Q5にゲート信号が供給される。区間3において、スイッチング素子Q5に対するPWM制御信号がHレベルとなり、スイッチング素子Q1、Q3に対するPWM制御信号がLレベルとなる。よって、スイッチング素子Q5にオン電圧となり、スイッチング素子Q1、Q3にゲート信号が供給される。したがって、上記したモータ制御を実現することができる。
上記の説明では、電源電圧がしきい値を越えると、下アーム23のスイッチング素子Q2、Q4、Q6をオフしている。このため、上アーム22のスイッチング素子Q1、Q3、Q5のゲート電圧を調整するだけで、回生電力を消費することができる。よって装置構成を簡素化することができる。さらに、下アーム23のスイッチング素子Q2、Q4、Q6をオフして、上アーム22のスイッチング素子Q1、Q3、Q5のゲート電圧を調整している。
あるいは、上アーム22のスイッチング素子Q1、Q3、Q5ではなく、モータ制御装置が、下アームのスイッチング素子Q2、Q4、Q6を制御してもよい。すなわち、スイッチング素子Q1、Q3、Q5をオフして、中間電圧が供給されるスイッチング素子Q2、Q4、Q6を電気角に応じて切り替えるようにしてもよい。
さらには、電源電圧がしきい値を越えた場合、上アーム22のスイッチング素子Q1、Q3、Q5、及び下アーム23のスイッチング素子Q2、Q4、Q6についてもゲート電圧を調整してもよい。この場合も、上アーム22と同様に、期間に応じて、中間電圧を供給するスイッチング素子を切替えればよい。
上記したモータ制御装置100〜102は、ロボットの関節に設けられたモータ11の制御に好適である。例えば、図16に示すロボット43においては、モータ制御装置がECU42に搭載されている。すなわち、電源(バッテリ)13、インバータ20、及び電源コンデンサ21等は、ロボット43に搭載されている。そして、モータ11がロボット43の各関節のアクチュエータ41として設けられている。モータ11が動作することで、アーム機構40が駆動される。本実施形態の制御方法によれば、モータ11の回生領域を広げることが可能にあるため、瞬時領域を拡大することができる。よって、瞬間的に大出力でモータ11が動作することができるため、ロボット43の制御に好適である。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。